JP4924772B1 - カチオン硬化型液晶シール剤、及び液晶表示素子 - Google Patents

カチオン硬化型液晶シール剤、及び液晶表示素子 Download PDF

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Abstract

カチオン重合性化合物と、分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤及び/又は熱カチオン重合開始剤とを含有するカチオン硬化型液晶シール剤、及び、互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール剤と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール剤として請求項1〜5のいずれかに記載のカチオン硬化型液晶シール剤を使用する液晶表示素子。前記カチオン硬化型液晶シール剤は、前記分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤及び/又は熱カチオン重合開始剤を、前記カチオン重合性化合物に対し1〜30質量%含むことが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は液晶シール剤に関し、更に詳しくは、光及び/又は熱カチオン硬化型の液晶シール剤に関する。
一般に液晶パネル(液晶表示素子)は、薄膜トランジスタ、画素電極、配向膜等を備える背面基板と、カラーフィルター、電極、配向膜等を備える前面基板とを対向させ、両基板間に液晶を封入して構成されている。そして、2枚の基板を接着させる目的でシール剤が使用されている。
近年、液晶パネルの薄膜化や軽量化、あるいはフレキシブル性付与を目的として、前面基板、あるいは前背面基板両方の材質を従来のガラスからプラスチックへ置き換えることが検討されている。しかし、従来使用されているシール剤はガラス用として開発されたものが殆どであり、そのまま転用することが困難であった。エポキシ系の熱硬化型樹脂を主成分とした熱硬化型シール剤を用いた場合には、150℃で硬化させる場合が多いが、上下基板の温度差、あるいは熱膨張係数の異なる基板同士を貼り合わせた場合には、室温までパネルを冷却した際に液晶パネルが撓んでしまうといった問題があった。これを避ける目的で、エポキシ樹脂に、シリカ等の無機固体酸やサリチル酸等の有機酸等の硬化触媒を添加し、40℃以下の低温度で硬化反応を行う方法も試みられているが、硬化に長時間かかり実用的ではない。
一方、アクリレート等を主成分とする光硬化性シール剤は、硬化に熱を必要とせず、短時間での硬化が可能であることから、プラスチック基板向きである。しかしアクリレートは硬化収縮が大きい為接着性が弱く、簡単な衝撃等により剥がれてしまう場合があり、実用上問題があった。また、光硬化性成分と熱硬化成分とを併用し、最初に光硬化で半硬化させた後、加熱(大抵はアニール時の加熱を利用する)により完全硬化を行う光熱硬化型シール剤も知られているがやはり、プラスチック基板に対する接着性が弱く、実用上問題があった。
一方、エポキシ等を主成分とする光カチオン硬化性と光ラジカル硬化性を有するアクリレート等を併用する光2元硬化系を有する光硬化性シール剤(例えば 特許文献1参照)は、硬化に熱を必要とせず、短時間での硬化が可能であるばかりでなく、光開環反応を利用することで、基板の有機保護層とSiOx等の無機保護層への接着性が大幅に改善することができる。しかしながらイオン性である光カチオン重合開始剤およびカチオン硬化時に生じる酸が液晶内に溶出し、電圧保持率が低下するという問題もある。
ガラス基板を用いた液晶パネルの製造方法としては熱硬化シール剤を用いた真空注入方式と共に、光硬化熱硬化併用型シール剤を用いた滴下工法と呼ばれる方法が主流となっている。滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンサにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下塗布し、減圧下で他方の透明基板を重ねあわせ、シール部に紫外線を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶パネルを作製する。
このような滴下工法に用いる液晶パネル用シール剤としては、例えば、特許文献2に、紫外線を照射することで発生したラジカルで光硬化させ、更に、含有する熱硬化剤で熱硬化させる光熱硬化併用シール剤が開示されている。
一方、特許文献3には、熱硬化剤を使用しないシール剤としてカチオン重合性化合物を用いたシール剤が提案されている。このようなカチオン重合性化合物を用いたシール剤は、熱硬化剤を使用したシール剤と比較して、貯蔵安定性がよいことに加え、低温速硬化性に優れ、硬化に要する時間が短く製造時間を短縮できる等の利点がある。
しかしながら、滴下工法では、その工程上、未硬化の状態のシール剤が液晶に直接触れてしまうことから、カチオン重合性化合物を用いたシール剤を用いた場合には、カチオン重合性化合物、及び光カチオン重合開始剤が液晶に溶出してしまうことがあり、得られる液晶表示素子においては、液晶の配向の乱れや液晶表示素子の電圧保持率の低下等が認められることがあるという問題点があった。特に、近年の液晶表示素子は、消費者の低消費電力志向により、液晶の駆動電圧の低いもの(低電圧型液晶)を使用する傾向にある。この低電圧型液晶は、特に誘電率異方性が大きいため、不純物を取り込みやすく、液晶の配向の乱れや液晶表示素子の電圧保持率の低下が著しいものであった。
また、特許文献4には、光カチオン重合開始剤として、オニウムまたは有機金属錯陽イオンと、金属またはメタロイドの陰イオンのハロゲン含有錯体との光触媒イオン性塩を支持して担持する分散性微小担体から成り、カチオン重合性化合物に不溶性である、非反応性溶媒の不存在下におけるカチオン重合性化合物の放射線活性化重合のための担持開始剤が知られており、該光重合開始剤を使用した光カチオン硬化性組成物が提案されている。
特開2008−96575号公報 特開2001−133794号公報 特開2005−227367号公報 特開昭61−278507号公報
本発明が解決しようとする課題は、優れた電気特性と接着性を有する、カチオン硬化型液晶シール剤を提供し、該カチオン硬化型液晶シール剤を使用した電圧保持率に優れる液晶表示素子を提供することにある。
本発明者らは、カチオン硬化性組成物として分散性微小担体に担持されたカチオン重合開始剤を使用することで、前記課題を解決した。
前述の通り光又は熱カチオン重合開始剤はイオン性化合物であるため、液晶中に取り込まれると液晶の抵抗値を下げ得られる液晶表示素子の電圧保持率を低下させるおそれがある。これに対し本発明者らは、カチオン重合開始剤を分散性微小担体に担持させることで、溶出が大幅に低減できることを見出し、液晶の配向の乱れや表示素子の電圧保持率の低下等に液晶特性悪化を引起こさない液晶シール剤が得られることを見出した。
更に、塩基性固体物質を併用することで、特に、液晶の配向の乱れや電圧保持率の低下、あるいは電極腐食が生じにくい液晶シール剤が得られることを見出した。
即ち本発明は、カチオン重合性化合物と、分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤及び/又は熱カチオン重合開始剤とを含有し、前記分散性微小担体に対する前記光カチオン及び/又は熱カチオン重合開始剤の担持量が、1×10 −6 g/m 〜1g/m の範囲であるカチオン硬化型液晶シール剤を提供する。
また本発明は、互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール剤と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール剤として前記カチオン硬化型液晶シール剤を使用する液晶表示素子を提供する。
本発明のシール剤を使用することにより、滴下工法においても、液晶の配向の乱れや表示素子の電圧保持率の低下等が生じにくい液晶表示素子を得ることができる。
(分散性微小担体)
本発明で使用するカチオン重合開始剤は、分散性微小担体に担持されている。
本発明で使用する分散性微小担体とは、好ましくは粒状であり、最大寸法において約50マイクロメートル未満、なるべくは0.001から20マイクロメートルの範囲内、そして一層好ましくは0.01から5マイクロメートル、そして最も好ましくは0.01から2マイクロメートルの粒径を有し、シール剤の有機成分に不溶、即ち本質的に測定可能量が溶けない分散性微小材料であることが好ましい。該分散性微小担体の表面積は、大きいほど担持される光カチオン重合開始剤の量が多くなり好ましいが、一般に表面積の大きい粒子は粒径が小さく取り扱いが困難になることや、2次凝集体を作りやすくなり重合の均一性を阻害することから、0.1〜10000m /gの範囲が好ましく、より好ましくは1〜5000m /gであり、なお好ましくは10〜2000m /gであり、更に好ましくは30〜1500m /gであり、最も好ましいのは30〜1200m /gの範囲である。
具体的には、ヒュームドシリカ、沈降シリカおよび天然シリカのようなシリカ類;ケイ藻土;ベントナイト、カオリナイトおよびアタプルガス(attapulgus) クレーのようなクレー類;アルミニウム、ジルコニウム、チタン、アンチモン、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、銅等の金属の酸化物、炭酸塩および硫酸塩、またはこれらの混合物;デンプン(即ち、コーンスターチ)のようなスターチ、カーボンブラック、グラファィト、ダイアモンド、ポリマー類;ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリビニルプロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のラテックスのようなラテックス類;顔料粒子、または適当な大きさを有する分散性の微小材料であって、その表面上または内部に光カチオン重合開始剤を含有しえる微小な担体、例えば細かく砕いたセルロース(即ち、綿、木材)、ガラスなどである。
後述する塩基性固体物質を分散性微小担体として用いることも可能である。しかし塩基性固体物質の有する塩基性がカチオン重合性化合物の硬化反応を阻害することがあるので、強塩基より弱塩基が好ましく、あるいは塩基性固体の表面にある塩基性基の密度が小さい方が好ましい。担体として用いた塩基性固体が適度な塩基性を有す場合には、カチオン重合性化合物の遅延硬化性(硬化反応速度が遅くなる性質)の制御が可能である。
また、前記分散性微小担体は、使用する光、例えば紫外線を透過することが好ましい。
特に適当な担体はフュームドシリカ、例えばAEROSIL(日本アエロジル株式会社)である。分散性微小担体の比表面積が特に大きく好ましい金属酸化物としては、MCM41のような界面活性剤を鋳型にして合成したメソ多孔体が挙げられる。その他、有機低分子ゲルや、コラーゲンなどのアミノ酸の高次構造を鋳型に作製したメソ多孔体が挙げられる。メソ多孔体の材質としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、など多数が挙げられる。
(カチオン重合開始剤)
