JP2004339341A - シール剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速描画性と耐液晶汚染性に共に優れたシール剤組成物を提供する。
【解決手段】a)アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、b)エポキシ樹脂と、c)光重合開始剤と、d)エポキシ硬化剤とを必須成分とする組成物全体に対し、水分含有量が0.01〜0.3重量%であるシール剤組成物である。
【選択図】 なし
【解決手段】a)アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、b)エポキシ樹脂と、c)光重合開始剤と、d)エポキシ硬化剤とを必須成分とする組成物全体に対し、水分含有量が0.01〜0.3重量%であるシール剤組成物である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シール剤組成物に関し、特に高品位の液晶表示装置の枠シール剤に用いて好適なシール剤組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、液晶表示装置がますます普及している。この液晶表示装置は、電極パターンを形成した一対の液晶用ガラス基板に液晶を封入し、ガラス基板間に電圧を印加することで表示動作を行うものである。そして、一般には、一方のガラス基板の縁部に枠シール剤を塗布して各ガラス基板を対向させて貼り合わせ、枠シール剤を硬化させた後、枠シール剤の一部を欠如させた液晶注入孔から液晶を注入、封孔することで製造される。
【0003】
このような液晶表示装置の枠シール剤としては、従来、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化型接着剤が用いられたが、液晶表示装置の大型化、高品位化に伴い、問題が生じてきている。つまり、エポキシ樹脂の場合、高温で数時間の硬化処理が必要となるため、ガラス基板が大きくなるほど熱歪み等の問題が顕著になってきた。そこで、光硬化機能と熱硬化機能を併せ持つ樹脂を用いることで、かかる問題を解消し、さらに硬化処理を短時間で行える技術が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5ー295087号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術の場合、アクリル(メタクリル)酸エステルとエポキシ樹脂の混合物を用いているために、組成物の粘度が高くなって作業性が悪くなるという問題がある。このため低粘度原料の使用や、希釈剤などを使って粘度を下げる対策が考えられているが、このような対策を行うと液晶に対し悪影響(シール剤と接触した液晶の配向を乱す等)を及ぼすことが懸念される。その結果、作業性に優れた枠シール剤を開発するには至っていない。特に、液晶表示装置のガラス基板が大型化すると、生産性向上の観点からシール剤の塗布速度の高速化(高速描画)が要求されるので、低粘度で作業性の優れたシール剤組成物の供給がますます要求される。
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、微量の水分を含有させることで、低粘度化と耐液晶汚染性の両方を満足するシール剤組成物を見出した。従って、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、低粘度で高速描画性に優れるとともに耐液晶汚染性にも優れたシール剤組成物の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明によれば、a)アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、b)エポキシ樹脂と、c)光重合開始剤と、d)エポキシ硬化剤とを必須成分とする組成物全体に対し、水分含有量が0.01〜0.3重量%であるシール剤組成物が提供される。
このようにすると、シール剤組成物に適度の水分が含有されているために、低粘度化と耐液晶汚染性を両立させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るシール剤組成物の実施の形態について説明する。
【0009】
[樹脂組成物]
本実施形態のシール剤組成物は、アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ硬化剤とを必須成分とする。
【0010】
アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂は、エポキシ基とアクリル酸(又はメタクリル酸)とを反応して得られる反応生成物である。そして、エポキシ基とアクリル酸(又はメタクリル酸)の比率に応じ、エポキシ基の一部がアクリル化(又はメタクリル化)したエポキシ樹脂(部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂や、エポキシ基の全部が完全にアクリル化(又はメタクリル化)したエポキシ樹脂(完全アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂が生成する。又、部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂と完全アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂の混合物が生成する場合もある。ここで、上記部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とアクリル酸(メタクリル酸)とを反応させた際に、エポキシ樹脂のエポキシ基のうち一部が開環してアクリル化(メタクリル化)するが、1以上のエポキシ基が開環せずに残ったものをいう。
上記アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂は、具体的には例えば次のようにして得られる。まず、エポキシ樹脂とアクリル酸(メタクリル酸)を混ぜ、常法に従って、塩基性触媒の存在下で両者を反応させる。混合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基2当量に対し、アクリル酸(メタクリル酸)のカルボン酸基0.5〜2当量となるようにすればよい。エポキシ基に対するアクリル酸(メタクリル酸)の混合割合を変更することで、部分アクリル化(メタクリル化)の度合(すなわち、エポキシ基の開環によるアクリル基の付加数)を自由に変えることができる。通常、反応生成物中における部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂の比率を、シール剤組成物全体に対し40〜80%程度とすると光硬化性や熱硬化後の接着性が向上するので望ましい。
【0011】
完全アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂は、上記反応の際に、エポキシ樹脂のエポキシ基のすべてが開環してアクリル化(メタクリル化)したものをいう。例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合、一分子中に2個のアクリル基(メタクリル基)が結合した樹脂が相当する。
【0012】
又、上記反応によっても、エポキシ基が全くアクリル化(又はメタクリル化)しないままのエポキシ樹脂が残存する場合もある。このような未反応(未硬化)のエポキシ樹脂も本発明における組成物に含まれる。但し、未反応のエポキシ樹脂が残存しない場合、あるいは未反応のエポキシ樹脂に加え、別に新たにエポキシ樹脂を添加して組成物としてもよい。
【0013】
