JP2001321809A - 鋼帯の冷間圧延方法 - Google Patents
鋼帯の冷間圧延方法Info
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Abstract
おいて、高速圧延時の潤滑不足を解消し、潤滑不足に起
因するチャタリング発生を防止する。 【解決手段】第1のエマルションをロールおよびロール
バイトに向けて供給するための循環式の第1の圧延油供
給手段と、前記第1のエマルションの平均粒径より大き
い平均粒径を有する第2のエマルションを、ロールバイ
トから上流スタンド側に所定距離離れた位置で鋼帯の表
裏面に向けて供給するための第2の圧延油供給手段とを
有する冷間圧延装置を用いた鋼帯の冷間圧延方法におい
て、圧延開始時から第1の圧延油供給手段により所定量
の第1のエマルションを供給し、圧延速度を上昇させる
第1の供給工程と、前記第1の供給工程における圧延速
度の変化量Δυを検出し、鋼帯とロールとの間の摩擦係
数の変化量Δμを求め、該Δυに対する該Δμの変化率
Δμ/Δυが負から正に転ずる時点で、さらに第2の圧
延油供給手段による第2のエマルションの供給を開始す
る第2の供給工程と、を備えたことを特徴とする。
Description
延する冷間圧延方法に関し、特に循環圧延油供給系統と
別圧延油供給系統とを備える冷間圧延装置を用いた冷間
圧延方法に係る。
ークロール間の過度の摩擦を減少させるために潤滑油が
必要となる。また、摩擦発熱および加工発熱を除去する
ためにワークロール、バックアップロールおよびストリ
ップの冷却が必要となる。
ョン方式)は、圧延油と冷却水とがあらかじめ混合乳化
されたエマルションを上述した潤滑および冷却のために
ワークロールおよびロールバイト近傍のワークロール表
面に向けてノズルからスプレーした後、回収し、再びノ
ズルへ供給する一連の供給・回収を循環して行なう方式
である(例えば日本鉄鋼協会編「板圧延の理論と実
際」、P.208を参照。)。ワークロール表面に衝突
した一部のエマルション粒子(油粒)が油膜としてワー
クロール表面に披着し、さらに鋼板上面側においては、
ワークロール表面に付着しなかったエマルションが滞留
し、披着する。そして、付着しなかったエマルションは
板端から落下する。
表面に付着する現象は、プレートアウトと呼ばれてお
り、このプレートアウト層がロールバイトに導入され、
潤滑油として機能する。
後から圧延が進み、積算圧延長を重ねるにつれてワーク
ロール表面の粗度が低下し、これに伴って摩擦係数も低
下するため、タイミングを図ってワークロールを組み替
える必要がある。このワークロールの組み替えのタイミ
ングは、積算圧延長により管理される。例えば、図9に
示す循環式圧延油供給系統のみを有する全5スタンドの
タンデム冷間圧延機を用い、被圧延材としての硬質ブリ
キ原板を仕上げ厚0.2mmに冷間圧延する場合のワー
クロール組み替えのタイミング、すなわちワークロール
組み替え時の積算圧延長は、図3の(a)、(b)に示
す結果に基づき、積算圧延長が370kmの時点でなさ
れる。図3の(a)は積算圧延長(km)と第5スタン
ドのワークロールの表面粗さRa(μm)との関係につ
き調べた結果を示し、図3の(b)は積算圧延長(k
m)と圧延速度1000m/min時の摩擦係数との関
係について調べた結果を示している。
機において、安定圧延を阻害する現象の一つにチャタリ
ングと呼ばれる騒音を伴う異常振動現象がある。このチ
ャタリングが発生すると、板厚変動や圧延スタンド間の
張力変動を生じ、これらの変動が著しい場合には鋼板の
破断に至ることもある。そのため、板厚変動による品質
や歩留りの低下、板破断によるロール原単位の悪化、稼
働率の低下などが発生する。このチャタリングは、次に
説明する圧延不安定化によって発生すると言われてき
た。すなわち、圧延が進むにつれてワークロール粗度が
低下し、ワークロールおよび圧延材間の摩擦係数が低く
なり、ロールバイト内の潤滑が過多となる状態が発生す
る。それに伴って、先進率が負(中立点がロールバイト
