上記のとおり、特許文献2に記載されている収納式多目的シートによれば、壁側の手すりを、収納状態ではシート本体と近接して並設させることにより、シート本体を壁に近づけてコンパクトに収納することができるようになっている。一方で、使用状態では手すりの先端をシート本体の中央側へ傾斜させることにより、壁面と手すりとの間に十分な距離が生じるため、手すりの握り代としての空間を十分に確保できたためコンパクトな収納空間を得る為に手すりの使い勝手が犠牲にされてしまうという問題を確実に解決できたものである。
ところで、収納式多目的シートは体の不自由な方が使用するため、手すりには健常者では想定し難い力が加えられる場合がある。上記特許文献2に記載されている収納式多目的シートの場合、シート本体に使用者が着座した状態で第1の手すりに力を加える場合には何等問題が発生しないが、特にシート本体に使用者が着座しない状態で第1の手すりに力を加えるとその力を加えることに応じてシート本体とともに手すりが収納状態側となる壁側に揺動してしまうことがあることを本発明者らは見出した。より具体的には、使用者が第1の手すりにもたれるように体重を手すりにかけた場合であって、その力を加える方向が壁面に向う方向の場合、シート本体が収納側へ揺動してしまうのと連動して壁側の手すりも壁側の方向に若干量揺動することがあった。使用者が離座している場合は特に顕著で、このようにシート本体が収納側へ揺動してしまうと、使用者は手すりを使ってのシート本体への移乗やシート本体からの離座動作の面で気を使うことになり、使い勝手の面で改良が望まれていたものである。
本発明はこの新たなる課題に対応すべく、体の不自由な方が使用される収納式多目的シートにおいて、シート本体に使用者が手すりに大きな力を加えた場合であっても、その力を加えたことに応じてシート本体の揺動と連動して手すりが揺動することのない収納式多目的シートを提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明に係る収納式多目的シートは、矩形のシート本体を備え、前記シート本体は、建物の構造体に設置されたシート支持体に対して前記シート本体の第1の辺と平行に設けられた第1の回転軸周りに揺動可能に軸支され、収納状態では前記シート本体が壁面に対面するように略垂直状態で収納され、使用状態では前記シート本体が略水平となるように支持された収納式多目的シートであって、前記シート本体の前記第1の辺側に設けられた手すりと、前記手すりの動きを規制する規制手段と、を備え、前記手すりは、前記シート本体若しくは前記シート支持体に対して第2の回転軸周りに揺動可能に軸支され、前記シート本体の収納状態では前記壁面と前記シート本体との間でそれらと並立する一方で、前記シート本体の使用状態では前記手すりの上端が前記シート本体の中央側へ傾斜するように構成され、前記規制手段は、前記シート本体側に第3の回転軸を中心として揺動可能なように設けられており、前記シート本体の揺動に伴って前記手すりの前記第2の回転軸よりも下方に設けられた当接面に当接し、その当接によって少なくとも前記シート本体の使用状態においては、前記手すりから前記規制手段に作用する力の作用線が前記第3の回転軸若しくは前記第3の回転軸よりも上方に向かうことで前記シート本体から離れる方向へ力が作用するように構成され、前記手すりに入力された操作力によって前記シート本体が前記収納状態方向に揺動させられることがないように構成されており、更に、前記手すり側及び前記シート本体側の少なくとも一方に、前記手すりと前記規制手段とが当接する当接領域及び前記シート支持体と前記規制手段との間に生じる隙間領域の少なくとも一方を隠蔽する隠蔽手段を設けたことを特徴とする。
本発明に係る収納式多目的シートでは、シート本体の壁面側に取り付けられている手すりを、収納状態ではシート本体と近接させた状態で並設収納することにより、収納時にシート本体を壁面に近づけて、コンパクトに収納することができるようになっている。一方、使用状態では手すりの上端をシート本体の中央側へ傾斜させることにより、壁面との手すりとの距離が生じ、手すりの握り代を十分に確保することができるように構成されている。更に本発明に係る収納式多目的シートでは、シート本体の使用状態においては手すりに対する操作に対してシート本体が揺動することが規制されるように構成されているので、体の不自由な使用者が離座時若しくは着座時に手すりにもたれかかるようにして体重を手すりにかけた場合であっても、その手すりに対して加えられた力によってシート本体を持ち上がらないように揺動を抑制することが可能となり、手すりも揺動されてしまうことが確実に防止できるため、非常に使い勝手のよい可動式の手すりを提供することができる。