JP4940655B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

この発明は、燃料電池に関する。
燃料電池においては、電解質層上に触媒電極が形成されると共に、この触媒電極で進行する電気化学反応に供するためのガスが流れるガス流路が、触媒電極上に形成される。このようなガス流路では、ガスシール性を確保する必要があり、ガス流路を確保するための構成として、例えば、ガス流路の周囲にシール部材を配置する構成が知られている(特許文献1参照)。
特開2002−231274号公報
ここで、ガス流路の構成としては、触媒電極上に導電性多孔質体を配置して、多孔質体内に形成されている三次元的な空隙を、ガス流路とする構成が知られている。多孔質体によってガス流路を形成する場合には、シール部材および多孔質体の製造誤差により多孔質体の方がシール部材の内径よりも大きくなると、シール部材の内側に多孔質体を配置する際に多孔質体の端部がシール部材に乗り上げ、シール部材によるガスシール性を損なう可能性があった。この問題に対して従来は、ガスシール性を確保するために、製造誤差を考慮して多孔質体をシール部材よりも若干小さく設計することによって、多孔質体とシール部材との間には隙間を設けている。しかしながら、このような構成にすると、隙間は多孔質体内に比べて圧力損失が小さいため、隙間に優先的にガスが流れて、多孔質体内にガスが流入し難くなり、触媒電極へのガス供給率が低下して、燃料電池における発電効率が低下する場合があった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、多孔質体を用いてガス流路を形成する際に、多孔質体の周囲に形成される隙間に優先的にガスが流れることに起因する燃料電池の発電効率の低下を防止することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は、
電解質層と、
前記電解質層上に形成された触媒電極と、
前記触媒電極との間に空間を形成するように、前記触媒電極と所定の距離をおいて配置されるガスセパレータと、
前記電解質層および前記触媒電極の外周部に設けられると共に、前記ガスセパレータと接触することによって、前記空間におけるガスシール性を確保するシール部と、
前記触媒電極および前記ガスセパレータに当接して前記空間内に配置されると共に、前記シール部との間に隙間を形成する四角形状の板状部材である導電性多孔質体から成るガス流路形成部であって、前記ガス流路形成部に接する前記触媒電極に供給されるガスが、前記四角形状の一辺に対応する側面から前記ガス流路形成部内に流入して直進すると共に、前記一辺に対向する他辺に対応する側面を介して前記ガス流路形成部から排出されるガス流路形成部と、
前記ガス流路形成部における前記ガスの流出入に関わる2辺とは異なる2辺と前記シール部との間に形成される前記隙間の少なくとも一部に配置され、水を吸収することによって体積を増す吸水膨張部と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の燃料電池によれば、吸水膨張部が吸水したときには、吸水膨張部の体積が増すことによって隙間がより小さくなるため、燃料電池に供給されたガスが上記隙間を流れるのを抑えつつ、多孔質体から成るガス流路形成部内に形成されるガス流路へとガスを流すことができる。このように隙間への流入を抑えつつガス流路形成部内へとガスを流すことにより、ガスは効率良く触媒電極における電気化学反応に供され、ガスの利用効率を向上させることができる。
本発明の燃料電池において、
前記吸水膨張部は、水を吸収することによって、前記隙間を閉塞することとしても良い。
このような構成とすれば、吸水膨張部が水を吸収して隙間を閉塞することにより、燃料電池におけるガスの利用効率をさらに向上させることができる。
本発明の燃料電池において、
前記ガス流路形成部は、導電性多孔質体から成る複数の層を積層して成り、
前記ガス流路形成部と前記シール部との間に形成される前記隙間は、前記複数の層のうちの、少なくとも一つの層と、前記シール部との間に形成されることとしても良い。
ガス流路形成部を構成する複数の層のうちの少なくとも一つの層と、シール部との間に隙間があれば、ガス流路形成部内部よりも抵抗の小さいこの隙間をガスは流れようとするため、吸水膨張部を設けることで、ガスの利用率を高める効果が得られる。
このような本発明の燃料電池において、
前記ガス流路形成部は、金属製の多孔質体から成ると共に、前記シール部とは別体で形成された金属多孔質層を有し、
前記ガス流路形成部と前記シール部との間に形成される前記隙間は、前記金属多孔質層と前記シール部との間に形成されることとしても良い。