の外へ飛び出した状態)となり圧延が不安定化する(例
えば、鉄と鋼、第73(1987)第10号、p.13
58を参照。)。
質・薄ゲージ化に伴い、生産性向上のために圧延速度の
さらなる高速化が進められており、2000m/min
を超える高速圧延速度での圧延技術が必要とされてい
る。しかしながら、循環式圧延油供給方式を備えたタン
デム冷間圧延機を用いて上記した高速圧延を行なった場
合、特に仕上板厚0.2mm以下に圧延しようとして
も、潤滑不足に起因したチャタリングが発生し、安定的
な高速冷間圧延を阻害する。
油供給系統を用いる冷間圧延方法において、高速圧延時
の潤滑不足を解消し、潤滑不足に起因するチャタリング
発生を防止することを目的とする。
式圧延油供給方式の高速圧延域における潤滑性改善を意
図した冷間圧延方法を発明し、特願平10−26477
3号として特許出願した。この先願の冷間圧延方法は、
循環式圧延油供給系統(第1の圧延油供給系統)とは別
の第2の圧延油供給系統を設け、この第2圧延油供給系
統から、第1圧延油供給系統のエマルションよりも平均
粒径の大きい、プレートアウト性の高いエマルション圧
延油を、ロールバイトから上流スタンド側へ所定距離
(エマルションがプレートアウトするための時間(転相
時間)を確保することができる距離)離れた位置で鋼板
表裏面に向けて供給するものである。先願の冷間圧延方
法において、上記別圧延油供給系統は、好ましくは後段
スタンドに適用される。これは、後段スタンドほど圧延
速度が速くかつ板厚が薄くなるので圧延荷重が高くな
り、潤滑条件が厳しくなるからである。先願の冷間圧延
方法によれば、高速圧延域でも鋼板に披着する油量を大
幅に増加させることができるため、高速圧延時に発生す
る潤滑不足を解消でき、潤滑不足に起因するチャタリン
グを防止することができる。
法につき、さらに検討を重ねた結果、次に説明する潤滑
過多に起因したチャタリングが発生する場合があること
が判明した。
圧延方法を行なうための別圧延油供給系統をも有する冷
間圧延機を用い、前述した図3で説明したのと同様な被
圧延材を冷間圧延した。また、図9に示す循環式圧延油
供給系統のみを有する冷間圧延機を用いて上記被圧延材
の冷間圧延も行なった。圧延油としての基油は循環式圧
延油供給系統、別圧延油供給系統とも牛脂(40℃での
粘度;45cSt)を用いた。循環式圧延油供給系統の
エマルション条件は温水中の基油濃度3.5体積%、エ
マルションの平均粒径10μmおよび温度60℃とし、
第5スタンドにおけるエマルション供給量を4000リ
ットル/分に制御した。また、別圧延油供給系統のエマ
ルション条件は、温水中の基油濃度10体積%、エマル
ションの平均粒径20μm、温度60℃とし、エマルシ
ョン供給量を130リットル/分に制御した。
の、圧延速度と摩擦係数との関係を調べた結果を示すグ
ラフ図であって、図4の(a)は積算圧延長が0km
(ワークロール組み替え直後)のとき、図4の(b)は
積算圧延長が160kmのとき、図4の(c)は積算圧
延長が370km(ワークロール組み替え直前)のとき
と、それぞれ積算圧延長が異なる、すなわちワークロー
ルの表面粗度が異なる条件下での結果を示している。図
4の(a)、(b)、(c)はそれぞれ、横軸に圧延速
度(m/min)をとり、縦軸に第5スタンドにおける
ワークロールおよび被圧延材間の摩擦係数をとってい
る。図4において、白丸を結んだ曲線A1、A2、A3
は、図9に示す冷間圧延機において循環式圧延油供給系
統のみを用いた結果を示す特性線であり、黒丸を結んだ
曲線B1、B2、B3は、図10に示す冷間圧延機にお
いて別圧延油供給系統を圧延開始時から併用した結果を
示す特性線である。また、図中における×印は、チャタ
リングの発生を表わす。
い条件下で、別圧延油供給系統を併用せずに循環式圧延
油供給系統のみを用いる場合、特性線A1から明らかな
ように、圧延開始時から800m/min程度までの低
速領域においてチャタリングの発生しない適正な潤滑状
