JP4916195B2 - 積層型多孔性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は積層型多孔性フィルムに関し、水滴は通過させないが水蒸気等の気体を通過させる透湿型の積層型多孔性フィルムにおいて、透気度と強度のバランスを良好とし、衛生材料用バックシート、電池用セパレーター、分離膜、農業用資材、医療用フィルム等に好適に用いられるものである。
近年、使い捨てオムツの需要が高まっており、そのバックシートとなる透湿性フィルムのニーズも年々増加しつつある。また、使い捨て生理用品の用途でもバックシートとして透湿性フィルムを使用する傾向が強まっている。
このようなニーズの増大に対応するため、透湿性フィルムには大量生産に適した加工性の向上と同時にコストダウンが求められており、フィルム自体の機械特性および熱特性などを極力維持しつつ、どこまで薄膜化できるかが課題となっている。
特に、使い捨ておむつや生理用品に使用される透湿性フィルムの場合、コストダウンと軽量化などの目的から薄膜化への要求が市場において非常に強い。一方で、最も重要な機能である透湿性はさらに高いレベルを要求されている。
しかしながら、透湿性フィルムにおいて、透湿性および強度を保持しながら薄膜化させることは困難であった。
透湿性フィルムとしては、ポリオレフィン樹脂に無機充填剤を配合した樹脂組成物を成形し、その後、延伸処理により微細孔を設けた多孔性フィルムが一般的に用いられている。
前記多孔性フィルムでは、薄膜化すると成形時の樹脂組成物の配向状態が機械方向に偏るため、ボイド(空孔)が厚み方向につながりにくく、十分な透湿度が得られない問題がある。無理に延伸倍率を高倍率として透湿度を得ようとすると強度が極端に低下し、膜厚が薄いほどより強度の低下が顕著となり物性のバランスが崩れる問題がある。
また、透湿度あるいは透気度を良化させる一手法として、組成物を調整する方法がある。例えば、フィラーの粒径を大きくするという方法もあるが、該方法ではピンホールの発生確率が増加し、試験研究的には可能なものの生産を考慮するとの、そのフィラーの最大粒径のコントロールが必要となり、現実的ではない。
さらに、薄膜化に伴い強度が低くなり、紙オムツや生理用品の製造ラインでの加工性が悪化する。
例えば、特開平2−296840号公報(特許文献1)では、充填剤の容積比率が大きい層を表面に位置させた積層構造の多孔性フィルムが提供されている。当該発明は、単層の多孔性フィルムでは表面がスキン層を形成して表面開口率が小さくなるという問題点を解決し、表面開口率を増大させることに成功している。
また、特開平3−53931号公報(特許文献2)では、表層に中層のポリオレフィンよりも融点の低い樹脂からなる層を配置させた積層構造の多孔性フィルムが提供されている。当該発明では、熱的挙動が異なる樹脂を利用してヒートシール性が付与されている。
さらに、特許第3169274号(特許文献3)では、内外層にポリオレフィンからなる層を、中間層にポリアミドからなる層を配置させた積層構造の多孔性フィルムが提供されている。当該積層多孔性フィルムは、優れた引張強度を有し、かつ、粘着テープ剥離耐性も優れたものとされている。
しかしながら、前記特許文献1〜特許文献3の積層型多孔性フィルムでは、厚みを大きくすれば触感が硬くなり、弾性が劣る傾向があり、紙オムツとした場合に問題がある。また、特許文献1の積層多孔性フィルムでは特にB層の充填剤の配合量が少ないため、満足な透湿性を得ようとすると延伸倍率が高くなり、その結果強度が低くなってしまう一方で、強度を高く保とうとすると延伸倍率を低く抑えなければならず、満足な透湿性が得られないという問題があった。特許文献2の積層多孔性フィルムでは充填剤の配合量が多いため、樹脂中の充填剤の分散性が悪く、フィルムの機械強度が損なわれるという問題があった。
特許文献3の積層型多孔性フィルムでは、内外層を構成する樹脂と中層を構成する樹脂とが異なるために、内層と中層および中層と外層の間にさらに接着樹脂層を介在させたり、内層および外層に接着性樹脂をブレンドしたりする必要がある。その結果、製造工程が煩雑になり、大量生産に適さず、コスト低下を図ることができないという問題がある。
特開平2−296840号公報 特開平3−53931号公報 特許第3169274号
本発明は、前記した問題に鑑みてなされたもので、透気度と強度とをバランスを取りながら改良して、触感が良好で強度も備えた多孔性フィルムを提供することを課題としている。
本発明者らは、鋭意実験および検討を重ねた結果、成形時におけるフィルムの配向バランスが透気度に大きな影響を及ぼすことを知見した。特に、フィルムの配向バランスは、多孔性フィルムを作成する際のフィラー入り樹脂組成物のうち、ベース樹脂のみで押出成形した成形したシート(以下、原シートと称す)において、原シートの配向バランスが多孔性フィルムの透気度に大きく影響することを知見した。
本発明では、前記原シートのフィルムの配向バランスの評価手法として、成形時におけるMD/TDの配向バランスの指標となるabbe屈折率計で測定した複屈折率△nを用いて評価し、透気度を適正とできる複屈折率の範囲を鋭意実験を繰り返して求めた。
なお、前記MD方向とは押し出し成形時における押し出し方向(縦方向)で、TD方向とは直交する横方向を指す。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであり、
A層とB層との少なくとも2層を積層している積層型多孔性フィルムであって、
前記A層とB層は共にベース樹脂にフィラーを含有した樹脂組成物からなると共に、A層とB層の前記ベース樹脂は相違させており、
前記A層およびB層のベース樹脂はいずれも、これらベース樹脂のみでシートを成形した場合に、該シートの少なくとも片面はabbe屈折率計で、JISK7142に準拠して測定した複屈折率△nが、Δn<0.9×10−3となるものが用いられ、
かつ、前記積層された多孔性フィルムは、透気度が2000秒/100ml以下、JIS L−1096を準用して測定したシングルタング引裂強度2.0×10−2N以上であることを特徴とする積層型多孔性フィルムを提供している。