ガス流路形成部を構成する多孔質体を金属製とする場合には、多孔質体の熱膨張率が特に大きくなるため、シール部におけるシール性を損なわないためには、ガス流路形成部をより小さく形成する必要がある。したがって、ガス流路形成部とシール部との間に形成される隙間がより大きくなるため、金属多孔質層を用いる場合には、吸水膨張部を設けることによって隙間におけるガス流れを妨げてガスの利用率を確保する効果を、より顕著に得ることができる。
本発明の燃料電池において、
前記吸水膨張部は、吸水性および保水性を有する吸水性ポリマを備えることとしても良い。
このような構成とすれば、吸水性ポリマが吸水することによって膨張して隙間を塞ぎ、吸水性ポリマが内部に水を保持することにより、隙間が塞がれた状態を維持することができる。
このような本発明の燃料電池において、
前記吸水性ポリマは、親水基を有するポリマを分子間で架橋して成ることとしても良い。
このような構成とすれば、吸水性ポリマが有する親水基に水が引き寄せられて、架橋によって形成される3次元構造の中に水が取り込まれることによって吸水性ポリマが膨張し、この3次元構造の中に水が保持されることによって、吸水膨張部として機能することができる。
あるいは、本発明の燃料電池において、
前記吸水膨張部は、親水基を備えるポリマから成る繊維を縒り合わせて形成されることとしても良い。
このような構成とすれば、親水基に水が引き寄せられ、繊維を縒り合わせて成る3次元構造の内部に水が保持されることによって膨張し、吸水膨張部として機能することができる。
本発明の燃料電池において、
前記親水基は、−OH(ヒドロキシル基)、−NH(イミノ基)、−CO(カルボニル基)、−COOH(カルボキシル基)から選択されることとしても良い。
これらの親水基を有することで、吸水膨張部は水を引き寄せることができ、吸水膨張部が有する3次元構造に応じて水を内部に保持して膨張し、吸水膨張部として機能することができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池の製造方法などの形態で実現することが可能である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の構成:
B.吸水膨張部による隙間の閉塞:
C.変形例:
A.燃料電池の構成:
図1は、本発明の実施例としての燃料電池の概略構成を表わす断面図である。本実施例の燃料電池は、単セルを複数積層したスタック構造を有している。すなわち、本実施例の燃料電池は、図1に示すように、複数の単セル50を備えると共に、各々の単セル50間にガスセパレータ30を介在させつつ単セル50を積層させた構造を有している。
単セル50は、電解質膜を含むMEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)40と、MEA40の両側に配置された導電性多孔質体から成るガス拡散層41,42と、ガス拡散層41,42とガスセパレータ30との間に設けられた導電性多孔質体から成るガス流路形成部43,44と、を備えている。
MEA40は、電解質層と、電解質層の両面に形成された触媒電極(アノードおよびカソード)とを備えている。本実施例の燃料電池は、固体高分子型燃料電池であり、電解質層は、固体高分子材料、例えばパーフルオロカーボンスルホン酸を備えるフッ素系樹脂から成るプロトン伝導性のイオン交換膜によって形成することができる。あるいは、炭化水素系固体高分子によって形成することもできる。触媒電極は、電気化学反応を促進する触媒、例えば、白金、あるいは白金と他の金属から成る合金を備えている。
ガス拡散層41,42は、導電性及びガス透過性を有する部材によって構成されている。ガス拡散層41,42としては、例えば、カーボン製多孔質体を用いることができ、本実施例ではカーボンペーパを用いている。また、本実施例では、ガス拡散層41,42は、MEA40と略同一形状に形成されており、例えば熱圧着によってMEA40上に固着される。このガス拡散層41,42では、さらに、触媒電極と接する面に対して撥水化処理を施しても良い。撥水化処理は、例えば、撥水性物質であるフッ素樹脂の分散液とカーボン粉末と溶媒とを混合して得た混合液を、カーボンペーパ上に塗布し、その後熱処理することにより行なうことができる。このようにガス拡散層の表面を撥水化処理することにより、触媒電極に対するガス供給を確保すると共に、ガス拡散層側から触媒電極への水の移動を抑制することができる。
