JP7314535B2 - 延伸多孔積層フィルム - Google Patents
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Description
具体的には、紙おむつ等の衛生材料は、多孔フィルムと不織布とをホットメルトラミネーションにて貼り合わされて製造されるのが一般的であるが、その際、ホットメルト接着剤は100~200℃に加熱、溶融されて多孔フィルムに噴霧されるため、多孔フィルムの耐熱性が不十分な場合、フィルムが破れ、生産性を著しく阻害する。そのため、多孔フィルムが十分な耐熱性を有することは、非常に重要となる。さらには、印刷、スリット、他部材との貼り合わせなどの、張力を掛けながら搬送されて加工する工程において、フィルムを安定して搬送させる搬送性に課題が残る。
一方で、これらの多孔フィルムが使用される用途では、更なる使用感の向上が求められているため、柔軟性や風合いなどの触感の更なる改良や、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生の抑制などが必要となる。しかしながら、特許文献3~6では、これらの不快音の抑制などの要求物性について何ら検討されていない。
本発明の延伸多孔積層フィルムは、後述する(I)層と、後述する(II)層の少なくとも2層を有する延伸多孔積層フィルムである。
本発明の延伸多孔積層フィルムにおいて、(I)層は、密度が0.910g/cm3以上のポリオレフィン系樹脂(y)を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物(Y)からなることが重要である。
前記無機充填材(A)としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリナイト、モンモリロナイトなどの微粒子や鉱物が挙げられるが、微多孔質化の発現、汎用性の高さ、低価格および銘柄の豊富さなどの利点から、炭酸カルシウム、硫酸バリウムが好適に用いることができる。
ポリオレフィン系樹脂(y)は、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂であり、密度が0.910g/cm3以上であることが重要である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。
ここで、密度はピクノメーター法(JIS K7112 B法)により測定した密度である。また、後述する樹脂の密度についても同様に測定したときの値である。
ここで、融点は示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂約10mgを加熱速度10℃/分で-40℃~200℃まで昇温し、200℃で1分間保持した後、冷却速度10℃/分で-40℃まで降温し、再度、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときに測定されたサーモグラムから求めた結晶融解ピーク温度(Tm)(℃)である。また、後述する樹脂の融点についても同様に測定したときの値である。
ここで、MFRはJIS K7219に準拠して測定される値であり、その測定条件は190℃、2.16kg荷重である。
この中でも、耐熱性や、フィルムの安定的な搬送を可能にするための引張強度の付与の観点から、プロピレン単独重合体や、プロピレン・(α-オレフィン)共重合体が好ましい。
本発明において、前記樹脂組成物(Y)は、密度が0.910g/cm3以上のポリオレフィン系樹脂(y)を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物であることが重要である。
また、前記樹脂組成物(Y)は、前記ポリオレフィン系樹脂(y)を27質量%~52質量%、前記無機充填材(A)を48質量%~73質量%含むことが好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂(y)を29質量%~50質量%、前記無機充填材(A)を50質量%~71質量%含むことがより好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂(y)を31質量%~48質量%、前記無機充填材(A)を52質量%~69質量%含むことがさらに好ましい。
一方、前記樹脂組成物(Y)において、前記ポリオレフィン系樹脂(y)が25質量%未満である場合、寸法安定性やフィルムの安定的な搬送を可能にするための引張強度が著しく低下しやすくなる。また、前記ポリオレフィン系樹脂(y)が54質量%を超える場合、延伸に伴う多孔の形成が不十分となり連通孔を形成しづらくなり、十分な透気特性や透湿特性を発現しにくくなる。
なお、前記樹脂組成物(Y)に好ましく含まれることができる分岐状低密度ポリエチレンは、密度が0.910g/cm3以上であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(y)に該当し、密度が0.910g/cm3未満であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(y)には該当しない。
前記分岐状低密度ポリエチレンが前記ポリオレフィン系樹脂(y)には該当しない場合、前記樹脂組成物(Y)における前記分岐状低密度ポリエチレンの含有量は1質量%~8質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
