JP3540313B1 - ベーカリー製品用油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】保湿剤を、液状油を主原料とする食用油脂中に乳化剤により固定分散化したベーカリー製品用油脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベーカリー製品用油脂組成物及びそれを使用したベーカリー製品、具体的にはパン類、ケーキ類、ビスケット類等の焼き菓子に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベーカリー製品、特にパン類においては、製品保存中の老化抑制が従来から試みられており、乳化剤、多糖類等からなる増粘剤の添加等が検討されてきたが、未だ満足できるレベルには達しておらず、依然として研究が進められている。
【0003】
これまで、乳化剤のみでの老化防止技術が種々提案されてきたが、乳化剤のみで老化防止効果を発現させようとすると、その添加量を多くすることが必要となり、結果としてある程度の老化防止効果は得られるものの、過剰に添加した乳化剤自身が風味・食感に悪影響を及ぼし、総合的に満足のいくものは得られなかった。
【0004】
また、多糖類等からなる増粘剤を用いた従来の技術としては、増粘剤を粉末状態にて小麦粉等に分散させて用いる技術(特許文献1、2、3)、天然ガム剤とグリセリン脂肪酸エステルとを一定比率になるよう配合した組成物を用いる技術(特許文献4)、ガム質・デンプン質・蛋白質からなる組成物に一部食用油脂を加えたものを用いた技術(特許文献5)などが提案されているが、これら技術ではパン生地調製中に増粘剤自身が吸水・凝集してしまい、分散効率が低下することにより老化防止効果が低下する上、増粘剤の凝集物自身が食感に悪影響を及ぼし、ねとつき等を生じてしまい、口どけ感の低下が認められた。
【0005】
一方、上記問題点を改善するため、油中水型乳化組成物を含む油脂組成物中に増粘剤を分散させる技術(特許文献6、7、8、9)が提案されているが、油脂組成物中に水相が存在することより、増粘剤が水に接触することを防ぐことができず、増粘剤凝集抑制を防ぐには十分でなかった。
【0006】
【特許文献1】
特開昭63−248333号公報
【特許文献2】
特開平1−257422号公報
【特許文献3】
特開2002−291396号公報
【特許文献4】
特開昭63−71133号公報
【特許文献5】
特開昭60−160833号公報
【特許文献6】
特開昭58−183030号公報
【特許文献7】
特開昭64−63337号公報
【特許文献8】
特開平2−171136号公報
【特許文献9】
特開平6−22690号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はパンを中心とするベーカリー製品にあって、製品保存中の老化防止効果を向上させるとともに、従来の老化防止技術に見られる食感の低下、特に、ねとつき等の発現に伴う口どけ感の低下を抑制し得るベーカリー製品用油脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液状油からなる食用油脂(A)50〜85重量部、乳化剤(B)10〜30重量部、保湿剤(C)0.1〜10重量部を含有する油脂組成物であり、かつ下記であるベーカリー製品用油脂組成物を提供するものである。
1)液状油からなる食用油脂(A)を構成する全脂肪酸残基に対して不飽和脂肪酸残基が75%以上であること。
2)(A)/(B)の比率が6.5以下であること。
3)(B)を構成する乳化剤の内80重量%以上がグリセリン脂肪酸モノエステル及びプロピレングリコール脂肪酸モノエテルであること。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用する食用油脂(A)は、構成する全脂肪酸残基に対して不飽和脂肪酸残基が75%以上を占めるものである。好ましくは不飽和脂肪酸残基が80%以上の液状油が好ましく、中でもナタネ油、コーン油及び大豆油が好ましい。不飽和脂肪酸残基を構成する脂肪酸としては炭素数12〜22、より好ましくは、炭素数16〜22の脂肪酸が挙げられ、具体的にはパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ガドレイン酸、エイコサジン酸、エルカ酸、ドコサジエン酸等が挙げられる。上記食用油脂として、ショートニング等の飽和脂肪酸残基が多い油脂をそのまま用いたり、食用油脂中不飽和脂肪酸残基が75%未満となるよう配合されると最終ベーカリー製品の食感において口どけ感が低下してしまう。更に、液状油としてはジアシルグリセロール及び中鎖脂肪酸を含有したトリグリセライド及びジグリセライドも上記脂肪酸構成条件を満たすものであれば使用できる。食用油脂(A)の最適な配合量としては50〜85重量部であり、好ましくは70〜80重量部である。
