JP2018126936A - 積層多孔フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 空孔率が高い多数の多孔構造を有し、透水性能および濾過精度に優れる延伸多孔フィルム、特に自動車産業(電着塗料回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除菌、酵素精製)などに使用することができる濾過膜を提供すること。
【解決手段】 多孔層を有する積層多孔フィルムであって、該多孔層はエチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1つ有する積層構造であって、かつ、フィルムの空孔率が60%以上80%以下である積層多孔フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は積層多孔フィルムに関し、該多孔フィルムは包装用品、衛生用品、畜産用品、農業用品、建築用品、医療用品、光拡散板、反射シート、電池用セパレーターまたは、分離膜として利用でき、特に食品関連分野、製薬・化粧品分野、化学工業品分野、電子工業分野に利用される濾過膜として好適に用いられるものである。さらに本発明は該積層多孔フィルムの製造方法に関する。
精密濾過膜や限外濾過膜等の多孔膜による濾過操作は、自動車産業(電着塗料回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除菌、酵素精製)などの多方面にわたって実用化されている。特に近年は河川水等を除濁して飲料水や工業用水を製造するための手法としても多用されつつある。膜の素材としては、セルロース系、ポリアクリロニトリル系、ポリオレフィン系等多種多様のものが用いられている。
中でもポリオレフィン系重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン等)は、疎水性のために耐水性が高いため、水系濾過膜の素材として適しており、多用されている。
特許文献1には、炭酸カルシウム、タルク等の充填材を含有するポリオレフィン樹脂組成物を溶融押出成形して得られたフィルムを一軸延伸することによって、衣料用、包装用、電池セパレーター用、濾過材用、医療用等の材料特に包装用、医療用の材料として用いて好適な柔軟性に優れる多孔質フィルムが得られることが開示されている。
しかしながら、フィラーの形状が不均一で樹脂との相溶性が悪いなどの理由から、多孔質フィルムは均一な物性が期待できないことや、表面が平滑にならずに凸凹が発生するなどの問題点があった。またこれらのフィラーは耐薬品性が悪く、例えば酢酸等の酸に溶出することがあるので、用途には制限があった。
特許文献2には、ポリプロピレン樹脂を主成分として含む海部とポリオレフィン・ポリスチレン系エラストマーを主成分として含む島部とからなる海島構造を有する二軸方向に延伸されることによって、滅菌処理に必要とされる高度な水蒸気透過性を有する連通孔を外観のムラ等なく均一に有し、かつ注射針やカテーテルなどの鋭利な物を包装するのに十分な突刺し強度を有するブリスター包装等の包装体における蓋材等に有用な微多孔性フィルムが得られることが開示されている。
しかしながら、特許文献2には濾過膜としての使用方法は記載されておらず、濾過膜としての使用をした際、どの程度の性能を示すかは不明であった。
特開昭60−229731号公報 特開2014−101445号公報
本発明の課題は、空孔率が高い多数の多孔構造を有し、透水性能および濾過精度に優れる延伸多孔フィルム、特に自動車産業(電着塗料回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除菌、酵素精製)などに使用することができる濾過膜を提供することにある。
本発明者らは、上記の実情に鑑み鋭意検討した結果、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1の発明によれば、 多孔層を有する積層多孔フィルムであって、該多孔層はエチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1つ有する積層構造であって、かつ、フィルムの空孔率が60%以上80%以下である積層多孔フィルムが提供される。
また、第2の発明によれば、第1の発明において、フィルムの厚みが50μm以上150μm以下、透水性能が20〜140秒である積層多孔フィルムが提供される。
さらに、第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、前記I層を表裏層とし、該表裏層の間に中間層としてII層を有する構造である積層多孔フィルムが提供される。
また、第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、二軸延伸フィルムである積層多孔フィルムが提供される。
さらに、第5の発明によれば、多孔層を有する積層多孔フィルムの製造方法であって、該多孔層はエチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1層ずつ有する未延伸フィルムを、前記I層の厚みに対する前記II層の厚み比(T2/T1)が0.1〜0.5となるように作成した後、フィルムの空孔率が60%〜80%以下となるように延伸することを特徴とする積層多孔フィルムの製造方法が提供される。
また、第6の発明によれば、第5の発明において、前記I層が表裏層とし、該表裏層の間に中間層としてII層を有する構造である積層多孔フィルムの製造方法が提供される。
さらに、第7の発明によれば、第5又は6の発明において、前記未延伸フィルムを、0℃〜60℃の温度で縦方向に1.1倍以上5.0倍未満で延伸し、60℃〜160℃の温度で縦方向に1.1倍以上3.0倍未満で延伸し、70〜150℃の温度で横方向に1.1倍以上10倍未満で延伸することを特徴とする積層多孔フィルムの製造方法が提供される。
また、第8の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明に係る積層多孔フィルムを用いたフィルターが提供される。
本発明の積層多孔フィルムは、空孔率が高い多数の多孔構造を有し、透水性能および濾過精度に優れ、特に自動車産業(電着塗料回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除菌、酵素精製)などに使用することができる濾過膜として有用である。
以下、本発明を詳しく説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
1.積層多孔フィルム
本発明の実施形態の一例に係る積層多孔フィルム(以下、「本フィルム」と称することがある)は、多孔層を有する積層多孔フィルムであって、該多孔層はエチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1つ有する積層構造であって、かつ、フィルムの空孔率が60%以上80%以下である積層多孔フィルムである。
上記I層とII層の異なる点は、島相として含有するビニル芳香族エラストマーの違いである。未延伸フィルムの状態において、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)はそれぞれ、エチレン重合体(A)への相溶性が異なるため、分散径が異なっている。従って、I層とII層を有する積層フィルムを延伸し、界面部分の破断によって得られる積層多孔フィルムは、層同士の平均細孔径が大きく異なる。
その結果、透水性能、濾過精度に優れたフィルムとなることを見出した。さらに、積層体中に含まれる海相としてエチレン重合体を用いた場合、バブルポイント測定の結果求められる最大細孔径が小さく濾過精度に優れた多孔構造をもつ多孔フィルムが得られることを見出した。
