JP2005272237A - フラーレンの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フラーレンを含む煤状物質からのフラーレンの回収率を向上させたフラーレンの製造方法を提供する。
【解決手段】 フラーレンを含む煤状物質Xと第1の抽出溶媒Aとを混合して第1のスラリー状物Dを得る第1工程と、第1のスラリー状物Dを分離して、フラーレンの溶解している第1の抽出液Bと第1の残渣Eとを得る第2工程とを有するフラーレンの製造方法において、第2工程で得られた第1の残渣Eと第2の抽出溶媒Fとを混合して第2のスラリー状物Iを得る第3工程と、第2のスラリー状物Iを分離して、フラーレンの溶解している第2の抽出液と第2の残渣Jとを得る第4工程とを有し、第4工程で分離された第2の抽出液Gから第1の残渣E中のフラーレンを回収する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フラーレンを含む煤状物質からのフラーレンの製造方法に係り、更に詳細には煤状物質中のフラーレンの回収率を向上させる方法に関する。
近年、特許文献1に示されるように、閉殻構造型のカーボンクラスターであるC60やC70と称されるフラーレンが新しい炭素材料として提案されている。これらの材料は、特殊な分子構造から特異な物性を示すことが期待されるので、その性質及び用途開発についての研究が旺盛に進められ、例えば、ダイヤモンドコーティング、電池材料、塗料、断熱材、潤滑材、医薬品、化粧品などの分野への応用が期待されている。
フラーレンの製造方法としては、例えば、特許文献2に示すように、炭素化合物を燃焼させてフラーレンを製造する方法も提案され、現在ではベンゼン等の芳香族炭化水素と酸素含有ガスを反応炉に導き、減圧下で不完全燃焼をさせてフラーレンを製造する方法が提案されている。
更に、フラーレンを含む煤状物質と抽出溶媒とを混合して、フラーレンを抽出溶媒に溶解させる溶媒抽出法も知られ、このフラーレンが溶解している抽出溶媒からフラーレンを得る方法も提案されている。
特許第2802324号公報 特表平6−507879号公報
しかしながら、前記した溶媒抽出法によるフラーレンの製造方法では、抽出溶媒に溶解しない沈殿物を分離する際に、この沈殿物にフラーレンが溶解している抽出溶媒が付着し、この付着している抽出溶媒中のフラーレンが回収できず、フラーレンの回収率が下がるという問題があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、フラーレンを含む煤状物質からのフラーレンの回収率を向上させたフラーレンの製造方法を提供することを目的とする。
前記目的に沿う請求項1記載のフラーレンの製造方法は、フラーレンを含む煤状物質と第1の抽出溶媒とを混合して第1のスラリー状物を得る第1工程と、該第1のスラリー状物を分離して、フラーレンの溶解している第1の抽出液と第1の残渣とを得る第2工程とを有するフラーレンの製造方法において、
前記第2工程で得られた前記第1の残渣と第2の抽出溶媒とを混合して第2のスラリー状物を得る第3工程と、前記第2のスラリー状物を分離して、フラーレンの溶解している第2の抽出液と第2の残渣とを得る第4工程とを有し、前記第4工程で分離された前記第2の抽出液から前記第1の残渣中のフラーレンを回収する。
請求項1記載のフラーレンの製造方法において、フラーレンを含む煤状物質の製造方法としては、(1)グラファイトなど炭素質材料から成る電極を原料としてこの電極間にアーク放電によって原料を蒸発させる方法(アーク放電法)、(2)炭素質原料に高電流を流して原料を蒸発させる方法(抵抗加熱法)、(3)高エネルギー密度のパルスレーザー照射によって炭素質原料を蒸発させる方法(レーザー蒸発法)、(4)ベンゼンなどの有機物を不完全燃焼させる方法(燃焼法)などが知られている。
前記した方法で製造したフラーレンを含む煤状物質は、フラーレン類以外にカーボンオニオン構造を有する炭素、グラファイト構造を有する炭素、グラファイト構造を骨格とする炭化水素、多環状芳香族炭化水素、及びカーボンブラック等の炭素系高分子を含んでいる。
また、フラーレンを含む煤状物質は、煤状物質からグラファイトやカーボンブラック等を一部取り除いたフラーレン濃縮物である場合も含む。フラーレン濃縮物とは、煤状物質から各種の方法でフラーレンを濃縮したもので、その濃縮方法は特に限定されないが、例として煤状物質から、昇華法によって得られたフラーレン昇華物、溶媒抽出法で得られたフラーレン溶液を蒸発乾固してできたフラーレン含有残渣のほか、煤状物質をカラムクロマト分離して得られたフラーレン含有固体、及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、第1及び第2の抽出溶媒(以下、総称して単に「抽出溶媒」ともいう)としては、フラーレンが可溶である溶媒、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素等があり、それらは環式、非環式いずれでもよく、また、これらの溶媒を単独又は2種類以上を任意の割合で用いてもよい。
ここで、芳香族炭化水素としては、分子内に少なくとも1つのベンゼン核を有する炭化水素化合物であり、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、1,2,3−トリメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、シメン等のアルキルベンゼン類、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン等のアルキルナフタレン類、テトラリン等がある。