更に本発明に係る収納式多目的シートでは、手すり側及びシート本体側の少なくとも一方に、手すりと規制手段とが当接する当接領域及びシート支持体と規制手段との間に生じる隙間領域の少なくとも一方を隠蔽する隠蔽手段を設けているので、当接領域や隙間領域といった規制手段周りの領域に手を挟まれるようなことがなく、規制手段周りの安全性を高めることができる。このような本発明の構成を採用することで、収納式多目的シートの省スペース性と手すりの操作性とを両立させることができると共に、安全性も向上させることができる。
本願請求項2に係る収納式多目的シートでは、前記手すりは、前記第2の回転軸よりも下方に延伸する延長部を有し、前記規制手段が前記延長部に当接するように構成されており、前記隠蔽手段は、前記規制手段と前記延長部とが当接する当接領域を隠蔽するように設けられていることを特徴とする。
この態様によれば、手すりは第2の回転軸よりも下方に延伸する延長部を有しており、規制手段がその延長部に当接することで、手すりの動きを確実に規制している。更に、そのように規制手段と延長部とが当接する当接領域を隠蔽するように隠蔽手段を設けているので、手すりと延長部とが非接触な状態から少なくともシート本体の使用状態において接触する状態へと遷移する場合であっても、その当接領域を隠蔽することで安全性をより向上させることができる。
本願請求項3に係る収納式多目的シートでは、前記隠蔽手段は、前記手すりを支持する側の前記シート支持体の側部において前記シート支持体と重なるように設けられていることを特徴とする。
この態様によれば、手すりを支持する側のシート支持体の側部においてシート支持体と重なるように隠蔽手段を設けているので、シート本体側から手すり側へと延伸させた隠蔽手段を、手すり側のシート支持体の側部において重ねることで、簡単な構成で確実に当接領域に近づく手を払いのけることが可能となり、安全性がより向上する。
本願請求項4に係る収納式多目的シートでは、前記隠蔽手段に、前記手すりの揺動範囲を規制する規制部が一体的に形成されていることを特徴とする。
この態様によれば、隠蔽手段に手すりの揺動範囲を規制する規制部を一体的に形成することで、当接領域の隠蔽と手すりの揺動範囲の規制とを簡単な構成で両立することができる。
本願請求項5に係る収納式多目的シートでは、前記隠蔽手段に、前記手すりとの当接力を緩和する荷重緩和部材を設けたことを特徴とする。
この態様によれば、隠蔽手段に手すりとの当接力を緩和する荷重緩和部材と設けているので、当接領域の隠蔽と当接力の緩和とを簡単な構成で両立することができる。
本願請求項6に係る収納式多目的シートでは、前記隠蔽手段は、前記手すりの前記延長部と前記規制手段とが当接する当接領域を隠蔽するものであって、前記シート本体側に設けられていることを特徴とする。
この態様によれば、隠蔽手段をシート本体側に設けているので、シート本体側から手すり側へと隠蔽手段を延伸させて当接領域を隠蔽することができるので、当接領域に近づく手を確実に払いのけることが可能となり、安全性がより向上する。
本願請求項7に係る収納式多目的シートでは、前記隠蔽手段及び前記規制手段は、前記シート本体を支持する側の前記シート支持体の側部において前記シート支持体の当該部と重なるように設けられており、前記隠蔽手段に形成された揺動穴に前記第1の回転軸を中心として回転する揺動ピンが貫通し、前記シート本体が収納状態から使用状態へと揺動する過程において、前記規制手段が前記手すりへ向けて揺動した後に、前記揺動ピンが前記揺動穴の端部に到達することで前記隠蔽手段も同方向へ揺動を開始し、前記隠蔽手段が前記規制手段と前記シート支持体との間に生じる隙間領域を隠蔽することを特徴とする。
この態様によれば、シート本体が収納状態から使用状態へと揺動する過程において、規制手段が手すりへ向けて揺動した後に隠蔽手段も同方向へ揺動を開始することで、隠蔽手段が規制手段とシート支持体との間に生じる隙間領域を隠蔽するので、シート本体が使用状態にある場合において、規制手段とシート支持体との間に生じする隙間領域を隠蔽手段によって隠蔽することができる。従って、シート本体が使用状態から収納状態へと戻る場合には隙間領域が隠蔽手段によって隠蔽されているので、規制手段がシート支持体の側部と重なる位置へと戻る過程においても手を挟むような事態を確実に回避することができる。更に、隠蔽手段及び規制手段は、シート本体を支持する側のシート支持体の側部において、シート支持体のその部分と重なるように設けられているので、シート支持体から隠蔽手段及び規制手段が突出しないように構成することができる。
