JP4929531B2 - 導電性硬質炭素皮膜 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、導電性硬質炭素皮膜及びその被覆部材に関し、より具体的には、複数の導電性部材が接することで電気的に導通する導電部材、又は腐食環境下において用いられる導電部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、互いに接触させることで電気的に導通させる導電性部材の接触部には、通常の金属や、カーボンなどの有機導電材料や、貴金属材料などが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、通常金属を用いた場合、通常金属が酸化して絶縁体化しやすく、また強度も低く、摩耗しやすいため、寿命が短いという問題点があった。また、有機導電材料を用いた場合、有機導電材料の強度が低く摩耗しやすいため、寿命が短いという問題点があった。また、貴金属材料は酸化しにくい導電材料として使用されてきたが、強度が低いために摩耗しやすく、寿命が短く、かつ高価であるという問題点があった。
【0004】
また、これら貴金属や有機導電性材料は、最終製品まで組み立てるときに部材同士の接触が起こる場合も有り、その接触による損傷から、その用をなさなくなる場合もあり、最終製品の歩留まりを低下させることもあった。
【0005】
一方、腐食環境下では、導電性材料として主に貴金属材料が用いられているが、ピンホールが存在した場合、そのピンホールを起点として腐食が進行するため、ピンホールを無くすために貴金属材料の厚膜化(10μm以上)で対応している。このため、高価となる。
【0006】
また、たとえピンホールがなくとも、最終製品まで組み立てるときに部材同士の接触が起こる場合も有り、その接触による損傷が腐食起点となる場合もあった。
【0007】
そこでこの発明は、良好な耐摩耗性、耐酸化性及び耐食性を有し、導電性部材同士の接触する用途や工程、又は腐食環境下において用いられる導電性硬質炭素皮膜及びその被覆部材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明は、SP2結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的に連なった構造を有する導電性硬質炭素皮膜を用いることにより上記の課題を解決したのである。
【0009】
SP2結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的に連なった構造を有するので、高い導電性を保持できる。また、導電性硬質炭素皮膜を用いるので、良好な耐摩耗性、耐酸化性及び耐食性を有する。
【0010】
【発明の実施の形態】
この発明にかかる導電性硬質炭素皮膜は、SP2結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的に連なった構造を有するものである。
【0011】
上記のSP2結合性結晶とは、炭素を主成分とし、結晶内の少なくとも一部にSP2結合炭素を有し、マクロ的にみて構造に周期性があるものをいう。このような構造を有するものとしては、具体的には、グラファイト、カーボンナノチューブ、オニオンクラスター等のフラーレン族があげられる。
【0012】
上記SP2結合性結晶は、炭素が6員環、5員環を形成して連なることで平面又は曲面(以下、「SP2結合平面又は曲面」と称する。)を形成し、その平面又は曲面が単独、又は複数が積み重なった構造を有する。また、このSP2結合平面又は曲面内には、SP2結合性結晶が単独で存在していることは稀であり、グラファイト構造や多種のフラーレン族の構造が混在し、互いに連なった状態のものが多い。
【0013】
上記の炭素を主成分とするとは、炭素以外に、不純物として、雰囲気ガスとして使用されたアルゴン、窒素や原料ガスに含まれている水素等、その製法上不可避な元素が混入しているものの、それ以外の金属元素などは含んでいないことをいう。不可避な不純物も少ない方が好ましく、炭素が硬質炭素皮膜全体の構成元素に対して80at.%以上、100at.%以下で形成されていることが望ましく、90at.%以上がより好ましい。なお、「at.%」とは、原子数を基準とした百分率をいう。
【0014】
また、上記のSP2結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的に連なった構造とは、図4に示すように、複数のSP2結合性結晶30が硬質炭素皮膜の最下層(基材側)から最上層(表面側)まで連なった構造をいう。具体的には、基材29上に、必要に応じて中間層28を介して皮膜27が設けられる場合、中間層28又は基材29と接する皮膜27の面からその面と反対側の面にかけて、SP2結合性結晶30が連なった構造をいう。このとき、皮膜27は、連なったSP2結合性結晶を有すれば、その構造を問わず、図4に示すような構造と同一構造を必ずしも有する必要はない。
