JP3129228B2 - ステンレス鋼板の冷間圧延方法 - Google Patents

ステンレス鋼板の冷間圧延方法

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JP3129228B2
JP3129228B2 JP09086732A JP8673297A JP3129228B2 JP 3129228 B2 JP3129228 B2 JP 3129228B2 JP 09086732 A JP09086732 A JP 09086732A JP 8673297 A JP8673297 A JP 8673297A JP 3129228 B2 JP3129228 B2 JP 3129228B2
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秀男 山本
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エマルション圧延
油を使用するステンレス鋼板の冷間圧延であって、高光
沢で、かつ高能率に圧延することを可能にするステンレ
ス鋼板の冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ステンレス鋼板の圧延は、圧延
された製品の表面光沢が高いことが要求される。しか
し、ステンレス鋼板はその変形抵抗が高く、加工硬化し
易いことから、そのような鋼板の圧延には圧延油の導入
量が少なく、高い圧延圧力が得られる小径ワークロール
のセンジミアミルが使用されていた。そして、それに使
用する圧延油は、低粘度の鉱油を基油とした不水溶性圧
延油 (以下、ニート油) 、あるいはこれをエマルション
化した圧延油であった。しかし、センジミアミルは圧延
ロールが20段と圧延機の構造が複雑でかつロール径が50
〜80mmと小径であるため圧延速度が制約され、生産性が
低いという問題があった。
【0003】そこで近年、生産性を向上させるため、ロ
ール径が大きいタンデムミルでの高光沢圧延が試みら
れ、特開平5−305326号公報には、冷間圧延の前の工程
もしくは圧延機入側で粘度5 cSt 以下の液体を鋼板に塗
布し、第1パス以降は粘度5cSt 以上の液体を鋼板に用
いることが開示されている。
【0004】一方、特開平4−118101号公報にはステン
レス鋼板の焼付けと表面あれとを防止する冷間圧延法と
して、粘度80cSt/40℃以上の高粘度の圧延原液を使用す
ることが開示されている。さらに、特開平2−110195号
公報には、粘度4 〜15 cst/50 ℃(5〜18 cst/40℃に相
当) の圧延油を用いて冷間圧延することが開示されてい
る。
【0005】確かに、そのような手段によって圧延能率
の向上が図られるようになったが、しかし、低粘度圧延
油では圧延を高速化したときの高光沢化が十分でなく、
また高粘度油をエマルション化した圧延油の場合、圧延
油の補給のときにエマルション粒径が変化し、光沢むら
や光沢性の低下が生じていた。したがって、センジミア
ミルでニート油を用いて圧延した際と同様の高光沢度を
得ることは依然としてできなかった。
【0006】さらに最近では、構造が簡便でかつ形状制
御機能の良い、圧延ロールが12段のクラスターミル (ロ
ール径:80〜120 mm) 、同じく6段のUCミルが開発さ
れ、600 mpm 以上の高速圧延が試みられている。そのよ
うな高速圧延に用いる圧延油として鉱油系のニート油を
使用した場合には、冷却性不足および潤滑性不足から焼
付き疵の発生、さらには破断事故時に圧延油に着火する
等の問題があった。また高潤滑性とした場合においては
圧延ロールと圧延材との間 (ロールバイト) に導入され
る油量が増し、光沢性の低下が問題となる。
【0007】一方、エマルション油の場合は、着火事故
の恐れは解決するが、冷却性が増すため、ニート油より
ロールバイトでの圧延油粘度が高くなり、油膜が厚くな
って十分な光沢性が得られないばかりか、鋼板やロール
へのエマルション油の付着の不均一、および摩耗粉がエ
マルション中に取り込まれて生じる粘凋なスカムの部分
的付着による油模様が発生する等の問題があった。ま
