JP4917196B2 - 樹脂組成物及びその硬化物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物及びその硬化物に関する。さらに詳しくは、優れた塗工性を有し、かつ各種基材[例えば、プラスチック(ポリカ−ボネ−ト、ポリメチルメタクリレ−ト、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロ−ス樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレ−ト等]の表面に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、低カール性、及び密着性に優れた、特に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性及び低カール性のバランスに優れた塗膜(被膜)を形成し得る樹脂組成物並びにその硬化物に関する。本発明の樹脂組成物及びその硬化物は、例えば、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コ−ティング材;各種基材の接着剤、シ−リング材;印刷インクのバインダ−材等として好適に用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種基材表面の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コ−ティング材;各種基材の接着剤、シ−リング材;印刷インクのバインダ−材として、優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、低カール性、密着性、透明性及び塗膜面の外観のいずれにも優れた被膜を形成し得る樹脂組成物が求められている。
しかし、塗膜の硬度を向上させるためには、塗膜の架橋密度を上げる必要があるが、塗膜の硬度を向上させると、硬化収縮に伴う反り、カールが大きくなり、硬度と低カール性とのバランスを取るのが困難であるという問題があり、また、塗膜の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させるためには、塗膜中の粒子とマトリックスとの結合を強化する必要があるが、従来技術では必ずしも十分ではなく、塗膜の硬度、耐擦傷性、耐摩耗性及び低カール性のバランスに優れたものは未だ提供されていないのが現状である。
【0003】
すなわち、このような要求のうち耐擦傷性の改善を目指して、それに含有させる粒子として、コロイダルシリカを配合した材料が種々提案されている。例えば、米国特許第3,451,838号明細書及び米国特許第2,404,357号明細書は、アルコキシシランの加水分解物とコロイダルシリカを主成分とする組成物を、熱硬化型のコ−ティング材料として用いることを開示している。また、特公昭62−21815号公報は、コロイダルシリカの表面をメタクリロキシシランで修飾した粒子とアクリレ−トとの組成物を、光硬化型のコ−ティング材料として用いることを開示している。これらのコ−ティング材料の特徴は、シリカ粒子の表面を特定の有機シラン、又は特定の条件で処理することによりコ−ティング材料の性能を改善する点にあるが、このようなコ−ティング材料は、樹脂組成物としての優れた塗工性、並びに硬化被膜とした場合の優れた硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、低カ−ル性、及び密着性の全てを必ずしも十分に満足するものではなかった。
【0004】
また、特開平10−95951号公報は、特定の重合性化合物と重合性酸性リン酸エステルとコロイド状シリカとを含有する表面コート材を開示している。この表面コート材においては、硬度について、鉛筆硬度として5〜6H程度の硬化膜が得られるが、耐擦傷性及び耐摩耗性については十分に満足し得るものではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、低カール性、及び密着性に優れた、特に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性及び低カール性のバランスに優れた被膜を形成し得る樹脂組成物及びその樹脂組成物の硬化物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意研究した結果、(A)特定の元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基を含む有機化合物(好ましくは、前記式(2)に示す基を含む特定有機化合物)とを結合させてなる粒子、(B)特定の重合性酸性リン酸エステル、及び(C)(B)以外の分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物を含有する樹脂組成物並びにその硬化物によって、上記諸特性を全て満足し、特に、硬度、耐擦傷性及び耐摩耗性を低下させることなくカールを小さくすることで、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性及び低カール性のバランスに優れたものが得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の樹脂組成物及びその硬化物を提供するものである。
【0007】
[1](A)ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基を含む有機化合物とを結合させてなる粒子、
(B)下記式(1)に示す重合性酸性リン酸エステル、及び
【0008】
【化1】
【0009】
[式(1)中、R1は水素原子又はメチル基、R2は2価の有機基、nは1又は2の整数を示す。]
(C)(B)以外の分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物
を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【0010】
[2]前記有機化合物が、重合性不飽和基に加えて、下記式(2)に示す基を含むものである前記[1]に記載の樹脂組成物。
【0011】
【化2】
【0012】
[式(2)中、Xは、NH、O(酸素原子)又はS(イオウ原子)を示し、Yは、O又はSを示す。]