本フィルムにおいて、バブルポイント測定で得られる最大細孔径の上限は0.60μm以下、より好ましくは0.55μm以下、より好ましくは0.50μm以下である。一方、最大細孔径の下限については特に定めないが、透水性能を発揮させるという観点より、0.05μm以上が好ましく、0.10μm以上であることがより好ましい。
ここで最大細孔径DBPは、バブルポイント測定により得られたバブルポイント圧力Paをより、用いる試験液の表面張力γと接触角θから、下記式により算出されるものである。
BP=4γcоsθ/P
(1)空孔率
空孔率は多孔構造を規定する為の重要な要素であり、本フィルムにおける多孔層の空間部分の割合を示す数値である。一般に空孔率が高いほど、優れた濾過速度を有することが知られている。本フィルムの空孔率は、60%以上であり、好ましくは62%以上、より好ましくは64%以上である。一方上限は80%以下であり、75%以下がより好ましい。空孔率が60%以上であれば、優れた多孔性を有する多孔フィルムとなる。空孔率が80%以下であれば、実用性に耐えられる強度を有する多孔フィルムとなる。
なお、空孔率は、多孔フィルムの実重量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の重量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出される。
空孔率[%]={(W0−W1)/W0}×100
フィルム層厚みに対するII層の比率を上げ、さらにフィルムを延伸する際の延伸倍率を上げることによって、延伸積層フィルムの空孔率を高めることが可能となる。
(2)厚み
本フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、50μm以上が好ましく、60μm以上がより好ましい。一方、上限は150μm以下が好ましく、140μm以下がより好ましい。厚みが50μm以上であれば、充分な強度を有することができる。また、厚みが150μm以下であれば、小型化・軽量化が求められる用途に対しても使用が容易である。
(3)透水性能
本発明の積層多孔フィルムの透水性能は、好ましくは140秒以下、より好ましくは135秒以下、更に好ましくは130秒以下である。下限については特に制限はないが、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上、更に好ましくは10秒以上である。一方、上限については、濾過性能が上記範囲であれば、濾過速度と濾過精度を両立した多孔フィルムとなる。
なお、透水性能は25℃の空気雰囲気下において有効濾過面積9.6cmとし、50ccの純水が0.03MPaの減圧力にて多孔質フィルムを通過することにより測定する。
(4)バブルポイント圧力
フィルムを液体に浸透し、下側から空気の圧力を上げた際、最初に気泡が発生した時の圧力をバブルポイント圧という。バブルポイント圧力は、フィルム中の最大細孔径を表し、バブルポイント圧力が高いほど濾過精度が優れているといえる。
本発明の積層多孔フィルムのバブルポイントは、好ましくは130kPa以上、より好ましくは135kPa以上、更に好ましくは140kPa以上である。一方、上限については特に制限はないが、好ましくは500kPa以下、より好ましくは400kPa以下、更に好ましくは300kPa以下である。バブルポイント圧力が上記範囲であれば、濾過速度と濾過精度を両立した多孔フィルムとなる。
なおバブルポイント圧力は、パームポロメーター(Porous Materials社製)を用いて測定する。試液としてポリヘキサフルオロプロペン系液体「GALWICK」(Porous Materials社製、表面張力:15.6dynes/cm)を使用し、ASTM F316−86に準拠することにより測定する。
本発明の積層多孔フィルムの構成は特に制限されるものではなく、2層構成だけでなく、3層、4層、5層、それ以上の多層構成であっても構わない。いずれの層構成であっても、I、II層に相当する層を少なくとも1層ずつ有していれば、層同士の平均細孔径が大きい積層多孔フィルムであるため濾過効率が優れる。具体的には、上記の透水性能、及び、バブルポイント圧力の範囲を満たす積層多孔フィルムが得られる。
平均細孔径が大きいI層を、II層よりも表面側に配置することで、濾過を行った際に、比較的大きな粒子を表面のI層で補足しつつ、比較的小さな粒子をII層で補足するため、透水性能および濾過精度に優れた効率的な濾過を行うことができるため好ましい。
本発明の積層多孔フィルムの、それぞれの層の厚みの割合(積層日)については特に、性限されるものではない。
その総厚みに対するI層の積層比は、60%以上97%以下が好ましく、また、65%以上96%以下がより好ましく、70%以上95%以下がさらに好ましい。積層多孔フィルム中のI層の厚みは、30〜40μmであるのが好ましく、40μm〜140μmであるのがより好ましい。I層の厚み割合、及び、フィルム中の厚みがこの範囲であれば、比較的大きな粒子を効率よく補足することができ、透水性能を高めることができる。
また、その総厚みに対するII層の積層比は、3%以上40%以下が好ましく、4%以上35%以下がより好ましく、5%以上30%以下がさらに好ましい。積層多孔フィルム中のII層の厚みは、5〜30μmであるのが好ましく、10〜25μmであるのがより好ましい。II層の厚み割合、及び、フィルム中の厚みがこの範囲内であれば、I層では補足しきれない小さな粒子であっても補足することができ、本発明のフィルムが良好な濾過精度を有することになる。
さらに、積層多孔フィルムにおける、前記I層の厚みに対する前記II層の厚み比)は、好ましくは0.1〜0.5であるのが好ましい。この範囲であれば、本フィルムは良好な透水性能及び濾過精度を有する。
ここで、I層及びII層が複数配される場合は、各層の合計厚みを用いて算出する。
本フィルムは上記構成を備えていればよいから、他の層をさらに備えていてもよい。
以下、本フィルムを構成する多孔層について説明する。その後、製造方法としての当該積層多孔フィルムの成形方法について説明する。
2.多孔層
本発明の積層多孔フィルムを構成する多孔層は、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層、及び、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層の2つの層を少なくとも有する。以下、多孔層を構成するそれぞれの重合体について説明する。
(1)エチレン重合体(A)
エチレン重合体(A)は、本発明の積層多孔フィルムにおいては海相を形成する重合体である。延伸により多孔性を付与された本フィルムの成分として、コスト、耐溶剤性、耐熱性の観点からエチレン重合体の群の中から選ばれる一種又は二種以上の重合体を挙げることができる。
本発明におけるエチレン重合体(A)は、主としてエチレンに由来する構成単位(以下「エチレン単位」と称す場合がある。)からなる重合体又は共重合体であり、好ましくはエチレン単位が全構成単位の90重量%以上であるポリエチレンである。具体的には、エチレンの単独重合体であってもよく、また、エチレン単位90重量%以上とα−オレフィンに由来する構成単位(以下「α−オレフィン単位」と称す場合がある。)10重量%以下との共重合体であってもよい。エチレン重合体(A)が共重合体の場合に使用されるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等の1種又は2種以上を挙げることができる。