態が得られていることを示しており、この領域では圧延
速度の上昇とともに摩擦係数は低下傾向にある。しか
し、上記低速域を超えると摩擦係数はそれまでの低下傾
向から一転して急激に上昇し、圧延速度1000m/m
inで潤滑不足に起因したチャタリングが発生すること
がわかる。また、この特性線A1に対して、図4
(b)、(c)の特性線A2、A3は、積算圧延長が1
60km、370kmとロールの表面粗度が低い条件下
のため摩擦係数が低減されることがわかる。このため、
潤滑不足に起因したチャタリングの発生時期は特性線A
1に示すチャタリング発生時期よりも遅延されるが、い
ずれも圧延速度約1600m/min(特性線A2参
照)、約1700m/min(特性線A3参照)でそれ
ぞれチャタリングが発生している。
は、エマルション圧延油のプレートアウト性の観点から
説明される。すなわち、圧延開始時から800〜100
0m/minの低速域においては、圧延速度の上昇とと
もに鋼帯単位面積当たりのエマルション圧延油供給量が
増加し、かつエマルションの転相時間が確保されるの
で、鋼帯表面に十分なプレートアウト膜を披着させるこ
とができる。したがって、流体潤滑理論で説明されるよ
うに、ロールバイトへの供給油量が圧延速度の上昇とと
もに増加し、これに伴い摩擦係数は低下する。一方、上
記低速域を超えて圧延速度が上昇すると、鋼帯単位面積
当たりのエマルション圧延油の供給量が低下し、かつエ
マルションの転相時間を確保し難くなるため、鋼帯表面
におけるプレートアウト量は減少する。したがって、ロ
ールバイトへの供給油量は圧延速度とともに減少し、こ
れに伴い摩擦係数は上昇する。
下で、循環式圧延油供給系統と別圧延油供給系統とを圧
延開始時から併用すると、図4(a)の特性線B1から
明らかなように、摩擦係数を低減できるとともに、80
0m/min以上の高速域であっても摩擦係数の急激な
上昇を抑制でき、潤滑不足に起因したチャタリングを発
生させることなく安定的に2000m/min以上にま
で加速できることがわかる。
件下では、別圧延油供給系統を圧延開始時から併用する
と、図4の(b)、(c)の特性線B2、B3に示すよ
うに、約600〜700m/minの低速域において潤
滑過多に起因したチャタリングが発生することが判明し
た。このように、別圧延油供給系統を併用しても高速圧
延を達成できない場合があることが判明した。
る先願の冷間圧延方法について、高速域での潤滑不足に
起因したチャタリングの防止とともに上述した低速域に
おける潤滑過多に起因したチャタリングの防止に関して
鋭意検討した。その結果、図4(b)、(c)の特性線
B2、B3から明らかなように、別圧延油供給系統は圧
延開始時から必ずしも併用する必要はなく、圧延開始当
初の圧延油の供給は循環式圧延油供給系統からのみでも
よいことが判明した。この場合、循環式圧延油供給系統
のみを用いたまま圧延速度を増しても、図4(a)、
(b)、(c)の特性線A1、A2、A3から明らかな
ように、高速域で潤滑不足に起因したチャタリングが発
生してしまう。このため、このチャタリング発生前に別
圧延油供給系統を併用する必要がある。この別圧延油供
給系統の併用を開始するタイミングは、図4(a)の特
性線A1から、圧延速度の上昇に伴ってロールおよび被
圧延材間の摩擦係数が低下傾向から上昇傾向に転ずる時
であることが判明した。
されたものであって、第1のエマルションをロールおよ
びロールバイトに向けて供給するための循環式の第1の
圧延油供給手段と、前記第1のエマルションの平均粒径
より大きい平均粒径を有する第2のエマルションを、ロ
ールバイトから上流スタンド側に所定距離離れた位置で
鋼帯の表裏面に向けて供給するための第2の圧延油供給
手段とを有する冷間圧延装置を用いた鋼帯の冷間圧延方
法において、圧延開始時から第1の圧延油供給手段によ
り所定量の第1のエマルションを供給し、圧延速度を上
昇させる第1の供給工程と、前記第1の供給工程におけ
る圧延速度の変化量Δυを検出し、鋼帯とロールとの間
の摩擦係数の変化量Δμを求め、該Δυに対する該Δμ