【0015】
この発明にかかる硬質炭素皮膜が、膜厚方向にSP2結合性結晶が連続的に連なった構造を有すると、膜厚方向にSP2結合性結晶が連続的に連なった構造を有さない場合に比べ、同じ導電率でも硬度が高く、高い耐摩耗性を示す。
【0016】
この発明にかかる硬質炭素皮膜は、SP2結合性結晶の部分で導電性を有し、それ以外の部分は、耐摩耗性を有する。SP2結合性結晶の含有率の増加は皮膜の低硬度化につながり、耐摩耗性を低下させる。また、耐食性もSP2結合性結晶の含有率の増加によって減少する。したがって、SP2結合性結晶の含有率を小さくしながら、高い導電率を達成することが、耐摩耗性、耐食性の面から重要である。そのため、SP2結合性結晶が皮膜表面から皮膜最下層まで連続的に存在していることは、皮膜の膜厚方向の導電率を高めることに効果的であり、結果的にSP2結合性結晶の含有率を低減することができるので望ましい。
【0017】
また、SP2結合性結晶の少なくとも一部にグラファイト構造を有する方が、より高耐摩耗性、高耐食性を有しながら、高導電率を達成できるので望ましい。
【0018】
さらに、SP2結合性結晶の少なくとも一部によって構成されるSP2結合平面又は曲面と、基板表面とがなす角度、より好ましくは、膜厚方向に連続に連なったSP2結合性結晶の一部によって構成されるSP2結合平面又は曲面と、基板表面とがなす角度が60°以上、120°以下である構造を有すると、得られる硬質炭素皮膜は、より高耐摩耗性、高耐食性を有しながら、高導電率を達成できるという利点を有する。上記の角度について具体的に説明すると、図5に示すように、SP2結合性結晶の層構造が観察できる方向で断面観察した場合、基材29又は中間層28上の皮膜中の炭素原子31のうち、SP2結合によって結合された炭素原子31によって形成される平面又は曲面、すなわち、SP2結合平面又は曲面32と、基材29の表面がなす角度33が上記の60°以上、120°以下とするのがよい。つまり、上記のSP2結合平面又は曲面32と垂直な軸、図5におけるC軸35が、基板29表面に対して0°以上、30°以下、又は150°以上、180°以下を有していることと同義である。
【0019】
図5に示すような硬質炭素皮膜において、SP2結合平面又は曲面32の平面方向又は曲面方向の導電率は高く、これと垂直な方向であるC軸方向の導電率は低い。したがって、SP2結合性結晶のC軸35が基板に対して30°以下又は150°以上である方が、皮膜27の厚さ方向である皮膜表面から皮膜最下層方向への導電率を高めようとする場合に望ましい。同じ導電率であっても、C軸35が基板に対して30°以下又は150°以上である方が、SP2結合性結晶の含有率をより低い状態で、高硬度、高耐摩耗性を有することができ、従来法と比べて、基板に到達するイオンのエネルギーを高めることができる。
【0020】
このような構造をもつSP2結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的である構造を有すると、より高硬度、高耐摩耗性を有しながら、高導電率を達成できる点で望ましい構造である。
【0021】
また、この発明にかかる硬質炭素皮膜に含まれるSP2結合平面又は曲面と隣接するSP2結合平面又は曲面との層間距離34は、2.4Å以上3.9Å以下であることが好ましい。上記層間距離とは、SP2結合平面又は曲面同士がファンデルワールス力で結合しているところの平面又は曲面間の距離のことをいい、積み重なったSP2結合平面又は曲面間の距離のことである。グラファイトではC面距離の半分がこれに相当する。上記層間距離を有する硬質炭素皮膜は、高硬度、高導電率を有する。
【0022】
上記のSP2結合性結晶の存在及びその構造は、透過電子顕微鏡による観察や電子線回折、X線回折によって確認できる。
【0023】
この発明の硬質炭素皮膜は、上記のSP2結合性結晶以外の部分は、非晶質である。ナノオーダーでみると、SP3結合性のクラスター構造が観察される場合もあるが、CuK線を用いたX線回折、透過電子線回折においては、SP2結合性結晶に関するピーク以外は結晶構造を示唆するピークは観察されない。
【0024】
