JP4936349B2 - 金属内包カーボンナノカプセルの製造方法 - Google Patents

金属内包カーボンナノカプセルの製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、量産性に優れた金属内包カーボンナノカプセルの製造方法に関する。
カーボンナノカプセルはカーボンオニオン、ナノサイズ真球状黒鉛、オニオングラファイト、オニオンフラーレンなどとも呼ばれ、フラーレンやカーボンナノチューブとともに新しい炭素材料として注目されている材料であり、タマネギのように球状炭素構造が入れ子を成して重なっている。かかるカーボンナノカプセルには、内部に金属や金属炭化物を内包しているものがあり、金属内包カーボンナノカプセル、金属内包カーボンオニオン、金属内包フラーレン、カーボンナノカプセルなどと呼ばれている。
カーボンナノカプセルは、軽量かつ安定であり、放射線に対する耐性、高温での耐性が優れている。また、金属内包カーボンナノカプセルは内包金属または内包化合物の外側を炭素の殻が包んでいることから、内包された金属あるいは化合物が単体の場合より高度に化学的に安定である。内包された金属が強磁性体の場合には酸化せず、長期間に渡って安定な磁性体となることから、磁気記憶媒体、電磁波シールドなどへの適用が考えられ、化学的に安定なことから、化粧品、NMR診断用造影剤、あるいは触媒としての用途も考えられている。また、従来より様々な製造方法が提案されている。
金属内包カーボンナノカプセルの合成法としては、例えば、特許文献1には、金属あるいは金属酸化物存在下で非晶質炭素に電子線、粒子線、フォトン等の高エネルギー線を照射する方法が示されている。また、特許文献2にはゾルゲル法でシリカに担持させた粒状Ni/SiO2触媒とCeやLa微粒子を分散し、700℃に加熱した反応管内へ水素と二酸化炭素の混合ガスを送り、金属内包ナノカプセルを製造する方法が示されている。
また、特許文献3には、反応槽内にメタンと水素の混合ガスとともに金属微粒子を供給し、該反応槽内にマイクロ波放電によるプラズマを生成し、金属微粒子を内包するカーボンナノカプセルを製造する方法が示されている。同様に、特許文献4には、カーボンを生成する原料ガスに金属微粒子または金属を含む化合物を混入して熱フィラメントとプラズマ発生手段を用いて金属内包ナノカプセルを製造する方法が示されている。
さらに、特許文献5,6には棒状電極の内部に金属を置いたカーボン陽極と、カーボン陰極とを対向させ、Heガス雰囲気で両電極の間でアーク放電を行わせ、これにより磁性金属内包カーボンナノカプセルを蒸発合成する方法が示されている。
特開平8−217431号公報 特開2000−344506号公報 特開2003−81619号公報 特開2005−60116号公報 特開2004−247336号公報 特開2004−67499号公報
しかし、かかる従来の製造方法では、金属内包カーボンナノカプセルはその生産性に大きな課題があり、実用に供するにはいずれの方法も問題があった。
すなわち、特許文献1,2の金属等の存在下で非晶質炭素に高エネルギー線を照射するものは、高エネルギー線を発生する装置が高価であり、しかも生産性が低いという問題があった。また、特許文献3の反応管内へ水素と二酸化炭素の混合ガスと金属粒子を送る手法は簡単であるが、生成されるナノカプセルが送る金属微粒子のサイズに限定され微細化には限界があるとともに、量産性にも問題があった。
また、特許文献4の反応槽内にガスと金属微粒子を供給しプラズマを生成する方法では、やはり金属内包カーボンナノカプセルのサイズが金属粉のサイズ以下にならないという問題があり、さらに、供給した金属微粒子が反応せずに、カプセルを形成しない金属として多量に含まれるという問題があった。また、特許文献5,6カーボン陽極、陰極間でのアーク放電は、簡便であるが、アーク放電を行っているため、ナノカプセルの合成領域が狭いという問題があり、またナノカプセルが反応容器の壁に付着して生成するので、生産性に問題があった。
本発明の課題はかかる問題点に鑑みて、その課題は、容易な技術で、従来に比べ簡単かつ安価に金属内包カーボンナノカプセルを製造することができ、微細化が容易で、不用な残留金属粉がなく、回収のし易い、量産性、生産性に優れた実用的な方法を提供することにある。