【0013】
[3]前記有機化合物が、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものである前記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
【0014】
[4]前記有機化合物が、シラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0015】
[5]前記(B)重合性酸性リン酸エステルの含有量が、(A)、(B)及び(C)の配合量の合計を100重量部として、0.01〜15重量部である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0016】
[6]前記(B)重合性酸性リン酸エステルが、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート及び/又はビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートである前記[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
【0017】
[7]前記[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の樹脂組成物及びその硬化物の実施の形態を具体的に説明する。
I.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、(A)特定の元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基を含む有機化合物(好ましくは、前記式(2)に示す基を含む特定有機化合物)とを結合させてなる粒子(以下、「架橋性粒子(A)」ということがある。)、(B)前記式(1)に示す重合性酸性リン酸エステル(以下、「リン酸エステルモノマー(B)」ということがある。)、及び(C)(B)以外の分子内に2以上の重合性不飽和基を有する化合物(以下、「化合物(C)」ということがある。)を含有することを特徴とするものである。
【0019】
以下、本発明の樹脂組成物の各構成成分について具体的に説明する。
1.架橋性粒子(A)
本発明に用いられる架橋性粒子(A)は、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子と、重合性不飽和基を含む有機化合物(好ましくは、前記式(2)に示す基を含む特定有機化合物)とを結合させてなる架橋性粒子である。
【0020】
(1)酸化物粒子
本発明に用いられる酸化物粒子(以下、「酸化物粒子(P)」ということがある)は、得られる樹脂組成物の硬化被膜の無色性の観点から、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、ゲルマニウム、インジウム、スズ、アンチモン及びセリウムよりなる群から選ばれる少なくとも一つの元素の酸化物粒子である。
【0021】
これらの酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン及び酸化セリウムを挙げることができる。中でも、高硬度の観点から、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア及び酸化アンチモンが好ましい。これらは1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。さらには、このような元素の酸化物粒子は、粉体状又は溶剤分散ゾルであることが好ましい。溶剤分散ゾルである場合、他の成分との相溶性、分散性の観点から、分散媒は、有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。中でも、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレンが好ましい。
【0022】
酸化物粒子の数平均粒子径は、0.001μm〜2μmが好ましく、0.001μm〜0.2μmがさらに好ましく、0.001μm〜0.1μmが特に好ましい。数平均粒子径が2μmを越えると、硬化物としたときの透明性が低下したり、被膜としたときの表面状態が悪化する傾向がある。また、粒子の分散性を改良するために各種の界面活性剤やアミン類を添加してもよい。
【0023】
ケイ素酸化物粒子(例えば、シリカ粒子)として市販されている商品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノ−ルシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。また粉体シリカとしては、日本アエロジル(株)製 商品名:アエロジル130、アエロジル300、アエロジル380、アエロジルTT600、アエロジルOX50、旭硝子(株)製 商品名:シルデックスH31、H32、H51、H52、H121、H122、日本シリカ工業(株)製 商品名:E220A、E220、富士シリシア(株)製 商品名:SYLYSIA470、日本板硝子(株)製商品名:SGフレ−ク等を挙げることができる。
【0024】
また、アルミナの水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:アルミナゾル−100、−200、−520;アルミナのイソプロパノール分散品としては、住友大阪セメント(株)製 商品名:AS−150I;アルミナのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製 商品名:AS−150T;ジルコニアのトルエン分散品としては、住友大阪セメント(株)製 商品名:HXU−110JC;アンチモン酸亜鉛粉末の水分散品としては、日産化学工業(株)製 商品名:セルナックス;アルミナ、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛等の粉末及び溶剤分散品としては、シーアイ化成(株)製 商品名:ナノテック;アンチモンドープ酸化スズの水分散ゾルとしては、石原産業(株)製 商品名:SN−100D;ITO粉末としては、三菱マテリアル(株)製の製品;酸化セリウム水分散液としては、多木化学(株)製 商品名:ニードラール等を挙げることができる。
【0025】