【0010】
本発明で使用する乳化剤(B)としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート類、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、レシチン誘導体等が挙げられ、2種以上の混合系で用いられる。(B)の最適な配合量としては、(A)/(B)の比率が6.5以下を満たした上で、10〜30重量部、好ましくは14〜26重量部である。
【0011】
本発明において、乳化剤を配合する目的としては、(1)粉体状態にある保湿剤を大部分が液状油からなる食用油脂中に固定分散化させること、(2)乳化剤自身により老化を抑制すること、が挙げられる。
【0012】
上記目的(1)には、グリセリン脂肪酸エステルとプロピレングリコール脂肪酸エステルが有効である。本発明のグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンと脂肪酸のエステル又はその誘導体であり、グリセリン脂肪酸モノエステル(通常モノグリセリド)、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン有機酸脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等を示す。また、本発明のプロピレングリコール脂肪酸エステルとは、プロピレングリコールと脂肪酸のエステルであり、モノエステル型、ジエステル型のものが用いられる。上記乳化剤配合の目的(1)からはグリセリン脂肪酸モノエステル、プロピレングリコール脂肪酸モノエステルが好ましく、特に、これらを併用することがが好ましい。即ち、グリセリン脂肪酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸モノエステルの合計が乳化剤中80重量%以上あり、かつ、グリセリン脂肪酸エステル:プロピレングリコール脂肪酸モノエステル=1:0.5〜2.0の比率で、好ましくはほぼ1:1の比率で、かつ食用油脂(A)と乳化剤(B)の比率が6.5以下(食用油脂配合量を乳化剤配合量で割った値)、好ましくは、1.7〜6.5、更に好ましくは、2.0〜6.5、特に好ましくは、3.0〜6.5が、(C)成分の分散性の観点から好ましい。すなわち、主に液状油からなる食用油脂を流動性が無い状態まで硬化することが可能となり、かつ、同じ食用油脂中に分散されている粉体状態の保湿剤を均一に、かつ、沈澱すること無く固定分散化できる。
【0013】
食用油脂と乳化剤の比率((A)/(B))が6.5を超えてしまうと油脂組成物自身が粘調な流動性のある状態となり、粉体が沈澱、もしくは食用油脂中の液状油が分離してしまい、均一な状態では無くなってしまい、目的の性能を発現しなくなる。本発明において、食用油脂が流動性が無く硬化した状態の尺度として、針入度を定めることができる。
【0014】
ここで、針入度とは、ASTM−D217(「ASTM針入度の測定方法」Annual Book of Standards 1994.Section 5,Volume 05.01内のD217)に記載された針入度の測定に準じて次のように測定される値である。即ち、縦115mm×横115mm×深さ90mmの容器に油脂組成物を詰め、表面を平らにする。これを測定温度(20℃)に30分間放置した後、102.5gの円錐形の荷重を装着した針(Penetrometer Cone)を、表面を接して静置し、5秒後の進入距離を0.1mm単位で表示する。ここで、針入度は一般に数値が小さいほど、測定試料が硬いことを表す。本発明において、食用油脂が流動性が無く硬化した状態にあるためには、針入度が200以下、特に100以下にすることが好ましい。
【0015】
また、乳化剤を配合する目的である(2)乳化剤自身により老化を抑制することにおいてもグリセリン脂肪酸モノエステルが有効である。老化防止効果を発現するためには、5〜20重量部、好ましくは7〜15重量部必要である。グリセリン脂肪酸モノエステルが5重量部未満では充分な老化防止効果が得られず、20重量部を越えるとベーカリー製品の食感が低下する。
【0016】
(C)成分の分散促進効果を発現するためには、プロピレングリコール脂肪酸モノエステルの配合量は、5〜20重量部、好ましくは7〜15重量部必要である。プロピレングリコール脂肪酸モノエステルが5重量部未満では充分な(C)成分の分散促進効果が得られず、20重量部を越えるとベーカリー製品の食感が低下する。
【0017】