また、脂肪族炭化水素は、環式、非環式のいずれも使用できる。環式脂肪族炭化水素としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の単環式脂肪族炭化水素、また、その誘導体であるメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、n−プロピルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1,3,5−トリメチルシクロヘキサンがあり、多環式脂肪族炭化水素としては、デカリン等がある。非環式脂肪族炭化水素としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、n−テトラデカン等がある。
更に、塩素化炭化水素としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、1−クロロナフタレン等がある。
また、抽出溶媒として、炭素数6以上のケトン、炭素数6以上のエステル類、炭素数6以上のエーテル類、及び二硫化炭素等を使用してもよい。
ここで、工業的観点から、これらの抽出溶媒の中でも常温液体で沸点が50〜300℃、中でも80〜250℃のものが、フラーレンの抽出溶媒として好適である。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチシレン、1−メチルナフタレン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン等のアルキルベンゼン及び/又はテトラリン等のナフタレン誘導体等の芳香族炭化水素などを用いることが好ましく、1種単独としても、あるいは2種以上の混合溶媒としても使用することができる。
第1工程及び第3工程において、それぞれ第1及び第2の抽出溶媒を混合してフラーレンを抽出する装置としては、撹拌混合槽が好適に使用できる。抽出の際、容器内の圧力は特に制限はなく、常圧で実施すればよい。抽出槽における抽出時の温度としては例えば1〜300℃、好ましくは10〜70℃、特に10〜50℃の範囲とすることが、抽出効率向上の面から好ましいが、抽出効率は、温度依存性が小さいので常温程度で行うのがエネルギーコスト的に有利である。また、抽出時間としては1分以上、好ましくは10分以上かけて行うとよいが、抽出時間の抽出効率に対する影響は少ないため、長時間の必要は無く、抽出の際の温度、抽出時間は適宜選択すればよい。更に必要に応じて、抽出液に超音波等を照射しながら抽出を行うと、抽出時間が短くなるので好ましい。また、不活性ガス中で実施するのが好ましい。
煤状物質中のC60より分子量の小さい不純物、C60、C70及び炭素数が70を超える高次フラーレンは第1の抽出溶媒に溶解して抽出される。また、煤残留物(例えば、カーボンオニオン構造を有する炭素、グラファイト構造を有する炭素、グラファイト構造を骨格とする炭化水素、多環状芳香族炭化水素、及びカーボンブラック等の炭素系高分子)は、第1の抽出溶媒に不溶な物質(以下、不溶性物質という)である。この不溶性物質とフラーレンが溶解した第1の抽出溶媒(第1の抽出液)とによって、第1のスラリー状物が構成される。
第1のスラリー状物を分離して得られる第1の残渣は、不溶性物質を20〜25重量%含み、その残りはフラーレンの溶解している第1の抽出溶媒、つまり、第1の抽出液の一部である。この第1の抽出液にはフラーレンが溶解しているので、更に第1の残渣にフラーレンが可溶な第2の抽出溶媒を混合すると、第1の残渣中のフラーレンが第2の抽出溶媒に抽出されて、第2の抽出液として回収することができる。また、第2のスラリー状物から第2の抽出液を分離した残りである第2の残渣中には、第2の抽出液の一部が付着した不溶性物質が含まれている。
また、第1又は第2のスラリー状物を分離する装置としては、濾過機や遠心分離機が用いられ、通常用いられる固液分離方法が適宜選択できる。
請求項2記載のフラーレンの製造方法は、請求項1記載のフラーレンの製造方法において、前記煤状物質は、炭素含有化合物の燃焼又は熱分解によって得られたものである。
請求項2記載のフラーレンの製造方法において、炭素含有化合物とは、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の炭素数6〜15の芳香族炭化水素をいう。更に、これらの芳香族炭化水素に併用して、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素を用いてもよい。
燃焼とは、炭素含有化合物を不完全燃焼させてフラーレンを含む煤状物質を得る方法(燃焼法)であり、熱分解とは、高温下で炭素含有化合物を分解させてフラーレンを含む煤状物質を得る方法(熱分解法)である。これらの方法によって、高濃度のフラーレンを含む煤状物質が製造でき、中でも燃焼法が好ましい。
この煤状物質を製造する装置としては、例えば、減圧チャンバーに(水冷)バーナが設置され、系内と真空ポンプにて排気しつつ、安定に燃焼を継続することが可能な装置などが使用される。そして、上記のバーナとしては、ベンゼン等の炭素含有化合物と酸化性ガスの予備混合層流炎及び拡散炎を実現し得る構造のものが使用される。
火炎条件としては、C/O比(当量比)、燃焼室圧力、希釈剤濃度、ガス速度などを便宜選択することが必要である。具体的には、C/O比を、例えば、0.5以上、好ましくは1.08〜1.56、燃焼室圧力を、例えば、1.60〜13.36kPa、希釈剤濃度を、例えば、0又は0を超え40モル%、バーナを吐出するガス速度を75cm/s〜1000cm/sの範囲内に設定する。なお、希釈剤としては、一般的な不活性ガスを使用できるが、アルゴンを使用することが好ましい。
