JP4931761B2 - ケーキ用起泡性乳化剤組成物 - Google Patents
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また、「共立て法」とは、卵を卵白と卵黄に分離せず全卵のまま使用するケーキ生地製法のことであり、例えば、スポンジケーキの場合は、卵、砂糖類、起泡性乳化剤組成物等を起泡させ、その後小麦粉等の穀粉類、水、油脂類、風味素材等を配合し軽く混合してケーキ生地とする。また、「別立て法」とは、卵を卵白と卵黄に分け、卵白の高い起泡力を利用するケーキ生地製法のことであり、例えば、スポンジケーキの場合は、卵白に砂糖を添加して起泡したメレンゲ生地と、卵黄や全卵、砂糖類、ケーキ用型起泡性乳化剤組成物等を起泡させた生地とを混合し、その後小麦粉等の穀粉類、水、油脂類、風味素材等を配合し軽く混合してケーキ生地とする。
しかし、「オールインミックス法」で製造したケーキ、とくにスポンジケーキは、小麦粉等の穀粉類と水性成分とを同時に起泡させるため、起泡時間が長くなり、小麦粉のグルテン形成が起こり易く、その他の方法に比べ、食感(しとり感、ソフト性及び口溶け)が悪くなるという問題がある。
そのため、上記問題を解決するために、ケーキ生地に添加物を配合する方法が提案されてきた。
また、ケーキ生地に水不溶性あるいは水膨潤性カルボキシメチルセルロースや微結晶セルロースを添加し、生地の粘着性を低下させ作業性を向上する方法(例えば特許文献3及び4参照)も紹介されているが、これらの方法では生地粘度が低下するため起泡力が低下し、ケーキのしとり感の改善がなされないという問題があった。
しかし、これらの文献は、発明の名称にもあるとおりドウ組成物に関する出願であり、ドウではなく、バッターであるケーキ生地に添加することについては具体的な記載はなく、また、ベーカリー生地への添加方法についても粉体原料に混合して生地に直接配合する方法しか述べられていない。そのため、ケーキ生地原料の粉体原料にメチルセルロースを添加・混合してケーキを製造すると、ケーキ生地中に微細で均質な気泡を安定して生成させることができず、そのため、得られるケーキは、ボリュームが小さく、きめが粗く不均質な内相になってしまうことに加え、ねちゃついた食感となり口溶けが悪くなるという問題があった。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、水相中にメチルセルロースを0.1〜4質量%(ケーキ用起泡性乳化剤組成物基準)含有し、油脂を1〜40質量%含有し、水中油型であることを特徴とするケーキ用起泡性乳化剤組成物を提供するものである。
本発明に用いるメチルセルロースは、グルコース環単位当り、水酸基を平均1.0〜2.5、好ましくは1.2〜2.0、最も好ましくは1.4〜1.9個メトキシル基で置換したものである。メトキシル基による置換が1.0より小さいと、吸湿性が強く水への溶解性が非常に悪くなり、メトキシル基による置換が3を超えると水へ溶解しなくなり好ましくない。なお、メチルセルロースの2質量%水溶液を20℃で測定したときの粘度が好ましくは50〜10000mPa・s、より好ましくは100〜7000mPa・s、さらに好ましくは100〜3000mPa・s、最も好ましくは100〜1000mPa・sとなるメチルセルロースを使用することが好ましい。
また、本発明の効果は、メチルセルロースがケーキ用起泡性乳化剤組成物の水相の中に含まれる形態で存在するために得られるものであり、メチルセルロースがケーキ用起泡性乳化剤組成物の油相の中に含まれる形態で存在する場合や、メチルセルロースをケーキ生地に直接添加したのでは本発明の効果は得られない。
これは、良好な内相のケーキを得るためには、ケーキ生地において微細な気泡を多量に生成させ、且つ、加熱時にその気泡が破壊されることなく膨張し、固定されることが必要であることが知られているが、メチルセルロースがケーキ用起泡性乳化剤組成物の油相の中に微粉末の状態で含まれる形態で存在する場合や、メチルセルロースが生地に直接添加されると薄い膜構造の粗い気泡が生成するのに対し、メチルセルロースが起泡性乳化剤組成物の水相中に含まれると、起泡時に強い膜構造の微細な気泡が生成するためと思われる。
