JP4934815B2 - テンショナー - Google Patents

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Description

本発明は、無端状のベルトやチェーンの張力を一定に保つテンショナーに関する。
テンショナーは、例えば、自動車のエンジンに使用されるタイミングチェーンやタイミングベルトを所定の力で押しており、これらに伸びや緩みが生じた場合に、その張力を一定に保つように作用する。
図17はテンショナー100を自動車のエンジン本体200に実装した状態を示す。エンジン本体200の内部には、一対のカムスプロケット210,210とクランクスプロケット220とが配置されており、スプロケット210,210,220の間にタイミングチェーン230が無端状となって掛け渡されている。タイミングチェーン230の移動路上には、チェーンガイド240が揺動自在に配置されており、タイミングチェーン230はチェーンガイド240を摺動するようになっている。エンジン本体200には、取付面250が形成されており、テンショナー100は取付面250の取付孔260を貫通するボルト270によって取付面250に固定される。図示を省略するが、エンジン本体200の内部には、潤滑用のオイルが封入されている。
図18及び図19は、一般的に用いられているテンショナー100を示し、ケース110の内部には、回転シャフト120及び推進シャフト130が組み付けられて配置されている。ケース110は、これらのシャフト120,130を挿入するために軸方向に延びる本体部111と、本体部111から軸方向と交差する方向に延びるフランジ部112とを有している。フランジ部112はテンショナー100をエンジン本体200に対する取り付けを行うものであり、このため、フランジ部112には、エンジン本体200に螺合するボルトが貫通するための取付孔113が形成されている。本体部111は後述する各部品を収容するものであり、このため、内部には同一径の収納孔114が軸方向に沿って形成されている。
回転シャフト120及び推進シャフト130の組み付けは、回転シャフト120の外面に雄ねじ部121を形成する一方、推進シャフト130の内面に雌ねじ部131を形成し、これらのねじ部121,131を螺合させることによって行われる。回転シャフト120の基端側の端部に対応したケース110の内部には、受け座140が収納孔114内に位置するように設けられており、受け座140によって回転シャフト120の基端部が支持されている。組み付け状態では、推進シャフト130は回転シャフト120の前側略半分部分に螺合しており、推進シャフト130が螺合していない後側の略半分部分には捩りばねからなる付勢ばね150が配置されている。
付勢ばね150は一端のフック部151が回転シャフト120の基端部に形成されているスリット123に挿入されて係止され、他端のフック部152がケース110に係止されている。従って、付勢ばね150を捩って所定のトルクを付与させた状態で組み立てると、付勢ばね150の付勢力によって回転シャフト120が回転する。
ケース110の先端部分には、軸受160が止め輪170によって固定されており、推進シャフト130は軸受160の摺動孔161を貫通している。軸受160の摺動孔161の内面及び推進シャフト130の外面は、略小判形状や平行カット、その他の非円形に形成されており、これにより推進シャフト130は回転が拘束された状態となっている。
軸受160は所定厚さの平板形状に成形されており、外周側には複数の固定片162が形成されている。そして、固定片162がケース110の先端部分に形成されている切欠溝115に嵌合することにより、軸受160の全体が回転止めされた状態となっている。このように軸受160がケース110に対して回転止めされることにより、軸受160を貫通した推進シャフト130が軸受160を介してケース110に回転拘束されるため、この回転拘束状態で推進シャフト130がケース110に対して進退する。
推進シャフト130の先端には、キャップ180が取り付けられ、このキャップ180が上述したエンジン本体200内のチェーンガイド240と接触している。
ケース110の内部には、スペーサ190が配置されている。スペーサ190は、回転シャフト120及び推進シャフト130の周囲を囲んだ状態で軸方向(推進方向)に延びた筒状となっており、螺合状態のシャフト120,130がケース110の先端部分から抜け出ることを防止している。この抜け止めを行うため、回転シャフト120はスペーサ190との突き当てが可能な鍔付き形状に成形されている。
