JP4615697B2 - 炭素含有被覆を施した物品 - Google Patents

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Description

【0001】
本発明は、炭素含有被覆、その様な被覆を施す方法および装置、およびその様な被覆を有する物品に関する。
【0002】
炭素被覆自体は公知である。本発明は特に、良好な硬度および耐摩耗性を有する炭素被覆に関する。過去において、耐摩耗性の高い表面を形成するために製造された炭素被覆は、典型的にはダイアモンド状の炭素被覆、すなわち大量の、ダイアモンドのsp3結合を有する材料を含む炭素被覆である。
【0003】
本発明は、炭素含有被覆の摩擦学的特性を改良するために行なった研究に基づいており、本発明の目的は、摩擦学的特性を改良した新規な炭素含有被覆、およびその様な炭素被覆の形成に使用できる方法および装置を提供することである。
従って、その第一の態様において、本発明は、被覆中の炭素−炭素結合が大部分グラファイトsp2形態である炭素含有被覆を有する物品を提供する。
【0004】
実際、グラファイト構造を有する炭素含有被覆が、ダイアモンド状構造を有する炭素含有被覆の特性よりもはるかに改良された摩擦学的特性を事実上有すること、例えば硬度および耐摩耗性がより高いこと、は驚くべきことである。
【0005】
その様な被覆は、好ましくはスパッタリングにより形成し、その第二の態様で、本発明は、物品に被覆を施す方法であって、少なくとも1個の炭素ターゲットを含むスパッターイオンプレーティング機構を使用し、その中で0.5 mA/cmを超えるイオン電流密度を被覆すべき基材に印加し、炭素被覆層を堆積させることを特徴とする方法を提供する。
【0006】
この方法は、特にその摩擦学的特性に関して品質がはるかに改良された被覆を提供する。被覆層は、その中で炭素−炭素(炭化物と反対に)結合になるための十分な炭素を含む。この様に堆積した時、これらの炭素−炭素結合が主としてsp2またはグラファイト型であることが分かる。グラファイト状炭素材料は、その中に金属を有することも、有していないこともあるが、少なくとも、材料の主としてsp2炭素−炭素性質を大幅に減じる程十分な金属は含まない。ある程度の金属(例えば<20原子%)を有することにより、より厚いグラファイト状材料の層を製造することができ、耐負荷容量がはるかに高い被覆を得ることもできる。
【0007】
本発明は、その第三の態様で、物品に被覆を施す方法であって、少なくとも1個の炭素ターゲットを含むスパッターイオンプレーティング機構を使用し、その中で、被覆すべき基材に印加するイオン電流密度を十分に高くし、それによって摩擦学的特性が改良された、炭素−炭素結合が主としてグラファイト状sp2形態である炭素被覆層を堆積させることを特徴とする方法を提供する。
【0008】
本発明の別の態様では、炭素含有層を有する物品であって、層が、大部分がsp2形態である炭素−炭素結合を有するのに十分な炭素を有し、炭素含有層が金属原子、好ましくはクロムまたは他の遷移金属、も含む物品を提供する。
【0009】
物品は、炭素含有層および金属層を交互に有することができる。あるいは、またはさらに、主としてsp2炭素−炭素結合を有し、金属、所望により約20%(原子で)までの金属、を含むこともできる、炭素含有材料の実質的に均質な層があってもよい。該実質的に均質な層は、交互の炭素−被覆層および金属層(これらを備えている場合)の上に伸びていてもよい。約15%までの金属、または約10%までの金属、または約5%までの金属、または上側または下側範囲としてこれらの点のいずれかに規定される範囲内のレベルで金属が存在できる。金属は遷移金属でよく、クロムでよい。
【0010】
物品は、主として窒化クロムである層を、好ましくは主としてクロムである層の上に配置して含む被覆を有することができる。物品は、主としてCrCNである層を、好ましくはCrN層の上に配置することができる。物品は、主として炭化クロムである層を、好ましくはCrCN層の上に配置することができる。物品は、クロムおよび炭素を、最高約20%クロムおよび少なくとも約80%炭素で含み、炭素が他の炭素原子に対して主としてグラファイト状sp2結合を有するグラファイト状層を有するのが好ましい。好ましくは、グラファイト状層は、約15%以下のクロム(約85%以上の炭素)を有する。
【0012】
グラファイト状層は、厚さが約2μm以上、または厚さが少なくとも1μmである。
【0013】
物品は、グラファイト状層の下に硬質層を有することができ、硬質層は、CrN、CrCNおよびCrCの1種以上であるか、またはそれらの層を有する。
【0014】
好ましくは、物品は、順に、Cr、CrN、CrCN、CrCの層、グラファイト状層を有する。
【0015】
CrN層はCrC層よりもはるかに厚く、場合により少なくとも3、4、5倍以上厚く、場合により10倍以上厚くてもよい。
【0016】
物品は、100個以上のオーダーの、主として金属および主として炭素の、間に挟まれた層を、好ましくは実質的に均質な金属含有グラファイト状層の下に有することができる。
【0017】
本発明の別の態様により、炭素含有被覆を有する物品であって、該被覆が主として炭素の層および主として金属の層の連続を含んでなり、炭素層または各炭素層内の炭素−炭素結合が大部分グラファイト状sp2形態である物品を提供する。
【0018】
本発明は、物品に炭素被覆を施す方法であって、主として炭素被覆層および主として金属含有被覆層を堆積させるために、少なくとも1個の炭素ターゲットおよび少なくとも1個の金属ターゲットを含むスパッターイオンプレーティング機構を使用することを含んでなる方法を提供する。
【0019】
異なった組成を有するターゲットを使用することにより、特に基材を適切に回転させた場合に、最終的な被覆組成を非常に効果的に制御することができる。
【0020】
金属および炭素ターゲットから共堆積させることにより、層構造(stratum)を形成することができる。
【0021】