反応に用いるエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型のエポキシ樹脂である、エピコート828、834、1001、1004(ジャパンエポキシ株式会社製)、エピクロン850、850CRP、860,4055(大日本インキ化学工業株式会社製)が挙げられる。これらのうち、特に、エピクロン850CRPが高純度かつ低粘度であるので望ましい。又、ノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等も使用でき、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EOCN−1020、1025,102(日本化薬株式会社製)を例示することができる。さらに、脂環式エポキシ樹脂なども使用可能である。これらのエポキシ樹脂は、精製して高純度化したものを用いるのが望ましい。
【0014】
又、上記エポキシ樹脂に対し、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、又はこれらのオリゴマーを反応させることができ、これによりエポキシ樹脂を低粘度化することができる。なお、上記モノマーやオリゴマーは、上記エポキシ樹脂をアクリル化(メタクリル化)するために既に述べたアクリル酸(メタクリル酸)とは別のものであり、アクリル化(メタクリル化)反応に先立ち、あるいはその後に用いられる。上記モノマーやオリゴマーとしては、具体的には2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂を生成するための原料(上記エポキシ樹脂、アクリル酸、メタクリル酸や、後述するその他の添加剤)は、液晶に対する汚染を防止するため、水洗等の精製処理を行ったほうが望ましい。
【0016】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、上記樹脂組成物におけるアクリル基やメタクリル基を光硬化させるためのものであり、具体的にはベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタ一ル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン等を挙げることができる。
【0017】
[エポキシ硬化剤]
エポキシ硬化剤は、上記アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂、及びアクリル化(メタクリル化)していないエポキシ樹脂を硬化させるものである。好ましくは、主剤であるエポキシ樹脂と硬化剤を混ぜたものが一液型(室温で反応せず、高温に加熱すると反応するような硬化剤を主剤に混ぜたものをいう)となるよう、加熱硬化型であって、低温かつ短時間硬化の可能なものをエポキシ硬化剤に用いる。具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン類、ジシアンジアミド、イミダゾール誘導体、および有機酸ジヒドラジド等が例示される。特に本発明においては、上記有機酸ジヒドラジドのうち特殊有機酸ジヒトラジドと称されるものを用いるのが好ましく、具体的には、アミキュア−VDH、アミキュア−LDH、アミキュア−UDH(以上、味の素株式会社製の商品名)が好ましい。
【0018】
上記硬化剤は、常温で固体のものがほとんどであるため、できるだけ微粉砕して使用するとよい。この場合、粉末の平均粒度を10μm以下、望ましくは5μm以下とするのが好ましい。平均粒度が10μm以上であると、光硬化した後の熱硬化反応が均一に進行しないことがあり、液晶汚染が生じる原因ともなる。
【0019】
前記光重合開始剤は、樹脂組成物(アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂とを合計したもの、以下、「樹脂組成物」と称する)に対し、0.5〜3重量%の範囲で配合される。又、エポキシ硬化剤は、上記樹脂組成物に対し、3〜25重量%の範囲で配合される。
【0020】
[その他の成分]
本実施形態のシール剤組成物には、上記必須成分に加え、さらにその他の成分として、無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤としては、具体的には、合成シリカ、タルク等を挙げることができる。特に、平均粒径5μm以下、好ましくは平均粒径3μm以下、さらに好ましくは平均粒径1μm以下の球状シリカやタルクを使用するのがよい。平均粒径が5μmを超えると、基板のシールギャップ(対向するガラス基板の間隔)より大きくなり、基板に傷を付ける場合がある。代表的な球状シリカとしては、SO32、SO25(アドマテックス株式会社製の商品名)があげられる。無機充填剤の配合量は、前記樹脂組成物、前記光重合開始剤、及び前記エポキシ硬化剤の合計量100重量部に対し、0〜50重量部とすることができる。配合量が50重量部を超えると、得られた組成物の粘度が高くなり高速で描画(塗工)できなくなるおそれがある。より好ましくは、無機充填剤の配合量を5〜30重量部とする。
【0021】
上記無機充填剤を予めシランカップリング剤で表面処理すると、得られたシール剤の強度やシール剤とガラス基板等の対象物との接着性が向上し、さらに、高温高湿下においてもこれらの強度や接着性が低下しないので望ましい。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0022】
又、上記必須成分に加え、組成物のチキソ性を制御するため、シリカ微粉末やアエロジルのような噴霧シリカ、接着性を改良するための各種シランカップリング剤、熱可塑性樹脂、及びガラス基板間の所定のギャップを確保するためのスペーサー等を配合してもよい。
【0023】
上記した必須成分やその他の成分は、液晶汚染を低減するため、高純度化されたものを使用する。
【0024】
[水分]
以上のような各成分を含む本発明のシール剤組成物は、組成物全体に対し、0.01〜0.3重量%の割合の水分を含む。従来、水分は液晶汚染の原因であると考えられ、シール剤組成物から除去されていたが、本発明によれば、水分を上記範囲に管理すれば液晶を汚染せずにシール剤組成物の粘度を低減できることが見出された。ここで、水分含有量が0.01重量%未満であると、シール剤組成物の粘度を十分に低下させることができず高速描画性が悪化する。一方、水分含有量が0.3重量%を超えると、粘度は非常に低くなるが、液晶を汚染させる度合が大きくなる。好ましくは、水分含有量を0.01〜0.2重量%とする。シール剤組成物の好適な粘度範囲は、350Pa・s以下であり、より好ましくは300〜150Pa・s、さらに好ましくは250〜180Pa・sである。
【0025】
上記水分をシール剤組成物に含有させる方法としては、水を組成物又は樹脂組成物に直接添加してもよいが、例えば湿潤雰囲気に組成物又は樹脂組成物を置いて水分を吸湿させることが好ましい。湿潤雰囲気としては、25℃、60%RH程度の雰囲気が例示され、又、上記水分をシール剤組成物の各原料に吸湿させ、吸湿後の原料を混合して組成物としてもよく、各原料を配合したシール剤組成物の最終製品に吸湿させてもよい。又、用いる水は、蒸留精製して不純物を除去したものが好ましい。
【0026】
そして、各原料を精密に秤量したのち、通常の混練装置を用い混合することで、シール剤組成物を得ることができる。得られたシール剤組成物は、例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)のガラス面等の面シール剤、CCD(電荷結合素子)、イメージセンサーなどのガラスシール剤、及び半導体装置の絶縁保護材料として使用することができる。
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。又、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0028】
【実施例】
実施例1.