くしながら強度を保持すると共に透湿性を高めるためには、単層の多孔性フィルムよりは、積層型多孔性フィルムとすることが好ましいことを知見した。この積層型多孔性フィルムの成形方法としては、フィラーを含有した異なる種類の樹脂組成物を、Tダイ成形法あるいはインフレーション成形法からなる共押出法で積層フィルム成形し、その後、該積層フィルムを延伸してフィラーを基点として多孔化すると、透気度を高めながらフィルム強度を高めることができ、その場合においても、各層を構成するベース樹脂のフィルム配向が透気度に大きな影響を与えることも知見した。
前記本発明に係わる積層型多孔性フィルムでは、前記A層とB層のベース樹脂は、130℃を境界として溶解ピーク温度が相違するものとし、一方は溶解ピーク温度が130℃未満、他方は130℃以上としている2種類の熱可塑性樹脂を用いている。
前記融解ピーク温度が相違する少なくとも2種の熱可塑性樹脂としては、コストの面などからポリオレフィン系樹脂類を用いて積層構造(A層とB層)とすることが好ましい。 このように、積層型多孔性フィルムの各層を同系統の樹脂で構成することにより、層間の接着性を確保するために特別な処理を行う必要がなく、生産工程を簡単として大量生産に適したものとすることができる。かつ、薄膜化しても優れた透湿性を確保して、従来の単層の多孔性フィルムではなし得なかった薄膜化と透湿性の両立を図ることができるばかりでなく、機械方向の引裂強度が高いため加工性を向上させることができる。
詳細には、前記A層に使用されるポリオレフィン(a)は融解ピーク温度が60℃以上130℃未満の、エチレン、プロピレンまたはブテン等のモノオレフィン重合体および共重合体が好適に用いられる。ポリオレフィン(a)としては、例えば線状低密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンランダムもしくはブロック共重合体、低密度ポリブテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、メタロセン触媒を用いて重合された線状低密度ポリエチレン等が挙げられる。
さらに、特にフィルムの柔軟性を重視する場合、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体もしくはエチレンメタクリル酸共重合体などのアイオノマーや、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブチレンゴムもしくはエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体などのオレフィン系エラストマーや、エチレン・ビニルアルコール共重合体などもポリオレフィン(a)として用いることができる。
なお、ポリオレフィン(a)としては上記の樹脂の2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、ポリオレフィン(a)としては線状低密度ポリエチレンがしなやかで強靱であることから好ましい。また、線状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレンの混合物も好適に用いられる。
線状低密度ポリエチレンは炭素数が3〜8の分子骨格であるα−オレフィンとエチレンとの共重合体である。
分岐状低密度ポリエチレンはエチレンを公知の高圧法で重合させることによって得られるものである。
線状低密度ポリエチレンと、分岐状低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレンの混合物を用いる場合、その混合比率としては、線状低密度ポリエチレンが通常75〜98質量部好ましくは80〜95質量部と、分岐状低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレンが通常25〜2質量部好ましくは20〜5質量部である。分岐状低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレンが25質量部を超えると溶融状態でのフィルムの伸びが低下し、フィルムに加工することが難しくなる。一方、2質量部未満では均一厚みのフィルムを得ることが難しくなる。
前記A層は、ポリオレフィン(a)と他の樹脂を組み合わせてもよい。ただし、その場合はポリオレフィン(a)が樹脂成分中50質量部以上、好ましくは70質量部以上、より好ましくは90質量部以上である。
前記B層に使用されるポリオレフィン(b)は、融解ピーク温度が130℃以上250℃以下の、エチレン、プロピレンまたはブテン等のモノオレフィン重合体および共重合体が好適に用いられる。ポリオレフィン(b)としては、例えば高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリメチルペンテン、ノルボルネン系樹脂などの環状ポリオレフィンなどが挙げられる。なかでも、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリメチルペンテンが好ましく、ポリプロピレンまたはポリメチルペンテンがより好ましい。B層においては、上記ポリオレフィン(b)と他の樹脂を組み合わせてもよい。ただし、その場合はポリオレフィン(b)が樹脂成分中50質量部以上、好ましくは70質量部以上、より好ましくは90質量部以上を占める。
ポリオレフィン(a)およびポリオレフィン(b)の融解ピーク温度とは、JIS
K7121に準拠し、示査走査型熱量計(パーキンエルマ社製、機種名「DSC−7」)を使用し、昇温速度10℃/10分にて得られたDSC融解曲線のピーク値を指す。
記本発明の積層型多孔性フィルムの各層は、いずれも、ベース樹脂のみを押出成形した時に、成形されるシート(原シート)の少なくとも片面は、abbe屈折率計でJISK7142に準拠して測定した複屈折率ΔnがΔn<0.9×10−3となるベース樹脂を使用している。
ここでいうベース樹脂とは、実際に多孔性フィルムを作成する際に使用する樹脂組成物のうち、フィラーを除いた樹脂混合物のことを指す。このベース樹脂を使った原シートを採取する成形条件は、実際に成形する条件とほぼ同条件で行っている。