我々は、被覆構造中に金属が存在することが、被覆特性に大きく貢献し得ることを見出だした。本発明の好ましい実施態様では、その様な金属含有層は、基材上に直接堆積させる下側層であり、その上に炭素で上側被覆する。その様な金属含有下側層は、炭素層と基材の間の密着性を強化するのに非常に効果的である。
【0022】
そこで本発明の方法は、好ましくは、金属ターゲットを使用し、基材上に直接金属含有下側層を形成し、その上に炭素被覆層を施すことを含んでなる。その様な金属含有下側層は、好ましくは厚さ50〜200nmに堆積させる。
【0023】
下側層は、金属の第一層構造に続いて、金属および炭素ターゲットから共堆積させることにより製造される、金属および炭素からなる第二層構造を含んでなることができる。第二層構造は金属層構造よりも硬くてよく、その後に続く炭素被覆の摩擦学的特性を改良することができる。
【0024】
あるいは、またはそれに加えて、1個の、または異なった層構造を設け、各層構造中で、層が主として金属含有層または主として炭素層であり、主として炭素の層および主として金属の層が交互に存在することができる。これによって、被覆全体の凝集性が強化される。我々は、一様な(グラファイト状)炭素被覆(金属を含まない)を基材上に堆積させる時、一定の厚さ閾値を超えると、被覆は小さく砕ける傾向があり、厚さの増加と共にこの傾向が増大することを発見した。しかし我々は、ある限られた量の金属が共堆積すると、この傾向が緩和される、または無くなりさえすることも発見した。その様な小さく砕ける危険性を回避するには、該炭素含有層を1μmまでの厚さに形成するのが好ましいが、1〜5μm、10μm、またはそれ以上のグラファイト状炭素層構造を製造することもできる。
【0025】
我々は、炭素とクロム(または他の遷移金属)の共堆積により、被覆すべき物品の回転速度に応じて、多層または均質混合物を製造できることを見出だした。
遷移金属、すなわちHandbook of Chemistry and Physics, 77th Edition 1996-1997 (CRC Press) の1〜15頁に記載されている様に、周期律表の3〜10族(新IUPAC表記法)の一つに族する金属、好ましくはクロムまたはチタン、が特に有効であることが分かっている。
【0026】
該被覆は、マグネトロンスパッターイオンプレーティングにより効果的に、最も好ましくは閉鎖磁界不均衡マグネトロンスパッターイオンプレーティング(closed field unbalanced magnetron sputter ion plating) (CFUBMSIP)と呼ばれる技術により形成される。その様な技術を使用し、本発明の、非常に優れた特性を有する被覆を製造することができる。その様な技術に使用する装置は、本明細書の後の方で、添付の図面を参照しながら説明する。さらに、その様な装置は、ここにその全文を参考として含める英国特許第2258343号明細書に記載されている。
【0027】
少なくとも2個のマグネトロンを配置し、それらの間に磁界を発生させ、磁界線が1個の該マグネトロンから他の該マグネトロンに伸び、該マグネトロン、および1個の該マグネトロンから他のマグネトロンに直接伸びる磁界線が、プラズマ含有作業空間(その中で基材が被覆される)内から電子が逃げるのを阻止するバリヤーを形成するのが有利である。
【0028】
その様な方法は、被覆している基材の領域に高いイオン電流密度を達成するのに特に好適である。その様なバリヤーによる磁界の少なくとも部分的な閉鎖により作業空間から電子が逃げるのを阻止する傾向があるCFUBMSIP法を使用することにより、その空間におけるイオン化が促進され、それによって被覆堆積の際に基材が受けるイオン爆撃の強度が増大する。その結果、高いイオン電流密度(icd)を達成することができる。本発明の好ましい実施態様では、電子の逃げに対するその様なバリヤーは、基材を取り囲む想像上の管の形態を取る。その様な管状バリヤーの末端は開いていても閉じていてもよい。
【0029】
その様なCFUBMSIP堆積法は好ましい堆積法であるが、高icdを与える他の方法も使用できる。
【0030】
スパッターイオンプレーティングを行なう場合、被覆する物品は、好ましくは浮動(floating)電圧〜250Vネガティブのバイアス電圧に保持する。これらは包括的な値であり、印加するバイアス電圧はDC、パルス状DCまたはRFでよい。好ましくは、その様なバイアスは50V〜150Vネガティブであり、その様なバイアスが70〜100ボルトネガティブである場合に最良の結果が得られる。
【0031】
該被覆を形成する非常に簡単で好ましい方法は、被覆している間に基材を回転させることである。この方法は、基材上に一様な被覆を達成し易く、多層被覆の堆積にも有利である。しかし、金属が比較的低レベル(20%以下)で存在すれば、金属を含む、実質的に均質なグラファイト状層を製造することができる。炭素ターゲットおよびクロム(または他の金属)ターゲットから共堆積させることにより、回転速度に応じて、多層または均質混合物を製造することができる。
【0032】
炭素と金属の最適比率を達成するための特に便利な方法は、3個の炭素供与ターゲットおよび1個の金属供与ターゲットを被覆形成に使用することである。基材は、作業空間内の、その様なターゲット間で回転させることができる。
【0033】
基材の回転速度および炭素および金属の堆積率は、(被覆の、主として炭素および主として金属である交互の層からなる区域の)被覆層構造で少なくとも3nmの期間(period)を得る様に、適切に制御する。
【0034】
炭素ターゲットの数は金属ターゲットよりも多くすることができる。少なくとも6個のマグネトロン(少なくとも2個の金属、例えばクロム、ターゲットおよび少なくとも4個の炭素ターゲット)、または少なくとも8個のマグネトロン(少なくとも2個の金属ターゲットおよび少なくとも6個の炭素ターゲット)を有する閉鎖リング磁界系が好ましい。
【0035】