酸化物粒子の形状は球状、中空状、多孔質状、棒状、板状、繊維状、又は不定形状であり、好ましくは、球状である。酸化物粒子の比表面積(窒素を用いたBET比表面積測定法による)は、好ましくは、10〜1000m2/gであり、さらに好ましくは、100〜500m2/gである。これら酸化物粒子の使用形態は、乾燥状態の粉末、又は水もしくは有機溶剤で分散した状態で用いることができる。例えば、上記の酸化物の溶剤分散ゾルとして当業界に知られている微粒子状の酸化物粒子の分散液を直接用いることができる。特に、硬化物に優れた透明性を要求する用途においては酸化物の溶剤分散ゾルの利用が好ましい。
【0026】
(2)有機化合物
本発明に用いられる有機化合物は、分子内に、重合性不飽和基を含む化合物であり、さらに、前記式(2)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]を含む特定有機化合物であることが好ましい。また、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものであることが好ましい。また、この有機化合物は、分子内にシラノ−ル基を有する化合物又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する化合物であることが好ましい。
【0027】
▲1▼重合性不飽和基
有機化合物に含まれる重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエ−ト基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
【0028】
▲2▼前記式(2)に示す基
特定有機化合物に含まれる前記式(2)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、具体的には、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1つとを併用することが好ましい。
前記式(2)に示す基[−X−C(=Y)−NH−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与せしめるものと考えられる。
【0029】
▲3▼シラノ−ル基又は加水分解によってシラノ−ル基を生成する基
有機化合物は、分子内にシラノール基を有する化合物(以下、「シラノール基含有化合物」ということがある)又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物(以下、「シラノール基生成化合物」ということがある)であることが好ましい。このようなシラノール基生成化合物としては、ケイ素原子にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が結合した化合物を挙げることができるが、ケイ素原子にアルコキシ基又はアリールオキシ基が結合した化合物、すなわち、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。
シラノール基又はシラノール基生成化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子と結合する構成単位である。
【0030】
▲4▼好ましい態様
有機化合物の好ましい具体例としては、例えば、下記式(3)に示す化合物を挙げることができる。
【0031】
【化3】
【0032】
式(3)中、R3、R4は、同一でも異なっていてもよいが、水素原子又はC1〜C8のアルキル基若しくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここで、mは、1〜3の整数である。
【0033】
[(R3O)mR4 3-mSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
R5は、C1からC12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。
また、R6は、2価の有機基であり、通常、分子量14から1万、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。
R7は、(n+1)価の有機基であり、好ましくは、鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
Zは、活性ラジカル種の存在下、分子間架橋反応をする重合性不飽和基を分子中に有する1価の有機基を示す。また、nは、好ましくは、1〜20の整数であり、さらに好ましくは、1〜10、特に好ましくは、1〜5である。
【0034】
本発明で用いられる有機化合物の合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。すなわち、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
前記式(3)に示す化合物を合成するためには、これらの方法のうち、(イ)が好適に用いられる。
【0035】
(3)架橋性粒子(A)の製造方法
本発明の架橋性粒子(A)の製造方法としては特に制限はないが、例えば、前記酸化物粒子及び有機化合物を反応させることを挙げることができる。酸化物粒子は、通常の保管状態で粒子表面に吸着水として水分を含むことが知られており、また、水酸化物、水和物等のシラノール基生成化合物と反応する成分が少なくとも表面にあると推定される。従って、架橋性粒子(A)製造時においては、シラノール基生成化合物と酸化物粒子とを混合し、加熱、攪拌処理することにより製造することも可能である。なお、有機化合物が有するシラノール基生成部位と、酸化物粒子とを効率よく結合させるため、反応は水の存在下で行われることが好ましい。ただし、有機化合物がシラノール基を有している場合は水はなくてもよい。従って、この架橋性粒子(A)は、酸化物粒子及び有機化合物を少なくとも混合する操作を含む方法により製造することができる。
【0036】
酸化物粒子への有機化合物の結合量は、架橋性粒子(A)(酸化物粒子及び有機化合物の合計)を100重量%として、好ましくは、0.01重量%以上であり、さらに好ましくは、0.1重量%以上、特に好ましくは、1重量%以上である。酸化物粒子に結合した有機化合物の結合量が0.01重量%未満であると、組成物中における架橋性粒子(A)の分散性が十分でなく、得られる硬化物の透明性、耐擦傷性が十分でなくなる場合がある。また、架橋性粒子(A)製造時の原料中の酸化物粒子の配合割合は、前述のように、好ましくは、5〜99重量%であり、さらに好ましくは、10〜98重量%である。