(1)部分メタクリル化エポキシ樹脂を含む樹脂組成物の合成
高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン−850CRP、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名)100重量部、メタクリル酸25重量部、トルエン90重量部、及びトリフェニルホスフィン1.0重量部を混合し、100℃で6時間加熱しながら攪拌して部分付加反応物を得た。反応後の液をトルエンで希釈した後、純水で繰り返し洗浄することで電導度が7μs/cmの反応生成物を得た。この溶液をろ過後、減圧下70℃で濃縮してトルエンを完全除去し、反応生成物を精製した。
反応生成物をGPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィ)分析したところ、20%が未反応のビスフェノールA型エポキシ樹脂、52%が部分メタクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、28%が完全にメタクリル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる樹脂組成物Mであった。
(2)シール剤組成物の製造
上記した樹脂組成物Mを高湿条件下(60℃、95%RH)に放置し、0.13%の水分を吸湿させた。次に、この樹脂組成物92部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部、エポキシ硬化剤(商品名アミキュア−VDH)19部、無機充填剤(SO25H、株式会社アドマテックス製の商品名)40部、及びシランカップリング剤(KBM403、信越化学株式会社製の商品名)1.5部を配合し、混練装置を用いて充分に混練し、シール剤組成物を製造した。なお、上記無機充填剤はシランカップリング剤(上記KBM403)で表面処理したものを用いた。
【0029】
実施例2.
上記した樹脂組成物Mを上記高湿条件下に放置し、0.3%の水分を吸湿させたこと以外は、実施例1と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0030】
実施例3.
上記した樹脂組成物Mを上記高湿条件下に放置し、0.03%の水分を吸湿させたこと以外は、実施例1と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0031】
実施例4.
(1)部分アクリル化エポキシ樹脂を含む樹脂組成物の合成
高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン−850CRP、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名)100重量部、アクリル酸25重量部、トルエン90重量部、及びトリフェニルホスフィン1.0重量部を混合し、100℃で6時間加熱しながら攪拌して部分付加反応物を得た。反応後の液をトルエンで希釈した後、純水で繰り返し洗浄することで電導度が8.5μs/cmの反応生成物を得た。この溶液をろ過後、減圧下70℃で濃縮してトルエンを完全除去し、反応生成物を精製した。
反応生成物をGPC分析したところ、12%が未反応のビスフェノールA型エポキシ樹脂、50%が部分アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、38%が完全にアクリル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる樹脂組成物Aであった。
(2)シール剤組成物の製造
上記した樹脂組成物Aを上記高湿条件下に放置し、0.13%の水分を吸湿させた。次に、この樹脂組成物92部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部、エポキシ硬化剤(商品名アミキュア−VDH)13.4部、無機充填剤(SO25H、株式会社アドマテックス製の商品名)40部、及びシランカップリング剤(KBM403、信越化学株式会社製の商品名)1.5部を配合し、混練装置を用いて充分に混練し、シール剤組成物を製造した。なお、上記無機充填剤はシランカップリング剤(上記KBM403)で表面処理したものを用いた。
【0032】
実施例5.
上記各成分に加え、純水0.3部を配合し、混練したこと以外は、実施例4と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0033】
比較例1.
上記した樹脂組成物Mを高湿条件下に放置せず、水分を吸湿させなかったこと、この樹脂組成物M、上記光重合開始剤、上記エポキシ硬化剤、及び上記無機充填剤を五酸化リンの入ったデシケータ中にそれぞれ放置して脱水処理したものを配合し、混練したこと以外は、実施例1と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0034】
比較例2.