燃焼法により製造した煤状物質は、元素分析による炭素含有量が通常90重量%以上、好ましくは98重量%以上であり、カーボンブラックと同様に、例えば、水酸基、カルボキシル基等の官能基を少量含む炭素材料を有する。
この炭素材料は、例えば、液晶ディスプレイの新規技術であるカラーフィルタ・オン・アレイ等の高抵抗性炭素材料が求められている用途への適用に有望である。
また、この炭素材料は、帯電性に優れることが予想されるため、カーボンブラックを樹脂中に分散したコピー用トナー、e−ペーパー等、カーボンブラックの帯電性を利用する用途に対しても有用な材料であると考えられる。更に、この炭素材料は、熱伝導性が低い性質を活かし、熱遮断が求められる部材に対して使用される、コーティング組成物中のフィラーとしての使用も期待できる。
請求項3記載のフラーレンの製造方法は、請求項1及び2記載のフラーレンの製造方法において、前記第1及び第2の抽出溶媒は、C60の溶解度が1g/L以上、好ましくは2g/L以上、更に好ましくは5g/L以上である。
ここで、抽出溶媒としては、フラーレンの溶解度が低すぎると、抽出効率が低下する。抽出溶媒としては、1,2,4−トリメチルベンゼン(1,2,4-trimethylbenzene。以下、単にTMBともいう)、o−キシレン、トルエンが好ましい。
請求項4記載フラーレンの製造方法は、請求項1〜3のフラーレンの製造方法において、前記第1の抽出溶媒は、前記煤状物質の重量に対し、4〜200重量倍量を混合する。
ここで、第1の抽出溶媒の量が煤状物質に対して、4重量倍量未満であると流動性に乏しくなり、第1のスラリー状物の分離が困難となり、200重量倍量を超えると第1の抽出溶媒の使用量が多くなり過ぎ経済性が劣ると共に、その除去が困難となる。
また、第1の抽出溶媒は、フラーレンを十分に抽出できるだけの量を用いる必要がある。煤状物質には通常5〜30重量%のフラーレンが含まれており、このフラーレンの量に対し、10〜700重量倍量、経済性を考慮して40〜400重量倍量使用するのが好ましい。従って、予め煤状物質のフラーレン含有量を測定しておくのが好ましい。
請求項5記載のフラーレンの製造方法は、請求項1〜4記載のフラーレンの製造方法において、前記第1及び第2のスラリー状物のいずれか一方又は双方の分離は、減圧濾過機、加圧濾過機、及び遠心分離機のいずれか1又は2以上によって行う。
ここで、第1及び第2のスラリー状物は、それぞれ第1及び第2の抽出溶媒中で微粒子の集合体(ケーク)となっている。このケークが厚くなると、例えば常圧での濾過等の外部からの力が与えられない分離では、分離操作が困難となる。従って、減圧及び加圧による濾過、又は遠心分離によって、物理的に力を与えることにより、第1のスラリー状物を第1の抽出液と第1の残渣とに分離する第2工程、及び、第2のスラリー状物を第2の抽出液と第2の残渣とに分離する第4工程での作業が容易となる。
請求項6記載のフラーレンの製造方法は、請求項1〜5記載のフラーレンの製造方法において、前記第4工程で得られた前記第2の残渣と第3の抽出溶媒とを混合して生成する第3のスラリー状物を、フラーレンの溶解している第3の抽出液と第3の残渣とに分離して、前記第3の抽出液からフラーレンを回収する。
ここで、第3の抽出溶媒としては、前記した第1及び第2の抽出溶媒と同様にフラーレンが可溶である溶媒、例えば芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素等が使用でき、常温液体で沸点が50〜300℃、中でも80〜250℃のもの、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチシレン、1−メチルナフタレン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4−トリメチルベンゼン等のアルキルベンゼン及び/又はテトラリン等のナフタレン誘導体等の芳香族炭化水素などを用いることが好ましく、1種単独としても、あるいは2種以上の混合溶媒としても使用することができる。
また、第3の残渣中には、第3の抽出液の一部が付着した不溶性物質が含まれているので、更に第3の残渣を抽出溶媒と混合することにより、この抽出溶媒に第3の残渣中に残存するフラーレンを抽出させて回収することもできる。
更に、第4工程で得られた第2の残渣と、新たな煤状物質から第1工程によって得られた別ロットの第1の残渣とを混合して、第3の抽出溶媒に第2の残渣及び別ロットの第1の残渣のそれぞれに残存するフラーレンを溶解させ、フラーレンを回収してもよい。この場合には、生成するスラリー状物が分離可能でなければならない。
請求項7記載のフラーレンの製造方法は、請求項1〜6記載のフラーレンの製造方法において、前記第2工程で得られた前記第1の抽出液と前記第4工程で得られた前記第2の抽出液とを混合して第4の抽出液とし、該第4の抽出液からフラーレンを回収する。
請求項8記載のフラーレンの製造方法は、請求項7記載のフラーレンの製造方法において、前記第4の抽出液を濃縮して、前記第1及び第2の抽出溶媒の溶解度に対して、0.2〜6重量倍量、好ましくは0.5〜2重量倍量のフラーレン濃度の濃縮液とする。
ここで、第4の抽出液が、第1及び第2の抽出溶媒の溶解度に対して、0.2重量倍量未満の濃縮液とすると、この濃縮液中のフラーレン濃度は小さく後処理が困難であり、また、6重量倍量を超える濃縮液とすると、抽出溶媒に溶解できないフラーレンが固体となって析出し、濃縮装置の内壁に付着することがある。したがって、濃縮装置は撹拌混合ができるものがよい。また、不活性ガス中で操作を行うことが好ましい。