た、エマルション油で圧延した鋼板はニート油圧延に比
べ、表面に付着した摩耗粉の量が多く、圧延油に混じり
合って粘度を高め、油膜厚の増大につながっていた。
【0008】さらに、フェライト系ステンレス鋼板の圧
延時には、この摩耗粉の混入による粘度増大が光沢性低
下となり問題であった。また、オーステナイト系ステン
レス鋼板は冷間圧延による加工硬化が大きいため、少な
い圧延パスで圧延を仕上げるには、できるだけ1パス目
を高圧下率で圧延する必要がある。しかし、エマルショ
ン油はニート油に比べ酸洗後の鋼板への付着が少なく、
そのため同じ圧下率で圧延してもロール荷重が高くな
り、十分な圧下率をとることができない。特に、光沢性
を高めるためには低粘度あるいは細粒径としたエマルシ
ョン圧延油では特に高圧下率確保が必要であった。
【0009】以上のように、高光沢性が必要なフェライ
ト系ステンレス鋼板を高速で圧延することはできないの
が現状であった。また、潤滑性が必要なオーステナイト
系ステンレス鋼板と同一のエマルション圧延油を用いて
フェライト系ステンレス鋼板を高能率で圧延することも
できないのが現状であった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、前記
の問題点を解決する圧延方法、すなわち、エマルション
圧延油を使用する冷間圧延において、フェライト系、オ
ーステナイト系のいずれのステンレス鋼板をも同一のエ
マルション圧延油を用いて、高速圧延を行い高光沢度の
鋼板を得ることができる冷間圧延方法を提供することに
ある。
【0011】より具体的にはフェライト系、オーステナ
イト系のいずれのステンレス鋼板についても600 mpm 以
上の高速圧延速度で圧延しても、フェライト系の場合、
Ga60°で400 以上の光沢度、オーステナイト系の場合焼
付きがなしというすぐれた作用効果を実現できる冷間圧
延方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者は、高光沢度が
要求されるフェライト系ステンレス鋼板をエマルション
圧延油を用いて冷間圧延する際の圧延油原液の粘度と、
得られたエマルション圧延油のエマルション平均粒径と
を種々変えて、圧延時の潤滑性と圧延後の鋼板付着油量
および摩耗粉量、圧延油中の摩耗粉量、さらに表面光沢
度との関係を従来のニート油圧延と比較して種々検討し
た結果、次のような知見を得た。
【0013】(i) エマルション圧延油の場合はある程度
低粘度、細粒径にしないと高光沢が得られない。
【0014】(ii)圧延による摩耗粉の発生は鋼板に付着
した摩耗粉量、圧延油中の摩耗粉量の測定から、ニート
油の場合は、エマルション圧延油の場合より鋼板上に少
ないが、圧延油中に多く、全体としては、ニート油とエ
マルション油でその差はほとんどない。また、エマルシ
ョン油の場合、原液粘度が低いほど、またエマルション
圧延油の平均粒径が小さいほど、圧延材に付着した摩耗
粉量が増す。
【0015】(iii) 圧延後の付着油量は同一粘度であれ
ば、ニート油の方が多いが、エマルション油だけでは、
平均粒径が小さいほど少なくなる。また、エマルション
油の場合の原液粘度の影響は、ニート油よりは軽微であ
るが粘度が低いほど付着油量は減る。
【0016】(iv)圧延油原液に摩耗粉が混入すると、圧
延油の粘度が高くなる。したがって、摩耗粉の多い場合
は、少ない場合より潤滑性が増し、圧延荷重が軽減す
る。そのため、摩耗粉量が増す中間圧延パス以降では、
エマルション粒径が小さい場合の方が圧延荷重が小さく
なる場合がある。このことはオーステナイト系ステンレ
ス鋼板の圧延には好都合である。
【0017】(v) 圧延油原液に摩耗粉が混入すると、光
沢性が低下する。そこで、鋼板表面に圧延油原液を供給
・塗布すると、摩耗粉量が減少し光沢が改善される。こ
のことは高光沢が要求されるフェライト系ステンレス鋼
板の圧延には好都合である。
【0018】(vi)圧延母材となる、酸洗後の鋼板表面粗
さが大きいため、1パス目の圧延では十分な圧延油の付
着が必要であるが、エマルション油の場合は油量が足り
ず、圧延荷重が高くなる。特にエマルション粒径が小さ
