JP4922565B2 - 燃料電池発電システムの起動準備方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば家庭用の小型電源として好適な燃料電池発電システムの起動準備方法に関するものである。
近年、天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの炭化水素系燃料ガス中に含まれる硫黄を除去する脱硫器と、燃料ガスを水蒸気と反応させて水素に改質する改質器(RF)と、一酸化炭素を変成するCO変成器(SH)と、一酸化炭素を除去するCO除去器(PROX)と、このようにして得られた水素(改質ガス)と空気中の酸素などの酸化剤とを化学反応させて発電する燃料電池とを備えた小型電源としての燃料電池発電システムが提案されている(例えば特許文献1、2、3参照)。
燃料極(AN)に水素を含む燃料ガス、空気極(CA)に空気を供給すると、燃料極では、水素分子を水素イオンと電子に分解する燃料極反応、空気極では、酸素と水素イオンと電子から水を生成する電気化学反応がそれぞれ行われ、燃料極から空気極に向かって外部回路を移動する電子により電力が負荷に供給されるとともに、空気極側に水が生成される。
図13に従来の燃料電池発電システムを示す。
図13に示すように、燃料電池発電システム1Aは、天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの炭化水素系燃料ガスを、原燃料ガス開閉弁2を備えた原燃料ガス供給ライン3を経て供給して脱硫する脱硫器4を備えるとともに、脱硫器4で脱硫した脱硫燃料ガスを脱硫燃料ガス開閉弁5を備えた脱硫ガス供給ライン6を経て供給し、一方、水を閉止弁7を経て気化器8へ送って気化して逆止弁9を経て水蒸気を供給し、燃料ガスをCO濃度を低減した水素リッチな改質ガスに改質する燃料改質装置10[改質器(RF)/CO変成器(SH)/CO除去器(PROX)]を備えており、燃料改質装置10で得られた改質ガスを改質ガス開閉弁11を備えた改質ガス供給ライン12を経て燃料極(AN)に供給し、この改質ガスと空気極(CA)へ供給された空気中の酸素とを電気化学的に反応させて発電する燃料電池13を備えている。
また、燃料電池発電システム1Aは、図13に示すように、原燃料ガス開閉弁2の下流において原燃料ガス供給ライン3の分岐部14から分岐して水蒸気改質による反応は吸熱反応であため改質反応を維持するための必要な熱量を供給するために原燃料ガスの一部を燃料改質装置10の燃焼部(バーナ)15へ供給する燃焼用原燃料ガス供給ライン16を備えている。また、燃料電池13から排出される水素ガス(オフガス)は閉止弁17を備えたオフガスライン18を経て燃焼部(バーナ)15に供給されるようになっている。
19、21は圧力計、20、23は開閉弁、22、25はポンプを示し、24は逆止弁を示す。
上記の構成の燃料電池発電システム1Aにおいて、天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの炭化水素系燃料ガスを、原燃料ガス供給ライン3を経て脱硫器4へ供給して脱硫し、脱硫器4で脱硫した脱硫燃料ガスを脱硫ガス供給ライン6を経て燃料改質装置10[改質器(RF)/CO変成器(SH)/CO除去器(PROX)]へ供給するとともに、水を気化器8へ送って気化して発生する水蒸気を燃料改質装置10へ供給し、燃料ガスをCO濃度を低減した水素リッチな改質ガスに改質し、燃料改質装置10で得られた改質ガスを改質ガス供給ライン12を経て燃料電池13の燃料極(AN)に供給し、この改質ガスと燃料電池13の空気極(CA)へ供給された空気中の酸素とを電気化学的に反応させて発電する。
燃料改質装置10の起動時、原燃料ガスの一部を燃焼用原燃料ガス供給ライン16を経て燃料改質装置10の燃焼部(バーナ)15へ供給して改質反応を維持するための必要な熱量が供給されるように加熱する。燃料電池発電システム1Aの起動後は、燃料電池13から排出される水素ガス(オフガス)をオフガスライン18を経て燃焼部(バーナ)15に供給して燃焼して燃料改質装置10における改質反応を維持するための熱量を得ることができる。
なお、燃料改質装置10の燃焼部(バーナ)15へ供給する炭化水素系燃料ガスも脱硫器4で脱硫したものを使用する場合もある。
前記炭化水素系燃料ガス(例えばLPGなど)中には、通常、硫黄を含む付臭剤が添加されているので、脱硫器4において硫黄を除去する必要があり、従来、燃料改質装置10の余熱を利用する高温型の触媒や常温で脱硫できるゼオライト系脱硫剤が使用されている(例えば特許文献4参照)。