また、この発明にかかる硬質炭素皮膜は、電子エネルギー損失分光による評価によってもSP2結合性結晶の存在を確認することができ、そのピーク形状は、285eV付近のピーク高さ(I285)と293eV付近のピーク高さ(I293)の比(=I293/I285)が0.9以上1.6以下であることが望ましい。285eV付近のピークはπ−π*遷移に起因し、SP2結合の存在を示唆している。一方、293eV付近のピークは、σ−σ*遷移に起因する。I293/I285が0.9以下であると、SP2結合性結晶の割合が高くなりすぎて、皮膜硬度が低くなりすぎるため、耐摩耗性の点で劣ったり、皮膜の緻密性が悪くなって耐食性が劣る場合がある。一方I293/I285が1.6以上になるとSP2結合性結晶の割合が低くなりすぎて、導電性が低くなる場合がある。
【0025】
さらに、この発明にかかる硬質炭素皮膜は、ヌープ硬度が1000以上3000以下である方が、耐摩耗性の点で望ましい。ヌープ硬度は、ダイヤモンド製のヌープ圧子を用いて、15gの負荷重を10秒間押し付けて計測する。
【0026】
これらの硬質炭素皮膜を部材上に形成する場合、部材が固体、気体、液体と接触するところの少なくとも一部に形成されていれば良い。すなわち、必ずしも部材全面に被覆する必要は無く、例えば複数の部材が接触する各部材の表面や、腐食環境下で使用され、耐食性を特に必要とする部材表面に形成させることでも効果を発揮する。
【0027】
また、部材に直接的に形成する必要はなく、例えば密着力向上や耐食性の向上を目指して4a、5a、6a族の金属の少なくとも一つからなる窒化物、炭化物、炭窒化物の皮膜を中間層として、部材と本発明の硬質炭素皮膜の間に形成しても十分な効果が得られる。この場合、先に述べたSP2結合性結晶の連続性は、硬質炭素皮膜表面から中間層直上までである。
【0028】
この発明にかかる導電性硬質炭素皮膜は、スパッタ蒸着法、真空アーク蒸着法等の蒸着法を用いることにより、形成させることができる。
【0029】
上記のいずれの蒸着法を採用する場合であっても、基板に到達する炭素イオンのエネルギーを大きくすることにより、SP2結合性結晶の少なくとも一部が膜厚方向に連続的に連なった構造を形成させることができる。上記の基板に到達する炭素イオンのエネルギーを高くする方法としては、各蒸着装置の基板バイアスを負側に高くする方法があげられる。以下、基板バイアス値は、絶対値表示とするが、すべて符号は負である。上記基板バイアスとしては、400〜1000Vがよく、400〜600Vが好ましい。バイアス電圧の絶対値が400Vより小さいと、非晶質炭素成分の割合が多くなり、SP2結合性結晶は連続とならない場合が生じる。一方、バイアス電圧の絶対値が1000Vより大きいと、析出した被膜がエッチングされ、緻密な膜となりにくくなり、硬度が下がる場合が生じる。
【0030】
この発明にかかる導電性硬質炭素皮膜は、固体電解室型燃料電池セパレーター、各種電池電極、メッキ用電極などの腐食環境下で使用される導電部材に使用すると、耐腐食性の向上に効果を発揮できる。又は、キー接点、プラグ電極、配線基板用接点、及びブラシ給電接点などの接触、摺動接点としても耐摩耗性、耐久性の向上に効果を発揮できる。尚、本発明の導電性硬質炭素皮膜を形成する部材はここにあげた部材に制約されることはなく、複数の導電性部材が接することで電気的に導通する導電部材、又は腐食環境下において用いられる導電部材はもとより、単に耐摩耗性が求められる各種工具、部品等にも適用できる。
【0031】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例及び比較例において基板バイアス値を絶対値表示するが、符号は全て負である。
(実施例1)
図1に示す高周波プラズマCVD装置を用いた。この装置は、真空槽1内に水平板状の基材ホルダ2を具え、基材ホルダ2には、高周波電源3および直流電源4が接続されている。そして、真空槽1はガス導入口5とガス排気口6を具えている。
【0032】
次に、上記高周波プラズマCVD装置を用いた場合のイオン照射方法、導電性硬質炭素皮膜の形成方法を以下に示す。
まず、真空槽1内の基材ホルダ2に基材7をセットした後、装置内を0.002Pa以下にガス排気口6から真空排気する。雰囲気ガスとして、Arをガス導入口5より導入し、真空槽1内が所定の圧力になるようにする。そして、基材ホルダ2に高周波電源3により高周波電力500Wを、直流電源4により直流電圧を印加し、基材ホルダに所定の負のバイアスを印加する。これにより、高周波プラズマによりイオン化された正の電荷を持つ雰囲気ガスのイオンが基材7に衝突し、基材表面の汚れや酸化物層がエッチングにより除去される。
【0033】
その後、真空槽1内を真空排気した後に、真空槽1内が10Paの圧力になるようにガス導入口5よりメタンガスを導入し、高周波電源3により基材ホルダ2に高周波電力300〜800W、直流電圧として50V〜200Vを投入し、導電性硬質炭素皮膜を形成した。直流電圧を硬質炭素皮膜を成膜する通常条件より絶対値を大きく設定することで導電性硬質炭素皮膜を作製することができた。