い場合には高荷重となる。このことはオーステナイト系
ステンレス鋼板の圧延には不利である。したがって、こ
のような場合には、1パス目の圧延では鋼板へのエマル
ションの圧延を止め、圧延油原液を塗布することが荷重
低減に有効である。
【0019】以上の知見、基礎的事実を総合して、本発
明を完成するに至った。ここに、本発明は次の通りであ
る。 (1) ロール径50mm以上120 mm以下の小径ワークロールを
有した圧延機により、圧延油原液をエマルション化した
エマルション圧延油を使用してステンレス鋼板を冷間圧
延するに際し、前記圧延油原液の粘度を6cSt 以上20cS
t 未満、および前記エマルション圧延油の平均粒径を2
μm 未満とするとともに、前記エマルション圧延油をロ
ールおよび鋼板に供給することを特徴とするステンレス
鋼板の冷間圧延方法。
【0020】(2) 前記ステンレス鋼板がフェライト系ス
テンレス鋼板であって、少なくとも仕上げ圧延パスの1
つ前の圧延に際して、鋼板への前記エマルション圧延油
の供給を止め、前記圧延油原液を鋼板に供給する上記
(1) 記載のステンレス鋼板の冷間圧延方法。
【0021】(3) 前記ステンレス鋼板がオーステナイト
系ステンレス鋼板であって、1パス目の入側で鋼板には
前記圧延油原液を供給し、ロールには前記エマルション
圧延油を供給する上記(1) 記載のステンレス鋼板の冷間
圧延方法。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明は、すでに述べたように、
具体的態様としては、圧延油原液と水からなる水中油型
エマルション圧延油を使用してステンレス鋼板をロール
径が50mm以上、120 mm以下の小径ワークロールを有する
圧延機で600mpm以上の高速度で冷間圧延する冷間圧延方
法を前提とした方法である。
【0023】従来にあっては、水中油型エマルション圧
延油を使用してフェライト系ステンレス鋼板をロール径
が50mm以上、120 mm以下の小径ワークロールを有する圧
延機で600 mpm 以上の高速度で冷間圧延する際、最終圧
延パス後の圧延材表面光沢はGs60°で200 〜350 であ
り、これはニート油を使用した圧延速度400 m/min 未満
の低速で圧延した際に得られるGs60°で400 〜500 とい
う優れた表面光沢と比較してかなり低い。なお、本明細
書に云う「圧延速度」は各パスの定常圧延部の平均速度
である。
【0024】本発明にあっては、これを解消するため、
油膜厚さを低減する方法としてエマルション圧延油の原
液粘度とエマルション平均粒径とを規定する。さらに、
圧延後の鋼板表面の摩耗粉と圧延油の比率に注目し、少
なくとも仕上圧延パスの1つ前のパスで圧延油原液を鋼
板に塗布すると摩耗粉比率が小さくなり、高光沢が得ら
れることを見い出した。
【0025】また、オーステナイト系ステンレス鋼板の
場合は、エマルション平均粒径を小さくすることで鋼板
上での摩耗粉の比率が増し、粘度が高くなり、中間パス
以降での潤滑性が高められること、さらには、1パス目
に圧延油原液を鋼板に塗布することが初期パスでの潤滑
性改善に有効であり、フェライト系ステンレス鋼板と同
一のエマルション油での圧延を可能にする。
【0026】第1の特徴 (所定光沢度の確保) :まず、
本発明の第1の特徴について詳しく説明する。エマルシ
ョン圧延油を使用した場合の光沢性低下の原因は、冷却
性が増すため、ニート油よりロールバイトでの圧延油粘
度が高くなり、油膜が厚くなることにある。これは、一
般に(1) 式の油膜厚さ等量(td ) で示される。しかし、
この式はロールバイトに十分な油量がある場合に限ら
れ、(1) 式に示される量より少ない場合にはその量とな
る。
【0027】
【数1】
【0028】そこで、ロールバイトの入り口までにロー
ルや鋼板にエマルションが付着する際の原液粘度および
平均粒径の影響を検討し、図1に示す結果を得た。すな
わち、エマルションの平均粒径が小さいほど、原液粘度
が小さいほど付着油量が減少する。
【0029】また、これらのエマルション圧延油を使用
してロール径が直径100 mm、最高圧延速度800 m/min の