この常温で脱硫できる脱硫器は積極的に加熱する加熱手段を有しておらず、その作動温度は、システム起動時にシステムの各発熱部位が昇温される以前のシステム使用下限温度が下限値となり、システム起動後に積極的な加熱手段を講じない脱硫器の周辺の機器昇温により脱硫器が温度上昇した場合の温度が上限値となり、例えば、家庭用燃料電池に本発明を用いる場合には、脱硫器の温度は−20〜70℃、好ましくは、−10〜60℃、さらに好ましくは、0〜50℃の範囲である。
特開2003−217620号公報 特開2003−217623号公報 特開2000−277137号公報 特開平10−237473号公報
前記ゼオライト系脱硫剤は、常温で脱硫できることや、取り扱いが簡便であることや交換の容易性などの点から、多く使用されるようになっている。しかしこのゼオライト系脱硫剤は、吸着によって硫黄成分を除去するが、同時に炭化水素系燃料ガスも吸着し、温度が上昇すると吸着した炭化水素系燃料ガスを脱離する特性を有している。
脱硫性能が低下する前に脱硫器4を交換するが、交換した後、運搬などの際に脱硫器4の温度が上昇すると、ゼオライト系脱硫剤に吸着した炭化水素系燃料ガスが脱離し、脱硫器4の内圧が上昇し、バルブ開放時、後段の燃料改質装置への原燃料ガスの過供給が起こり、S/Cが設定値より低減し、コーキングなどを起こす問題があった。
また、新しい脱硫器に備えられたゼオライト系脱硫剤には空気が吸着されているので、燃料電池発電システムに新しい脱硫器を設置して使用するに当たっては、炭化水素系燃料ガスを新しい脱硫器に供給して吸着させ、望ましくは空気を脱離させるが、長時間を要し、ロスが大きい問題があった。
本発明の目的は、燃料電池発電システムの起動準備方法を提供することである。
上記課題を解消するための本発明の請求項1に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、
一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載する前に、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とする。
本発明の請求項2に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した後に、新規脱硫器内圧力を減圧してから、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項1記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
原燃料ガスによる吸着処理を行う前に、新規脱硫器内圧力を減圧することを特徴とする。
本発明の請求項4に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項1記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
原燃料ガスによる吸着処理を行う前でかつ燃料電池発電システムに搭載前に、新規脱硫器内圧力を減圧させることを特徴とする。
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本発明の請求項5に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項4記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
新規脱硫器内圧力を、−10kPa(25℃でのゲージ圧)以下−150kPa(25℃でのゲージ圧)の範囲まで減圧することを特徴とする。
本発明の請求項6に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項4あるいは請求項5記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
新規脱硫器内圧力が0kPa(ゲージ圧)になった時点で、原燃料ガスの導入を停止することを特徴とする。
本発明の請求項7に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項2記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
新規脱硫器内圧力を減圧してから、原燃料ガスによる吸着処理を行う際に、導入した原燃料ガスの合計が、新規脱硫器脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の70〜95%で原燃料ガスの導入を停止することを特徴とするものである。
