JP4926490B2 - 歯磨剤 - Google Patents

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本発明は、外観色が安定なポリフェノール含有歯磨剤に関する。
ポリフェノール類は、口腔内細菌ストレプトコッカス・ミュータンスに対する抗菌作用(特許文献1)、及びう蝕の原因となるプラークを形成する酵素に対する阻害作用(特許文献2)等を有することから、これを配合する歯磨剤はう蝕及び歯周病の予防に有用である。しかし、ポリフェノールを配合した歯磨剤は、経時的に変色し、外観が悪くなるという問題がある。
かかる歯磨剤の経時的な変色を抑制するための手段として、アルコール性水酸基を2つ以上もつ化合物及び有機還元剤を配合する方法(特許文献3)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油と銅クロロフィリンの金属塩を配合する方法(特許文献4)等が報告されている。
特許第2763824号公報 特開平4−95020号公報 特開平6−239716号公報 特開平9−30943号公報
しかしながら、これら従来の変色防止手段によっては外観色の変化を十分に抑えられず、有機還元剤を用いる場合には味が変化する等の問題があった。
従って本発明の目的は、外観色が安定なポリフェノール含有歯磨剤を提供することにある。
そこで本発明者は、経時的に変色するポリフェノールを含有するにもかかわらず、外観を経時的に変化させない手段について種々検討し、色素の配合に加えて歯磨剤の光透過率を向上させること、特に透明歯磨剤とすることにより、ポリフェノールを含有しても外観色の変化の少ない歯磨剤が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B)、
(A)ポリフェノール、
(B)水溶性又は油溶性の色素
を含有し、波長800nmでの光透過率(セル長1cm)が2〜95%である歯磨剤を提供するものである。
本発明の歯磨剤は、経時的に変色するポリフェノールを含有しているにもかかわらず、経時的な外観色の変化が少ないため長期間商品価値が低下しない。
本発明の歯磨剤には、経時的に変色するポリフェノール(A)を含有する。ポリフェノール(A)は、0.1質量%水溶液で50℃、1ヶ月保存した時、初期のR、G、B値に対し、これらいずれかの値が5%以上変化するものである。このような経時的に変色するポリフェノールとしては、例えば、フェノールカルボン酸類(例えばカフェ酸、バニラ酸、フェルラ酸、クマル酸、クロロゲン酸等)、フェノールアミン類(例えばドーパミン、チラミン、オクトパミン、セレトニン等)、フラボン類(例えばフラボン、イソフラボン、フラバノン、フラボノール、アカセチン、アピゲニン、アストラガリン、ルチン、クエルセチン、クエルシトリン、イソクエルシトリン、ミリセチン、ミリシトリン、ヒペリン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゲニスチン、グリシチン、ゴシペチン、ノビレチン等)、アントシアニン類(例えばクリサンテミン、カリステフィン、デルフィン、シアニン、ペラルゴニン、フラガリン、ぺタニン、ケラシアニン、ペオニン、オエニン、ナスニン等)、タンニン(加水分解タンニン(ガロタンニン、エラーグタンニン等)、縮合型タンニン(プロアントシアニジン、柿渋、桂皮、阿仙薬、地楡などから抽出した各タンニン)、カテキン類(例えばカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、ロイコアントシアニジン)、没食子酸、没食子酸エステル(プロピルエステル、イソアミルエステル、オクチルエステル、ドデシルエステルなど)、ピロガロール、フロログリシングルコガリンなどの他、これらのポリマーなどを挙げることができる(「食品の変色の化学」木村進著、光琳テクノブックス(1995年))。
これらのポリフェノールのうち、前記抗菌作用及びプラークを形成する酵素に対する阻害作用の点から、カテキン類、フラボン類、タンニンが好ましい。