本発明におけるグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルの構成成分としての脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等の炭素数12〜22の飽和脂肪酸もしくは不飽和脂肪酸が挙げられ、特に飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14〜22の飽和脂肪酸が最も好ましい。これら脂肪酸は単一で構成されていても良いが、2種以上の混合系で構成されていてもよい。
【0018】
他の使用できる乳化剤として、グリセリン脂肪酸エステルの1形態として記載されているグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルとは、グリセリン脂肪酸モノエステルの3位のOH基を有機酸でエステル化した化合物である。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の低級脂肪酸で構成される脂肪族モノカルボン酸、シュウ酸、コハク酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸、クエン酸等のオキシ酸、及びグリシン、アスパラギン酸等のアミノ酸が例示される。特に、クエン酸、コハク酸、酒石酸、ジアセチル酒石酸が好適で、HLBは4〜14のものが好適である。
【0019】
また、市販のグリセリン有機酸エステルは、未反応の有機酸やグリセリン脂肪酸モノエステルを一部含むが、このような市販のグリセリン有機酸脂肪酸モノエステルも本発明に適用できる。
【0020】
また、ポリグリセリン脂肪酸モノエステルを構成するポリグリセリンの具体例としては、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、ナノグリセリン、デカグリセリンなどからなる群から選ばれる1種又は2種以上の化合物が挙げられる。特にグリセロールの重合度が1〜9のものが好ましい。
【0021】
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、ポリグリセリンと縮合リシノレイン酸とのエステルであり、通常、グリセリングリセリン重合度2〜3のポリグリセリンとリシノール酸の3〜5の縮合リシノレイン酸とのモノもしくはジエステルの混合物が用いられる。
【0022】
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルとは、ショ糖と脂肪酸のエステルであり、モノ、ジ、トリ及びポリエステル等を含み、構成脂肪酸としては炭素数12〜24の脂肪酸の単一又は2種以上の混合系が好ましい。また、HLBは5〜15のものが好適である。
【0023】
本発明に用いられるソルビタン脂肪酸エステルとは、ソルビタンと脂肪酸のエステルであり、構成脂肪酸としては炭素数12〜24の脂肪酸の単一又は2種以上の混合系が好ましい、ソルビタン脂肪酸エステルにはモノエステル型とトリエステル型のものがあるが、本発明ではモノエステル型のものが好適である。
【0024】
本発明に用いられるレシチンは、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジン酸等によりなるリン脂質混合物であって、大豆或いは卵黄等から得られるレシチンが代表的なものである。また、レシチン誘導体としてはリゾレシチン、リゾフォスファチジン酸等が挙げられる。
【0025】
本発明における(C)保湿剤としては、蛋白質、増粘多糖類等が挙げられる。老化防止効果を発現するためには、保湿剤の添加量は0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部である。添加量が0.1重量部未満であると充分な老化防止効果が得られず、10重量部を超えると得られるベーカリー製品の食感が低下する。
【0026】
蛋白質としては水に溶解した時、粘性を呈する物質であれば良く、乳蛋白質及び植物性蛋白質等が挙げられる。乳蛋白質としてはナトリウムカゼイン、カルシウムカゼイン、レンネットカゼイン、ミルクカゼイン、ミルクホエー、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン等が挙げられる、
また、増粘多糖類としては、ジェランガム、カラヤガム、タマリンド種子ガム、タラガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、グアーガム、イオタカラギナン、HMペクチン、LMペクチン、トラガントガム、結晶性セルロース、PGA(アルギン酸プロピレングリコールエステル)、SSHC(水溶性大豆多糖類)、ガティガム、メチルセルロース、サイリウムシード及びカシヤガム等が挙げられる。これら蛋白質及び増粘多糖類の中から1種を単独で用いても良いし、また異なる2種以上を組み合わせて用いても良い。中でも風味及び食感の点よりキサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガムが好ましく、更に好ましくはキサンタンガムである。