上記した樹脂組成物Aを高湿条件下に放置せず、水分を吸湿させなかったこと、この樹脂組成物A、上記光重合開始剤、上記エポキシ硬化剤、及び上記無機充填剤を五酸化リンの入ったデシケータ中にそれぞれ放置して脱水処理し、これらの成分にさらに上記純水0.7部を配合し、混練したこと以外は、実施例4と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0035】
評価
得られた各シール剤組成物について下記特性を評価した。
【0036】
(1)粘度
各シール剤組成物について、JIS−Z8803に準じて、E型粘度計を用い、測定温度25℃における2分経過後の値を測定した。
【0037】
(2)水分含有量
カールフィフィッシャー水分測定装置(MKC−510N、京都電子工業株式会社製、電量滴定法による検出限界1ppm)を用い、10gの試料について水分含有量を測定した。
【0038】
(3)耐液晶汚染性(比抵抗値による評価)
各シール剤組成物の液晶汚染性を評価する方法として、以下のようにして各シール剤組成物により液晶を処理し、その液晶の比抵抗値を測定した。
a)液晶の処理
まず、透明バイアル瓶(容量3ml)に各シール剤組成物0.5gを入れ、次に液晶(MLC−6267−000、メルク製の商品名)2.0gを入れ、25℃で2時間放置した。次に、紫外線照射装置(ウシオ電機製のスポットキュア装置)を用い、このバイアル瓶にUV照射(照度100mW/cm2、光量2.5J/cm2)を施した。さらに、このバイアル瓶を120℃の熱風循環式恒温槽に1時間放置後、室温に戻し、処理後の液晶をデカンテーションしてサンプル瓶に採った(この液晶を「処理済液晶」と称する)。なお、ブランクとして、各シール剤組成物を加えずに上記と同様な手順で液晶を処理した(この液晶を「ブランク液晶」と称する)。
b)液晶の比抵抗値の測定
比抵抗測定装置(エレクトロ・メーターR8340A、アドバンテスト製、液体抵抗試料箱の型番R12707)を用い、液体電極に上記処理済液晶及びブランク液晶をそれぞれ1ml採取し、印加電圧0.5Vとし、1分経過後の比抵抗値(Ω・cm)を測定した。測定温度は25℃とした。ブランク液晶の比抵抗値に対する処理済液晶の比抵抗値の比を計算し、その値に基づいて以下の評価を行った。
○:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の比が0.5オーダー未満であり、汚染性については問題がない。なお、1オーダーとは、上記比が0.1である、つまり、処理済液晶の比抵抗値がブランク液晶の比抵抗値より1桁小さいことをいい、これを指数で表したとき10−1となることから「1オーダー」と称する。又、0.5オーダーとは上記比が0.5であり、これを指数で表すと5×10−1となる。又、上記比の最大値は1であるので、上記比が0.5オーダー未満とは、この比が0.5〜1であることを示す。
△:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の比が0.5〜1オーダーであり、汚染性にやや問題がある。つまり、上記比が0.1〜0.5であることを示す。
×:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の比が1オーダーを越えており、汚染性に問題がある。つまり、上記比が0.1未満であることを示す。
【0039】
(4)耐液晶汚染性(液晶の配向性による評価)
各シール剤組成物の液晶汚染性を評価する方法として、以下のようにして試験片を作製し、液晶の配向性を観察した。
a)シール剤組成物の前処理
各シール剤100部に対し、スペーサーとなるガラスファイバー(直径5μmの短繊維)1重量%を配合し、真空攪拌脱泡装置で分散、脱泡を行った後、この混合物をシリンジに分取した。
b)試験片の作製
清浄なガラス基板上に上記前処理を施したシール剤組成物を点塗布した後、液晶をこのシール剤組成物上に滴下し、その上から別のガラス基板を重ね合わせた。各ガラス基板間に9.8kPaの荷重を1時間かけた後、UV照射(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2)を施し、次いで120℃×1時間の条件でシール剤組成物を熱硬化させ、評価用試験片を作製した。シール剤と液晶との界面における液晶の配向不良を偏光顕微鏡を用い観察した。
【0040】
(5)高速描画性
ディスペンサーに各シール剤組成物を分取した後、ガラス基板上にこのディスペンサーを用いて線を描き(描画速度60mm/sec、線幅300μm、線高さ50μm)、線幅の乱れを観察した。線が蛇行したり、線幅又は線高さのいずれかが上記値から20%以上外れたものを描画性不良とし、×と評価した。それ以外のものを○と評価した。
また、描画したシール剤組成物の上にガラス基板を重ね、UV照射(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2を施し、次いで120℃×1時間の条件でシール剤組成物を熱硬化させ、シール剤中のボイドの有無を光学顕微鏡にて観察した。
【0041】
得られたシール剤組成物の構成、及び評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、0.01〜0.3重量%の水分を含む各実施例は、いずれも、液晶汚染を生じることがなく、高速描画性に優れ、又、高速描画時のボイドの発生も見られなかった。
【0044】
一方、水分を含有しない比較例1の場合、高速描画性が低下した。又、水分含有量が0.3重量%を超えた比較例2の場合、液晶汚染が生じ、又、高速描画時にボイドが発生した。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明のシール剤組成物は、高速描画性と耐液晶汚染性に共に優れたものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シール剤組成物に関し、特に高品位の液晶表示装置の枠シール剤に用いて好適なシール剤組成物に関する。
【0002】
【従来技術】
近年、液晶表示装置がますます普及している。この液晶表示装置は、電極パターンを形成した一対の液晶用ガラス基板に液晶を封入し、ガラス基板間に電圧を印加することで表示動作を行うものである。そして、一般には、一方のガラス基板の縁部に枠シール剤を塗布して各ガラス基板を対向させて貼り合わせ、枠シール剤を硬化させた後、枠シール剤の一部を欠如させた液晶注入孔から液晶を注入、封孔することで製造される。
【0003】