本願請求項8に係る収納式多目的シートでは、前記規制手段は、前記シート本体が収納状態から使用状態へと揺動を開始した後に前記揺動穴の端部に前記揺動ピンが到達することによって、前記シート本体の揺動動作に遅れて揺動を開始することを特徴とする。
この態様によれば、規制手段はシート本体の揺動動作に遅れて揺動を開始し、手すりの動きを規制するので、その揺動範囲を必要最小限なものとすることができ、より一層コンパクトな構成とすることができる。
本発明によれば、シート本体に使用者が手すりに大きな力を加えた場合であっても、その力を加えたことに応じてシート本体の揺動と連動して手すりが揺動することのない収納式多目的シートを提供することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本実施形態に係る収納式多目的シートは、身障者用トイレブース、多目的トイレブース又は介護施設の脱衣所等に設置される収納式多目的シートであり、特に車椅子使用者の利用を意図したものである。この収納的多目的シートを図1及び図2に示す。収納式多目的シート10は、図1及び図2に示されるように、略矩形形状のシート本体11と、シート本体11を支持するシート支持体としての取付ベース12及び支持部21とを備える。図1は本実施形態に係る収納式多目的シート10を示す斜視図であって、(a)はシート本体11が使用位置にある状態を示し、(b)はシート本体11が収納位置にある状態を示している。図2は本実施形態に係る収納式多目的シート10を示す側面図であって、シート本体11は、収納位置にある。
図1に示すように、取付ベース12及び支持部21は、水平方向の回転軸13(第1の回転軸)周りにシート本体11を揺動自在に支持している。シート本体11は、回転軸13に平行な長手方向に伸び且つ回転軸13に垂直な短手方向で互いに対向する第1側部11a及び第2側部11bを有している。第1側部11aは、シート本体11の第1の辺側に位置して揺動支点側となり、取付ベース12に対して、回転軸13周りに揺動自在に軸支されている。第2側部11bは、シート本体11の第2の辺側に位置して自由端側となっている。
収納式多目的シート10は、通常、壁面Wに沿って設置される。つまり、取付ベース12を壁面Wに沿って設置し、収納時の収納位置で、シート本体11の戴置面11cが壁面Wに近接し且つ対面するように設置される。
シート本体11の背面11dには脚14が設けられている。そして、使用時の使用位置では、脚14の先端が床面に接地してシート本体11を支え、収納位置のときは、シート本体11と同様に、脚14はシート本体11と並設される状態で収納されるようシート本体11側の基端を中心に揺動するように構成されている。
シート本体11の第1側部11aには、第1側部11aに沿うように手すり15が設けられている。手すり15は、シート本体11の回転軸13とは異なる軸線上に配置されている回転軸16(第2の回転軸)の周りに揺動自在に軸支されている。
図2に示すように、取付ベース12の上に設けられた支持部21に対して、回転軸13を介してシート本体11が軸支されている。支持部21には、回転軸16を介して、手すり15を支えるブラケット22(延長部)も軸支されている。
シート本体11の背面11dの本体支持フレーム23には、脚14の基端側が軸支されている。脚14は、実質的に4リンク機構として形成されている脚作動用リンクによって、シート本体11の揺動動作に連動して揺動する。
ここで、図2に示すように、取付ベース12を壁面Wに密着または隣接するようにして設置したとする。手すり15に着目すると、図2に示す収納位置では、手すり15は壁面Wとシート本体11との間に収納される。手すり15は、シート本体11と実質的に平行になっている。これにより、シート本体11と壁面Wとの間の距離を小さくしても、壁面Wにあたらないように手すり15を格納することができる。手すり15は、ブラケット22を介して回転軸16周りに揺動自在に取り付けられている。シート本体11の揺動動作に連動して、手すり15も揺動するように構成されている。
ここで、シート本体11の揺動操作に対して、手すり15が回転軸16周りに揺動する状況について、図3,図4,図5,図6を参照しながら説明する。図3,図4,図5,図6は、手すり及びシート本体の回転軸近傍を示す図であって、シート本体11が揺動した状態を違えて4段階に示す図である。