ガス流路形成部43,44は、導電性及びガス透過性を有する板状部材によって構成されている。この多孔質体から成るガス流路形成部43,44は、ガス拡散層41,42と共に、MEA40とガスセパレータ30との間に形成される空間を占めるように配置されている。そして、ガス流路形成部43,44の内部に形成される空隙は、触媒電極で進行する電気化学反応に供されるガスが流れる単セル内ガス流路を形成する。すなわち、ガス流路形成部43は、酸化ガスが流れる単セル内酸化ガス流路を形成し、ガス流路形成部44は、燃料ガスが流れる単セル内燃料ガス流路を形成する。このようなガス流路形成部43,44は、例えばチタンなどの金属から成る多孔質体によって形成することができる。金属多孔質体としては、例えば、発泡金属焼結体や、球状あるいは繊維状の微小な金属を焼結させた焼結体を用いることができる。あるいは、ガス流路形成部43,44を、カーボン多孔質体によって形成することも可能である。
また、MEA40、ガス拡散層41,42、およびガス流路形成部43,44の外周部には、シール部49が設けられている。シール部49は、例えば、シリコンゴム、ブチルゴム、フッ素ゴムなどの絶縁性樹脂材料によって形成されると共に、MEA40およびガス拡散層41,42と一体で形成されている。このようなシール部49は、例えば、シール部49に対応する形状の金型のキャビティ内にMEA40およびガス拡散層41,42の外周部が収まるように、表面に予めガス拡散層41,42が固着されたMEA40を配置し、上記樹脂材料を射出成形することによって形成できる。これにより、MEA40およびガス拡散層41,42とシール部28とが、隙間なく接合される。
図2は、表面にガス拡散層41,42を備えるMEA40と一体形成されたシール部49の概略構成を表わす平面図である。図2に示すように、シール部49は、略四角形状の薄板状部材であり、外周部に設けられた6つの穴部(穴部60〜65)と、中央部に設けられてMEA40が組み込まれている略四角形の穴部とを有している。上記6つの穴部は、ガスセパレータ30および単セル50を積層して燃料電池を組み立てたときに、燃料電池内部を積層方向に貫通し、内部を所定の流体が流れるマニホールドを形成する。
なお、シール部49は実際には図1の断面図に示すように所定の凹凸形状を有しており、燃料電池内部では、上記6つの穴部および略四角形の穴部を取り囲む位置に設けられた凸部において、隣接するガスセパレータ30と接触する。6つの穴部が形成するマニホールドにおけるガスシール性を確保するための、シール部49とガスセパレータ30との接触位置(図1において一点鎖線でシール線SL1と示す)を、図2の平面図においてシール線SLとして示している。また、本実施例では、単セル内ガス流路におけるガスシール性は、シール部49の中央部に設けられた略四角形の穴部の外周部において確保されている(図1において一点鎖線でシール線SL2と示す)。シール部49は、弾性を有する樹脂材料から成るため、燃料電池内で積層方向に平行な方向に押圧力が加えられることにより、上記シール線SL1およびSL2の位置においてガスセパレータ30との間でガスシール性を実現可能となる。
また、図2では、MEA40上に固着されてシール部49と一体化されたガス拡散層41における露出している部分を、ハッチを付して示している。ガス流路形成部43,44は、上記ガス拡散層の露出している領域よりも一回り小さく形成されており、ガス拡散層41,42の露出している領域上に重なるように、シール部49のシール線SL2の内側に嵌め込まれている。図2に示したシール部49と一体化されたガス拡散層41上に、ガス流路形成部43を配置した様子を、図3に示す。このように、ガス流路形成部43,44が、ガス拡散層41,42の露出している領域よりも一回り小さく形成されていることにより、ガス流路形成部43,44とシール部49におけるシール線SL2との間には、隙間80が形成される。
この隙間80には、吸水膨張部82が配置されている。この吸水膨張部82は、ガス流路形成部43,44とシール部49におけるシール線SL2との間の隙間80を塞ぐための構造であり、後に詳しく説明する。
ガスセパレータ30は、外周の大きさがシール部49とほぼ等しい板状部材である。このガスセパレータ30は、図1に示すように、ガス流路形成部43に接するカソード側プレート46と、ガス流路形成部44に接するアノード側プレート48と、カソード側プレート46およびアノード側プレート48に挟持される中間プレート47と、を備えている。図4は、カソード側プレート46の形状を示す平面図であり、図5は、アノード側プレート48の形状を示す平面図であり、図6は、中間プレート47の形状を示す平面図である。