本発明の請求項8に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項1、請求項3から請求項6のいずれかに記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
導入した原燃料ガスの合計が、新規脱硫器脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の70〜95%で原燃料ガスの導入を停止することを特徴とする。
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本発明の請求項1の発明は、一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載する前に、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とするものであり、
燃料電池発電システムに新規脱硫器を設置して使用するに当たって、新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載する前に、炭化水素系燃料ガスを新規脱硫器に供給して吸着処理し、吸着処理した新規脱硫器が装着されれば、短時間で燃料電池発電システムを起動できその上、起動後は燃料改質装置の触媒を劣化させるなどの問題がなく、確実に容易に経済的に連続運転できるという顕著な効果を奏する。
本発明の請求項2の発明は、一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した後に、新規脱硫器内圧力を減圧してから、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とするものであり、
燃料電池発電システムに新規脱硫器を設置して使用するに当たって、新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した後に、新規脱硫器内圧力を減圧してから、炭化水素系燃料ガスを新規脱硫器に供給して吸着処理すれば、短時間で燃料電池発電システムを起動できその上、起動後は燃料改質装置の触媒を劣化させるなどの問題がなく、確実に容易に経済的に連続運転できるという顕著な効果を奏する。
減圧状態にしてから原燃料ガスを導入して吸着処理するので、より短時間で確実に吸着処理できるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明の請求項3の発明は、請求項1記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、原燃料ガスによる吸着処理を行う前に、新規脱硫器内圧力を減圧することを特徴とするものであり、より短時間で吸着処理できるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明の請求項4の発明は、請求項1記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、原燃料ガスによる吸着処理を行う前でかつ燃料電池発電システムに搭載前に、新規脱硫器内圧力を減圧させることを特徴とするものであり、減圧状態にしてから原燃料ガスを導入して吸着処理するので、より短時間で確実に吸着処理できるというさらなる顕著な効果を奏する。
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本発明の請求項5の発明は、請求項4記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、新規脱硫器内圧力を、−10kPa(25℃でのゲージ圧)以下−150kPa(25℃でのゲージ圧)の範囲まで減圧することを特徴とするものであり、新規脱硫器を損なうことなく原燃料ガスによる吸着処理を行えるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明の請求項6の発明は、請求項4あるいは請求項5記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、新規脱硫器内圧力が0kPa(ゲージ圧)になった時点で、原燃料ガスの導入を停止することを特徴とするものであり、新規脱硫器を損なうことなく原燃料ガスによる吸着処理を行えるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明の請求項7の発明は、請求項2記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