そのために生地を加熱(焼成又は蒸成)する際の気泡安定性に差が出ているものと考えられる。
なお、2種の乳化剤を選択する場合、構成脂肪酸がベヘン酸であるソルビタン脂肪酸エステルと、構成脂肪酸がベヘン酸であるショ糖脂肪酸エステルとの組み合わせか、又は構成脂肪酸がベヘン酸であるソルビタン脂肪酸エステルと、構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルとの組み合わせであることが好ましい。
該成分としては、例えば、メチルセルロース以外のゲル化剤や増粘剤、糖類、澱粉類、穀粉類、無機塩及び有機酸塩、乳製品、卵製品、その他各種食品素材全般、着香料、調味料等の呈味成分、酸化防止剤、着色料、保存料、pH調整剤等を挙げることができる。
上記有機酸塩としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸水素ナトリム、酒石酸水素カリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリム、リンゴ酸カリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム、コハク酸カリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
本発明のケーキ用起泡性乳化剤組成物は、例えば、メチルセルロースを含有する水相と、油相とを乳化することにより得ることができる。
まず水相及び油相を用意する。水相は、60〜85℃に加熱した水にメチルセルロース、糖類、有機酸塩、無機塩、水溶性乳化剤、水溶性蛋白質、水溶性食物繊維、水溶性色素等の水溶性成分を加えて、溶解させ、水相とする。一方、食用油脂を60〜80℃に加熱し、油溶性乳化剤、油溶性成分等を加え、溶解させ、油相とする。次いで、上記水相に上記油相を徐々に加え、水中油型の乳化物とする。この乳化物を冷却し、水中油型のケーキ用起泡性乳化剤組成物が得られる。なお、上記乳化は、攪拌羽根による攪拌、ホモジナイザー、ホモミキサー等の乳化機を使用することができる。
また、本発明のケーキ用起泡性乳化剤組成物を製造する際、窒素、空気等を含気させてもよい。
本発明のケーキは、本発明のケーキ用起泡性乳化剤組成物を使用して得られたケーキ生地を使用して得られたものであり、本発明のケーキは、内相が良好でボリュームが大きく、食感も良好であるという特徴を有する。
その製法としては、卵類、糖類、穀粉類、水、油脂類等のケーキ原料、及び本発明のケーキ用起泡性乳化剤組成物を使用して得られたケーキ生地を、焼成又は蒸すことによって得られる。
なお、詳細なケーキの種類やケーキ製法については上述のとおりである。
また、上記ケーキ原料における、卵類、糖類、穀粉類、水、油脂類については、本発明のケーキ用起泡性乳化剤組成物の原料で述べたものと同様のものを使用することができる。
<ケーキ用起泡性乳化剤組成物の製造>
表1に記載の油相原料を80℃に加熱して各成分を均質に溶解し、65℃に調温し、油相とした。一方、表1に記載の水相原料を75℃に加熱して各成分を均質に溶解し、65℃に調温し、油相とした。該水相をホモミキサーで攪拌しながら、該水相に該油相を徐々に添加し、予備乳化物を得た。これを掻取式熱交換機にて55℃まで冷却した後、これを20℃まで室温で放冷し、さらに5℃の冷蔵庫で5℃まで冷却し、実施例1〜実施例8及び比較例1〜2のケーキ用起泡性乳化剤組成物を得た。
なお、表1に記載の乳化剤の種類、主要結合脂肪酸の種類、及び構成脂肪酸中のベヘン酸の含有量については表2に記載した。
なお、得られたケーキ用起泡性乳化剤組成物の、油脂含有量、メチルセルロース含有量、乳化剤含有量及び水相含有量については、表3に記載した。
得られたケーキ用起泡性乳化剤組成物は、下記のスポンジケーキ製造試験Aに供した。