前記のように、abbeの屈折率計で測定した複屈折率Δnを、Δn<0.9×10−3であり、より好ましくは、0.4×10−3<Δn<0.9×10−3である。
複屈折率Δnが、Δn<0.9×10−3を越えると、透気度の数値が高く、また他の物性、特にシングルタング引裂強度とのバランスが悪くなることがあり、前記範囲内であると、物性バランスの特に優れた多孔性フィルムを得ることができる。
更に、abbeの屈折率計で測定した面配向度Δpが、Δp<1.3×10−3であることが好ましい。より好ましくは、0.7×10−3<Δp<1.3×10−3であり、更に好ましくは0.8×10−3<Δp<1.2×10−3である。
Δp≧1.3×10−3であると、透気度の数値が高く、また他の物性、特に引裂強度とのバランスが悪くなる傾向にある。
使用するフィラーからなる充填剤に関しては、積層型のA層およびB層とも、平均粒径が0.1〜3.0μmの範囲のものを用いている。フィラーの平均粒径は浸み出し防止性に極めて大きな影響があり、平均粒径が0.1μm未満であると、圧延処理で空孔を形成する際に空孔が形成され難く透気性および透湿性が不十分となる。一方、平均粒径が3.0μmより大きいと、空孔が大きくなりすぎ、防水性が低下し、紙おむつや生理用品とした場合に人尿や経血の浸み出し量が多くなるからである。フィラーの平均粒径は0.5〜2.0μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。
フィラーの平均粒径は、恒圧式透過法により、島津式粉体比表面積測定器SS−100を用いて測定した比表面積から算出している。測定条件としては、試料重量を3.0g、試料厚を1.35cm、試料層の断面積を2cm、空気圧力を50cmHOとし、空気の粘性係数を181×10−6g/(cm・sec)として計算している。
前記フィラーとしては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、シリカまたはタルク等の無機充填剤が挙げられる。これらのうち、炭酸カルシウムおよび硫酸バリウムが特に好ましい。
前記フィラーは、樹脂中での分散性向上のため表面処理剤で充填剤の表面を処理しておくのが好ましい。かかる表面処理剤としてはフィラーの表面を被覆することにより、その表面を疎水化できるものが好ましい。例えばステアリン酸もしくはラウリン酸等の高級脂肪酸またはそれらの金属塩、ヒドロキシカルボン酸類、ヒドロキシカルボン酸の重合物、これらの水素添加物、これらの金属塩等を挙げることができる。
表面処理剤の処理量としては、フィラー100質量部に対し0.5〜5質量部が好ましく、更に好ましくは0.5〜3質量部である。少なすぎても多すぎても樹脂中でのフィラーの分散性が悪くなり押出が安定しにくくなる。処理方法としては、ヘンシェルミキサーまたはリボンブレンダー等の通常の攪拌機を用い、室温ないし加熱された状態で処理する一般的な方法や表面処理剤を噴霧しながら処理する方法等がある。
フィラーの混合比率は樹脂組成物全体に対する容積率で12〜60%が好ましい。容積率を12〜60%とするのは、12%未満であると、十分な通気性および透湿性が得られにくく、高い透湿度を得ようとすると延伸倍率が高くなりすぎて引裂強度が不十分となる場合がある。また、フィラーの混合比率が樹脂組成物全体の容積率で60%を超えると、樹脂中のフィラーの分散性が悪いため欠陥が発生しやすく、かつフィルムの機械強度も損なわれる場合がある。上記範囲は15〜55%がより好ましく、20〜50%が更に好ましい。
A層におけるフィラーの混合比率とB層におけるフィラーの混合比率の関係は特に限定されない。両者が同じであってもよいし、異なっていてもよい。しかし、A層におけるフィラーの容積率とB層におけるフィラーの容積率の差が0〜20%であることが好ましく、0〜15%であることがより好ましい。
積層型多孔性フィルムのA層およびB層を構成する樹脂組成物には、ポリオレフィン(a)またはポリオレフィン(b)を主成分とする樹脂成分およびフィラーに加えて、更に第三成分を添加してもよい。第三成分としては、エステル化合物、アミド化合物、側鎖を有する炭化水素重合体、鉱油、シリコーンオイル類を挙げることができる。このような第三成分を配合することにより、本発明の積層型多孔性フィルムを製造する際の加工性が向上する等の利点がある。
具体的には、エステル化合物としては、アルコールとカルボン酸からなる構造のモノもしくはポリエステル系化合物であればいかなるものでもよく、ヒドロキシル基およびカルボキシル基末端を分子内に残した化合物でも、エステル基の形で封鎖された化合物でも良い。具体的には脂肪酸エステル化合物が挙げられ、より具体的にはステアリルステアレート、ソルビタントリステアレート、エポキシ大豆油、極度硬化油、硬化ひまし油、精製ひまし油、トリメリット酸トリオクチル、エチレングリコールジオクタノエート、テトラグリセリンペンタエステル、ペンタエリスリトールテトラオクタノエート等が挙げられる。
アミド化合物はアミンとカルボン酸からなる構造のモノもしくはポリアミド化合物であればいかなるものでもよく、アミノ基およびカルボキシル基末端を分子内に残した化合物でも、アミド基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的にはステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、トリメチレンビスオクチル酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、トリオクタトリメリット酸アミド、ジステアリル尿素、ブチレンビスステアリン酸アミド、キシリレンビスステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルフタル酸アミド、ジステアリルオクタデカ二酸アミド、イプシロンカプロラクタム等およびそれらの誘導体が挙げられる。