エチレン重合体(A)には、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレンおよび鎖状低密度ポリエチレンが挙げられる。結晶性、機械強度、経済性の観点から、高密度ポリエチレンが好ましい。
エチレン重合体(A)は、その密度が0.955〜0.970g/cmであることを必須とし、0.955〜0.965g/cmであることが好ましい。ポリエチレン系樹脂(A)の密度が0.955g/cm未満であると、本発明の多孔フィルムの結晶性が小さくなり目的とする多孔構造の形成を満たすことができず、0.970g/cmを超えると結晶性が高すぎて延伸ムラが起こりやすい。
また、エチレン重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.1〜10g/10分であることが好ましく、0.2〜5g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分以上であると、成形加工時において十分な溶融粘度を有し、高い生産性を確保することができる。一方、MFRが10g/10分以下であると、十分な強度を有する多孔フィルムとすることができる。
エチレン重合体(A)の密度は、JIS K7112に従い、水中置換法で測定される。また、MFRはJIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
なお、エチレン重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、構成単位や密度、MFR等の物性の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
(2)ビニル芳香族エラストマー
本発明においては、ポリエチレン系樹脂(A)に対し、ビニル芳香族エラストマーを添加することが重要である。ビニル芳香族エラストマーは、本発明の積層多孔フィルムにおいては島相を形成する重合体である。I層、II層に含まれるビニル芳香族エラストマーについては特に限定はしないが、I層に含まれるビニル芳香族エラストマーはエチレン重合体との相溶性が比較的高く、島相が小さくなるものが選ばれる。一方、II層に含まれるビニル芳香族エラストマーはエチレン重合体との相溶性が比較的低く、島相が大きくなるものが選ばれる。
本発明において、I層を構成するビニル芳香族エラストマーとしては、エチレン重合体との相溶性が小さいことから、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)であることが好ましい。I層を構成する樹脂として、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を選択することにより、エチレン重合体と混合しキャストフィルムとした際、分散径が大きな島相となる。このキャストフィルムを延伸し界面部分の開裂により得られる多孔フィルムは、細孔径が大きいフィルムとなり、比較的大きな粒子を効率よく補足することができ、透水性能を高めることができる。この延伸フィルムのバブルポイント測定より得られる最大細孔径は、0.55μm以上となる。
一方、II層を構成するビニル芳香族エラストマーとしては、エチレン重合体との相溶性が大きいことから、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)が選ばれる。II層を構成する樹脂として、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を選択することにより、エチレン重合体と混合しキャストフィルムとした際、分散径が小さな島相となる。このキャストフィルムを延伸し界面部分の開裂により得られる多孔フィルムは、細孔径が小さいフィルムとなり、I層では補足しきれない小さな粒子であっても補足することができ、本発明のフィルムが良好な濾過精度を有することになる。この延伸フィルムのバブルポイント測定より得られる最大細孔径は、0.55μm未満である。
(2−1)スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)
本発明におけるスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)とは、スチレン成分を基材とした熱可塑性エラストマーの1種で、硬質成分であるポリスチレンブロック(ハードセグメント)と、エチレンとブテンとの共重合からなる軟質成分のエラストマーブロック(ソフトセグメント)を有する共重合体であり、ポリマー鎖の両端にハードセグメントをもつブロック重合体である。
本発明に用いられるスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)は、好ましくは1.0g/10分以下、より好ましくは0.5g/10分以下、さらに好ましくは0.1g/10分以下であることが好ましい。スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)は、樹脂との粘度差によってその形状が変化するが、前記範囲内におけるMFRのものであるならば、その形状が球状になり易いからである。球状分散したドメインは、アスペクト比が大きなドメインとは異なり、その後の延伸工程によって得られる多孔構造の均一性が高くなり易く、物性安定性に優れるので好ましい。さらに、上記範囲内におけるMFRであった場合、延伸工程時において、高い弾性率を有するマトリックスと低い弾性率のドメイン界面部分に応力が集中しやすくなるため、開孔起点が生じやすく、多孔化し易いという特徴を有する。
なお、MFRはJIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
また、本発明におけるスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)は、スチレン含有量が1〜40重量%であることが好ましく、10重量%〜35重量%であることがより好ましい。スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)のスチレン含有量が1重量%以上であることにより、フィルム状に成形した際、効果的にドメインを形成することができ、スチレン含有量が40重量%以下であることにより、過度に大きなドメイン形成を抑制することができる点で好ましい。
本発明にかかるフィルム中には、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)の群の中から選ばれる1種又は2種以上の共重合体を含んでいてもよい。
(2−2)スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)
本発明に用いられるスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)とは、スチレン成分を基材とした熱可塑性エラストマーの1種で、硬質成分であるポリスチレンブロック(ハードセグメント)と、エチレンとプロピレンとの共重合からなる軟質成分のエラストマーブロック(ソフトセグメント)を有する共重合体を有する共重合体であり、ポリマー鎖の一方の端にハードセグメント、他方の端にソフトセグメントをもつブロック共重合体である。
