JP4680612B2 - カーボンオニオンの製造方法 - Google Patents
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かかるカーボンオニオンは、軽量かつ安定であり、放射線に対する耐性、高温での耐性が優れている。また、その形状から、高弾性が期待され、真空下あるいは無潤滑環境下で使用できる固体潤滑剤としての応用が考えられている。また、医薬品、化粧品、燃料電池用水素吸蔵炭素材料としての用途も考えられている。
しかし、カーボンオニオンはその生産性に大きな課題があり、従来より様々な製造方法が提案されているが、実用に供するにはいずれの方法も問題があった。
これらの方法はいずれも対象とする原料への投入エネルギーが限られており、量産には限界がある。
特開2003‐137518号公報には、SiC粉末とCu粉末の加圧成形体に35万気圧以上、2700℃以上の超高圧・超高温の圧縮衝撃を加えて生成する方法が示されている。この技術は、高温・高圧という極限環境を作る必要があり、合成後の分離精製にも課題を残している。
また、構成元素がCとOとHを主成分とする単一または混合ガスを、加熱または放電プラズマにて活性化し、鉄族基または鉄族基合金基体上にカーボンオニオンを合成することを基本的特徴としている。
1)CとHを主成分とする単一または混合ガスを用いた場合におけるC:Hの原子数比率が0.001〜0.5:1である。CとOとHを主成分とする単一または混合ガスを用いた場合におけるC:O:Hの原子数比率が(0.001〜0.5):(0.001〜0.5):1であり、かつOの原子数がCの原子数より少ない。
2)鉄族基または鉄族基合金基体は、鉄、ニッケル、およびコバルトの単体、またはそれらを含有する合金を基材中に1%以上の比率で含有するものから選択される。
3)カーボンオニオン合成用基体の温度が1000℃以下である。
4)カーボンオニオン製造用原料ガスの活性化方法が、通電加熱したフィラメントである。
5)カーボンオニオン製造用原料ガスの活性化方法が、直流放電、交流放電、高周波放電、およびマイクロ波放電のいずれかである。
6)カーボンオニオン製造用原料ガスの活性化方法が、CとHを含有するガスの不完全燃焼である。
7)カーボンオニオンの合成を大気圧下、加圧下または減圧下で行う。
1)鉄族基または鉄族基合金基体上に合成されたカーボンオニオン含有生成物を連続的または断続的に基体から擦り取る。
2)カーボンオニオンの合成を流動床法にて複数の基体上に連続的に行い、該合成物を基体相互の摩擦および衝突、または振動付与による摩擦および衝突にて連続的に基体から除去し、カーボンオニオンを得る。
すなわち、本発明者らは、図1のように、ガス供給口6と排気口7を有する真空容器5内に回転軸3で回転自在な支持台2を配し、この支持台2と対峙する位置に陰極4を配した装置を用い、試みに、前記支持台2にカーボンオニオン生成用の鉄族系材料からなる基板1を装着し、前記ガス供給口6を通して真空容器5内を炭化水素と水素の混合ガス雰囲気とし、この雰囲気中で前記支持台2を陽極として放電プラズマ8を生成せしめた。その結果、基板1の表面に煤状のカーボンオニオン9が生成されることを知見した。
Cはカーボンオニオンの原料となる元素であるから必須であり、HとOには不飽和の炭素鎖を持つカーボンをエッチングする作用があると言われており、これがカーボンオニオンを効果的に生成する役割を果たしているものと思われる。
また、CとHとOを主成分とする単一または混合ガスにおいては、C:O:Hの原子数比率が(0.001〜0.5):(0.001〜0.5):1であり、かつOの原子数がCの原子数より少ない範囲でカーボンオニオンが合成され、その範囲外のCの多い領域では不定形炭素が生成され、OとHの多い領域およびCの少ない領域では何も生成されなかった。
前者のガスの代表的なものはCH4単体あるいはこれとH2の混合ガスが挙げられ、後者のガスの例としては、H2とCOとCH4の混合ガスが挙げられる。
この対策として、本発明は、鉄属基または鉄属基合金基体上に合成されたカーボンオニオンを含む炭素質膜を、合成中に連続的または断続的に基体から物理的に除去するものである。