カソード側プレート46、アノード側プレート48は、いずれも、その外周部においてシール部49と同様の位置に、6つの穴部を備えている。図4および図5では、略四角形状である外周の一辺である辺52の近傍に、穴部60が形成されている。また、辺52と対向する辺である辺53の近傍には、穴部61が形成されている。さらに、他の2辺のうちの一方の辺である辺54の近傍には、穴部62,64が形成されており、辺54と対向する辺である辺55の近傍には、穴部63,65が形成されている。なお、中間プレート47は、上記6つの穴部のうち、穴部64,65は有していないが、後述する複数の冷媒孔78が、穴部64,65に対応する位置に重なるように設けられている。
ガスセパレータ30およびシール部49が備える穴部60は、燃料電池に対して供給された酸化ガスを各単セルに分配する酸化ガス供給マニホールドを形成し(図2〜6中、O2 inと表わす)、穴部61は、各単セルから排出されて集合した酸化ガスを外部へと導く酸化ガス排出マニホールドを形成する(図2〜6中、O2 outと表わす)。また、穴部62は、燃料電池に対して供給された燃料ガスを各単セルに分配する燃料ガス供給マニホールドを形成し(図2〜6中、H2 inと表わす)、穴部63は、各単セルから排出されて集合した燃料ガスを外部へと導く燃料ガス排出マニホールドを形成する(図2〜6中、H2 outと表わす)。さらに、穴部64は、燃料電池に対して供給された冷却水などの冷媒を各ガスセパレータ30内に分配する冷媒供給マニホールドを形成し(図2〜5中、水 inと表わす)、穴部65は、各ガスセパレータ30から排出されて集合した冷媒を外部へと導く冷媒排出マニホールドを形成する(図2〜5中、水 outと表わす)。
また、カソード側プレート46は、穴部60の近傍に、穴部60よりも小さく、穴部60に平行に配列する複数の穴部である連通孔70を備えており、穴部61の近傍には、同様に、穴部61に平行に配列する複数の連通孔71を備えている(図4参照)。アノード側プレート48は、穴部62の近傍に、穴部62よりも小さく、穴部62に平行に配列する複数の穴部である連通孔72を備えており、穴部63の近傍には、同様に、穴部63に平行に配列する複数の連通孔73を備えている(図5参照)。中間プレート47においては、穴部60の形状が他のプレートとは異なっており、中間プレート47の穴部60は、この穴部60のプレート中央部側の辺が、プレート中央部方向へと突出する複数の突出部を備える形状となっている。穴部60が有する上記複数の突出部を、連通部74と呼ぶ。この連通部74は、中間プレート47とカソード側プレート46とが積層されたときに連通孔70と重なり合って、酸化ガス供給マニホールドと連通孔70とを連通させるように、各連通孔70に対応して設けられている。中間プレート47では、他の穴部61,62,63においても同様に、連通孔71,72,73に対応して、複数の連通部75,76,77がそれぞれ設けられている(図6参照)。なお、連通孔70〜73は、単セル50とガスセパレータ30とを積層したときに、ガス流路形成部43,44と重なる位置に設けられている
また、中間プレート47は、さらに、ガス流路形成部43,44と重なる領域に、互いに平行に形成された細長い複数の冷媒孔78を備えている。冷媒孔78の端部は、中間プレート47を他の薄板状部材と重ね合わせたときに、穴部64,65と重なり合う。このような冷媒孔78は、冷媒が流れるためのセル間冷媒流路をガスセパレータ30内で形成する。
ガスセパレータ30を構成する上記3種のプレートは、導電性材料、例えばステンレス鋼あるいはチタンやチタン合金といった金属によって形成される薄板状部材である。そして、穴部60〜65、連通孔70〜73および冷媒孔78は、打ち抜き加工によって形成されている。ガスセパレータ30を形成する際には、カソード側プレート46、中間プレート47、アノード側プレート48の順に、各穴部を位置合わせしつつ重ね合わせて、例えば拡散接合により接合させている。あるいは、中間プレート47を、シール層と耐熱性樹脂層とを備えるラミネート樹脂によって形成しても良い。この場合には、加熱接着により各プレート間をシール接合することができる。
燃料電池を組み立てる際には、図2に示すように表面にガス拡散層41,42が固着されたMEA40と一体化されたシール部49を作製すると共に、ガス拡散層41,42の露出面上に、ガス流路形成部43,44を配置する。そして、シール部49におけるシール線SL2の内側において、ガス流路形成部43,44の外周との間に形成される隙間80に、吸水膨張部82を配置して、単セル20の構造を得る。その後、このような単セル20と、上記のように作製したガスセパレータ30とを交互に積層することによって、燃料電池を組み立てることができる。
