JPH11226607A - ステンレス鋼板の冷間圧延方法 - Google Patents

ステンレス鋼板の冷間圧延方法

Info

Publication number
JPH11226607A
JPH11226607A JP3494598A JP3494598A JPH11226607A JP H11226607 A JPH11226607 A JP H11226607A JP 3494598 A JP3494598 A JP 3494598A JP 3494598 A JP3494598 A JP 3494598A JP H11226607 A JPH11226607 A JP H11226607A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
oil
rolling
stainless steel
steel sheet
emulsion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP3494598A
Other languages
English (en)
Inventor
Hideo Yamamoto
秀男 山本
Satoru Matsushita
哲 松下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Industries Ltd filed Critical Sumitomo Metal Industries Ltd
Priority to JP3494598A priority Critical patent/JPH11226607A/ja
Publication of JPH11226607A publication Critical patent/JPH11226607A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Lubricants (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】チャタマークを発生させることなく冷間圧延す
ること、およびフェライト系、オーステナイト系のいず
れのステンレス鋼板をも同一のエマルション油を用いて
高速で高能率で圧延する。 【解決手段】エマルションの平均粒径が1〜5μmで、
濃度が10%以上であるエマルション油を用いるオース
テナイト系ステンレス鋼板の冷間圧延方法、およびエマ
ルション油の原油粘度が40℃で、7〜20cStであ
る原油を用い、濃度を10%以上、油粒子の平均粒径を
3μm以下に、かつ水中の油粒子群中の粒子径が10μ
m以上の油粒子が占める割合が5体積%以下となるよう
に調整した水中油型エマルション油を用いて冷間圧延す
るオーステナイト系ステンレス鋼板およびフェライト系
ステンレス鋼板の冷間圧延方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼板の
冷間圧延方法に係わり、さらに詳しくは圧延後の表面品
質を損なうことなく、高能率で安定した圧延が可能なス
テンレス鋼板の冷間圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】冷間圧延されたステンレス鋼帯には、一
般に高い表面光沢が要求される。ステンレス鋼は、変形
抵抗が高く加工硬化し易い。そのため、高い圧延圧力が
得られ、圧延時に鋼帯とワークロール間(以下ロールバ
イトと記す)への圧延油の導入量が少ない小径ワークロ
ールを備えたセンジミアミルが使用されている。
【0003】センジミアミルでの圧延では、圧延油とし
て低粘度の鉱油を基油とした不水溶性圧延油(以下、ニ
ート油と記す)、あるいはこれをエマルション化した圧
延油が使用されていた。しかし、センジミアミルは圧延
ロールが20段と圧延機の構造が複雑で、かつロール径
が50〜80mmと小径であるため圧延速度が制約さ
れ、生産性が低いという問題があった。
【0004】そこで近年、生産性を向上させるため、ワ
ークロール径が大きいタンデムミルでの高光沢圧延が試
みられるようになった。
【0005】特開平2−110195号公報に、タンデ
ムミル用の低粘度圧延油、特開平4−118101号、
特開平5−78690号各公報には、高粘度の細粒径水
中油型エマルション油を用いたタンデムミルによる冷間
圧延方法が開示されている。しかし、これらの方法では
圧延能率の改善は達成できるが、圧延後の鋼板表面にオ