【0037】
以下、シラノール基生成化合物として、前記式(3)に示すアルコキシシリル基含有化合物(アルコキシシラン化合物)を例にとり、架橋性粒子(A)の製造方法をさらに詳細に説明する。
架橋性粒子(A)製造時においてアルコキシシラン化合物の加水分解で消費される水の量は、1分子中のケイ素上のアルコキシ基の少なくとも1個が加水分解される量であればよい。好ましくは、加水分解の際に添加、又は存在する水の量は、ケイ素上の全アルコキシ基のモル数に対し3分の1以上であり、さらに好ましくは、全アルコキシ基のモル数の2分の1以上3倍未満である。完全に水分の存在しない条件下でアルコキシシラン化合物と酸化物粒子とを混合して得られる生成物は、酸化物粒子表面にアルコキシシラン化合物が物理吸着した生成物であり、そのような成分から構成される架橋性粒子(A)を含有する組成物の硬化物においては、高硬度及び耐擦傷性の発現の効果は低い。
【0038】
架橋性粒子(A)製造時においては、前記アルコキシシラン化合物を別途加水分解操作に付した後、これと粉体酸化物粒子又は酸化物粒子の溶剤分散ゾルを混合し、加熱、攪拌操作を行う方法;又は、前記アルコキシシラン化合物の加水分解を酸化物粒子の存在下で行う方法;また、他の成分、例えば、化合物(C)等の存在下、酸化物粒子の表面処理を行う方法等を選ぶことができる。この中では、前記アルコキシシラン化合物の加水分解を酸化物粒子の存在下で行う方法が好ましい。架橋性粒子(A)製造時、その温度は、好ましくは、0℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは、20℃以上100℃以下である。また、処理時間は通常5分から24時間の範囲である。
【0039】
架橋性粒子(A)製造時において、粉体状の酸化物粉体を用いる場合、前記アルコキシシラン化合物との反応を円滑に且つ均一に行わせることを目的として、有機溶剤を添加してもよい。そのような有機溶剤としては、前記酸化物粒子の溶剤分散ゾルの分散媒として用いたものと同じものを用いることができる。これらの溶剤の添加量は反応を円滑、均一に行わせる目的に合う限り特に制限はない。
【0040】
原料として酸化物粒子の溶剤分散ゾルを用いる場合、溶剤分散ゾルと、有機化合物とを少なくとも混合することにより、架橋性粒子(A)を製造することができる。ここで、反応初期の均一性を確保し、反応を円滑に進行させる目的で、水と均一に相溶する有機溶剤を添加してもよい。
【0041】
また、架橋性粒子(A)製造時において、反応を促進するため、触媒として、酸、塩又は塩基を添加してもよい。酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸;メタンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、フタル酸、マロン酸、蟻酸、酢酸、蓚酸等の有機酸;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸等の不飽和有機酸を、塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩酸塩、テトラブチルアンモニウム塩酸塩等のアンモニウム塩を、また、塩基としては、例えば、アンモニア水、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン等の1級、2級又は3級脂肪族アミン、ピリジン等の芳香族アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウムヒドロキシド類等を挙げることができる。
【0042】
これらの中で好ましい例は、酸としては、有機酸、不飽和有機酸、塩基としては3級アミン又は4級アンモニウムヒドロキシドである。これらの酸、塩又は塩基の添加量は、アルコキシシラン化合物100重量部に対して、好ましくは、0.001重量部から1.0重量部、さらに好ましくは、0.01重量部から0.1重量部である。
【0043】
また、反応を促進するため、脱水剤を添加することも好ましい。
脱水剤としては、ゼオライト、無水シリカ、無水アルミナ等の無機化合物や、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル、テトラエトキシメタン、テトラブトキシメタン等の有機化合物を用いることができる。中でも、有機化合物が好ましく、オルト蟻酸メチル、オルト蟻酸エチル等のオルトエステル類がさらに好ましい。
なお、架橋性粒子(A)に結合したアルコキシシラン化合物の量は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少%の恒量値として、空気中で110℃から800℃までの熱重量分析により求めることが出来る。
【0044】
架橋性粒子(A)の樹脂組成物中における配合量は、組成物[架橋性粒子(A)、リン酸エステルモノマー(B)及び化合物(C)の合計]を100重量%として、5〜90重量%配合することが好ましく、10〜70重量%がさらに好ましい。5重量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となることがあり、90重量%を超えると、硬化しない(膜にならない)ことがある。なお、架橋性粒子(A)の量は、固形分を意味し、架橋性粒子(A)が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。
【0045】
2.リン酸エステルモノマー(B)
本発明に用いられるリン酸エステルモノマー(B)は、前記式(1)に示す重合性酸性リン酸エステルである。このリン酸エステルモノマー(B)は、組成物を硬化塗膜にしたときの、硬度、耐擦傷性及び耐摩耗性と低カール性とのバランスを向上させるために好適に用いられる。
【0046】