側鎖を有する炭化水素重合体としては、ポリα−オレフィン類で、炭素数4以上の側鎖を有するオリゴマー領域のものが好ましい。エチレン−プロピレンの共重合体、例えば三井石油化学工業(株)製の商品名「ルーカント」やそのマレイン酸誘導体;イソブチレンの重合体、例えば出光石油化学工業(株)製の商品名「ポリブテンHV−100」;ブタジエンもしくはイソプレンのオリゴマーおよびその水添物、1−ヘキセンの重合物、ポリスチレンの重合物およびこれらから誘導される誘導体;ヒドロキシポリブタジエンやその水添物、例えば末端ヒドロキシポリブタジエン水添物(三菱化学(株)製の商品名「ポリテールHA」)等が挙げられる。鉱油としては、流動パラフィンまたはパラフィンワックス等が挙げられる。
シリコーンオイル類としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコンオイル)、ポリメチルフェニルシロキサンもしくは環状ジメチルポリシロキサンのようなシロキサン構造とアルキル基のみで構成されるものや、アルキル基が各種の官能基で変性されたシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、メルカプトシリコーンオイル、メチルスチリル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、メチルアルコキシ変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記第三成分の添加量は、フィルムの厚みの均一性、延伸性、フィルムの風合い、フィルムの成形性、フィルムの接着性などに影響を及ぼす。添加量が多すぎると、これらがフィルムからブリードアウトし、接着性が悪くなる。一方、添加量が少なすぎると、フィルムが硬くなり、風合いや厚み均一性も悪くなる。かかる点を考慮しつつ第三成分の種類に応じて添加量を適宜選択すればよい。具体的には、第三成分の添加量は各層を構成する樹脂組成物100質量部に対し0.5〜5質量部が好ましい。
記積層型のA層およびB層を構成する樹脂組成物には、当該技術分野で用いられている添加物、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を配合してもよい。
本発明の多孔フィルムは全体厚みが5〜25μmであることが好ましい。5〜25μmとしているのは、5μm未満であると機械的強度および剛性が不足し、加工性が悪くなる場合があり、25μmを超えるとフィルムの生産効率が悪くなる場合があるからである。特に10〜20μmが好ましい。
本発明の積層型とすると単層よりも透気性が良いフィルムを得やすい。積層型の多孔性フィルムにおいて、全体厚みを100としたとき、1層または2層以上存在するA層の厚みの合計が7〜93、好ましくは50〜90、より好ましくは70〜90とし、1層または2層以上存在するB層の厚み合計が93〜7、好ましくは50〜10、より好ましくは30〜10としている。
本発明の積層型多孔フィルムにおいては、前記A層とB層の少なくとも2層を積層した構成であれば限定されない。2層、3層、4層、5層構成のいずれでも良い。例えば、A層/B層の2層構造、A層/B層/A層またはB層/A層/B層の3層構造、A層/B層/A層/B層の4層構造、A層/B層/A層/B層/A層またはB層/A層/B層/A層/B層の5層構造等が挙げられる。なかでも本発明においては3層構造を有することが好ましい。なお、A層が2層以上存在する場合、各A層は必ずしも同じ組成でなくてもよい。B層が2層以上存在する場合も同様である。
また、前記A層およびB層の2種類の層に加えて、A層およびB層以外の層(α層)を積層させてもよい。α層を積層させることにより、例えばインキの濡れ性または撥水性の向上など層間の接着性や表面の特性を改善することができる。
α層を積層させる場合の層構成も特に限定されない。例えば、A層/α層/B層/α層/A層、またはB層/α層/A層/α層/B層のように5層構造を成していてもよい。さらに、α層/A層/B層/A層、またはα層/B層/A層/B層のように4層構造を成していてもよい。
前記α層としては特に限定されないが、例えば水蒸気透過性を有するポリアミドからなる層が挙げられる。ポリアミドとして、具体的にはε−カプロラクタム等の開環重合により得られるポリアミド、ヘキサメチレンジアミン等とアジピン酸、セバシン酸もしくはドデカン二酸等との重縮合により得られる脂肪族ポリアミドが挙げられる。
本発明の積層型多孔性フィルムの製造方法としては、少なくともA層とB層とを構成する樹脂組成物を、Tダイ成形あるいはインフレーション成形からなる共押出法により積層シートとして成形し、前記成形した積層シートを延伸して、前記フィラーを基点として孔をあけて多孔性としていることが好ましい。
前記共押出法のうち、引裂強度の観点からはインフレーション成形を採用することが好ましい。インフレーション成形の場合、溶融変形時に横方向にも配向するので、Tダイ成形よりも引裂強度を高めることができる。
詳細には、まず、各層を構成する樹脂組成物を作製する。具体的には、ポリオレフィンを主成分とする樹脂成分、フィラー、所望により第三成分およびその他の添加剤をヘンシェルミキサー、スーパーミキサーまたはタンブラー型ミキサー等を用いて混合した後、一軸もしくは2軸押出機またはニーダー等で加熱混練し、ペレット化する。樹脂組成物を混練したのちペレット化せずにフィルムの製膜工程に供しても良い。
積層型フィルムの製膜方法としては、熱接着法、押出しラミネーション法、ドライラミネーション法、共押出法等が挙げられるが、前記したように共押出法が好適に用いられる。これは、特に全体厚みが25μm以下のような薄膜の場合は、A層およびB層を別々に製膜してから熱ロールなどで融着させる方法は均一な接着強度で接着させにくく、皺などの欠陥も発生しやすいからである。さらに、共押出法で積層する場合は、A層およびB層の結晶化温度の違いにより、結晶化温度が低い樹脂を含むA層が製膜時、機械方向の配向が緩和し、延伸により多孔化しやすくなるので、各層を単層で製膜した場合より通気性および透湿性が高くなる傾向があり好ましい。
前記共押出法のうち、前記したように、引裂強度の観点からインフレーション成形を採用することが好ましい。