の変化率Δμ/Δυが負から正に転ずる時点で、さらに
第2の圧延油供給手段による第2のエマルションの供給
を開始する第2の供給工程と、を備えたことを特徴とす
る。
記変化率Δμ/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦係
数μの値に応じて第2の圧延油供給手段による第2のエ
マルションの供給量を制御することが好ましい。
速度と第5スタンドにおける摩擦係数との関係をさらに
詳細に調べた。
とり、縦軸に第5スタンドにおける摩擦係数をとって、
チャタリングが発生する領域を低速域から高速域にわた
って調べた結果を示す図である。図中の上方の曲線C1
は、潤滑不足に起因するチャタリング発生の結果を示す
特性線であり、下方の曲線C2は、潤滑過多に起因する
チャタリング発生の結果を示す特性線である。図5から
明らかなように、チャタリングが発生しない条件は、特
性線C1、C2間の領域であることが判明した。このチ
ャタリング未発生領域は、高速域側ほど狭まる傾向にあ
る。ここで、前述した図4の(a)〜(c)において、
変化率Δμ/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦係数
の値は、ワークロールの表面粗度が高い条件下から低い
条件下(図4の(a)から(c))となるにしたがって
低下している。このため、後の別圧延油供給系統を併用
して圧延速度を上昇させる際、摩擦係数の値を図5のチ
ャタリング未発生領域にとどめるように制御する必要が
ある。
率Δμ/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦係数の値
に応じて、別圧延油供給系統からの圧延油供給量を制御
することにより、圧延速度の上昇に伴う摩擦係数の値が
変化する範囲を上記チャタリング未発生領域内に保つこ
とができ、より安定的な高速圧延が可能となることを見
出した。
に、横軸に圧延速度(m/min)をとり、縦軸に第5
スタンドにおける摩擦係数μをとって、前述した変化率
Δμ/Δυが負から正に転ずる時点で併用した別圧延油
供給系統からのエマルションの供給流量を種々変化させ
たときの圧延速度と摩擦係数との関係につき調べた結果
を示すグラフ図である。図6の(a)は積算圧延長が0
km(ワークロール組み替え直後)のとき、図6の
(b)は積算圧延長が160kmのとき、図6の(c)
は積算圧延長が370km(ワークロール組み替え直
前)のときと、それぞれ積算圧延長が異なる、すなわち
ワークロールの表面粗度が異なる条件下での結果を示し
ている。図中の×印はチャタリングの発生を表わす。な
お、図中には、参考として別圧延油供給系統を併用せず
に循環式圧延油供給系統のみを用いた場合の結果も示
す。
統の併用以降も継続して摩擦係数を上記チャタリング未
発生領域内に保持するためには、変化率Δμ/Δυが負
から正に転ずる時点での摩擦係数値に応じて別圧延油供
給系統の供給流量を制御する必要があることが判明し
た。
から正に転ずる時点での摩擦係数値は約0.01(この
時点での圧延速度は約800m/min)であり、この
値での別圧延油供給系統の供給流量は100リットル/
分以上とすることが好ましく、140リットル/分では
チャタリングを生じなくなることが判明した。また、図
6の(b)では、変化率Δμ/Δυが負から正に転ずる
時点での摩擦係数値は約0.008(この時点での圧延
速度は約750m/min)と上記摩擦係数値よりも低
下しており、この値での別圧延油供給系統の供給流量は
20〜100リットル/分の範囲とすることが好まし
く、60リットル/分ではチャタリングを生じなくなる
ことが判明した。この場合に、供給流量を140リット
ル/分と高くすると、別圧延油供給系統併用直後の圧延
速度約1000m/minでチャタリングが発生し、逆
効果であった。さらに、図6の(c)では、変化率Δμ
/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦係数値は約0.