我々は、炭素ターゲットに印加し得る電力量には(例えばクロムターゲットと比較して)比較的低い電力限度があること、およびこれがグラファイト状被覆の堆積速度における速度制限段階であることを理解した。多数の炭素ターゲットを使用することにより、被覆速度を高めることができる。例えば、少数の金属ターゲットマグネトロンで流れるよりも低い電流で多数の炭素ターゲットマグネトロンで最初の作業を行なうことができる(すなわち金属ターゲットマグネトロンは高い電力で作動させることができる)。こうして、最初に考えられることとは対照的に、4C+2Crターゲットマグネトロン、または6C+2Crターゲットマグネトロンが、炭素およびクロムの50/50被覆(炭化クロム)を堆積させることができ、それを2C+2Crマグネトロンターゲット系よりも約2または3倍速く行なうことができる。
【0036】
好ましくは、被覆の少なくとも一部を貴ガスを含む雰囲気中で堆積させる。貴ガスの使用により、堆積した被覆の、化学的に活性なガスの化合物による汚染が避けられる。一般的に、アルゴンを使用するのが最も都合が良い。スパッター系におけるアルゴンガス圧は重要ではなく、約7x10−2Pa(5x10−4トル)〜約1Pa(1x10−2トル)でよい。好ましくは、該被覆は、アルゴン含有雰囲気中、圧力0.07Pa〜0.6Paで堆積させる。
【0037】
化学的に活性なガスの化合物による被覆の汚染は避けるのが好ましいが、本発明は、その様なガスをスパッタリング室の雰囲気中に導入することにより、被覆組成物を故意に変性する可能性を排除するものではない。
【0038】
例えば、本発明のある種の実施態様で行なう様に、堆積させる際に炭化水素ガスをスパッタリング雰囲気中に含むことにより、形成する被覆を変性させることができる。
【0039】
炭素と金属の混合物をスパッタリングし、金属含有層として基材(被覆する物品)上に堆積させることができる。この層は、作業雰囲気中に存在する炭化水素ガスの分解により生じる別の炭素も含むことができ、この炭素が電気的にバイアスされた基材上に直接堆積する。該炭素層の堆積は、炭素ターゲットからのスパッタリングとプラズマ中にある炭化水素ガスの分解の組合せにより行なうことができる。
【0040】
また、上記の被覆は、堆積の際に作業雰囲気に窒素を加えることにより変性することもできる。これによって、窒素を、金属と反応させて金属窒化物を形成するか、または炭素と反応させて炭素−窒素化合物を形成することにより、被覆を変性することができる。
【0041】
本発明の別の態様では、少なくとも1個の金属供与ターゲットおよび少なくとも1個の炭素供与ターゲットを有するマグネトロンスパッターイオンプレーティング装置を提供する。
【0042】
その様なマグネトロンスパッターイオンプレーティング装置は、好ましくは少なくとも2個のマグネトロンを含んでなり、それらのマグネトロンは、マグネトロン間に磁界を発生し、磁界線が1個の該マグネトロンから他の該マグネトロンに伸びる様に設計されており、該マグネトロン、および1個の該マグネトロンから他の該マグネトロンに直接伸びる磁界線が、プラズマ含有作業空間(その中で基材を被覆することができる)から電子が逃げるのを阻止する傾向があるバリヤーを形成する。
【0043】
好ましくは、少なくとも0.5 mA/cm のイオン電流密度を達成できる様に配置する。
【0044】
炭素および金属ターゲットを使用することにより、被覆層を堆積させる条件の選択に大きな融通性が得られる。例えば、その様な条件を変えることにより、炭素層および/または金属含有層(例えば下側の層)の組成を変化させ、その層が堆積する時に、その組成を基材表面に隣接する金属から、金属炭化物を通り、炭素層にある(グラファイト状)炭素に変化させることができる。
【0045】
本発明は、ここに規定する方法により形成される被覆、その様な被覆を有する物品、さらに下記の物品にも及ぶ。
【0046】
炭素含有被覆を有し、該被覆の湿潤条件下での固有摩耗率が10−16m/Nm未満、好ましくは10−17m/Nm未満である物品(一般的に、被覆の摩耗率は、乾燥時に約2x10−17m/Nm、湿潤または潤滑時に約10−18m/Nmである)。
【0047】
炭素含有被覆を有し、該被覆の密着臨界荷重が少なくとも70Nである物品。
炭素含有被覆を有し、該被覆の硬度が少なくとも1000 VHNである物品。
炭素含有被覆を有し、該被覆の(乾燥)摩擦係数が0.1以下である物品。
【0048】
上記の被覆は、高い比荷重(例えば、約3 GPa以上)を受けても、それらの摩耗率、密着臨界荷重、硬度、および摩擦係数の特性を有することができる。
【0049】
該被覆が黒色である、および/または導電性である、すべてのその様な物品。
該炭素含有層は、最も好ましくは下記の特性、すなわち
X線回折により、または透過電子顕微鏡における選択区域回折により検出できる結晶化度が存在しないこと、
ラマン分光法により、sp2形態の層中に主として炭素−炭素結合が示されること、および
主としてグラファイト状(sp2)結合であり、粒子径が非常に小さいこと
の1つ以上を備えた構造を有する。
【0050】
これらの被覆が非常に高い硬度を発揮することは、ある程度の架橋があるに違いないことを示している。被覆構造はある程度のC60を含み、ある程度のsp3結合が存在し得る。
【0051】
我々は、本発明により形成される被覆により与えられる優れた耐摩耗特性に様々な試験を行なった。
【0052】
無論、異なった耐摩耗性測定方法は異なった結果を与えることがあり、従って、本明細書では、請求項を含めて、耐摩耗性は、他に指示がない限り、下記の試験により測定した固有耐摩耗性である。
【0053】
固有耐摩耗性試験
試験被覆は、特定の被覆と同じ条件下で、ただし平らな高速鋼製ディスクからなる基材上に形成する。試験被覆の耐摩耗性は、下記の様にして測定する。
【0054】
被覆していない、半径2.5mmの半球状ヘッドを有する炭化タングステンピンを、平らな高速鋼製ディスク上の試験被覆に擦り付ける。ピン上の規定荷重は、20〜100Nであり、ディスクを回転させ、摩擦速度を毎分180mmにする。(ピン上の荷重を20〜100Nにすると、この試験により与えられる固有摩耗率は実際の荷重とは実質的に無関係であることが分かった。)湿式条件を規定する場合、他の液体が規定されない限り、水の存在下で摩擦を行なう。