本発明に用いられるスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)は、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1.0g/10分以下、より好ましくは0.5g/10分以下、さらに好ましくは0.1g/10分以下であることが好ましい。フィルム状に成形した際、分散した前記スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)は、樹脂との粘度差によってその形状が変化するが、前記範囲内におけるMFRのものであるならば、その形状が球状になり易いからである。球状分散したドメインは、アスペクト比が大きなドメインとは異なり、その後の延伸工程によって得られる多孔構造の均一性が高くなり易く、物性安定性に優れるので好ましい。さらに、上記範囲内におけるMFRであった場合、延伸工程時において、高い弾性率を有するマトリックスと低い弾性率のドメイン界面部分に応力が集中しやすくなるため、開孔起点が生じやすく、多孔化し易いという特徴を有する。
なお、MFRはJIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
また、本発明におけるスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)は、スチレン構造単位の含有量が1〜40重量%であることが好ましく、10重量%〜35重量%であることがより好ましい。スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)中のスチレン含有量が1重量%以上であることにより、フィルム状に成形した際、効果的にドメインを形成することができ、スチレン含有量が40重量%以下であることにより、過度に大きなドメイン形成を抑制することができる。
くなる。
本発明にかかるフィルム中には、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)の群の中から選ばれる1種又は2種以上の共重合体を含んでいてもよい。
3.積層多孔フィルムの製造方法
本発明の積層多孔フィルムの製造方法について説明するが、以下の説明は、本発明の積層多孔フィルムを製造する方法の一例であり、本発明の積層多孔フィルムはかかる製造方法により製造される積層多孔フィルムに限定されるものではない。
本発明の実施形態の一例に係る積層多孔フィルムの製造方法(以下、本フィルム製造方法)と称することがある)は、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1層ずつ有する未延伸フィルムを、前記I層の厚みに対する前記II層の厚み比(T2/T1)が0.1〜0.5となるように作成し(製膜工程)、空孔率が60%〜80%以下となるように延伸する(延伸工程)ことを特徴とする積層多孔フィルムの製造方法である。
本フィルム製造方法は上記工程を備えていればよいから、他の工程や処理をさらに備えていてもよい。
以下、製膜工程、延伸工程について順次説明する。
(1)製膜工程
エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)、さらに、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)とをそれぞれ混合する。
エチレン重合体(A)55〜85重量%、ビニル芳香族エラストマー15〜45重量%の割合で混合する。好ましくは、エチレン重合体(A)60〜80重量%、ビニル芳香族エラストマー20〜40重量%の割合である。
エチレン重合体が85重量%以下であることによって、延伸による多孔化が生じやすくなり、十分な空孔構造を形成することによって、濾過性能の向上が期待できる。一方、エチレン重合体が55重量%以上であることによって、前記エチレン重合体中のビニル芳香族エラストマー同士が凝集を生じにくくなり延伸による多孔化が生じやすくなる。
本発明においては、結晶核剤(D)を更に混合することが好ましい。結晶核剤を混合することにより、前記エチレン重合体(A)の結晶化が促進され、結晶構造が緻密に均一化する。それゆえ、延伸前のシートにおける前記エチレン重合体(A)は緻密に均一化した結晶部と、該結晶部間に存在する非晶部とからなり、ビニル芳香族エラストマーは前記エチレン重合体(A)の非晶部に多く存在する。そのため、延伸により前記エチレン重合体(A)の緻密な結晶部とビニル芳香族エラストマーとの界面で生じる多孔化は、マトリックスの結晶化に伴う弾性率の向上によって容易になり、かつ、結晶の緻密な均一化によって、得られる多孔構造も緻密で均一な多孔構造を形成しやすくなる。
本発明に用いる結晶核剤(D)は、エチレン重合体(A)の結晶性を向上させる効果が認められれば、その種類を特に制限するものではない。
例えば、ジベンジリデンソルビトール(DBS)化合物、1,3−O−ビス(3,4ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ジアルキルベンジリデンソルビトール、少なくとも一つの塩素または臭素置換基を有するソルビトールのジアセタール、ジ(メチルまたはエチル置換ベンジリデン)ソルビトール、炭素環を形成する置換基を有するビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトール、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸、相当する無水物および金属塩などの有機酸の金属塩化合物、環式ビス−フェノールホスフェート;2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸などの二環式ジカルボン酸及び塩化合物;ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ジカルボキシレートなどの二環式ジカルボキシレートの飽和の金属または有機の塩化合物;カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘニン酸、モンタン酸等の脂肪酸;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子;グリセロール、グリセリンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル、及び類似物を挙げることができる。
これらの中でも、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩が特に好ましい。
結晶核剤(D)の具体例としては、新日本理化(株)の商品名「ゲルオールD」シリーズ、(株)ADEKAの商品名「アデカスタブ」シリーズ、ミリケンケミカル社の商品名「Millad」シリーズ、「Hyperform」シリーズ、BASF社の商品名「IRGACLEAR」シリーズ等が挙げられ、また結晶核剤のマスターバッチとしては理研ビタミン(株)の商品名「リケマスターCN」シリーズ、ミリケンケミカル社の商品名「HL3−4」等が挙げられる。この中でも特に透明性を向上する効果が高いものとして、ミリケンケミカル社の商品名「HYPERFORM HPN−20E」、「HL3−4」、理研ビタミン(株)の商品名「リケマスターCN−001」「リケマスターCN−002」を挙げることができる。
結晶核剤(D)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
結晶核剤(D)は、エチレン重合体(A)とビニル芳香族エラストマーとの合計100重量部に対し、1〜10重量部の割合で用いることが好ましく、より好ましくは2〜5重量部である。
なお、上記の結晶核剤(D)のうち、理研ビタミン(株)の商品名「リケマスターCN−001」「リケマスターCN−002」については、ポリエチレン系樹脂(A)に対し、0.5〜5.0重量部用いることが好ましい。
