JP2007100868A - オートテンショナ - Google Patents

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Abstract

【課題】鋸歯状ねじ部を有するオートテンショナにおいて、回転力や回転モーメントをねじ部に作用させず、かつ組み付けの容易化を図る。
【解決手段】エンジンカバー8のねじ孔9に係合する雄ねじ12を有するハウジング11のシリンダ室14内のナット部材16に17にロッド部材18をねじ係合。ロッド部材18をプッシュロッド18aとアジャストスクリュ18bに分割し、チェーンガイド6からプッシュロッド18aに作用する回転力や回転モーメントをアジャストスクリュ18bに伝達させない。プッシュロッド18aを支持するウェアリング21のリング収容溝23にストッパリング25を組み込む。プッシュロッド18aのストッパ溝26にストッパリング25を係合し、リング収容溝23の保持部27にてストッパリング25を保持し、プッシュロッド18aを押し込んだ状態でオートテンショナを組み付け、エンジンをクランキングさせて初期セットを解除。
【選択図】図2

Description

この発明は、主として、カム軸を駆動するチェーンや歯付きベルトの張力を一定に保持するオートテンショナに関するものである。
一般に、クランク軸の端部に取付けられたスプロケットとカム軸の端部に取付けられたスプロケット間にチェーンをかけ渡したカム軸駆動用のチェーン伝動装置においては、チェーンの弛み側に揺動可能なチェーンガイドを接触し、そのチェーンガイドにオートテンショナの調整力を負荷してチェーンの張力を一定に保つようにしている。
上記チェーン伝動装置に採用されるオートテンショナとして、特許文献1に記載されたものが従来から知られている。このオートテンショナにおいては、ボディ内にロッドを先端に有するナット部材をスライド自在に挿入し、そのナット部材の内周に形成された鋸歯状の雌ねじにボルト部材の外周に形成された鋸歯状の雄ねじをねじ係合し、上記ナット部材をボディの内部に組込まれたリターンスプリングによって外方への突出性を付与し、チェーンからチェーンガイドを介してナット部材のロッドに負荷される押し込み力を鋸歯状ねじの圧力側フランクで受けてナット部材の後退動を阻止し、上記押し込み力がリターンスプリングの押圧力より大きい場合に、その押し込み力とリターンスプリングのばね力とが釣り合う位置までナット部材を回転させつつ後退動させてチェーンの張力を一定に保つようにしている。
また、チェーンに弛みが生じた場合に、リターンスプリングの押圧力により、ナット部材を回転させつつ前進動させてチェーンの弛みを吸収するようにしている。
実開平1−41755号公報
ところで、上記従来のオートテンショナにおいては、揺動可能に支持されたチェーンガイドにナット部材に設けられたロッドの先端を当接させる組付けであり、その組付け誤差等により、上記当接部にずれが生じると、ナット部材に回転力が負荷される。
また、チェーンガイドは揺動自在の支持であり、そのチェーンガイドの揺動によってチェーンの振動を吸収するため、チェーンガイドに先端のロッドが当接されたナット部材に傾動させようとする回転モーメントが負荷され、その回転モーメントはナット部材とボルト部材のねじ係合部に直接作用することになる。
ここで、ナット部材に回転力が負荷されると、ナット部材は回転しつつ軸方向に移動することになり、チェーンの緊張時には、チェーンの振動を抑制する抵抗力が減少し、鋸歯状ねじの作動特性を有効に発揮させることができず、チェーンの張力を一定に保持することができなくなる。
また、ナット部材に負荷される回転モーメントが鋸歯状ねじに直接作用すると、鋸歯状ねじ部に噛み込みが生じてナット部材が動かなくなるという不都合を発生する可能性がある。
さらに、上記従来のオートテンショナにおいては、ナット部材がリターンスプリングにより付勢されてロッドが外部に大きく突出する伸張状態にあるため、エンジンブロックに対するオートテンショナの初期の組み込みに際しては、ナット部材のロッドに回転力を負荷してナット部材をボデイ内に後退させ、その後退状態を保持して組み付けを行う必要があるため、組み付け非常に手間がかかるという不都合がある。