なお、前記樹脂組成物(Y)に好ましく含まれることができるポリプロピレン系樹脂は、密度が0.910g/cm3以上であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(y)に該当し、密度が0.910g/cm3未満であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(y)には該当しない。
前記ポリプロピレン系樹脂が前記ポリオレフィン系樹脂(y)には該当しない場合、前記樹脂組成物(Y)における前記ポリプロピレン系樹脂の含有量は1質量%~8質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
ひまし油類としては、通常のひまし油、精製ひまし油、硬化ひまし油および脱水ひまし油などが挙げられる。また、硬化ひまし油としては、12-ヒドロキシオクタデカン酸とグリセリンからなるトリグリセライドを主成分とする硬化ひまし油などが挙げられる。
本発明の延伸多孔積層フィルムにおいて、(II)層は、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満のポリオレフィン系樹脂(z)を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物(Z)からなることが重要である。
ポリオレフィン系樹脂(z)は、オレフィンモノマーを主たるモノマー成分とした樹脂であり、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であることが重要である。主たるモノマー成分とは、樹脂中で50モル%以上100モル%以下を占めるモノマー成分のことをいう。オレフィンモノマーとしては、エチレン、プロピレン、また、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-オレフィンや、ジエン、イソプレン、ブチレン、ブタジエンなどが挙げられ、これらの単独重合体でもよく、2種以上を共重合した多元共重合体であってもよい。また、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルアルコール、エチレングリコール、無水マレイン酸、スチレン、環状オレフィンが共重合されたものでもよい。中でも、柔軟性と風合いの付与や不快音の抑制の観点から、エチレン単独重合体、分岐状低密度ポリエチレン、プロピレン単独重合体、エチレン・(α-オレフィン共重合体)、プロピレン・(α-オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体が好ましく、エチレン・(α-オレフィン共重合体)、プロピレン・(α-オレフィン共重合体)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン単独重合体がより好ましい。
本発明において、前記樹脂組成物(Z)は、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満のポリオレフィン系樹脂(z)を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物であることが重要である。
また、前記樹脂組成物(Z)は、前記ポリオレフィン系樹脂(z)を27質量%~52質量%、前記無機充填材(A)を48質量%~73質量%含むことが好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂(z)を29質量%~50質量%、前記無機充填材(A)を50質量%~71質量%含むことがより好ましく、前記ポリオレフィン系樹脂(z)を31質量%~48質量%、前記無機充填材(A)を52質量%~69質量%含むことがさらに好ましい。
一方、前記樹脂組成物(Z)において、前記ポリオレフィン系樹脂(z)が25質量%未満である場合、延伸多孔積層フィルムの柔軟性や風合いが劣るとともに、延伸多孔積層フィルムが擦れる際に不快な音が発生するため好ましくない。また、前記ポリオレフィン系樹脂(z)が54質量%を超える場合、延伸に伴う多孔の形成が不十分となり連通孔を形成しづらくなり、十分な透気特性や透湿特性を発現しにくくなる。
なお、前記樹脂組成物(Z)に好ましく含まれることができる分岐状低密度ポリエチレンは、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(z)に該当し、密度が0.910g/cm3以上、または、0.850g/cm3未満であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(z)には該当しない。
前記分岐状低密度ポリエチレンが前記ポリオレフィン系樹脂(z)には該当しない場合、前記樹脂組成物(Z)における前記分岐状低密度ポリエチレンの含有量は1質量%~8質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
なお、前記樹脂組成物(Z)に好ましく含まれることができるポリプロピレン系樹脂は、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(z)に該当し、密度が0.910g/cm3以上、または、0.850g/cm3未満であれば、前記ポリオレフィン系樹脂(z)には該当しない。
