JP4535977B2 - 食用起泡剤 - Google Patents

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本発明は、スポンジケーキ等の気泡含有食品を製造する際に用いる食用起泡剤に関し、生地中の気泡を安定化させて適度な大きさの気泡を形成することができ、食感、風味、口溶けの良い気泡含有食品を得ることのできる食用起泡剤に関する。
スポンジケーキ、パウンドケーキ等のケーキ類の気泡構造は卵の起泡力を利用して形成されているが、起泡構造はケーキ類の食感、ボリューム感の良否を左右するため、起泡力を高めたり気泡を安定化させるため、生地中に起泡剤を添加使用している。この種の起泡剤としては、グリセリン脂肪酸エステルと、HLB7以上の蔗糖脂肪酸エステルとを特定の比率で含む水中油型乳化物よりなる起泡剤(特許文献1)、蔗糖脂肪酸エステルと、HLB9以上のポリグリセリン脂肪酸エステルとを特定の割合で含み、平均乳化粒子径が3〜15μmの水中油型乳化物よりなる起泡剤(特許文献2)、グリセリン脂肪酸モノエステル、HLB7以上の蔗糖脂肪酸エステル、有機モノグリセライド及び/又はポリグリセリン脂肪酸エステルを特定の割合で含む水中油型乳化物よりなる起泡剤(特許文献3)等が提案されている。
特開平6−339340号公報 特開平9−201160号公報 特開平7−327597号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている起泡剤は、気泡を微細化し過ぎるためにケーキのキメが細かくなり過ぎて、食感が損なわれる虞があった。また特許文献2に記載されている起泡剤は、ホイップ時間が一定とならないため作業性が悪いという問題があり、特許文献3に記載の起泡剤もホイップ時間が一定にならないという問題と共に、低温において生地中への分散が悪いという問題があった。また上記した起泡剤を用いる場合でも、ケーキ類の風味を高めるためにケーキ生地に卵を添加することが多い。しかしながら、冷蔵庫で保存されていた低温の卵を生地に添加すると生地温度が低くなりこの結果、生地の粘度が低くなって起泡剤の分散が悪くなり、ミキシング時間が長くなると小麦粉中のグルテンが溶出してケーキに曳きがでたり、ケーキの目が細かくなって色が悪いケーキとなる等の問題がある。このため生地温度が低下しないように温度調節する等の煩雑な作業が必要となるといった問題があった。
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、油脂粒子が2つの粒子径分布を有するように乳化分散されている水中油型乳化物が、上記従来技術の欠点を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(1)糖アルコール、レシチン、グリセリン脂肪酸モノエステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む糖濃度60以上の水相と、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含む油相を乳化してなるO/W型乳化物よりなり、乳化されている油脂粒子が、5μm未満に頂点を有する粒径分布と、5μm以上、20μm以下に頂点を有する粒径分布の2つの粒径分布を有することを特徴とする食用起泡剤、
(2)レシチンが大豆レシチン、卵黄レシチンであり、蔗糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がステアリン酸であり、プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がベヘン酸であり、グリセリン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸がパルミチン酸、ステアリン酸である上記(1)の食用起泡剤、
を要旨とする。
本発明の食用起泡剤は、ケーキ生地への添加量が少なくても優れた起泡性を発揮し、低温で粘度が低い生地への分散性が良いため、ケーキ類を製造する際の作業性を向上できるとともに、ミキシング時間を一定にすることができるため生産性を向上できる。本発明の食用起泡剤を用いて得た生地はエア抜けや生地の分離などが起こりにくいなど安定性が良く、香料、着色料を添加しなくても共立て法ような色合い、粗いキメ、卵風味を有し、食感、口溶け感に優れたケーキ類を得ることができる。
本発明の食用起泡剤に用いる食用油脂としては、例えば大豆油、ナタネ油、綿実油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、ピーナッツ油、オリーブ油、米糠油等の植物油脂、魚油、牛脂、豚脂等の動物油脂、植物油脂や動物油脂のエステル交換油、上記動植物油脂、エステル交換油に水素添加した硬化油等が挙げられる。上記食用油脂は1種又は2種以上を混合して用いることができる。食用油脂としては常温で液状である大豆油、ナタネ油、綿実油、コーン油、サフラワー油、ひまわり油、ピーナッツ油、オリーブ油、米糠油等の植物油脂が好ましい。
本発明の起泡剤は、水中油型に乳化されている油脂粒子が、5μm未満に頂点を有する粒径分布と、5μm以上、20μm以下に頂点を有する粒径分布の、2つの粒径分布を有する粒度で分散されていることが必要であるが、1〜3μm未満に頂点を有する粒径分布と、8μm〜15μmに頂点を有する粒径分布を有する粒度で分散されていることが好ましい。乳化されている油脂粒子が1つの粒径分布しか有さない場合や、2つの粒径分布を有していても一方、又は両方の頂点が上記した範囲から外れる場合には、ミキシング時間が一定とならない、ケーキのキメが細かくなりすぎたり、粗くなりすぎて場合によっては芯の発生を伴うことがある。起泡剤の粒度分布測定は、SHIMADZU SALD2100(レーザー回折式粒度分布測定装置)を使用し、起泡剤をイオン交換水に分散し、屈折率:1.50−0.10iの条件にて測定を行うのが良い。