新規脱硫器内圧力を減圧してから、原燃料ガスによる吸着処理を行う際に、導入した原燃料ガスの合計が、新規脱硫器脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の70〜95%で原燃料ガスの導入を停止することを特徴とするものであり、70%を超え95%の範囲内で吸着速度が激減するが、70〜95%で原燃料ガスの導入を停止すれば、より短時間で吸着処理できるというさらなる顕著な効果を奏する。減圧状態にしてから原燃料ガスを導入して吸着処理するので、より短時間で確実に吸着処理できるというさらなる顕著な効果を奏する。
本発明の請求項8に記載の燃料電池発電システムの起動準備方法は、請求項1、請求項3から請求項6のいずれかに記載の燃料電池発電システムの起動準備方法において、
導入した原燃料ガスの合計が、新規脱硫器脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の70〜95%で原燃料ガスの導入を停止することを特徴とするものであり、70%を超え95%の範囲内で吸着速度が激減するが、70〜95%で原燃料ガスの導入を停止すれば、より短時間で吸着処理できるというさらなる顕著な効果を奏する。
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次に本発明を図を用いて実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、燃料電池発電システムの電子ネットワークの1例を模式的に説明する説明図である。
図1に示した電子ネットワーク30は、分散型の複数の燃料電池発電システム31とそれらを統括的に管理する管理装置32および管理装置32の表示装置33を備えた管理会社34がインターネット35を介して接続されている。管理会社34は図示しない専用回線で電力会社、ガス会社、水道事業者などと接続され、これら各社の委託を受けた事業を行っている。
各燃料電池発電システム31は、一定期間毎に交換する図示しない脱硫器を備えるとともに、このシステムの運転状況の情報を取得する手段を備え、例えば所定の稼働時間がきたら交換する場合はこの手段として図示しないタイマーなどを備え、このタイマーなどで得られた情報を電子ネットワーク30のインターネット35を介して管理装置34の表示装置33に表示し、表示装置33に表示された情報によって、脱硫器の交換時期を判定するように構成されている。表示された情報により管理者あるいはオペレータが交換時期を判定してメンテナンス会社の担当者にインターネット35を介して連絡するなどすれば、脱硫器の適切な交換時期を見逃さず交換を確実に容易に行える。
図2は、燃料電池発電システムの構成を模式的に説明する説明図である。
燃料電池発電システム31は、天然ガス、都市ガス、メタノール、LPG、ブタンなどの炭化水素系燃料ガスを、脱硫する一定期間毎に交換する脱硫器4を備えるとともに、脱硫器4で脱硫した脱硫燃料ガスを供給し、一方、図示しない上水から生成した水蒸気を供給し、燃料ガスをCO濃度を低減した水素リッチな改質ガスに改質する燃料改質装置10を備えており、燃料改質装置10で得られた改質ガスを燃料極(AN)へ供給し、この改質ガスと空気極(CA)へ供給された空気中の酸素とを電気化学的に反応させて発電して直流電圧を得る燃料電池13を備えている。
またその直流電圧を交流に変換するインバータ35と、それらを制御する制御部36を備えている。
燃料電池発電システム31は、燃料電池発電システム31の運転状況の情報を取得する手段37を備え、手段37によって検出された情報は情報部38に蓄積され、送信部39によって通信部40を介してインターネット35を介して管理装置32へ送信することができる。
情報部38は蓄積された情報を表示装置41に表示させる。
燃料電池発電システム31の運転状況の情報により脱硫器の交換時期を利用者の有する燃料電池発電システム31に接続された表示装置41に表示させて、表示された情報により利用者が交換時期を判定してメンテナンス会社の担当者にインターネット35を介して連絡するなどすれば、脱硫器の適切な交換時期を見逃さず交換を確実に容易に行える。
図3は、燃料電池発電システムに接続された表示装置に脱硫器交換時期に関する情報を表示する例を示す説明図である。