本発明で使用するカチオン重合開始剤としては光カチオン重合開始剤と熱カチオン重合開始剤とがあり、これらは、金属またはメタロイドのハロゲン含有錯陰イオンと、オニウム陽イオンおよび有機金属錯陽イオンから成るイオン性塩(以下イオン性塩と称す)である。具体的には、第15族、第16族、および第17族の記号が与えられた周期表の第VA族、第VIA族、または第VIIA族原子、とりわけリン、アンチモン、ビスマス、硫黄、窒素、およびヨウ素原子の芳香族有機原子陽イオンと陰イオンの付加物である。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。
(光カチオン重合開始剤)
本発明で使用する光カチオン重合開始剤は、金属またはメタロイドのハロゲン含有錯陰イオンと、オニウム陽イオンおよび有機金属錯陽イオンから成る光触媒イオン性塩(以下イオン性塩と称す)である。具体的には、第15族、第16族、および第17族の記号が与えられた周期表の第VA族、第VIA族、または第VIIA族原子、とりわけリン、アンチモン、硫黄、窒素、およびヨウ素原子の芳香族有機原子陽イオンと陰イオンの付加物である。例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。これらのオニウム塩のうち市販されているものを例示すると、オプトマーSP−150、オプトマーSP−151、オプトマーSP−170、オプトマーSP−171(いずれも株式会社アデカ製)、UVE−1014(ゼネラルエレクトロニクス社製)、イルガキュア−261(チバガイギー社製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、UVIー6990(ユニオンカーバイド社製)、BBIー103、MPIー103、TPSー103、MDSー103、DTSー103、NATー103、NDSー103(いずれもミドリ化学社製)、サンエイドSI−100L(いずれも三新化学工業社製)、CI−2064、CI−2639、CI−2624、CI−2481(いずれも日本曹達社製)、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローヌ・プーラン社製)、CD−1012(サートマー社製)等が挙げられる。中でも、オプトマーSP−150は、オニウム塩による電極腐食を引き起こしにくく、オプトマーSP−170は実効的な硬化性が得られやすく、RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074はイオン性不純物が少なく、より好ましい。
前記光カチオン重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じてアントラセン系、チオキサントン系等の増感剤を併用してもよい。
また該光カチオン重合開始剤の配合割合としては特に限定されないが、一般に分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤が光照射により発生した酸は、通常よりも重合性化合物に作用を及ぼしにくい傾向にあるため、通常の使用量よりも添加量を増やすことが好ましい。具体的には、後述する光カチオン重合性化合物100質量部に対して0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。0.01質量部未満であると、本発明のシール剤の硬化性が不充分になる可能性があり、20質量部を超えると、光カチオン重合開始剤から発生した酸が光重合性化合物を反応するのに必要な量以上になるため、シール剤から液晶に酸が浸透する可能性を高め、液晶の電気特性を悪化させるおそれがある。更に好ましくは0.03〜10質量部の範囲である。
(熱カチオン重合開始剤)
カチオン重合開始剤のうち熱によって酸を発生する開始剤として市販されているものを例示すると、サンエイドSI60L、サンエイドSI80L、サンエイドSI100L、サンエイドSI110L、サンエイドSI180L(いずれも三新化学工業株式会社製)、CP−66、CP−77(いずれも株式会社アデカ)等が挙げられる。但し、これらは光カチオン重合開始剤としても用いられる。またCP−66、CP−77(いずれも株式会社アデカ)等が挙げられる。
前記熱カチオン重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また該熱カチオン重合開始剤の配合割合としては特に限定されないが、一般に分散性微小担体に担持された熱カチオン重合開始剤が熱により発生する酸は、通常よりも重合性化合物に作用を及ぼしにくい傾向にあるため、通常の使用量よりも添加量を増やすことが好ましい。具体的には、後述するカチオン重合性化合物100質量部に対して0.01〜20質量部、好ましくは0.03〜20質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。0.01質量部未満であると、本発明のシール剤の硬化性が不充分になる可能性があり、20質量部を超えると、熱カチオン重合開始剤から発生した酸がカチオン重合性化合物を反応するのに必要な量以上になるため、シール剤から液晶に酸が浸透する可能性を高め、液晶の電気特性を悪化させるおそれがある。更に好ましくは0.03〜10質量部の範囲である。
(担持方法)
カチオン重合開始剤を担持した分散性微小担体は、金属またはメタロイドのハロゲン含有錯陰イオンと、オニウム陽イオンおよび有機金属錯陽イオンとのイオン性塩を、適当な溶媒、例えば塩化メチレン、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、水、ニトロメタン、トルエン、キシレン等またはこれらの混合溶媒に溶解し、この溶液を適量の分散性担体材料と混合することにより製造できる。溶媒を除去することで、分散性微小担体の表面または表面の微細な空隙の中に光カチオン重合開始剤が担持される。溶媒はろ過によって取り除いても良いが、溶媒に溶解したイオン性塩がシリカに有効に担持されずに流出する可能性があることから溜去により取り除く方法が好ましい。また分解しやすい光カチオン重合開始剤を使用する場合には、100℃以下、好ましくは60℃以下、更に好ましくは40℃以下で溜去することが好ましい。
上記において、カチオン重合開始剤を溶解した溶媒を除去する乾燥方法として凍結乾燥を用いることが好ましい。これにより分散性担体材料の再凝集を防いで微細な分散性微小担体を得ることができる。微小担体が細かいほどカチオン重合性化合物の硬化反応を効率的に進めることができる。溶媒の凝固点が低い場合や、凍結後の固体が昇華しにくい場合のように凍結乾燥が困難である時は、溶媒に水を適宜加えておき、水の氷結する温度で溶媒を先に乾燥し、残った凍結した水を凍結乾燥し除去してもよい。
分散性微小担体は多孔質であって、担持されたカチオン重合開始剤は担体の細孔内に担持されることが好ましい。細孔外に吸着したカチオン重合開始剤はシール材の樹脂成分または液晶と接触する可能性が高く、イオン性のカチオン重合開始剤が溶出し液晶の絶縁性を阻害するからである。細孔外に吸着したカチオン重合開始剤だけを何らかの方法で洗浄除去することが好ましい。そのためには、例えば、カチオン重合開始剤を担持させた分散性微小担体を溶媒により除去すればよい。用いる溶媒としては、カチオン重合開始剤に対する最小限の溶解性があり、しかし細孔内に吸着したカチオン重合開始剤が溶解され尽くす程には溶解力が大きすぎない適度な溶解性を有するものが好ましい。分散性担体材料とカチオン重合開始剤の種類により適宜選択する必要がある。洗浄回数を多くすれば細孔外のカチオン重合開始剤は除去されるが細孔内のカチオン重合開始剤量も減少するため細孔内と細孔外に残ったカチオン重合開始剤の量に応じて、即ち硬化性と電気特性に応じて洗浄回数を決定する。
(添加量)
分散性微小担体をあまり多量に添加すると、カチオン重合性化合物が増粘してシール剤の描画性等のハンドリング性を低下させる恐れがある。従って分散性微小担体の添加量は、カチオン重合性化合物の50質量%を超えない範囲であることが好ましい。具体的には、カチオン重合性化合物100質量部に対して0.1〜100質量部の範囲で使用し、0.1〜50質量部が好ましく、1〜30質量部がなお好ましく、3〜10質量部が最も好ましい。
一方、前述の通りカチオン重合開始剤はカチオン重合性化合物100質量部に対して0.1〜20質量部の範囲で使用することが好ましいことから、分散性微小担体の使用量は担持されたカチオン重合性開始剤の量から逆算して使用することが好ましい。
一方、該担持量は、分散性微小担体の表面形状と表面積に応じて最適な範囲が異なる。例えば表面積の小さい分散性微小担体に大量の該重合開始剤を担持させると、該重合開始剤が分散性微小担体の中空構造表面に多層に積層するので、分散性微小担体表面から離れた外側の層の該重合開始剤ほど吸着力が弱まり、該重合開始剤が該重合性化合物側に溶解または分散する恐れがある。これは液晶への汚染の原因となりまた電気特性の劣化の原因となり好ましくない。更に中空構造の開口部が大きく外に開いた構造か、ボトルネック型かによっても異なる。例えば中空構造の開口部が外に開いた場合には、上記の理由によりあまり大量の担持はできないが、該重合開始剤から発生した酸が該重合性化合物の重合に有効に作用する利点がある。逆にボトルネック型では、該重合開始剤を大量に担持しても担体から該重合性化合物側に流出する恐れは少ないが、発生した酸の拡散量も少なくなり反応が効率的に進行しない可能性がある。詳細には分散性微小担体の性状による影響はあるものの、一般的には、分散性微小担体に対する該重合開始剤の担持量は、添加量/分散性微小担体の表面積で表される担持量で表して1×10−7〜1g/mであることが好ましく、1×10−6g/m〜1g/mがなお好ましく、1×10−6〜1×10−2g/mが更に好ましく、1×10−5〜1×10−3g/mが最も好ましい。
後者は、単位面積当たりの該重合開始剤分子の平均積層数に換算して1/10層〜100層に相当すると推定される。
担持させたカチオン重合開始剤は再溶出しにくいことが確認されている。具体的には担持されたカチオン重合開始剤をアセトンで再溶出した実験の結果、使用する分散性微小担体の種類に関わらず、また担持させるカチオン重合開始剤の担持量に関わらず、30〜60質量%のカチオン重合開始剤が溶液(B)に再溶出し、従って70〜40質量%のカチオン重合開始剤が十分な結合力でシリカに結合していることが示唆された。(後述の参考実験参照)。使用するカチオン重合性化合物はアセトンよりも溶解性の低いものであり、従って一端担持させたカチオン重合開始剤はカチオン重合性化合物中には殆ど再溶出せずに安定な状態を保つものと推定される。
(粒径)
分散性微小担体は、一次粒子の大きさが数十nm程度のものもあるが、凝集して数百nm〜数μmの二次凝集体を形成することが多い。分散性微小担体に担持させたカチオン重合開始剤の触媒機能を十分発揮させるためには、可能な限り一次粒子の大きさまで分散させることが望ましい。
(添加方法)
カチオン重合開始剤を担持した分散性微小担体を、粉体のまま分散媒であるカチオン重合性化合物に添加し、ミキサーやスクリュー押し出し機などによる攪拌、または3本ロール、ニーダー、二軸押し出し機などの混錬などにより分散させることができる。更に微細な分散状態を得るために、ビーズミル等を使用することも好ましい。具体的には、分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤と、後述の光カチオン重合性化合物と、撹拌粒子(メディア)である微小のビーズを一緒に撹拌することで、撹拌粒子を通じて凝集粒子に衝突、せん断エネルギーを与え、凝集粒子を分散させるもので、より微細な分散状態を得ることができる。