これらのポリフェノールのうち、植物由来のポリフェノールは、例えばポリフェノールを含む植物の葉などから常法に従い抽出することにより得ることができる。抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;酢酸エチルエステル等の酢酸低級アルキルエステル;ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸等の溶媒を挙げることができる。これら溶媒は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明歯磨剤中のポリフェノールの含有量は、前記抗菌作用、酵素阻害作用及び外観色変化抑制効果の点から、0.0005〜30質量%、さらに0.01〜10質量%、さらに0.02〜5質量%、特に0.05〜1質量%が好ましい。なお、ポリフェノールとして植物抽出物を用いる場合には、それに含まれる総ポリフェノール量換算である。
本発明歯磨剤には、(B)水溶性又は油溶性の色素が用いられる。これは、ポリフェノールの経時的な変色をカバーし、外観色を変化させない作用を有すると考えられる。成分(B)の色素として、可視領域の極大波長が400〜800nmの色素を1種又は2種以上含有することが好ましい。このような(B)色素としては、透明度の高い歯磨剤を得る観点から、水溶性色素が好ましい。水溶性色素としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号の、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色213号、赤色214号、赤色215号、赤色218号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、黄色201号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、緑色201号、緑色202号、緑色204号、緑色205号、青色201号、青色202号、青色203号、青色204号、青色205号、褐色201号、紫色201号等のタール系色素(「法定色素ハンドブック」、日本化粧品工業連合会編、(株)薬事日報社(1988年));グルコン酸銅、クエン酸銅、リンゴ酸銅、銅クロロフィリンNa等の水溶性銅化合物、カラメル色素、コチニール色素、アナトー色素、トウガラシ色素、クチナシ黄色素、ラック色素、赤キャベツ色素、赤大根色素、紫トウモロコシ色素、カカオ色素、ベニバナ黄色素、ウコン色素、コウリャン色素、タマネギ色素、シアナット色素、ペカンナッツ色素、チコリ色素、カカオ色素、スピルリナ色素、マリーゴールド色素、ビートレッド、紅麹色素、クチナシ青色素、クチナシ黄色素、アカネ色素、パプリカ色素、シコニン、ラッカイン酸、グアイアズレン、β-カロチン、リボフラビン、クロロフィル等の天然系色素が好ましい。
本発明においては、透明度を前記範囲に保持する限り、水溶性色素に加えて、少量の油溶性色素(顔料)を用いることもできる。
これらの色素は、単独で用いてもよく、2種以上を選択して用いてもよい。
これらの色素は、()ポリフェノールの色の変化の度合、すなわち、R、G、B値の変化の度合にあわせて選択し、配合量を決定するのが好ましい。なお、配合するポリフェノールの変色に合致させる必要はない。
本発明歯磨剤中のこれらの色素の含有量は、色素の種類、ポリフェノールの種類及び量、さらには透明度によっても異なるが、透明度を確保し、かつポリフェノールの経時的変色をカバーする点から、タール系色素の場合0.00001〜0.1質量%、さらに0.00005〜0.05質量%、特に0.0001〜0.01質量%が好ましい。また、天然系色素の場合0.0001〜1質量%、さらに0.0005〜0.5質量%、特に0.001〜0.2質量%が好ましい。
本発明の歯磨剤は、経時的に変色するポリフェノールを含有するにもかかわらず、長期保存時に外観色を変化させない点で、波長800nmでの光透過率(セル長1cm)が2〜95%であることが必要である。通常、組成物に含まれる成分の色の変化をカバーするためには、不透明、すなわち光の透過率を実質上0に調整する。しかし、本発明では、透明度を上げることにより、逆に外観色の変化を抑制することに成功した。波長800nmでの光透過率(セル長1cm)は、外観色の変化を抑制する点から2〜95%、さらに5〜90%、特に10〜80%が好ましい。かかる光の透過率は、歯磨剤をそのまま充填した1cm厚の透明セルを用いて吸光度計を用いて測定すればよい。なお、粒径300μm以上のカプセル、造粒物等が配合されていると歯磨剤の透過率が低下するためカプセル、造粒物等を除去して透過率を測定することが好ましい。