燃料電池13に運転時間を格納している部分がある表示装置41(家庭のリモコン)に表示された運転時間が、例えば、3000時間をメドに交換する場合、2500時間程度で各家庭のリモコンに「脱硫器交換時期です」というお知らせサインが点灯する。そのサインを見て利用者がネットワークを介さずにメンテナンス会社に連絡し、脱硫器の交換を依頼する。
この場合、運転時間が2500時間を超える燃料電池発電システム(メンテ候補機)が表1(システム番号順の表示)、表2(運転時間順の表示)、表3(近接エリア別の表示)に示したように複数表示された場合には、メンテナンス会社が連絡を受けてから交換までに或る程度の猶予時間があるので、その間に例えば表3に示した複数のメンテ候補機中から近接したエリアのもの、例えばAエリアのもの(FC0004、FC0012、FC0007)を選択して一緒に交換すれば、短時間で効率よくメンテナンスを行うことができる。
また、脱硫器交換時期に関する運転時間を、例えば、3000時間をメドに交換する場合、2500時間程度で表示装置41に「脱硫器交換時期です」というお知らせサインが点灯する。表示された情報により利用者がネットワークを介さずにメンテナンス会社の担当者(業者)に連絡し、3000時間までに脱硫器を交換することを依頼する。
この場合、運転時間が2500時間を超える燃料電池発電システム(メンテ候補機)が表1(システム番号順の表示)、表2(運転時間順の表示)、表3(近接エリア別の表示)に示したように複数表示された場合には、例えば表3に示した複数のメンテ候補機中から近接したエリアのもの、例えばAエリアのもの(FC0004、FC0012、FC0007)を選択して一緒に交換すれば、短時間で効率よくメンテナンスを行うことができる。
Figure 0004922565
Figure 0004922565
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また、燃料電池13に運転時間を格納している部分がなくても、センターサーバにて、燃料電池13の運転記録が保存されるシステムであれば、センターサーバ上の運転時間から判断して、表示装置41に「脱硫器交換時期」を表示させることも可能である。
次にメンテナンス準備について説明する。
図4は、真空ポンプで新規脱硫器4中の空気を強制的に離脱してから原燃料ガスを導入して吸着処理する例を説明する説明図である。
メンテナンス候補のシステムが通知されると、それに基づいてメンテナンスの準備を行う。脱硫器4を事前に原燃料ガスを導入して吸着処理することによって、脱硫器4の交換後のシステム起動の簡略化を図ることが目的である。
脱硫器4に付属のバルブV01、VO2のうち、前処理装置40に接続する側のV02を開ける。バルブV11を開き(V12は閉止)真空ポンプ41を作動して吸引する。例えば、圧力計Pで示されるゲージ圧−100kPaに達した時点で吸引をやめ、バルブV11を閉止するとともにV12を開ける。V12を通り原燃料ガスのLPGが脱硫器4内に充填され、充填量と共に内圧が上昇し、流量が低下する。42は流量計、43は減圧弁を示す。
図5は、導入LPG量(リットル)、脱硫器内圧(kPa)、新規脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量に対する導入した原燃料ガスの吸着割合(%)と時間との関係を示すグラフである。
図5より、吸着割合が70%を超えた付近から、導入LPG量の増加、脱硫器内圧上昇速度が低下しており、吸着割合が75%を超えた付近から脱硫器内圧はほぼ一定(0kPa)になり、導入LPG量の増加が低下している。
充填終了は、(1)吸着割合が75%に達した時、(2)脱硫器内圧が0kPaになった時点などで判定可能である。
なお、上記方法はメンテナンスに限って行うだけではなく、燃料電池発電システムの出荷前の組立時にも脱硫器4の前処理を行うことによって、初回の燃料電池発電システム起動を確実に行うことが可能になる。
上記方法により処理した後、前処理装置40のバルブ(V11、V12)を閉じ、脱硫器4の配管との接続を外して脱硫器4を取り出す。前処理した脱硫器4を燃料電池発電システムの配管に接続し、本体のパネルを取り付け、通常通りの起動を行う。
上記説明では前処理装置40を使用する例を示したが、前に述べた図13に示した原燃料ガス開閉弁2を備えた原燃料ガス供給ライン3に真空ポンプ41、流量計42、減圧弁43、バルブV11などを適宜設置して前処理することができる。
(1)一方、取り外した使用済み脱硫器4には、図6に示したように圧力逃がし弁SV01を取り付け、取り付けた側のバルブV02を開放する。