以上の構造のテンショナー100では、付勢ばね150の付勢力によって回転シャフト120が回転し、この回転力が推進シャフト130の推進力に変換されるため、推進シャフト130が進出する。これにより、推進シャフト130はキャップ180及びチェーンガイド240を介してタイミングチェーン230を押し付けるため、タイミングチェーン230に張力を付与することができる。
図18及び図19に示すテンショナー100では、付勢ばね150によって回転付勢されている回転シャフト120が滑って回転したり、細かな正逆回転をすることがあり、このような回転シャフト120の不安定な回転挙動により推進シャフト130が不安定な進退運動を行う問題を有している。このような回転シャフト120の不安定な回転挙動を防止するため、従来では、特開2005−180661号公報、特開2003−184968号公報に記載されたテンショナーが開発されている。
特開2005−180661号公報のテンショナーは、回転シャフトに鍔状の押え環を形成する一方、押え環に間隔を有して対向する押えリングをケース内に圧入し、これら押え環及び押えリングの間に圧縮ばねを配置するものである。圧縮ばねは回転シャフトに外挿されるように圧縮状態で配置される。これにより、圧縮ばねは押え環を介して回転シャフトの軸端部がケースに密着するように付勢する。この付勢により、回転シャフトが良好な摩擦トルクを有してケースに密着するため、回転シャフトの不安定な回転挙動を防止できる。
特開2003−184968号公報のテンショナーは、圧縮ばねを圧縮状態で回転シャフトと推進シャフトとの間に配置するものである。圧縮ばねは回転シャフトに外挿された状態で両端部が回転シャフト及び推進シャフトに当接するように配置される。この構造では、圧縮ばねと回転シャフトとの間に摩擦トルクが発生するため、この摩擦トルクによって回転シャフトの不安定な回転挙動を防止している。
特開2005−180661号公報 特開2003−184968号公報
特開2005−180661号公報及び特開2003−184968号公報のテンショナーでは、回転シャフトの不安定な回転挙動を防止しているため、推進シャフトが安定して進退する。これに対し、エンジンの機種によっては、回転シャフトの不安定な回転挙動をさらに強力に防止して推進シャフトを安定して進退させ、これにより安定した挙動を確保できるテンショナーが要求される。
本発明は、このような要求に対応するためになされたものであり、安定した挙動を確保することが可能なテンショナーを提供することを目的とする。
請求項1記載の発明のテンショナーは、ねじ部によって螺合した第1のシャフト部材及び第2のシャフト部材と、第1のシャフト部材を一方向に回転付勢する付勢ばねとがケースに収容され、第2のシャフト部材の回転を拘束して前記付勢ばねの回転付勢力を第2のシャフト部材の推進力に変換するテンショナーであって、前記第1のシャフト部材は軸端部がケースに直接又は間接的に接触した状態で回転し、前記第1のシャフト部材との間で摩擦トルクを発生する摩擦部材が第1のシャフト部材と直接又は間接的に接触するように設けられ、前記第1のシャフト部材の軸端部がケースと接触するように付勢する弾性部材が摩擦部材と接触するように設けられ、前記摩擦部材は回転が拘束されていることを特徴とする。
請求項1記載の発明では、摩擦部材が第1のシャフト部材に直接又は間接的に接触することにより、第1のシャフト部材との間で摩擦トルクが発生する。弾性部材は摩擦部材と接触することにより、第1のシャフト部材の軸端部がケースと接触するように摩擦部材を付勢する。摩擦部材は回転拘束されている。
請求項1記載の構造では、摩擦部材が回転拘束されているため、第1のシャフト部材の回転力が摩擦部材に伝達されても摩擦部材が回転することがない。従って、摩擦部材と接触している弾性部材が捩られることがなく、弾性部材は第1のシャフト部材の軸端部がケースに接触する付勢力を有効に作用させる。これにより、第1のシャフト部材が滑ったり、細かに正逆回転することを防止でき、第1のシャフト部材に螺合している第2のシャフト部材が安定した進退運動を行う。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のテンショナーであって、前記摩擦部材は前記ケースに直接又は間接的に係合することにより、回転が拘束されていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のテンショナーであって、前記第1のシャフト部材に一体回転する回転体が設けられ、前記摩擦部材は前記回転体と接触して摩擦トルクを発生することを特徴する。