図2は、この例を示しており、真空容器5中に支持台を介しまたは介さないで円盤状または円柱状の基体1を横軸の周りに回転自在に配し、該基体1の所要範囲たとえば半周領域に対向する位置に、加熱または放電プラズマ発生手段(この例では陰極)4を配置するとともに、基体1のカーボンオニオン生成領域から外れた位置、この例では円周方向で反対側に、静止するかまたは基体の回転方向に逆向する擦り取りないし掻き取り手段12を配し、掻き取り手段12の下方に基体表面から掻き取られた煤状のカーボンオニオン13を収容する手段14を配している。カーボンオニオンを収容する手段の代わりに吸引排出ホースを用いてもよい。これにより、カーボンオニオンを合成しつつ、生成物を連続的または断続的に基体から分離収集することができる。
図3はその例を示しており、真空容器5内にエンドレスコンベア16を配置し、該コンベアの張り側と対峙する関係位置に加熱または放電プラズマ発生手段(この例では陰極)4を配置する。そして、前記コンベア16には複数のボックス状の隔壁18を配し、隔壁内の空間に、前記鉄族基または鉄族基合金からなる球などの転動自在な形状の基体15を装填する。そして、コンベア16の緩み側(下側)には、基体15の落下を防止する手段を兼ねた多孔部材(板あるいは金網)17を配し、その下方にカーボンオニオンを収容する手段14を配している。コンベア16は振動器などの振動発生手段を搭載していてもよい。
1)カーボンオニオン製造原料には水素99%、メタン1%の混合ガスを用い、カーボンオニオンを合成する基体としては、直径36mm、厚さ7mmの鉄合金SKD11製円板を用いた。
2)合成は、まず真空容器内を図示してない真空排気装置を用いて1×10−2Pa以下まで真空排気し、しかる後にガス供給口6から原料ガスを真空容器内に2000Paの圧力まで導入し、直径0.75mmのタングステンフィラメント陰極をパイロメータによる測定で2000〜2500℃になるように交流電源10を用いて通電加熱し、直流電源を用いて陰極と陽極となる鉄合金製円板基体1を載置した基体支持台2との間で放電を行わせる手順で行った。このとき、陰極と陽極間の放電電流は4Aとした。このときの基体の温度は高温部で850℃、低温部で700℃であった。
4)基体をステンレス鋼SUS304(Fe‐18Cr‐8Ni)、およびに超微粒子超硬合金(WC‐12%Co)に変えて同様な方法で合成を行っても同様にカーボンオニオンが合成された。また、原料ガスを水素80%、一酸化炭素18%、メタン2%の混合ガスとして、同様な方法で合成を行った場合もカーボンオニオンが合成された。
5)1)2)で得られた煤状物質を合成した円板を用いて、ピンオンディスク試験を行い、ピン材料である軸受鋼SUJ2と煤状物質を合成した円板との間の摩擦係数を調査した。図6は真空中での摩擦係数を示しており、無潤滑状態の試験であるにも係わらず、低い摩擦係数が得られていることがわかる。これは、カーボンオニオンの球形状から予測されている低摩擦特性を反映したものと考えられる。
1)基体材料には鋳鉄FC250を用いた。陰極4には直径1mmの溶接用タングステン線を用い、回転陽極1との間で放電を行わせ、基体となる回転陽極上にカーボンオニオン9を合成した。
2)合成手順は、まず真空容器5内を1×10−2Pa以下まで真空排気した後、ガス供給口6から水素70%、一酸化炭素27%、メタン3%から成る混合ガスを総流量300cc/分の流量で供給し、図示してないフィラメント状陰極と陽極1間で放電を開始し、これをスタート補助放電として、陰極4と回転陽極基体1の間に放電を移行させた。これにより生成されるプラズマ8を用いて原料ガスを活性化し、カーボンオニオン9を回転陽極上に合成した。
3)このとき、陰極と回転陽極間の放電電流を10A、回転陽極の回転数は1rpmとし、放電プラズマの生成している側とは反対側で、合成物9をスクラバー板12を用いて連続的に回転陽極1からをすき取り、合成物粉13をすき取り板の下方に置かれたトレイ14に集めた。
上記条件にて24時間運転後、すき取った煤状の合成物粉を電子顕微鏡で観察したところ、カーボンオニオンの合成が確認された。また、煤状物質の合成速度は約1g/時間であった。
1)カーボンオニオンの合成は、真空容器5内を排気口7を通して1×10−2Paまで真空排気後、陰極となるタンタル管4の穴を通して水素ガス97%、メタンガス3%の割合の混合ガスを毎分500ccの流量で供給し、次いで、図示してないフィラメントを陰極、球状基体15を装荷したコンベヤ16を陽極として、放電を開始し、これをスタート補助放電として、タンタル管製陰極4と球状基体を装荷したコンベヤ間へ放電を移し、本放電を開始した。これにより生成されたプラズマ8中で、原料ガスが励起され、球状基体上にカーボンオニオンを合成した。