前記ポリプロピレン系樹脂が前記ポリオレフィン系樹脂(z)には該当しない場合、前記樹脂組成物(Z)における前記ポリプロピレン系樹脂の含有量は1質量%~8質量%であることが好ましく、1質量%~5質量%であることがより好ましい。
本発明の延伸多孔積層フィルムは、高い透気度・透湿度を有しながらも液体の透過を抑制した透湿防水フィルムとして利用することができる。該透湿防水フィルムは、紙おむつや女性用生理用品などの衛生材料、作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの用途に用いる場合、透湿防水フィルムを巻物状にしたフィルムロールを、印刷機や、スリット機などに設置し、該フィルムロールよりフィルムを繰り出し、張力を掛けながら印刷や、スリットが行われる。また、上述の用途の製造においても、該フィルムロールは、フィルムを繰り出し、張力を掛けながら、不織布などの他部材との貼り合わせや、上記用途の使用形状への裁断が行われる。このような搬送工程において、フィルムの引張強度が低いと、搬送に伴う張力により、フィルムが過剰に伸びたり、裁断時にフィルムが過剰に収縮したりするなどのトラブルを生じる恐れがある。
本発明の延伸多孔積層フィルムは、密度が0.910g/cm3以上のポリオレフィン系樹脂(y)を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物(Y)からなる(I)層を有することから、延伸多孔積層フィルムに張力が掛かる際の適度な引張強度を付与することが可能となる。
一方、上述の透湿防水フィルムが、仮に、前記(I)層のみからなる単層フィルムである場合、フィルムの搬送性は十分であるが、後述するように、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制することが困難となる。
音は物体が動いたり、擦れたりする際に生じる空気の振動波である。音の抑制には、音の振動源や媒体での減衰が効果的であると考えられる。樹脂のような粘弾性体においては、振動のエネルギーを、熱エネルギーに損失させることで吸音効果が得られる。この吸音効果を発現するために必要な要素が、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E’’)の比であるtanδ(=E’’/E’)と考えられる。そのため、本発明の延伸多孔積層フィルムを構成する樹脂のtanδのピーク値の大きさは、音の吸音率(振動減衰率)の大きさに密接に関連しているため、ピーク値が大きい方が好ましい。また、本発明の延伸多孔積層フィルムを構成する樹脂のtanδのピーク位置は音の発生雰囲気温度での減衰に関連すると共に、温度-時間換算側則の観点から、周波数に対する減衰にも関連する。そのため、様々な周波数を有する不快音を吸音、または発生させないためには、tanδのピーク幅は広い方が好ましい。
本発明の延伸多孔積層フィルムにおける(II)層は、前述の樹脂組成物(Z)からなり、樹脂組成物(Z)には、密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満のポリオレフィン系樹脂(z)が25質量%~54質量%含まれる。密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満のポリオレフィン系樹脂(z)を用いることにより、上述した樹脂のtanδを大きくすることができる。そのため、本発明の延伸多孔積層フィルムは、前記(II)層を有することにより、フィルムを擦りあわせた際の不快な音の発生を抑制することが可能となる。
すなわち、全厚さに対する前記(II)層の厚さ比率が35%未満となる場合、延伸多孔積層フィルムの不快な音の発生を抑制が困難となる。また、全厚さに対する前記(II)層の厚さ比率が99%を超える場合、フィルムの安定的な搬送に必要な十分な引張強度が維持できない。
全厚さに対する前記(II)層の厚さ比率(ただし、(II)層を2層以上有する場合はその合計厚さの厚さ比率とする。)は、36%以上95%以下であることが好ましく、37%以上90%以下であることがより好ましく、38%以上85%以下であることがさらに好ましい。
また、各層は、共押出によって積層としてもよいし、別工程で得たフィルムをプレスやラミネートなどにより積層してもよい。また、上述したその他の層としては、布、不織布、紙、金属などを積層してもよい。
前記結晶融解ピーク(Pm1)を有するには、前記樹脂組成物(Y)及び/又は前記樹脂組成物(Z)に、融点が140℃以上200℃以下の熱可塑性樹脂を含有することによって、上記範囲に結晶融解ピーク(Pm1)を有するように調整することができる。
前記結晶融解エンタルピー(ΔHm1)は、前記樹脂組成物(Y)及び/又は前記樹脂組成物(Z)に含まれる、融点が140℃以上200℃以下の熱可塑性樹脂の混合比率を調整することによって、結晶融解エンタルピー(ΔHm1)を上記範囲に調整することができる。
前記結晶融解ピーク(Pm2)を有するには、前記樹脂組成物(Y)及び/又は前記樹脂組成物(Z)に、融点が30℃以上140℃未満の熱可塑性樹脂を含有し、混合比率を調整することによって、結晶融解ピーク(Pm2)、及び、結晶融解エンタルピー(ΔHm2)を上記範囲に調整することができる。