【0027】
本発明において、ベーカリー製品調製時に添加する油脂組成物量は、ベーカリー製品に使用する小麦粉100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは3〜10重量部である。
【0028】
油脂組成物の添加量が1重量部未満であると充分な老化防止効果は得られず、20重量部を越えると得られたベーカリー製品の食感が低下する。
【0029】
尚、本発明における油脂組成物には、保存料、pH調製剤、色素、香料等を適宜使用してもよい。
【0030】
本発明における油脂組成物の製法は、まず成分(A)及び(B)を各成分の融点温度以上の温度で加熱し、均一溶解させた後、成分(C)を添加し、均一に混合撹拌する。上記均一になったものを上記各成分の融点以下の温度、好ましくは30℃以下まで冷却することにより目的の油脂組成物を得る。上記、冷却速度は速いほうが好ましい。即ち、冷却により乳化剤が結晶化する際、徐冷よりも急冷の方がより結晶が粗大化しないことより乳化剤自身の分散性を向上させ、老化防止効果を促進する点より好ましい。上記製造において、高温状態にある均一混合物を冷却するの際には均一混合物を入れている容器自身を外部から冷却しても良いが、一般的にショートニング、マーガリン製造に用いられるチラー、ボテーター、コンビネーター等を用いて急冷する方が性能上好ましい。
【0031】
本発明のベーカリー製品用油脂組成物を使用して製造するパン類としては、フィリングなどの詰め物をしたパンも含まれ、食パン、特殊パン、調理パン、菓子パンなどが挙げられる。具体的には、食パンとしては白パン、黒パン、フランスパン、バラエティーブレッド、ロール(テーブルロール、バンズ、バターロールなど)が挙げられる。特殊パンとしてはマフィンなど、調理パンとしてはホットドッグ、ハンバーガーなど、菓子パンとしてはジャムパン、あんパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、リッチグッズ(クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュペストリー)などが挙げられる。ケーキ類としてはスポンジケーキ、バターケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、蒸しケーキ等が挙げられる。更に焼き菓子としてはビスケット、クッキー等が挙げられる。
【0032】
本発明におけるベーカリー製品の原料としては、主原料としての小麦粉の他に、イースト、イーストフード、乳化剤、油脂類(ショートニング、ラード、マーガリン、バター、液状油等)、水、加工澱粉、乳製品、食塩、糖類、調味料(グルタミン酸ソーダ類や核酸類)、保存料、ビタミン、カルシウム等の強化剤、蛋白質、アミノ酸、化学膨張剤、フレーバー等が挙げられる。更に、一般に原料として用いると老化しやすくなる、レーズン等の乾燥果実、小麦ふすま、全粒粉等を使用できる。
【0033】
【実施例】
実施例1〜5、比較例1〜5
本発明における実施例1〜5及び比較例1〜4の油脂組成物の組成を表1及び表2に示した。
【0034】
実施例1〜5及び比較例1〜3における油脂組成物の調製方法は下記の通りである。
1)容量2リットルのステンレス製ビーカーに成分(A)及び(B)を秤量する。
2)上記1)を85℃水浴中にて均一溶解し、30分間放置する。
【0035】
この際、アンカー型フックを用い、スリーワンモータ(HIDON社製TYPE60G)を用いて撹拌を行った。
3)上記2)に予め秤量しておいた成分(C)を撹拌しながら添加し、均一になったことを確認後、30分放置する。
4)上記3)において、水浴中に大量の氷を入れて、30℃まで冷却し、30℃に温度を維持したまま、撹拌を行い、所定の容器に移す。
5)上記4)を15℃恒温槽にて1晩(約12時間)放置し、針入度測定及び製パン評価を行った。
【0036】
実施例1〜5及び比較例1〜3における油脂組成物についての食用油脂と乳化剤の配合比率及び針入度の測定結果を表3に示す。
【0037】
食用油脂/乳化剤比率が6.5を超えた比較例1の針入度は200を超え、外観的にも流動性があり、一部液状油が分離しやや不均一であった。
【0038】
【表1】
【0039】
ナタネ白絞油;不飽和脂肪酸残基93%
市販植物性ショートニング;不飽和脂肪酸残基71%
市販植物性ショートニングはナタネ油、硬化ナタネ油、パーム油、硬化パーム油からなるものを使用した。