本発明の起泡剤に用いられる糖アルコールとしては、ソルビトール、エリスリトール、マンニット、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、パラニット、還元水飴等が挙げられる。これらの糖アルコールのうち、ソルビトールが好ましい。
本発明の起泡剤は、上記糖アルコールを10〜50重量%、レシチンを0.1〜2.0重量%、蔗糖脂肪酸エステルを3.0〜4.0重量%、グリセリン脂肪酸モノエステルを2〜9重量%含有することが好ましい。糖アルコールや乳化剤の量が上記範囲から外れると、乳化サイズが小さくなりすぎたり、分散性が悪くなり、乳化物がケーキ生地に分散しにくくなり、そのため、ミキシング時間が長くなりケーキの目が細かくなり、ケーキの食感に曳きが出たり、ねちゃついたりする虞がある。また本発明の起泡剤は糖濃度が60以上であることが好ましく、糖濃度60未満の場合、2つの粒度分布が維持され難くなる。尚、上記糖濃度は糖濃度計によって測定した値である。乳化剤として用いられるレシチンとしては、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、大豆レシチン、卵黄レシチン等が挙げられるこれらのレシチンの内、特に大豆レシチン、卵黄レシチンが好ましい。蔗糖脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸の主体がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が気泡を安定させる上で好ましい。グリセリン脂肪酸モノエステルとしては、例えば、構成脂肪酸の主体がミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸とグリセリンとのモノエステルが挙げられるが、パルミチン酸、ステアリン酸のモノエステルが気泡を安定させる上で好ましい。
本発明の起泡剤には、上記乳化剤の他に更にプロピレングリコール脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化剤として含み、これらを含んでいると、乳化物の乳化性や物性、食感の改良の点で好ましい。プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、構成脂肪酸の主体がベヘン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸などが挙げられる。これらのうちベヘン酸が好ましい。またポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、エステル化度が1〜10が好ましく、構成脂肪酸の主体としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等が挙げられる。またグリセリンの重合度としては2〜10の範囲が挙げられる。これらのうち、モノステアリン酸のデカグリセリンが好ましい。プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルは2種以上を併用することができる。プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの割合はプロピレングリコール脂肪酸エステル2.4〜4.0重量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル0.5〜2.0重量%が好ましい。
本発明の起泡剤は、上記成分の他に必要に応じて更に増粘多糖類、着色料、香料等を含有していても良い。起泡剤中におけるこれら成分の割合は起泡性、食感を損なわない程度が好ましい。
本発明の起泡剤は、糖アルコール及び、レシチン、グリセリン脂肪酸モノエステル、蔗糖脂肪酸エステルを含む糖濃度60以上の水相を60〜80℃にし、これに60〜80℃の油相を添加して水中油型に乳化し保持し、その後昇温して80〜100℃に保持した後、冷却することにより得ることができる。好ましくは水相の保持としては60〜80℃で10分〜30分保持することが好ましい。また、水中油型に乳化した後は80〜100℃で10分〜30分保持することが好ましい。起泡剤製造に際して、プロピレングリコール脂肪酸エステルは油相中に、ポリグリセリン脂肪酸エステルは水相中に添加する。レシチンを乳化剤として用いた水中油型乳化物を製造する場合、従来はレシチンを油相に添加して乳化を行っているが、本発明ではレシチンを添加する水相として、糖アルコールを含む糖濃度60以上の水相を用いることにより、安定した2つの粒径分布を有する乳化物が得られる。水相に油相を乳化するに際し、プロペラ攪拌式の乳化機等が用いられる。また乳化物を昇温保持後、冷却するためにボテーター、コンビネーター、パーフェクター等が用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
実施例1〜
表1に示す配合に基づき、室温において水相部の糖アルコール水溶液を調製した後、水相部の乳化剤を添加した。その後、昇温し62℃〜67℃の温度領域で、油相を添加して水中油型に乳化し10分間保持し、プロペラ攪拌を使用し乳化を行った。次いで昇温速度を1℃〜3℃/minで90〜95℃まで昇温して10分〜20分間保持し乳化サイズを整えた後、室温放置後調温庫に保管し15℃まで冷却した。得られた乳化物における油脂粒子の粒径分布を、SHIMADZU SALD2100(レーザー回折式粒度分布測定装置)を使用し、起泡剤をイオン交換水に分散して屈折率:1.50−0.10iの条件にて測定を測定したところ、2つの粒径分布を有していた。各粒径分布のピークに相当する粒径を表3に示した。