本発明の延伸多孔積層フィルムを構成する前記(I)層、前記(II)層に含まれる熱可塑性樹脂に着目すると、熱可塑性樹脂は、弾性的性質と粘性的性質の両方を有する粘弾性体である。すなわち、熱可塑性樹脂の弾性的性質の割合を減少することで、フィルムを擦り合わせるという外力を与えた時に、その外力に反発して振動する弾性成分が少なくなり、音の発生が抑制される。弾性的性質と粘性的性質の割合を示す指標が上述のtanδであるが、この弾性的性質の割合をマクロ視点とミクロ視点から減少させることが、不快音の低減に効果的と考えている。マクロ視点の弾性的性質とは、上述した本発明の延伸多孔積層フィルムを構成する樹脂組成物の動的粘弾性測定から算出される貯蔵弾性率(E’)であり、ミクロ視点の弾性的性質とは、後述する樹脂の結晶成分である。
結晶性樹脂の非晶部は、ガラス転移温度以上の温度域ではミクロブラウン運動が可能であり、モビリティーの高い状態にある。一方、結晶性樹脂の結晶部は、ガラス転移温度以上、融点以下の温度域では分子鎖が結晶として拘束されており、非常に弾性率が高い部位となる。そのため、結晶性樹脂の結晶化度が低い場合、弾性率が高い結晶部が少なくなるため、外力を与えた時に反発して振動する成分が少なく発生する音も小さくなると考えられる。
従って、結晶融解エンタルピーは、本発明の延伸多孔積層フィルムにおける結晶成分割合の指標となり、前記結晶融解エンタルピー(ΔHm1)は、1J/g~10J/gであることが好ましい。また、前記結晶融解エンタルピー(ΔHm2)は1J/g~43J/gであることが好ましい。
また、結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、再昇温させた際に出現する上記結晶融解ピーク(Pm)のピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出する。このとき、上記高温保持温度は、用いる熱可塑性樹脂の最も高い結晶融解ピーク温度(Tm)に対し、Tm+20℃以上、かつ、Tm+150℃以下の範囲において、任意に選択できる。
なお、本発明における結晶融解エンタルピー(ΔHm)は、上記再昇温過程において、半結晶性樹脂にみられるような冷結晶化が生じる場合においても、再昇温過程で生じる結晶融解ピークから算出されたΔHmを適用する。すなわち、再昇温過程において生じる冷結晶化における発熱ピーク面積から算出される結晶化エンタルピー(ΔHc)を、再昇温過程で得られるΔHmからの差し引くことは行わない。
空孔率が15%以上の場合、後述するように、延伸多孔積層フィルムの空隙中を伝播する音のエネルギー損失機会が多くなり、不快音を十分に抑制することができる。また、空孔率が80%以下の場合、実用的に使用できる程度のフィルム強度を確保することができ、さらに、防水性が十分となり接する液状物の漏れを引き起こしにくいものとなる。
本発明の延伸多孔積層フィルムは、樹脂組成物の内部に連通した空隙を有するフィルムである。すなわち、本発明の延伸多孔積層フィルムにおいて音が伝播する場合、フィルムとして固体部を形成している樹脂組成物を振動して伝播する音と、フィルム内部に形成された連通した空隙を伝播する音との2つの伝わり方を示す。そのため、音の抑制には、樹脂組成物を振動して伝播する音の抑制、及び、連通した空隙を伝播する音の抑制を考慮しなければならない。樹脂組成物を振動して伝播する音を抑制する因子は、上述した本発明の延伸多孔積層フィルムを構成する樹脂のtanδであり、連通した空隙を伝播する音を抑制する因子は、本発明の延伸多孔積層フィルムの空孔率である。
前記延伸多孔積層フィルムの比重(W1)、及び、未延伸フィルムの比重(W0)の測定は、無作為に3点測定し、その算術平均値を用いた。得られた前記延伸多孔積層フィルムの比重(W1)、及び、未延伸フィルムの比重(W0)から、以下の式より空孔率を算出した。
空孔率(%)=[1-(W1/W0)]×100
ここで、坪量は、サンプル(縦方向(MD):250mm、横方向(TD):200mm)の質量(g)を電子天秤で測定し、その数値を20倍した値を坪量とする。
ここで、透気度はJIS P8117:2009(ガーレー試験機法)に規定される方法に準じて測定される100mLの空気が紙片を通過する秒数であり、例えば透気度測定装置(旭精工製王研式透気度測定機EGO1-55型)を用いて測定することができる。本発明においては、サンプルを無作為に10点測定し、その算術平均値を透気度とする。
ここで、透湿度はJIS Z0208(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))の諸条件に準拠する。吸湿剤として塩化カルシウムを15g用い、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿環境下で測定した。サンプルは無作為に2点測定し、その算術平均値を求めた。
ここで、延伸方向の引張破断強度はJIS K7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断強度である。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断強度の算術平均値とした。
延伸方向の5%伸度時の引張強度は2.0N/25mm以上である場合、本発明の延伸多孔積層フィルムを、印刷、スリット、他部材との貼り合わせなどの、張力を掛けながら搬送されて加工する工程において、フィルムが過剰に伸びたり、裁断時にフィルムが過剰に収縮したりするなどのトラブルを抑制できるため好ましい。