図3に示す状態は、シート本体11が収納状態にある場合を示している。図3に示すように、手すり15はブラケット22に取り付けられており、ブラケット22は支持部21に対して回転軸16を中心に揺動可能なように軸支されている。また、シート本体11は、支持部21に対して回転軸13を中心に揺動可能なように軸支されている。また、回転軸13とシート本体11の背面11dとの間には、規制手段としての揺動部材30が設けられている。揺動部材30は支持部21に対して回転軸35を中心に揺動可能なように軸支されている。従って、シート本体11と、手すり15及びブラケット22と、揺動部材30とは全て支持部21に取り付けられている。
手すり15とブラケット22とが接続される部分において回転軸16が設けられており、手すり15とブラケット22とは互いに所定の角度を成して接続された状態を維持したまま、一体化された手すりとして回転軸16周りに揺動するように構成されている。図3に示す状態では、ブラケット22の回転軸16とは反対側の端部に設けられたストッパー221が、支持部21の回転軸16から下方に延びる領域に設けられたブラケット収納部211の前壁211aに裏側から当接しており、ブラケット22は回転軸16周りにそれ以上前方には揺動しないように構成されている。尚、ブラケット収納部211において、前壁211aと対向するように後壁211bが設けられている。この後壁211bによってブラケット22は回転軸16周りにそれ以上後方には揺動しないように構成されている。図7に示すように、ブラケット収納部211には、その前壁211aと後壁211bとを繋ぐカバー壁211cが形成されており、ブラケット22と揺動部材30とが当接する当接領域を隠蔽するように構成されている。従って、ブラケット収納部211は、本発明における隠蔽手段として機能しており、また、規制部としても機能している。
図3に戻って説明を続ける。手すり15はブラケット22と接続されているため、ブラケット22のストッパー221がブラケット収納部211の前壁211aに当接している状態では、回転軸16周りにそれ以上後方には揺動しないように構成されている。手すり15は、図3中における上下方向の下端側を回転軸16によって軸支されているので、図3中における上端側の自重によって前方側、すなわちシート本体11側に倒れるように構成されている。そのため、手すり15は、図3に示す状態においては、シート本体11に当接しており、シート本体11に寄りかかる形でその位置を保持している。また、ブラケット22は、ブラケット収納部211の前壁211aと後壁211bとのいずれかに当接することでその揺動範囲が規制されている。
揺動部材30は、上述したように回転軸35を中心に揺動可能なように、支持部21に対して軸支されている。図3に示すように、シート本体11が直立した状態では、揺動部材30はシート本体11とは接触せずに、自重によって略直立した状態を保っている。揺動部材30は、回転軸35を中心として、シート当接部301を上方に、手すり当接部302を下方にして配置されている。シート本体11が直立し、揺動部材30も直立している図3の状態では、揺動部材30の手すり当接部302は、シート本体11の下端よりも内側に入っており、シート本体11の外側には突出していない状態である。
また、揺動部材30の揺動中心である回転軸35は、シート本体11の背面11dとシート本体11の回転軸13との間に配置されている。回転軸35からみて回転軸13側における揺動部材30の形態は、揺動部材30が回転軸35周りに揺動した場合であっても、所定の範囲内の揺動であれば回転軸13とは干渉しないような輪郭を成すような形態となっている。一方、回転軸35からみてシート本体11の背面11d側における揺動部材30の形態は、シート当接部301から手すり当接部302にかけて略直線状の輪郭を成すような形態となっており、図3の状態では背面11dとは所定の距離をおいて離隔するように配置されている。このような揺動部材30の形態と回転軸13よりも上方に回転軸35が配置されていることにより、揺動部材30は後述するような挙動を示すものである。