燃料電池が発電する際には、燃料電池の内部において、穴部60が形成する酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、中間プレート47の連通部74が形成する空間と、カソード側プレート46の連通孔70とを介して、ガス流路形成部43内に形成される単セル内酸化ガス流路へと流入する。単セル内酸化ガス流路において酸化ガスは、ガス流路形成部43に平行な方向(面方向)に流れると共に、面方向に垂直な方向(積層方向)へとさらに拡散する。積層方向に拡散した酸化ガスは、触媒電極(カソード)に至り、電気化学反応に供される。このように電気化学反応に寄与しつつ単セル内酸化ガス流路を通過した酸化ガスは、ガス流路形成部43から、カソード側プレート46の連通孔71および中間プレート47の連通部75が形成する空間を介して、穴部61が形成する酸化ガス排出マニホールドへと排出される。図2ないし図6に示したA−A断面の位置は、図1に示した断面図に相当する位置を表わしている。図1では、酸化ガス供給マニホールドおよび酸化ガス排出マニホールド近傍における酸化ガスの流出入の様子を、矢印で示している。
同様に、燃料電池が発電する際には、穴部62が形成する燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、中間プレート47の連通部76が形成する空間と、アノード側プレート48の連通孔72とを介して、ガス流路形成部44内に形成される単セル内燃料ガス流路へと流入する。また、電気化学反応に供された後の燃料ガスは、ガス流路形成部44内から、アノード側プレート48の連通孔73および中間プレート47の連通部77が形成する空間とを介して、穴部63が形成する燃料ガス排出マニホールドへと排出される。
また、燃料電池の内部において、穴部64が形成する冷媒供給マニホールドを流れる冷媒は、冷媒孔78によって形成される冷媒流路に分配され、冷媒流路を流れた冷媒は、穴部65が形成する冷媒排出マニホールドに排出される。
B.吸水膨張部による隙間の閉塞:
本実施例の燃料電池では、単セル内ガス流路は、導電性多孔質体であるガス流路形成部43,44によって形成されているが、既述したように、このガス流路形成部43,44の周囲には、シール部49との間に隙間80が存在する。隙間80は、ガス流路形成部43,44の方が、シール部49におけるシール線SL2の内側の大きさよりも大きいと、ガス流路形成部43,44の端部がシール部49に乗り上げてガスシール性を損なう可能性があるため、予め、ガス流路形成部43,44を充分に小さく設計していることに起因して形成される。
単セル内ガス流路へと供給されるガスは、ガス流路形成部43,44内を通過することにより電気化学反応に供されることが可能になるが、上記隙間80がある場合には、ガスは、より抵抗の小さい隙間80に優先的に流れることになる。そのため、ガス流路形成部43,44を介して電気化学反応に供されるガス流量が減少してしまい、ガスの利用効率が低下する。そこで、本実施例では、上記隙間80内に吸水膨張部82を配置することによって、上記隙間80を閉塞させている。
本実施例の吸水膨張部82は、吸水性および保水性を有する吸水性ポリマによって形成されている。ここで、吸水性ポリマとは、親水基を有するポリマが分子間で架橋されたものである。吸水性ポリマの原料となる親水基を有するポリマは、通常は水溶性であるが、分子間が架橋されることによって三次元的な網目構造が形成され、親水基が水を引き寄せることによって網目構造の中に水が吸収されるため、吸水性ポリマは不溶性のハイドロゲルとなることができる。吸水性ポリマは、上記三次元的な網目構造が許容する限りにおいて吸水することができるため、膨張を伴いながら、自重の数百倍から千倍程度の水を吸収することができる。このように、三次元的な網目構造の中に水が閉じこめられるため、ハイドロゲルは、ある程度の圧力を加えても水を保持し続けることができる。
吸水性ポリマが備える親水基は、例えば、−OH(ヒドロキシル基)、−NH(イミノ基)、−CO(カルボニル基)、−COOH(カルボキシル基)から選択される基とすることができる。また、親水基がイオン性基の場合には、吸水性ポリマは、電解質ポリマとなる。このような吸水性ポリマとしては、従来、ポリアクリル酸塩系、例えば、デンプンーポリアクリル酸系や、ポリビニルアルコール−ポリアクリル系が知られている。あるいは、カルボキシメチルセルロース系や、メタクリル酸メチルと酢酸ビニルの共重合体、あるいは、ポリビニルアルコールの重合体が知られている。
本実施例では、吸水膨張部82は、上記吸水性ポリマをシート状に成形して、ガス流路形成部43,44の外側に形成される隙間80内に嵌め込んでいる。隙間80内に配置する吸水性ポリマの量は、用いる吸水性ポリマの吸水量(膨張率)に応じて、隙間80を塞ぐことができるように設定すればよい。