前述した目的を達成するために、本発明金属内包カーボンナノカプセルの製造方法は、元素構成がCとH又はCとOとHを主成分とする単一または混合ガスである金属内包カーボンナノカプセル製造用原料ガス中に交流放電、高周波放電、およびマイクロ波放電のいずれかの放電によりプラズマを生成し、該プラズマ中またはその近傍に正に電位した鉄族基または鉄族基合金から成る基体を置くことで該プラズマ中の電子を引き寄せて、該基体表面に金属内包カーボンナノカプセルを合成すること基本的特徴としている。
鉄族基または鉄族基合金を正に電位させ、元素構成がCとHを主成分とする単一
または混合ガスである金属内包カーボンナノカプセル製造用原料ガス、または、構成元素がCとOとHを主成分とする単一または混合ガスである金属内包カーボンナノカプセル製造用原料ガスを交流放電、高周波放電、およびマイクロ波放電のいずれかの放電プラズマにて活性化することで、前記ガスから直接基体上に金属内包カーボンナノカプセルを合成することができるので、入手が容易で安価なガスおよび触媒と、比較的低い活性化温度条件において、容易に金属内包カーボンナノカプセルを製造することができ、微細化が容易で、不用な残留金属粉がなく、回収がし易く、量産性、生産性に優れている。また、装置も一般的なプラズマCVD装置でよく、特別な装置を要さないので、低コスト化を実現可能である。
本発明は以下の態様を含んでおり、これらを適用することにより、より効果的に
前記目的を達成することができる。
1)CとHを主成分とする単一または混合ガスを用いた場合におけるC:Hの原子
数比率が0.001〜0.5:1である。CとOとHを主成分とする単一または混
合ガスを用いた場合におけるC:O:Hの原子数比率が(0.001〜0.5):
(0.001〜0.5):1であり、かつOの原子数がCの原子数より少ない。
2)鉄族基または鉄族基合金基体が鉄、ニッケル、およびコバルトの単体、またはそれらを含有する合金を基材中に1%以上の比率で含有するものから選択される。
3)金属内包カーボンナノカプセル合成用基体の温度が1000℃以下である。
4)金属内包カーボンナノカプセルの合成を大気圧下、加圧下または減圧下で行う。
本発明はまた、基体上に金属内包カーボンナノカプセルを層として生成させる場合のほか、独立した粉末として簡単に得る場合を含んでいる。後者の態様としては、下記のものが挙げられる。すなわち、金属内包カーボンナノカプセルの合成を流動床法にて複数の基体上に連続的に行い、該合成物を基体相互の摩擦および衝突、または振動付与による摩擦および衝突にて連続的に基体から除去し、金属内包カーボンナノカプセルを得る。
以下本発明を詳細に説明すると、金属内包カーボンナノカプセルの生成プロセスは良く理解されていないのであるが、従来より開示されている方法、すなわち炭素または炭素化合物に熱エネルギーを付与する方法、イオンビームなどの高エネルギー粒子で衝撃する方法、X線、マイクロ波などの励起エネルギーを付与する方法などでカーボンオニオンを製造するが、その際に金属または金属酸化物を原料ガスとともに供給すると、カーボンナノカプセル生成時に金属または金属化合物を内包した金属内包カーボンナノカプセルを生成する。
また、内包される金属は高温時に周囲の炭素を固溶して取り込み、冷却されるときに再び炭素を析出し、その炭素が金属の周囲を取り囲むように多層の炭素の殻を生成するという説もある。
本発明者らは、これらの方法とは全く異なるプロセスによる金属内包カーボンナノカプセルの製造方法を見いだしたもので、元素構成がCとH又はCとOとHを主成分とする単一または混合ガス中に放電によりプラズマを生成し、該プラズマ中またはその近傍に正に電位した鉄族基または鉄族基合金から成る基体を置き、該基体表面に金属内包カーボンナノカプセルを合成することを基本的な特徴としている。