(カチオン重合性化合物)
本発明で使用するカチオン重合性化合物としては、前記カチオン重合開始剤の存在下でカチオン重合しうる重合性化合物として一般的に使用されるようなエポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル基を有する公知慣用の化合物であれば特に限定はない。但し、オキセタニル基を有する化合物は、重合によって生成する水酸基量が少ない為に、プラスチックとの接着性に不利であることから少量の使用にとどめておく方が好ましい。
一分子中に1個以上のエポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロン850CRP」、「エピクロン850S」、「エピクロン1050」、「エピクロン1055」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロン830CRP」、「エピクロン830」、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロンEXA1514」)、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロンEXA7015」)、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭電化社製の商品名「EP−4000S」)、レゾルシノール型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製の商品名「EX−201」)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコートYX−4000H」)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(旭電化社製の商品名「EP−4088S」)、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロンHP4032」、「エピクロンEXA−4700」)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロンN−770」)、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロンN−670−EXP−S」)、NC−3000P(日本化薬社製)等のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ESN−165S(東都化成社製)等のナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、エピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、ゴム変性型エポキシ樹脂(ダイセル化学社製の商品名「PB3600」)、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂(ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコートYL−7000」)等が挙げられる。脂環式エポキシ樹脂(ダイセル化学社製の商品名「セロキサイド2021」、「セロキサイド2080」、「セロキサイド3000」、「EHPE」)等が挙げられる。
上記1個以上のビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物の市販品としては、4−ビニロキシブタノール(BASF社製の商品名「Vinyl−4−hydroxybutylether」)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(ISP社製の商品名「Rapi−Cure DVE−3」),1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル(日本カーバイド工業社製の商品名「CHDVE」)等が挙げられる。
一分子中に1個以上のオキセタニル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(東亜合成社製の商品名「OXT−211」)、3−エチル−3−(シクロヘキシル)メチルオキセタン(東亜合成社製の商品名「CHOX」)等が挙げられる。オキセタン環を2個以上有する化合物としては、1,4−ビス[{(3−エチルオキセタン−1イル)メトキシ}メチル]ベンゼン(東亜合成社製の商品名「OXT−121」)、1,3−ビス[(3−エチルオキセタン−3イル)メトキシ]ベンゼン(東亜合成社製の商品名「OXT−223」)、ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(東亜合成社製の商品名「OXT−221」)、フェノールノボラックオキセタン(東亜合成社製の商品名「PNOX−1009」)、4,4‘−ビス[{(3−エチルオキセタン−1イル)メトキシ}メチル]ビフェニル(宇部興産社製の商品名「OXBP」)が挙げられる。
上記カチオン重合性化合物の中でも、芳香環同士の相互作用の利用により凝集力が得られ、接着に有利となることから、芳香環を有するエポキシ基を有する重合性化合物が特に好ましい。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロン850CRP」、「エピクロン850S」、「エピクロン1050」、「エピクロン1055」、「エピクロン4822」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロン830CRP」、「エピクロン830」)等が挙げられる。
特に粘度が低く、一般式(1)であらわされる化合物との希釈効果も高いことから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロン850CRP」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(DIC社製の商品名「エピクロン830CRP」)が特に好ましい。
液晶ディスプレイ用のシール材として使用する場合には、液晶に対する汚染性を低減する観点から水添ビスフェノール型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。具体的には(DIC社製の商品名「エピクロンEXA7015」、ジャパンエポキシレジン社製の商品名「エピコートYX−8000」、「エピコートYX−8034」、ナガセケムテックス社製の商品名「EX−216L」)が挙げられる。
本発明のカチオン重合性化合物はラジカル硬化系の組成物(以下ラジカル硬化性組成物と称す)と併用して用いても良い。
(ラジカル硬化系の組成物)
ラジカル硬化性組成物とは、ラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤とを含む組成物である。ラジカル重合性化合物としては、UV硬化の分野で一般的に使用されるような(メタ)アクリロイル基を有する公知慣用の化合物であれば特に限定はないが、液晶パネルシール用として使用する場合は、液晶と混和し難いものがより好ましく用いることができる。但し、過度の硬化収縮を避けるために、硬化収縮が大きいとされる、ジペンタエリスリトールペンタおよびヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の(メタ)アクリレートは少量の使用にとどめておく方が好ましい。また、カルボン酸基を有するラジカル重合性化合物は、保存中にエポキシ基と反応し、組成物粘度を急激に上昇させる恐れがあることから、少量の使用にとどめておく方が好ましい。
主鎖構造にエステル結合を有し、少なくとも2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリンで変性して得られるエポキシ(メタ)アクリレート、エチルオキシド、プロピレンオキシド、環状ラクトンなどで変性された(メタ)アクリレート等も、好ましく使用できる。但し、ウレタン基を有するアクリレートは、カチオン硬化系と組み合わせる場合にはウレタン基による硬化阻害が起こるため、少量の使用にとどめておく方が好ましい。
本発明で使用する(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、グリセリンモノメタクリレート(日本油脂社製の商品名「ブレンマーGLM」)、アクリロイルオキシエチルフタレート(共栄社化学社製の商品名「HOA−MPE」)、ベンジル(メタ)アクリレート(大阪有機化学社製の商品名「ビスコート#160」)、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート(東亜合成社製の商品名「アロニックスM111」、「アロニックスM113」、「アロニックスM117」)、ECH変性フェノキシアクリレート(東亜合成社製の商品名「アロニックスM5700」)、EO変性琥珀酸アクリレート(共栄社化学社製の商品名「HOA−MS」)、EO変性リン酸メタクリレート(共栄社化学社製の商品名「P−1M」)、ロジン変性エポキシアクリレート(荒川化学社製の商品名「ビームセット101」)等の、(メタ)アクリロイル基を1つ有する(メタ)アクリレート、ビス(アクリロイルエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート(東亜合成社製の商品名「アロニックスM215」)、EO変性ビスフェノールAジアクリレート(日本油脂社製の商品名「ADPE−150」)、PO変性ビスフェノールAジアクリレート(日本油脂社製の商品名「ADBP−200」)、ECH変性ビスフェノールA型アクリレート(DIC化学社製の商品名「DICLITE UE8200」)、ECH変性フタル酸ジアクリレート(ナガセ化成社製の商品名「DA−721」)、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート(ナガセ化成社製の商品名「DA−722」)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(ダイセルUCB社製の商品名「IRR214」)、ロジン変性エステルアクリレート(荒川化学社製の商品名「ビームセット115B」)、EO変性リン酸ジメタクリレート(共栄社化学社製の商品名「P−2M」)、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(東亜合成社製の商品名「アロニックスM315」)、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(東亜合成社製の商品名「アロニックスM408」)、ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製の商品名「カヤラッドDPHA」)、カプロラクトン変性ジぺンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製の商品名「カヤラッドDPCA−30」、「カヤラッドDPCA−120」)等の、2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