共押出法においては、各層を構成する樹脂組成物のペレットを別々の押出機でポリオレフィンの融点以上、好ましくは融点+20℃以上、分解温度未満の温度において溶融し押出を行い、ダイス内またはダイスに流入する前の合流部で、溶融状態で積層させてからシート状に製膜している。
製膜されたフィルムに対し、ロール法またはテンター法等の公知の方法により、室温〜樹脂の軟化点(JIS
K 6760に規定される方法により測定した値)において延伸を行い、樹脂成分とフィラーとの界面剥離を起こさせて微細孔を形成して多孔性フィルムとしている。
延伸方向は一軸方向のみでも二軸方向でも良く、二軸方向を同時に延伸するチューブラー二軸延伸でもクリップレール式のテンターを使用する逐次二軸延伸でもよい。
また、延伸は一段で行ってもよいし、多段階に分けて行ってもよい。
延伸倍率は特に限定されないが、倍率が高すぎても低すぎても好ましくない。フィルムの配向状態を制御して、得られるフィルムの水蒸気および空気の透過性を保持し、液の浸み出しを防止し、フィルムのソフト感等を得られる性状となる延伸倍率とする。かかる観点から、本発明における延伸倍率は、一軸方向の延伸倍率が1.2〜5倍、好ましくは1.5〜3.0倍の範囲内である。二軸方向に延伸する場合は、その面積延伸倍率は1.5〜10.0、好ましくは2.0〜5.0の範囲内である。
本発明によって製造される積層型多孔性フィルムの物性は、各層の樹脂成分の選定、層比、フィラーの充填割合、フィラーの種類もしくは粒径、第3成分の種類もしくは配合割合、延伸条件(延伸方向、延伸倍率、延伸温度等)によって自由に変えることができる。 しかし、大量生産に見合った加工性を付与するため、本発明の多孔性フィルムにおいては、機械(MD)方向のシングルタング引裂強度を測定した場合に、2.0×10−2N以上で、100gf以下となるようすることが好ましい。これは、シングルタング引裂強度が2.0×10−2N以上となると、製造工程における加工性が良くなることによる。
さらに、本発明の多孔性フィルムでは、透気度を2000秒/100ml以下としている。これは、透気度が2000秒/100mlより大きければ、蒸気の透過性が悪くなり、例えば衛生材料に応用した場合には蒸れが生じ、建材に応用した場合には結露が生じるなど透過性フィルムとして実用に適さない。より好ましくは、透気度は10〜1,000秒/100ml、特に、20〜800秒/100mlであることがより好ましい。
前記特性を有する本発明の多孔性フィルムは、膜厚が薄くても、適度の透気性を有する。そのため、使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料、手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料、ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料、壁紙もしくは屋根防水材等の建築用材料、乾燥剤、防湿剤、脱酸素剤、使い捨てカイロ、鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材、電池用セパレーター等の資材として極めて好適に使用できる。
また、スポーツウエアもしくは雨具などの衣料用材料、使い捨ておむつもしくは生理用品などの衛生材料、食品包装等の包装材などに使用される場合には、前記少なくともA層とB層とからなる本発明の積層型多孔性フィルムにさらに不織布、フラットヤーン等の通気性を有する繊維材を貼りあわせた積層体としても良い。前記繊維材としては、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維等の合成樹脂繊維から形成された不織布が好適に使用される。不織布の製造方法としては、ケミカルボンド法、ファイバーボンド法、メルトブロー法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、絡合法等の一般的な製造方法を採用し得る。
前記少なくともA層とB層とからなる本発明の積層型多孔性フィルムと不織布との積層は、例えば本発明の積層型多孔性フィルムにホットメルト型接着剤を塗布、スプレー、散布等を行って貼合したり、熱融着性フィルム、溶融押出しフィルムによりラミネートしたり等の通常の手段を用いることができる。前記ホットメルト型接着剤としては、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはEEA等のポリオレフィン系、ポリアミド系、ブチラール系、ポリウレタン系のホットメルト型接着剤などが用いられる。上記接着剤の塗工・貼合せは、ビート塗工、スロット塗工、スパイラル塗工、カーテンスプレー塗工、Vスロット塗工等が適用できる。このように不織布等を張り合わせると、高い機械強度と良好な肌触りを両立させることができる。
紙おむつ等の衛生材料の場合は、前記少なくともA層とB層とからなる本発明の積層型多孔性フィルムと不織布の間にさらに体液を吸収して保持する吸収材を挟み込んだ積層体としても良い。
前記吸収材しては、吸水紙を複数枚積層したもの、線状化したクラフトパルプを吸水紙などで包んだもの、または高級水性高分子など、従来の衛生用品に使用されていたものが挙げられる。また、不織布としては吸収した体液を吸収材から逆戻りさせないような工夫がなされたポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維を主成分とする疎水性の繊維から形成された不織布が好ましい。
前記積層体において、具体的には、前記少なくともA層とB層とからなる本発明の積層型多孔性フィルム上に、適宜、吸収材、飛散防止のための紙などを介して高分子吸収材層を載せることが好ましい。その際、吸収材層の厚さは、通常5〜20mm程度とするのがよい。さらにその上に、適宜、紙などを介して不織布を重ね、それらを粘着テープ等で一体化して成形することによって前記積層体が得られる。
また、本発明の多孔性フィルムは、単独で、例えば電池用セパレーターなどの種々の用途に用いることができる。
本発明の多孔性フィルムは、膜厚が薄くても従来品と同レベル以上の透湿度を発揮することができ、従来の透湿性フィルムではなしえなかった透湿性と薄膜化の両立を達成している。