請求項9記載のフラーレンの製造方法は、請求項8記載のフラーレンの製造方法において、前記濃縮液とフラーレンが不溶又は難溶な貧溶媒とを混合し、該貧溶媒に不溶なフラーレンを析出させる。
ここで、フラーレンが不溶又は難溶な貧溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エーテル等が挙げられる。中でも、炭素数1〜4のアルコール類、炭素数3〜5のケトン類、又は炭素数3〜5のエーテル類が好ましく、更には炭素数が1〜4のアルコール類が好ましい。これらアルコール類の中でも、その沸点が第1及び第2の抽出溶媒より低いものを用いることが好ましく、中でも炭素数が3以下のアルコール類を用いることが好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等が好ましく、中でもイソプロパノール、メタノールが好ましく、特にメタノールが好ましい。なおこれらの貧溶媒は、1種単独としても、あるいは2種以上の混合物としても使用することができる。
貧溶媒を特定のコントロールで添加することによって、抽出溶媒のフラーレン類に対する溶解性が低下し、溶解性の低いC60、C70及び高次フラーレン類が析出し、C60より分子量の小さい不純物は溶液中に残存する。なお、貧溶媒の添加は、1分以上、好ましくは1時間以上、更に好ましくは3時間以上かけて行うのがよい。
請求項10記載のフラーレンの製造方法は、請求項9記載のフラーレンの製造方法において、前記貧溶媒は、C60の溶解度が0.1g/L以下、好ましくは10mg/L以下の極性溶媒である。C60の溶解度が0.1g/L以下の貧溶媒を使用すると、フラーレンが析出し易くなる。
請求項11記載のフラーレンの製造方法は、請求項9及び10記載のフラーレンの製造方法において、前記貧溶媒は、前記濃縮液に対して0.1〜20重量倍量、好ましくは1〜20重量倍量を混合する。
ここで、貧溶媒は、濃縮液に対して0.1重量倍量未満の量を混合すると、フラーレンの析出が起こり難く、また、20重量倍量を超える量を混合すると、貧溶媒の使用量が多くなり過ぎ経済性が劣ると共に、その除去が大変となる。なお、貧溶媒の添加の方法は任意であるが、徐々に添加することが好ましい。
請求項12記載のフラーレンの製造方法は、請求項9〜11記載のフラーレンの製造方法において、加圧濾過機及び減圧濾過機の一方又は双方を用いて、前記貧溶媒中のフラーレンを回収する。
ここで、析出したフラーレンは、貧溶媒中で微粒子の集合体(ケーク)となっており、このケークが厚くなると外部から力を与えない分離方法、例えば、常圧での濾過等では、分離操作が困難となる。従って、減圧及び加圧による濾過によって、物理的に力を与えることにより分離できる。
請求項1〜12記載のフラーレンの製造方法は、第2工程で得られた第1の残渣中のフラーレンも回収するので、煤状物質からのフラーレンの回収率が高くなる。
特に、請求項2記載のフラーレンの製造方法は、煤状物質は、炭素含有化合物の燃焼又は熱分解によって得られたものであるので、大量のフラーレンを含有した煤状物質を製造することができ、フラーレンの回収量が多くなる。
請求項3記載のフラーレンの製造方法は、第1及び第2の抽出溶媒は、C60の溶解度が1g/L以上、好ましくは2g/L以上、更に好ましくは5g/L以上であるので、第1及び第2の抽出溶媒にフラーレンが溶解し易く、フラーレンの回収率を向上させることができる。
請求項4記載のフラーレンの製造方法は、第1の抽出溶媒は、煤状物質の重量に対し、4〜200重量倍量を混合するので、煤状物質と混合された第1の抽出溶媒が流動性を有し、分離操作を行い易くすることができる。
請求項5記載のフラーレンの製造方法は、第1及び第2のスラリー状物の分離は、減圧濾過機、加圧濾過機、及び遠心分離機のいずれか1又は2以上によって行うので、第1の抽出液と第1の残渣との分離、及び、第2の抽出液と第2の残渣との分離を容易とすることができる。
請求項6記載のフラーレンの製造方法は、第4工程で得られた第2の残渣と第3の抽出溶媒とを混合して生成する第3のスラリー状物を、フラーレンの溶解している第3の抽出液と第3の残渣とに分離するので、第3の抽出液からフラーレンを回収できる。
請求項7記載のフラーレンの製造方法は、第2工程で得られた第1の抽出液と第4工程で得られた第2の抽出液とを混合して第4の抽出液とし、第4の抽出液からフラーレンを回収するので、第1及び第2の抽出溶媒を混合して処理でき、作業工程を少なくすることができる。
請求項8記載のフラーレンの製造方法は、第4の抽出液を濃縮して、第1及び第2の抽出溶媒の溶解度に対して、0.2〜6重量倍量、好ましくは0.5〜2重量倍量のフラーレン濃度の濃縮液とするので、フラーレンを高濃度に含有した濃縮液を得ることができる。
請求項9記載のフラーレンの製造方法は、濃縮液とフラーレンが不溶又は難溶な貧溶媒とを混合し、貧溶媒に不溶なフラーレンを析出させるので、フラーレンと不純物とを分離でき、高純度のフラーレンを製造できる。
請求項10記載のフラーレンの製造方法は、貧溶媒は、C60の溶解度が0.1g/L以下、好ましくは10mg/L以下の極性溶媒であるので、フラーレンを析出することができる。
請求項11記載のフラーレンの製造方法は、貧溶媒は、濃縮液に対して0.1〜20重量倍量、好ましくは1〜20重量倍量を混合するので、フラーレンを選択的に析出でき、不純物を除去し、フラーレンを得ることができる。
請求項12記載のフラーレンの製造方法は、加圧濾過機及び減圧濾過機の一方又は双方を用いて、貧溶媒中のフラーレンを回収するので、貧溶媒からのフラーレンの分離を容易とすることができる。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係るフラーレンの製造方法を適用したフラーレンの製造装置の説明図である。