イルピットが多量に発生するので、センジミアミルでニ
ート油を用いて圧延した場合と同様の高光沢度を得るこ
とはできない。
【0006】最近では、センジミアミルよりも生産性が
よく、構造が簡便でかつ形状制御機能の良い、ワークロ
ール径が80〜120mmで、6段のUCミルが開発さ
れ、600m/分以上の高速圧延が試みられている。
【0007】UCミルに圧延油として、低粘度の鉱油系
ニート油を使用した場合には、高速圧延のため冷却不足
および潤滑不足となり、焼付き疵の発生および鋼帯の破
断事故等の際の発火による圧延油への着火等の問題があ
った。また、高潤滑性の高粘度ニート油を用いた場合
は、ロールバイトに導入される油量が増加し、光沢度の
低下が問題となる。
【0008】一方、一般の水中油型エマルション油(以
下、単にエマルション油と記す)を用いる場合は、着火
事故の問題は起こらない。しかし、冷却能が増すため、
ニート油よりロールバイトでの圧延油粘度が高くなり、
油膜が厚くなってオイルピット発生面積が増し、十分な
光沢度が得られない。また、そればかりかエマルション
油の鋼板やロールへの付着の不均一、および摩耗粉がエ
マルション油中に取り込まれた粘凋なスカムの部分的付
着による油模様が発生する問題があった。
【0009】特開平9−276921号公報、特開平8
−225794号公報には、さらに低粘度化した圧延油
やアルカリ性にして乳化を安定化させた圧延油が示され
ている。しかし、これらエマルション油で圧延した鋼板
はニート油圧延に比べ、表面に付着した摩耗粉の量が多
く、圧延油に混じり合って粘度を高め、油膜厚を増大さ
せたり、圧延時のロール押し込み疵やコイル巻取り時の
巻き疵(巻取り時に鋼板表面同士が擦れて摩耗粉により
に発生するすり疵)の発生を引き起こして品質を低下さ
せていた。
【0010】さらに、エマルション油はその大半が油よ
り冷却能の高い水であるため、圧延後の鋼板温度はニー
ト油による圧延時よりも20〜30℃程度低くなり、こ
れが以下に述べる圧延の不安定現象を引き起こして圧延
を不安定にしていた。
【0011】オーステナイト系ステンレス鋼板の圧延で
は、圧延により加工誘起マルテンサイトが生成して加工
硬化する。この加工誘起マルテンサイトは低温ほど発生
し易いことが知られている。ニート油を用いた圧延時に
も冷却され易い鋼板のエッジ部にマルテンサイトが生成
し耳割れの原因になる。エマルション油で圧延した場合
は冷却効果が大きいため、エッジだけでなく、鋼板の全
幅にわたってマルテンサイトが多量に発生して変形抵抗
が高くなり、圧延が困難になる。
【0012】特に、リバース式圧延機で圧延する場合は
コイル先後端の加減速圧延部にマルテンサイトの生成が
多く、圧延速度によりその量が変化し、圧延荷重が大き
く変化して圧延が安定しない。
【0013】さらに、総圧下率が50%を超えた場合の
圧延で、かつ各パスの圧下率が17%以上で圧延速度が
300mpm以上の条件になると板幅方向に縞模様のチ
ャタマークと呼ばれる表面欠陥が生じる。
【0014】図1はオーステナイト系ステンレス鋼板に
発生したチャタマークを示す図である。このチャタマー
クは一般的な圧延機の振動現象に起因するものではな
く、周期的な剪断変形による塑性加工が不安定になる現
象に起因する。
【0015】図2は、チャタマークが発生した部分のス
テンレス鋼板の縦断面をミクロ腐食した状態を示す図で
ある。同図に示すように、鋼板の表面から板厚方向に4
5〜50度程度に傾いた鋸歯の組織となっている。これ
はマルテンサイトの生成により硬化し、変形抵抗が高く
なり通常の層状の圧縮変形が生じなくなり断層のような
剪断変形が生じたものである。剪断変形が鋼板表面に到
達した部分がチャタマークとなる。
【0016】この現象が著しくなると圧延材が破断して
圧延ができなくなる。この現象を防止することが、エマ
ルション油でオーステナイト系のステンレス鋼を安定し
て高速圧延する上での最大の課題である。
【0017】ステンレス鋼の圧延はフェライト系とオー
ステナイト系を同一の圧延機で圧延するため、圧延油条
件は同じであることが効率的である。しかし、上記した
ように、高光沢など優れた表面品質が要求されるフェラ
イト系ステンレス鋼板と、マルテンサイトが生成して塑
性不安定現象を生じるオーステナイト系ステンレス鋼板
とは、それぞれの圧延油に要求される特性が異なる。し
たがって、これら2種のステンレス鋼板を同じエマルシ
ョン油を使用して圧延する場合、、リバース式圧延機で
600m/分以上の高速で高能率に圧延することができ