さらに、本発明の多孔性フィルムは柔軟性に富んで風合いが良い。特に紙おむつや生理用品などの衛生材料に応用する場合は、柔軟性や風合いが特に重要な製品評価の対象となるため、この点において優れていることは大きな利点である。
本発明の多孔性フィルムは、引裂強度が十分なレベルにあり、このフィルムを使用する製品のライン加工性に優れ、フィルムが製造工程途中で破れる頻度が少なく、大量生産に適している。
以下、本発明の積層型多孔フィルムの実施形態について説明する。
図1は第1実施形態の積層型多孔フィルムを示し、A層とB層の2層構造としている。
A層およびB層は全体厚みを100としたとき、A層の厚みを70〜90、B層の厚みを30〜10とし、該全体厚みを10〜20μmとしている。
A層を構成するポリオレフィン(a)としては、融解ピーク温度が60℃以上130℃未満の線状低密度ポリエチレンまたは、前記線状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンもしくは長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレンとの混合物を用いている。前記混合物を用いる場合、線状低密度ポリエチレンの含有割合が80〜90質量部、分岐状低密度ポリエチレンまたは長鎖分岐導入線状低密度ポリエチレンの含有割合が20〜10質量部となるように設定している。
前記A層のベース樹脂を構成するポリオレフィン(a)は、該ベース樹脂のみを押し出し成形してシート(原シート)とした場合に、該原シートの少なくとも片面はabbe屈折率計で、JISK7142に準拠して測定した複屈折率△nが、0.4×10−3<Δn<0.9×10−3であると共に、面配向度Δpが0.7×10−3<△p<1.3×10−3である。
A層においてポリオレフィン(a)に配合されるフィラーとしては脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムを用いている。該フィラーの平均粒径は0.5〜1.5μmとしている。フィラーの混合比率は樹脂組成物全体に対する容積率で20〜50%となるようにしている。
A層を構成する樹脂組成物においては、前記ポリオレフィン(a)とフィラーに加えて、第三成分が配合されていてもよい。前記第三成分としては、側鎖を有する炭化水素重合体が好ましく、ポリブタジエンまたはヒドロキシポリブタジエンもしくはその水添物(特に末端ヒドロキシポリブタジエン水添物)がより好ましい。
第三成分の配合量は、A層を構成する樹脂組成物100質量部に対し0.5〜5質量部としている。
B層を構成するポリオレフィン(b)としては融解ピーク温度が130℃以上250℃以下の、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリメチルペンテンを用いている。
なかでも、ポリプロピレンまたはポリメチルペンテンを用いることが好ましい。
B層においてポリオレフィン(b)に配合されるフィラーとしては脂肪酸で表面処理された炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムを用いている。該フィラーの平均粒径は0.5〜1.5μmとしている。フィラーの混合比率は樹脂組成物全体に対する容積率で20〜50%となるようにしている。
B層を構成する樹脂組成物においては、前記ポリオレフィン(b)とフィラーに加えて、第三成分が配合されていてもよい。前記第三成分としては、エステル化合物が好ましく、硬化ひまし油またはテトラグリセリンペンタエステルがより好ましい。該第三成分の配合量は、B層を構成する樹脂組成物100質量部に対し0.5〜5質量部としている。
前記B層のベース樹脂を構成するポリオレフィン(b)も、該ベース樹脂のみを押し出し成形してシート(原シート)とした場合に、該原シートの少なくとも片面はabbe屈折率計で、JISK7142に準拠して測定した複屈折率△nが、0.4×10−3<Δn<0.9×10−3であると共に、面配向度Δpが0.7×10−3<△p<1.3×10−3である。
前記A層とB層との2層構造の積層型多孔性フィルムは以下の工程で製造している。
まず、A層およびB層を構成する樹脂組成物A、Bをそれぞれ作製する。
具体的には、ポリオレフィン(a)またはポリオレフィン(b)、フィラーおよび第三成分をタンブラー型ミキサーまたはヘンシェルミキサー等を用いて混合した後、タンデム型押出機もしくは二軸スクリュー押出機等を用いて200〜250℃の温度下で加熱混練し、ペレット化する。
得られたペレットを用いて共押出法により製膜する。具体的には、A層を構成する樹脂組成物のペレットおよびB層を構成する樹脂組成物のペレットを別々の押出機で押出し、多層成形用のダイを用いて150〜250℃の溶融状態で積層させてからシート状に製膜する。共押出法としてはTダイ成形法またはインフレーション成形法いずれを用いてもよいが、本実施形態ではインフレーション成形法により成形している。
製膜されたフィルムに対し、ロール法またはテンター法等の公知の方法により、20〜80℃の温度条件下において延伸を行い、樹脂成分とフィラーとの界面剥離を起こさせて微細孔を形成して、多孔性フィルムとする。
延伸方向は一軸方向のみとし一段で行う方が製造工程の簡素化につながり好ましい。延伸倍率は1.2〜5倍の範囲内としている。
前記方法で製造された多孔性フィルムは全体厚みが10〜20μmと薄いが、優れた透湿度を示す。具体的には、多孔性フィルムの透気度は2000秒/100ml以下で、透湿度は5,000〜10,000g/m/24hrである。
さらに、前記積層型多孔性フィルムは、機械(MD)方向のシングルタング引裂強度が2.0×10−2N以上で、高速加工性において優れている。
図2は第2実施形態の積層型多孔性フィルムを示し、A層/B層/A層の3層構造としている。全体厚みを100としたとき、A層/B層/A層=30〜45/40〜10/30〜45としている。
第1実施形態とはA層/B層/A層と3層構造としている点だけが相違し、A層、B層の組成、製造方法等は同一であり、かつ、製造されたフィルムの透湿度、引裂強度も同一としているため、説明を省略する。