これら導電性硬質炭素皮膜は、SP2結合性結晶以外の部分は非晶質であった。
【0034】
(実施例2)
図2に示すスパッタ蒸着装置を用いて硬質炭素皮膜を形成した。この装置は、真空槽8内に水平円盤状の回転テーブル9を具え、この回転テーブル9に垂直に固定された基材ホルダ10を具える。基材ホルダ10を挟む対向する真空槽側壁にはスパッタ蒸発源11が設置され、各スパッタ蒸発源11は高周波電源12に接続される。スパッタ蒸発源11にはターゲット13が装着されている。片方のターゲット13にTi,Cr,Vをセットしておき、もう片方のターゲット13に固体炭素をセットしておく。また、基材ホルダ10には回転テーブル9に接続されたパルスDC電源14により所定の負のバイアス電圧を付与することができる。
【0035】
真空槽8内を真空排気した後に、真空槽8内が1Pa以下の圧力になるようにガス導入口15よりN2ガスとArガスを導入する。N2ガスとArガスの比は、N2/Ar=1/2〜1/10である。固体炭素ターゲットを装着したスパッタ蒸発源11に高周波電力400Wを投入し、基材ホルダ10に50Vのバイアス電圧を印加し、回転テーブル9を5rpmで回転させながら、Cr,Ti,Vの窒化物を中間層として形成した。
【0036】
次に、真空槽8内を真空排気した後に、真空槽8内が1Pa以下の圧力になるようにガス導入口15よりCHガスとArガスを導入する。CHガスとArガスの比はCH/Ar=1/2〜1/10である。固体炭素ターゲットを装着したスパッタ蒸発源11に高周波電力400Wを投入し、基材ホルダ10に700V又は400Vのバイアス電圧を印加し、回転テーブル9を5rpmで回転させながら、導電性硬質炭素皮膜を形成した。基板ホルダーヘの直流電圧を硬質炭素皮膜を成膜する通常条件より絶対値を大きく設定することで導電性硬質炭素皮膜を作製できた。これら導電性硬質炭素皮膜は、SP結合性結晶以外の部分は非晶質であった。
【0037】
(実施例3)
図3に示す真空アーク蒸着装置をもちいて硬質炭素皮膜を形成した。この装置は、真空槽18内に水平円盤状の回転テーブル19を具え、この回転テーブル19に垂直に固定された基材ホルダ20を具える。基材ホルダ20を挟む対向する真空槽側壁にはターゲット21を有するアーク放電蒸発源が設置され、各ターゲット21は直流電源22に接続される。片方のターゲット21には、Ti,Cr,V金属を、もう片方のターゲット21には固体炭素をセットする。また、基材ホルダ20には回転テーブル19に接続された直流電源23により所定の負のバイアス電圧を付与することができる。そして、真空槽18はガス導入口24とガス排気口25とが設けられる。
【0038】
基材ホルダ20に基材26をセットした後、装置内を0.002Pa以下にガス排気口25から真空排気する。真空槽18内が2Paの圧力になるようにガス導入口24よりN2ガスを導入する。基材ホルダ20に50V〜150Vのバイアス電圧を印加し、Ti,Cr,V金属ターゲットにカソード電流60Aを流してアーク放電を発生させ、回転テーブル19を5rpmで回転させながら、中間層を形成した。
【0039】
次に、真空槽18内が1Paの圧力になるようにガス導入口24よりArガスを導入する。又は装置内を0.002Pa以下のままの状態で、基材ホルダ20に450V、500V又は600Vのバイアス電圧を印加し、固体炭素ターゲットにカソード電流50Aを流してアーク放電を発生させ、回転テーブル19を5rpmで回転させながら、導電性硬質炭素皮膜を形成した。基板ホルダーヘの直流電圧を硬質炭素皮膜を成膜する通常条件より絶対値を大きく設定し、導電性硬質炭素皮膜を作製できた。これら導電性硬質炭素皮膜は、SP結合性結晶以外の部分は非晶質であった。
【0040】
(比較例1〜3)
成膜時の基板バイアス電圧を実施例1〜3の範囲外に設定した皮膜を形成した。
【0041】
[評価]
▲1▼被膜強度測定
ダイヤモンド製のヌープ圧子を用い、荷重15g、荷重負荷時間10秒間とし、測定値10点の平均値を採用した。皮膜表面の凹凸が大きく圧痕の形状が見えにくい時は、#8000のダイヤモンドペーストでバフ研摩を施し、圧痕形状が観察できるようにした。
【0042】
▲2▼上記のSP2結合性結晶の存在、C軸の配向性の角度、グラファイト結晶の存在、SP2結合性結晶の連続性、及び層間距離は、透過電子顕微鏡による観察や電子線回折、X線回折によって調べた。
【0043】
▲3▼5万回接触後のキー接点性能
上記の各成膜法によって成膜した導電性硬質炭素皮膜を、携帯電話機用のキー接点を構成する皿ばね及び受け側接点表面のSUS305基板上に、形成した。
それらの接点について、5万回の接点動作後のキー接点における接触抵抗を測定した。