本発明に用いられるリン酸エステルモノマー(B)としては、例えば、モノ又はビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(10−(メタ)アクリロイルオキシデシル)アシッドフォスフェート、モノ又はビス(1−クロロメチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルフェニルアシッドフォスフェート等,及びこれらのラクトン変性物、ポリオキシアルキレン変性物等を挙げることができる。中でも、硬度の高い硬化物を得るという観点から、モノ又はビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートが好ましい。
【0047】
本発明に用いられるリン酸エステルモノマー(B)は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。
【0048】
本発明においては、精製したリン酸エステルモノマー(B)は勿論のこと、副生成物を含むことのある工業的に生産されたリン酸エステルモノマー(B)をそのまま用いることもできる。
【0049】
工業的に生産されたリン酸エステルモノマー(B)としては、例えば、共栄社化学(株)製 商品名:ライトエステル P−1M、P−2M、日本化薬(株)製 商品名:KAYAMER PM−2、PM−21等を挙げることができる。
【0050】
本発明に用いられるリン酸エステルモノマー(B)の配合量は、組成物[架橋性粒子(A)、リン酸エステルモノマー(B)及び化合物(C)の合計]100重量部に対して、0.01〜15重量部配合することが好ましく、0.1〜10重量部が、さらに好ましい。0.01重量部未満であると、硬化物としたときに耐擦傷性及び耐摩耗性が十分でなくなることがあり、15重量部を超えると、硬化物としたときに硬度が十分でなくなることがある。
【0051】
3.化合物(C)
本発明に用いられる化合物(C)は、(B)以外の分子内に2以上の重合性不飽和基を含む化合物である。この化合物(C)は組成物の成膜性を高めるために好適に用いられる。化合物(C)としては重合性不飽和基を2以上含むものであれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリルエステル類、ビニル化合物類を挙げることができる。この中では、(メタ)アクリルエステル類が好ましい。
【0052】
以下、本発明に用いられる化合物(C)の具体例を列挙する。
(メタ)アクリルエステル類としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、エチレングルコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングルコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、及びこれらの出発アルコール類へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシド付加物のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に2以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴウレタン(メタ)アクリレート類、及びオリゴエポキシ(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。この中では、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0053】
ビニル化合物類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコ−ルジビニルエ−テル、ジエチレングリコ−ルジビニルエ−テル、トリエチレングリコ−ルジビニルエ−テル等を挙げることができる。
【0054】
このような化合物(C)の市販品としては、例えば、東亞合成(株)製 商品名:アロニックス M−400、M−408、M−450、M−305、 M−309、 M−310、M−315、M−320、M−350、M−360、M−208、 M−210、 M−215、 M−220、 M−225、 M−233、 M−240、 M−245、 M−260、 M−270、M−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600、M−221、M−203、TO−924、TO−1270、TO−1231、TO−595、TO−756、TO−1343、TO−902、TO−904、TO−905、TO−1330、日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD D−310、D−330、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、SR−295、SR−355、SR−399E、SR−494、SR−9041、SR−368、SR−415、SR−444、SR−454、SR−492、SR−499、SR−502、SR−9020、SR−9035、SR−111、SR−212、SR−213、SR−230、SR−259、SR−268、SR−272、SR−344、SR−349、SR−601、SR−602、SR−610、SR−9003、PET−30、T−1420、GPO−303、TC−120S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−167、R−526、R−551、R−712、R−604、R−684、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、KS−HDDA、KS−TPGDA、KS−TMPTA、共栄社化学(株)製 商品名:ライトアクリレート PE−4A、DPE−6A、DTMP−4A等を挙げることができる。
【0055】
本発明に用いられる、化合物(C)の配合量は、組成物[架橋性粒子(A)、リン酸エステルモノマー(B)及び化合物(C)の合計]を100重量%として、10〜90重量%配合することが好ましく、20〜85重量%がさらに好ましい。10重量%未満であると、硬化物としたときに硬度が不十分となることがあり、90重量%を超えると、硬化物としたときに低カール性が不十分となることがある。
なお、本発明の組成物中には、化合物(C)の外に、必要に応じて、分子内に重合性不飽和基を1つ有する化合物を含有させてもよい。
【0056】
4.重合開始剤