請求項4記載の発明は、請求項3記載のテンショナーであって、前記摩擦部材は、前記回転体を挟み込むように複数が設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、摩擦部材が回転拘束されているため、第1のシャフト部材の回転力が摩擦部材に伝達されても摩擦部材が回転することがなく、摩擦部材と接触している弾性部材が捩られることがない。従って、弾性部材は第1のシャフト部材の軸端部がケースに接触する付勢力を有効に作用させることができる。このため、第1のシャフト部材の回転挙動が安定し、第1のシャフト部材に螺合している第2のシャフト部材が安定して進退する。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態のテンショナーA1を示す。テンショナーA1は、ケース2、第1のシャフト部材3、第2のシャフト部材4、付勢ばね5、摩擦部材6、弾性部材7を備えている。
ケース2は、胴部2a及びフランジ部2bにより形成されている。フランジ部2bは軸方向と直交する方向に延びており、胴部2aはフランジ部2bの一側から軸方向に延びている。胴部2aには収納孔2cが形成されている。収納孔2cの先端部分は開放されており、この開放部分から第1及び第2のシャフト部材3、4、付勢ばね5、摩擦部材6、弾性部材7の組立体が収容される。
ケース2のフランジ部2bは、エンジン本体の取り付けを行うものであり、エンジン本体に螺合するボルト(図示省略)が貫通する取付孔2jが形成されている。フランジ部2bをエンジン本体に取り付けることにより、フランジ部2bから延びている胴部2aの全体がエンジン本体の内部に挿入される。図1及び図3に示すように、胴部2aには、胴部2aの長さ方向に沿った窓スリット2dが円周上の複数箇所に形成されている。窓スリット2dを形成することにより、エンジン本体内の潤滑油をケース2内に導入することができるため、作動の際の焼き付きを防止できる。
第1のシャフト部材3及び第2のシャフト部材4は、径方向で重なった位置となるように配置されるものであり、第1のシャフト部材3が内側に位置し、第2のシャフト部材4が外側に位置している。第1のシャフト部材3は付勢ばね6によって回転付勢されることにより回転し、第2のシャフト部材4は第1のシャフト部材3が回転することによりケース2から推進する。
第1のシャフト部材3は、フランジ部2b側のシャフト部3aと、シャフト部3aから軸方向に延びるねじシャフト部3bとが一体的に形成されて構成されており、ねじシャフト部3bの外周には、雄ねじ(ねじ部)8が形成されている。雄ねじ8はねじシャフト部3bの略全長にわたって形成される。シャフト部3aの軸端部には、第1のシャフト部材3を回転させるための巻締め治具(図示省略)の先端が挿入されるスリット3eが形成されている。スリット3eはケース2のフランジ部2bを貫通している治具孔2eと連通しており、巻締め治具の先端を治具孔2eからスリット3eに挿入し、スリット3eを介して第1のシャフト部材3を回転させることにより、付勢ばね5を巻締めることができる。付勢ばね5の巻き締めの後、シールボルト(図示省略)を螺合させることにより治具孔2eは封鎖される。
第1のシャフト部材3はシャフト部3aの軸端部(図1及び図4において、下端部)がケース2内に設けた受け座9に挿入されることにより回転が支承される。受け座9への挿入により、シャフト部3aの軸端部の基端面は、受け座9の端面に接触する。シャフト部3aの軸端部が受け座9と接触することにより、第1のシャフト部材3と受け座9(すなわちケース2)との間に摩擦トルクが発生し、摩擦トルクが発生した状態で第1のシャフト部材3が回転する。なお、ケース2に受け座9を設けることなく、ケース2の内面にシャフト部3aの軸端部を直接に接触させる構造としても良い。
シャフト部3aとねじシャフト部3bとの間には、連設部3dがくびれた状態で設けられている。連設部3dはシャフト部3aの径よりも小径となっており、これによりシャフト部3aには、連設部3dよりも外側に位置する接触面3fが形成される。接触面3fは後述するように、摩擦部材6が接触するものである。
第2のシャフト部材4は筒状に形成されており、基端側の内面には、第1のシャフト部材3の雄ねじ8が螺合する雌ねじ(ねじ部)10が形成されている。第2のシャフト部材4において、雌ねじ10が形成されている部分の外周が円形となっており、この円形部分を除いた他の部分の外周は平行カットが施されることにより、非円形となっている。図2において、4aは円形部分、4bは非円形部分である。第2のシャフト部材4の先端には、キャップ11が取り付けられ、スプリングピン12が圧入されることにより外れ止めされている。
図2に示すように、ケース2の先端部分には、ガイド13が取り付けられ、サークリップ14により固定されている。ガイド13は、摺動孔13aを有しており、摺動孔13a内を第2のシャフト部材4の非円形部分4bが摺動可能に貫通している。摺動孔13aの内面は、第2のシャフト部材4の非円形部分と同じ非円形に形成されている。従って、ガイド13は第2のシャフト部材4の軸方向への移動を許容するが、第2のシャフト部材4の回転を拘束するように作用する。なお、ガイド13の摺動孔13a及びこれを貫通する第2のシャフト部材4の非円形部分4bは、Dカット形状や略小判形状或いは多角形状等の非円形としても良い。