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係るフラーレンの製造方法を適用したフラーレンの製造装置10について工程順に説明する。なお、フラーレンの製造装置10での操作は、不活性ガス(例えば、窒素ガス)中で行っている。
(第1工程)
本発明の第1の実施の形態に係るフラーレンの製造方法に適用されるフラーレンの製造装置10は、フラーレンを含む煤状物質(X)からフラーレンを回収する装置である。ここで、煤状物質(X)は、燃焼炉12内で炭素含有化合物の一例であるトルエンを純酸素で不完全燃焼させて燃焼法によって製造され、煤状物質槽11に貯留されている。なお、用いる煤状物質は、燃焼法だけでなく、アーク放電法、抵抗加熱法、及びレーザー蒸発法のいずれで製造してもよいが、煤状物質中のフラーレン含有量の多さ(例えば、燃焼法で製造した煤状物質中には、10〜30重量%のフラーレンを含む)から燃焼法が好適に用いられる。なお、かっこ内の符号A〜Q及びXは、図中に記載された物質を示している。
また、フラーレンの製造装置10は、煤状物質(X)中のフラーレンを溶解させ、C60の溶解度が1g/L以上の第1の抽出溶媒の一例である1,2,4−トリメチルベンゼン(1,2,4-trimethylbenzene。以下、TMB(A)という)を貯留する抽出溶媒槽13を有している。ここで、TMBは、C60の溶解度が約18g/Lである。また、フラーレンの製造装置10は、煤状物質(X)とTMB(A)とを混合する第1の抽出槽14を有している。
第1の抽出槽14は、撹拌翼が設けられ、煤状物質(X)とTMB(A)とを効率よく混合させ、煤状物質(X)中のフラーレンをTMB(A)に溶解させ、抽出させている。この抽出の際、第1の抽出槽14内の圧力は特に制限はなく、常圧で実施すればよい。第1の抽出槽14における抽出時の温度としては、例えば1〜300℃、好ましくは10〜70℃、特に10〜50℃の範囲とすることが、抽出効率向上の面から好ましいが、抽出効率は、温度依存性が小さいので常温程度で行うのがエネルギーコスト的に有利である。また、抽出時間としては1分以上、好ましくは10分以上かけて行うとよいが、抽出時間の抽出効率に対する影響は少ないため、長時間の必要は無く、抽出の際の温度、抽出時間は適宜選択すればよい。更に必要に応じて、抽出液に超音波等を照射しながら抽出を行うと、抽出時間が短くなるので好ましい。
抽出槽14内では、煤状物質(X)とTMB(A)とが混合され、第1のスラリー状物(D)を得た。第1のスラリー状物(D)は、フラーレンが溶解したTMB(A)、つまり、第1の抽出液(B)と、TMBに不溶な第1の不溶性物質(C)とからなる。TMB(A)は、C60の溶解度が1g/L以上であるので、煤状物質(X)中のフラーレンを十分に抽出することができる。なお、TMB(A)は、煤状物質(X)の重量に対し、4〜200重量倍量を混合している。
(第2工程)
フラーレンの製造装置10は、第1のスラリー状物(D)を分離する装置の一例である第1の連続加圧式濾過機15を有している。第1の連続加圧式濾過機15で第1のスラリー状物(D)から第1の不溶性物質(C)を濾過して、第1の抽出液(B)を得る。この際に分離される第1の残渣(E)は、第1の抽出液の一部(B′)が付着した第1の不溶性物質(C)である。
ここで、従来のフラーレンの製造方法では、第1のスラリー状物(D)から分離した第1の抽出液(B)のみからフラーレンを回収していた。しかしながら、第1のスラリー状物(D)から分離した第1の残渣(E)は、濾過された第1の不溶性物質(C)の重量に対して4〜5倍の重量の第1の抽出液(B′)を有している。本実施の形態では、この第1の不溶性物質(C)に付着している第1の抽出液(B′)中のフラーレンを回収し、煤状物質(X)中のフラーレンを高収率で得ることを目的としている。
(第3工程)
フラーレンの製造装置10は、第1の連続加圧式濾過機15から分離された第1の残渣(E)と第2の抽出溶媒の一例であるTMB(F)とを混合する第2の抽出槽16を有している。なお、TMB(F)は、第1の抽出溶媒であるTMB(A)と同じ抽出溶媒槽13から供給されている。第2の抽出槽16内では、第1の残渣(E)とTMB(F)とが混合され、第1の残渣(E)中のフラーレンが溶解しているTMB、つまり、第2の抽出液(G)とTMBに不溶な第2の不溶性物質(H)とからなる第2のスラリー状物(I)が得られる。
(第4工程)
更に、フラーレンの製造装置10は、第2のスラリー状物(I)を分離する装置の一例である第2の連続加圧式濾過機17を有している。第2の連続加圧式濾過機17で第2のスラリー状物(I)から第2の不溶性物質(H)を濾過して、第2の抽出液(G)を得る。この際に分離される第2の残渣(J)は、第2の抽出液の一部(G′)が付着した第2の不溶性物質(H)である。
以下、第2工程で得られた第1の抽出液(B)及び第4工程で得られた第2の抽出液(G)からフラーレンを回収する方法について説明する。
フラーレンの製造装置10は、第2工程で得られた第1の抽出液(B)と第4工程で得られた第2の抽出液(G)とを混合した第4の抽出液(K)を濃縮し、TMBの溶解度に対して、0.2〜6重量倍量(好ましくは、0.5〜2重量倍量)、つまり、3.6〜108.0g/L(好ましくは、9.0〜36.0g/L)のフラーレン濃度の濃縮液(L)とする濃縮器18を有している。濃縮器18には、第4の抽出液(K)を加熱する図示しない加熱手段と濃縮器18内を減圧する図示しない減圧手段とが設けられ、第4の抽出液(K)中のTMB(A+F)を減圧下で加熱して蒸発させ、第4の抽出液(K)を濃縮し、濃縮液(L)としている。ここで、なお、蒸発したTMB(A+F)は抽出溶媒槽13に再び貯留され、再使用される。