このような液晶表示装置の枠シール剤としては、従来、エポキシ樹脂を主体とする熱硬化型接着剤が用いられたが、液晶表示装置の大型化、高品位化に伴い、問題が生じてきている。つまり、エポキシ樹脂の場合、高温で数時間の硬化処理が必要となるため、ガラス基板が大きくなるほど熱歪み等の問題が顕著になってきた。そこで、光硬化機能と熱硬化機能を併せ持つ樹脂を用いることで、かかる問題を解消し、さらに硬化処理を短時間で行える技術が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平5ー295087号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この技術の場合、アクリル(メタクリル)酸エステルとエポキシ樹脂の混合物を用いているために、組成物の粘度が高くなって作業性が悪くなるという問題がある。このため低粘度原料の使用や、希釈剤などを使って粘度を下げる対策が考えられているが、このような対策を行うと液晶に対し悪影響(シール剤と接触した液晶の配向を乱す等)を及ぼすことが懸念される。その結果、作業性に優れた枠シール剤を開発するには至っていない。特に、液晶表示装置のガラス基板が大型化すると、生産性向上の観点からシール剤の塗布速度の高速化(高速描画)が要求されるので、低粘度で作業性の優れたシール剤組成物の供給がますます要求される。
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、微量の水分を含有させることで、低粘度化と耐液晶汚染性の両方を満足するシール剤組成物を見出した。従って、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、低粘度で高速描画性に優れるとともに耐液晶汚染性にも優れたシール剤組成物の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明によれば、a)アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、b)エポキシ樹脂と、c)光重合開始剤と、d)エポキシ硬化剤とを必須成分とする組成物全体に対し、水分含有量が0.01〜0.3重量%であるシール剤組成物が提供される。
このようにすると、シール剤組成物に適度の水分が含有されているために、低粘度化と耐液晶汚染性を両立させることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るシール剤組成物の実施の形態について説明する。
【0009】
[樹脂組成物]
本実施形態のシール剤組成物は、アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂と、光重合開始剤と、エポキシ硬化剤とを必須成分とする。
【0010】
アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂は、エポキシ基とアクリル酸(又はメタクリル酸)とを反応して得られる反応生成物である。そして、エポキシ基とアクリル酸(又はメタクリル酸)の比率に応じ、エポキシ基の一部がアクリル化(又はメタクリル化)したエポキシ樹脂(部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂や、エポキシ基の全部が完全にアクリル化(又はメタクリル化)したエポキシ樹脂(完全アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂が生成する。又、部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂と完全アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂の混合物が生成する場合もある。ここで、上記部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂とアクリル酸(メタクリル酸)とを反応させた際に、エポキシ樹脂のエポキシ基のうち一部が開環してアクリル化(メタクリル化)するが、1以上のエポキシ基が開環せずに残ったものをいう。
上記アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂は、具体的には例えば次のようにして得られる。まず、エポキシ樹脂とアクリル酸(メタクリル酸)を混ぜ、常法に従って、塩基性触媒の存在下で両者を反応させる。混合割合は、エポキシ樹脂のエポキシ基2当量に対し、アクリル酸(メタクリル酸)のカルボン酸基0.5〜2当量となるようにすればよい。エポキシ基に対するアクリル酸(メタクリル酸)の混合割合を変更することで、部分アクリル化(メタクリル化)の度合(すなわち、エポキシ基の開環によるアクリル基の付加数)を自由に変えることができる。通常、反応生成物中における部分アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂の比率を、シール剤組成物全体に対し40〜80%程度とすると光硬化性や熱硬化後の接着性が向上するので望ましい。
【0011】
完全アクリル化(メタクリル化)エポキシ樹脂は、上記反応の際に、エポキシ樹脂のエポキシ基のすべてが開環してアクリル化(メタクリル化)したものをいう。例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた場合、一分子中に2個のアクリル基(メタクリル基)が結合した樹脂が相当する。
【0012】
又、上記反応によっても、エポキシ基が全くアクリル化(又はメタクリル化)しないままのエポキシ樹脂が残存する場合もある。このような未反応(未硬化)のエポキシ樹脂も本発明における組成物に含まれる。但し、未反応のエポキシ樹脂が残存しない場合、あるいは未反応のエポキシ樹脂に加え、別に新たにエポキシ樹脂を添加して組成物としてもよい。
【0013】
反応に用いるエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型又はビスフェノールF型のエポキシ樹脂である、エピコート828、834、1001、1004(ジャパンエポキシ株式会社製)、エピクロン850、850CRP、860,4055(大日本インキ化学工業株式会社製)が挙げられる。これらのうち、特に、エピクロン850CRPが高純度かつ低粘度であるので望ましい。又、ノボラック型エポキシ樹脂やクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等も使用でき、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、EOCN−1020、1025,102(日本化薬株式会社製)を例示することができる。さらに、脂環式エポキシ樹脂なども使用可能である。これらのエポキシ樹脂は、精製して高純度化したものを用いるのが望ましい。
【0014】