【0055】
摩擦表面を通るテーパー部分(角度5°未満)を、光学顕微鏡を使用して500xの倍率で検査し、被覆の摩耗を測定する。この方法により、10−17m/Nmまでの低い固有摩耗率を容易に測定することができる。
【0056】
無論、他の試験も可能であり、実際に他の幾つかの試験が本明細書で好ましい。本明細書の請求項に記載されている値の基準となる試験は、すぐ上の段落に記載する試験である。
【0057】
本発明により形成される被覆は、油または水性媒体により潤滑されていなくても、潤滑されていても、構成部品が高い負荷を受ける条件下で使用するための硬質、低摩擦の耐摩耗性表面を与えるのに有用である。本発明により被覆を施すのが有利である構成部品の例は、自動車工業に多くある。歯車、カムシャフト、バルブ、ピストンリング、シリンダーライナーを挙げることができる。
【0058】
また、本発明は、医療用義肢、例えば人造の腰、膝、または肩の関節および心臓弁、の分野でも特に重要であり、本発明は、医療用義肢またはその一部として構成された、ここに規定する被覆物品にも及ぶ。
【0059】
医療用義肢に関する問題点は、患者に埋め込まれた後、摩擦表面の可動部分の共同作用するすべての表面と一緒に擦れることである。これによって、擦れる表面の摩擦および摩耗が引き起こされる。摩耗した表面により引き起こされる問題を改善するために外科手術を行なって義肢を交換しなければならないのでは、明らかに好ましくない。義肢の摩耗に関連する機械的問題に加えて、義肢の表面の摩耗から生じる屑に関連する生物化学的問題もある。これらの2つの問題は良く知られている。
【0060】
本発明は、新規な、摩耗し難い、低摩擦義肢を提供する。特別な実施態様では、固有摩耗率が10−16m/Nm以下である被覆を施した少なくとも1個の部分を有する義肢を提供する。好ましくは固有摩耗率は10−17m/Nm以下、場合により10−18 または10−19m/Nm以下である。
無論、被覆は低摩擦の固体潤滑性被覆である。
【0061】
本発明は、やはり同様の被覆を施したコバルト−クロムプレートに対して、40Nの荷重および摩擦速度3mm秒で、水を付けて擦り付けた時に、1000メートル摩擦した後に定量的に摩耗が測定されない様な被覆を有する義肢を提供する。
やはり、摩耗測定は、倍率500xの光学顕微鏡を使用し、擦った表面を通るテーパー部分(角度5°未満)の検査により行なう。
【0062】
義肢は、被覆を施した金属表面を含んでなるのが好適である。
【0063】
被覆は、義肢の、使用中に互いに対して移動する相互の摩擦表面すべてを覆う様に施すのが好ましい。
【0064】
好ましくは、義肢は、被覆を施したクロムまたはチタン部材を含んでなる。より好ましくは、義肢は、被覆を施したコバルト−クロム合金部材、チタン合金部材またはステンレス鋼部材を含んでなる。チタン合金は、好ましくはTiAlVである。
【0065】
本発明の最も好ましい実施態様により、優れた摩擦学的特性を備えた新しい種類の炭素被覆か開発された。この新規な炭素被覆は、ダイアモンド結合をほとんど有していない様である。被覆の改良が、多くの摩擦および摩耗実験で立証されている。
【0066】
この炭素被覆は、炭素ターゲットからマグネトロンスパッターイオンプレーティングにより単純に堆積させる。我々の英国特許第2258343号明細書(および対応するヨーロッパ特許第0521045号明細書および米国特許第5,556,519号明細書)に記載されている方法および装置を使用することにより、特に良好な結果が得られる。
【0067】
一実施態様では、英国特許第2258343号明細書の図5に例示されている様な4ターゲット閉鎖磁界不均衡マグネトロンスパッターイオンプレーティング機構を使用する。
【0068】
ここで本発明の実施態様を添付の図面を参照しながら、例としてのみ説明する。
図1で、4個のマグネトロン1、2、3および4はそれぞれ外側リング磁石5および中央のコア磁石6を有する。マグネトロンは、被覆すべき基材のためのキャリヤー7を中心にして配置されている。基材キャリヤー7は、矢印8により示される様に一つの軸を中心にして回転する。基材キャリヤー7は、実質的に垂直な軸を中心にして回転する様に配置するのが通常最も都合が良い。実用的な配置を示す図面では、マグネトロン1および3の外側磁石5はS極であり、それらの内側コア磁石6はN極である(それらの、基材キャリヤー7に面した区域で)。マグネトロン2および4の外側磁石5はN極であり、それらのコア磁石6はS極である(やはりそれらの、基材キャリヤー7に面した区域で)。こうして、マグネトロン1、2、3および4の磁界線Bは連続的なバリヤーを形成し、マグネトロンプラズマから拡散する電子を捕獲し、磁界線Bは、少なくとも部分的に作業空間10を限定し、その中で被覆工程中に基材キャリヤー7が回転する。そのバリヤーは、所望により、作業空間10の軸方向末端(通常はその上端および下端)を超えて伸びていても、いなくてもよい。
【0069】
この図は、それぞれのマグネトロン1、2、3および4に関連する供給材料のターゲット11、12、13および14も示す。これらのターゲットは、基材キャリヤー7に面したマグネトロン極の面を覆っており、各マグネトロンは軟鉄製裏板15を有し、それらの内側磁性回路を完結している。
【0070】
この図面から分かる様に、磁界線Bは基材キャリヤー7を取り囲み、管状の作業空間10を形成し、その中に電子が捕獲される。電子は、恐らくこの系の軸方向末端を除いて、この系から逃げられないので、基材と関連するイオン化を強化するのに使用でき、高イオン密度を生じる。
【0071】
使用中、不活性ガス、例えばアルゴン、がこの系の室中に供給され、その室中でマグネトロンターゲット11、12、13および14に印加される電位差により電子が加速され、ガスをイオン化し、より多くの電子およびアルゴンイオンを発生する。室中に存在するアルゴンイオンが供給材料のターゲットを爆撃し、供給材料の被覆フラックスを製造する。ターゲットの中の3個が炭素であり、1個が遷移金属、例えばクロムまたはチタン、であるのが好適である。アルゴンイオンは基材も爆撃する。磁界線Bは、マグネトロン放電から拡散する電子に対して連続バリヤーを形成し、これらの電子が、電気的に負にバイアスされた基材に関連するグロー放電を強化する有用な機能を果たさずに、系の側方を通って失われるのを確実に阻止する。