更に、フラーレンの製造装置10は、フラーレンが不溶又は難溶、つまり、C60の溶解度が0.1g/L以下の極性溶媒である貧溶媒の一例であるイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol 。以下、IPA(M)という)を貯留する貧溶媒槽19を有している。ここで、IPAは、C60の溶解度が、約0.007g/Lである。また、フラーレンの製造装置10は、濃縮器18から供給される濃縮液(L)と貧溶媒槽19から供給されるIPA(M)とを混合し、IPA(M)に不溶なフラーレンを析出させる結晶化槽20を有している。IPA(M)は、濃縮液(L)に対して0.1〜20重量倍量、好ましくは1〜20重量倍量を混合する。なお、貧溶媒の添加の方法は任意であるが、徐々に添加することが好ましい。
ここで、結晶化槽20内への貧溶媒の添加によって、TMB(A+F)及びIPA(M)とフラーレン析出物(N)を有するスラリー状物(O)を得る。フラーレンの製造装置10は、スラリー状物(O)を分離する装置の一例である第3の連続加圧式濾過機21を有している。第3の連続加圧式濾過機21でスラリー状物(O)からフラーレン析出物(N)を濾過する。
更に、フラーレンの製造装置10は、このフラーレン析出物(N)を乾燥する第1の円錐型リボン撹拌乾燥機22を有し、第1の円錐型リボン撹拌乾燥機22によって、フラーレン析出物(N)中のTMB(A+F)及びIPA(M)を除去して、フラーレン(P)を得る。
フラーレンの製造装置10は、第3の連続加圧式濾過機21及び第1の円錐型リボン撹拌乾燥機22によってそれぞれ除去されたTMB(A+F)及びIPA(M)を分留する減圧蒸留器23を有し、1000〜30000Pa、例えば、3000Paの圧力まで減圧し、55℃で加熱してIPA(M)を分留し、更に127℃まで加熱してTMB(A+F)を分留する。分留されたTMB(A+F)は抽出溶媒槽13へ、またIPA(M)は貧溶媒槽19へ再び貯留されて再使用される。
フラーレンの製造装置10は、第2の残渣(J)からTMB(F)を除去し、第2の不溶性物質(H)に含まれる煤残留物(Q)を固体として得る第2の円錐型リボン撹拌乾燥機24を有している。なお、第2の円錐型リボン撹拌乾燥機24によって除去されたTMB(A+F)は抽出溶媒槽13へ再び貯留されて再使用される。
煤残留物(Q)は、元素分析による炭素含有量が通常90重量%以上、好ましくは、更に好ましくは98重量%以上であり、カーボンブラックと同様に、例えば、水酸基、カルボキシル基等の官能基を少量含む炭素材料を有する。また、この炭素材料は、アモルファス構造であり、真密度が低く、抵抗性が高く、帯電性に優れ、熱伝導性が低いという性質を有する有用な材料である。
図1を参照して、本発明の第2の実施の形態に係るフラーレンの製造方法について説明する。なお、操作は不活性ガスである窒素ガス中で行っている。
第2の実施の形態では、前記した第1の実施の形態の第4工程で得られた第2の残渣(J)を、再び第2の抽出槽16に戻し(図中破線で示す)、抽出溶媒槽13から第3の抽出溶媒(この実施の形態では、第2の抽出溶媒と同一)であるTMB(F)を供給して、第2の残渣(J)とTMB(F)と混合して第3のスラリー状物とし、第2の残渣(J)中のフラーレンをTMB(F)に溶解させた第3の抽出液を生成させ、第2の連続加圧式濾過機17で第3の抽出液を分離して、これを濃縮器18に供給して、第2の残渣(J)に残存するフラーレンを回収する点が、第1の実施の形態と異なっている。なお、第2の連続加圧式濾過機17で分離された第3の残渣にフラーレンが残存する場合には、更に抽出操作を繰り返してもよい。なお、第2の残渣(J)を図示しない抽出槽に供給し、TMBを混合して、第2の残渣(J)に残存するフラーレンを抽出してもよい。
(実施例1)
フラーレンの製造装置10において、燃焼炉12内で炭素含有化合物の一例であるトルエンと純酸素とをモル比1対3の気相化で混合し、5.32kPaでトルエンを不完全燃焼させて煤状物質(X)を得た。煤状物質(X)中の第1の抽出溶媒(TMB(A))に溶解するフラーレンの含有量を、高速液体クロマトグラフィで測定した。その結果、煤状物質(X)にはC60を主成分とするフラーレンが18.0重量%含有されていた。
この煤状物質(X)300kg(フラーレン54kgを含む。残りは炭素系高分子(煤残留物))とTMB(A)4000kgとを第1の抽出槽14内に供給し、40℃で30分間撹拌翼で撹拌しながら混合した。第1の抽出槽14内で、煤状物質(X)中のフラーレンはTMB(A)に溶解し、煤状物質(X)中の炭素系高分子等の第1の不溶性物質(C)はTMB(A)に溶解せず、フラーレンが溶解したTMB、つまり、第1の抽出液(B)と第1の不溶性物質(C)とからなる第1のスラリー状物(D)が得られる。
次に、得られた第1のスラリー状物(D)を、濾過面積が1m2 である第1の連続加圧式濾過機15によって、第1の抽出液(B)と、第1の抽出液の一部(B′)が付着した第1の不溶性物質(C)からなる第1の残渣(E)とに濾別する。
なお、第1の残渣(E)には、濾過された第1の不溶性物質(C)、つまり、煤状物質(X)中の不溶成分がおよそ250kg含まれ、更にこの第1の不溶性物質(C)に対して4〜5倍の重量、つまり、およそ1000〜1250kgの第1の抽出液(B′)が付着して含まれている。