ないのが現状でる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、エマ
ルション油を使用した圧延速度が600m/分以上の高
速でのステンレス鋼板の冷間圧延において、被圧延材が
オーステナイト系ステンレス鋼板の場合は、マルテンサ
イト生成による圧延荷重の変動に起因するチャタマー
ク、板破断の発生を防止して圧延を安定化することがで
きる冷間圧延方法を提供するこにある。また、フェライ
ト系、オーステナイト系のいずれのステンレス鋼板をも
同一のエマルション油を用いて冷間圧延する場合、高速
で高能率に圧延することができ、高光沢度、高表面品位
度の鋼板を得ることができる冷間圧延方法を提供するこ
とにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】ステンレス鋼板の冷間圧
延方法に係わる本発明の要旨は以下の通りである。 (1)圧延油として水中油型エマルション油を用いてオ
ーステナイト系ステンレス鋼板を冷間圧延する方法であ
って、油粒子の平均粒径を1〜5μmに、濃度を10体
積%以上に調整した水中油型エマルション油を用いるこ
とを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板の冷間
圧延方法。
【0020】(2)オーステナイト系ステンレス鋼板と
フェライト系ステンレス鋼板とを、同じ圧延油と圧延機
を用いて冷間圧延する方法であって、圧延油として原油
粘度が、40℃で7〜20cStである原油を用いて濃
度が10体積%以上、油粒子の平均粒径が3μm以下、
かつ水中の油粒子群中の粒子径が10μm以上の油粒子
が占める割合が5体積%以下となるように調整した水中
油型エマルション油を用いることを特徴とするオーステ
ナイト系ステンレス鋼板およびフェライト系ステンレス
鋼板の冷間圧延方法。
【0021】なお、水中の油粒子群中の粒子径が10μ
m以上の油粒子が占める割合とは、水中の一定体積中の
油粒子を100とした場合に、粒子径が10μm以上の
油粒子が占める割合である。
【0022】本発明者らは、エマルション油を用いたオ
ーステナイト系ステンレス鋼板の冷間圧延で発生するチ
ャタマークを防止することのできる圧延方法を開発する
ため種々実験をおこない下記のような関係を調べた。
【0023】すなわち、水中油型エマルション油を対象
に、原油粘度とエマルション油の濃度および油粒子の平
均粒径を種々変えて圧延した場合のマルテンサイトの生
成量(磁力式のフェライトスコープで測定)と、チャタ
マークの発生幅(鋼板幅方向の長さ)、圧延荷重、オイ
ルピット面積率、圧延後の鋼板付着油量および摩耗粉
量、さらにロール押込み疵、巻疵などとの関係である。
その結果、次のような知見を得て本発明を完成させた。
【0024】a)エマルション油による冷間圧延中の鋼
板の冷却度は、その供給量を削減すると小さくなる。し
かし、圧延荷重の低減、焼付き疵防止に必要な潤滑性を
維持するためには、供給量の削減には限度がある。
【0025】b)エマルション圧延油の潤滑能は、エマ
ルション油の濃度が高いほど大きいが冷却能は逆に低下
する。したがって、高濃度とするとマルテンサイト発生
量が減少してニート油に近づく。
【0026】c)エマルション油の濃度が10体積%未
満(以下、濃度体積%とする)はでは、総圧下率が50
%を超える圧延では5パス目以降でマルテンサイト発生
量が13%以上となり、圧延荷重の変動が大きくなる。
さらに、チャタマークの幅がエッジから10mm〜全
幅となり、場合によっては板破断が発生する。10%以
上の濃度ではチャタマークの幅は5mm未満となり圧延
の支障とはならない。
【0027】d)鋼板に付着した摩耗粉量および循環使
用の圧延油中の摩耗粉量の測定から、摩耗粉の発生総量
はニート油とエマルション油とでほとんど差がないが、
エマルション油の方が鋼板上に残る量が多くなる。この
ため、ロール押込み疵、巻き疵が発生する。しかし、エ
マルション油の濃度が高くなり、10%以上になると付
着摩耗粉が減少し、バイト内の油量が増して、ニート油
圧延に近くなり、15%以上ではニート油と同等にな
る。
【0028】e)圧延後の鋼板表面のオイルピット面積
は、エマルション油の濃度が高くなると増すが、油粒子
の平均粒径を5μm以下とすると増加しない。特に油粒
子群中の粒子径が10μm以上の油粒子の占める割合を
10体積%未満、平均粒径を5μm以下とするとニート
油並みとなる。