歯磨剤に配合される成分のうち、光の透過率に最も影響を及ぼす成分は、研磨剤であり、前記透過率を達成するためには、研磨剤としてシリカ系研磨剤を用いるのが好ましい。ここで、シリカ系研磨剤としては、非晶質の無水及び含水ケイ酸等のシリカ系粉末が使用でき、好ましくは無水ケイ酸である。これらの研磨剤は単独で用いても2種以上を併用しても良く、その含有量は、本発明歯磨剤中5〜80質量%、さらに6〜20質量%、特に8〜15質量%が好ましい。
使用する無水ケイ酸等の研磨剤にもよるが、水の屈折率は約1.33と低屈折率なので、透明性の高いハミガキを得ようとすると、通常のハミガキよりも水の配合量を減らし、高屈折率のソルビトール又はグリセリンなどの量を増やす必要がある。
透過率の高い歯磨剤を調製するには以下の手順で行うことができる。
(1)様々な濃度の水―ソルビトール溶液を調整し、それらの屈折率を測定する。
(2)(1)のそれぞれの溶液中に無水ケイ酸を使用予定量配合し、透過率を測定して屈折率と透過率の関係のグラフを作成する。グラフから最も高い透過率を示す溶液の屈折率を確認する。
(3)配合予定の成分(無水ケイ酸等の不溶物を除く)を混合し、水と多価アルコールの配合量を調整し、(2)で求めた透過率の高い屈折率に合わせる。
本発明歯磨剤には、外観色を変化抑制効果をさらに向上させるために、前記成分に加えて抗酸化剤を含有させるのが好ましい。抗酸化剤としては、抗酸化力又は還元力を有し、口腔内組成物に使用可能な成分、例えばL−アスコルビン酸及びその塩、エリソルビン酸及びその塩、α−トコフェロール酢酸塩、dl−αトコフェロール、ローズマリー抽出物、ステビア抽出物、ヒマワリ種子抽出物、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、L−システイン塩酸塩、フィチン酸、ハイドロキノン及びその配糖体、ノルジヒドログアヤレチン酸、アスコルビン酸高級脂肪酸エステル(ラウリン酸エステル、ステアリン酸エステル、イソステアリン酸エステル、パルミチン酸エステルなど)、グアヤク脂等が挙げられる。L−アスコルビン酸、エリソルビン酸又はα−トコフェロール酢酸の塩としては、ナトリウム塩、カルシウム塩、第一鉄の塩、パルミチン酸エステルの塩等が挙げられる。これら抗酸化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を選択して用いてもよい。
これらの抗酸化剤は、透明性の確保及び外観色の変化抑制効果の点から、0.1質量%水溶液で50℃、1ヶ月保存した時のB値の変化率が、(A)ポリフェノールのB値の変化以下であるものを選択することが好ましい。
本発明歯磨剤中の抗酸化剤の含有量は、外観色の変化抑制効果の点から、0.0005〜50質量%、さらに0.001〜20質量%、特に0.01〜5質量%が好ましい。
本発明の歯磨剤は、その用途に応じて、適宜処方され、常法に従って練歯磨、液状歯磨、ゲル歯磨剤などとすることができる。他の配合成分は特に限定されるものではなく、必要に応じて、その他の有効成分、湿潤剤、粘結剤、発泡剤、保存剤、香味料、甘味剤、pH調整剤などを本発明の目的が阻害されない範囲で適宜含有していてもよい。
前記湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトールなどが挙げられ、その1種又は2種以上を組み合わせて配合することができる。
本発明の歯磨剤全量に対して、これら湿潤剤の含有量は、透明性の確保の点から、40〜95質量%、さらに60〜80質量%含有することが好ましい。
また、本発明の歯磨剤は透明性を確保するために、歯磨剤の水分量を1〜50質量%、さらに5〜40質量%、特に10〜30質量%とするのが好ましい。
実施例1
次に、比較例及び実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、「%」はいずれも質量%である。