ここで、この第1の不溶性物質(C)に付着している第1の抽出液(B′)中のフラーレンを回収するために、第1の残渣(E)を第2の抽出槽16に供給し、更に、第2の抽出槽16にTMB(F)3000kgを供給し、40℃で30分間撹拌翼で撹拌しながら混合した。第2の抽出槽16内では、第1の残渣(E)とTMB(F)とが混合され、第2の抽出液(G)とTMBに不溶な第2の不溶性物質(H)とからなる第2のスラリー状物(I)が得られる。更に、第2のスラリー状物(I)を濾過面積が1m2 である第2の連続加圧式濾過機17で第2のスラリー状物(I)から第2の不溶性物質(H)を濾過して、第2の抽出液(G)が得られる。
以上で得られた第1の抽出液(B)及び第2の抽出液(G)とを濃縮器18に供給しておよそ6100kgの第4の抽出液(K)とした。濃縮器18内を80℃、5.3kPaとして第4の抽出液(K)をおよそ4重量倍量まで濃縮し、濃縮液(L)1500kgを得た。なお、高速液体クロマトグラフィによる測定の結果、濃縮液(L)中には、3.3重量%、つまり、49.5kgのフラーレンが含まれていた。また、濃縮器18で、除去されたおよそ4600kgのTMB(A+F)は、抽出溶媒槽13に供給して、再利用できる。
次に、濃縮液(L)1500kgを結晶化槽20に供給し、結晶化槽20内を50℃に調整した。更に結晶化槽20にIPA(M)6000kgを3時間かけて徐々に添加し、撹拌翼で撹拌しながら混合した。結晶化槽20内へのIPA(M)の添加によって、TMB(A+F)及びIPA(M)とフラーレン析出物(N)とを有するスラリー状物(O)を得る。このスラリー状物(O)を濾過面積が0.7m2 である第3の連続加圧式濾過機21によって、スラリー状物(O)から濾別して、フラーレン析出物(N)80kgを得る。更に、このフラーレン析出物(N)を第1の円錐型リボン撹拌乾燥機22で130℃、0.3kPaで25時間乾燥し、フラーレン析出物(N)に付着しているTMB(A+F)及びIPA(M)を除去して、固体のフラーレン(P)48.4kgを得る。初期の煤状物質(X)に含まれるフラーレン(54kg)からの回収率は、89.6%であった。
第3の連続加圧式濾過機21及び第1の円錐型リボン撹拌乾燥機22によってそれぞれ除去されたTMB(A+F)及びIPA(M)を減圧蒸留器23によって、3000Paの圧力まで減圧して、55℃で加熱してIPA(M)を分留し、更に127℃まで加熱してTMB(A+F)を分留した。分留されたTMB(A+F)は抽出溶媒槽13へ、またIPA(M)は貧溶媒槽19へ再び貯留して、再使用可能である。
また、第2の連続式加圧濾過機17によって分離された第2の残渣(J)を第2の円錐型リボン撹拌乾燥機24で180℃、0.3kPaで30時間乾燥し、第2の不溶性物質(H)に含まれる煤残留物(Q)を固体として、およそ250kgを得た。煤残留物(Q)は、元素分析による炭素含有量が通常90重量%以上、好ましくは、更に好ましくは98重量%以上であり、カーボンブラックと同様に、例えば、水酸基、カルボキシル基等の官能基を少量含む炭素材料を有し、この炭素材料は、アモルファス構造であり、真密度が低く、抵抗性が高く、帯電性に優れ、熱伝導性が低いという性質を有する有用な材料である。なお、第2の円錐型リボン撹拌乾燥機24によって除去されたTMB(A+F)は抽出溶媒槽13へ再び貯留して、再使用可能である。
(実施例2)
前記した実施例1において、第2の連続式加圧濾過機17によって分離された第2の残渣(J)を再び第2の抽出槽16に供給し、更に、第2の抽出槽16にTMB(F)3000kgを供給し、40℃で30分間撹拌翼で撹拌しながら混合して第3のスラリー状物を生成した。第2の抽出槽16内では、第2の残渣(E)とTMB(F)とが混合され、第2の残渣(E)に残存するフラーレンがTMB(F)に溶解する。このフラーレンが溶解した第3の抽出液を、第1の抽出液(B)及び第2の抽出液(G)と共に、濃縮器18に供給した。この抽出液は、およそ9000kgであり、濃縮器18内を80℃、5.3kPaとしておよそ6重量倍量まで濃縮して、1500kgの濃縮液を得た。
更に、実施例1と同様に結晶化槽20で、フラーレン析出物を含むスラリー状物とし、更に、このスラリー状物を第3の連続加圧式濾過機21で濾過し、得られたフラーレン析出物を第1の円錐型リボン撹拌乾燥機22で130℃、0.3kPaで25時間乾燥し、固体のフラーレン51.5kgを得た。このフラーレンは、初期の煤状物質(X)に含まれるフラーレン(54kg)からの回収率が、95.3%であった。第2の残渣(J)中に残存するフラーレンを回収することにより、煤状物質(X)中のフラーレンを更に回収率を高めることができた。
(実施例3)
前記した実施例1において、第1の抽出槽14に供給するTMB(A)を6000kgとした。これによって、濃縮器18に供給される第2の抽出液(G)が8100kgとなり、およそ5重量倍量まで濃縮して、1500kgの濃縮液を得たことが異なっている。実施例3によって得られた固体のフラーレンは、49.7kgであり、初期の煤状物質(X)に含まれるフラーレン(54kg)からの回収率は、92.0%であった。第1の抽出溶媒槽14に供給するTMB(A)の量が多くなるとTMB(A)に溶解されるフラーレンの量が多くなるので、より多くフラーレンを回収することができる。
(比較例1)
第1の連続加圧式濾過機15で分離した第1の抽出液(B)のみからフラーレンを回収した。ここで、濃縮器18に供給される第1の抽出液(B)はおよそ3000kgであり、これをおよそ5重量倍量まで濃縮し、1500kgの濃縮液を得て、更なる工程により固体のフラーレン36.6kgを得た。このフラーレンは、初期の煤状物質(X)に含まれるフラーレン(54kg)からの回収率が、67.8%であった。これによって、第1の連続加圧式濾過機15で分離した第1の残渣(E)中にかなりのフラーレンが残存していることがわかった。