【0029】また、上記結果を高光沢度が要求されるフ
ェライト系ステンレス鋼板の圧延に適用し、オイルピッ
ト面積率、表面光沢度、光沢むら、さらに鋼板付着油
量、摩耗粉量、ロール押込み疵、巻き疵等をニート油圧
延の場合と比較して種々検討した結果、次の知見を得
た。
【0030】f)オーステナイト系ステンレス鋼に比べ
ると、エマルション油をある程度低粘度、低濃度で油粒
子を細粒にしないとニート油圧延並みの高光沢が得られ
ない。
【0031】g)具体的にはエマルション油の濃度が1
0%以上では、平均粒径を3μm以下、油粒子群中の1
0μm以上の油粒子の占める割合を5体積%以下とする
と、オイルピット面積率は5%以下となり、冷間圧延後
の表面光沢度(Gs60゜)を400以上とすることが
できる。
【0032】h)また、エマルション油の油粒子の平均
粒径を3μm以下にすると、エマルションの原油粘度が
40℃で7cSt以上でないと鋼板上の摩耗粉/油分比
が大きく(摩耗粉量が多く)、光沢むらや摩耗粉の押し
込み疵、巻き疵が増加する。
【0033】i)エマルションの原油粘度が20cSt
を超えると、エマルション油の濃度が10%以上では平
均粒径を3μm以下としても、オイルピット面積率は7
〜8%以上となり、冷間圧延後の表面光沢度(Gs60
゜)を400以上とすることができない。
【0034】
【発明の実施の形態】本発明の冷間圧延方法における各
条件についての限定理由を以下に説明する。
【0035】(1)オーステナイト系ステンレス鋼板の
冷間圧延方法 エマルション油の濃度:10%以上 エマルション油の濃度は、冷間圧延時に加工熱により上
昇する鋼板の温度に影響する。冷間圧延中のオーステナ
イト系ステンレス鋼板の温度が60〜80℃以下で加工
誘起マルテンサイトが生成する。エマルション油の濃度
が10%未満では、総圧下率が50%を超えると、5パ
ス目以降でマルテンサイト生成量が13%以上となる。
その場合に1パス17%以上の圧下率で圧延速度300
m/分以上の圧延をおこなうと塑性不安定現象が生じ
て、図2に示したような圧延方向に周期的な剪断変形が
生じる。剪断変形が表面に達した部分は表面の光沢が変
化して、図1に示したようなチャタマークが板幅エッジ
から10mm以上、場合によっては全幅に発生して表面
欠陥となる。さらに、著しい場合には板破断に至る。し
かし、エマルション油の濃度を10%以上に高めると冷
間圧延中に鋼板温度は上昇し、マルテンサイトの発生量
が10%以下となって、チャタマークが板幅エッジから
5mm以下となり、破断には至らなくなり圧延が安定す
る。このような理由でエマルション油の濃度を10%以
上とした。なお、濃度の上限は特に限定しないが経済性
から30%以下とするのが好ましい。濃度が15%以上
になると、ほとんどニート油圧延並みになる。
【0036】図3は、試験により求めたエマルション油
の濃度、平均粒径とチャタマークとの関係を示す図であ
る。この図は、エマルション油の濃度と油粒子の平均粒
径とを種々変えたエマルション油を用いてオーステナイ
ト系ステンレス鋼SUS304の鋼板を冷間圧延した
後、発生したチャタマーク幅(鋼板幅方向の長さ)を測
定した結果を示す。なお、平均粒径が5μm以上の場合
もチャタマーク幅が許容範囲内に入っているが、平均粒
径が5μm以上では、後述するオイルピットの面積率が
大きくなるので好ましくない。
【0037】 油粒子の平均粒径:1〜5μm 上記のようにエマルション油濃度を高くすると鋼板に付
着する油量が増加するので、ロールバイトに導入される
油量が増えて油膜厚が大きくなり、オイルピットの発生
量が増加する。しかし、同一濃度でも油粒子の平均粒径
によりオイルピットの発生量が異なり、平均粒径を5μ
m以下とするとオイルピット発生率は8%以下にするこ
とができ、問題がなくなる。したがって、油粒子の平均
粒径の上限を5μmとした。また平均粒径が1μm未満
となると潤滑不足となり圧延荷重が高くなるため、下限
を1μmとした。より好ましい範囲は1.5〜4μmで
ある。この範囲では10μm以上の粒子の体積比率は3
%未満であり、光沢度はニート油圧延とほぼ同等にな
る。
【0038】また、圧延時に発生した摩耗粉は油粒子の
粒径が小さくなると鋼板表面に多く残り、光沢むら、ロ
ール押込み疵、巻き疵等の表面欠陥の発生原因になる。
しかし、エマルション油の濃度を上記のように10%
以上にすると摩耗粉が減少し、油量が増すためこれらの
表面欠陥は減少し、ニート油圧延に近くなり、15%以
上ではニート油と同等になる。