特に上記ラジカル重合性化合物の中でも、ラクトンで変性された(メタ)アクリレート、ロジンで変性された(メタ)アクリレートは硬化性組成物を柔軟にし、密着性を有利にするので特に好ましい。具体的には、ラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート(日本化薬社製の商品名「HX620」)、ラクトン変性BPAエポキシフタル酸エステルジアクリレート(ダイセルサイテック社製の商品名「エベクリル3708」)、ロジン変性エポキシアクリレート(荒川化学社製の商品名「ビームセット101」)などが挙げられる。
前記ラジカル重合性化合物の使用量は、本発明の範囲を損なわない範囲であれば特に限定はない。具体的には、20〜70質量%の範囲であることが好ましい。
また、ラジカル光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン等を用いることができる。これらの光ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、光開始能を有するマレイミド化合物を用いることもできる。光開始能を有するマレイミド化合物の具体例としては、例えば特開2000−19868号公報、特開2004−070297号公報に記載のマレイミド化合物が挙げられる。
ラジカル熱重合開始剤としては過酸化物系あるいはアゾ系の開始剤が挙げられる。過酸化物系熱重合開始剤としては、例えば、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド(商品名:パーロイル355、日油社製)、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーCS、日油社製)、イソブチルパーオキサイド(商品名:パーロイルIB、日油社製)、ジラウロイルパーオキサイド(商品名:パーロイルL、日油社製)等のジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルSOP、日油社製)、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルMBP、日油社製)、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルOPP、日油社製)、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルEEP、日油社製)、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルIPP、日油社製)、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(商品名:パーロイルTCP、日油社製)等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシピバレート(商品名:パーブチルPV、日油社製)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(商品名:パーヘキシルPV、日油社製)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(商品名:パーブチルND、日油社製)、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(商品名:パーヘキシルND、日油社製)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(商品名:パーヘキシルI、日油社製)、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート(商品名:パーシクロND、日油社製)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(商品名:パーオクタND、日油社製)、クミルパーオキシネオデカノエート(商品名:パークミルND、日油社製)、(α、α’−ビス−ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(商品名:ダイパーND、日油社製)等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
アゾ系熱重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−70、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)(商品名:V−68、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名:V−65、和光純薬社製)等のアゾニトリル化合物;2,2’−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)(商品名:VA−545、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔N−(4−クロロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕ジヒドロクロライド(商品名:VA−546、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔N−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕ジヒドロクロライド(商品名:VA−548、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔N−(4−アミノフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン〕テトラヒドロクロライド(商品名:VA−500、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(フェニルメチル)−プロピオンアミジン〕ジヒドロクロライド(商品名:VA−552、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−プロペニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(商品名:VA−553、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(商品名:V−50、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン〕ジヒドロクロライド(商品名:VA−558、和光純薬社製)等のアゾアミジン化合物;2,2’−アゾビス〔2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロライド(商品名:V−041、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロライド(商品名:V−044、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼピン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロライド(商品名:V−054、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロライド(商品名:V−058、和光純薬社製)、2,2’−アゾビス〔2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン〕ジヒドロクロライド(商品名:V−059、和光純薬社製)等の環状アミジン化合物などが挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また該ラジカル重合開始剤の配合割合としては特に限定されないが、硬化性組成物100質量部に対して好ましい下限は0.1質量部、好ましい上限は20質量部である。0.1質量部未満であると、本発明のシール剤の硬化性が不充分になる可能性があり、10質量部を超えると、反応しきれないラジカル重合開始剤が大量に残り、液晶に溶け出す可能性がある。より好ましい下限は0.3質量部、より好ましい上限は10質量部である。
また、ラジカル硬化系とカチオン硬化系とを併用させる場合には、ラジカル重合性基とカチオン重合性基の両方の基を有する化合物も使用できる。ラジカル重合性基とカチオン重合性基の両方の基を有する重合性化合物としては、例えば、市販のBPFエポキシハーフアクリレートやBPAエポキシハーフアクリレート(ダイセルサイテック社製の商品名「UVa1561」)や、一分子中に複数エポキシ基を有する化合物のエポキシ基の一部を(メタ)アクリル酸を反応させて(メタ)アクリロイル化した化合物が挙げられる。
中でも、BPAエポキシハーフアクリレート、BPFエポキシハーフアクリレートが、希釈効果が高くより好ましい。
本発明においては、ラジカル硬化系とカチオン硬化系とを併用させたもの、具体的には、該組成物中に、ラジカル硬化系として(メタ)アクリロイル基とカチオン硬化系としてエポキシ基とが共存した組成物であると、光照射によって、または熱処理によって、エポキシ基はカチオン重合、(メタ)アクリロイル基はラジカル重合して硬化し、基板に対して強固に接着することができるのでなお好ましい。この場合、硬化をより効率よく重合を進めるために、該硬化性組成物中にエポキシ基をカチオン重合させるカチオン重合開始剤を、(メタ)アクリロイル基をラジカル重合させるラジカル重合開始剤を併用するのが好ましい。
本発明のカチオン硬化性接着剤は、塩基性固体物質を併用することで、金属腐食性を更に低下させることができる。
(塩基性固体物質)
本発明で使用する塩基性固体物質は、酸を中和または捕捉する働きを持つ固体の化合物であればいずれも使用することができる。カチオン重合性化合物の重合反応はカチオン重合開始剤から発生した酸により生起するため、酸により重合が十分進んだ後に余分の酸を中和、補足する必要がある。本発明における塩基性固体物質は接着剤に包含した状態で使用するので、カチオン重合を阻害する可能性がある。従って、塩基性固体物質はカチオン重合性化合物に対し実質的に不溶であることが求められる。塩基性固体物質の溶解度はカチオン重合性化合物100質量部に対して0.02質量部以下であることが好ましい。塩基性固体物質の溶解性が高いと、発生した酸が直ちに塩基性固体物質に捕捉されカチオン重合性化合物の重合が進まず接着性能が十分発揮できない。
また塩基性固体物質の粒径は、発生した酸が接着剤から外部に漏洩することを防ぐため細かい方が好ましい。粒子の大きさは物理的な限界があるため、使用する塩基性固体物質の粒子が凝集せず一次粒子のままである場合、0.01〜50μmであることが好ましく、0.01〜5μmが更に好ましく、0.01〜1μmが尚好ましい。使用する塩基性固体物質の粒子が凝集して2次粒子を形成している場合には、2次粒子の大きさが上記の範囲であることが好ましい。また液晶ディスプレイのシール材に塩基性固体物質として使用する場合には、二枚の基板間隔の制限から0.01〜2μmが好ましい。