この実施形態において、付勢ばね5としてはぜんまいばねが使用されている。ぜんまいばねからなる付勢ばね5は、第1のシャフト部材3のシャフト部3aの外側に設けられている。付勢ばね5は、図3に示すように一端側のフック部5aがケース2に形成された窓スリット2dに挿入されて係止される一方、図2に示すように他端側のフック部5bがシャフト部3aのスリット3eに挿入されて係止される。これにより付勢ばね5を巻き締めてトルクを付与することにより、付勢ばね5は第1のシャフト部材3を一方向に回転付勢する。回転付勢された第1のシャフト部材3の回転は螺合しているねじ部8、10によって第2のシャフト部材4に伝達されるが、第2のシャフト部材4がガイド13によって回転拘束されているため、第2のシャフト部材4はケース2に対して進退する。
図2に示すように、摩擦部材6は第1のシャフト部材3の連設部3dに外挿されている。図6に示すように、摩擦部材6は円形板状に形成されており、その中央部分には第1のシャフト部材3のねじシャフト部3bよりも幾分大径の孔部6aが形成されている。このとき、連設部3dはねじシャフト部3よりも小径となっているため、連設部3dに外挿された摩擦部材6は連設部3dと所定の隙間を有しており、第1のシャフト部材3に対して回転フリーとなっている。第1のシャフト部材3への取り付けにより、摩擦部材6は第1のシャフト部材3の接触面3fと接触し、この接触により摩擦部材6と第1のシャフト部材3との間で摩擦トルクが発生する。
弾性部材7は、コイル状に巻回された圧縮ばねが使用されている。圧縮ばねからなる弾性部材7は、両端部が摩擦部材6及びガイド13に当接するようにこれらの間に配置される。弾性部材7はある程度圧縮された(撓まされた)状態で摩擦部材6及びガイド13の間に配置され、摩擦部材6が第1のシャフト部材3の接触面3fと接触するように付勢している。また、摩擦部材6を第1のシャフト部材3と接触するように付勢することにより、弾性部材7は摩擦部材6を介して、第1のシャフト部材3におけるシャフト部3aの軸端部が受け座9と接触するように付勢している。
弾性部材7は、第2のシャフト部材4の径方向外側に設けられる。この実施形態において第2のシャフト部材4の径方向外側には、スペーサ16が外挿される。スペーサ16は円筒等の筒状となっており、基端部が摩擦部材6に当接することにより螺合状態の第1及び第2のシャフト部材3,4がケース2から抜け出ないように作用している。弾性部材7はスペーサ16のさらに外側に配置されることにより第2のシャフト部材4の径方向外側に位置している。
図2及び図4に示すように、摩擦部材6は中央部分の孔部6aが2段状に形成されると共に、外周部分が2段状に形成されている。2段状となっている摩擦部材6の孔部6aには、第1のシャフト部材3におけるシャフト部3aのショルダー部分が案内されて接触する。この接触により、摩擦部材6と第1のシャフト部材3との間に摩擦トルクが発生する。このように2段状となっている孔部6aにシャフト部3aのショルダー部分が挿入されることにより、摩擦部材6と第1のシャフト部材3の位置ずれを防止できるため、安定した摩擦トルクを得ることができる。
2段状となっている外周部分は、弾性部材7の他端側に挿入されて弾性部材7と接触しており、この接触により弾性部材7は摩擦部材6を第1のシャフト部材3と接触する方向に付勢している。このように2段状となった摩擦部材6の外周部分が弾性部材7に挿入されることにより、弾性部材7の座りが安定するため、弾性部材7が傾くことを防止できる。以上のように、この実施形態では、摩擦部材6の外周部分及び孔部6aを2段状として第1のシャフト部材3及び弾性部材7を案内しているため、偏心や位置ずれを防止できる。このことにより第1のシャフト部材3の螺合している第2のシャフト部材4の進退をさらに安定させることが可能となり、テンショナーの挙動をより安定させることができる。この場合、摩擦部材6の外周部分又は孔部6aのいずれか一方を2段状とした構造であっても良い。
摩擦部材6には、ケース2と係合する係合片19が形成されている。係合片19は摩擦部材6の外周部分を径方向に延ばすことにより形成される。この実施形態では、図4に示すように、孔部6aを挟んで対向した位置となるように一対の係合片19が形成されている。各係合片19は図2及び図3に示すように、ケース2の窓スリット2d内に挿入されてケース2と直接に係合する。ケース2との係合により、摩擦部材6は回転が拘束された状態となる。