ここで、延伸方向の5%伸度時の引張強度はJIS K7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて引張試験を行った際の5%伸度時の引張強度である。本発明においては、3回測定を行い算出した5%伸度時の引張強度の算術平均値とした。
ここで、延伸方向の引張破断伸びは、JIS K7127に準拠して、延伸方向100mm×延伸方向と垂直方向25mmに切り出したサンプルを作製し、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張速度200m/min、チャック間距離50mmの条件で3連式引張試験機を用いて破断した際の引張破断伸びである。本発明においては、3回測定を行い算出した引張破断伸びの算術平均値とする。
ここで、全光線透過率は、JIS K7361に準拠したヘイズメータを用い、無作為に5点測定し、その算術平均値を求めたものである。
ここで破膜耐熱温度は、サンプル(100mm×100mm)を、その中心をΦ50mmの円状に打ち抜いたステンレス鋼板(100mm×100mm×2mm(厚さ))2枚で挟み、クリップで四辺を固定し、槽内温度120℃の対流オーブンに2分間静置して加熱した後、ステンレス鋼板の円状打ち抜き箇所のサンプルが溶融し、穴が開いていないか、その様子を目視判断し、破れや穴開きがないものを破膜耐熱温度120℃以上とする。また、槽内温度を140℃、160℃と変更し、同様の評価を行った際に、破れや穴開きがないものを、それぞれ、破膜耐熱温度を140℃以上、160℃以上とする。
本発明の延伸多孔積層フィルムの製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法によって製造することができるが、少なくとも一軸方向に延伸されることが重要である。ここで、「フィルム」とは、厚いシートから薄いフィルムまでを包括した意を有する。フィルムとしては、平面状、チューブ状のいずれであってもよいが、生産性(原反シートの幅方向に製品として数丁取りが可能)や内面に印刷が可能という観点から、平面状が好ましい。平面状のフィルムの製造方法としては、例えば、押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、ダイからフィルム状に押出し、冷却ロールや空冷、水冷にて冷却固化して得られるフィルム(未延伸フィルム)を、少なくとも一軸方向に延伸した後、巻取機にて巻き取ることによりフィルムを得る方法が例示できる。
また、混練機の先端にストランドダイを接続し、ストランドカット、ダイカットなどの方法により一旦ペレット化した後、(場合によっては追加する組成物とともに)得られたペレットを、それぞれの単軸押出機などに導入し、押出機の先端に積層Tダイや積層丸ダイなどの口金を接続し、積層フィルム状に成形することもできる。積層フィルム状に成形するにあたり、インフレーション成形、チューブラー成形、Tダイ成形などのフィルム成形方法が好ましい。押出温度は、180~260℃程度が好ましく、より好ましくは190~250℃である。押出温度やせん断の状態を最適化することにより、材料の分散状態を制御することも、上述したフィルムの種々の物理的特性、機械的特性を所望の値にするのに有効である。
本発明の延伸多孔積層フィルムは、表裏を貫通する微細な多数形成され、優れた通気性を有している。従って、紙おむつ、女性用生理用品などの衛生用品;作業服、ジャンパー、ジャケット、医療用衣服、化学防護服などの衣服;さらには、マスク、カバー、ドレープ、シーツ、ラップなどの通気性や透湿性を求められる用途に好適に利用することができる。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの坪量を算出した。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの空孔率を算出した。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの透気度を算出した。透気度測定装置として、旭精工(株)社製 王研式透気度測定機EGO1-55型を用いた。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの透湿度を算出した。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断強度を算出した。
(6)延伸方向の5%伸度時の引張強度
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の5%伸度時の引張強度を算出した。なお、延伸方向の5%伸度時の引張強度は、フィルムの搬送性を示す重要な指標となるため、下記判断基準に従い、評価した。
○:延伸方向の5%伸度時の引張強度が、2.0N/25mm以上である。
×:延伸方向の5%伸度時の引張強度が、2.0N/25mm未満である。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム、及び延伸多孔フィルムの延伸方向(本実施例、比較例ではMD)の引張破断伸びを算出した。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム、及び延伸多孔フィルムの全光線透過率を算出した。