【0039】図5は、エマルション油の油粒子の粒径分
布の例を示し、図3(a)は平均粒径が5μm以下であ
るが、油粒子全体において10μm以上の粒径の粒子が
占める割合が10体積%を超える例、同(b)は平均粒
径が5μm以下であるが、油粒子全体において10μm
以上の粒径の粒子が占める割合が10体積%以下の例、
同(c)は平均粒径が3μm以下であるが、油粒子全体
において10μm以上の粒径の粒子が占める割合が5体
積%以下の例をそれぞれ示す図である。
【0040】なお、大粒径からの積算体積比率が50%
の粒径を平均粒径としている。また、油粒子の分布は電
気抵抗測定方式のコールターカウンタあるいはレーザ散
乱光測定方式等から求めることができる。
【0041】図4は、試験により求めたエマルション油
の濃度、油粒子の平均粒径とオイルピットの面積率との
関係を示す図である。この試験は、図3に示した関係を
求めた冷延鋼板の表面に発生したオイルピットの面積率
とエマルション油の濃度との関係を示す図である。油粒
子の平均粒径が5μm以上になると、オイルピットの面
積率が8%を超えているこたが明らかである。
【0042】(2)オーステナイト系ステンレス鋼板お
よびフェライト系ステンレス鋼板の冷間圧延方法 この方法は、光沢性が要求されるフェライト系ステンレ
ス鋼板をオーステナイト系ステンレス鋼板の圧延と同一
の圧延機、かつ同一の圧延油条件で圧延可能とする冷間
圧延方法である。
【0043】フェライト系ステンレス鋼板の高光沢を得
るには、圧延後の鋼板表面のオイルピット面積率を5%
以下とする必要がある。フェライト系ステンレス鋼はオ
ーステナイト系よりは加工硬化度が小さく、軟質である
ため圧延時の油膜厚はオーステナイト系と同程度でもオ
イルピットが生成し易い。そこで、さらにに油膜厚を小
さくする必要がある。そのためには、オーステナイト系
に比べある程度エマルション油を低粘度、低濃度とし、
油粒子を細粒にする必要がある。具体的にはエマルショ
ン油の濃度が10%以上では平均粒径を3μm以下、か
つ油粒子群中の10μm以上の油粒子の占める割合を5
体積%以下とするとオイルピット面積率は5%以下とな
り、冷間圧延後の表面光沢度(Gs60゜)を400以
上とすることができる。
【0044】また、エマルション油の平均粒径を3μm
以下とすると、エマルション油の原油粘度が40℃で7
cSt以上でないと鋼板上の摩耗粉/油分比が大きく
(摩耗粉量が多く)、光沢むらや摩耗粉の押し込み疵、
巻き疵が増す。さらに、エマルションの原油粘度が20
cStを超えると、濃度が10%以上では平均粒径を3
μm以下としてもオイルピット面積率は7〜8%以上と
なり、冷間圧延後の表面光沢度(Gs60゜)を400
以上とすることができない。油粒子の平均粒径のより好
ましい範囲は1.5〜2.5μmであり、この範囲では
10μm以上の粒子の体積比率は2%未満である。ま
た、原油粘度が低粘度ほど油粒子の粒径を小さくし易い
ため、より好ましい粘度範囲は40℃で7cSt〜15
cStである。より好ましい範囲では、摩耗粉を起因と
した光沢むら、ロール疵等の表面欠陥はほとんどなくな
り、かつ光沢度はニート油圧延と同等になる。したがっ
て、エマルション油の原油粘度を7cSt以上20cS
t以下、濃度を10%以上、かつ平均粒径を3μm以下
かつ10μm以上の粒子比率を5体積%以下とした。
【0045】図6は、エマルション油の原油粘度、油粒
子の粒径と圧延後の光沢度との関係を示す図である。こ
の図は、粘度が種々異なる原油を用い、平均粒径を種々
変化させると共に、濃度を10〜15%に調整したエマ
ルション油を圧延油としてフェライト系ステンレス鋼S
US304の鋼板を冷間圧延し、光沢度を調べた結果を
示したものである。粘度が、40℃で7〜20cStの
原油では、油粒子の粒径が3μmを超えると光沢度が4
00に満たないことが明らかである。なお、図6に示さ
れているように、場合よっては粒径が3〜4未満の場合
も光沢度が許容範囲に入ることもあるが、光沢度が40
0に満たない場合がほとんどであるので粒径を3μm以
下とした。
【0046】図7は、油粒子群中の粒径が10μm以上
の油粒子の占める割合の鋼板表面性状に及ぼす影響を示
す図である。
【0047】この図は、エマルション油の原油粘度が、
40℃で7〜20cStである原油を用いて濃度を10
%〜15にして、油粒子の平均粒径を種々変え、かつ粒
径が10μm以上の油粒子の占める割合を変化させてフ