次に、この実施形態の作用を説明する。摩擦部材6が第1のシャフト部材3のシャフト部3aと接触する一方、弾性部材7が摩擦部材6と接触している。このことにより、弾性部材7は摩擦部材6を介して第1のシャフト部材3が受け座9(すなわちケース2)と接触するように付勢している。第1のシャフト部材3は付勢ばね5の回転付勢力及び第2のシャフト部材4からの外部荷重の入力によって往復回転運動を行い、この回転運動が摩擦部材6に伝達される。
しかしながら、係合片19がケース2に係合しているため、摩擦部材6は回転することがない。従って、摩擦部材6と接触している弾性部材7が捩られることがなく、弾性部材7は第1のシャフト部材3の軸端部が受け座9に接触する付勢力を有効に作用させることができる。これにより、第1のシャフト部材3が滑ったり、細かに正逆回転することが防止でき、第1のシャフト部材3に螺合している第2のシャフト部材4が安定した振幅で進退運動し、安定した挙動を確保することができる。この実施形態では、摩擦部材6の外周部分と孔部6aとの双方を2段状とすることにより、テンショナーの挙動をさらに安定させることができる。この場合、外周部分及び孔部6aのいずれか一方を2段状としても良く、双方を2段状としなくても良い。
図5は、本発明の第2実施形態のテンショナーA2を示す。テンショナーA2では、筒状のスペーサ16にヘッド部16aが形成されている。ヘッド部16aはスペーサ16の軸方向の先端部分(上部部分)に形成されており、その外周部分で弾性部材7の一端側を受けている。ヘッド部16aにおけるガイド13側の外周部分は、基端側に向かって傾斜するテーパ面16bとなっており、テーパ面16bがガイド13の屈曲部分と当接する。このような構造では、弾性部材7からのトルクがスペーサ16に作用することによりスペーサ16が調心されるため、弾性部材7を径方向に偏在することなく配置できるメリットがある。その他の構造は、第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同様に作用することができる。
図6〜図11は、本発明の第3実施形態のテンショナーA3を示す。この実施形態のテンショナーA3では、第1のシャフト部材3に回転体21が設けられ、回転体21の上下に一対の摩擦部材が配置されている。
図9に示すように、回転体21は外形が円形となった平板状に形成されている。回転体21の中央部分には、平行カット等によって非円形となっている軸孔21aが形成されており、軸孔21aに第1のシャフト部材3が貫通する。第1のシャフト部材3には、図8に示すように、そのシャフト部3aの先端部分(上端部分)に段部を介して伝達部24が形成されている。伝達部24は軸孔21aに対応した非円形断面となっており、回転体21の軸孔21aが嵌合する。従って、回転体21は第1のシャフト部材3の軸方向への移動が可能な状態で第1のシャフト部材3と共に一体回転する。
一対の摩擦部材は、第1の摩擦部材22及び第2の摩擦部材23からなり、これらが回転体21を上下から挟み込むように配置される。第1の摩擦部材22は回転体21の上部に配置され、弾性部材7に臨んでいる。第1の摩擦部材22は、図10に示すように、円形板状のフランジ部22aの中央部分から円形の軸部22bが立ち上がった形状となっている。軸部22bは第2のシャフト部材4よりも大径の軸孔が貫通しており、この軸孔に第2のシャフト部材4が挿通する。従って、第1の摩擦部材22は回転フリーとなっていると共に、軸方向への移動が可能となっている。
第1の摩擦部材22のフランジ部22aは、下面が回転体21と接触し、上面に弾性部材7の基端部が接触している。フランジ部22aが回転体21と接触することにより、第1の摩擦部材22と回転体21(すなわち、第1のシャフト部材3)との間に摩擦トルクが発生する。弾性部材7はその付勢力により、摩擦トルクが大きくなるように作用する。
フランジ部22aには、係合片24が一体的に形成される。係合片24はフランジ部22aの外周部分を径方向に延ばすことにより形成されるものであり、軸部22bを挟んで対向した位置となるように一対が設けられている。各係合片24は図6及び図7に示すように、ケース2の窓スリット2d内に挿入されてケース2と直接に係合する。ケース2との係合により第1の摩擦部材22は回転が拘束された状態となる。
第2の摩擦部材23は図11に示すように、円形板状に成形されており、その中央部分には第2のシャフト部材4及び第1のシャフト部材3よりも大径の軸孔23aが形成されている。従って、第2の摩擦部材23は回転フリーとなっていると共に、軸方向への移動が可能となっている。第2の摩擦部材23はその上面が回転体21と接触して回転体21(すなわち、第1のシャフト部材3)との間に摩擦トルクを発生させる。