007とさらに低下しており、この値での別圧延油供給
系統からの供給量は10〜40リットル/分の範囲とす
ることが好ましく、20リットル/分ではチャタリング
を生じなくなることが判明した。この場合に供給流量を
60リットル/分と高くすると、別圧延油供給系統併用
直後の圧延速度約1250m/minでチャタリングが
発生し、逆効果であった。
/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦係数μの値と、
2000m/min以上の高速圧延を達成できた別圧延
油供給系統の好ましい供給流量Qとの関係について調べ
た結果を図7に示す。図7から明らかなように、供給流
量Qと摩擦係数μとはほぼ正比例の関係にあり、変化率
Δμ/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦係数μの値
が高い場合には別圧延油供給系統の供給流量Qを増加さ
せることが好ましく、変化率Δμ/Δυが負から正に転
ずる時点での摩擦係数μの値が低い場合には逆に別圧延
油供給系統の供給流量Qを絞ることが好ましい。
圧延供給手段としての別圧延供給系統を併用することな
く循環式の第1の圧延油供給手段としての循環式圧延油
供給系統のみを用いることにより、圧延初期の低速域で
の潤滑過多に起因したチャタリングの発生を回避するこ
とができる。また、循環式圧延油供給系統によるエマル
ション圧延油を供給しながら圧延速度を上昇させる過程
で、圧延速度の変化量Δυに対する鋼帯およびロール間
の摩擦係数の変化量Δμの変化率Δμ/Δυを監視し、
この変化率Δμ/Δυが負から正に転ずる時点で、高プ
レートアウト性の得られる大粒径エマルション(第2の
エマルション)を転相時間を確保できる上流スタンド側
の鋼板表裏面にスプレーする別圧延油供給系統を併用す
れば、圧延速度の上昇に伴うプレートアウト量の低下を
防止できる。このため、潤滑不足に起因するチャタリン
グを発生させることなく安定的に高速圧延を行なうこと
が可能となる。また、前記変化率Δμ/Δυが負から正
に転ずる時点での摩擦係数値に応じて、別圧延油供給系
統の流量を制御することにより、より安定的に高速圧延
を行なうことが可能となる。
明の好ましい実施の形態について説明する。
り、別圧延油供給系統を最終スタンドに適用した場合で
ある。図1は、No.1〜No.5(#1STD〜#5
STD)のスタンドを有するタンデム冷間圧延機の配置
例を示し、1はワークロール、2はバックアップロー
ル、3はストリップである。この冷間圧延機において、
隣り合うスタンド間には図示しないテンションロールお
よびデフロールが設置されている。
は、潤滑用スプレーヘッダ4a、冷却用スプレーヘッダ
4b、タンク6を備えている。
タンクであり、分室6aと分室6bとに区分されてい
る。両分室6a,6bにはアジテータ13a,13bが
それぞれ設けられている。
の各スタンドのスプレーヘッダ4a,4bと連通し、こ
のライン8にはポンプ7が介在されている。スプレーヘ
ッダ4aは各スタンドの入側に一対ずつ設けられ、スト
リップ3の上方および下方に位置するように分岐して配
置されている。スプレーヘッダ4bは各スタンドの出側
に一対ずつ設けられ、ストリップ3の上方および下方に
位置するように分岐して配置されている。ライン8にお
いて、No.5スタンドの入側および出側に分岐する部
分とスプレーヘッダ4aとの間のライン8部分には流量
制御弁27が介在されている。
油および界面活性剤が収容され、混合される。収容にあ
たっては、温水中の圧延油原油が所定の油分濃度、界面
活性剤が所定の対油濃度となるように配合される。収容
された内容物は、アジテータ13a、13bの攪拌羽の
回転数を調整することにより所望の平均粒径を有する第
1エマルションとされる。この第1エマルションは、例
えば、基油を牛脂として温水中に混合し、これに乳化分
散剤としてカチオン系分散型の界面活性剤を対油濃度で
0.6%添加したものとする場合には、上記回転数を調
整することによりその平均粒径を約9〜10μmとする
ことができる。代わりに、合成エステル油と乳化型界面
活性剤とを組み合わせた場合には、平均粒径が9μm以
下となる場合もある。
圧送され、ライン8を経由してNo.1〜No.5の各
スタンドに供給され、各スタンド入側のスプレーヘッダ
4aおよび各スタンド出側のスプレーヘッダ4bからそ
れぞれロールバイトおよびワークロールに向けてスプレ
ー供給される。供給された第1エマルションのうち、ス
トリップ3から落下した分の第1エマルションは、回収
オイルパン11で回収され、ライン12を経由して分室
6b内に流入される。この第1エマルションのスプレー
供給は、圧延開始時から行なわれる。
潤滑用スプレーヘッダ5、流量制御弁9、タンク14を
備えている。
れている。このタンク14は前記第1のエマルションよ
りも大きな平均粒径を有する第2のエマルションを貯蔵
するタンクである。タンク15、16、17内に貯蔵さ
れた温水、圧延油原油、界面活性剤は、ポンプ18a、
18b、18cにより流量調整弁19a、19b、19
cを介してそれぞれタンク14内へ送給され、混合され
る。タンク14内の温水中の圧延油濃度、界面活性剤の
対油濃度およびタンク14の内容物の温度の各条件は、
タンク6内の第1エマルションの条件とそれぞれ同一と
することが好ましい。タンク14内の第2エマルション
は、アジテータ20の攪拌羽の回転数を調整することに
より平均粒径20μm以上に調整される。
プレーヘッダ5と連通している。スプレーヘッダ5は、
ストリップ3の上方および下方の両方に位置するように
分岐して配置されている。スプレーヘッダ5は、No.