ェライト系ステンレス鋼SUS304の鋼板を圧延し、
圧延後の鋼板表性状を調べた結果を示す。粒径が10μ
m以上の油粒子が5%を超える量では、光沢度や表面欠
陥が良くないことを示している。なお、図中の表面欠陥
程度は、光沢むら、摩耗粉の押し込み疵および巻き疵の
各表面欠陥のうち最もわるい欠陥についての評価を示
す。次に、本発明の原油粘度、油粒子の粒径分布を持つ
エマルション油の調整について以下に説明する。
【0048】エマルション油の原油粘度を本発明で規定
する範囲とするためには、40℃で、7〜15cSt低
粘度の鉱油、合成炭化水素および比較的粘度や融点の低
い合成エステルを使用することが好ましい。合成エステ
ルとしては、例えばラウリル酸、パルミチン酸等炭素数
が10〜18の何れかの脂肪酸と炭素数が1〜18の何
れかのアルコールとのモノエステル等をあげることがで
きる。また、前述の脂肪酸とトリメチロールプロパン等
の多価アルコールとのモノエステル、または/およびジ
エステル、トリエステル等で、さらにアジピン酸等の二
塩基酸と前述のアルコールとのジエステルなどがあげら
れる。
【0049】上記合成エステルの配合量は、エマルショ
ン油原油全体としての鹸化価で50〜120mgKOH
/gの範囲になるようにすることが好ましい。50mg
KOH/g未満では潤滑不足となり焼付疵が発生し易く
なる。また、120mgKOH/gを超えると摩耗粉へ
の吸着、反応が進みスカムが粘凋となり、光沢むらが発
生し易くなる。同様に上記合成エステルの酸価が大きい
と摩耗粉への吸着、反応が進むため、エマルション油原
油全体としての酸価は5mgKOH/g以下にすること
が好ましい。
【0050】エマルション油の平均粒径を5μm以下と
するには、乳化剤の量を増量することで容易に粒径が調
整できる。特に、乳化剤の種類をノニオン系、カチオン
系、アニオン系等と限定するものではない。また、10
μm以上の粒径比率を5体積%以下とする場合も使用す
る乳化剤のHLBを8〜14程度のものなどを使用すれ
ば容易に調整できる。ただし、乳化剤は粘度が30cS
t以上の高粘度となるものがあり、この場合は多量に使
用すると圧延油の全体粘度が高くなるため、エマルショ
ン油の原油粘度が上限の20cSt未満となる範囲であ
れば、乳化剤の種類および量は限定されない。
【0051】エマルション油の原油中には上記合成エス
テルの他にアルコール類等の濡れ性改善剤、極圧添加
剤、防錆剤、酸価防止剤等の添加剤を適宜使用してもよ
い。
【0052】本発明の冷間圧延方法は、特に600m/
分以上の高速度で冷間圧延するリバース式圧延機で圧延
する際に特に有効である。
【0053】
【実施例】実施例により、本発明の効果について説明す
る。
【0054】直径が100mm、表面粗さがRa0.1
3μm、材質がSKD11のワークロールと直径が35
0mmのバックアップロールを備えた4Hiリバース式
圧延機により、表1に示す2種の被圧延材に、表2およ
び表3に示す圧延条件で7パスおよび9パスの圧延を施
した。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】圧延油は表4、5に示す組成、性状のもの
を用いた。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】また、表6〜9に圧延条件と圧延油の組み
合わせを示す。
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9】
【0066】SUS304の圧延については5パス目圧
延後の鋼板について、フェライトメーターによるマルテ
ンサイト量、チャタマークのエッジからの発生幅を測定
した。また、5パス圧延時の定常圧延部とコイル先後端
の圧延荷重変化量を測定した。さらに、最終パス圧延後
の鋼板表面について、光学顕微鏡画像の画像解析による
オイルピット面積率の測定、および目視観察による光沢
むら、焼付発生の程度、巻き疵、押込み疵を評価し、表
6〜9中に下記する記号で表示した。
【0067】SUS430の圧延については、最終パス
圧延後の鋼板表面の光学顕微鏡画像の画像解析によるオ
イルピット面積率、および鏡面光沢度(JISに規定す
るGs60゜で測定)、さらに目視判定による光沢む
ら、焼付発生の程度、巻き疵、押込み疵を目視観察によ
り評価し、SUS304の圧延と同様に記号で表示し
た。