第2の摩擦部材23にも、係合片25が形成される。係合片25は第2の摩擦部材23の外周部分を径方向に延ばすことにより形成されるものであり、軸孔23aを挟んで対向した位置となるように一対が設けられている。各係合片25は図6及び図7に示すように、ケース2の窓スリット2d内に挿入されてケース2と直接に係合する。ケース2との係合により第2の摩擦部材23は回転が拘束された状態となる。この場合、各係合片25は窓スリット2dの底面に支承されており、第2の摩擦部材23自体及び回転体21、第1の摩擦部材22の基端部側(下方側)への移動を阻止している。
この実施形態では、第1のシャフト部材3と一体的回転する回転体21に対し、第1の摩擦部材22及び第2の摩擦部材23が上下から挟んでおり、摩擦トルクが発生する摩擦面が回転体21に複数設けられる。これにより、摩擦トルクが複数箇所から発生するため、第1のシャフト部材3の細かな正逆回転運動を抑制することができる。又、第1の摩擦部材22及び第2の摩擦部材23は、ケース2に対して回転が拘束されているため、摩擦部材22,23は回転することがなく、摩擦部材22と接触している弾性部材7が捩られることがない。このため、弾性部材7は、第1の摩擦部材22及び回転体21を介して第1のシャフト部材3の軸端部が受け座9に接触する付勢力を有効に作用させることができ、第1のシャフト部材3が滑ったり、細かに正逆回転することが防止できる。従って、第1のシャフト部材3に螺合している第2のシャフト部材4が安定した振幅で進退運動する。
なお、この実施形態では、回転体21、第1の摩擦部材22、第2の摩擦部材23及び弾性部材7を組み立ててユニット化し、別部材としてケース2内に組み込んでも良い。また、弾性部材7としては、皿ばね等の圧縮ばね以外のばねを用いることも可能である。
図12〜図14は、本発明の第4実施形態のテンショナーA4を示す。この実施形態においても、第1のシャフト部材3に板状の回転体21が一体回転するように設けられると共に、一対の摩擦部材26、27より回転体21を上下から挟み込む構造となっている。
第1の摩擦部材26は、スペーサを兼ねるものである。すなわち、図12及び図13に示すように、第1の摩擦部材26は軸方向に延びる筒部26aを有し、筒部26aの先端部がガイド13に臨むことにより、第1のシャフト部材3及び第2のシャフト部材4の抜け止めを行っている。筒部26a内には、螺合状態の第1のシャフト部材3及び第2のシャフト部材4が挿入されており、第1の摩擦部材26は軸方向への移動が可能となっている。筒部26aの基端部(下端部)には、円形板状のフランジ部26bが径方向に延びるように一体的に形成されている。フランジ部26bは回転体21と接触するものであり、回転体21との接触により回転体21(すなわち、第1のシャフト部材3)との間に摩擦トルクが発生する。
フランジ部26bの外周部分には、径方向に延びた係合片28が一体的に形成される。係合片28は筒部26aを挟んで対向した位置となるように一対が設けられる。各係合片24は図12に示すように、ケース2の窓スリット2d内に挿入されてケース2と直接に係合する。ケース2との係合により第1の摩擦部材26は回転が拘束された状態となる。
第2の摩擦部材27は、第1の摩擦部材26との間で回転体21を挟み込むものである。図14に示すように、第2の摩擦部材27は円形板状の摩擦面部27aと、摩擦面部27aから先端(上方)に向かって立ち上がる複数の枠部27bとを有している。複数の枠部27bは、摩擦面部27aの円周方向に沿って離間されて形成されており、複数の枠部27bにかけてコイル状圧縮ばねからなる弾性部材7が配置される。この場合、第1の摩擦部材26の係合片28は枠部27bの間を挿通するように組み付けられる。なお、第2の摩擦部材27には、第2のシャフト部材4よりも大径となって第1のシャフト部材3及び第2のシャフト部材が貫通する軸孔27cが形成されており、第2の摩擦部材27は回転フリーとなっている。
この実施形態において、第2の摩擦部材27の内部に弾性部材7をセットして図12のように組み付けると、第1の摩擦部材26のフランジ部26bが回転体21に上方から接触すると共に第2の摩擦部材27の摩擦面部27aが回転体の下方から接触する。このとき、第2の摩擦部材27内の弾性部材7は、第1の摩擦部材26のフランジ部26bと接触して第1の摩擦部材26を付勢する。
この実施形態では、摩擦トルクが発生する摩擦面が回転体21に複数設けられ、摩擦トルクが複数箇所から発生するため、第1のシャフト部材3の細かな正逆回転運動を抑制することができる。又、第1の摩擦部材26がケース2に対して回転が拘束されているため、摩擦部材26,27は回転することがなく、第1の摩擦部材26と接触している弾性部材7が捩られることがない。従って、弾性部材7は、第1の摩擦部材26及び回転体21を介して第1のシャフト部材3の軸端部が受け座9に接触する付勢力を有効に作用させることができ、第1のシャフト部材3が滑ったり、細かに正逆回転することが防止でき、第1のシャフト部材3に螺合している第2のシャフト部材4が安定した振幅で進退運動する。