すなわち、本発明者らは、図1のように、ガス供給口6と排気口7を有する真空容器5内に回転軸3で回転自在な支持台2を配し、陽極とし、この支持台2と対峙する位置に陰極4を配した一般的なプラズマCVD装置を用い、試みに、前記支持台2に金属内包カーボンナノカプセル生成用の鉄族系材料からなる基板(基体)1を装着し、前記ガス供給口6を通して真空容器5内を炭化水素と水素の混合ガス雰囲気とし、この雰囲気中で前記支持台2を陽極として放電プラズマ8を生成せしめた。その結果、基板1の表面に煤状の金属内包カーボンナノカプセル9が生成されることを知見した。
さらに詳細に調べると、構成元素がCとHから成る炭化水素系の単一または混合ガスのほか、構成元素がCとHとOから成る炭化水素系のガスでも同様に鉄基板の上に金属内包カーボンナノカプセルを生成することが判った。Cはカーボンナノカプセルの原料となる元素であるから必須であり、HとOには不飽和の炭素鎖を持つカーボンをエッチングする作用があると言われており、これが金属内包カーボンナノカプセルを効果的に生成する役割を果たしているものと思われる。
前記CとHを主成分とする単一または混合ガスにおいては、C:Hの原子数比率が0.001〜0.5:1の範囲で金属内包カーボンナノカプセルが生成され、それ以外のCの多い領域では不定形炭素が中心で、Hの多い領域では何も生成されなくなった。また、CとHとOを主成分とする単一または混合ガスにおいては、C:O:Hの原子数比率が(0.001〜0.5):(0.001〜0.5):1であり、かつOの原子数がCの原子数より少ない範囲で金属内包カーボンナノカプセルが合成され、その範囲外のCの多い領域では不定形炭素が生成され、OとHの多い領域およびCの少ない領域では何も生成されなかった。前者のガスの代表的なものはCH4単体あるいはこれとH2の混合ガスが挙げられ、後者のガスの例としては、H2とCOとCH4の混合ガスが挙げられる。
基体1は陽極及びカーボンナノカプセル生成のための触媒機能を果たすので、基体の金属はカーボンナノカプセル形成の際に金属あるいは金属炭化物としてその中心部に取り込まれる。基体材料には鉄を使用できるが、その後の実験の結果、鉄のほかにも、コバルト、ニッケル、クロムの単体、鉄、コバルト、ニッケル、クロムなどの鉄族金属の一種以上を含む鉄族基合金上にも金属内包カーボンナノカプセルの合成が確認された。このとき、金属内包カーボンナノカプセルの金属部には上記基体合金中に含まれていた鉄族元素の他に鉄族以外の合金元素も同時に取り込まれることが判った。前記鉄族金属は基体中に1%以上含有される程度でも十分に効果があり、例えば炭化タングステンを主成分とする超硬合金上にも金属内包カーボンナノカプセルが合成されることが確認された。こうしたことから、基体としては鉄族基または鉄族基合金基体としたのである。
金属内包カーボンナノカプセルを生成させる基体1の温度は、プラズマにさらされて上昇するが、特に基体の温度が1000℃を越える領域ではカーボンナノカプセル自体が生成されにくいので、不可である。これは、ガスの分解で生成するCが、高温のため基体の鉄族金属中へ溶解したためと考えられる。基体温度は原料ガスを活性化するための加熱手段あるいは放電プラズマにより受動的に変化するので、それらの出力を低減すると基体温度も低下するので、合成速度との関係もあり一概には決められないが、実質的には約200℃以下では金属内包カーボンナノカプセルの生成速度が減少し、実用的ではなくなる。したがって、基体温度は、200℃〜1000℃の範囲が好適である。
金属内包カーボンナノカプセル製造用原料ガスの活性化には様々な方法が利用できる。代表的なものとしては、陽極である基体と対峙する関係位置に陰極のフィラメントを配し、フィラメントを2000℃以上に通電加熱して両極間に放電を行わせ、これにより生成する放電プラズマとフィラメントによる加熱で活性化する方法、あるいは交流放電、高周波放電およびマイクロ波放電、あるいはそれらの1種以上を組み合わせて生成した放電プラズマ雰囲気で活性化する方法などがあげられる。このとき、基体を陽極として正に電位するのは、放電により生成したプラズマから電子を基体に引き寄せるためである。マイクロ波や高周波などの正負が交互に変化する電場を使って生成した放電プラズマについても、基体に電子を引き寄せるための正の電位を与えることが必要で、その電位は基体に流入する電流値と基体の温度をモニターしながら決定され、通常は反応容器の接地電位より正側となる。