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲において、エチレン重合体(A)、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)、及び、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)以外の成分、例えばエチレン重合体(A)以外の他の樹脂を混合することを許容することができる。
他の樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また、本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般的に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などの添加剤が挙げられる。
上記エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)をそれぞれ混合する際、これらの原料を、例えばタンブラーミキサー、オムニミキサー等の混合機でプレブレンドした後、必要に応じて、得られた混合物を押出混練して、調製することができる。
それぞれの原料を、それぞれ別々に、もしくは混合された状態で、オーブンや真空乾燥機などで加熱乾燥してもよい。乾燥の際には、成分の変質や融着が起こらない条件とすることが好ましい。
混錬する際、用いる機械を特に限定するものではない。例えば単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機など、公知の押出機を用いることができる。また、設備構造および必要性に応じて、ベント口に減圧機を接続し、水分や分低分子量物質を除去してもよい。
上記のように混練した樹脂混合物を加熱溶融する方法として、例えばTダイ法、インフレーション法などを挙げることができ、中でもTダイ法を採用するのが好ましい。実用的には、Tダイから材料樹脂を溶融押出してキャストロールによりキャスト成形するのが好ましい。
フィルム状に製膜する具体的方法として、Tダイ法を採用する場合、Tダイからそれぞれ押出されたシート状の溶融樹脂を積層し、回転するキャストロール(チルロール、キャストドラム)上に密着させながら引き取りシート状物に成形する方法を挙げることができる。
キャストロールにフィルム状物を密着させるために、タッチロール、エアナイフ、電気密着装置などをキャストロールに付けてもよい。特にキャストロールを低温とする場合には電気密着が有効である。
得られる未延伸フィルムにおいて、両端部を除いた有効部分の厚みは30μm〜1000μmであるのが好ましく、中でも50μm以上或いは800μm以下、その中でも100μm以上或いは600μm以下であるのがさらに好ましい。
未延伸フィルム厚さが30μm以上であれば、フィルムが薄すぎるために延伸時に破断を起こすのを防ぐことができ、未延伸フィルムの厚さが1000μm以下であれば、フィルムが剛直になり過ぎて延伸を行い難くなるのを防ぐことができるばかりか、延伸後のフィルムの厚みを薄くすることができる。
細孔径が大きいI層を表裏層とし、該表裏層の間に中間層として細孔径が大きいII層を配置することで、濾過を行った際に比較的大きな粒子を表裏層で補足しつつ、比較的小さな粒子を中間層で補足するため、透水性能および濾過精度に優れた効率的な濾過を行うことができる。
異なる実施形態としては、細孔径が大きいI層を表層とし、II層を裏層として配置することできる。得られる多孔フィルムを用いて濾過を行った際、比較的大きな粒子を表層で補足しつつ、比較的小さな粒子を裏層で補足するため、透水性能および濾過精度に優れた効率的な濾過を行うことができる。
本発明の積層多孔フィルムは上記の層構成のみだけでなく、他の層を組み合わせた構成であってもよい。
バブルポイント測定より得られるI層の最大細孔径は、好ましくは0.55μm以上であり、より好ましくは0.57μm以上、更に好ましくは0.60μm以上である。
I層の最大細孔径の上限については特に定めないが、通常1.00μm以下である。
バブルポイント測定より得られるII層の最大細孔径は、好ましくは0.55μm未満であり、より好ましくは0.50未満、更に好ましくは0.45μm未満である。II層の最大細孔径の下限については特に定めないが、通常0.10μm以上である。
さらに、I層とII層の最大細孔径の差は、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.20μm以上である。
I層とII層の最大細孔径が上記の範囲であれば、透水性能および濾過精度に優れる積層延伸フィルムとなる。
ここで最大細孔径DBPは、バブルポイント測定により得られたバブルポイント圧力Paをより、用いる試験液の表面張力γと接触角θから下記式により算出されるものである。
BP=4γcоsθ/P
未延伸フィルムにおいて、前記I層の厚みに対する前記II層の厚み比(T2/T1)が0.1〜1.5である関係を満たすことが好ましい。厚み比がこの範囲であることであり、透水性能および濾過精度に優れる積層延伸フィルムが得られる。
ここで、I層及びII層が複数配される場合は、各層の合計厚みを用いて算出する。
未延伸フィルムにおいて、50〜200μmであるI層を有しているのが好ましい。この厚みの下限は、より好ましくは55μmであり、さらに好ましくは60μmである。一方、上限は、より好ましくは190μmであり、更に好ましくは、175μmである。50μm以上のI層を有することで、良好なバブルポイント圧力を有する積層延伸フィルムが得られる。一方、200μm以下のI層であることで、良好な空孔率を有する積層延伸フィルムが得られる。
未延伸フィルムにおいて、50〜300μmであるII層を有しているのが好ましい。この厚みの下限は、より好ましくは55μmであり、さらに好ましくは60μmである。一方、上限は、より好ましくは250μmであり、更に好ましくは、200μmである。50μm以上のII層を有することで、実用性に耐えうる強度を有する積層延伸フィルムが得られる。一方、300μm以下のI層であることで、良好な空孔率を有する積層延伸フィルムが得られる。
(2)延伸工程
以下、上記未延伸フィルムを延伸して空孔率が60%〜80%以下となるように延伸して二軸延伸フィルムの積層多孔フィルムを得る工程を詳述する。
得られた未延伸フィルムを一軸延伸、又は、二軸延伸を行う。一軸延伸は縦一軸延伸であってもよいし、横一軸延伸であってもよい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。未延伸フィルムの組成、厚み、および延伸倍率を変更することにより、作成される積層多孔フィルムの厚み、空孔率を調整することができる点が本発明の一つの利点である。本発明の目的である積層多孔フィルムを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物の流れ方向(MD)への延伸を「縦方向の延伸」といい、流れ方向に対して垂直方向(TD)への延伸を「横方向の延伸」という。横延伸は、延伸区間となる一対の駆動ロールの速度差を利用して行う方法が好ましいが、これに限定されるものではない。 一方、横延伸に用いる装置は、クリップ式テンターを用いることが好ましい。但しこれに限定するものではない。
本発明の実施形態の一例に係る積層多孔フィルムの製造方法は、前記未延伸フィルムを、0℃〜60℃の温度で縦方向に1.1倍以上5.0倍未満で延伸し、60℃〜160℃の温度で縦方向に1.1倍以上3.0倍未満で延伸し、70〜150℃の温度で横方向に1.1倍以上10倍未満で二軸延伸する方法である。以下に詳細を説明する。
縦延伸を行う際は、延伸による開孔をし易くするための理由から、高温縦延伸の前に以下の低温縦延伸工程成形を行うことが好ましい。