この発明の課題は、鋸歯状ねじによってチェーンの張力を一定に保つようにしたオートテンショナにおいて、揺動可能なチェーンガイドとの当接によって回転力や回転モーメントが負荷されても、その回転力や回転モーメントが鋸歯状ねじ部に作用されないようにして常に安定した動作が得られるようにすること、および初期の組み付けの容易化を図ること、さらには初期のセット状態を自動的に解除できるようにすることである。
上記の課題を解決するために、この発明においては、一端が開口するシリンダ室が形成されたハウジングと、そのハウジングのシリンダ室内に組込まれたナット部材と、そのナット部材の内周の雌ねじにねじ係合される雄ねじを後端部の外周に有するロッド部材と、そのロッド部材に外方向への突出性を付与するリターンスプリングとからなり、前記ハウジングのシリンダ室の閉塞端部側の外周に、エンジンカバーに形成されたテンショナ取り付け用のねじ孔にねじ係合される雄ねじと、エンジンカバーの表面に対する当接によってハウジングのねじ込み量を規制するフランジとを設け、前記ロッド部材を、前記リターンスプリングの押圧力が負荷される軸方向に移動可能なプッシュロッドと、雄ねじを外周に有するアジャストスクリュとに分割し、前記シリンダ室の開口端部内にはプッシュロッドをスライド自在に支持するウェアリングを圧入し、前記ナット部材の内部にアジャストスクリュをプッシュロッドに向けて付勢するコイルスプリングを組み込み、前記ナット部材の雌ねじとアジャストスクリュの雄ねじを、アジャストスクリュに負荷される押し込み力を受ける圧力側フランクのフランク角が遊び側フランクのフランク角より大きい鋸歯状ねじとした構成を採用している。
上記の構成から成るオートテンショナは、エンジンカバーに形成されたねじ孔にハウジングの雄ねじをねじ係合して締め付け、リターンスプリングの押圧力が負荷されたプッシュロッドで揺動可能なチェーンガイドを押圧してチェーンを緊張させる。
上記のようなチェーンの張力調整状態において、チェーンに弛みが生じると、リターンスプリングの押圧によりプッシュロッドが前進し、チェーンガイドをチェーンに押し付けてチェーンの弛みを吸収する。
また、チェーンが緊張し、そのチェーンからチェーンガイドを介してプッシュロッドに押し込み力が負荷されると、その押し込み力は鋸歯状ねじの圧力側フランクで支持され、プッシュロッドは後退動しない。上記押し込み力がリターンスプリングのばね力より大きい場合、その押し込み力とばね力とが釣り合う位置までアジャストスクリュは回転しつつ後退動してチェーンの張力を一定に保つ。
上記のようなチェーンの張力調整時、チェーンガイドが揺動すると、そのチェーンガイドとプッシュロッドの接触部にずれ動きが生じてプッシュロッドに傾動させようとする回転モーメントが負荷される。このとき、プッシュロッドとアジャストスクリュは、対向端面が衝合し、分離されたものであるため、アジャストスクリュには回転モーメントが負荷されることはない。このため、雌ねじと雄ねじのねじ係合部が噛み込むという不都合の発生はない。
ここで、プッシュロッドの後端部にシリンダ室の内径面に沿って摺動可能なスライド部材を設けておくと、プッシュロッドに負荷される回転モーメントは、スライド部材とシリンダ室の嵌合面、およびプッシュロッドとウェアリングの嵌合面の2箇所で支持されることになるため、アジャストスクリュに回転モーメントが負荷されるのをより確実に防止することができる。
オートテンショナの組付け時、組付け誤差等により、プッシュロッドの先端面中心に対する偏心位置がチェーンガイドと接触する場合がある。このとき、チェーンガイドの揺動によってプッシュロッドに回転力が負荷されるが、プッシュロッドとアジャストスクリュは分離されて同軸上に配置されているため、アジャストスクリュに回転力が負荷されることはない。