下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムを、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、-40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に200℃から-40℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に-40℃から200℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させたことで、再昇温過程における結晶融解ピーク(Pm)、及び再昇温過程における前記結晶融解ピーク(Pm)のピーク面積から、延伸多孔積層フィルム及び延伸多孔フィルムの結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。
このとき、140℃以上200℃以下に結晶融解ピーク(Pm1)の有無を確認した。また、前記Pm1より、ピーク温度(Tm1)、結晶融解エンタルピー(ΔHm1)を算出した。
同様に、30℃以上140℃未満に結晶融解ピーク(Pm2)の有無を確認した。また、前記Pm2より、ピーク温度(Tm2)、結晶融解エンタルピー(ΔHm2)を算出した。
上述の方法に従い、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム、及び延伸多孔フィルムの破膜耐熱温度を評価した。評価は、対流オーブンの槽内温度を120℃、140℃、160℃とし、槽内に2分間静置して加熱した後の状態を目視評価にて、下記判断基準に従い、評価した。
○:ステンレス鋼板の円状打ち抜き箇所のサンプルに破れや穴開きがない。
×:ステンレス鋼板の円状打ち抜き箇所のサンプルが溶融し、穴が開いている。
不快音測定は、測定場所を幅3m程度、長さ4m程度、高さ3m程度の個室内(外部の騒音の影響が少ない環境下)にて、リオン株式会社製、精密騒音計NL-52を用いて、周波数重み付け特性はA特性とし、時間重み付け特性はF特性として行った。
まず、下記に示す実施例、比較例において得られた延伸多孔積層フィルム、及び延伸多孔フィルムを、縦方向(MD)400mm、横方向(TD)200mmに切り出し、縦方向中央で1度折り畳み、2つ折りに重ねあわせた。その後、重ねあわせたフィルムのTD両端部を挟持し、挟持したTD両端部間距離が100mmとなるように調整した。
さらに、挟持されたフィルムと精密騒音計のマイク(集音部)との距離を100mmとなるように調整した後、挟持されたフィルムのMD、及び、TDと垂直方向(厚み方向)に、挟持した端部を1秒間に3往復振動させることでフィルムを擦りあわせ、測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)を測定し、下記判断基準に従い評価した。
尚、フィルムを振動させない状態(無動作状態)での測定時間10秒間における時間平均サウンドレベル(LAeq)は24dBであった。
○:時間平均サウンドレベル(LAeq)が24dB以上45dB未満
×:時間平均サウンドレベル(LAeq)が45dB以上
上記(1)~(11)に示す評価を鑑み、下記基準にて総合評価を行った。
A:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した、通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムであり、かつ、十分な引張強度を兼ね備えたフィルムである。
B:柔軟性と風合いといった優れた触感を有するとともに、フィルムの擦れ時に生じる不快な音の発生を抑制した、通気性や透湿性を求められる用途に適したフィルムであるが、引張強度が不十分である。
C:通気性と透湿性に優れたフィルムであるが、柔軟性や風合いといった触感を感じられず、かつ、不快な音の発生を感じるフィルムである。
<無機充填材(A)>
・A-1:重質炭酸カルシウム「ライトンBS-0」(備北粉化工業(株)社製、平均粒子径1.1μm、ステアリン酸表面処理品)。
<ポリオレフィン系樹脂(y)>
・B-1:直鎖状低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF230」(日本ポリエチレン(株)社製、密度0.921g/cm3、MFR1.0g/10分、融点121℃)。
・B-2:直鎖状低密度ポリエチレン「ノバテックLL UF961」(日本ポリエチレン(株)社製、密度0.935g/cm3、MFR5.0g/10分、融点126℃)。
・B-3:分岐状低密度ポリエチレン「ノバテックLD LF441」(日本ポリエチレン(株)社製、密度0.918g/cm3、MFR2.3g/10分、融点113℃)。
<ポリオレフィン系樹脂(z)>
・C-1:メタロセン系エチレン・(α-オレフィン)共重合体「カーネル KF360T」(日本ポリエチレン(株)社製、密度0.898g/cm3、MFR3.5g/10分、融点90℃)。
・C-2:エチレン・(1-ブテン)共重合体「タフマー A1050S」(三井化学(株)社製、密度0.862g/cm3、MFR1.2g/10分、融点45℃)。
・C-3:ポリプロピレン「ノバテックPP SA03」(日本ポリプロ(株)社製、密度0.900g/cm3、MFR30g/10分、融点165℃)。
<可塑剤>
・D-1:硬化ひまし油「HCO-P3」(ケイエフ・トレーディング(株)社製)。
<酸化防止剤>
・E-1:酸化防止剤「Irganox B225」(BASFジャパン(株)社製)。