図3に示す状態からシート本体11が徐々に使用状態に向けて揺動し始めると、図4に示すようにやがてシート本体11の背面11dが揺動部材30に接触する。上述したように、揺動部材30は、回転軸35を中心として、シート当接部301を上方に、手すり当接部302を下方にして配置されている。この状態でシート本体11が使用状態に向けて揺動し始めると、シート本体11の背面11dが揺動部材30のシート当接部301に当接し、その後は、シート本体11の揺動に連動して揺動部材30は、回転軸35を中心として揺動する。なお、図3から図4に至る過程において、手すり15はその自重によって回転軸16を中心に回転してストッパー221が後壁211bに当接する状態となる。
図4に示す状態からシート本体11が更に使用状態に向けて揺動すると、図5に示すように、揺動部材30のシート当接部301がシート本体11の背面11dによって押し込まれ、揺動部材30は回転軸35周りに揺動する。図5に示す状態(略45度程度)までシート本体11が揺動し、その揺動に伴って揺動部材30も揺動すると、揺動部材30の手すり当接部302がシート本体11の外側に突出する。
図5に示す状態からシート本体11が更に揺動し、使用状態に位置した様子を示すのが図6である。図6に示すように、シート本体11が使用状態に位置するまで揺動すると、揺動部材30は回転軸35周りに更に揺動し、その手すり当接部302がブラケット22に形成されている当接面222に当接する。なお、当接面222はブラケット収納部211によって隠蔽された位置にあり、手すり当接部302との当接によって手などが挟まれることがない。ブラケット22は手すり15と一体的な挙動を示すように一体的に接続されているので、手すり15を壁面W側に押し込もうとすると、ブラケット22には前方にせり出そうとする力が作用する。しかしながら、ブラケット22の当接面222には、揺動部材30の手すり当接部302が当接している。ブラケット22の当接面222から手すり当接部302を介して揺動部材30に作用する力の作用線は、揺動部材30の回転軸35の軸心に向かうか、それよりも上方に向かうように構成されている。従って、揺動部材30には回転力が働かないか、回転軸35を中心として向かって反時計回り方向の回転力が働くことになる。揺動部材30に、回転軸35を中心とした反時計回り方向の回転力が働くと、揺動部材30のシート当接部301側がシート本体11の回転軸13に向けて押し下げられ、シート本体11から離れる方向への力が働くので、シート本体11を持ち上げようとする力は働かないようになっている。このような構成により、手すり15から入力される操作力によっては、確実にシート本体11が揺動しないように構成することができるため、手すり15の操作によってシート本体11が揺動してしまうことを確実に防止できる。
本実施形態の場合、シート本体11と揺動部材30とが当接する部分において、シート本体11には荷重緩和部材としての弾性部材11eを、揺動部材30には荷重緩和部材としての弾性部材30aを、それぞれ設けている。弾性部材30aは、揺動部材30のシート当接部301に設けられている。このように弾性部材11e及び弾性部材30aを設けることで、シート本体11の保護を図ることができる。本実施形態では、シート本体11及び揺動部材30の双方に荷重緩和部材を設けたけれども、いずれか一方にのみ荷重緩和部材を設けることも好ましい。
更に本実施形態では、揺動部材30と回転軸13とが当接する部分において、揺動部材30には荷重緩和部材としての弾性部材30bを、回転軸13には荷重緩和部材としての弾性部材13aを、それぞれ設けている。本実施形態では、揺動部材30及び回転軸13の双方に荷重緩和部材を設けたけれども、いずれか一方にのみ荷重緩和部材を設けることも好ましい。
更に本実施形態では、手すり15と一体的に設けられたブラケット22と揺動部材30とが当接する部分において、ブラケット22には荷重緩和部材としての弾性部材22aを、揺動部材30には荷重緩和部材としての弾性部材30cを、それぞれ設けている。弾性部材30cは、揺動部材30の手すり当接部302に設けられている。このように弾性部材22a及び弾性部材30cを設けることで、万が一、揺動部材30とブラケット22との間に手を挟んでしまったとしてもその衝撃を緩和することができる。本実施形態では、ブラケット22及び揺動部材30の双方に荷重緩和部材を設けたけれども、いずれか一方にのみ荷重緩和部材を設けることも好ましい。
更に本実施形態では、手すり15と一体的に設けられたブラケット22と支持部21と一体的に設けられたブラケット収納部211とが当接する部分において、ブラケット22には荷重緩和部材としての弾性部材22bを、ブラケット収納部211には荷重緩和部材としての弾性部材21aを、それぞれ設けている。本実施形態では、ブラケット22及びブラケット収納部211の双方に荷重緩和部材を設けたけれども、いずれか一方にのみ荷重緩和部材を設けることも好ましい。