図15〜図19は、本発明の第5実施形態のテンショナーA5を示す。この実施形態のテンショナーA5においては、付勢ばね5としてコイル状の捩りばねを用いている。付勢ばね5としての捩りばねは、第1及び第2のシャフト部材3,4の軸方向に沿って延びており、一端側のフック部5aがケース2に形成されたスリット2gに挿入されて係止され、他端側のフック部5bが第1のシャフト部材3のスリット3eに挿入されて係止される。従って、付勢ばね5を巻き締めてトルクを付与することにより、付勢ばね5は第1のシャフト部材3を一方向に回転付勢する。ケース2はフランジ部2bが胴部2aの中間部分から外方に延びた形状となっており、フランジ部2bよりも先端側の部分がエンジン本体に挿入される。従って、この実施形態では、ケース2の胴部2aの基端部分はエンジン本体の外部に露出する。
この実施形態における第1のシャフト部材3には、回転体21が一体回転するように設けられる。図16に示すように、第1のシャフト部材3には、外形が平行カット等の非円形となった連結部3gが中間部分に形成されている。回転体21は図17に示すように、円形板状に成形されており、その軸孔21aが平行カット等の非円形に形成され、軸孔21aが連結部3gに嵌合することにより、回転体21は第1のシャフト部材3に対し一体回転可能で且つ軸方向移動可能となる。
図15において、31は摩擦部材、32は受け座である。摩擦部材31は図18に示すように、大径の円形の軸孔31aを有した円形板状に形成されており、回転体21の下側から接触するように配置され、回転体21との間で摩擦トルクを発生させる。摩擦部材31は軸方向移動可能である。摩擦部材31には、一対の係合片33が直径方向で対向するように形成されている。係合片33は後述する受け座32に係合するものであり、この係合により摩擦部材31は回転が拘束される。
受け座32は図19に示すように立体形状に形成されている。受け座32は底部32a及び枠部32bを有している。底部32aはケース2内部における段付き状の軸端部の形状に圧入可能なように、ケース2の軸端部に合わせた段付き形状に形成されている。図15に示すように、底部32aをケース2の軸端部に圧入すると、受け座32がケース2に固定される。ケース2への固定状態において、第1のシャフト部材3におけるシャフト部3aの軸端部が底部32aの底面32cに接触して第1のシャフト部材3の回転が支承される。
受け座32の枠部32bは図19に示すように、底部32aから立ち上がっており、底部32aの外周部分を覆っている。枠部32bの内部には、弾性部材7としての皿ばね、摩擦部材31及び回転体21が配置される。回転体21は枠部32bの底面と接触するように配置されており、回転体21と枠部32b(受け座32)との間に摩擦トルクが発生する。弾性部材7を構成する皿ばねは、受け座32の底部32aと摩擦部材31との間に配置され、これにより、摩擦部材31が回転体21に接触するように付勢している。
受け座32における枠部32bの側面部分には、一対の切欠部32dが形成されている。一対の切欠部32dには、摩擦部材31の係合片33が挿入されて係合する。この係合により、摩擦部材31が回転拘束される。すなわち、この実施形態では、摩擦部材31がケース2に圧入された受け座32に回転拘束されていることから、摩擦部材31はケース2に対し間接的に回転が拘束される。
この実施形態では、回転体21の上下面で摩擦トルクが発生するため、回転体21を備えた第1のシャフト部材3の細かな正逆回転運動を抑制することができる。又、摩擦部材31はケース2に圧入固定された受け座32に回転が拘束されているため、摩擦部材31が回転することがなく、摩擦部材31と接触している弾性部材(皿ばね)7が捩られることがない。従って、第1のシャフト部材3が滑ったり、細かに正逆回転することが防止でき、第1のシャフト部材3に螺合している第2のシャフト部材4が安定した振幅で進退運動する。
図20〜図22は、本発明の第6実施形態のテンショナーA6を示す。この実施形態においては、第4実施形態のテンショナーA4と同様に、摩擦部材35がスペーサを兼ねるものである。このため、摩擦部材35は第2のシャフト部材4よりも大径となって軸方向に延びる筒部35aが形成され、第1のシャフト部材3及び第2のシャフト部材4が螺合状態で筒部35a内に挿入される。