未延伸フィルムを好ましくは0℃〜60℃、より好ましくは10〜40℃の温度で、好ましくは縦方向に1.1倍以上4.5倍未満、より好ましくは、1.2倍以上4.0倍未満の範囲で延伸する。0℃以下で延伸した場合はフィルムが破断する傾向があり、また、60℃を超える温度で延伸した場合は、得られる延伸フィルムの空孔率が低くなる傾向がある。また、本実施の形態で得られる多孔フィルムの透過性が向上することから、上記延伸工程を実施する前に、フィルム成形工程で得られたフィルムを一定の温度範囲で一定時間熱処理しても良い。
次いで、上記で得られた延伸フィルムを好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは70℃〜130℃の温度で、縦方向に好ましくは1.1倍以上6.0倍未満、より好ましくは、1.2倍以上5.0倍未満の範囲で高温縦延伸する。60℃未満で延伸した場合はフィルムが破断する傾向があり、また、160℃を超える温度で延伸した場合は、得られる延伸フィルムの気孔率が低くなる傾向がある。また、本実施の形態の多孔フィルムに要求される物性や用途の観点から、上記したような条件で2段階以上延伸することが好ましい。延伸工程を1段階とすると、得られる延伸フィルムが、要求された物性を満たさない場合がある。
縦延伸倍率は、任意に選択することができるが、一軸延伸あたりの延伸倍率は1.1倍以上15倍未満が好ましく、より好ましくは1.5倍以上12倍未満であり、さらに好ましくは1.5倍以上10倍未満である。一軸延伸あたりの延伸倍率を1.1倍以上とすることで白化が進行して、延伸による多孔化が十分起こっていることを示唆している。また、15倍未満とすることで、空孔の変形は抑制され、十分に白化した多孔フィルムを得ることができる。
横延伸を行う際用いる装置としては、前述のとおり、クリップ式テンターを用いることが好ましい。クリップ式テンターは、横延伸用のクリップ走行装置とオーブンとから構成される。
上記クリップ走行装置は縦延伸フィルムの両端部を一対のクリップで掴んで搬送すると同時に、グリップ走行装置のガイドレールが開いて2列のグリップ間の距離を広げることにより当該フィルムを延伸する。
上記オーブンは、流れ方向にいくつかのゾーンに区切られており、ゾーンごとに設定温度又は熱風の風量を変えられることが望ましい。上流側から、予熱ゾーンを設けて縦延伸フィルムを延伸可能な温度にまで加熱し、延伸ゾーンで延伸し、延伸後に必要に応じて熱処理ゾーンを設けて熱処理し、オーブンから前記フィルムが出て常温に曝される前に徐冷ゾーンを設けられる。
横延伸を行う際の温度に関しては、フィルムを好ましくは70〜150℃であり、より好ましくは80〜140℃の温度範囲で横方向に延伸する。前記横延伸温度が規定された範囲内であることによって、縦延伸時に生じた空孔が拡大されて空孔率を増加することができ、十分な多孔性を有することができる。
横延伸倍率は、任意に選択できるが、好ましくは1.1倍以上10倍未満であり、より好ましくは1.5倍以上9.0倍未満、更に好ましくは2.0倍以上8.0倍未満である。規定した横延伸倍率で延伸することによって、縦延伸時に生じた空孔を変形することなく、十分な空孔率を有することができる。
延伸速度は、好ましくは10〜20000%/分の範囲、より好ましくは100〜10000%/分の範囲である。10%/分以上であれば、十分な延伸倍率を効率よく得ることができ、製造コストを抑えることができる一方、20000%/分以下であれば、フィルムの破断等が起こるのを抑えることができる。
4.液体用フィルター
本発明の液体用フィルターは、上記のような本発明の積層多孔フィルムを備えるものである。本発明の液体用フィルターは、本発明の積層多孔フィルムのみの構造であってもよく、他の層と組み合わせた構造であってもよい。本発明の液体用フィルターは、水或いはアセトンといった水系溶媒、ハロゲン化物、エステル類、エーテル、ベンゼン、トルエンといった石油系溶剤を生成するためのフィルター、具体的には、自動車産業(電着塗料)回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬・食品産業(除菌、酵素精製)などにおいて使用される精密濾過膜として有用である。
多孔フィルムを濾過システムに組み込む場合、多孔フィルムを同心状に巻きつけた状態(ワインド型)や、ブリーツ加工を施し円筒の容器に収納した状態(カートリッジフィルター)とすることが可能であり、このカートリッジフィルターを、簡便に濾過システムに組み込むことができる。
<用語の説明>
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JIS K6900)。例えば厚さに関して言えば、狭義では100μm以上のものをシートと称し、100μm未満のものをフィルムと称すことがある。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとし、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとする。
本発明において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意を包含する。
次に、実施例および比較例を示し、本多孔体について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本多孔体の実施形態として、フィルム状物に賦形した。また、フィルムの引き取り(流れ)方向を「MD」、その直角方向を「TD」と記載する。
[多孔フィルム原材料]
多孔フィルムの製造に用いた原材料は以下の通りである。
<エチレン重合体(A)>
・A−1;高密度ポリエチレン(ハイゼックス3600F、プライムポリマー社製、MFR(190℃、2.16kg):1.0g/10分、密度:0.958g/cm、融点:134℃、融解エンタルピーΔHm:207J/g、結晶化温度:115℃、結晶化エンタルピーΔHc:210J/g)
<スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)>
・B−1:スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(SEBS)、MFR(230℃、2.16kg):0.1g/10分以下、スチレン含有量:31質量%)
<スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)>
・C−1:スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEPS)、MFR(230℃、2.16kg):流動せず、スチレン含有量:20質量%)
<結晶核剤(D)>
・D−1:ポリエチレン用結晶核剤マスターバッチ(グレード名:リケマスターCN−002、理研ビタミン社製)
・D−2:α晶核剤(ソルビトール系化合物、グレード名:ゲルオールMD―LM30G、新日本理化社製)
<プロピレン共重合体(E)>
・E−1:ホモポリプロピレン(MFR:1.9g/10分、Mw/Mn=3.2)
<スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(F)>
・F−1:スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−(エチレン/プロピレン)共重合体(SEP)、MFR(230℃、2.16kg):0.1g/10分、スチレン含有量:35質量%)
[物性の測定方法]
製造された多孔フィルムの各種物性の測定方法は以下の通りである。
(1)空孔率