無機塩基性固体物質として、各種無機塩類( 炭酸塩、リン酸塩、カルボン酸塩等) 、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、塩基性粘土鉱物等、及びこれら無機固体表面が塩基性処理されたもの等が挙げられる。具体的には、無機塩類として炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸亜鉛、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸バリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、金属酸化物として塩基性の、ガラスビーズ、アルミナ( 活性アルミナ) 、ゼオライト、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカゲル、酸化錫、酸化ジルコン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、金属硫化物として塩基性の硫化亜鉛、金属窒化物として塩基性の窒化チタン、粘土鉱物として塩基性のタルク、金属水酸化物として塩基性の水酸化マグネシウム等が挙げられる。
尚、本発明において、塩基性固体物質として、塩基性ガラスビーズ、塩基性酸化チタン、塩基性酸化亜鉛、塩基性シリカゲル、塩基性酸化錫、塩基性酸化ジルコン、塩基性窒化チタン、塩基性硫化亜鉛等は、例えばその前駆体である金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物を有機アミノ基のような塩基性基を持ったシランカップリング剤やヘキサメチルジシラザンなどの窒素化合物で処理して塩基性とすることができる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
有機塩基性固体物質として、塩基性官能基( 例えば、有機アミノ基、窒素原子含有複素環基、弱酸強塩基塩官能基等) を有するモノマーを重合することにより合成されるポリマー類、有機ポリマービーズの表面を塩基性官能基含有化合物でカップリング処理したもの及び該ポリマービーズを前記ポリマー類にてコートしたビーズ類が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。有機塩基性固体物質は各種の方法で合成することができるほか、市販の有機塩基性固体物質を使用することもできる。具体的には、ポリエチレンイミンのエポミン(日本触媒社製) が例示できる。
本発明において、塩基性固体物質としてはタルクなどの塩基性粘土鉱物や、あるいは、塩基性官能基の導入が容易であり、また、表面処理により再生可能であり、十分な表面積を有し、安全性が高く、入手の容易さや取扱いが簡便である点から、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム、ガラスビーズ、アルミナ( 活性アルミナ) 、ゼオライト、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、また塩基性官能基( 例えば、有機アミノ基、窒素原子含有複素環基、弱酸強塩基塩官能基等) を有するポリマー類、有機ポリマービーズの表面を塩基性官能基含有化合物でカップリング処理したもの及び該ポリマービーズを前記ポリマー類にてコートしたビーズ類が好ましい。中でも、タルクなどの塩基性粘度鉱物や、塩基性官能基を導入したシリカが好ましい。
塩基性固体の有する塩基性は、カチオン重合性化合物の硬化反応を阻害することがあるので、強塩基より弱塩基が好ましく、あるいは塩基性固体の表面にある塩基性基の密度が小さい方が好ましい。カチオン重合開始剤の発生した酸がカチオン重合性化合物の硬化反応を十分生ぜしめた後に、残った酸を塩基性固体の塩基が徐々に中和することが望ましいからである。
(その他の成分 シランカップリング剤)
また、本発明のカチオン硬化型液晶シール剤には、接着性を向上させるために、公知慣用のシランカップリング剤を混合することもできる。そのようなシランカップリング剤の中でも、(メタ)アクリロイル基やエポキシ基などの重合性基を有するシランカップリング剤は、ラジカル硬化系またはカチオン硬化系化合物と共重合し、高い接着性を得ることができるため特に好ましい。
重合性基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−エポキシオキシプロピルトリメトキシシラン、等が挙げられる。そのような重合性基を有するシランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学社製の商品名「KBM503」、「KBE503」、「KBM502」、「KBE502」、「KBM5102」、「KBM5103」、「KBM403」等が挙げられる。
前記シランカップリング剤を併用する場合の使用量は、全硬化性組成物量に対して0.1〜10質量%の範囲で使用することが好ましく、1〜5質量%の範囲が特に好ましい。シランカップリング剤の割合が0.1質量%未満では十分な接着効果が得られないことがあり、10質量%を超える量では相分離を起こす可能性がある。より好ましい下限は0.5質量部、より好ましい上限は5質量部である。
(その他の成分)
本発明のカチオン硬化型液晶シール剤には、粘度調整や保存安定性などの目的に応じて、公知慣用の添加剤、充填剤を適宜添加することもできる。
例えば充填剤は、本発明における、カチオン重合性化合物を担持した分散性微小担体の他に適宜配合することができる。充填材の配合により応力分散効果による本発明のシール剤の接着性の改善、及び、線膨張率の改善等の目的で添加される。例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、タルク、ガラスビーズ、セリサイト活性白土、ベントナイト等の無機フィラーやポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機フィラー等が挙げられる。
上記充填剤の配合割合は、特に限定されないが、本発明の分散性微小担体を含めた配合量として、上記硬化性組成物100質量部に対して好ましい下限は1質量部、好ましい上限は100質量部である。1質量部未満であると、充填剤を添加した効果がほとんど得られず、100質量部を超えると、本発明のシール剤の描画性等ハンドリング性を低下させる恐れがある。より好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は50質量部である。
(粘度)
本発明のカチオン硬化型液晶シール剤は、E型粘度計を用いて25℃、2sec−1で測定した粘度が100Pa・s以上であると、後述の滴下工法による液晶表示素子の製造用の液晶シール剤としてより好ましく使用できる。
100Pa・s未満であると、滴下工法により液晶表示素子を製造した際に、透明基板上に形成したシールパターンの形状を保持できず、液晶中にシール剤成分が溶出して液晶汚染が生じてしまうことがある。より好ましい下限は100Pa・sであり、より好ましい上限は5000Pa・sである。5000Pa・sを超えると、本発明のシール剤の描画性が充分でなく、滴下工法による液晶表示素子の製造が困難となることがある。この際の、粘度を測定するE型粘度計としては特に限定されず、例えば、ブルックフィールド社製「DV−III」等を使用することができる。
(液晶シール剤)
本発明のカチオン硬化型液晶シール剤は、液晶パネルを作成する時のシール剤の他、液晶パネルに液晶材料を注入した後、注入口を封止する封止剤として使用することができる。
液晶パネルは、例えば、薄膜トランジスタ、画素電極、配向膜、カラーフィルター、電極等を備えた前面又は背面基板の、どちらか一方の基板面に本発明の光カチオン硬化型液晶シール剤を塗布した後、もう一方の基板を貼りあわせ、該基板の基板面側、あるいは該基板の側面から光を照射して、本発明の液晶パネルシール用光硬化性組成物を硬化させる。次に、得られた液晶セルに液晶を注入後、封止剤で注入口を封止することによって、液晶パネルを作成することができる。
また、液晶パネルは、液晶滴下工法、即ち、2枚の電極付き透明基板の一方に、本発明の光カチオン硬化性液晶シール剤を使用してシールパターンを形成する工程と、液晶の微小滴を前記シールパターン枠内全面に滴下塗布する工程と、他方の透明基板を重ねあわせ前記シールパターンを介して貼り合わせる工程と、前記シールパターンに光照射する工程とをこの順に行うことによって得ることができる。
本発明の光カチオン硬化型液晶シール剤が、紫外線を照射した後直ぐ硬化せず、暫く粘性流体の状態を保った後、硬化するという遅延硬化性を示す場合は、2枚の電極付き透明基板の一方に、本発明の光カチオン硬化性液晶シール剤を使用してシールパターンを形成する工程と、前記シールパターンに光照射する工程と、液晶の微小滴を前記シールパターン枠内全面に滴下塗布する工程と、他方の透明基板を重ねあわせ前記シールパターンを介して貼り合わせる工程とを、この順に行うことによっても得ることができる。
遅延硬化性を示すカチオン硬化型液晶シール剤としては、前記カチオン重合性化合物及び、該化合物と反応遅延剤との組成物が挙げられる。該反応遅延剤としては特に限定されないが、例えば、ポリオール化合物等を用いることができる。上記反応遅延剤を含有することで、本発明のカチオン硬化型液晶シール剤に光を照射、もしくは熱処理した後の可使時間及び硬化時間を制御することができる。上記ポリオール化合物のなかでも、脂肪族ポリオールであることが好ましく、このような脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール等の( ポリ) アルキレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンポリオール、クラウンエーテル等を使用したものが挙げられる。一方の分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の種類は特に限定されず、前述のものが使用出来る。
本発明のカチオン硬化型液晶シール剤を基板面に形成するには、ディスペンサを使用して塗布するか、あるいはスクリーン印刷法により塗布するのが好ましい。その場合、線幅0.08〜2mm、線高さ5〜50μmに塗布するのが、一般的である。
本発明の光カチオン硬化型液晶シール剤を硬化させる為に使用する光は、紫外線又は可視光線が好ましく、中でも、300nm〜400nmの波長の光が好ましい。光源としては、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用することができる。該光源の照度は、500W/m以上であると、硬化が速く好ましい。照射する光量は、積算光量に換算して20000J/m以上であれば良好に硬化させることができる。また、本発明の光カチオン硬化型液晶シール剤は、空気雰囲気下においても良好な光硬化性を示すが、窒素などの不活性ガス雰囲気下で光硬化させると、少ない積算光量で硬化させることができるので、より好ましい。
以下、実施例及び比較例によって本発明を具体的に説明する。なお、接着性、電圧保持率についての評価は次のとおり行った。
(製造例1 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
光カチオン重合開始剤として株式会社ADEKAのアデカオプトマーSP150を用いた。なおSP150は固形分濃度50%のプロピオンカーボネート溶液であり、後述の使用量(質量部)は溶媒を含んだ質量部とした。