尚、本実施形態で用いる荷重緩和部材としての弾性部材11e,13a,21a,22a,22b,30a,30b,30cとしては、それぞれが設けられた部材相互の当接力を緩和することが可能であれば、その材料等は特に限定されるものではなく、ゴムや樹脂といった材料が適宜用いられる。
上述した本実施形態では、揺動部材30がシート本体11から出没可能なように構成し、揺動部材30がシート本体11から出没する長さは、シート本体11が使用状態(図6の状態)に近づくほど水平方向において少なくなるように構成している。従って、揺動部材30の手すり当接部302がブラケット22の当接面222に近づくほど、その速度が低下するように構成することが可能であり、手すり当接部302が当接面222に当接する衝撃を緩和することができる。
上述した本実施形態では、揺動部材30とブラケット22とが当接する当接領域を隠蔽するための隠蔽手段の一例として、後壁211bを有するブラケット収納部211を例示したが、当接領域を隠蔽する隠蔽手段の実施形態はこれに限られない。例えば、図8に示すように、シート本体11から支持部21側へと延出するカバープレート38を設けることも、好ましい隠蔽手段の一態様である。このようにカバープレート38を設けることで、揺動部材30を側方に露出させないように構成することが可能となり、揺動部材30とブラケット22とが当接する当接領域を隠蔽する隠蔽手段として構成できる。
上述した本実施形態では、規制手段としての揺動部材30と手すりの一部としてのブラケット22とが当接する当接領域を隠蔽する隠蔽手段について説明したが、隠蔽手段としては、規制手段としての揺動部材30とシート支持体としての支持部21との間に生じる隙間領域を隠蔽するものとして構成することもできる。このような隠蔽手段の一例を図9,図10,図11,図12,図13を参照しながら説明する。図9は、隙間領域を隠蔽する隠蔽手段を構成する部材を説明するための分解斜視図であり、図10〜図13は、図9に示す部材を用いて隠蔽手段を構成した場合に、具体的にどのような動きをして隙間領域を隠蔽するのかを説明するための側面図である。
図9に示すように、隙間領域を隠蔽する隠蔽手段は、回転軸13の端部に取り付けられたシート本体保持プレート131に設けられた揺動ピン131pと、スリーブ90と、規制手段としての揺動部材92に隣接配置される隠蔽部材94とによって構成されている。
スリーブ90は、円筒部901と、円筒部901が延びる方向の一端側に設けられたフランジ903とを備えている。円筒部901には、回転軸13を挿入するための軸穴902が形成されている。揺動部材92は、軸穴921と、揺動穴922と、規制突起923とを備えている。隠蔽部材94は、軸穴941と、揺動穴942とを備えている。揺動部材92の軸穴921と隠蔽部材94の軸穴941とは、スリーブ90の円筒部901が貫通しており、揺動部材92及び隠蔽部材94は、円筒部901を回転軸として、回動可能なように構成されている。
シート本体11を支持する支持部21には、支持柱212が形成されている。支持柱212には、軸穴212aと、ガイド穴212bとが形成されている。揺動部材92の軸穴921と隠蔽部材94の軸穴941とを貫通したスリーブ90の円筒部901は、支持柱212の軸穴212aに挿入される。その結果、揺動部材92及び隠蔽部材94は、円筒部901及び支持柱212の軸穴212aを中心として回動可能なように構成されている。
スリーブ90の軸穴902には回転軸13が回動自在となるように挿入されている。回転軸13の端部近傍にはシート本体保持プレート131が設けられており、このシート本体保持プレート131がシート本体11に取り付けられることで、シート本体11は回転軸13周りに揺動可能なように構成される。更に、回転軸13がスリーブ90の軸穴902に挿入され、その軸穴902が形成されたスリーブ90は支持柱212の軸穴212aに挿入されているので、結果としてシート本体11も支持柱212に形成された軸穴212aを中心として揺動可能なように構成される。
シート本体保持プレート131に設けられた揺動ピン131pは、揺動部材92に形成された揺動穴922と、隠蔽部材94に形成された揺動穴942とを貫通し、支持柱212に形成されたガイド穴212bに挿入されている。従って、シート本体11を揺動すると、それに応じてシート本体保持プレート131が揺動し、揺動ピン131pはガイド穴212bに沿って摺動する。