このため、アジャストスクリュが回転して軸方向に移動するという不都合の発生はなく、チェーンの緊張時に、チェーンの振動を抑制する抵抗力の減少を防止し、鋸歯状ねじの作動特性を有効に発揮させることができる。
ここで、プッシュロッドの後端面とアジャストスクリュの先端面における少なくとも一方を球面とすると、プッシュロッドからアジャストスクリュへの回転力の伝達をより確実に防止することができる。
この発明に係るオートテンショナにおいて、プッシュロッドとウェアリングの相互間に、プッシュロッドを押し込み状態に保持すると共にプッシュロッドに押し込み力が負荷されると保持を解除する保持手段を設けておくと、その保持手段によってプッシュロッドを押し込み状態に保持することができるため、オートテンショナの組み付けの容易化を図ることができる。
ここで、保持手段として、ウェアリングのシリンダ室開口端から外部に位置する先端部の内径面にリング収容溝と、外径面からそのリング収容溝に貫通する切欠部とを設け、前記リング収容溝内には径方向に弾性変形可能なスットパリングを縮径状態で組み込み、そのストッパリングの両端に設けられた一対の操作片を前記切欠部内に挿入し、前記プッシュロッドの先端部外周には前記ストッパリングが係合可能なストッパ溝を設け、前記リング収容溝のシリンダ室開口端側の前側部にストッパ溝に係合するストッパリングを係合状態に保持する保持部を設けた構成から成るものを採用することができる。
上記保持手段において、保持部は小径溝からなるものであってもよく、あるいはテーパ面からなるものであってもよい。
保持手段を有するオートテンショナにおいては、そのオートテンショナの組み付け後にエンジンをクランキングさせると、チェーンが緊張し、その緊張するチェーンでプッシュロッドが押し込まれてプッシュロッドの保持が解除されるため、オートテンショナの初期セットを自動的に解除することができる。
また、この発明に係るオートテンショナにおいて、ウェアリングの内径面にリング溝を設け、そのリング溝内にシールリングを組み込んでウェアリングとプッシュロッドの嵌合面間を密封することにより、シリンダ室内に封入された潤滑油の外部への漏洩を防止することができるため、シリンダ室の開口端部内に対するシール部材の組み込みを不要とすることができ、部品点数の少ない簡単な構成のコストの安いオートテンショナを得ることができる。
この場合、リング溝の一側面に沿ってウェアリングを軸方向に2分割すると、リング溝に対してシールリングを容易に組み込むことができる。
上記のように、チェーンガイドに調整力を負荷するロッド部材をプッシュロッドとアジャストスクリュとに分割したことにより、上記チェーンガイドからプッシュロッドに回転力や回転モーメントが負荷されても、これらの回転力や回転モーメントがアジャストスクリュに伝達されることはなく、チェーンの緊張時に、チェーンの振動を抑制する抵抗力が減少したり、鋸歯状ねじ部に噛み込みが生じる等の不都合の発生を防止し、チェーンの張力を常に一定に保持することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、カム軸駆動用チェーンの張力調整装置を示す。図示のように、クランク軸1の端部に取付けられたスプロケット2と、カム軸3の端部に取付けられたスプロケット4間にはチェーン5がかけ渡され、そのチェーン5の弛み側にチェーンガイド6が設けられている。
チェーンガイド6は、その下端部に設けられた軸7を中心として揺動可能とされている。このチェーンガイド6およびチェーン5はエンジンブロックに取り付けられるエンジンカバー(タイミングカバー)8によって覆われている。
エンジンカバー8には、テンショナ取り付け用のねじ孔9が設けられ、そのねじ孔9にチェーンガイド6を押圧してチェーン5を緊張させるオートテンショナ10が取り付けられている。
図2に示すように、オートテンショナ10は円筒状のハウジング11を有し、そのハウジング11の一端部外周にはエンジンカバー8のねじ孔9にねじ係合される雄ねじ12が設けられている。また、ハウジング11の一端部にはエンジンカバー8の表面に対する当接によってハウジング11のねじ込み量を規制するフランジ13が設けられている。