金属内包カーボンナノカプセルの合成は大気圧下、減圧下のいずれでも行える。ただし、実用的には、通電加熱したフィラメントを用いる方法は大気圧下および減圧下の合成に適し、その他の放電を用いる方法は減圧下の合成に適している。
本発明の方法では、金属内包カーボンナノカプセルが鉄属基または鉄属基合金基体上に合成されるが、金属内包カーボンナノカプセルを含む炭素質膜が厚くなると、金属をカーボンナノカプセルの生成割合が減少するので連続生産の面で問題が残る。この対策として、本発明は、鉄属基または鉄属基合金基体上に合成された金属内包カーボンナノカプセルを含む炭素質膜を、合成中に連続的または断続的に基体から物理的に除去するものである。
図2は、この例を示しており、真空容器5中に支持台を介しまたは介さないで円盤状または円柱状の基体1を横軸の周りに回転自在に配し、基体を陽極とし、該基体1の所要範囲たとえば半周領域の対向する位置に、放電プラズマ発生手段(この例では陰極)4を配置するとともに、基体1の金属内包カーボンナノカプセル生成領域から外れた位置、この例では円周方向で反対側に、静止するかまたは基体の回転方向に逆向する擦り取りないし掻き取り手段12を配し、掻き取り手段12の下方に基体表面から掻き取られた煤状の金属内包カーボンナノカプセル13を収容する手段14を配している。金属内包カーボンナノカプセルを収容する手段の代わりに吸引排出ホースを用いてもよい。これにより、金属内包カーボンナノカプセルを合成しつつ、生成物を連続的または断続的に基体から分離収集することができる。
本発明は、また、金属内包カーボンナノカプセルの合成を流動床法にて複数の基体上に連続的に行い、該合成物を基体相互の摩擦および衝突、または振動付与による摩擦および衝突にて連続的に基体から除去し、金属内包カーボンナノカプセルを得る方法を含んでいる。
図3はその例を示しており、真空容器5内にエンドレスコンベア16を配置し、少なくともコンベアの張り側が陽極となるようにする。該コンベアの張り側と対峙する関係位置に加熱または放電プラズマ発生手段(この例では陰極)4を配置する。そして、前記コンベア16には複数のボックス状の隔壁18を配し、隔壁内の空間に、前記鉄族基または鉄族基合金からなる球などの転動自在な形状の基体15を装填する。そして、コンベア16の緩み側(下側)には、基体15の落下を防止する手段を兼ねた多孔部材(板あるいは金網)17を配し、その下方に金属内包カーボンナノカプセルを収容する手段14を配している。コンベア16は振動器などの振動発生手段を搭載していてもよい。
この装置においては、コンベア16を駆動して転動自在な形状の基体15を移動させつつ、CとHを主成分とする単一または混合ガスを加熱または放電プラズマ8にて活性化するので、移動中に陽極とされた複数の基体15の表面にそれぞれ金属内包カーボンナノカプセル9が合成され、当該金属内包カーボンナノカプセル膜つきの基体は、コンベア端部領域において相互に摩擦および衝突し、または振動付与による摩擦および衝突を受け、それらによる衝撃で金属内包カーボンナノカプセル13が基体15から離脱され、多孔部材17の孔を通して収容手段14に収容される。したがって、容易かつ安価に金属内包カーボンナノカプセルを量産することができる。
金属内包カーボンナノカプセル合成時には金属を内包しないカーボンナノカプセルも同時に生成されるが、内包金属が強磁性特性を持つ場合には、磁気的手段を用いてカーボンナノカプセル、磁気特性を持たない金属内包カーボンナノカプセル、およびその他の炭素化合物と分離することが出来る。
図1に概略構成を示す装置を用いて金属内包カーボンナノカプセルの合成を行った。
1)金属内包カーボンナノカプセル製造原料には水素99%、メタン1%の混合ガスを用い、金属内包カーボンナノカプセルを合成する基体としては、直径36mm、厚さ7mmの鉄合金SKD11製円板を用いた。
2)合成は、まず真空容器内を図示してない真空排気装置を用いて1×10-2Pa以下まで真空排気し、しかる後にガス供給口6から原料ガスを真空容器内に2000Paの圧力まで導入し、直径0.75mmのタングステンフィラメント陰極をパイロメータによる測定で2000〜2500℃になるように交流電源10を用いて通電加熱し、直流電源を用いて陰極と陽極となる鉄合金製円板基体1を載置した基体支持台2との間で放電を行わせる手順で行った。このとき、陰極と陽極間の放電電流は4Aとした。このときの基体の温度は高温部で850℃、低温部で700℃であった。