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明のフラーレンの製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、前記実施の形態のフラーレンの製造方法において、第1及び第2の抽出溶媒をTMBとしたが、C60の溶解度が、1g/L以上の溶媒であればよく、TMBの他に、トルエン、o−キシレンが好適に使用される。また、貧溶媒をIPAとしたが、C60の溶解度が0.1g/Lであればよく、メタノール、エタノール、n−プロパノール等が好ましく、中でもメタノールが好ましい。
また、前記実施の形態では連続加圧式濾過機を使用したが、減圧濾過機、遠心分離機を使用でき、更にこれらを組み合わせて使用できる。第2の残渣をTMBと混合して、第2の残渣中のフラーレンを抽出したが、更に濾過後の残渣をTMBと混合して、残存するフラーレンを抽出して回収することもできる。フラーレンの製造装置での操作は、不活性ガス(窒素ガス)中で行ったが、アルゴン等の不活性ガスを使用してもよく、酸素遮断下で行うのが好ましい。
本発明の第1の実施の形態に係るフラーレンの製造方法を適用したフラーレンの製造装置の説明図である。
符号の説明
10:フラーレンの製造装置、11:煤状物質槽、12:燃焼炉、13:抽出溶媒槽、14:第1の抽出槽、15:第1の連続加圧式濾過機、16:第2の抽出槽、17:第2の連続加圧式濾過機、18:濃縮器、19:貧溶媒槽、20:結晶化槽、21:第3の連続加圧式濾過機、22:第1の円錐型リボン撹拌乾燥機、23:減圧蒸留器、24:第2の円錐型リボン撹拌乾燥機

Claims (12)

  1. フラーレンを含む煤状物質と第1の抽出溶媒とを混合して第1のスラリー状物を得る第1工程と、該第1のスラリー状物を分離して、フラーレンの溶解している第1の抽出液と第1の残渣とを得る第2工程とを有するフラーレンの製造方法において、
    前記第2工程で得られた前記第1の残渣と第2の抽出溶媒とを混合して第2のスラリー状物を得る第3工程と、前記第2のスラリー状物を分離して、フラーレンの溶解している第2の抽出液と第2の残渣とを得る第4工程とを有し、前記第4工程で分離された前記第2の抽出液から前記第1の残渣中のフラーレンを回収することを特徴とするフラーレンの製造方法。
  2. 請求項1記載のフラーレンの製造方法において、前記煤状物質は、炭素含有化合物の燃焼又は熱分解によって得られたものであることを特徴とするフラーレンの製造方法。
  3. 請求項1及び2のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、前記第1及び第2の抽出溶媒は、C60の溶解度が1g/L以上、好ましくは2g/L以上、更に好ましくは5g/L以上であることを特徴とするフラーレンの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、前記第1の抽出溶媒は、前記煤状物質の重量に対し、4〜200重量倍量を混合することを特徴とするフラーレンの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、前記第1及び第2のスラリー状物のいずれか一方又は双方の分離は、減圧濾過機、加圧濾過機、及び遠心分離機のいずれか1又は2以上によって行うことを特徴とするフラーレンの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、前記第4工程で得られた前記第2の残渣と第3の抽出溶媒とを混合して生成する第3のスラリー状物を、フラーレンの溶解している第3の抽出液と第3の残渣とに分離して、前記第3の抽出液からフラーレンを回収することを特徴とするフラーレンの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、前記第2工程で得られた前記第1の抽出液と前記第4工程で得られた前記第2の抽出液とを混合して第4の抽出液とし、該第4の抽出液からフラーレンを回収することを特徴とするフラーレンの製造方法。
  8. 請求項7記載のフラーレンの製造方法において、前記第4の抽出液を濃縮して、前記第1及び第2の抽出溶媒の溶解度に対して、0.2〜6重量倍量、好ましくは0.5〜2重量倍量のフラーレン濃度の濃縮液とすることを特徴とするフラーレンの製造方法。
  9. 請求項8記載のフラーレンの製造方法において、前記濃縮液とフラーレンが不溶又は難溶な貧溶媒とを混合し、該貧溶媒に不溶なフラーレンを析出させることを特徴とするフラーレンの製造方法。
  10. 請求項9記載のフラーレンの製造方法において、前記貧溶媒は、C60の溶解度が0.1g/L以下、好ましくは10mg/L以下の極性溶媒であることを特徴とするフラーレンの製造方法。
  11. 請求項9及び10のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、前記貧溶媒は、前記濃縮液に対して0.1〜20重量倍量、好ましくは1〜20重量倍量を混合することを特徴とするフラーレンの製造方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載のフラーレンの製造方法において、加圧濾過機及び減圧濾過機の一方又は双方を用いて、前記貧溶媒中のフラーレンを回収することを特徴とするフラーレンの製造方法。
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