本発明の組成物においては、必要に応じて、前記架橋性粒子(A)、リン酸エステルモノマー(B)及び化合物(C)以外の配合成分として、(D)重合開始剤(以下、「重合開始剤(D)」ということがある)を配合することができる。
このような重合開始剤(D)としては、例えば、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物等(熱重合開始剤)、及び放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等(放射線(光)重合開始剤)の、汎用されているものを挙げることができる。
【0057】
放射線(光)重合開始剤としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4〓−ジメトキシベンゾフェノン、4,4〓−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジルー2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等を挙げることができる。
【0058】
放射線(光)重合開始剤の市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ(株)製 商品名:イルガキュア184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア1116、1173、BASF社製 商品名:ルシリンLR8953、LR8893、UCB社製 商品名:ユベクリルP36、フラテツリ・ランベルティ社製 商品名:エザキュアー KIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等を挙げることができる。
【0059】
本発明において必要に応じて用いられる重合開始剤(D)の配合量は、組成物[架橋性粒子(A)、リン酸エステルモノマー(B)及び化合物(C)の合計]100重量部に対して、0.01〜20重量部配合することが好ましく、0.1〜10重量部が、さらに好ましい。0.01重量部未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となることがあり、20重量部を超えると、硬化物としたときに内部(下層)まで硬化しないことがある。
【0060】
本発明の樹脂組成物を硬化させる場合、必要に応じて熱重合開始剤も併用することができる。好ましい熱重合開始剤としては、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができる。
具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等を挙げることができる。
【0061】
5.組成物の塗布(コーティング)方法
本発明の組成物は被覆材として好適であり、被覆の対象となる基材としては、例えば、プラスチック(ポリカ−ボネ−ト、ポリメタクリレ−ト、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS、AS、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレ−ト等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよく、コーティング方法は、通常のコーティング方法、例えばディッピングコ−ト、スプレ−コ−ト、フロ−コ−ト、シャワ−コ−ト、ロ−ルコ−ト、スピンコート、刷毛塗り等を挙げることができる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、乾燥、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
【0062】
本発明の組成物は、塗膜の厚さを調節するために、溶剤で希釈して用いることができる。例えば、被覆材として用いる場合の粘度は、通常0.1〜50,000mPa・秒/25℃であり、好ましくは、0.5〜10,000mPa・秒/25℃である。
【0063】
6.組成物の硬化方法
本発明の組成物は、熱及び/又は放射線(光)によって(前述のように、必要に応じ、熱重合開始剤及び/又は放射線(光)重合開始剤を用いて)硬化させることができる。
熱による場合、その熱源としては、例えば、電気ヒーター、赤外線ランプ、熱風等を用いることができる。
放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベ−タ線及びガンマ線の線源として、例えば、Co60等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0064】
II.硬化物
本発明の硬化物は、前記樹脂組成物を種々の基材、例えば、プラスチック基材にコーティングして硬化させることにより得ることができる。具体的には、組成物をコーティングし、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、上述の、熱及び/又は放射線で硬化処理を行うことにより被覆成形体として得ることができる。熱による場合の好ましい硬化条件は20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲内で行われる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加圧電圧は10〜300KV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0065】
本発明の硬化物は、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、低カ−ル性、及び密着性に優れた、特に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性及び低カール性のバランスに優れた特徴を有しているので、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器、建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の傷付き(擦傷)防止や汚染防止のための保護コーティング材;各種基材の接着剤、シ−リング材;印刷インクのバインダ−材等として好適に用いられる。
【0066】