【0072】
マグネトロン1、2、3および4は、一つのリング中にほぼ等角度に間隔をおいて配置され、その中心に基材キャリヤー7がある。これらのマグネトロンは、被覆室(図には示していない)中に支持されており、被覆室は円筒形でよく、基材キャリヤー7をその上部と底部で支持するための軸方向ベアリングを有する。4個のマグネトロンを含む線の外に、例えばその基底部に、ポンプ口(図には示していない)を備えている。
【0073】
磁界Bは、基材を取り囲む連続リングを形成し、そのリング中に電子を捕獲する。偶数のマグネトロン極機構があるので、フラックスリングが完結できる。偶数のマグネトロンを備えるのが有利である。6または8個のマグネトロン極機構も良い配置と考えられるが、無論、所望によりより多くを備えることもでき、2個だけのマグネトロンを有する系も使用できる。図に示す様に、隣接するマグネトロンは、反対の極性を有する外側磁石機構を有する。
【0074】
別の実施態様では、対向する一対のマグネトロン1、3を他の対よりも強くし、その対の1個の磁石の極性を逆転させる。磁界線がこれらのマグネトロンの外側極を接続して電子バリヤーを形成し、他のマグネトロン2、4がそのバリヤーの外になる様に配置する。これによって、これらのマグネトロンは電子を閉じ込める役目を果たさず、追加の被覆材料を供与するだけに使用される。その様な配置は、英国特許第2258343号明細書の図8に示されている。
【0075】
無応力被覆を得るには、基材に極めて低いバイアス電圧を使用するのが好ましく、従って、基材を70Vネガティブのバイアス電圧に維持する。スパッタリング室はアルゴン雰囲気を約0.3Pa(2x10−3トル)の圧力で含む。4ターゲット閉鎖磁界不均衡マグネトロンスパッターイオンプレーティング機構を使用することにより、0.5 mA/cm を超える電流密度が基材に確保される。低い電流密度、典型的には0.5 mA/cm 未満、では、被覆の摩擦学的特性が劣ることが分かっている。
【0076】
極めて優れた摩擦学的特性を有する被覆を製造する典型的な堆積手順は、下記の通りである。
【0077】
i.被覆すべき物品をイオン洗浄する、
ii.0.05〜0.2μmの金属を堆積させる、
iii.金属および炭素を共堆積させ、厚さ0.1〜0.3μmの炭化クロムの下側層構造を製造する、
iv.基材を回転させながら金属ターゲット上の電力を次第に下げ、炭素および金属を含む層構造からなる多層構造被覆層を製造する。
【0078】
最終被覆の厚さは、特定用途の要求により異なるが、典型的には1〜5μmである。
【0079】
上記の様にして堆積させた炭素または炭素/金属多層被覆は、非常に優れた摩擦学的特性を有することが分かっている。
【0080】
密着臨界荷重>70N。
【0081】
規定する条件下で形成される被覆のビッカース硬度は、約2500 VHNであったが、これは正確な堆積条件に応じて1000〜3000 VHN以上に変動し得る。
【0082】
摩擦計数0.1未満。
通常の(湿気のある)雰囲気における非潤滑(乾燥)摩擦に対する固有摩耗率は、驚く程低く、約2x10−17m/Nmである。潤滑(湿潤)摩擦では、摩耗率ははるかに低く、事実、油また水の潤滑下での摩耗率を正確に測定することが困難である程低い。このことから、その様な摩耗率は10−18/Nm未満、場合により10−19m/Nm未満であると考えられる。
【0083】
被覆は、非常に高い荷重で摩耗に耐える能力を有し、炭素層は800 N/mmまでの荷重に耐えることができ、本発明の最も好ましい実施態様による多層被覆は3000 N/mmまでの荷重に耐えることができる。(荷重は、高速鋼の基材上に被覆を堆積させた時に測定)潤滑摩擦に関する上記の摩耗係数は、1800 N/mmを超える特定の荷重で得られる。
【0084】
ここで、本発明により形成される被覆は、真空中での使用は意図していない。我々は高真空下および乾燥窒素雰囲気中で試験を行ない、高真空または乾燥雰囲気中での摩耗率が高いことを見出だした。このことは、大部分がグラファイト状構造である炭素被覆層の特性と一致している。
【0085】
UVラマン分光法によりsp3結合、すなわちダイアモンド結合、はほとんど検出されず、ラマン分光法は、結合が大部分sp2。すなわちグラファイト状結合であることを示している。このことは、被覆が導電性であり、高真空条件下で摩耗率が高いことと一致している。
【0086】
1000〜3000 VHNの硬度はグラファイト状構造には異常である。CFUBMSIP(または他の高icd機構)により与えられる堆積条件は、ある種の形態の架橋を生じ、高硬度をもたらすに違いない。
【0087】
高硬度と低摩擦の組合せが、恐らく、多くの試験で示される異常に低い摩耗速度の原因であり、これは、他の炭素系被覆、例えば金属含有、ダイアモンド状炭素被覆、よりもはるかに低く、我々の新規な炭素被覆の耐負荷能力がはるかに高いことと一致している。
【0088】
本発明の被覆方法は、得られる被覆が傑出した摩擦学的特性を有し、水系液体中で安定しており、これらの液体で湿潤した時の摩耗率が非常に低いので、医療様義肢の分野で特に重要である。我々の試験により、非潤滑(乾燥)摩擦条件下でも被覆の摩耗率は非常に低い(固有摩耗率が上記の様に約10−17m/Nmである)が、水の存在下で摩擦した時、摩耗率は、定量的な測定が非常に困難な程低いことが分かっている。これらの試験は、水力学的影響が不可能である低摩擦速度で行なったものであり、摩耗率が低いことは、この被覆の真の特性である。
【0089】
我々は、炭素含有被覆を施した構成部品を、体内移植物、例えば人造腰部関節、に見られる条件を模擬するウシ血清(0.01%NaN3)中に浸漬して摩擦する試験をさらに行ない、類似の良好な結果を示した。ウシ血清におけるこれらの試験により、被覆した移植物の摩耗が著しく低いことが分かった。
【0090】