【0068】 (圧延荷重変化) ○:10%未満の増加 □:15%未満の増加(許容範囲内) ▲:20%以上増加 (光沢むら) ○:確認できない □:僅かであり品質上問題ない ▲:顕著で品質不適 (焼付発生の程度) ○:発生無し □:軽微な発生(許容範囲内) ▲:著しい発生(不良) (巻き疵発生の程度) ○:発生無し □:軽微な発生(許容範囲内) ▲:著しい発生(不良) (押し込み疵発生の程度) ○:発生無し □:軽微な発生(許容範囲内) ▲:著しい発生(不良) 塑性不安定現象によるチャタマークが発生するオーステ
ナイト系ステンレス鋼板の場合の本発明の実施例では、
マルテンサイト量が10%未満となり、チャタマークの
エッジからの発生幅は5mm以下で、5パス圧延時の定
常圧延部とコイル先後端の圧延荷重変化量は15%未満
と安定している。さらに、最終パス圧延後の鋼板表面の
オイルピット面積率は8%以下で光沢むら、焼付疵、巻
き疵、押し込み疵はないか軽微である。また、本発明の
より好ましい範囲では、マルテンサイト量がさらに、減
少し、圧延荷重変化量が軽減し、かつ光沢むら、焼付
疵、巻き疵、押し込み疵は発生しなくなる。
【0069】また、高光沢度が要求されるフェライト系
ステンレス鋼板の圧延の場合には、いずれもオイルピッ
ト面積率は5%以下で、光沢度(Gs60゜)は400以上の
光沢度が得られ、かつ高速圧延を行っても焼付疵、巻き
疵、押し込み疵、光沢むらの発生がないか軽微である。
また、本発明のより好ましい範囲では、光沢度が440
以上となり、かつ光沢むら、焼付疵、巻き疵、押し込み
疵は発生しなくなる。
【0070】なお、表8および表9に示すフェライト系
ステンレス鋼板の圧延の実施例14から23は、表6お
よび表7に示すオーステナイト系ステンレス鋼板の圧延
の実施例3から13と同じ圧延油条件であり、これらの
実施例から、オーステナイト系、フェライト系のステン
レス鋼板のいずれを圧延しても要求される性能が得られ
ることが示されている。
【0071】
【発明の効果】エマルション油を使用するステンレス鋼
板の冷間圧延機において、オーステナイト系ステンレス
鋼に発生するチャタマークの発生を抑制し、圧延の安定
性および表面品質を損なうことなく600m/分以上の
高速圧延を可能にし、さらに、フェライト系ステンレス
鋼板においてても、ニート油圧延で得られるGs60゜
で400以上の高光沢を可能にし、かつ、フェライト
系、オーステナイト系のいずれのステンレス鋼板におい
ても焼付き疵、巻き疵、押込み疵等の発生を抑制でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】SUS304冷圧鋼板に発生した縞模様のチャ
タマークの図である。
【図2】チャタマーク発生部の圧延方向断面をミクロ腐
食した状態そ示す図である。
【図3】エマルション油の濃度および平均粒径とチャタ
マークの関係を示す図である。
【図4】エマルション油の濃度および平均粒径とオイル
ピット面積率との関係を示す図である。
【図5】エマルション油の油粒子の分布の例を示す図で
ある。
【図6】エマルション油の原油の粘度、平均粒径と圧延
材の光沢度の関係を示す図である。
【図7】濃度10%以上での油粒子の粒径分布と光沢度
および光沢むら、摩耗粉の押し込み疵、巻き疵等の表面
欠陥の発生有無との関係を示す図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C10N 20:06 40:24

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】圧延油として水中油型エマルション油を用
    いてオーステナイト系ステンレス鋼板を冷間圧延する方
    法であって、油粒子の平均粒径を1〜5μmに、濃度を
    10体積%以上に調整した水中油型エマルション油を用
    いることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼板
    の冷間圧延方法。
  2. 【請求項2】オーステナイト系ステンレス鋼板とフェラ
    イト系ステンレス鋼板とを、同じ圧延油と圧延機を用い
    て冷間圧延する方法であって、圧延油として原油粘度
    が、40℃で7〜20cStである原油を用いて濃度が
    10体積%以上、油粒子の平均粒径が3μm以下、かつ
    水中の油粒子群中の粒子径が10μm以上の油粒子が占
    める割合が5体積%以下となるように調整した水中油型
    エマルション油を用いることを特徴とするオーステナイ
    ト系ステンレス鋼板およびフェライト系ステンレス鋼板