図21に示すように、摩擦部材35の先端部分(上端部分)には、周方向に沿って複数の係合片36が形成されている。係合片36は、ケース2に係合するものであり、この係合により摩擦部材35の回転が拘束される。図22に示すように、ケース2には複数のスリット2gが係合片36に対応するように形成されており、各スリット2gに係合片36が係合可能となっている。
摩擦部材35の下端部は、第1のシャフト部材3と直接に接触する接触部35bとなっている。接触部35bが第1のシャフト部材3と接触するため、第1のシャフト部材3には摩擦部材35の筒部35aの径に対応した大きさの受け面部37が形成されている。接触部35bと受け面部37とが接触することにより、摩擦部材35と第1のシャフト部材3との間に摩擦トルクが発生する。
この実施形態において、圧縮ばねからなる弾性部材7を摩擦部材35の係合片36とガイド13との間に配置することにより、弾性部材7が摩擦部材35の接触部35bを受け面部37と接触するように付勢する。摩擦部材35はケース2に対して回転拘束されているため、弾性部材7が捩られることがない。従って、第1のシャフト部材3が滑ったり、細かに正逆回転することが防止でき、第1のシャフト部材3に螺合している第2のシャフト部材4が安定した振幅で進退運動する。
本発明の第1実施形態のテンショナーを示す正面図である。 図1におけるY1−Y1線断面図である。 図2におけるY2−Y2線断面図である。 (a),(b),(c)は摩擦部材の平面図、Y3−Y3線断面図、底面図である。 第2実施形態のテンショナーを示す断面図である。 第3実施形態のテンショナーを示す断面図である。 図6におけるY4−Y4線断面図である。 (a),(b),(c),(d)は第3実施形態に用いる第1のシャフト部材の平面図、正面図、底面図、Y5−Y5線断面図である。 (a),(b)は第3実施形態に用いる回転体の平面図、Y6−Y6線断面図である。 (a),(b)は第3実施形態に用いる第1の摩擦部材の平面図及びY7−Y7線断面図である。 (a),(b)は第3実施形態に用いる第2の摩擦部材の平面図及びY8−Y8線断面図である。 第4実施形態のテンショナーの断面図である。 (a),(b)は第4実施形態に用いる第1の摩擦部材の平面図及びY9−Y9線断面図である。 (a),(b)は第4実施形態に用いる第2の摩擦部材の平面図及びY10−Y10線断面図である。 第5実施形態のテンショナーを示す断面図である。 第5実施形態に用いる第1のシャフト部材の正面図及び底面図である。 (a),(b)は第5実施形態に用いる回転体の平面図及びY11−Y11線断面図である。 (a),(b)は第5実施形態に用いる摩擦部材の平面図及びY12−Y12線断面図である。 (a),(b)は第5実施形態に用いる受け座の平面図及びY13−Y13線断面図である。 本発明の第6実施形態のテンショナーを示す断面図である。 (a),(b)は第6実施形態に用いる摩擦部材の平面図、Y14−Y14線断面図である。 (a),(b)は第6実施形態に用いるケースの平面図、Y15−Y15線断面図である。 テンショナーをエンジン本体に装着した状態を示す部分破断正面図である。 従来のテンショナーを示す平面図である。 図24におけるQ−Q線断面図である。
符号の説明
A1、A2、A3、A4、A5、A6 テンショナー
2 ケース
3 第1のシャフト部材
4 第2のシャフト部材
5 付勢ばね
6、31、35 摩擦部材
7 弾性部材
21 回転体
22、26 第1の摩擦部材
23、27 第2の摩擦部材
9、32 受け座

Claims (4)

  1. ねじ部によって螺合した第1のシャフト部材及び第2のシャフト部材と、第1のシャフト部材を一方向に回転付勢する付勢ばねとがケースに収容され、第2のシャフト部材の回転を拘束して前記付勢ばねの回転付勢力を第2のシャフト部材の推進力に変換するテンショナーであって、
    前記第1のシャフト部材は軸端部がケースに直接又は間接的に接触した状態で回転し、前記第1のシャフト部材との間で摩擦トルクを発生する摩擦部材が第1のシャフト部材と直接又は間接的に接触するように設けられ、前記第1のシャフト部材の軸端部がケースと接触するように付勢する弾性部材が摩擦部材と接触するように設けられ、前記摩擦部材は回転が拘束されていることを特徴とするテンショナー。
  2. 前記摩擦部材は前記ケースに直接又は間接的に係合することにより、回転が拘束されていることを特徴とする請求項1記載のテンショナー。
  3. 前記第1のシャフト部材に一体回転する回転体が設けられ、前記摩擦部材は前記回転体と接触して摩擦トルクを発生することを特徴とする請求項1又は2記載のテンショナー。
  4. 前記摩擦部材は、前記回転体を挟み込むように複数が設けられていることを特徴とする請求項3記載のテンショナー。
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