試験により、これらの被覆は生物と相容性があり、被覆による悪影響は検出されないことも分かった。炭素繊維移植物が生物学的に受け入れられることは公知である。特定の形態にある炭素は生物活性であることも公知である(その上の細胞成長を促す)。
【0091】
コバルトクロム合金材料は、義肢、例えば人造腰部関節、の製造に好適な、事実、通常使用されている、材料であることは公知である。往復摩擦試験で、コバルトクロム合金製の半径2.5mmの半球状末端を有するピンを、被覆していないコバルトクロム合金の平らな板に対して、ウシ血清潤滑下で摩擦した。荷重は400 MPaであり、摩擦速度は毎分180mmであった。固有摩耗速度は10−14m/Nmであることが分かった。これは、被覆していないコバルトクロム合金材料を本発明により被覆した材料と比較するための基準点である。
【0092】
次いで、コバルトクロム平板に本発明により炭素被覆を施した。被覆は、上記の様に炭素およびクロムを共スパッタリングにより堆積させた炭素−クロム被覆であった。
【0093】
炭素−クロム層の前に、クロムの下側層を堆積させた。炭素−クロム層の厚さは3μmであった。
【0094】
被覆していないコバルトクロム合金製の半径2.5mmの半球状末端を有するピンおよび被覆したコバルトクロム平板を使用し、ここに規定する試験に従って、水の存在下で摩擦を行なったところ、摩耗率は極めて低く、正確には測定できなかった。この場合の固有摩耗率は、10−17m/Nm(これは、被覆した基材に対して、空気中、非潤滑条件下で行なった同等の試験の大体の摩耗率である)より、確実にはるかに低い。
【0095】
この様に、2個の相対的に移動している/摩擦している表面間の被覆していない界面と比較して、被覆は摩耗率が1000を超えるファクターで低下した。
【0096】
ピン−オン−ディスク機械で、直径5mmの半球状末端を有する炭化タングステンピンを使用し、被覆したコバルトクロム平板を水の存在下で荷重40ニュートン、摩擦速度毎秒3mmで被覆を試験したところ、1000メートル摩擦後に摩耗は定量的に測定できなかった。試験をウシ血清中で行なっても、類似の結果が達成された。
【0097】
上記の様な、摩擦した表面のテーパーのついた部分の光学顕微鏡による測定を試みた。
【0098】
移植物/義肢の炭素被覆は、生物学的に相容性があり、人体に使用するのに好適である。
【0099】
被覆は、腰関節、膝関節、型関節、等を包含する広範囲な人造関節における摩耗を低減させるのに好適である。この被覆は、あまり高い負荷のかからない移植物、例えば人工心臓弁、の摩耗を低減させるのにも好適である。上に挙げた用途は代表例であり、本発明を制限するものではない。
【0100】
体内移植物として使用する典型的な義肢は、一緒に摩擦する表面を有する。これらの2つの表面は、通常、相対的に運動する金属表面である。
【0101】
被覆は、互いに摩擦する義肢表面の一方に、または両方の表面に堆積させることができる。明らかに、両方に堆積させる方が非常に有利である。
【0102】
義肢/移植物上に厚さ10μm、好ましくは1〜5μmの被覆を施すことを意図している。厚さは、義肢の使用および目標とする寿命によって異なり、例えば、関節用に実用的な被覆の厚さは3〜4μmでよいが、負荷の低い部品(例えば心臓弁)にはより小さくてよい。この種の被覆を達成するには、使用する技術は、必要とする厚さを与える堆積時間の調節に関して説明した技術である。
【0103】
図2は、物品22に施した被覆20の断面を図式的に示す。被覆は、物品22の上にクロム層24を堆積させ、被覆と物品の密着性を改良している。炭化クロム層26(大体がCr)がクロム層の上に伸びている。グラファイト状の層28Cr(xは約15であり、yは約85である)(すなわち炭素中、クロム15%)が炭化クロム層の上に伸びている。グラファイト状の層は、主としてsp2形態の炭素−炭素結合を有し、実質的に均質な(層になっていない)構造を有する。異なった層間に鮮明な境界が無く、よりゆるやかな推移があることが分かる。
【0104】
クロム濃度を臨界レベル(約15〜20%)より低く抑える限り、sp2結合した炭素のグラファイト状層(その中にある程度のクロムがある)は、良好な摩擦学的特性が低下せず、その層はかなり厚く(例えば10μm以上)構築することができる。しかし、クロムが臨界レベルを超えると、主としてクロムの層と主として炭素の層を含む層状構造が生じる。クロムが約20%を超えると、被覆の良好な摩擦学的特性が失われる。
【0105】
クロム層24の深さ30は約100〜200nmであり、炭化クロム層26(CrC−原子の正確な比は重要ではない)の深さ32は約200〜400nmであり、グラファイト状層28の深さ34は約2〜3μmである。
【0106】
図4は、クロムマグネトロンターゲット(実線36)および炭素ターゲット(基準38)用の電力設定の相対的なタイミングを図式的に示す。最初にクロムターゲットに電力を印加し(例えば電流約6Aをクロムターゲットに設定する)、クロムを堆積させ、層24を製造する。次いで、ある時間の後、電力を徐々に炭素マグネトロンターゲットに印加し、堆積する炭素の百分率をゼロから増加させる。同時に、クロムターゲットに印加する電力を低下させ、クロム堆積の絶対速度を下げる。この堆積速度が低下すると、炭素ターゲットの全体的な堆積速度がクロムターゲットのそれと適合するので、一般的に化学量論的な1:1、またはCr比の炭素とクロムが堆積し、炭化クロムCr層26を形成する。クロムターゲットへの電力をさらに連続的に低下させるが、完全には停止せず、炭素ターゲットへの電力を許容される最大値に維持すると、クロムよりはるかに多くの炭素が堆積し、グラファイト状CCr層28が製造される。
【0107】
図4のマグネトロン電力プロファイルにより製造される炭素系被覆は、金属性密着層(好ましくはCrであるが、これが必要という訳ではない)と、これに続く、グラファイト−IC最上層への勾配を付けた界面からなる。勾配を付けた界面は、金属(Cr)ターゲットへの電力を最大から最小に、Cターゲットへの電力をゼロから最大に、連続的に変化させることにより達成される。この連続的な変化は、1または2個のCrターゲットを使用する場合、15〜60分間、理想的には30分間の間に行なう。この勾配を付けた界面を図4に示す。