さらに、ハウジング11には他端において開口するシリンダ室14が形成され、そのシリンダ室14の開口端部内に組み込まれたシール部材15は、シリンダ室14内に封入された潤滑油の外部への漏洩を防止している。
シリンダ室14内にはナット部材16が組込まれ、そのナット部材16の内周に雌ねじ17が形成されている。また、シリンダ室14内にはロッド部材18と、そのロッド部材18に外方向への突出性を付与するリターンスプリング19とが組込まれている。
ロッド部材18は、プッシュロッド18aと、アジャストスクリュ18bとに分割されている。プッシュロッド18aはシール部材15をスライド自在に貫通し、シリンダ室14内に位置する後端部には、シリンダ室14の内径面に沿って摺動可能なスライド部材20が設けられ、そのスライド部材20にリターンスプリング19の押圧力が負荷されている。
一方、シリンダ室14の開口部には、シール部材15の外端側に上記プッシュロッド18aをスライド自在に支持するウェアリング21が圧入されている。ウェアリング21とプッシュロッド18aの相互間には、プッシュロッド18aがシリンダ室14内に押し込まれた初期セット状態に保持する保持手段22が設けられている。
図2乃至図4に示すように、保持手段22は、ウェアリング21のシリンダ室14の開口端から外部に位置する先端部の内径面にリング収容溝23と、外径面からそのリング収容溝23に貫通する切欠部24とを形成し、上記リング収容溝23内に径方向に弾性変形可能なストッパリング25を縮径状態で組み込み、そのストッパリング25の両端部に形成された一対の操作片25aを上記切欠部24内に挿入し、上記プッシュロッド18aの先端部外周にはストッパ溝26を設け、そのストッパ溝26に係合する縮径状態の上記ストッパリング25をリング収容溝23のシリンダ室14開口端側に設けた保持部27で保持してプッシュロッド18aを押し込み状態に保持するようにしている。
ここで、保持部27は、小径溝からなり、その小径溝からなる保持部27の内径面にストッパリング25が弾性接触する状態で、そのストッパリング25の内径はプッシュロッド18aの外径より小径とされている。
図2および図5に示すように、アジャストスクリュ18bは、雄ねじ28を外周に有し、その雄ねじ28がナット部材16の雌ねじ17にねじ係合している。その雄ねじ28と雌ねじ17のねじ係合部およびスライド部材20とシリンダ室14の摺動面間は、シリンダ室14内に封入された潤滑油によって潤滑される。
アジャストスクリュ18bには、その後端面で開口するスプリング収容孔29が形成され、そのスプリング収容孔29の開口端部の内周に雌ねじ30が形成されている。一方、ハウジング11には、シリンダ室14の閉塞端壁にねじ孔31が設けられ、そのねじ孔31はプラグ32のねじ込みによって閉塞されている。
プラグ32と上記スプリング収容孔29の閉塞端面間にはコイルスプリング33と、ピンから成るスプリングシート34とが組込まれている。スプリングシート34は頭部34aを有し、その頭部34aに形成された球形表面34bがスプリング収容孔29の閉塞端に押し付けられて点接触している。
コイルスプリング33は、アジャストスクリュ18bをプッシュロッド18aに向けて付勢し、その付勢によってアジャストスクリュ18bの先端面に設けられた突軸部35の先端の球面35aがプッシュロッド18aの後端面に押し付けられている。
図5に示すように、ナット部材16の内周に形成された雌ねじ17とアジャストスクリュ18bの外周に形成された雄ねじ28のねじ山は、アジャストスクリュ18bが押し込まれた際の押し込み力を受ける圧力側フランク36のフランク角が遊び側フランク37のフランク角より大きい鋸歯状とされ、その鋸歯状ねじ山にコイルスプリング33の押圧力によってアジャストスクリュ18bが回転しつつ軸方向に移動するリード角が設けられている。