図3は第3実施形態を示し、第1実施形態のA層/B層の積層型多孔性フィルムの下面に不織布C層を積層している。C層の不織布はポリオレフィン繊維からなる不織布を用い、前記A層とB層との積層型多孔性フィルムの下面にホットメルト型接着剤Dを介して不織布を貼着している。
図4は第4実施形態を示し、第1実施形態のA層/B層の積層型多孔性フィルムの下面に吸収材Eを介して不織布からなるC層を積層している。該積層体は紙おむつ用として好適に用いられる。
「実施例」
以下、本発明についてさらに具体的に説明するため実施例を示す。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例における各種の物性は以下に記載の方法で評価した。
(1)複屈折率Δnと面配向度Δpの測定。
JISK7142に従って測定を行い、試験数5個の平均値を各数値とした。
(2)膜厚(単位;μm)
JIS K 6250Aに従って膜厚計((株)テックロック製)で測定し、試験数5個の平均値を膜厚とした。
(3)透気度(単位;秒/100ml)
ガーレ式デンソメータを用いて、JIS
p8117に従って測定し、試験数3個の平均値を透気度とした。
JIS L−1096を準用し、インテスコ(株)製201X−3型引張試験機を用いてシングルタング引裂強度を測定した。
(a)機械(MD)方向が150mm、縦(TD)方向が40mmの長方形にサンプルフィルムを切り出す。
(b)上記の長方形の短辺の一方において、中心点(角から20mmの位置)で長辺と平行に端から真ん中に向かって75mmだけ切り込みを入れる。
(c)切り込みを入れた辺の両側が表裏になるように引張試験機のチャックに取り付ける。すなわち、切り込みを入れた方の短辺は切れ込みを境に上下2つの部分に分かれるが、上側の辺を引張試験機のチャックの一方に、下側の辺を引張試験機のチャックの他方に取り付ければ、上側の部分は表(裏)を、下側の部分は裏(表)を向くこととなる。
(d)200mm/分の速度でサンプルフィルムを機械(MD)方向に引き裂き、その時の最大荷重を求め、引強度とする。
(実施例1)
線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「F30FG」)33質量部に対し、分岐状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「LF441」)を5質量部、炭酸カルシウム(平均粒径1.2μm、脂肪酸処理)を60質量部、末端OHポリブタジエン(三菱化学社製、商品名「ポリテールHA」)を2重量部添加した。これをタンブラーミキサーにて混合し、タンデム型混練押出機を用いて220℃で均一に混練し、ペレット状に加工した樹脂組成物A1を得た。高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名「HF430」)37質量部に対し、炭酸カルシウム(平均粒径1.2μm、脂肪酸処理)を60質量部、硬化ひまし油(豊国製油社製、商品名「カスターワックスHC−WX」)を3質量部添加した。これを、タンブラーミキサーにて混合し、タンデム型混練押出機を用いて220℃で均一に混練し、ペレット状に加工した樹脂組成物B1を得た。
樹脂組成物A1およびB1のうち、炭酸カルシウムを除いた組成物を別々の押出機で押出し、多層成型用のインフレダイを用い延伸後の膜厚比率がA1/B1/A1=35/30/35となるように210℃の溶融状態で積層させた後、シート化させた。このシートの複屈折率△nと面配向度△pを測定した結果を表1に示す。
得られた樹脂組成物A1と樹脂組成物B1を別々の押出機で押出し、多層成型用のインフレダイを用い延伸後の膜厚比率がA1/B1/A1=35/30/35となるように210℃の溶融状態で積層させた後、シート化させた。60℃に加熱した予備ロールと延伸ロールを用い、延伸倍率2.0倍、ライン速度40m/分で機械方向に一軸延伸し、厚さ15μmの積層型多孔性フィルムを得た。得られた積層型多孔性フィルムの諸特性を上記方法により測定した。
(実施例2)
膜厚の比率がA1/B1/A1=26/48/26となるようにし、延伸倍率を2.2倍にした以外は実施例1と全く同様にして、厚さ15μmの積層型多孔性フィルムを得た。得られた積層型多孔性フィルムの諸特性を上記方法により測定した。
(実施例3)
膜厚の比率がA1/B1/A1=17/66/17となるようにし、延伸倍率を2.3倍にした以外は実施例1と全く同様にして、厚さ15μmの積層型多孔性フィルムを得た。得られた積層型多孔性フィルムの諸特性を上記方法により測定した。
(実施例4)
B層をポリメチルベンテン(三井化学社製、商品名「TPX MX002」、密度0.835g/cm、融解ピーク温度222℃)37質量部に対し、炭酸カルシウム(平均粒径1.2μm、脂肪酸処理)を60質量部、硬化ひまし油(川研ファインケミカル(株)製、商品名「カワスタ−CR」)を3質量部添加した3成分の樹脂組成物を用いたこと、層比を30/40/30とした以外は実施例1と同様にして多孔膜を得た。
(比較例1)
実施例1で用いた樹脂組成物A1を多層成型用インフレーションダイでチューブ状に成形し、シート化させた。
60℃に加熱した予備ロールと延伸ロールを用い、延伸倍率2.2倍、ライン速度40m/分で機械方向に一軸延伸し、厚さ15μmの多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの諸特性を上記方法により測定した。
また実施例1と同様に樹脂組成物A1から炭カルの除いた樹脂組成物を用いて原シートを作成し、ΔnとΔpを測定した。
(比較例2)
実施例1で用いた樹脂組成物B1を多層成型用インフレーションダイでチューブ状に成形し、シート化させた。
60℃に加熱した予備ロールと延伸ロールを用い、延伸倍率2.2倍、ライン速度40m/分で機械方向に一軸延伸し、厚さ18μmの多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの諸特性を上記方法により測定した。
また、実施例1と同様に樹脂組成物B1から炭カルの除いた樹脂組成物を用いて原シートを作成し、ΔnとΔpを測定した。