【0108】
Cr層の堆積時間は、使用するターゲットの数によって異なり、2個のCrターゲットではこの時間は3分間であろう。最終的なCCr層の堆積時間は使用する炭素ターゲットの数によって異なり、約2μmのCCr層を形成すれば十分である。2個の炭素ターゲットを備えた堆積機構では、この時間は典型的には3時間である。
【0109】
被覆は、最上部の、主としてsp2C−C結合のグラファイト状層の下に炭化物の層を有することができる。図5は、マグネトロン電力と、炭化クロム中間層を有する被覆を達成する時間のグラフを示す。炭化物Cr層の堆積時間はCrターゲットの数によって異なり、2個のCrターゲットを使用する系では、典型的には60分間である。
【0110】
Cr層の堆積時間は2μmの厚さを与えれば十分であり、続いて2μmのCCr(主として炭素、例えば85%炭素)を形成する。これらの時間は、2個のCrターゲットおよび2個の炭素ターゲットを備えた系では、それぞれ60分間および180分間であろう。
【0111】
図5Bは、ターゲット/マグネトロン電力と、Cr層を有する被覆を形成する時間のグラフを示す。このグラフは、窒素含有量も最大流量の百分率として示す。厚さ約2μmのCr層を形成するための堆積時間を示す。
【0112】
図4は、46で、クロムの総含有量が約20%(原子で)以上である時の、クロム/炭素の交互の層(より正しくは、主としてクロムの層と、主として炭素の層が交互に存在する層)を図式的に示す。48は、クロム含有量が約15原子%未満の均質なグラファイト状層28を非常に図式的に示す。
【0113】
炭素含有量の高い被覆を工業的に製造するには問題があり、炭素ターゲットは直接冷却することができず、炭素ターゲットを銅製のヒートシンクに取り付け、間接的に冷却しなければならない。炭素ターゲットの熱伝導性により、ターゲットが亀裂を生じることなくターゲットに印加できる電力量が制限される。炭素ターゲットの電力約3.6 Wcm−2ワット以下で操作するのが好ましい。この電力は、冷却される金属ターゲットに印加できる電力よりはるかに低く、この製法の速度を制限する部分である。従って、最初に考えられそうなこととは反対に、(所望の被覆を得るのに純粋に化学量論的なターゲット数と比較して)過剰の炭素ターゲットを備えたMSIP機構を使用する方が良い。そのため、CrCを製造するのに、4個の炭素ターゲット40および2個のクロムターゲットを使用するのが好ましい。例えば、2個のCターゲットおよび2個のCrターゲットを備えたMSIP機構を使用して炭素被覆を製造するのに6時間かかるとして、4個のCターゲットおよび2個のCrターゲットを備えた機構ではそれを製造するのに約3時間で済む。8個のマグネトロンを備えた機構、例えば6個の炭素ターゲットおよび2個のクロムターゲットを備えた機構が好ましい。
【0114】
図3は、物品22’に施した別の被覆50を示す。クロム層24’を堆積させ、続いて窒化クロム層(CrN)52、炭窒化クロム層(CrCN)54、炭化クロム層(CrC)26’、およびグラファイト状層(CCr)28’(ここでxは約85以上であり、yは約15以下であり、主としてsp2結合が存在する)を堆積させる。
【0115】
窒素は、MSIP装置に窒素ガスとして入口から導入する。CrNは硬い材料である。CrNは、炭素を含んでいない(従って、炭素ターゲットよりも多くの電力をクロムターゲットに印加できる)ので、CrCよりもはるかに迅速に堆積させることができる。従って、より速くできるので、主としてCrNを使用し、より厚い硬質被覆を構築するのが好ましい。CrCN層54への移行は徐々に行ない(急激な変化は、被覆構造中に構造的な歪みおよび弱さを持ち込むことがある)、Cr被覆(x:yは約1:1または約3:2、またはこれらの値の間である)を達成するのに必要な工程であり、我々は、グラファイト状被覆28’に穏やかに移行させ、それによって被覆中に良好な凝集を確保するのに望ましいと考える。CrCNから、Cr層をほとんど、または実質的に含まないグラファイト状被覆に行くことも可能であるが、適度の実質的なCr層を有するのが好ましい。
【0116】
典型的な層厚さを以下に示す。
【0117】

層 厚さ 図3の番号
Cr層24’ 200 nm 56
CrN層52 >2μ m 58
CrCN層54 2μ m 60
CrC層26’ 2μ m 62
Cr 層28’ 2μ m 64
主としてCrC(Cr)である代わりに主としてCrNである硬質層を(密着Cr層24’とグラファイト状層28’の間に)有することにより、硬質層を堆積させる時間を大幅に短縮することができる。
【0118】
図5Aは、前に説明した様に、別の被覆を施すために、クロムターゲット(線66)および炭素ターゲット(線68)に電力を印加する相対的なタイミング図式的に示す。この例では、クロム層が製造される区域70(クロムに高電力を印加し、炭素には印加しない)があり、次いで、炭素ターゲットに印加する電力を、区域72を経由して区域74の中間レベルに次第に増加させる。区域74では、クロムターゲットおよび炭素ターゲットに印加する相対的な電力は、ある時間、実質的に一定である。区域76で、クロムターゲットへの電力を、区域78における低レベルに次第に下げ、炭素ターゲットへの電力を最高レベルに増加させる。
MSIP機構が区域70で作動している間、クロム層が堆積している。この機構が区域74で作動している間、クロムの量は20%を超え(例えば25%)、主としてクロムの層および主として炭素の層が交互に配置された実質的に層状の被覆区域が製造され、系は、その炭化クロムの区域で存在し、計画的に多層構造を形成する。系が区域78で作動する時、グラファイト状層(均質で、クロムが約15%未満であるが、ある程度のクロムは存在し、主としてC−Cのsp2結合を有する)が製造される。
【0119】
被覆の深さの一部が、約100以上の主として炭素の層の間に交互に挟まれた約100以上の主としてクロムの層からなり、各炭素層および各クロム層の厚さが約100オングストローム(50〜150オングストローム)である被覆を得ることができる。