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を20質量部のアセトンに加え溶解した。次いで該「SP150」のアセトン溶液に日本アエロジル株式会社製のシリカ「Aerosil300 表面積300m/g」を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。その後、この分散溶液を室温(20〜25℃)にて真空乾燥してアセトンを溜去し、分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤(A)(以後担持光カチオン重合開始剤(A)と称す)を得た。計算上、シリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、0.5g(NV.50質量%なので実質的に0.5質量部)/(1g×300m/g)=1.7×10−3 g/mである。蛍光X線分析装置を用いてシリカとイオウの特性X線の強度比を求め、イオウの含有量から光カチオン重合開始剤の含有量を推定し、本開始剤の含有割合(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)を求めると28質量%であった。従って蛍光X線分析装置から求めた値から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、1.3×10−3 g/mである。
(製造例2 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を16質量部のアセトンと4質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SP150」の溶液に日本アエロジル株式会社製のシリカ「Aerosil300 比表面積300m/g」を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、そのまま室温で真空乾燥を継続した。アセトンが溜去された後は水が凍結された状態のまま真空乾燥されており、いわゆる凍結乾燥を行ったことになる。乾燥後の該シリカ担持光カチオン重合開始剤から細孔外に吸着した開始剤を除去するため以下の洗浄を行った。20質量部の該シリカ担持光カチオン重合開始剤を100質量部の酢酸エチル溶液に分散、撹拌し、遠心分離機で酢酸エチルを除去した。これを合計4回繰り返し、次いで、遠心分離後の該シリカ担持光カチオン重合開始剤を100質量部の超純水中で撹拌し、遠心分離機で水を除去した。これを合計4回繰り返し、遠心分離後のシリカ担持光カチオン重合開始剤を室温で真空乾燥して担持光カチオン重合開始剤(B)を得た。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から光カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)は12質量%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、4.5×10−4 g/mである。
(製造例3 分散性微小担体に担持された熱カチオン重合開始剤の製造方法)
1質量部の熱カチオン重合開始剤「サンエイドSI100L」を16質量部のアセトンと4質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SI100L」の溶液に日本アエロジル株式会社製のシリカ「Aerosil300 比表面積300m/g」を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、そのまま室温で真空乾燥を継続した。アセトンが溜去された後は水が凍結された状態のまま真空乾燥されており、いわゆる凍結乾燥を行ったことになる。乾燥後の該シリカ担持熱カチオン重合開始剤から細孔外に吸着した開始剤を除去するため以下の洗浄を行った。20質量部の該シリカ担持熱カチオン重合開始剤を100質量部の酢酸エチル溶液に分散、撹拌し、遠心分離機で酢酸エチルを除去した。これを合計4回繰り返し、次いで、遠心分離後の該シリカ担持熱カチオン重合開始剤を100質量部の超純水中で撹拌し、遠心分離機で水を除去した。これを合計4回繰り返し、遠心分離後のシリカ担持熱カチオン重合開始剤を室温で真空乾燥して担持熱カチオン重合開始剤(C)を得た。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から熱カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(熱カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+熱カチオン重合開始剤の担持質量)は、9質量%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する熱カチオン重合開始剤の担持量は、3.3×10−4 g/mである。
(製造例4 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
初めにシリカのメソ多孔体であるMCM41を調整した。テンプレートとして7.3質量部の界面活性剤、ドコシルトリメチルアンモニウムクロライド(C22TMACl)を60質量部のイオン交換水に入れ、60℃で完全に溶解してから、10%(w/w)の硫酸水溶液24質量部を添加してa液とした。10質量部の水ガラス(SiO2 ,36−38%,Na2 O,17−19%)および20mlのイオン交換水を入れ、b液とした。a液を60〜65℃に保って激しく撹拌しながら、それにb液を加え、10%(w/w)の硫酸で反応液のpHを8.5に調整し、続いて5〜8時間撹拌した。つぎに、この混合液を250mlのオートクレープに移して105℃で2日〜5日熱処理した。反応液を真空濾過し、粗生成物を約9g得た。粗生成物を45℃で24時間風乾させ、550℃の電気炉で6時間焼成し、テンプレートを除いたメソ多孔体(c)を約4.5g得た。メソ多孔体の細孔径と表面積をN2吸着装置(Autosorb)で測定した。細孔径は4.6nm、比表面積1080m/gであった。
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を16質量部のアセトンと4質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SP150」の溶液に上記のメソ多孔体(c)を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、継続して真空乾燥を行なった。アセトンが溜去された後は水が凍結された状態のまま真空乾燥されており、いわゆる凍結乾燥を行ったことになる。乾燥後のシリカ担持光カチオン重合開始剤から細孔外に吸着した開始剤を除去するため以下の洗浄を行った。20質量部の該シリカ担持光カチオン重合開始剤を酢酸エチル溶液100質量部中で撹拌し、遠心分離機で酢酸エチルを除去した。これを合計4回繰り返し、次いで、遠心分離後のシリカ担持光カチオン重合開始剤を超純水100質量部中で撹拌し、遠心分離機で水を除去した。これを合計4回繰り返し、遠心分離後のシリカ担持光カチオン重合開始剤を室温で真空乾燥して担持光カチオン重合開始剤(D)を得た。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から光カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)は、18質量%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、2.0×10−4 g/mである。
(製造例5 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
2質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を16質量部のアセトンと4質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SP150」の溶液に日本アエロジル株式会社製のシリカ「Aerosil300」を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、そのまま室温で真空乾燥を継続し凍結乾燥した。これを担持光カチオン重合開始剤(E)とする。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から光カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)は、62%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、5.4×10−3 g/mである。
(製造例6 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
0.2質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を16質量部のアセトンと4質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SP150」の溶液に製造例4に記載のMCM41を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、そのまま真空乾燥を継続し凍結乾燥した。これを担持光カチオン重合開始剤(F)とする。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から光カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)は、4質量%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、3.9×10−5 g/mである。
(製造例7 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を16質量部のアセトンと4質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SP150」の溶液に日本アエロジル株式会社製のシリカ「Aerosil OX50 (比表面積50m/g)」を1質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、そのまま真空乾燥を継続し凍結乾燥した。乾燥後の担持光カチオン重合開始剤から細孔外に吸着した開始剤を除去するため以下の洗浄を行った。20質量部の該シリカ担持光カチオン重合開始剤を100質量部の酢酸エチル溶液中で撹拌し、遠心分離機で酢酸エチルを除去した。これを合計4回繰り返し、次いで、遠心分離後のシリカ担持光カチオン重合開始剤を超純水100質量部中で撹拌し、遠心分離機で水を除去した。これを合計4回繰り返し、遠心分離後の担持光カチオン重合開始剤を室温で真空乾燥して担持光カチオン重合開始剤(G)を得た。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から光カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)は、2質量%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、4.1×10−4 g/mである。