(I)層を構成する樹脂組成物(Y)として、「A-1」、「B-1」、「B-2」、「B-3」、「C-3」、「D-1」、「E-1」を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度190℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したストランドダイにてストランドを押出し、水槽にて冷却固化した後、ペレタイザーにて、樹脂組成物(Y-1)のペレットを採取した。この時、樹脂組成物(Y-1)に含まれる無機充填材(A)は57質量%、ポリオレフィン樹脂(y)は36質量%であった。
次に、(II)層を構成する樹脂組成物(Z)として、「A-1」、「C-1」、「C-2」、「C-3」、「B-3」、「D-1」、「E-1」を表1に示す組成比率にて計量した後、ヘンシェルミキサーに投入し、5分間混合、分散させて、同方向二軸押出機を用いて、設定温度180℃にて溶融混練した後、同方向二軸押出機の先端に接続したストランドダイにてストランドを押出し、水槽にて冷却固化した後、ペレタイザーにて、樹脂組成物(Z-1)のペレットを採取した。この時、樹脂組成物(Z-1)に含まれる無機充填材(A)は60質量%、ポリオレフィン樹脂(z)は33質量%であった。
2台の単軸押出機、および2種3層マルチマニホールド口金を用いた積層共押出が可能な設備において、(II)層/(I)層/(II)層の構成となるように、(I)層を形成する単軸押出機に、前記樹脂組成物(Y-1)を導入し、(II)層を形成する単軸押出機に、前記樹脂組成物(Z-1)を導入し、各押出機設定温度180℃で溶融混合後、全厚さに対する(II)層/(I)層/(II)層の積層比が、33%/34%/33%として共押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ32μmの未延伸積層フィルムを得た。
その後、得られた未延伸積層フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)-(T)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)、(T)-(U)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)を掛けてMDに合計3.24倍の延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔積層フィルムを得た。得られた延伸多孔積層フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
延伸多孔積層フィルムの共押出において、全厚さに対する(II)層/(I)層/(II)層の積層比を、20%/60%/20%に変更した以外は、実施例1と同様の手法により延伸多孔積層フィルムを得た。得られた延伸多孔積層フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
延伸多孔積層フィルムの共押出において、全厚さに対する(II)層/(I)層/(II)層の積層比を、10%/80%/10%に変更した以外は、実施例1と同様の手法により延伸多孔積層フィルムを得た。得られた延伸多孔積層フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
2台の単軸押出機、および2種3層マルチマニホールド口金を用いた積層共押出が可能な設備において、(I)層/(II)層/(I)層の構成となるように、(I)層を形成する単軸押出機に、実施例1で用いた樹脂組成物(Y-1)を導入し、(II)層を形成する単軸押出機に、実施例1で用いた樹脂組成物(Z-1)を導入し、各押出機設定温度180℃で溶融混合後、全厚さに対する(I)層/(II)層/(I)層の積層比が、20%/60%/20%として共押出し、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて厚さ32μmの未延伸積層フィルムを得た。
その後、得られた未延伸積層フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)-(T)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)、(T)-(U)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)を掛けてMDに合計3.24倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔積層フィルムを得た。得られた延伸多孔積層フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
延伸多孔積層フィルムの共押出において、全厚さに対する(I)層/(II)層/(I)層の積層比を、10%/80%/10%に変更した以外は、実施例3と同様の手法により延伸多孔積層フィルムを得た。得られた延伸多孔積層フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
延伸多孔積層フィルムの共押出において、全厚さに対する(I)層/(II)層/(I)層の積層比を、33%/34%/33%に変更した以外は、実施例3と同様の手法により延伸多孔積層フィルムを得た。得られた延伸多孔積層フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