【0120】
無論、クロム以外の遷移金属も効果的に使用でき、請求項で「クロム」と言う場合、クロムおよび他の効果的に使用できる遷移金属もカバーするものとする。
この被覆の主要な応用分野は、自動車工業における、可動部分間で接触する、ベアリング、等である。
【0121】
無論、本発明のグラファイト状被覆を、あらゆる硬質被覆、場合により別の被覆工程で予め施された被覆、の上に施すことができる。硬質の下側被覆は、遷移金属窒化物、遷移金属炭化物、または遷移金属酸化物、またはそれらのすべての組合せでよい。
【0122】
物品上に被覆層を施す典型的な手順を以下に説明する。
主としてCrの層、次いでCr含有量が約15%に徐々に減少し、炭素含有量が0〜約85%に増加する層、次いで約15%のCrを含む炭素の層を施す。
【0123】
硬質下側層を施す場合には、この手順を、Cr層に続いてCr含有量を約50%に下げ(ただし、約30%〜70%に下げ、残りを炭素にしてもよい)、C含有量を約50%に上げる様にする。これらの条件は、この組成の層が、1〜3μmに堆積するまで維持する。次いで、Cr含有量を約15%に次第に下げ、C含有量を約85%に上げて行く。次いで、これらの条件を、被覆の残りの部分のC:Cr組成が85:15になり、最終的な層厚さが典型的には1〜3μmになるまで維持する。
【0124】
硬質下側層を製造するもう一つの方法では、系の中に窒素を導入する。これによって、配列はCr−CrN−CrCN(CはCターゲットからスパッタリングにより形成される)−CrC−Cr:C(85:15)になる。この方法の主な利点は、CrNをCrC(Cターゲットからのスパッタリングを使用する)よりも高速で堆積させることができるので、より厚い硬質下側層がより迅速に堆積する。CrNから85:15の外側層までの配列はすべて勾配を有する。
【0125】
CrまたはCrNとCの共堆積の際、その堆積方法のために、CrまたはCrN(少量のCを含む)および少量のCrまたはCrと窒素を含むCからなる多層被覆が、CrとCの比が約20:80に低下するまで堆積する。
【0126】
最終的な層(Cr:C=約15:85)は、多層でも均質な混合物でもよい。通常の方法では、この層は多層ではないが、回転をはるかに遅くすると、回転速度に応じた層の期間で層状の構造が得られる。
【0127】
中間層中の多層の数は、その中間層の厚さおよび回転速度によって異なる。典型的な数は厚さ1μmの層に対して100層であるが、回転速度に応じて、この数は25〜500のいずれかになろう。1回転は1個の二重層を意味する。
【0128】
Cr以外の遷移金属も使用できる。堆積系中に2個の金属ターゲットを使用する場合、これらの2個のターゲットが同じ材料である必要はない。例えば、1個のCrターゲットおよび1個のTiターゲットで優れた被覆が得られている。一般的に、Tiは最終層には使用しないが、使用してもよい。また、上記のCrNの所で、CrNを使用することもできよう。
【0129】
図6は、4個の炭素ターゲット40および2個のクロムターゲット42を有する6マグネトロン閉鎖磁界スパッター機構を示す。クロムターゲットは互いに対向して配置されている。
【0130】
別の機構として、6個の炭素ターゲットおよび2個のクロムターゲットを有し、やはりクロムターゲットが直径方向で互いに対向して配置されている8マグネトロン機構も使用できよう。実際、我々の英国特許第GB2258343号明細書に示されているすべての配置を包含する、どの様な閉鎖磁界配置でも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、閉鎖磁界不均衡マグネトロンスパッターイオンプレーティング機構の一実施態様を示す平面図である。
【図2】図2は、本発明の被覆を図式的に示す図である。
【図3】図3は、本発明の別の被覆を図式的に示す図である。
【図4】図4は、異なった被覆を製造する時の、炭素およびクロムターゲットの電力−時間プロファイルを図式的に示す図である。
【図5A】図5Aは、異なった被覆を製造する時の、炭素およびクロムターゲットの電力−時間プロファイルを図式的に示す図である。
【図5B】図5Bは、異なった被覆を製造する時の、炭素およびクロムターゲットの電力−時間プロファイルを図式的に示す図である。
【図6】図6は、6マグネトロンCFMSIP機構を示す図である。

Claims (4)

  1. 少なくとも80原子%の炭素原子と20原子%以下のレベルのクロム原子を含む炭素層を含んでなり、
    主としてsp2型の炭素−炭素結合が存在し、そして実質的に均質な、層の無い被覆区域が存在する、被覆区域を有する、被覆を施した物品。
  2. クロム層と、炭化クロム層と、実質的に均質な炭素−クロム材料の層とを含んでなり、
    実質的に均質な炭素−クロム材料の層において、主としてsp2型の炭素−炭素結合が存在し、少なくとも80原子%の炭素原子が存在する、被覆を施した物品。
  3. クロム層と、窒化クロム層と、炭窒化クロム層と、前記炭化クロム層と、および前記炭素−クロム材料の層とを連続的に含んでなる、請求項2に記載の物品。
  4. 被覆が、炭素層と金属含有層とを連続的に含んでなり、
    炭素層または各炭素層中の炭素−炭素結合が大部分グラファイト状sp2形態であり、そして、被覆が、湿潤条件下で10-16m3/Nm未満の固有摩耗率を有する、炭素含有被覆を施した物品であって、
    被覆の第一の深さで、前記炭素層と金属含有層との連続が存在し、
    前記第一の深さから外側の被覆の第二の深さで、実質的に均質なグラファイト状の炭素と金属との層が存在し、
    前記実質的に均質なグラファイト状の炭素と金属との層は、少なくとも80原子%の炭素原子を有し、
    主としてsp2型の炭素−炭素結合を有し、そして、
    湿潤条件下で10-16m3/Nm未満の固有摩耗率を有する、物品。
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