圧延機でSUS430ステンレス鋼板の圧延実験を実施し、光
沢度および潤滑性の関係を検討した。このときのエマル
ション圧延油の原液粘度およびエマルション粒径と光沢
度の関係を図2に示す。
【0030】これらの図から明らかなように、40℃での
原液の粘度が20cSt 未満の圧延油を、平均粒径が2μm
未満のエマルションとしたエマルション圧延油を使用す
れば、光沢度がGs60°で400 以上の高い値を示す表面光
沢が得られるが、原液粘度が20cSt 以上となるとエマル
ション粒径を2μm未満としても優れた表面光沢が得ら
れない。また、原液の粘度が6cSt 未満になると、焼付
き疵が発生する。
【0031】したがって、本発明の第1の特徴は、圧延
油原液の粘度が6cSt 以上20cSt 未満のエマルション圧
延油を、平均粒径が2μm 未満のエマルション圧延油と
して用いることである。
【0032】圧延油原液の粘度を上記範囲にするために
は、40℃で5〜10cSt と低粘度の鉱油、合成炭化水素お
よび粘度や融点の比較的低い合成エステルを使用するこ
とが好ましい。合成エステルとしては例えばラウリル
酸、パルミチン酸等炭素数が10〜18の何れかの脂肪酸と
炭素数が1〜18の何れかのアルコールとのモノエステ
ル、また、前述の脂肪酸とトリメチロールプロパン等の
多価アルコールとのモノエステル、または/およびジエ
ステル、または/およびトリエステル、さらに、アジピ
ン酸等の二塩基酸と前述のアルコールとのジエステルな
どが挙げられる。
【0033】上記合成エステルの圧延油原油としての配
合量は、鹸化価で50〜120 mgKOH/gの範囲が好ましい。5
0mgKOH/g 未満では潤滑不足となり焼付疵が発生し易く
なる。また、120 mgKOH/g を越えると摩耗粉への吸着・
反応が進みスカムが粘凋となり、油模様が発生し易くな
る。
【0034】エマルション圧延油の油粒子の平均粒径を
2μm 以下とするには、乳化剤の量を増量することで容
易に粒径が調整できる。特に、乳化剤の種類を限定する
ものではない。ただし、乳化剤は粘度が30cSt 以上の高
粘度であり、多量に使用すると圧延油原液の全体粘度が
高くなるため、圧延油原液粘度が上限の20cSt 未満とな
る範囲であれば、乳化剤の種類および量を限定するもの
ではない。なお、本明細書において「粘度」は特にこと
わりがない限り、40℃におけるそれを表わすものであ
る。
【0035】圧延油原液中には上記合成エステルの他に
アルコール類等の濡れ性改善剤、極圧添加剤、防錆剤、
酸化防止剤等の添加剤を適宜使用してもよい。なお、エ
マルションの平均粒径のより好ましい範囲は0.5 μm 以
上2.0 μm 未満である。0.5 μm 未満では、乳化剤の使
用量が多くなり、洗浄力が増し圧延機や配管内の汚れを
取り込みやすく、エマルション粒径の経時的な劣化を生
じ、維持管理が行い難い。
【0036】次にエマルション濃度は3%未満では焼付
きが発生し易くなるため、濃度は3%以上とすることが
好ましい。なお、濃度が15%を越えると油膜厚が大きく
なり、また、冷却能が低下することおよび潤滑性の向上
効果が飽和するため、好適上限は15%とする。
【0037】本発明においてロール径を50〜120 mmに限
定するが、このロール径についての限定の理由は、ロー
ル径が直径120 mmを越えると圧延中の滑り長さが長くな
り、焼付き疵が発生するためであり、また、オーステナ
イト系ステンレス鋼板では圧延荷重が増し、圧延が困難
となる。一方、ロール径が直径50mm未満では600 m/min
以上の高速圧延が困難なこと、およびロール摩耗が著し
く、圧延材の形状不良を生じやすくなるためである。
【0038】第2の特徴 (フェライト系ステンレス鋼板
の高光沢圧延) :実際の圧延では熱間圧延後の焼鈍・酸
洗済みの鋼板に5〜11パスの圧延を行うため、前の圧延
パス後の鋼板表面に付着している油量や摩耗粉量が光沢
や焼き付きに大きく影響すると考えられる。そこで、鋼
板表面の摩耗粉と圧延油の比率と圧延油原液粘度との関
係、圧延荷重および光沢性との関係を検討した結果をそ
れぞれ図3および図4に示す。