得られた多孔フィルムの実質量W1を測定し、多孔フィルムの製造に用いたポリエチレン系樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
(2)厚み
得られた多孔フィルムを1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(3)透水性能
25℃の空気雰囲気下において有効濾過面積9.6cmとし、50ccの純水が0.03MPaの減圧力にて多孔質フィルムを通過する時間を測定した。
(4)バブルポイント圧力
パームポロメーター(Porous Materials社製)を用いて測定した。試液としてポリヘキサフルオロプロペン系液体「GALWICK」(Porous Materials社製、表面張力:15.6dynes/cm)を使用し、ASTM F316−86に準拠して測定した。
(5)最大細孔径
最大細孔径DBPは、前記バブルポイント圧力より、用いた試験液の表面張力γと接触角θから、下記式により算出した。ここで、接触角度は0°とした。
BP=4γcоsθ/P
[実施例1]
エチレン重合体(A−1)70質量%、スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B−1)30重量%を混練し、さらに前記エチレン重合体(A−1)と前記スチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B−1)との混合樹脂組成物100重量部に対し結晶核剤(D−1)を1.75重量部の割合で配合し、2軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混練後、ストランドダイにてストランド状に賦形した後、水槽にてストランドを冷却固化し、ストランドカッターにて裁断し、ペレット(以下「ペレット(I)」と称す)を作製した。同様の方法でエチレン共重合体(A−1)70質量%、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C−1)30重量%混練し、さらに前記エチレン共重合体(A−1)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C−1)との混合樹脂組成物100重量部に対し結晶核剤(D−1)を1.75重量部の割合で配合することによって、ペレット(以下「ペレット(II)」と称す)を作製した。
作製したペレットは、単軸押出機を用いて、210℃で溶融混合後、リップ開度1mmのTダイで、表裏層側押出機にペレット(I)、中層側押出機にペレット(II)を用いて、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=3/1/3となるように、210℃の押出温度で共押出成形を行い、110℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み約500μmの未延伸フィルムを得た。その後、得られた未延伸フィルムを、20℃に設定したロール(X)と20℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比150%(延伸倍率2.5倍)を掛けて低温縦延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比30%(延伸倍率1.3倍)を掛けて高温縦延伸を行い、MD延伸フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸フィルムを、フィルムテンター設備(京都機械社製)にて、予熱温度90℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度90℃、4.0倍横方向に延伸した後、60℃で熱処理を行い、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例2]
未延伸フィルムを得る際、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=2/1/2となるようにし、実施例1と同様に未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムについて、実施例1と同様の延伸処理を施し、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例3]
未延伸フィルムを得る際、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=1.5/1/1.5となるようにし、実施例1と同様に未延伸シートを得た。得られた未延伸フィルムについて、実施例1と同様の延伸処理を施し、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[実施例4]
未延伸フィルムを得る際、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=1/1/1となるようにし、実施例1と同様に未延伸シートを得た。得られた未延伸フィルムについて、実施例1と同様の延伸処理を施し、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例1]
未延伸フィルムを得る際、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=1/2/1となるようにし、実施例1と同様に行い、厚み約400μm未延伸シートを得た。得られた未延伸フィルムについて、実施例1と同様の延伸処理を施し、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例2]
未延伸フィルムを得る際、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=1/3/1となるようにし、実施例1と同様に行い、厚み約400μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムについて、実施例1と同様の延伸処理を施し、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例3]
ペレット(I)を単軸押出機に投入し、設定温度210℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、110℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み約400μmの未延伸シートを得た。その後、得られた未延伸フィルムについて、実施例1と同様の延伸処理を施し、多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例4]
ペレット(II)を単軸押出機に投入し、設定温度210℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、110℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み約400μmの未延伸シートを得た。その後、得られた未延伸フィルムを、20℃に設定したロール(X)と20℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比250%(延伸倍率3.5倍)を掛けて低温縦延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比30%(延伸倍率1.3倍)を掛けて高温縦延伸を行い、MD延伸フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度90℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度90℃、4.5倍横方向に延伸した後、60℃で熱処理を行い、多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例5]