又、上記エポキシ樹脂に対し、アクリル酸エステルモノマー、メタクリル酸エステルモノマー、又はこれらのオリゴマーを反応させることができ、これによりエポキシ樹脂を低粘度化することができる。なお、上記モノマーやオリゴマーは、上記エポキシ樹脂をアクリル化(メタクリル化)するために既に述べたアクリル酸(メタクリル酸)とは別のものであり、アクリル化(メタクリル化)反応に先立ち、あるいはその後に用いられる。上記モノマーやオリゴマーとしては、具体的には2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂を生成するための原料(上記エポキシ樹脂、アクリル酸、メタクリル酸や、後述するその他の添加剤)は、液晶に対する汚染を防止するため、水洗等の精製処理を行ったほうが望ましい。
【0016】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、上記樹脂組成物におけるアクリル基やメタクリル基を光硬化させるためのものであり、具体的にはベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタ一ル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン等を挙げることができる。
【0017】
[エポキシ硬化剤]
エポキシ硬化剤は、上記アクリル(メタクリル)変性エポキシ樹脂、及びアクリル化(メタクリル化)していないエポキシ樹脂を硬化させるものである。好ましくは、主剤であるエポキシ樹脂と硬化剤を混ぜたものが一液型(室温で反応せず、高温に加熱すると反応するような硬化剤を主剤に混ぜたものをいう)となるよう、加熱硬化型であって、低温かつ短時間硬化の可能なものをエポキシ硬化剤に用いる。具体的には、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等の芳香族アミン類、ジシアンジアミド、イミダゾール誘導体、および有機酸ジヒドラジド等が例示される。特に本発明においては、上記有機酸ジヒドラジドのうち特殊有機酸ジヒトラジドと称されるものを用いるのが好ましく、具体的には、アミキュア−VDH、アミキュア−LDH、アミキュア−UDH(以上、味の素株式会社製の商品名)が好ましい。
【0018】
上記硬化剤は、常温で固体のものがほとんどであるため、できるだけ微粉砕して使用するとよい。この場合、粉末の平均粒度を10μm以下、望ましくは5μm以下とするのが好ましい。平均粒度が10μm以上であると、光硬化した後の熱硬化反応が均一に進行しないことがあり、液晶汚染が生じる原因ともなる。
【0019】
前記光重合開始剤は、樹脂組成物(アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂とを合計したもの、以下、「樹脂組成物」と称する)に対し、0.5〜3重量%の範囲で配合される。又、エポキシ硬化剤は、上記樹脂組成物に対し、3〜25重量%の範囲で配合される。
【0020】
[その他の成分]
本実施形態のシール剤組成物には、上記必須成分に加え、さらにその他の成分として、無機充填剤を配合してもよい。無機充填剤としては、具体的には、合成シリカ、タルク等を挙げることができる。特に、平均粒径5μm以下、好ましくは平均粒径3μm以下、さらに好ましくは平均粒径1μm以下の球状シリカやタルクを使用するのがよい。平均粒径が5μmを超えると、基板のシールギャップ(対向するガラス基板の間隔)より大きくなり、基板に傷を付ける場合がある。代表的な球状シリカとしては、SO32、SO25(アドマテックス株式会社製の商品名)があげられる。無機充填剤の配合量は、前記樹脂組成物、前記光重合開始剤、及び前記エポキシ硬化剤の合計量100重量部に対し、0〜50重量部とすることができる。配合量が50重量部を超えると、得られた組成物の粘度が高くなり高速で描画(塗工)できなくなるおそれがある。より好ましくは、無機充填剤の配合量を5〜30重量部とする。
【0021】
上記無機充填剤を予めシランカップリング剤で表面処理すると、得られたシール剤の強度やシール剤とガラス基板等の対象物との接着性が向上し、さらに、高温高湿下においてもこれらの強度や接着性が低下しないので望ましい。シランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0022】
又、上記必須成分に加え、組成物のチキソ性を制御するため、シリカ微粉末やアエロジルのような噴霧シリカ、接着性を改良するための各種シランカップリング剤、熱可塑性樹脂、及びガラス基板間の所定のギャップを確保するためのスペーサー等を配合してもよい。
【0023】
上記した必須成分やその他の成分は、液晶汚染を低減するため、高純度化されたものを使用する。
【0024】
[水分]
以上のような各成分を含む本発明のシール剤組成物は、組成物全体に対し、0.01〜0.3重量%の割合の水分を含む。従来、水分は液晶汚染の原因であると考えられ、シール剤組成物から除去されていたが、本発明によれば、水分を上記範囲に管理すれば液晶を汚染せずにシール剤組成物の粘度を低減できることが見出された。ここで、水分含有量が0.01重量%未満であると、シール剤組成物の粘度を十分に低下させることができず高速描画性が悪化する。一方、水分含有量が0.3重量%を超えると、粘度は非常に低くなるが、液晶を汚染させる度合が大きくなる。好ましくは、水分含有量を0.01〜0.2重量%とする。シール剤組成物の好適な粘度範囲は、350Pa・s以下であり、より好ましくは300〜150Pa・s、さらに好ましくは250〜180Pa・sである。
【0025】
上記水分をシール剤組成物に含有させる方法としては、水を組成物又は樹脂組成物に直接添加してもよいが、例えば湿潤雰囲気に組成物又は樹脂組成物を置いて水分を吸湿させることが好ましい。湿潤雰囲気としては、25℃、60%RH程度の雰囲気が例示され、又、上記水分をシール剤組成物の各原料に吸湿させ、吸湿後の原料を混合して組成物としてもよく、各原料を配合したシール剤組成物の最終製品に吸湿させてもよい。又、用いる水は、蒸留精製して不純物を除去したものが好ましい。
【0026】
そして、各原料を精密に秤量したのち、通常の混練装置を用い混合することで、シール剤組成物を得ることができる。得られたシール剤組成物は、例えば液晶や有機EL(Electro Luminescence)のガラス面等の面シール剤、CCD(電荷結合素子)、イメージセンサーなどのガラスシール剤、及び半導体装置の絶縁保護材料として使用することができる。
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。又、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「重量部」及び「重量%」を表す。
【0028】
【実施例】
実施例1.