隙間80内に配置する吸水性ポリマ量の算出の一例を図7に示す。図7(A)は、隙間80の様子を模式的に表わす図であり、図7(B)は、隙間80の大きさを表わす寸法をまとめた説明図であり、図7(C)は、隙間80の大きさ(容積)に応じて定まる吸水性ポリマの必要量をまとめた説明図である。必要なポリマ量は、隙間80の容積を求め、吸水性ポリマが水を吸収して膨張したときに、求めた容積の隙間80を閉塞させることができるポリマ量として、算出することができる。図7では、隙間80を構成する溝の、深さ(0.2mm)と幅(横9mm、縦8.5mm)と長さ(横298.6mm、縦105.6mm)とから、隙間80の容積(1414.7mm3)を算出し、1g当たり300gの水を吸収する吸水性ポリマを用いて、この容積を有する隙間を塞ぐために要する吸水性ポリマの乾燥重量(4.7g)を算出している。
このように、乾燥状態で吸水膨張部82を隙間80内に配置して燃料電池を組み立てた後は、燃料電池内に水蒸気を含有するガスを供給することにより、吸水膨張部82を吸水・膨張させ、隙間80を塞ぐことができる。このような吸水膨張部82の吸水・膨張は、例えば、上記組み立てた燃料電池において最初の発電運転を行なうことによって、実現可能である。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、隙間80が吸水膨張部82によって塞がれているため、単セル内に供給されたガスの隙間80への流入を抑えつつ、単セル内に供給されたガスをガス流路形成部43,44内に流すことができ、燃料電池におけるガスの利用効率を向上させることができる。特に、本実施例では、ガス流路形成部43,44を、熱膨張率が比較的高い金属製多孔質体によって形成しているため、金属製多孔質体の熱膨張に起因するシール性の悪化を防止するためには、ガス流路形成部43,44をより小さく形成する必要がある。すなわち、隙間80を、より大きく形成する必要がある。そのため、吸水膨張部82を設けて隙間80を塞ぐことで得られる効果を、より顕著に得ることができる。
このとき、隙間80内に吸水膨張部82を形成するためには、隙間80内に乾燥状態の吸水性ポリマを所定量配置すればよいため、簡便な動作により行なうことができる。また、燃料電池内の吸水性ポリマの吸水・膨張は、通常の発電と同様の動作により行なうことができるため、吸水性ポリマによって隙間80を実際に塞ぐために、特別な工程を用意する必要がない。また、吸水膨張部82として吸水性ポリマを用いているため、一旦吸水性ポリマを吸水・膨張させれば、その後は、特別な操作を行なうことなく、吸水膨張部82によって隙間80を塞いだ状態を維持することができる。
なお、実施例では、ガス流路形成部43,44の周囲においてシール部49との間に形成される隙間80全体に吸水膨張部82を配置することとしたが、異なる構成としても良い。隙間80の少なくとも一部において吸水膨張部82を配置して、隙間80におけるガス流れを阻害することができれば、ガスの利用効率を向上させる同様の効果を得ることができる。また、吸水膨張部82は、隙間80を完全に閉塞させて、隙間80におけるガス流れを完全に遮断する必要はなく、隙間80におけるガス流れの抵抗を高めることができればよい。隙間80における流路抵抗を高めて、ガス流路形成部内へとガスを流れやすくすることにより、ガス利用率向上の効果が得られる。
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
実施例では、吸水膨張部82を構成する吸水性ポリマをシート状に成形して隙間80内に配置したが、吸水性ポリマを異なる形状に成形して用いても良い。例えば、吸水性ポリマを粒子状に成形して、所定量を隙間80内に充填しても良い。吸水性ポリマを粒子状に成形する場合には、一般にシート状に成形する場合よりも成形加工が容易であり、また、隙間80内に配置する動作も容易となる。
なお、吸水性ポリマを粒子状に成形する場合には、粒子の粒径を、ガス流路形成部43,44を構成する多孔質体が備える細孔の径よりも大きくすることにより、組み立て動作の途中における上記粒子の多孔質体内への入り込みを抑制可能になる。あるいは、ガス流路形成部43,44内への吸水性ポリマ粒子の入り込みを防止するには、ガス流路形成部43,44の外周部側壁に樹脂を含浸させて、外周部側壁の細孔を塞いでもよい。
C2.変形例2:
吸水膨張部82は、既述した吸水性ポリマ以外にも、種々の材料により形成可能である。燃料電池内部の環境で充分な耐久性を有し、吸水とともに膨張し、隙間80におけるガス流れを妨げることができればよい。吸水膨張部82を構成する材料は、導電性およびプロトン伝導性の有無に関わらず選択することができるが、導電性を有しない材料を選択するならば、隙間80内に配置した吸水膨張部82が位置ずれした場合であっても、燃料電池内部で短絡が生じる可能性が無く、望ましい。
吸水膨張部82が吸水した状態を保持する機能は、既述した分子間の架橋による網目構造により実現する代わりに、あるいは、網目構造に加えて、物理的な形状により実現しても良い。例えば、親水性のポリマを繊維状に成形してこの繊維を縒り合わせることによって、例えば、成形した細い数本の繊維を絡み合わせて1本のより太い繊維を作製することによって、吸水性を実現しても良い。このように、表面積をより小さくすることにより、内部に水を保持可能となる。
また、吸水膨張部82を、MEA40が備える電解質層と同様の電解質によって形成しても良い。特に、炭化水素系固体高分子電解質膜は、フッ素系固体高分子電解質膜よりも吸水による膨張率が高く、望ましい。図8は、炭化水素系固体高分子によって電解質膜および吸水膨張部82を形成する構成を表わす断面模式図である。図8では、実施例と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略しており、セパレータ30に挟まれた一つの単セルにおいて、MEA40の外周部であってシール部49との接続部近傍の様子を拡大して示している。図8では、電解質膜において、隙間80に対応する領域に、固体高分子電解質から成り吸水膨張部82として機能する肉厚部を設けている。このような吸水膨張部82は、例えば、キャスト法により電解質層となる固体高分子電解質膜を成膜する際に、電解質膜の周囲に肉厚部を成形することにより、電解質層と一体で形成することができる。燃料電池を作製する際には、電解質膜において、肉厚部よりも内側に触媒電極を設けてMEA40を形成すると共に、触媒電極上に、ガス拡散層41,42およびガス流路形成部43,44を配置すればよい。肉厚部を、吸水時における電解質の膨張率に応じた大きさとすれば、燃料電池内に水蒸気含有ガスを流すことにより肉厚部を膨張させて、隙間80におけるガス流れを妨げることができる。
C3.変形例3:
実施例では、触媒電極とガス流路形成部43,44との間にガス拡散層41,42を設けたが、ガス拡散層41,42を設けない構成としても良い。ガス流路形成部43,44を金属多孔質体により形成する場合には、金属部材による電解質膜の損傷を防止するために、ガス拡散層41,42を設けることが望ましいが、電解質膜の耐久性が許容できる場合、あるいはガス流路形成部43,44をカーボン多孔質体により形成する場合には、ガス拡散層41,42を設けないこととしても良い。
また、実施例では、ガス拡散層41,42は、MEA40と共にシール部49と一体形成したが、シール部49とは別体で形成してもよい。この場合に、ガス拡散層41,42とシール部49との間にも隙間ができる場合には、この隙間を塞ぐように、吸水膨張部82を配置しても良い。MEA40とガスセパレータとの間に導電性多孔質層を複数層配置してガスの流路を形成する場合には、少なくともそのうちの1つの層とシール部49との間に隙間が生じる場合に、吸水膨張部82を設けてこの隙間を埋めることで、同様の効果が得られる。
C4.変形例4:
実施例では、ガスセパレータとして、平坦な3枚のプレートを積層して成り、内部にガスマニホールドと単セル内ガス流路とを接続する流路を形成した三層構造セパレータを用いたが、異なる構成としても良い。実施例の三層セパレータを用いる場合には、単セルに流出入するガスの流路が、ガス流路形成部43,44に接して開口しているが、例えば、ガス流路形成部の端部側壁面からガス流路形成部へとガスが流出入することとしても良い。図9は、このような構成を平面的に表わす説明図である。図9では、ガス供給マニホールドから、略四角形状のガス流路形成部の所定の一辺を介して、ガス流路形成部内へとガスが流入する。そして、ガス流路形成部内を直進したガスは、上記所定の一辺に対向する辺を介して、ガス排出マニホールドへと排出される。このような場合には、上記ガスの流出入に関わる2辺とは異なる2辺とガス流路形成部との間に形成される隙間において、吸水膨張部を設ければよい。図9では、上記隙間全体に吸水膨張部を配置しているが、上記隙間の少なくとも一部に吸水膨張部を設ければよく、隙間内のガス流れを妨げて、流路抵抗を高めることができればよい。
C5.変形例5:
実施例では、単セル内ガス流路におけるシール性を実現するためのシール部49は、MEA40と一体形成しているが、異なる構成としても良い。例えば、セパレータとMEAとの間に、これらの部材とは別体のシール部(ガスケット)を設けても良い。このような場合にも、上記別体のシール部とガス流路形成部との間の隙間の少なくとも一部に吸水膨張部を設けることで、同様の効果が得られる。