(製造例8 分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤の製造方法)
0.02質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を64質量部のアセトンと16質量部の水からなる混合溶媒に加え溶解した。次いで該「SP150」の溶液に製造例4に記載のMCM41を5質量部加え、超音波分散機により溶液中に分散した。この分散溶液を0℃以下に保持したまま真空乾燥してアセトンを溜去し、そのまま真空乾燥を継続し凍結乾燥した。これを担持光カチオン重合開始剤(H)とする。
蛍光X線分析装置を用い、シリカとイオウの特性X線の強度比から光カチオン重合開始剤の含有割合を求めると、(光カチオン重合開始剤の担持質量)/(シリカ+光カチオン重合開始剤の担持質量)は、0.1質量%であった。従ってこの含有割合から計算したシリカに対する光カチオン重合開始剤の担持量は、9.3×10−7 g/mである。
(実施例1)
2質量部の担持光カチオン重合開始剤(A)を22質量部のDIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」に添加し、自転公転式ミキサ−THINKY AR250を用いて混合し、シール剤(A)とした。
この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は2.5質量部であり分散性微小担体は6.5質量部である。
(評価方法 電圧保持率の測定)
シール剤(A)1質量部に20質量部のDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」に加え、120℃で1時間保存した。これを室温に取り出し静置し、液晶とシール剤(A)を相分離させた。上澄みである液晶部分を採取し、電圧保持率を測定した。電圧保持率は、2枚のITO電極付きガラス基板間のGAPが5マイクロメータである液晶セルを用意し、前記上澄みである液晶を注入した液晶セルに、23℃で交流5Vの初期電圧を64マイクロ秒印加し、200ミリ秒、及び2000ミリ秒のフレームタイム前後の電圧比を求め、これに100を乗じて電圧保持率とした。
結果を表1に示す。
(比較例1)
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を22質量部のエポキシモノマー「EXA850crp」に混合し、次いでこれにシリカ「Aerosil300」を1質量部加えて混合し、シール剤(H1)とした。
前記評価方法に従い、電圧保持率を測定した。結果を表1に示す。
(比較例2)
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を22質量部のエポキシモノマー「EXA850crp」に混合し、シール剤(H2)とした。
前記評価方法に従い、電圧保持率を測定した。結果を表1に示す。
(参考例1)
1質量部のエポキシモノマー「EXA850crp」に20質量部の液晶「PA−0211CA033」に加え、120℃で1時間保存した。これを室温に取り出し静置すると、液晶とエポキシモノマーとは相分離し、上澄みの液晶部分を採取した。採取した液晶の電圧保持率を測定した。結果を表1に示す。
(参考例2)
液晶「PA−0211CA033」のみの電圧保持率を測定した。結果を表1に示す。
表1に示した通り、シール剤(A)を用いた実施例1の液晶は、参考例2の液晶のみの同等の電圧保持率を示した。しかしシリカに担持させることなく光カチオン重合開始剤とシリカを別々にエポキシモノマーに加えた比較例1、光カチオン重合開始剤のみを加えた比較例2は参考例2の電圧保持率よりも低下し、光カチオン重合開始剤が液晶に溶出していることが示唆された。
なお、エポキシモノマーのみを加えた参考例1の電圧保持率も、参考例2の液晶のみの電圧保持率よりも低下する。このことから、エポキシモノマー自体も電圧保持率を低下させる因子を含むと示唆される。しかしながら本願の実施例1で示された電圧保持率は参考例1の電圧保持率よりも高く、このことから、本発明の(実施例1の)分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤は、モノマーに存在する不純物等も吸着しうることが示唆される。
Figure 0004924772
(実施例2)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持光カチオン重合開始剤(B)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(B)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は1.1質量部であり分散性微小担体は7.9質量部である。
EHC社製のITO付きガラス基板「RZ−B107N1N」1枚に、早川ゴム社製のスペーサ−「LH11S」の5%エタノール分散液を噴霧した。次に、最終的に得られる液晶パネルのシール剤幅が約1mmとなるよう、もう1枚のITO付きガラス基板にシール剤(B)をディスペンサにより塗布した。シール剤(B)は電極を内側にしてこれを取り囲むように矩形状の描画線となるように塗布した。その後、高圧メタルハライドランプを使用して500W/mの紫外線を20秒間該シール剤(B)部分に照射した。シール剤(B)の硬化反応が終結する前に、矩形状のシール剤(B)内側にDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」を適当量滴下し、スペーサを噴霧したガラス基板と対向させて貼り合わせ液晶パネルを作製した。この液晶パネルを温度60℃、湿度90%の恒温恒湿槽に480時間保持した後、電圧保持率を測定した。電圧保持率は23℃で交流5Vの初期電圧を64マイクロ秒印加し、167ミリ秒のフレームタイム前後の電圧比を求め、これに100を乗じて求めた。結果を表2に示した。
(実施例3)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持熱カチオン重合開始剤(C)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(C)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は0.8質量部であり分散性微小担体は8.2質量部である。
EHC社製のITO付きガラス基板「RZ−B107N1N」1枚に、早川ゴム社製のスペーサ−「LH11S」の5%エタノール分散液を噴霧した。次に、最終的に得られる液晶パネルのシール剤(C)幅が約1mmとなるよう、もう1枚のITO付きガラス基板にシール剤(C)をディスペンサにより塗布した。シール剤(C)は電極を内側にしてこれを取り囲むように矩形状の描画線となるように塗布した。これを120℃で60秒間熱処理した。シール剤(C)の硬化反応が終結する前に、矩形状のシール剤(C)内部にDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」を適当量滴下し、スペーサを噴霧したガラス基板と対向させて貼り合わせ、液晶パネルを作製した。このパネルを120℃で1時間処理してシール剤(C)の硬化を促進した。
実施例2と同様に電圧保持率を測定し、結果を表2に示した。
(実施例4)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持光カチオン重合開始剤(D)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(D)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は1.6質量部であり分散性微小担体は7.4質量部である。
実施例2と同様に電圧保持率を測定し、結果を表2に示した。
(実施例5)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持光カチオン重合開始剤(E)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(E)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は5.6質量部であり分散性微小担体は3.4質量部である。
実施例2と同様に電圧保持率を測定し、結果を表2に示した。
(実施例6)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持光カチオン重合開始剤(F)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(F)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は0.4質量部であり分散性微小担体は8.6質量部である。
実施例2と同様に電圧保持率を測定し、結果を表2に示した。
(実施例7)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持光カチオン重合開始剤(G)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(G)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は0.2質量部であり分散性微小担体は8.8質量部である。
実施例2と同様に電圧保持率を測定し、結果を表2に示した。
(実施例8)
DIC株式会社製のエポキシモノマー「EXA850crp」を70部、ナガセケムテックス社製の1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル「デナコールEX−212−L」を30部、信越化学工業株式会社製のシラン系カップリング剤「KBM403」を5部、加えて自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて均一になるまで混合した。次に、9質量部の担持光カチオン重合開始剤(H)を添加して、3本ロールにて混練し、シール剤(H)とした。この時、カチオン重合性化合物100質量部に対してカチオン重合開始剤は0.01質量部であり微小担体は8.8質量部である。
実施例2と同様に電圧保持率を測定し、結果を表2に示した。
Figure 0004924772
(実施例9)
2質量部の担持光カチオン重合開始剤(A)を10質量部のジャパンエポキシレジン株式会社製のエポキシモノマー「エピコート828」、10質量部の「エピコート807」、2.5質量部の三菱化学株式会社「PTMG1000」に添加し、自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて混合し、シール剤(I)とした。