3)これにより、鉄合金製円板基体1上に煤状の物質9が合成された。この煤状の物質9をメチルアルコールに分散し、ポリエチレン袋で覆った磁石を溶媒中に入れ、その表面に集まった煤状物質を取り出した。この煤状物質を透過電子顕微鏡で観察したところ、図4に示すように内部に金属を置き、その外側に多層化した構造の殻が包む物質が生成された。図5はさらにそれを拡大して観察したものであり、これより層間が0.34nmのカーボンナノカプセル構造を取っていることが判った。また、中心部の金属は同時に行った分析から、Feであることが判った。
4)基体をステンレス鋼SUS304(Fe‐18Cr‐8Ni)、およびに超微粒子超硬合金(WC‐12%Co)に変えて同様な方法で合成を行っても同様に金属内包カーボンナノカプセルが合成された。また、原料ガスを水素80%、一酸化炭素18%、メタン2%の混合ガスとして、同様な方法で合成を行った場合も金属内包カーボンナノカプセルが合成された。
また、図2に示す装置を用い、直径250mmの回転陽極を基体として、金属内包カーボンナノカプセルの生成を行った。
1)基体材料には表面に鉄、クロム、ニッケルおよび銅をプラズマ溶射した鋳鉄FC250を用いた。陰極4には直径1mmの溶接用タングステン線を用い、回転陽極(基体)1との間で放電を行わせ、基体となる回転陽極表面に金属内包カーボンナノカプセル9を合成した。
2)合成手順は、まず真空容器5内を1×10-2Pa以下まで真空排気した後、ガス供給口6から水素70%、一酸化炭素27%、メタン3%から成る混合ガスを総流量300cc/分の流量で供給し、図示してないフィラメント状陰極と陽極(基体)1間で放電を開始し、これをスタート補助放電として、陰極4と回転陽極基体1の間に放電を移行させた。これにより生成されるプラズマ8を用いて原料ガスを活性化し、金属内包カーボンナノカプセル9を回転陽極表面に合成した。
3)このとき、陰極と回転陽極間の放電電流を10A、回転陽極の回転数は1rpmとし、放電プラズマの生成している側とは反対側で、合成物9をすき取り板12を用いて連続的に回転陽極1からをすき取り、合成物粉13をすき取り板の下方に置かれたトレイ14に集めた。上記条件にて24時間運転後、すき取った煤状の合成物粉を実施例1と同様な方法で分離して透過電子顕微鏡で観察したところ、金属内包カーボンナノカプセルの合成が確認された。また、この煤状物質の元素分析を行ったところ、図6に示すようにプラズマ溶射した金属成分すなわち鉄、クロム、ニッケルおよび銅が検出され、金属内包カーボンナノカプセルには基体の金属が単体、合金またはその炭化物として取り込まれていることが判った。この時の煤状物質の合成速度は約1g/時間であった。
さらに、図3に示す流動床方式の装置を用いて金属内包カーボンナノカプセルの連続的生成を行った。本装置は、コンベヤ16で金属内包カーボンナノカプセルが合成される直径20mmの軸受鋼SUJ2製の球状基体15を循環させる機構を有している。
1)金属内包カーボンナノカプセルの合成は、真空容器5内を排気口7を通して1×10-2Paまで真空排気後、陰極となるタンタル管4の穴を通して水素ガス97%、メタンガス3%の割合の混合ガスを毎分500ccの流量で供給し、次いで、図示してないフィラメントを陰極、球状基体15を装荷したコンベヤ16を陽極として、放電を開始し、これをスタート補助放電として、タンタル管製陰極4と球状基体を装荷したコンベヤ間へ放電を移し、本放電を開始した。これにより生成されたプラズマ8中で、原料ガスが励起され、球状基体上に金属内包カーボンナノカプセルを含む煤状物質を合成した。
2)球状基体上に合成された煤状物質は基体15がコンベヤ16で合成領域外へ運ばれ、下方へ落下する間に、基体の転動、摺動および落下による衝突で基体から離れ、コンベヤ16の下方に置かれた穴あき板17を通して落下し、穴あき板の下方のトレイ14に集めた。