【0040】
【表2】
【0041】
*比較例4:油脂組成物を調製せず、各成分を別々に添加した。
【0042】
【表3】
【0043】
上記実施例1〜5及び比較例1〜4、及び油脂組成物無添加配合である比較例5について製パン評価を行った。
【0044】
具体的には老化しやすいパンである白焼きパン配合にて検討を行った。ここで言う白焼きパンとはパン中クラスト部分が白色になるよう低温・長時間焼成をしたものであり、見た目と食感上の柔らかさが好まれるものであるが、クラストが充分に形成していないこと、更に焼成条件が緩和であるため澱粉の糊化が十分に進行せず、結果として老化しやすくなるとうい問題点を有する。評価を行ったパン配合(中種配合、本捏配合)を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
*比較例4記載の成分について油脂組成物を調製せず、各成分を別々に添加した。
【0047】
添加のタイミングは他の油脂組成物と同じ時期とした。
*1 ドリーマソフト:花王(株)製モノグリセリド含有乳化油脂組成物
*2 液糖:日本食品加工(株)製MC−45
*3 マーガリン:花王(株)製チェリカDx
(製パン)
1.中種生地調製条件
縦型ミキサー(関東ミキサー、10コート)、フックを用い、中種配合材料をミキサーに入れ、低速3分、中高速2分で混捏し、捏上温度を25℃とし、中種生地とした。次に、これを発酵(中種発酵)させた。この時の条件は下記の通りである。
中種発酵温度 26.5℃
中種発酵相対湿度 80%
中種発酵時間 2時間30分
中種発酵終了温度 29.0℃
2.本捏生地調製条件
縦型ミキサー(関東ミキサー、10コート)に、中種配合生地を入れ、本捏配合材料(マーガリン、油脂組成物、キサンタンガム以外の材料)を添加し、低速3分、中高速3分で混捏後、残った材料(マーガリン、油脂組成物、キサンタンガム)を添加し、低速3分、中高速3分、高速7分で混捏し、本捏生地とした。本捏生地の捏上温度は29℃とした。
【0048】
次に、混捏でダメージを受けた生地を回復させるために、27.0℃にてフロアータイムを20分とり、この後60gの生地に分割した。分割での生地ダメージをとるために、ベンチタイムを27.0℃で20分とり、モルダーで成型した。天板に成型した生地をのせ、発酵(ホイロ)を行った。ホイロの条件は下記の通りである。
ホイロ温度 38℃
相対湿度 80%
ホイロ時間 45分
上記条件にて調製したパン生地を170℃のオーブンで13分間焼成した。焼成後、室温(20℃)において45分間冷却後、ビニール袋に入れ、密閉し、更に20℃において3日間保存を行い、パンサンプルとした。
<パン官能評価>
パンを喫食した際の柔らかさ、しっとり感、口どけ感について10名のパネラーによるモナディック評価を行った。
◎;10名中8名以上が良好であると判断した。
○;10名中5〜7名が良好であると判断した。
△;10名中3〜4名が良好であると判断した。
×;10名中8名以上が良好ではないと判断した。
【0049】
これらの結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
上記の如く、本発明の油脂組成物を添加することにより、老化が抑制され、かつ口どけ感も向上することがわかった。
Claims (6)
- 液状油からなる食用油脂(A)50〜85重量部、乳化剤(B)10〜30重量部、保湿剤(C)0.1〜10重量部を含有する油脂組成物であり、かつ下記であるベーカリー製品用油脂組成物。
1)液状油からなる食用油脂(A)を構成する全脂肪酸残基に対して不飽和脂肪酸残基が75%以上であること。
2)(A)/(B)の比率が6.5以下であること。
3)(B)を構成する乳化剤の内80重量%以上がグリセリン脂肪酸モノエステル及びプロピレングリコール脂肪酸モノエテルであること。 - 油脂組成物が、乳化剤(B)として、グリセリン脂肪酸モノエステルとプロピレングリコール脂肪酸モノエステルを夫々5〜20重量部含有し、かつグリセリン脂肪酸エステル:プロピレングリコール脂肪酸モノエステル= 1 :0.5〜2.0の比率である請求項1記載のベーカリー製品用油脂組成物。
- ベーカリー製品用油脂組成物の20℃における針入度が200以下である請求項1〜2の何れか1項記載のベーカリー製品用油脂組成物。
- 保湿剤(C)が増粘多糖類である請求項1〜3の何れか1項記載のベーカリー製品用油脂組成物。
- 請求項1〜4の何れか1項記載のベーカリー製品用油脂組成物からなるベーカリー製品の老化防止剤。
- 請求項1〜4の何れか1項記載のベーカリー製品用油脂組成物からなるベーカリー製品の口溶け改善剤。
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