    の冷間圧延方法。
JP3494598A 1998-02-17 1998-02-17 ステンレス鋼板の冷間圧延方法 Pending JPH11226607A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3494598A JPH11226607A (ja) 1998-02-17 1998-02-17 ステンレス鋼板の冷間圧延方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP3494598A JPH11226607A (ja) 1998-02-17 1998-02-17 ステンレス鋼板の冷間圧延方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH11226607A true JPH11226607A (ja) 1999-08-24

Family

ID=12428318

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP3494598A Pending JPH11226607A (ja) 1998-02-17 1998-02-17 ステンレス鋼板の冷間圧延方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH11226607A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102228903A (zh) * 2011-04-28 2011-11-02 天津市恒兴钢业有限公司 2.75->0.165*1000mm冷轧薄板的生产方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102228903A (zh) * 2011-04-28 2011-11-02 天津市恒兴钢业有限公司 2.75->0.165*1000mm冷轧薄板的生产方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5583100A (en) Oil compositions for hot rolling aluminum and aluminum alloys
JP2990021B2 (ja) アルミニウム用熱間圧延油および該圧延油を使用するアルミニウムの熱間圧延方法
JP4463632B2 (ja) アルミニウム及びアルミニウム合金板用熱間圧延油
JPH11226607A (ja) ステンレス鋼板の冷間圧延方法
JP2899224B2 (ja) アルミニウム用熱間圧延油および該圧延油を使用するアルミニウムの熱間圧延方法
JP3129228B2 (ja) ステンレス鋼板の冷間圧延方法
JP4830888B2 (ja) 金属板の冷間圧延方法および冷間タンデム圧延機
JP3090032B2 (ja) ステンレス鋼帯の冷間圧延方法
JP2008194721A (ja) 金属板の冷間圧延方法
JP2885011B2 (ja) 熱間圧延加工用潤滑剤組成物
JP3557899B2 (ja) ステンレス鋼板の冷間圧延方法
JP3785769B2 (ja) ステンレス鋼板の冷間圧延方法
JPH07228880A (ja) 冷間圧延潤滑剤
JP3370879B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法及び装置
JP3370873B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JP2008200689A (ja) アルミニウム板またはアルミニウム合金板の圧延方法
JP3370872B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JP3317234B2 (ja) オーステナイト系ステンレス熱延鋼板の冷間圧延方法
JPH0222117B2 (ja)
JP2898824B2 (ja) 高光沢度金属板の製造方法
JPH1071404A (ja) 光沢の良好なばね用ステンレス鋼帯の製造方法
JP3370878B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JP3937061B2 (ja) 冷間圧延油
JP3370874B2 (ja) アルミニウム又はアルミニウム合金板の圧延方法
JP2688172B2 (ja) 冷間圧延潤滑剤