2)球状基体上に合成されたカーボンオニオンは基体がコンベヤ16で合成領域外へ運ばれ、下方へ落下する間に、基体の転動、摺動および落下による衝突で基体から離れ、コンベヤ16の下方に置かれた穴あき板17を通して落下し、穴あき板の下方のトレイ14に集めた。
3)この方法により、24時間の連続運転でトレイ内にカーボンオニオンを含む粉末13(合成物粉)が堆積することを確認した。合成速度は基体や構造物への付着残留が多く正確には求められないが、1〜2g/時間でカーボンオニオンを含む粉末が合成されたものと推定した。
2 ・・・・ 基体支持台
3 ・・・・ 基板支持台回転軸
4 ・・・・ 陰極
5 ・・・・ 真空容器
6 ・・・・ ガス供給口
7 ・・・・ 排気口
8 ・・・・ プラズマ
9 ・・・・ カーボンオニオン
10 ・・・・ 交流電源
11 ・・・・ 直流電源
12 ・・・・ すきとり板
13 ・・・・ 合成物粉
14 ・・・・ トレイ
15 ・・・・ 球状基体
16 ・・・・ コンベヤ
17 ・・・・ 穴あき板
Claims (12)
- 元素構成がCとHを主成分とする単一または混合ガスを加熱または放電プラズマにて活性化し、鉄族基または鉄族基合金基体上にカーボンオニオンを合成することを特徴とするカーボンオニオンの製造方法。
- 構成元素がCとOとHを主成分とする単一または混合ガスを、加熱または放電プラズマにて活性化し、鉄族基または鉄族基合金基体上にカーボンオニオンを合成することを特徴とするカーボンオニオンの製造方法。
- 元素構成がCとHを主成分とする単一または混合ガスにおけるC:Hの原子数比率が0.001〜0.5:1であることを特徴とする請求項1に記載のカーボンオニオンの製造方法。
- 元素構成がCとOとHを主成分とする単一または混合ガスにおけるC:O:Hの原子数比率が0.001〜0.5:0.001〜0.5:1であり、かつOの原子数がCの原子数より少ないことを特徴とする請求項2に記載のカーボンオニオンの製造方法。
- 鉄族基または鉄族基合金基体が鉄、ニッケル、およびコバルトの単体、またはそれらを含有する合金を基材中に1%以上の比率で含有することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のカーボンオニオンの製造方法。
- カーボンオニオン合成用基体の温度が1000℃以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のカーボンオニオンの製造方法。
- カーボンオニオン製造用原料ガスの活性化方法が通電加熱したフィラメントであることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンオニオンの製造方法。
- カーボンオニオン製造用原料ガスの活性化方法が直流放電、交流放電、高周波放電、およびマイクロ波放電のいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンオニオンの製造方法。
- カーボンオニオン製造用原料ガスの活性化方法がCとHを含有するガスの不完全燃焼であることを特徴とする請求項1または2に記載のカーボンオニオンの製造方法。
- カーボンオニオンの合成を大気圧下、加圧下または減圧下で行うことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のカーボンオニオンの製造方法。
- 鉄族基または鉄族基合金基体上に合成されたカーボンオニオン含有生成物を連続的または断続的に基体から擦り取ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカーボンオニオンの製造方法。
- カーボンオニオンの合成を流動床法にて複数の基体上に連続的に行い、該合成物を基体相互の摩擦および衝突、または振動付与による摩擦および衝突にて連続的に基体から除去し、カーボンオニオンを得ることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のカーボンオニオンの製造方法。
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