運搬中などに温度が上昇するなどして使用済み脱硫器4の内部の圧力が上昇すれば、圧力逃がし弁SV01が動作し、脱硫器4内圧上昇を防ぐ。圧力逃がし弁SV01の動作圧力は、150±50kPa(脱硫器4の破過圧力以下)とする。
(2)他の方法として、取り外した使用済み脱硫器4には、図7に示したようにダミーの他の容器4−1を取り付け、他の容器4−1を連接した側のそれぞれのバルブ(V02、V22)を開放する。ダミーの他の容器4−1は、内部に何も入れていなくてもよいが、内部を真空(ゲージ圧−100kPa)にしておいた方がよい。また、内部に脱硫器4と同等のゼオライト系脱硫剤を充填し、さらには内部を真空(ゲージ圧−100kPa)にしておいた方がより確実に使用済み脱硫器4の温度が上昇して脱硫剤に吸着した炭化水素系燃料ガスが脱離し、脱硫器4の内圧が上昇しても、圧力抜きできる。
(3)さらに、他の方法として、前記(2)の発展型の方法があり、取り外した使用済み脱硫器4には、図8に示したようにダミーの他の容器4−1を取り付けるとともに圧力逃がし弁SV01を取り付け、取り付けた側のバルブV02、V22を開放する。通常は減圧したダミーの他の容器4−1を接続すると全系内部は減圧状態を維持するはずであるが、念のため圧力逃がし弁SV01を接続し脱硫器4の内圧が上昇し際に圧力抜きに用いる。
(4)さらに、他の方法として、前記(1)と(2)の融合型の方法があり、取り外した使用済み脱硫器4には、図9に示したように圧力逃がし弁SV01を取り付けるとともにその圧抜き側にダミーの他の容器4−1を取り付け、バルブV02、V22を開放する。
脱硫器4内の圧力が上昇し、圧力逃がし弁SV01が作動した時のみ、ダミーの他の容器4−1が機能して余分なLPGを吸着する。
(5)さらに、他の方法として、前記(4)の発展型の方法があり、取り外した使用済み脱硫器4には、図10に示したように圧力逃がし弁SV01を取り付けるとともにそのガス出口側にダミーの他の容器4−1を取り付け、ダミーの他の容器4−1の圧力逃がし弁SV01側のラインに圧力計P(P21)を取り付ける。
圧力計P(P21)を接続する事により、バルブV02、V22を開放する前の圧力計P(P21)の指示値を記録(ゲージに印を付けても良い)しておけば、圧力逃がし弁SV01が動作したかどうか、すなわちダミーの他の容器4−1が余剰LPGを吸着したかどうかを判別することができる。ダミーの他の容器4−1接続前の圧力計P(P21)の数値に対し、圧力計P(P21)接続後の数値が上昇していれば圧力逃がし弁SV01が動作したと判断できる。
これによって、圧力逃がし弁SV01が動作しなかったダミーの他の容器4−1については、LPGの吸着が起こっていないと判断し、そのまま別の脱硫器4の取り外しに再利用することが可能になり、コスト低減につながる。
図11は、脱硫器にLPGが約50℃で吸着割合100%吸着した状態(0kPa25℃でのゲージ圧)で、20℃近くまで冷却した時の脱硫器内圧(約−70kPa25℃でのゲージ圧)と温度との関係を示すグラフである。
20℃(常温)で脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の約85%になり、脱硫器内は減圧状態になり、燃料ガス吸着可能量が増加する。
図12は、脱硫器にLPGが約30℃で吸着割合100%で吸着した状態で、70℃近くまで昇温した時の脱硫器内圧(kPa25℃でのゲージ圧)と温度との関係を示すグラフである。
約30℃で吸着割合100%で吸着した状態で、70℃近くまで昇温すると、容器温度30℃における飽和吸着量が低減し、原燃料ガスが離脱するため脱硫器内圧が上昇する。
脱硫器の脱硫剤1リットルに対して30℃で30リットルのLPGが充填されたとすると、脱硫器内圧は大気圧101kPaであり、それを70℃まで昇温した時の脱硫器内圧(kPa)は実際には260kPaとなる。
同様に脱硫器の脱硫剤1リットルに対して30℃で30リットルのLPGが充填されたとして気体の状態方程式(PV=nRT)で計算される脱硫器内圧は114kPaとなる。
実際の内圧260kPaと計算による内圧114kPaとの差は、70℃まで昇温した時に脱硫剤に吸着されていたLPGが脱着したためである。このLPG脱着量を計算すると1.28リットルとなる。
したがって、この例においてはLPG脱着量1.28リットルを吸着できる能力の吸着剤(ゼオライト系脱硫剤)を充填(具体的には約0.1リットル)したダミの他の容器4−1を用いればよい。
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