3)この方法により、24時間の連続運転でトレイ内に金属内包カーボンナノカプセルを含む粉末13(合成物粉)が堆積することを確認した。合成速度は基体や構造物への付着残留が多く正確には求められないが、1〜2g/時間で金属内包カーボンナノカプセルを含む粉末が合成されたものと推定した。
本発明の実施例においては、鉄属基または鉄属基合金基体を陽極とし、これに対向する陰極との間で放電プラズマを生成し、基体上に金属内包カーボンナノカプセルを合成したが、マイクロ波や高周波などの正負が交互に変化する電場を使って生成した放電プラズマを利用して金属内包カーボンナノカプセルを合成する場合も基体に電子を引き寄せるために必要な正の電位を与えることで同様な効果を得ることができる。
本発明の実施の形態を示す金属内包カーボンナノカプセルの合成方法とそれに用いる装置の概略を示す説明図である。 本発明の他の実施の形態を示す金属内包カーボンナノカプセルの合成方法とそれに用いる装置の概略を示す説明図である。 本発明のさらに他の実施の形態を示す金属内包カーボンナノカプセルの合成方法の他の例とそれに用いる装置の概略を示す説明図である。 本発明の実施例1で得られた金属内包カーボンナノカプセルの透過電子顕微鏡写真である。 図4の拡大透過電子顕微鏡写真である。 本発明の実施例2で得られた金属内包カーボンナノカプセル中に含まれる元素を示す分析チャートである。
符号の説明
1 基体(鉄族基基体、鉄族基合金基体)
2 支持台(陽極)
4 陰極(フィラメント、タンタル管)
8 (放電)プラズマ
9 金属内包カーボンナノカプセル
12 擦り取り又は掻き取り手段(すき取り板)
13 合成物粉(金属内包カーボンナノカプセル)
15 球状基体
16 コンベヤ(流動床)
17 穴あき板



Claims (7)

  1. 元素構成がCとH又はCとOとHを主成分とする単一または混合ガスである金属内包カーボンナノカプセル製造用原料ガス中に交流放電、高周波放電、およびマイクロ波放電のいずれかの放電によりプラズマを生成し、該プラズマ中またはその近傍に正に電位した鉄族基または鉄族基合金から成る基体を置くことで該プラズマ中の電子を引き寄せて、該基体表面に金属内包カーボンナノカプセルを合成することを特徴とする金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
  2. 元素構成がCとHを主成分とする単一または混合ガスにおけるC:Hの原子数比率が0.001〜0.5:1であることを特徴とする請求項1に記載の金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
  3. 元素構成がCとOとHを主成分とする単一または混合ガスにおけるC:O:Hの原子数比率が0.001〜0.5:0.001〜0.5:1であり、かつOの原子数がCの原子数より少ないことを特徴とする請求項1に記載の金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
  4. 鉄族基または鉄族基合金基体が鉄、ニッケル、およびコバルトの単体、またはそれらを含有する合金を基材中に1%以上の比率で含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
  5. 金属内包カーボンナノカプセル合成用基体の温度が1000℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
  6. 金属内包カーボンナノカプセルの合成を大気圧下、加圧下または減圧下で行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
  7. 金属内包カーボンナノカプセルの合成を流動床法にて複数の基体上に連続的に行い、該合成物を基体相互の摩擦および衝突、または振動付与による摩擦および衝突にて連続的に基体から除去し、金属内包カーボンナノカプセルを得ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の金属内包カーボンナノカプセルの製造方法。
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