実施の形態で示すチェーンの張力調整装置は上記の構造からなり、図2はストッパ溝26に縮径状態のストッパリング25が係合し、そのストッパリング25が保持部27により係合状態に保持されたオートテンショナ10の初期セット状態を示す。その初期セット状態において、エンジンカバー8のねじ孔9に対するハウジング11のねじ込みによりオートテンシヨナ10の組み付けを行う。
オートテンショナ10の組み付け状態において、エンジンをクランキングさせると、チェーン5が緊張し、その緊張するチェーン5によりチェーンガイド6を介してプッシュロド18aが押し込まれ、ストッパリング25が保持部27から離反する。そのストッパリング25がリング収容溝23と対向すると、ストッパリング25は自己の弾性により拡径し、ストッパ溝26に対する係合が解除する。
ストッパリング25とストッパ溝26の係合解除により、プッシュロッド18aはリターンスプリング19の押圧により前進して、図6に示すように、チェーンガイド6を押圧すると共に、コイルスプリング33の押圧によりアジャストスクリュ18bが回転しつつ前進して、プッシュロッド18aの後端に当接し、チェーン5は張力調整状態に保持される。
このように、オートテンショナ10の組み付け後、エンジンをクランキングさせることにより、プッシュロッド18aが押し込まれて、ストッパ溝26に対するストッパリング25の係合が解除するため、オートテンショナ10の初期セットを自動的に解除することができ、解除をし忘れるという不都合の発生はない。
図6に示すチェーン5の張力調整状態において、カム軸3の回転によるトルク変動等によりチェーン5が振動し、そのチェーン5の弛み側チェーンに弛みが生じると、リターンスプリング19の押圧力によりプッシュロッド18aが外方に移動してチェーンガイド6を押圧し、その押圧によってチェーン5の弛みが吸収される。
プッシュロッド18aが外方向に移動するとき、コイルスプリング33の押圧力によりアジャストスクリュ18bが回転しつつプッシュロッド18aに向けて移動して、突軸部35の先端の球面35aがプッシュロッド18aの後端面に当接する。
一方、チェーン5の弛み側チェーンの張力が増大し、そのチェーン5からチェーンガイド6を介してプッシュロッド18aに押し込み力が負荷されると、上記押し込み力はアジャストスクリュ18bにも負荷される。このため、ナット部材16の雌ねじ17とアジャストスクリュ18bの雄ねじ28の圧力側フランク36が互に密着し、その密着する圧力側フランク36によって上記押し込み力が受けられる。
上記押し込み力がリターンスプリング19の押圧力より強い場合、互に密着する圧力側フランク36の接触面で滑りが生じ、アジャストスクリュ18bは上記押し込み力とリターンスプリング19の押圧力とが釣り合う位置までゆっくりと回転しつつ後退してチェーン5の張力を一定に保持する。
このとき、アジャストスクリュ18bとスプリングシート34、およびアジャストスクリュ18bとプッシュロッド18aとは点接触であるため、アジャストスクリュ18bの回転抵抗は小さく、アジャストスクリュ18bはスムーズに回転し、チェーン5の張力変化にスムーズに追従する。
ここで、オートテンショナ10の調整力が負荷されるチェーンガイド6は軸7を中心として揺動自在に支持されているため、チェーンガイド6からプッシュロッド18aに押し込み力が負荷されるとき、プッシュロッド18aに傾動させようとする回転モーメントが負荷される。
このとき、プッシュロッド18aの後端部に設けられたスライド部材20はシリンダ室14の内径面に沿って摺動自在とされ、また、シリンダ室14の開口部に設けられたウェアリング21はプッシュロッド18aをスライド自在に支持しているため、プッシュロッド18aに負荷される回転モーメントは、シリンダ室14とスライド部材20の嵌合面、およびプッシュロッド18aとウェアリング21の嵌合面の2箇所で支持されることになる。
このため、アジャストスクリュ18bに回転モーメントが負荷されることはなく、雌ねじ17と雄ねじ28のねじ係合部に噛み込みが生じるという不都合の発生はない。