(1)部分メタクリル化エポキシ樹脂を含む樹脂組成物の合成
高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン−850CRP、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名)100重量部、メタクリル酸25重量部、トルエン90重量部、及びトリフェニルホスフィン1.0重量部を混合し、100℃で6時間加熱しながら攪拌して部分付加反応物を得た。反応後の液をトルエンで希釈した後、純水で繰り返し洗浄することで電導度が7μs/cmの反応生成物を得た。この溶液をろ過後、減圧下70℃で濃縮してトルエンを完全除去し、反応生成物を精製した。
反応生成物をGPC(ゲル パーミエーション クロマトグラフィ)分析したところ、20%が未反応のビスフェノールA型エポキシ樹脂、52%が部分メタクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、28%が完全にメタクリル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる樹脂組成物Mであった。
(2)シール剤組成物の製造
上記した樹脂組成物Mを高湿条件下(60℃、95%RH)に放置し、0.13%の水分を吸湿させた。次に、この樹脂組成物92部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部、エポキシ硬化剤(商品名アミキュア−VDH)19部、無機充填剤(SO25H、株式会社アドマテックス製の商品名)40部、及びシランカップリング剤(KBM403、信越化学株式会社製の商品名)1.5部を配合し、混練装置を用いて充分に混練し、シール剤組成物を製造した。なお、上記無機充填剤はシランカップリング剤(上記KBM403)で表面処理したものを用いた。
【0029】
実施例2.
上記した樹脂組成物Mを上記高湿条件下に放置し、0.3%の水分を吸湿させたこと以外は、実施例1と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0030】
実施例3.
上記した樹脂組成物Mを上記高湿条件下に放置し、0.03%の水分を吸湿させたこと以外は、実施例1と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0031】
実施例4.
(1)部分アクリル化エポキシ樹脂を含む樹脂組成物の合成
高純度のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン−850CRP、大日本インキ化学工業株式会社製の商品名)100重量部、アクリル酸25重量部、トルエン90重量部、及びトリフェニルホスフィン1.0重量部を混合し、100℃で6時間加熱しながら攪拌して部分付加反応物を得た。反応後の液をトルエンで希釈した後、純水で繰り返し洗浄することで電導度が8.5μs/cmの反応生成物を得た。この溶液をろ過後、減圧下70℃で濃縮してトルエンを完全除去し、反応生成物を精製した。
反応生成物をGPC分析したところ、12%が未反応のビスフェノールA型エポキシ樹脂、50%が部分アクリル化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、38%が完全にアクリル化したビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる樹脂組成物Aであった。
(2)シール剤組成物の製造
上記した樹脂組成物Aを上記高湿条件下に放置し、0.13%の水分を吸湿させた。次に、この樹脂組成物92部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部、エポキシ硬化剤(商品名アミキュア−VDH)13.4部、無機充填剤(SO25H、株式会社アドマテックス製の商品名)40部、及びシランカップリング剤(KBM403、信越化学株式会社製の商品名)1.5部を配合し、混練装置を用いて充分に混練し、シール剤組成物を製造した。なお、上記無機充填剤はシランカップリング剤(上記KBM403)で表面処理したものを用いた。
【0032】
実施例5.
上記各成分に加え、純水0.3部を配合し、混練したこと以外は、実施例4と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0033】
比較例1.
上記した樹脂組成物Mを高湿条件下に放置せず、水分を吸湿させなかったこと、この樹脂組成物M、上記光重合開始剤、上記エポキシ硬化剤、及び上記無機充填剤を五酸化リンの入ったデシケータ中にそれぞれ放置して脱水処理したものを配合し、混練したこと以外は、実施例1と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0034】
比較例2.