Figure 0004535977
表1において使用した各乳化剤は以下の通りである。
グリセリン脂肪酸モノエステル:理研ビタミン社製エマルジーMS
蔗糖脂肪酸エステル:三菱化学フーズ社製リョートーシュガーエステルS1170
ポリグリセリン脂肪酸エステル:太陽化学社製サンソフトQ18S
レシチン:エーディーエムファーイースト社製ウルトラレックP
プロピレングリコール脂肪酸エステル:理研ビタミン社製リケマールPB−100
比較例1〜4
表2に示す配合に基づき、比較例1〜3は室温において糖アルコール水溶液を調製した後、乳化剤を添加して水相部を調製した。また比較例4は室温において還元でん粉糖化物水溶液を調製した後、乳化剤を添加して水相部を調製した。但し、比較例1は蔗糖脂肪酸エステルを添加せず、比較例2は、グリセリン脂肪酸モノエステルを添加せず、比較例3はレシチンを添加せずにそれぞれ水相部を調製した。ついで水相部を昇温し62℃〜67℃の温度領域で、プロペラ攪拌しながら油相を添加して10分間保持し水中油型に乳化した。次いで昇温速度1℃〜3℃/minで90〜95℃まで乳化物を昇温して10分〜20分間保持し乳化サイズを整えた後、室温放置後調温庫に保管し15℃まで冷却した。比較例1は乳化物が得られず、乳化物が得られた比較例2〜4について油脂粒子の粒径分布を、SHIMADZU SALD2100(レーザー回折式粒度分布測定装置)を使用し、起泡剤をイオン交換水に分散して屈折率:1.50−0.10iの条件にて測定を測定したところ、2つの粒径分布を有していた。各粒径分布のピークに相当する粒径を表3に示した。
(表2)
Figure 0004535977
表2において使用した乳化剤は以下の通りである。
グリセリン脂肪酸モノエステル:理研ビタミン社製エマルジーMS
蔗糖脂肪酸エステル:三菱化学フーズ社製リョートーシュガーエステルS1170
ポリグリセリン脂肪酸エステル:太陽化学社製サンソフトQ18S
レシチン:エーディーエムファーイースト社製ウルトラレックP
プロピレングリコール脂肪酸エステル:理研ビタミン社製リケマールPB−100
Figure 0004535977
上記実施例1〜、比較例2〜4の各乳化物を起泡剤として用い、以下の配合・条件にてスポンジケーキを焼成した。
スポンジケーキ配合
薄力粉 100重量部
砂糖 110重量部
全卵 160重量部
水 25重量部
ベーキングパウダー 1重量部
起泡剤 12重量部
生地は関東ミキサーに20クォートミキサーボールと攪拌羽を用い、オールイン法で低速で15秒間ミキシングした後、中高速で生地比重が0.45に達するまでホイップして調製した。得られた生地を7号のデコ型に500g充填し、160℃のオーブンで40分間焼成した。実施例1〜の起泡剤の生地への分散性、ホイップ時間、得られたスポンジケーキの評価を表4に、比較例2〜4の起泡剤の生地への分散性、ホイップ時間、得られたスポンジケーキの評価を表5に示す。
Figure 0004535977
(表5)
Figure 0004535977
生地への分散性
起泡剤以外の原料の仕込み品温を5℃にし、オールインミックス法で生地を作成した際に、
○・・1分以内に生地中に分散する。
×・・分散に1分以上を要する。
として評価した。
ホイップ時間
ホイップ時間は、生地をすべてミキサーボールに仕込み始め低速で15秒攪拌後、中高速にてホイップして0.45になる時間までに要した合計時間とした。
スポンジケーキの風味、口溶けは、パネラー10名が以下の基準で評価した。
評価は、各人個別に他人の評価に影響されないように評価した。評価は、各項目について4段階(3点、2点、1点、0点)でそれぞれ評価をした。
スポンジケーキの風味
3点・・卵の味が非常に良く出ており、乳化剤の味がしない。
2点・・卵の味が出ており、乳化剤の味がしない。
1点・・卵の味が出ていないが、乳化剤の味はしない。
0点・・卵の味が出ておらず、乳化剤の味もする。
スポンジケーキの口溶け
3点・・生地がさっと口から溶けてなくなる
2点・・生地にネチャツキが無く口から溶けてなくなる。
1点・・生地がネチャツクが口から溶けてなくなる。
0点・・生地がネチャツキ、いつまでも口の中に存在する。
評価の基準として総合点が、25点以上が◎、20点〜24点が○、15点〜19点が△、14点以下=×とした。
内相の状態
スポンジケーキを縦方向と横方向に切りそれぞれ切断面を目視し内相状態を確認し、以下の基準で評価した。
◎・・キメが均一に開き、黄色
○・・キメが比較的細かく、黄色み薄い
△・・キメが非常に細かく白色
×・・キメが壊れていて商品価値なし

Claims (2)

  1. 糖アルコール、レシチン、グリセリン脂肪酸モノエステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む糖濃度60以上の水相と、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含む油相を乳化してなるO/W型乳化物よりなり、乳化されている油脂粒子が、5μm未満に頂点を有する粒径分布と、5μm以上、20μm以下に頂点を有する粒径分布の2つの粒径分布を有することを特徴とする食用起泡剤。
  2. レシチンが大豆レシチン、卵黄レシチンであり、蔗糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がステアリン酸であり、プロピレングリコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸がベヘン酸であり、グリセリン脂肪酸モノエステルを構成する脂肪酸がパルミチン酸、ステアリン酸である請求項1記載の食用起泡剤。
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