表1に示す処方で常法により歯磨剤を調製し、ラミネートチューブに充填した。充填後5℃と50℃で1週間保存した時の歯磨剤の変色度合いを評価した。ポリフェノールとしては茶抽出物(サンフェノン100S(太陽化学(株)、総ポリフェノール含量89%、総カテキン含量90%)を0.1%、抗酸化剤としてはL-アスコルビン酸Na0.2%、色素には赤色106号と黄色4号の混合水溶液を0.2%配合した。作成した歯磨剤は、コントロールとして不透明で、抗酸化剤と色素も配合しない歯磨剤を1種、透明、抗酸化剤、色素の要素を1つずつ含む歯磨剤3種、透明、抗酸化剤、色素の要素を2つずつ含む歯磨剤3種、透明、抗酸化剤、色素の3要素を全て満たす歯磨剤を1種調製した。合計8種類の歯磨剤について変色の検討を行った。
変色の評価方法:保存後の歯磨剤を透明で内容量が3cm×3cm×1cmのケース(AS ONE社製 PS CASE No.1)にいっぱいになるように詰める。そのケースと共に、色濃度標準としてKODAK GRAY SCALEのA、2、4、6、8、10、12、14、Bの9点(色濃度1〜9とする)と、CASMATCH(大日本印刷製)が入るようにし、白紙の上で撮影を行った。撮影条件はリングライト一様照明の元、一定のシャッター速度、しぼり、焦点距離で行った。撮影した画像をADOBE PHOTOSHOPにてCASMATCHを用いて色補正後、WINROOF(三谷商事株式会社製)にて色濃度標準により較正曲線を引き、被測定部位の側色をハミガキの色濃度を色の三原色であるR、G、B(赤、緑、青)について定量化した。色濃度は1〜9で、1に近いほど白く(着色が薄い)、9に近いほど黒(着色が濃い)となる。5℃保存の変色は無いものとし、50℃保存品のR、G、B濃度を5℃保存品のR、G、B濃度で割り算を行い、これをその歯磨剤の色の変化率とした。
変化率=50℃保存のR、G、B濃度/5℃保存のR、G、B濃度
透明性の評価方法:吸光度計のセル(セル長1cm)に空気が入らないように歯磨剤を充填し、800nmの透過率を測定した。吸光度計はSHIMADZU UV−1600を使用し、精製水の透過率を100%として測定を行った。
表1で示した歯磨剤の色の変化率の結果を図1に示す。
図1の結果から明らかなように、透明、抗酸化剤、色素の3つの要素を満たす実施例2の歯磨剤は、他の比較例の歯磨剤に比べR、G、Bの全ての変化率が大変低く、ほとんど変色していなかった。また透明と色素の要素を満たす実施例1の歯磨剤は、他の比較例の歯磨剤に比べ、R、G値の変化率は低かった。以上より本発明の歯磨剤は変色に対し、経時安定性が優れていることが判る。
本発明の目的は変色による外観劣化の防止なので、色の定量評価に加え、目視による官能評価も行った。5℃と50℃保存のハミガキを同様のプラスチックケースに入れ比較した時の、全体的な変色と色むらの度合いを4段階で評価した。その結果を表2に示す。評価基準は次のとおりである。
◎:変化無し ○:ほぼ変化無し △:やや変化あり ×:明らかな変化あり
表1で示した処方の1週間5℃と50℃保存した歯磨剤の色の変化率の結果を示す図である。

Claims (6)

  1. 次の成分(A)、(B)、(D)及び(E)
    (A)ポリフェノール、
    (B)水溶性又は油溶性の色素、
    (D)グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール及びラクチトールから選ばれる湿潤剤 60〜80質量%、
    (E)水 10〜30質量%
    を含有し、波長800nmでの光透過率(セル長1cm)が10〜95%である歯磨剤。
  2. (B)水溶性又は油溶性の色素が、可視領域の極大波長が400〜800nmの色素を1種又は2種以上含有するものである請求項1記載の歯磨剤。
  3. (C)抗酸化剤を含有する請求項1又は2記載の歯磨剤。
  4. シリカ系研磨剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の歯磨剤。
  5. (B)水溶性又は油溶性の色素が、(A)ポリフェノールの色の変化の度合にあわせて選択されるものである請求項1〜4のいずれか1項記載の歯磨剤。
  6. 練歯磨剤、液状歯磨剤及びゲル状歯磨剤から選ばれるものである請求項1〜5のいずれか1項記載の歯磨剤。
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