オートテンショナ10の組付け時、その取付け誤差等により、プッシュロッド18aの先端面中心に対する偏心位置がチェーンガイド6に当接する組付けとされる場合がある。このとき、チェーンガイド6の揺動によってプッシュロッド18aに回転力が負荷されることになるが、そのプッシュロッド18aとアジャストスクリュ18bは同軸上の配置であって、アジャストスクリュ18bの突軸部35の先端の球面35aがプッシュロッド18aの後端面に点接触しているため、アジャストスクリュ18bに上記回転力が負荷されることはない。
このため、アジャストスクリュ18bが回転して軸方向に移動するという不都合の発生はなく、チェーン5の緊張時に、チェーン5の振動を抑制する鋸歯状ねじ部での摩擦抵抗力の減少を防止し、鋸歯状ねじの作動特性を有効に発揮させることができる。
エンジン周りのメンテナンスにおいて、チェーン5やオートテンショナ10が取り除かれると、リターンスプリング19の押圧によってプッシュロッド18aが外方に移動し、また、コイルスプリング33の押圧によりアジャストスクリュ18bが回転しつつプッシュロッド18aに向けて移動して、オートテンショナ10は伸長状態となる。
このため、メンテナンス後のオートテンショナ10の再組付けに際しては、オートテンショナ10を収縮状態にして組付けを行なう必要がある。
オートテンショナ10の収縮に際しては、プラグ32を取外し、コイルスプリング33およびスプリングシート34をねじ孔31から外部に取り出したのち、ねじ孔31にボルトを挿入してスプリング収容孔29の内周の雌ねじ30にねじ係合し、そのボルトに回転力を負荷してアジャストスクリュ18bをナット部材16の内側に納まる位置まで後退させる。
アジャストスクリュ18bの後退後、プッシュロッド18aをリターンスプリング19の弾性に抗して押し込む。ストッパ溝26がリング収容溝23と対向する位置までプッシュロッド18aを押し込むと共に、ストッパリング25の一対の操作片25aを摘んでストッパリング25を縮径し、そのストッパリング25をストッパ溝26に係合させる。そして、リターンスプリング19の押圧によりプッシュロッド18aを前進させ、保持部27に対するストッパリング25の係合により、ストッパリング25を係合状態に保持し、オートテンショナ10が収縮保持されたセット状態で、そのオートテンショ10の再組み付けをおこなう。
なお、オートテンショナ10の組み付け後は、前述と同様に、エンジンをクランキングさせてセット状態を解除する。
図7では、保持部27として小径溝からなるものを示したが、保持部27はこれに限定されるものではない。例えば、図8に示すように、リング収容溝23のシリンダ室14開口端側の側面をテーパ面40とし、そのテーパ面40を保持部としてもよい。テーパ面40からなる保持部においては、プッシュロッド18aを少し押し込むことによって、ストッパリング25の係合を直ちに解除することができる。
また、図5に示す例においては、プッシュロッド18aの後端面を平面とし、その後端面にアジャストスクリュ18bの突軸部35の球面35aを接触させるようにしたが、図9に示すように、突軸部35の先端面を平面とし、プッシュロッド18aの後端に球面41を設けるようにしてもよい。
図10に示すように、ウェアリング21の内径面にリング溝42を形成し、そのリング溝42にシールリング43を組み込んで、プッシュロッド18aとウェアリング21の嵌合面間を密封することにより、図2に示すシール部材15の組み込みを不要とすることができ、オートテンショナ10の部品点数の低減とコストの低減を図ることができる。
この場合、図11で示すように、リング溝42の一側面に沿ってウェアリング21を軸方向に2分割することにより、ウェアリング21の分割面からシールリング43の組み込みを行うことができるため、リング溝42に対してシールリング43を容易に組み込むことができる。
なお、図11では、シールリング43としてXリングを示したが、Oリングを用いるようにしてもよい。