なお、比較例1で得られたケーキ用起泡性乳化剤組成物(メチルセルロースを含有しないケーキ用水中油型起泡性乳化油脂)については、下記のスポンジケーキ製造試験Bについても行い、これを比較例3とした。
全卵180質量部、上白糖110質量部、ケーキ用起泡性乳化剤組成物15質量部、転化糖液糖20質量部、牛乳20質量部、水25質量部、薄力粉100質量部、ベーキングパウダー1質量部をミキサーボウルに投入し、軽く混合した後、キッチンエイドミキサーでワイヤーホイッパーを使用して、最高速(240回/分)で比重が0.45となるまでホイップし、得られたケーキ生地を6号のケーキ型に入れ、150℃に設定した固定オーブンで40分間焼成した。得られたスポンジケーキは室温(25℃)で60分放冷した後、袋に密封して25℃で24時間保管し、下記のボリューム評価、硬さ評価、内相評価、及び官能評価を行った。
上記ケーキ用原材料として、メチルセルロース(メトローズSM−400)0.15質量部を添加した以外は、上記スポンジケーキの製造試験Aと同一の配合及び製法でスポンジケーキを製造し、同様の評価を行なった。
焼成24時間後のスポンジケーキのボリュームをレーザー体積計にて測定した。ボリュームは焼成したケーキの2個の平均値とした。このボリュームを下記評価基準により4段階に評価し、これをボリュームの評価とした。なお、結果については表4に記載した。
◎:1450ml超
○:1400ml超1450ml以下
△:1350ml超1400ml以下
×:1350ml以下
焼成24時間後のスポンジケーキの上部、下部、及び左右部を切り落とし、縦10cm×横10cm×高さ4cmの直方体状にした。これをTexture Analyser (stable micro systems社製)にて硬さを測定した。
硬さは、直径2cmのアダプターで、2cmまで押したときの硬さで、ケーキ2個の平均値とした。この硬さを下記評価基準により4段階に評価し、これを硬さの評価とした。なお、結果については表4に記載した。
◎:400g以下
○:400g超500g以下
△:500g超600g以下
×:600g超
焼成24時間後のスポンジケーキをスライスし、下記の評価基準に従い評価を行った。なお、結果については表4に記載した。
◎:微細な泡が均質に存在している
○:やや粗い泡であるが均質に存在している
△:やや不均質な内相である
×:芯が発生している。
18人のパネラーに、焼成24時間後のスポンジケーキを試食させ、スポンジケーキの食感(ソフト性、しとり感及び口溶け)について、下記の3点評価をさせ、その合計点を評価点数とし、下記評価基準に当てはめ官能評価結果とした。
5点:非常にソフトで、極めて良好な食感である
3点:ソフトな食感で、ほぼ良好な食感である
1点:やや硬い食感で、不良な食感である
5点:非常にしとり感があり、極めて良好である。
3点:ややしとり感があり、ほぼ良好である。
1点:ドライな食感で、不良である。
5点:良好な口溶けである
3点:ほぼ良好な口溶けである
1点:ワキシーな食感であるか、又はケーキが口中でほぐれにくく、不良な口溶けである。
◎ :合計点/人数が4.1点以上5.0点以下
○ :合計点/人数が3.1点以上4.0点以下
△ :合計点/人数が2.1点以上3.0点以下
× :合計点/人数が1.1点以上2.0点以下
××:合計点/人数が1.0点
Claims (2)
- 水相中にメチルセルロースを0.1〜4質量%(ケーキ用起泡性乳化剤組成物基準)含有し、油脂を1〜40質量%含有し、水中油型であることを特徴とするケーキ用起泡性乳化剤組成物。
- 乳化剤として、構成脂肪酸がベヘン酸であるソルビタン脂肪酸エステル、構成脂肪酸がベヘン酸であるショ糖脂肪酸エステル、及び構成脂肪酸がベヘン酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルのうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載のケーキ用起泡性乳化剤組成物。
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