プロピレン共重合体(E−1)70質量%、スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C−1)30重量%、及び、前記プロピレン共重合体(E−1)と前記スチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C−1)との混合樹脂組成物100重量部に対し結晶核剤(D−2)を0.1重量部の割合で配合し、2軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混練後、ストランドダイにてストランド状に賦形した後、水槽にてストランドを冷却固化し、ストランドカッターにて裁断し、ペレット(以下「ペレット(III)」と称す)を作製した。
作製したペレット(III)を単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、127℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み約230μmの未延伸シートを得た。その後、得られた未延伸シートを、20℃に設定したロール(X)と20℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.0倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.5倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃で、3.0倍横方向に延伸した後、155℃で熱処理を行い、多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例6]
プロピレン共重合体(E−1)70質量%、スチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック共重合体(F−1)30重量%、及び、前記プロピレン共重合体(E−1)と前記スチレン−(エチレン/プロピレン)共重合体(F−1)との混合樹脂組成物100重量部に対し結晶核剤(D−2)を0.1重量部の割合で配合し、2軸押出機に投入し、設定温度240℃で溶融混練後、ストランドダイにてストランド状に賦形した後、水槽にてストランドを冷却固化し、ストランドカッターにて裁断し、ペレット(以下「ペレット(IV)」と称す)を作製した。
作製したペレット(IV)を単軸押出機に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、127℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み約230μmの未延伸シートを得た。その後、得られた未延伸シートを比較例5と同様の延伸を施し、多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
[比較例7]
作製したペレット(III)と(IV)について単軸押出機を用いて、200℃で溶融混合後、リップ開度1mmのTダイで、表裏層側押出機にペレット(III)、中層側押出機にペレット(IV)を用いて、積層の厚み比が、表層/中間層/裏層=2/1/2となるように、200℃の押出温度で共押出成形を行い、127℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み約230μmの未延伸フィルムを得た。その後、得られた未延伸シートを比較例5と同様の延伸を施し、積層多孔フィルムを得た。
得られたフィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 2018126936
実施例1〜4において、それぞれ空孔率が60%以上であり、十分な多孔構造が形成された積層多孔フィルムが得られている。厚みが約100μmのフィルムにおいて透水性能は140秒以下、バブルポイントは130kPa以上である。透水性能および濾過精度に優れる積層多孔フィルムが得られている。
比較例1、2のフィルムは、空孔率が60%未満であり、十分な多孔構造が形成されていない。そのため、透水性能に劣っている。
比較例3、4のフィルムは、バブルポイント圧力が130kPa未満であり濾過精度に劣っている。また比較例4のフィルムは厚みが50μmであり、実施例1〜4の半分の厚みしかないのにもかかわらず、透水性能が123秒である。
比較例5〜7のプロピレン重合体から得られるフィルムはいずれも、バブルポイント圧力が130Pa未満であり濾過精度に劣っている。プロピレン重合体とスチレン系エラストマーを混合した時のエラストマーの分散性は、エチレン重合体よりも劣るため、エラストマーが形成する島相の径は大きくなる。そのため、フィルム延伸による界面部分の開裂によって生じる細孔径は大きくなり、目的の濾過精度は得られないものと考えられる。
本発明の積層多孔フィルムは、細孔径の異なる多数の空孔構造を有する層が積層され、透気性能、及び、濾過性能に優れた安価な多孔フィルムであり、この多孔質フィルムは自動車産業(電着塗料回収再利用システム)、半導体産業(超純水製造)、医薬食品産業(除菌、酵素精製)などの濾過膜として有用である。

Claims (8)

  1. 多孔層を有する積層多孔フィルムであって、該多孔層はエチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1つ有する積層構造であって、かつ、フィルムの空孔率が60%以上80%以下である積層多孔フィルム。
  2. フィルムの厚みが50μm以上150μm以下、透水性能が20〜140秒である請求項1に記載の積層多孔フィルム。
  3. 前記I層を表裏層とし、該表裏層の間に中間層としてII層を有する構造である請求項1又は2に記載の積層多孔フィルム。
  4. 二軸延伸フィルムである請求項1〜3のいずれかに記載の積層多孔フィルム。
  5. 多孔層を有する積層多孔フィルムの製造方法であって、該多孔層はエチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/ブチレン)−スチレンブロック共重合体(B)を有するI層と、エチレン重合体(A)とスチレン−(エチレン/プロピレン)−スチレンブロック共重合体(C)を有するII層を少なくとも1層ずつ有する未延伸フィルムを、前記I層の厚みに対する前記II層の厚み比(T2/T1)が0.1〜0.5となるように作成した後、フィルムの空孔率が60%〜80%以下となるように延伸することを特徴とする積層多孔フィルムの製造方法。
  6. 前記I層が表裏層とし、該表裏層の間に中間層としてII層を有する構造である請求項5に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
  7. 前記未延伸フィルムを、0℃〜60℃の温度で縦方向に1.1倍以上5.0倍未満で延伸し、60℃〜160℃の温度で縦方向に1.1倍以上3.0倍未満で延伸し、70〜150℃の温度で横方向に1.1倍以上10倍未満で延伸することを特徴とする請求項5又は6に記載の積層多孔フィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の積層多孔フィルムを用いたフィルター。
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