4,5スタンド間に設けられた前述の図示しないテンシ
ョンロールおよびデフロールの直後に位置するように配
置されている。上記位置は、No.5スタンドのロール
バイトから上流側に所定距離L離れている。この距離L
は、例えば先願の特願平10−264773号に記載さ
れた以下の式を満たす距離とされる。
minは必要な最小転相時間(s)を表わす。) スプレーヘッダ5は上記した位置に設けられているた
め、供給した油量がテンションロールやデフロールで絞
られるのを回避し、十分なプレートアウト量が得られ
る。また、O/W型エマルション(水に油滴が分散した
状態のエマルション)からW/O型エマルション(油中
に水滴が分散した状態のエマルション)への転相か、或
いはO/W型エマルションから油単相への転相か、いず
れか一方の転相時間を確保することができる。
プ21によりポンプ圧送され、ライン22を通過し、流
量制御弁9を介してスプレーヘッダ5からストリップ3
の表裏面に向けてスプレー供給される。この供給時にス
トリップ3にプレートアウトせずに落下した第2エマル
ションは、前述した第1エマルションと同様に回収オイ
ルパン11で回収され、ライン12を経由して分室6b
内に流入する。流入後、分室6b内のアジテータ13b
の攪拌羽により攪拌され、第1エマルションとほぼ同じ
粒径まで細分化され、タイトなエマルションとなる。
的に接続されている。この流量制御弁9は圧延開始の時
点では全閉状態であるが、後述するように制御装置10
から弁開度を制御する信号が送られたときに初めて開動
作するようになっている。すなわち、上述した第2エマ
ルションのストリップ3へのスプレー供給は、この流量
制御弁9が開いた時点で開始される。なお、この場合、
No.5スタンドのスプレーヘッダ4aに供給される第
1エマルションの流量を調整する流量制御弁27は、そ
の弁開度を圧延開始時からの状態のまま保持してもよい
が、弁開度を小さくして第1エマルションの流量を絞っ
てもよく、全閉にしてNo.5スタンド入側のスプレー
ヘッダ4aからの第1エマルションの供給を停止しても
よい。流量制御弁27を全閉した場合、図10に示す先
願の冷間圧延機の循環式圧延油供給系統のように、N
o.5スタンド入側のスプレーヘッダ4aがない構成と
実質上同じ状態となる。上述した流量制御弁27の弁開
度を小さくしたり、全閉したりしてもよい理由は、スプ
レーヘッダ5から供給される第2エマルションの方がス
トリップ3におけるプレートアウトにおいて支配的であ
り、スプレーヘッダ4aから供給される第1エマルショ
ンのプレートアウトの影響は少ないことが判明している
からである。
板速度計24およびロードセル25とそれぞれ電気的に
接続されている。ロール速度計23、ロードセル25は
No.5スタンドに設けられており、板速度計24はN
o.5スタンド出側のストリップ3の直上に位置するよ
うに設けられている。ロール速度計23、板速度計24
およびロードセル25は、ワークロール1の回転速度、
ストリップ3の速度、ストリップ3の圧延荷重をそれぞ
れ一定のサンプリング周期tsで計測するようになって
いる。制御装置10は、上記のロール回転速度、ストリ
ップ速度および圧延荷重の各計測データを図2に示す制
御フローにしたがって処理し、この処理結果に基づき流
量制御弁9を制御する。
o.5スタンドにおける先進率の値を計算する。この先
進率値は、ロール速度計23により計測されたワークロ
ール1の回転速度値および板速度計24により計測され
たストリップ3の速度値を下記の式(1)に代入して求
めることができる。
進率、Vs(m/min)は板速度、D(m)はワーク
ロールの直径、n(rpm)はワークロールの回転速度
を表わす。
5により計測された圧延荷重の値とからNo.5スタン
ドにおけるワークロール1とストリップ3との間の摩擦
係数の値を計算する。この摩擦係数の値は、下記の式
(2)および式(4)に示す圧延理論式により求めるこ
とができる。式(2)は、Bland&Fordの先進
率式と呼ばれる、先進率fsと摩擦係数μとの関係式で
ある。式(4)は、Hillの圧延荷重式と呼ばれる、
圧延荷重Pと摩擦係数μとの関係式である。摩擦係数μ
の値は、式(2)に上記先進率fsの値を代入し、式
(4)に圧延荷重の値を代入し、両式(2)、(4)を