【0044】
▲4▼炭素含有率
ラザフォード後方散乱で炭素を定量化し、弾性反跳粒子検出法で水素を定量化し、炭素含有率を算出した。
【0045】
▲5▼I293/I285
電子エネルギー損失分光法を用いて、285eV付近のピーク高さ(I285)と293eV付近のピーク高さ(I293)の比(=I293/I285)を算出した。
【0046】
▲6▼導電率
試料上の2点に電極を設け、これらの間に一定の電流を流して2電極間の電位降下を測定し、抵抗値を算出して導電率を算出した。
上記の各結果を表1に併せて示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004929531
【0048】
表1の結果より、接点部分にこの発明にかかる導電性硬質炭素皮膜を形成した部材は、酸化などの変質がなく良好な接点性能を示すことがわかった。一方、この発明の範囲外である比較例は、比較例1、2、3については、皮膜自身の導電率が充分でなく用をなさない。この実施例は5万回後の接触抵抗の増加が、当初の値の3倍以内に抑えられた。
【0049】
【発明の効果】
この発明にかかる導電性硬質炭素皮膜は、SP2結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的に連なった構造を有するので、高い導電性を保持できる。
【0050】
また、導電性硬質炭素皮膜を用いるので、良好な耐摩耗性、耐酸化性及び耐食性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】高周波プラズマCVD装置を示す概略図
【図2】スバッタ蒸着装置を示す概略図
【図3】真空アーク蒸着装置を示す概略図
【図4】SP2結合結晶が膜厚方向に連続的に連なった状態を示す模式図
【図5】SP2結合結晶と基材平面がなす角度についての説明図
【符号の説明】
1 真空槽
2 基材ホルダ
3 高周波電源
4 直流電源
5 ガス導入口
6 ガス排気口
7 基材
8 真空槽
9 由転テーブル
10 基材ホルダ
11 スパッタ蒸発源
12 高周波電源
13 ターゲット
14 直流電源
15 ガス導入口
16 ガス排気口
17 基材
18 真空槽
19 回転テーブル
20 基材ホルダ
21 ターゲット
22 直流電源
23 直流電源
24 ガス導入口
25 ガス排気口
26 基材
27 皮膜
28 中間層
29 基材
30 SP2結合結晶
31 炭素原子
32 SP2結合平面又は曲面
33 SP2結合平面又は曲面と基材表面がなす角度
34 層間距離

Claims (11)

  1. SP結合性結晶の少なくとも一部が、膜厚方向に連続的に連なった構造を有し、SP 結合性結晶以外の部分は、非晶質である導電性硬質炭素皮膜。
  2. SP結合性結晶の少なくとも一部にグラファイト構造を有する請求項1に記載の導電性硬質炭素皮膜。
  3. SP結合性結晶の少なくとも一部によって構成されるSP結合平面又は曲面と、基板表面とにより形成される角度が、60°以上、120°以下である請求項1又は2に記載の導電性硬質炭素皮膜。
  4. 膜厚方向に連続的に連なったSP結合性結晶の一部によって構成されるSP結合平面又は曲面と、基板表面とにより形成される角度が、60°以上、120°以下である請求項2に記載の導電性硬質炭素皮膜。
  5. SP結合平面又は曲面と隣接するSP結合平面又は曲面との層間距離が、2.4Å以上3.9Å以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性硬質炭素皮膜。
  6. 電子エネルギー損失分光における285eV付近のピーク高さ(I285)と293eV付近のピーク高さ(I293)の比(=I293/I285)が0.9以上1.6以下である請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性硬質炭素皮膜。
  7. ヌープ硬度が1000以上3000以下である請求項1乃至6のいずれかに記載の導電性硬質炭素皮膜。
  8. 炭素の組成が皮膜全体の80at.%以上、100at.%以下である請求項1乃至7のいずれかに記載の導電性硬質炭素皮膜。
  9. 複数の部材が接触する部材表面、又は腐食環境下で使用される部材表面に形成された請求項1乃至8のいずれかに記載の導電性硬質炭素皮膜。
  10. スパッタ蒸着法、真空アーク蒸着法を用いて形成された請求項1乃至9のいずれかに記載の導電性硬質炭素皮膜。
  11. 負のバイアス電圧が400V〜1000Vである請求項10に記載の導電性硬質炭素皮膜。
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