【実施例】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 なお、以下において、部、%は特に記載しない限り、それぞれ重量部、重量%を示す。
また、本発明において「固形分」とは、組成物から溶剤等の揮発成分を除いた部分を意味し、具体的には、組成物を120℃のホットプレート上で1時間乾燥して得られる残渣物(不揮発成分)を意味する。
【0067】
有機化合物の合成
合成例1
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8部、ジブチルスズジラウレート0.2部からなる溶液に対し、イソフォロンジイソシアネート20.6部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間攪拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート71.4部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌することで有機化合物(S1)を得た。生成物中の残存イソシアネート量を分析したところ、0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。
【0068】
合成例2
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン38.4部、ジブチルスズジラウレ−ト0.2部からなる溶液に対し、1,3−ビス(イソシアナ−トメチル)シクロヘキサン38.7部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、70℃で3時間加熱攪拌した。これに2−ヒドロキシエチルアクリレ−ト22.7部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で10時間加熱攪拌することで有機化合物(S2)を得た。生成物中の残存イソシアネ−ト量を分析したところ、0.1%以下であり、反応がほぼ定量的に終了したことを示した。
【0069】
架橋性粒子(A)の製造
以下、架橋性粒子(A)の製造例を、製造例1〜製造例4に示し、その結果を表1にまとめて示す。
【0070】
製造例1
窒素気流下、合成例1で合成した有機化合物(S1)8.7部、メチルエチルケトンシリカゾル(P1)(日産化学工業(株)製、商品名:MEK−ST、数平均粒子径0.022μm、シリカ濃度30%)91.3部、イソプロパノール0.2部及びイオン交換水0.1部の混合液を、80℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.4部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで無色透明の架橋性粒子(A)分散液(分散液a)を得た。分散液aをアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、35%であった。
【0071】
製造例2
窒素気流下、合成例2で合成した有機化合物(S2)8.3部、前記メチルエチルケトンシリカゾル(P1)(MEK−ST)91.7部及びイオン交換水0.8部の混合液を、80℃、3時間で攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル4.9部を添加し、さらに1時間同一温度(80℃)で加熱攪拌することで半透明の架橋性粒子(A)分散液(分散液b)を得た。この分散液bの固形分含量を製造例1と同様に求めたところ34%であった。
【0072】
製造例3
合成例1で合成した有機化合物(S1)4.8部、イソプロパノールアルミナゾル(P2)(住友大阪セメント(株)製、商品名:AS−150I、数平均粒子径0.013μm、アルミナ濃度15%)95.2部、p−メトキシフェノール0.01部、及びイオン交換水0.1部の混合液を60℃で3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.0部を添加し、さらに1時間同温度で加熱攪拌することで架橋性粒子(A)分散液(分散液c)を得た。この分散液cの固形分含量を製造例1と同様に求めたところ19%であった。
【0073】
製造例4
合成例1で合成した有機化合物(S1)8.2部、トルエンジルコニアゾル(P3)(数平均粒子径0.01μm、ジルコニア濃度30%)91.8部、イオン交換水0.1部の混合液を、60℃、3時間攪拌後、オルト蟻酸メチルエステル1.3部とメチルエチルケトン41.2部を添加し、さらに1時間同一温度で加熱攪拌することで架橋性粒子(A)分散液(分散液d)を得た。この分散液dの固形分含量を製造例1と同様に求めたところ25%であった。
【0074】
【表1】
【0075】
組成物の調製例
以下、本発明の組成物の調製例を実施例1〜4、及び比較例1〜2に示す。また、各成分の配合重量比を表2に示す。
【0076】
実施例1
製造例1で製造した分散液a151部(架橋性粒子53部、分散媒メチルエチルケトン(MEK))、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト22.5部、ペンタエリスリトールトリアクリレート22.5部を添加、混合した後、ロータリーエバポレーターを用いて液量が129部になるまで減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)122部、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート及びビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート混合物(共栄社化学(株)製 商品名:ライトエステルP−2M)(以下、「リン酸エステルモノマーP−2M」ということがある)2.0部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.9部、及び2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパノン−1 0.9部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液の組成物を得た。この調製作業は紫外線を遮蔽した部屋内で行った。この組成物の固形分含量を製造例1と同様に求めたところ、40%であった。