本発明は、一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した前あるいは後に、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とするものであり、
燃料電池発電システムに新規脱硫器を設置して使用するに当たって、新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した後に、あるいは新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した後に、炭化水素系燃料ガスを新規脱硫器に供給して吸着処理すれば、短時間で燃料電池発電システムを起動できその上、起動後は燃料改質装置の触媒を劣化させるなどの問題がなく、確実に容易に経済的に連続運転できるという顕著な効果を奏するので産業上の利用価値が高い。
燃料電池発電システムの電子ネットワークの1例を模式的に説明する説明図である。 燃料電池発電システムの構成を模式的に説明する説明図である。 燃料電池発電システムに接続された表示装置に脱硫器交換時期に関する情報を表示する例を示す説明図である。 真空ポンプで真空引き後、新規脱硫器に原燃料ガスを導入して吸着処理する例を説明する説明図である。 導入LPG量(リットル)、脱硫器内圧(kPa)、新規脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量に対する導入した原燃料ガスの吸着割合(%)と時間との関係を示すグラフである。 取り外した使用済み脱硫器に圧力逃がし弁を取り付けた状態を説明する説明図である。 取り外した使用済み脱硫器に他の容器を取り付けた状態を説明する説明図である。 取り外した使用済み脱硫器に圧力逃がし弁と他の容器を取り付けた状態を説明する説明図である。 取り外した使用済み脱硫器に圧力逃がし弁と他の容器を取り付けた他の状態を説明する説明図である。 取り外した使用済み脱硫器に圧力逃がし弁と他の容器と圧力計を取り付けた状態を説明する説明図である。 脱硫器内圧と温度との関係を示すグラフである。 脱硫器内圧と温度との関係を示すグラフである。 従来の燃料電池発電システムを示す説明図である。
4 脱硫器
4−1 他の容器
30 電子ネットワーク
31 燃料電池発電システム
32 管理装置
33、41 表示装置
35 インターネット
SV01 圧抜き用圧力逃がし弁

Claims (8)

  1. 一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載する前に、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とする燃料電池発電システムの起動準備方法。
  2. 一定期間毎に交換する脱硫器を備えた燃料電池発電システムの起動準備方法であって、空気が吸着されている新規脱硫器を燃料電池発電システムに搭載した後に、新規脱硫器内圧力を減圧してから、原燃料ガスによる吸着処理を行うことを特徴とする燃料電池発電システムの起動準備方法。
  3. 原燃料ガスによる吸着処理を行う前に、新規脱硫器内圧力を減圧することを特徴とする請求項1記載の燃料電池発電システムの起動準備方法。
  4. 原燃料ガスによる吸着処理を行う前でかつ燃料電池発電システムに搭載前に、新規脱硫器内圧力を減圧させることを特徴とする請求項1記載の燃料電池発電システムの起動準備方法。
  5. 新規脱硫器内圧力を、−10kPa(25℃でのゲージ圧)以下−150kPa(25℃でのゲージ圧)の範囲まで減圧することを特徴とする請求項4記載の燃料電池発電システムの起動準備方法。
  6. 新規脱硫器内圧力が0kPa(ゲージ圧)になった時点で、原燃料ガスの導入を停止することを特徴とする請求項4あるいは請求項5記載の燃料電池発電システムの起動準備方法。
  7. 新規脱硫器内圧力を減圧してから、原燃料ガスによる吸着処理を行う際に、導入した原燃料ガスの合計が、新規脱硫器脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の70〜95%で原燃料ガスの導入を停止することを特徴とする請求項2記載の燃料電池発電システムの起動準備方法。
  8. 導入した原燃料ガスの合計が、新規脱硫器脱硫剤の容器温度30℃における飽和吸着量の70〜95%で原燃料ガスの導入を停止することを特徴とする請求項1、請求項3から請求項6のいずれかに記載の燃料電池発電システムの起動準備方法。
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