揺動部材92は、揺動ピン131pが揺動穴922のいずれかの端部に到達した場合に、揺動ピン131pの動きに同調して揺動するように構成されている。同様に、隠蔽部材94も、揺動ピン131pが揺動穴942のいずれかの端部に到達した場合に、揺動ピン131pの動きに同調して揺動するように構成されている。隠蔽部材94に形成されている揺動穴942は、揺動部材92に形成されている揺動穴922よりも長くなるように形成されている。従って、揺動ピン131pがガイド穴212bに沿って摺動した場合に、揺動部材92の揺動に遅れて隠蔽部材94は揺動し、揺動部材92の揺動よりも揺動幅が短くなるように隠蔽部材94は揺動する。
続いて、図10に示すように(図10〜図13においては、揺動部材92や隠蔽部材94の動きを示すために、手前側の支持柱212を省略して示している)、シート本体11が収納状態に位置している場合には、前述した図3〜図7で説明した実施形態と同じく、ブラケット22aは隠蔽部材としてのブラケット収納部213の前壁213aによってそれ以上前方には揺動しないよう構成されており、また、後壁213bによって、図11〜図13の位置以上に後方へ揺動しないように構成されている。即ち、ブラケット収納部213には手すり15の揺動範囲を規制するための規制部としての前壁213aと後壁213bとが一体的に形成されている。そして、シート本体11が回転軸13よりも壁側に直立しているので、揺動ピン131pも回転軸13よりも壁側に位置している。図10に示すようなシート本体11の左側面側の側面図においては、回転軸13を中心として10時の方向(シート本体11が起立する上方向を12時としている。以下同じ)に位置している。図10に示す状態では、揺動ピン131pは、揺動穴922及び揺動穴942の一端近傍に位置しており、シート本体11の使用状態への揺動に伴ってそれぞれの穴の他端側に向かって移動可能なように位置している。なお、図10に示すように、揺動部材92と隠蔽部材94とは、支持柱212の幅に略等しく、支持柱212から突出しないようになっている。
図10に示す状態からシート本体11が使用状態へと揺動すると、揺動ピン131pは回転軸13を中心として時計回りに移動し、図11に示すような状態となる。図11に示す状態において、揺動ピン131pは、揺動部材92の揺動穴922の他端に到達しており、更に揺動ピン131pが回転軸13周りに回転移動すると、その動きに伴って揺動部材92が揺動する。また、手すり15はその自重によって前側(シート本体11に向かう側)に揺動し、ブラケット22aの下端がブラケット収納部213の後壁213bに当接することによって起動が規制される。
図11に示す状態から更にシート本体11が使用状態へと揺動すると、揺動ピン131pは回転軸13を中心として時計回りに回転移動し、図12に示すような状態となる。上述したように、揺動部材92は揺動ピン131pの動きに応じて揺動するように構成されているので、図11に示す状態よりもブラケット22aに向かって揺動している。一方、図11から図12に至る間において、隠蔽部材94は動かずに静止しているが、図12に示す状態においては、揺動ピン131pが隠蔽部材94の揺動穴942の他端に到達している。従って、図12に示す状態から更に揺動ピン131pが回転軸13周りに回転移動すると、その動きに伴い揺動部材92の揺動に遅れたタイミングで隠蔽部材94が揺動する。
図12に示す状態から更にシート本体11が使用状態へと揺動すると、シート本体11が略水平の使用状態となり、揺動ピン131pは回転軸13を中心として更に時計回りに回転移動し、図13に示すような状態となる。上述したように、揺動部材92及び隠蔽部材94は揺動ピン131pの動きに応じて揺動するように構成されているので、図12に示す状態よりもブラケット22aに向かって揺動している。
図13に示す使用状態では、揺動部材92の規制突起923が手すり15と一体的に設けられたブラケット22aに当接しており、手すり15の揺動を規制し、ひいては手すり15の揺動に伴うシート本体11の揺動も規制している。また、隠蔽部材94が、揺動部材92と支持柱212との間の隙間領域を隠蔽しているので、シート本体11を収納状態へと戻す場合にも揺動部材92と支持柱212との間に手を挟まれるようなことがない。なお、揺動部材92の規制突起923とブラケット22aとの当接位置はブラケット収納部213の内部に隠蔽されているため、その当接部に手を挟まれるようなことがない。