この発明に係るオートテンショナを採用したチェーンの張力調整装置の概略図 この発明に係るオートテンショナの縦断正面図 図2のIII−III線に沿った断面図 ストッパリングの保持部を示す拡大断面図 アジャストスクリュの組込み部を拡大して示す断面図 チェーンの張力調整状態を示す縦断正面図 プッシュロッドの保持解除状態を示す断面図 保持部の他の例を示す断面図 アジャストスクリュの他の例を示す断面図 ウェアリングの他の例を示す断面図 ウェアリングのさらに他の例を示す断面図
符号の説明
11 ハウジング
14 シリンダ室
16 ナット部材
17 雌ねじ
18 ロッド部材
18a プッシュロッド
18b アジャストスクリュ
19 リターンスプリング
20 スライド部材
21 ウェアリング
23 リング収容溝
24 切欠部
25 スットパリング
26 スットパ溝
27 保持部
35a 球面
36 圧力側フランク
37 遊び側フランク
40 テーパ面(保持部)
42 リング溝
43 シールリング

Claims (9)

  1. 一端が開口するシリンダ室が形成されたハウジングと、そのハウジングのシリンダ室内に組込まれたナット部材と、そのナット部材の内周の雌ねじにねじ係合される雄ねじを後端部の外周に有するロッド部材と、そのロッド部材に外方向への突出性を付与するリターンスプリングとからなり、前記ハウジングのシリンダ室の閉塞端部側の外周に、エンジンカバーに形成されたテンショナ取り付け用のねじ孔にねじ係合される雄ねじと、エンジンカバーの表面に対する当接によってハウジングのねじ込み量を規制するフランジとを設け、前記ロッド部材を、前記リターンスプリングの押圧力が負荷される軸方向に移動可能なプッシュロッドと、雄ねじを外周に有するアジャストスクリュとに分割し、前記シリンダ室の開口端部内にはプッシュロッドをスライド自在に支持するウェアリングを圧入し、前記ナット部材の内部にアジャストスクリュをプッシュロッドに向けて付勢するコイルスプリングを組み込み、前記ナット部材の雌ねじとアジャストスクリュの雄ねじを、アジャストスクリュに負荷される押し込み力を受ける圧力側フランクのフランク角が遊び側フランクのフランク角より大きい鋸歯状ねじとしたオートテンショナ。
  2. 前記プッシュロッドの後端面とアジャストスクリュの先端面における一方を球面とした請求項1に記載のオートテンショナ。
  3. 前記プッシュロッドのシリンダ室内に位置する後端部にシリンダ室の内径面に沿って摺動可能なスライド部材を設けた請求項1又は2に記載のオートテンショナ。
  4. 前記プッシュロッドとウェアリングの相互間に、プッシュロッドを押し込み状態に保持すると共にプッシュロッドに押し込み力が負荷されると保持を解除する保持手段を設けた請求項1乃至3のいずれかに記載のオートテンショナ。
  5. 前記保持手段が、ウェアリングのシリンダ室開口端から外部に位置する先端部の内径面にリング収容溝と、外径面からそのリング収容溝に貫通する切欠部とを設け、前記リング収容溝内には径方向に弾性変形可能なスットパリングを縮径状態で組み込み、そのストッパリングの両端に設けられた一対の操作片を前記切欠部内に挿入し、前記プッシュロッドの先端部外周には前記ストッパリングが係合可能なストッパ溝を設け、前記リング収容溝のシリンダ室開口端側の前側部にストッパ溝に係合するストッパリングを係合状態に保持する保持部を設けた構成から成る請求項4に記載のオートテンショナ。
  6. 前記保持部が、小径溝からなる請求項5に記載のオートテンショナ。
  7. 前記保持部が、テーパ面からなる請求項5に記載のオートテンショナ。
  8. 前記ウェアリングの内径面にリング溝を形成し、そのリング溝内にウェアリングとプッシュロッドの嵌合面間を密封するシールリングを組み込んだ請求項1乃至7のいずれかに記載のオートテンショナ。
  9. 前記ウェアリングをリング溝の一側面に沿って軸方向に2分割した請求項8に記載のオートテンショナ。
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