2台の単軸押出機、および2種3層マルチマニホールド口金を用いた積層共押出が可能な設備において、2台の単軸押出機の両方に、実施例1で用いた樹脂組成物(Y-1)を導入し、各押出機設定温度180℃で溶融混合後、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて(I)層単層からなる厚さ32μmの未延伸フィルムを得た。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)-(T)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)、(T)-(U)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)を掛けてMDに合計3.24倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
2台の単軸押出機、および2種3層マルチマニホールド口金を用いた積層共押出が可能な設備において、2台の単軸押出機の両方に、実施例1で用いた樹脂組成物(Z-1)を導入し、各押出機設定温度180℃で溶融混合後、50℃に設定したキャスティングロールにて引き取り、冷却固化させて(II)層単層からなる厚さ32μmの未延伸フィルムを得た。
その後、得られた未延伸フィルムを、60℃に設定したロール(S)と60℃に設定したロール(T)、及び、60℃に設定したロール(U)間において、(S)-(T)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)、(T)-(U)ドロー比80%(延伸倍率1.8倍)を掛けてMDに合計3.24倍延伸を行った。次いで、90℃に設定したロール(V)にて熱処理・弛緩処理を行うことで、延伸多孔フィルムを得た。得られた延伸多孔フィルムは各種評価を行い、結果を表2に纏めた。
一方、比較例1、2で得られた延伸多孔積層フィルムは、本発明の規定する全厚さに対する(II)層の厚さ比率を満たしていないため、不快音の抑制には不十分であり、時間平均サウンドレベル(LAeq)が高い値を示した。また、比較例3で得られた延伸多孔フィルムは、本発明の規定する樹脂組成物(Z)からなる(II)層を有しないため、不快音の抑制には不十分であり、時間平均サウンドレベル(LAeq)が高い値を示した。
また、参考例1で得られた延伸多孔フィルムは、フィルムをこすり合わせた際の時間平均サウンドレベル(LAeq)は低い値を示し、不快な音を感じることはなかったが、引張強度が不十分であった。本発明では、新たな課題であるフィルムの搬送性を解決したものであり、すなわち、延伸多孔積層フィルムが擦れ時に生じる不快音の抑制と、フィルムの安定的な搬送を両立するためには、本発明が規定する範囲を満たすことが重要であることが分かる。
Claims (10)
- 密度が0.910g/cm3以上のポリオレフィン系樹脂(y)を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物(Y)からなる(I)層と、
密度が0.850g/cm3以上0.910g/cm3未満のエチレン・α-オレフィン共重合体を25質量%~54質量%、無機充填材(A)を46質量%~75質量%含む樹脂組成物(Z)からなる(II)層の少なくとも2層を有し、全厚さに対する前記(II)層の厚さ比率(ただし、(II)層を2層以上有する場合はその合計厚さの厚さ比率とする。)が35%以上99%以下であることを特徴とする延伸多孔積層フィルム。 - 140℃以上200℃以下に結晶融解ピーク(Pm1)を有し、該結晶融解ピーク(Pm1)から算出される結晶融解エンタルピー(ΔHm1)が1J/g~10J/gであることを特徴とする請求項1に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 30℃以上140℃未満に結晶融解ピーク(Pm2)を有し、該結晶融解ピーク(Pm2)から算出される結晶融解エンタルピー(ΔHm2)が1J/g~43J/gであることを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 空孔率が15%~80%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 透湿度が1000g/(m2・24h)~15000g/(m2・24h)であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 前記樹脂組成物(Y)中に、可塑剤を0.1質量%~8.0質量%含む請求項1~5のいずれか1項に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 前記樹脂組成物(Z)中に、可塑剤を0.1質量%~8.0質量%含む請求項1~6のいずれか1項に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 前記樹脂組成物(Z)が、さらにポリプロピレン系樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の延伸多孔積層フィルム。
- 請求項1~8のいずれかに記載の延伸多孔積層フィルムを備えた衛生用品。
- 請求項1~8のいずれかに記載の延伸多孔積層フィルムを備えた衣服。
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