EHC社製のガラス基板RS-B107M1N(ラビング済みの配向膜付き、ITO付き)を2枚用意し、その一方に早川ゴム社製のスペーサ−「LH11S」の5%エタノール分散液を噴霧した。次にもう1枚のガラス基板に、上記のシール剤(I)を、ディスペンサを用いて、基板の外縁部にシール幅約1mmで矩形状に塗布した。その後、高圧メタハラ灯を使用して500W/mの紫外線を40秒間、該シール剤部分に照射した。次いでこの基板上の矩形上シール剤の内側に、真空下でDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」を適当量滴下し、2枚のガラス基板のラビング方向を直交させて貼り合わせセルを作製した。このセルを大気下に戻して基板間の間隔がスペーサのサイズになり、シール剤(I)が遅延硬化するまで1時間放置してTN型の液晶パネルを作製した。
この液晶パネルを2枚の直交する偏光板の間に光学軸を合わせて挟み込み、液晶表示素子を作成した。電圧を印加しない状態で透明に見え明表示となり、電圧を印加するとセルの電極部分が光を通さず暗表示となり、良好な表示状態を示した。
(比較例3)
1質量部の光カチオン重合開始剤「SP150」を10質量部のジャパンエポキシレジン株式会社製のエポキシモノマー「エピコート828」、10質量部の「エピコート807」、2.5質量部の三菱化学株式会社「PTMG1000」に添加し、自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて混合し、シール剤(H3)とした。
シール剤(B)からシール剤(H3)に変更し、それ以外の条件を実施例2と同様にして液晶セルを作製した。即ち、EHC社製のガラス基板RS-B107M1N(ラビング済みの配向膜付き、ITO付き)を2枚用意し、その一方に早川ゴム社製のスペーサ−「LH11S」の5%エタノール分散液を噴霧した。次にもう1枚のガラス基板に、前記シール剤(H3)を、ディスペンサを用いて、基板の外縁部にシール幅約1mmで矩形状に塗布した。その後、高圧メタハラ灯を使用して500W/mの紫外線を40秒間、該シール剤部分に照射した。次いでこの基板上の矩形上シール剤(H3)の内側に、真空下でDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」を適当量滴下し、2枚のガラス基板のラビング方向を直交させて貼り合わせセルを作製した。このセルを大気下に戻して基板間の間隔がスペーサのサイズまで圧縮され、その後シール剤(H3)が遅延硬化するまで1時間放置してTN型の液晶パネルを作製した。
実施例9と同様にこれを2枚の直交する偏光板の間に光学軸を合わせて挟み込み、液晶表示素子を作成した。しかしながら、実施例2とは異なり、電圧を印加しない状態でシール剤の周辺部に不透明な部分が現れ、電圧を印加すると電極部分の一部の暗表示が灰色に見えた。
実施例9と比較例3の比較により本発明の方法で作製したシール剤は、液晶汚染性が少ないことが示された。これはシール剤から漏洩して液晶を汚染する光カチオン重合開始剤の量が少ないためと考えられる。
(参考実験 担持光カチオン重合開始剤の再溶出)
製造例1で得た担持光カチオン重合開始剤(A)1部を、アセトン24部に加えて、超音波洗浄機にて30分振盪し、溶液(B)を作成し、該溶液(B)中に再溶出した光カチオン重合開始剤の量を測定し、「溶出した重合開始剤量」とした。溶出せずに残存した光カチオン重合開始剤量が、シリカに十分な結合力で担持されている重合開始剤量であると評価される。結果を表3に示す。
上記と同じ条件で使用する分散性微小担体、及び担持させる光カチオン重合開始剤の担持量を適宜変更し、その他の担持光カチオン重合開始剤を作製した。同様にして「溶出した重合開始剤量」を測定した。結果を表3に示す。
表3中の、「全重合開始剤量」とは、担持光カチオン重合開始剤(A)、及びその他の光カチオン重合開始剤に使用した光カチオン重合開始剤の質量を表す。従って(溶出した重合開始剤量)/(全重合開始剤量)とは、溶液(B)即ちアセトンに再溶出した光カチオン重合開始剤の質量の割合を示している。
この結果から、使用する分散性微小担体の種類に関わらず、また担持させる光カチオン重合開始剤の担持量に関わらず、30〜60%の光カチオン重合開始剤が溶液(B)に再溶出し、従って70〜40%の光カチオン重合開始剤が十分な結合力でシリカに結合していることが示唆された。
Figure 0004924772
(製造例9 塩基性固体物質(1)の調整)
塩基性固体物質(1)は、ヒュームドシリカの表面に塩基性官能基を導入して作製した。ヒュームドシリカとしては日本アエロジル(株)製のR976Sを使用した。以下に作製条件を説明する。各実施例の組成の質量比は表−1にまとめた。
エチルアルコール1800質量部と水200質量部からなる溶液に、シランカップリング剤であるγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(LS3150、信越化学工業(株))を溶解した。溶解量は表−1に示した。
ヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製のR976S100質量部を該溶液中に浸漬し、超音波分散装置にて10分間混合した。この溶液を150℃に加熱したホットプレート上で1.5時間加熱処理し粉体を得た。
未反応物及び、またはヒュームドシリカ表面に結合していないシランカップリング剤の重合物を除去するため、この粉体100質量部をエチルアルコール2000質量部に分散し超音波処理装置にて10分間振盪した後、遠心分離して粉体を得た。この洗浄を更に2回繰り返した。この粉体を80℃で4hr熱風乾燥し、塩基性固体物質(1)とした。
Figure 0004924772
(実施例10)
実施例4に記載されたシール剤(D)100質量部を用い、これと塩基性固体物質(1)2.5質量部とを自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて混合し、シール剤(J)を得た。
(実施例11)
実施例4に記載されたシール剤(D)100質量部を用い、これと市販のタルク「ミクロライト(竹原化学工業(株)社製)」20質量部とを自転公転式ミキサーTHINKY AR250を用いて混合し、シール剤(K)を得た。
(評価例 抽出水のpH)
接着剤からの抽出水のpH測定は次のとおり行った。接着剤に紫外線を照射した後、接着剤から外部に滲出する光酸発生剤から生じた酸を定量するため、紫外線を照射した接着剤を超純水中に浸漬し、そのpHを測定した。この測定を行なうため、0.5gの上記接着剤を底面積4.2cmのガラス製容器に入れ、ガラス製容器の蓋を取って上方より500W/mの強度の紫外線を20000J/m照射した。その直後、該ガラス製容器に超純水を5g注ぎ、蓋をして80℃に保った恒温槽に1時間静置した後、室温(23℃)まで冷却しpHを測定した。結果を表5に示す。
Figure 0004924772
この結果、抽出水のpHは5以上を示し、塩基性固体物質が光酸発生剤から発生した酸を中和または捕捉したことを示している。
(評価例 電極腐食の促進試験)
実施例10、11のシール剤(J)及び(K)について、電極腐食の促進試験を行った。
前記シール剤(J)及び(K)を、櫛歯電極付セルにアプリケータにて膜厚が10μmになるよう塗布し、紫外線(強度50mW/cm2)を40sec照射して硬化させた。
(櫛歯電極はクロムからなり、電極幅は10μmである。)
櫛歯状の電極は2系統に分かれて対抗しており、互いに櫛歯が入れ子になるように組み合わされ、互いの電極間隔は10μmになっている。電極間に10Vの直流電圧を印加しながら、60℃−90%の環境にて3日間保持し、電極腐食を促進させた後、光学顕微鏡にて電極を観察し、電極腐食の発生しないものには「◎」、僅かな電極腐食の発生したものには「○」、電極腐食の発生したものには「×」とした。結果を表6に示す。
Figure 0004924772

この結果、シール剤(J)及び(K)を使用したものは、電極腐食が全く生じなかった。この結果は塩基性固体物質が光酸発生剤から発生した酸を中和または捕捉したことを示している。
(実施例12(滴下工法方式による液晶パネル作製))
EHC社製のガラス基板RS-B107M1N(ラビング済みの配向膜付き、ITO付き)を2枚用意し、その一方に早川ゴム社製のスペーサ−「LH11S」の5%エタノール分散液を噴霧した。次にもう1枚のガラス基板に、実施例10で作製したシール剤(J)を、ディスペンサを用いて、基板の外縁部にシール幅約1mmで矩形状に塗布し、高圧メタハラ灯を使用して500W/mの紫外線を40秒間、該シール剤部分に照射した。次いでこの基板上の矩形状シール剤の内側に、真空下でDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」を適当量滴下し、2枚のガラス基板のラビング方向を直交させて貼り合わせセルを作製した。このセルを大気圧下に戻してTN型の液晶パネルを作製した。
この液晶パネルを2枚の直交する偏光板の間に光学軸を合わせて挟み込み、液晶表示素子を作成した。電圧を印加しない状態で透明に見え明表示となり、電圧を印加するとセルの電極部分が光を通さず暗表示となり、良好な表示状態を示した。
<電圧保持率試験>
EHC社製のITO付きガラス基板「RZ−B107N1N」1枚に、早川ゴム社製のスペーサ−「LH11S」の5%エタノール分散液を噴霧した。次にもう1枚のITO付きガラス基板に、実施例10、11のシール剤(J)または(K)を、ディスペンサを用いて、基板の外縁部に2箇所の液晶注入口が設けられるように約1mm幅で塗布した後、2枚のガラス基板を対向させて貼り合わせ、窒素雰囲気下、高圧メタルハライドランプを使用して500W/mの紫外線を40秒間、該シール剤部分に照射し、2穴セルを作製した。2穴セルに真空下でDIC株式会社製の液晶「PA−0211CA033」を注入し、前記液晶組成物が紫外線に直接さらされない様にマスクした後、シール剤(J)または(K)で2穴を封止し、窒素雰囲気下、高圧メタルハライドランプを使用して500W/mの紫外線を40秒間再照射して、液晶パネルを作製した。
前記の方法で作成した液晶パネルを、60℃90%RH湿熱暴露試験を行い、120時間後の電圧保持率を測定した。電圧保持率は、24℃で液晶パネルに交流5Vの初期電圧を64マイクロ秒印加し、167ミリ秒のフレームタイム前後の電圧比に100を乗じた値を算出した。
Figure 0004924772

Claims (5)

  1. カチオン重合性化合物と、分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤及び/又は熱カチオン重合開始剤とを含有し、前記分散性微小担体に対する前記光カチオン及び/又は熱カチオン重合開始剤の担持量が、1×10−6g/m〜1g/mの範囲であることを特徴とするカチオン硬化型液晶シール剤。
  2. 前記分散性微小担体に担持された光カチオン重合開始剤及び/又は熱カチオン重合開始剤を、前記カチオン重合性化合物に対し1〜30質量%含む請求項1に記載のカチオン硬化型液晶シール剤。
  3. 前記分散性微小担体の表面積が1〜5000m /gの範囲である請求項1又は2に記載のカチオン硬化型液晶シール剤。
  4. 塩基性固体物質を含有する請求項1〜のいずれかに記載のカチオン硬化型液晶シール剤。
  5. 互いに対向する二つの基板と、前記基板間に設けられたシール剤と、前記シール材に囲まれた封止領域に封入された液晶とを備え、前記シール剤として請求項1〜4のいずれかに記載のカチオン硬化型液晶シール剤を使用することを特徴とする液晶表示素子。
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