【0039】圧延油原液に摩耗粉が混入すると、圧延油
の粘度が飛躍的に高くなる。したがって、摩耗粉の多い
場合は、少ない場合より潤滑性が増し、圧延荷重が軽減
する。摩耗粉は圧下量に比例して増すため、母材板厚が
大きい場合、仕上板厚が小さい場合には、前述の第1の
特徴だけでは十分な光沢が得られない場合があることが
判った。そこでこの対策として、摩耗粉量の増す中間パ
ス以降で鋼板に圧延油原液を塗布する。原液を塗布する
ことで、鋼板上での摩耗粉の比率を下げることにより、
また、余分な油分がロールバイト入り口で排除される際
に摩耗粉を一緒に排出させるため、ロールバイト内での
圧延油の粘度を低下させ、光沢性を改善する。このこと
は高光沢が要求されるフェライト系ステンレス鋼板の圧
延には好都合である。原液の塗布による光沢向上効果は
塗布したパスより、次のパスの方がより顕著であるた
め、少なくとも仕上圧延パスの1つ前のパスで圧延油原
液を鋼板に塗布することが好ましい。なお、ロールに
は、冷却の必要からエマルション油を供給する。
【0040】ここに、エマルション圧延油については圧
延ロールまたは鋼板にエマルション圧延油を「供給す
る」といい、圧延油原液については鋼板に「塗布する」
というが、いずれの場合もロールコータまたはスプレに
よって鋼板またはロールにエマルション圧延油または圧
延油原液を供給するのであって、以下本明細書にあって
は単に「供給する」と称することもある。
【0041】第3の特徴 (オーステナイト系ステンレス
鋼の低荷重圧延) :オーステナイト系ステンレス鋼板の
場合は優れた潤滑性が必要とされる。第2の特徴で説明
したように、エマルション平均粒径を小さくすることで
鋼板上での摩耗粉量が増し、粘度が高くなり、中間パス
以降での潤滑性が高められ、圧延荷重が軽減する。この
ことはオーステナイト系ステンレス鋼板の圧延には好都
合である。ただし、1パス目の圧延では圧延母材とな
る、酸洗後の鋼板表面粗さが大きいため、十分な圧延油
の付着が必要であるが、エマルションの粒径が小さい場
合には油量が足りず、圧延荷重が高くなる。そこで、1
パス目の圧延の前に圧延油の原液を鋼板に塗布すること
により荷重低減が図られる。特に、エマルションを細粒
径とするために比較的多く用いる乳化剤は、圧延油のベ
ースオイルである鉱油や合成エステルより高粘度であ
り、潤滑性に優れているため従来のエマルション圧延油
の原液やニート油よりも荷重低減効果に優れている。し
たがって、オーステナイト系ステンレス鋼板を圧延する
際には、1パス目の入側で鋼板には圧延油を原液のまま
供給し、ロールには冷却性を維持するため平均粒径が2
μm 未満のエマルションとして供給する。なお、2パス
目以降は鋼板およびロールに平均粒径が2μm 未満のエ
マルションとして供給する。
【0042】
【実施例】次に、実施例により、本発明をさらに詳しく
説明する。直径が100 mm、表面粗さRaが 0.13 μm の材
質SKD11 のワークロールとバックアップロールの直径が
350 mmの4Hi圧延機により、表1に示す圧延材を、表2
および表3に示す圧延条件で7パスおよび9パスの圧延
に供した。
【0043】なお、圧延油は表4に示す組成、性状のも
のを用いた。また、表5に原液塗布の条件を示し、表6
に供試材、圧延条件、圧延油条件および原液塗布条件の
組み合わせを示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】最終パス圧延後の鋼板表面の鏡面光沢度(J
ISに規定するGs60°で測定) 、目視判定による光沢か
ら、焼付発生の程度、圧延荷重を測定し、表7に併記し
た。なお、光沢度は高光沢が要求される供試材1につい
て実施し、光沢むら、焼付発生の程度は供試材1、2に
ついて、次に示す記号で表示している。また、圧延荷重
については、潤滑性が要求される供試材2について、各
圧延パスの合計圧下荷重を圧下パス数で割った平均圧延
荷重を供試材および圧延条件が同じである比較例との差
を次の記号で表示している。
【0052】(光沢むら) ○:確認できない、□:僅かであり品質上問題ない、
△:顕著で品質不適 (焼付発生の程度) ○:発生無し、□:軽微な発生 (許容範囲内) 、△:著