上記した樹脂組成物Aを高湿条件下に放置せず、水分を吸湿させなかったこと、この樹脂組成物A、上記光重合開始剤、上記エポキシ硬化剤、及び上記無機充填剤を五酸化リンの入ったデシケータ中にそれぞれ放置して脱水処理し、これらの成分にさらに上記純水0.7部を配合し、混練したこと以外は、実施例4と全く同様にしてシール剤組成物を製造した。
【0035】
評価
得られた各シール剤組成物について下記特性を評価した。
【0036】
(1)粘度
各シール剤組成物について、JIS−Z8803に準じて、E型粘度計を用い、測定温度25℃における2分経過後の値を測定した。
【0037】
(2)水分含有量
カールフィフィッシャー水分測定装置(MKC−510N、京都電子工業株式会社製、電量滴定法による検出限界1ppm)を用い、10gの試料について水分含有量を測定した。
【0038】
(3)耐液晶汚染性(比抵抗値による評価)
各シール剤組成物の液晶汚染性を評価する方法として、以下のようにして各シール剤組成物により液晶を処理し、その液晶の比抵抗値を測定した。
a)液晶の処理
まず、透明バイアル瓶(容量3ml)に各シール剤組成物0.5gを入れ、次に液晶(MLC−6267−000、メルク製の商品名)2.0gを入れ、25℃で2時間放置した。次に、紫外線照射装置(ウシオ電機製のスポットキュア装置)を用い、このバイアル瓶にUV照射(照度100mW/cm2、光量2.5J/cm2)を施した。さらに、このバイアル瓶を120℃の熱風循環式恒温槽に1時間放置後、室温に戻し、処理後の液晶をデカンテーションしてサンプル瓶に採った(この液晶を「処理済液晶」と称する)。なお、ブランクとして、各シール剤組成物を加えずに上記と同様な手順で液晶を処理した(この液晶を「ブランク液晶」と称する)。
b)液晶の比抵抗値の測定
比抵抗測定装置(エレクトロ・メーターR8340A、アドバンテスト製、液体抵抗試料箱の型番R12707)を用い、液体電極に上記処理済液晶及びブランク液晶をそれぞれ1ml採取し、印加電圧0.5Vとし、1分経過後の比抵抗値(Ω・cm)を測定した。測定温度は25℃とした。ブランク液晶の比抵抗値に対する処理済液晶の比抵抗値の比を計算し、その値に基づいて以下の評価を行った。
○:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の比が0.5オーダー未満であり、汚染性については問題がない。なお、1オーダーとは、上記比が0.1である、つまり、処理済液晶の比抵抗値がブランク液晶の比抵抗値より1桁小さいことをいい、これを指数で表したとき10−1となることから「1オーダー」と称する。又、0.5オーダーとは上記比が0.5であり、これを指数で表すと5×10−1となる。又、上記比の最大値は1であるので、上記比が0.5オーダー未満とは、この比が0.5〜1であることを示す。
△:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の比が0.5〜1オーダーであり、汚染性にやや問題がある。つまり、上記比が0.1〜0.5であることを示す。
×:ブランク液晶の比抵抗値に対する処理液晶の比抵抗値の比が1オーダーを越えており、汚染性に問題がある。つまり、上記比が0.1未満であることを示す。
【0039】
(4)耐液晶汚染性(液晶の配向性による評価)
各シール剤組成物の液晶汚染性を評価する方法として、以下のようにして試験片を作製し、液晶の配向性を観察した。
a)シール剤組成物の前処理
各シール剤100部に対し、スペーサーとなるガラスファイバー(直径5μmの短繊維)1重量%を配合し、真空攪拌脱泡装置で分散、脱泡を行った後、この混合物をシリンジに分取した。
b)試験片の作製
清浄なガラス基板上に上記前処理を施したシール剤組成物を点塗布した後、液晶をこのシール剤組成物上に滴下し、その上から別のガラス基板を重ね合わせた。各ガラス基板間に9.8kPaの荷重を1時間かけた後、UV照射(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2)を施し、次いで120℃×1時間の条件でシール剤組成物を熱硬化させ、評価用試験片を作製した。シール剤と液晶との界面における液晶の配向不良を偏光顕微鏡を用い観察した。
【0040】
(5)高速描画性
ディスペンサーに各シール剤組成物を分取した後、ガラス基板上にこのディスペンサーを用いて線を描き(描画速度60mm/sec、線幅300μm、線高さ50μm)、線幅の乱れを観察した。線が蛇行したり、線幅又は線高さのいずれかが上記値から20%以上外れたものを描画性不良とし、×と評価した。それ以外のものを○と評価した。
また、描画したシール剤組成物の上にガラス基板を重ね、UV照射(照度:100mW/cm2、光量:2.5J/cm2を施し、次いで120℃×1時間の条件でシール剤組成物を熱硬化させ、シール剤中のボイドの有無を光学顕微鏡にて観察した。
【0041】
得られたシール剤組成物の構成、及び評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
表1から明らかなように、0.01〜0.3重量%の水分を含む各実施例は、いずれも、液晶汚染を生じることがなく、高速描画性に優れ、又、高速描画時のボイドの発生も見られなかった。
【0044】
一方、水分を含有しない比較例1の場合、高速描画性が低下した。又、水分含有量が0.3重量%を超えた比較例2の場合、液晶汚染が生じ、又、高速描画時にボイドが発生した。
【0045】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明のシール剤組成物は、高速描画性と耐液晶汚染性に共に優れたものである。
Claims (1)
- a)アクリル変性エポキシ樹脂及び/又はメタクリル変性エポキシ樹脂と、
b)エポキシ樹脂と、
c)光重合開始剤と、
d)エポキシ硬化剤と
を必須成分とする組成物全体に対し、水分含有量が0.01〜0.3重量%であるシール剤組成物。
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