連立させて求める。
圧延材とワークロールとの間の摩擦係数、km(kg/
mm2)は被圧延材の平均変形抵抗、H(mm)は入側
板厚、h(mm)は出側板厚、σb(kg/mm2)は
圧延中の前方ユニット張力、σf(kg/mm2)は圧
延中の後方ユニット張力、R’(mm)はワークロール
の偏平半径を表わし、Hnは下記の式(3)を表わす。
中の圧延荷重、W(mm)は板幅を表わす。
率{μ(t2)−μ(t1)}/{υ(t2)−υ(t
1)}を計算する。t1は、圧延開始時からある時間経
過したときの、ロール速度計23、板速度計24および
ロードセル25により計測が行われた時刻、t2は時刻
t1からサンプリング周期ts経過後の時刻(すなわ
ち、t2=t1+ts)、υ(t1),υ(t2)は板
速度計24により時刻t1,t2で計測されたストリッ
プ3の速度、μ(t1),μ(t2)は時刻t1,t2
での摩擦係数値をそれぞれ表わす。
率が正となる場合、上記摩擦係数値μ(t2)に応じて
第2エマルションの供給流量の値を決定する。そして、
この流量値に応じた弁開度を決定し、流量制御弁9に弁
開度信号を送る。
る変化率が負となる場合、前述したNo.5スタンドの
先進率の計算に戻って、再度、上述した一連の処理を繰
り返す。
れる。すなわち、制御装置10はメモリ部を内蔵してお
り、このメモリ部に摩擦係数μの値とこの摩擦係数μの
値に応じた流量値Qとの相関を示すデータがテーブル値
としてあらかじめ格納されている。このテーブル値は、
例えば前述の図7で説明したのと同様な摩擦係数μと別
圧延油供給系統の供給流量Qとの関係を調べた結果から
得ることができる。そして、この格納されたテーブル値
を呼び出し、これに基づき第2エマルションの供給流量
を決定する。
タンドと最終のNo.5スタンドとの間に別圧延油供給
系統のスプレーヘッダ5を配置するものとして説明した
が、本発明はこれのみに限られるものではなく、これと
は別のスタンド間に配置するようにしてもよい。
とともに説明する。
5スタンドのタンデム冷間圧延機により、以下に説明す
る第1エマルションおよび第2エマルションを用い、母
材厚2.3mm、板幅900mmの硬質ブリキ原板を仕
上げ厚0.200mmまで、目標圧延速度2400m/
minとして、上記冷間圧延機のワークロール1の組み
替え直後から組み替え直前まで冷間圧延を行なった。こ
の冷間圧延において圧延開始時から供給する第1エマル
ションの供給流量は、3000リットル/分とした。本
実施例1においては、流量制御弁9を、前述した図2に
示す処理の流れに従う制御を可能な状態にし、圧延開始
時から圧延終了時にわたって制御させた。
度;43cSt)を用い、温水中の油分濃度を4体積
%、カチオン系分散型の界面活性剤を対油分濃度で0.
6質量%となるように、温水、圧延油および界面活性剤
をタンク6の分室6a内にそれぞれ収容した。また、分
室6a内に収容された内容物をアジテータ13aの攪拌
羽の回転数を調整して十分に攪拌することにより、平均
粒径9μmの第1エマルション(温度60℃)とした。
面活性剤と、温水とをタンク15、16、17からタン
ク14内に移送した。このとき、温水中の圧延油濃度、
界面活性剤の対油分濃度が上述したのとほぼ同一となる
ようにそれぞれの供給量を調整した。次いで、タンク1
4内に収容された内容物をアジテータ20の攪拌羽の回
転数を調整して攪拌し、平均粒径20μmの第2エマル
ション(温度60℃)とした。
わたり、流量制御弁9を全閉状態に保持して第1エマル
ションのみを供給した以外、実施例1と同様にして冷間
圧延を行なった。
わたり、第2エマルションの供給流量が140リットル
/分となるように流量制御弁9の弁開度を調整し、この
弁開度に保持して圧延開始時から第2エマルションを供
給した以外、実施例1と同様にして冷間圧延を行なっ
た。
で得られた結果から、図8に示す特性線図を得た。図8
は、横軸に積算圧延長(km)をとり、縦軸に到達した
圧延速度(m/min)をとって、積算圧延長と到達圧
延速度との関係について調べた結果を示す特性線図であ
る。この図において、三角印を結んだ曲線は上記の実施
例1の結果を示す特性線、白丸を結んだ曲線は上記の比
較例1の結果を示す特性線、黒丸を結んだ曲線は上記の
参考例1の結果を示す特性線である。この図から、実施