【0077】
実施例2、3
表2に示す組成に変えたこと以外は実施例1と同様の操作により、実施例2、3の各組成物を得た。
【0078】
実施例4
乾燥空気気流下、紫外線を遮蔽した容器中において、製造例3で製造した分散液c279部(架橋性粒子53部、分散媒トルエン)、シクロヘキサノン62部、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト23.3部、ペンタエリスリトールトリアクリレート23.3部、リン酸エステルP−2M 0.4部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.9部、及び2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパノン−1 0.9部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液の組成物を得た。この組成物の固形分含量を製造例1と同様に求めたところ、25%であった。
【0079】
実施例5
表2に示す組成に変えたこと以外は実施例4と同様の操作により、実施例5の組成物を得た。
【0080】
比較例1
表2に示す組成に変えたこと以外は実施例1と同様の操作により、比較例1の各組成物を得た。
【0081】
比較例2
製造例1で用いたメチルエチルケトンシリカゾル(P1)177部(酸化物粒子(P)53部、分散媒メチルエチルケトン(MEK))、ジペンタエリスリト−ルヘキサアクリレ−ト22.5部、ペンタエリスリトールトリアクリレート22.5部を添加、混合した後、ロータリーエバポレーターを用いて液量が129部になるまで減圧濃縮した後、メチルイソブチルケトン(MIBK)122部、リン酸エステルモノマーP−2M 2.0部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン0.9部、及び2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−モルフォリノプロパノン−1 0.9部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液の組成物を得た。この組成物の固形分含量を製造例1と同様に求めたところ、40%であった。
【0082】
硬化物の評価
本発明の組成物の効果を明らかにするため、上記組成物を用いて塗布、乾燥、光照射して得られた硬化物の評価を行った。以下にその評価方法を示す。また、評価結果を表2に示す。
【0083】
1.塗布、乾燥、硬化条件
表2の実施例1〜4及び比較例1、2においては、基材上にバーコーターを用いて、乾燥膜厚10μmになるように塗布した後、80℃の熱風式乾燥機中で3分間乾燥後、コンベア式水銀ランプを用いて1J/cm2の光量で照射後、25℃で、24時間保管後評価した。
【0084】
2.基材
鉛筆硬度試験においてはガラス板を、また、耐スチールウール擦傷性、密着性評価の評価においては、厚さが188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、カール試験では100μmのPETフィルムを、耐摩耗性試験では厚さ2mmのアクリル板をそれぞれ用いた。
【0085】
3.評価法
・鉛筆硬度:
JIS K5400に準拠し、ガラス基板上で硬化させた被膜を評価した。
・密着性:
JIS K5400における碁盤目セロハンテ−プ剥離試験に準拠し、1mm角、計100個の碁盤目における残膜率(%)で評価した。
・耐スチールウール(SW)擦傷性:
テスター産業(株)製 学振型耐磨耗試験機を、500g荷重をかけた#0000スチールウールにて30往復し、試験した塗膜面の傷つき状態を目視にて評価した。傷なしの場合を0、1〜10本の傷がある場合を△、10本を超える傷がある場合を×とした。
・ 耐摩耗性:
JIS K5400における耐摩耗性試験に準拠し、(株)安田精機製作所製テーパー試験機、及び摩耗輪CS−10Fを用い、500g荷重下にて500回転させ、試験前後の試験片の重量変化(mg)を評価した。
・カール試験:
本発明の組成物を100μm厚さのPET上に前述の塗布、硬化条件で製膜直後、カッターナイフで10cm×10cm片に切り出し、25℃相対湿度50%にて24時間放置後、4つの角の基準面からのそり量(単位mm)の平均値を求めた。
【0086】
【表2】
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によって、優れた塗工性を有し、かつ各種基材の表面に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性、低カール性、及び密着性に優れた、特に、硬度、耐擦傷性、耐摩耗性及び低カール性のバランスに優れた被膜を形成し得る樹脂組成物及びその樹脂組成物の硬化物を提供することができる。
Claims (7)
- 前記有機化合物が、[−O−C(=O)−NH−]基を含み、さらに、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1を含むものである請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
- 前記有機化合物が、シラノール基を有する化合物又は加水分解によってシラノール基を生成する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記(B)重合性酸性リン酸エステルの含有量が、(A)、(B)及び(C)の配合量の合計を100重量部として、0.01〜15重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 前記(B)重合性酸性リン酸エステルが、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート及び/又はビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェートである請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
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