C6.変形例6:
実施例では、燃料電池は固体高分子型燃料電池としたが、異なる種類の燃料電池であっても良い。多孔質体によって単セル内ガス流路を形成する燃料電池において、吸水することでシール部とガス流路形成部との間の隙間を塞いで流路抵抗を高め、燃料電池の運転中の環境でハイドロゲルの状態で安定に存在可能な吸水膨張部を選択するならば、他種の燃料電池においても同様の効果が得られる。
実施例の燃料電池の概略構成を表わす断面図である。 ガス拡散層およびMEAと一体形成されたシール部の概略構成を表わす平面図である。 シール部と一体化されたガス拡散層上に、ガス流路形成部を配置した様子を表わす説明図である。 カソード側プレートの形状を示す平面図である。 アノード側プレートの形状を示す平面図である。 中間プレートの形状を示す平面図である。 隙間80内に配置する吸水性ポリマ量の算出の一例を示す説明図である。 炭化水素系固体高分子によって電解質膜および吸水膨張部82を形成する構成を表わす断面模式図である。 ガス流路形成部の端部側壁面からガスが流出入する変形例の構成を平面的に表わす説明図である。
符号の説明
20…単セル
22…MEA
24,25…ガス拡散層
28…シール部
30…ガスセパレータ
40…MEA
41,42…ガス拡散層
43,44…ガス流路形成部
46…カソード側プレート
47…中間プレート
48…アノード側プレート
49…シール部
50…単セル
52〜55…辺
60〜65…穴部
70〜73…連通孔
74,75,76,77…連通部
78…冷媒孔
80…隙間
82…吸水膨張部

Claims (8)

  1. 燃料電池であって、
    電解質層と、
    前記電解質層上に形成された触媒電極と、
    前記触媒電極との間に空間を形成するように、前記触媒電極と所定の距離をおいて配置されるガスセパレータと、
    前記電解質層および前記触媒電極の外周部に設けられると共に、前記ガスセパレータと接触することによって、前記空間におけるガスシール性を確保するシール部と、
    前記触媒電極および前記ガスセパレータに当接して前記空間内に配置されると共に、前記シール部との間に隙間を形成する四角形状の板状部材である導電性多孔質体から成るガス流路形成部であって、前記ガス流路形成部に接する前記触媒電極に供給されるガスが、前記四角形状の一辺に対応する側面から前記ガス流路形成部内に流入して直進すると共に、前記一辺に対向する他辺に対応する側面を介して前記ガス流路形成部から排出されるガス流路形成部と、
    前記ガス流路形成部における前記ガスの流出入に関わる2辺とは異なる2辺と前記シール部との間に形成される前記隙間の少なくとも一部に配置され、水を吸収することによって体積を増す吸水膨張部と
    を備える燃料電池。
  2. 請求項1記載の燃料電池であって、
    前記吸水膨張部は、水を吸収することによって、前記隙間を閉塞する
    燃料電池。
  3. 請求項1または2記載の燃料電池であって、
    前記ガス流路形成部は、導電性多孔質体から成る複数の層を積層して成り、
    前記ガス流路形成部と前記シール部との間に形成される前記隙間は、前記複数の層のうちの、少なくとも一つの層と、前記シール部との間に形成される
    燃料電池。
  4. 請求項3記載の燃料電池であって、
    前記ガス流路形成部は、金属製の多孔質体から成ると共に、前記シール部とは別体で形成された金属多孔質層を有し、
    前記ガス流路形成部と前記シール部との間に形成される前記隙間は、前記金属多孔質層と前記シール部との間に形成される
    燃料電池。
  5. 請求項1ないし4いずれか記載の燃料電池であって、
    前記吸水膨張部は、吸水性および保水性を有する吸水性ポリマを備える
    燃料電池。
  6. 請求項5記載の燃料電池であって、
    前記吸水性ポリマは、親水基を有するポリマを分子間で架橋して成る
    燃料電池。
  7. 請求項1ないし4いずれか記載の燃料電池であって、
    前記吸水膨張部は、親水基を備えるポリマから成る繊維を縒り合わせて形成される
    燃料電池。
  8. 請求項6または7記載の燃料電池であって、
    前記親水基は、−OH(ヒドロキシル基)、−NH(イミノ基)、−CO(カルボニル基)、−COOH(カルボキシル基)から選択される
    燃料電池。
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