例1の場合では、積算圧延長0kmから約370kmに
わたり、すなわちワークロールの組み替え直後から組み
替え直前にわたって、潤滑過多および潤滑不足に起因し
たチャタリングが発生することなく、目標圧延速度であ
る2400m/minに到達できることが判明した。こ
れに対し、比較例1の場合では、積算圧延長0kmから
約370kmにわたり上記目標圧延速度を大幅に下回
り、最高速度も積算圧延長320kmにおいて1600
m/minにとどまり、目標圧延速度である2400m
/minへの到達は困難であることが判明した。これは
圧延の加速過程において潤滑不足に起因したチャタリン
グが発生したためである。他方、参考例1の場合では、
積算圧延長が0〜100kmの間は、潤滑過多および潤
滑不足に起因したチャタリングが発生することなく、目
標圧延速度である2400m/minに到達できること
が判明した。しかし、積算圧延長が100kmを超える
と低速域における潤滑過多に起因したチャタリングが発
生し、目標圧延速度を達成できないことが判明した。
方法によれば、加速過程の低速域で発生する潤滑過多に
起因したチャタリングおよび高速域で発生する潤滑不足
に起因したチャタリングのいずれも防止できる。そのた
め、2000m/min以上の高速圧延を行なうことが
できる。したがって、板破断による歩留り低下や板厚変
動に伴う鋼帯の品質劣化を大幅に低減させることがで
き、生産性が大幅に向上する。
一例として概略的に示す構成図。
フローを示す図。
との関係につき調べた結果を示すグラフ図、(b)は積
算圧延長と摩擦係数との関係につき調べた結果を示すグ
ラフ図。
別圧延油供給系統を併用した場合における、圧延速度と
摩擦係数との関係につき調べた結果を示す特性線図であ
って、(a)は積算圧延長0km(ワークロール組み替
え直後)のときの特性線図、(b)は積算圧延長160
kmのときの特性線図、(c)は積算圧延長370km
(ワークロール組み替え直前)のときの特性線図。
係につき調べた結果を示す特性線図。
用した別圧延油供給系統からのエマルションの供給流量
を種々変化させたときの圧延速度と摩擦係数との関係に
つき調べた結果を示す特性線図であって、(a)は積算
圧延長0km(ワークロール組み替え直後)のときの特
性線図、(b)は積算圧延長160kmのときの特性線
図、(c)は積算圧延長370km(ワークロール組み
替え直前)のときの特性線図。
摩擦係数μと別圧延油供給系統の供給流量Qとの関係に
つき調べた結果を示す特性線図。
関係につき調べた結果を示す特性線図。
間圧延機を概略的に示す構成図。
を有する冷間圧延機の一例を概略的に示す図。
Claims (3)
- 【請求項1】 第1のエマルションをロールおよびロー
ルバイトに向けて供給するための循環式の第1の圧延油
供給手段と、前記第1のエマルションの平均粒径より大
きい平均粒径を有する第2のエマルションを、ロールバ
イトから上流スタンド側に所定距離離れた位置で鋼帯の
表裏面に向けて供給するための第2の圧延油供給手段と
を有する冷間圧延装置を用いた鋼帯の冷間圧延方法にお
いて、 圧延開始時から第1の圧延油供給手段により所定量の第
1のエマルションを供給し、圧延速度を上昇させる第1
の供給工程と、 前記第1の供給工程における圧延速度の変化量Δυを検
出し、鋼帯とロールとの間の摩擦係数の変化量Δμを求
め、該Δυに対する該Δμの変化率Δμ/Δυが負から
正に転ずる時点で、さらに第2の圧延油供給手段による
第2のエマルションの供給を開始する第2の供給工程
と、を備えたことを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。 - 【請求項2】 前記第2の供給工程において、さらに、
前記変化率Δμ/Δυが負から正に転ずる時点での摩擦
係数μの値に応じて第2の圧延油供給手段による第2の
エマルションの供給量を制御することを特徴とする請求
項1に記載の鋼帯の冷間圧延方法。 - 【請求項3】 前記摩擦係数μの値は、前記変化率Δμ
/Δυが負から正に転ずる時点での、先進率の値と圧延
荷重の値とを用いて圧延理論式により求められることを
特徴とする請求項1または2に記載の鋼帯の冷間圧延方
法。
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