しい発生 (不良) (圧延荷重) ○:比較例より15%以上低減、□:比較例より10%以上
低減、 △:比較例と同等か5%未満の減少 本発明の実施例では光沢性が要求されるフェライト系ス
テンレス鋼板 (供試材1) の場合には、いずれも光沢度
(Gs60°) が400 以上の光沢度が得られ、かつ高速圧延
を行っても焼付や光沢むらの発生がないか軽微である。
また、潤滑性が要求されるオーステナイト系ステンレス
鋼板 (供試材2) の場合には、比較例に比べ、焼付の発
生がないか軽微である。さらに、フェライト系ステンレ
ス鋼板 (供試材1) の場合には、仕上パスの1つ前のパ
スで圧延油原液を塗布することにより、光沢がさらに向
上する。また、オーステナイト系ステンレス鋼板 (供試
材2)の場合には、初期パスで圧延油原液を塗布するこ
とにより、圧延荷重がさらに減少する。加えて、本発明
例No.5およびNo.15 に示すように本発明において用いる
エマルション圧延油はフェライト系ステンレス鋼板、オ
ーステナイト系ステンレス鋼板のいずれを圧延しても要
求される性能を発揮できる。
【0053】
【発明の効果】ステンレス鋼板をロール径50mm以上120
mm以下の小径ワークロールを有する圧延機でエマルショ
ン圧延油を使用して600 mpm 以上の高速度で冷間圧延す
るに際し、ニート油で得られるGs60°で400 以上の高光
沢を可能にし、かつ、フェライト系、オーステナイト系
のいずれのステンレス鋼板をも同一のエマルション圧延
油を用いて圧延することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エマルション油の原液粘度およびエマルション
平均粒径とロールや鋼板にエマルションが付着する量と
の関係を示すグラフである。
【図2】エマルション油の原液粘度およびエマルション
平均粒径と圧延材の光沢度との関係および焼き付きの発
生との関係を示すグラフである。
【図3】鋼板表面の摩耗粉と圧延油の比率と圧延油原液
粘度との関係を示すグラフである。
【図4】鋼板表面の摩耗粉と圧延油の比率と圧延荷重お
よび光沢性との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−305326(JP,A) 特開 平4−118101(JP,A) 特開 平2−284702(JP,A) 特開 平4−52008(JP,A) 特開 平5−293507(JP,A) 特開 平4−52009(JP,A) 特開 平7−303912(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 1/00 - 11/00 B21B 27/00 - 27/10 B21B 45/02

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ロール径50mm以上120 mm以下の小径ワー
    クロールを有した圧延機により、圧延油原液をエマルシ
    ョン化したエマルション圧延油を使用してステンレス鋼
    板を冷間圧延するに際し、前記圧延油原液の粘度を6cS
    t 以上20cSt未満、および前記エマルション圧延油の平
    均粒径を2μm 未満とするとともに、前記エマルション
    圧延油をロールおよび鋼板に供給することを特徴とする
    ステンレス鋼板の冷間圧延方法。
  2. 【請求項2】 前記ステンレス鋼板がフェライト系ステ
    ンレス鋼板であって、少なくとも仕上げ圧延パスの1つ
    前の圧延に際して、鋼板への前記エマルション圧延油の
    供給を止め、前記圧延油原液を鋼板に供給する請求項1
    記載のステンレス鋼板の冷間圧延方法。
  3. 【請求項3】 前記ステンレス鋼板がオーステナイト系
    ステンレス鋼板であって、1パス目の入側で鋼板には前
    記圧延油原液を供給し、ロールには前記エマルション圧
    延油を供給する請求項1記載のステンレス鋼板の冷間圧
    延方法。
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