(比較例3)
実施例1で用いた樹脂組成物A1の代わりに、線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製、商品名「SF240」)37質量部に対し、炭酸カルシウム(平均粒径1.2μm、脂肪酸処理)を60質量部、脱水ひまし油(豊国製油(株)製、商品名「DCO」)を3質量部添加した。これをタンブラーミキサーにて混合し、タンデム型混練押出機を用いて220℃で均一に混練し、ペレット状に加工した樹脂組成物A2を得た。A2とB1を用いて、多層Tダイを使ってシート化させた。
60℃に加熱した予備ロールと延伸ロールを用い、延伸倍率2.6倍、ライン速度40m/分で機械方向に一軸延伸し、厚さ16μmの多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの諸特性を上記方法により測定した。
また、実施例1と同様に樹脂組成物B1から炭カルの除いた樹脂組成物を用いて原シートを作成し、ΔnとΔpを測定した。
Figure 0004916195
表中の「炭カル」は炭酸カルシウムの略語、透気度の単位は秒/100mlである。
上記の実施例および比較例により、以下のことが認められた。
実施例1〜4は複屈折率△nが0.9×10−3未満となっていた。また、全体膜厚が20μm以下の14〜16μmと薄膜化されているにもかかわらず、透気度が2000秒/100ml以下で透湿性に優れ、かつ、シングルタング引裂強度が2.0×10−2以上の優れた強度を有していることが確認できた。さらに、面配向度△pも1.3×10−3未満であった。
これに対して、比較例1〜2のベース樹脂のみから成形した原シートは複屈折率△nが0.9×10−3を越えると共に、透気度が2000秒/100mlを越えていた。また、引例3の積層構造のシートではシングルタング引裂強度が2.0×10−2N未満であった。
第1実施形態の概略断面図である。 第2実施形態の概略断面図である。 第3実施形態の概略断面図である。 第4実施形態の概略断面図である。

Claims (13)

  1. A層とB層との少なくとも2層を積層している積層型多孔性フィルムであって、
    前記A層とB層は共にベース樹脂にフィラーを含有した樹脂組成物からなると共に、A層とB層の前記ベース樹脂は相違させており、
    前記A層およびB層のベース樹脂はいずれも、これらベース樹脂のみでシートを成形した場合に、該シートの少なくとも片面はabbe屈折率計で、JISK7142に準拠して測定した複屈折率△nが、Δn<0.9×10−3となるものが用いられ、
    かつ、前記積層された多孔性フィルムは、透気度が2000秒/100ml以下、JIS L−1096を準用して測定したシングルタング引裂強度2.0×10−2N以上であることを特徴とする積層型多孔性フィルム。
  2. 前記ベース樹脂のみからなるシートの少なくとも片面は、abbe屈折率計で、JISK7142に準拠して測定した面配向度ΔpがΔp<1.3×10 −3 である請求項1に記載の積層型多孔性フィルム。
  3. 前記ベース樹脂のみからなるシートの少なくとも片面は、abbe屈折率計で測定した複屈折率△nが0.4×10 −3 <Δn<0.9×10 −3 であると共に、面配向度Δpが0.7×10 −3 <△p<1.3×10 −3 である請求項1または請求項2に記載の積層型多孔フィルム。
  4. 前記A層とB層のベース樹脂の一方は溶解ピーク温度が130℃未満、他方は130℃以上である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  5. 前記A層とB層の少なくとも一方のベース樹脂の1成分としてポリオレフィンを用いている請求項乃至請求項4のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  6. 前記A層とB層の少なくとも一方のベース樹脂の1成分として線状低密度ポリエチレンを用いている請求項乃至請求項5のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  7. 前記A層とB層の少なくとも一方のベース樹脂の1成分として高密度ポリエチレンを用いている請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  8. 前記A層とB層のすくなくとも一方のベース樹脂の1成分として線状低密度ポリエチレンを用い、他方のベース樹脂の1成分として高密度ポリエチレンを用いている請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  9. 前記A層およびB層を夫々1層以上備え、あるいは1層以上のA層とB層に更にA層とB層とは異なる層が積層されて3層以上に積層している請求項乃至請求項8のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  10. 全体厚みが5〜25μmである請求項乃至請求項9のいずれか1項に記載の積層型多孔フィルム。
  11. 衛生材料用バックシート、医療用材料、電池用セパレーター、分離膜、農業用材料、防水衣料用材料、建築用材、包装用材として用いられる請求項乃至請求項10のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルム。
  12. 請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の積層型多孔性フィルムの製造方法であって、
    前記少なくともA層とB層とを構成する樹脂組成物を、Tダイ成形あるいはインフレーション成形からなる共押出法により積層シートとして成形し、
    前記成形した積層シートを延伸して、前記フィラーを基点として孔をあけて多孔性としていることを特徴とする積層型多孔性フィルムの製造方法。
  13. 前記共押出法のうち、インフレーション成形を用いている請求項12に記載の積層型多孔性フィルムの製造方法。
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