JP2016102135A - 多孔体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた透気特性を有し、コンデンサ用セパレータとして利用する際に高い親液性を有すると共に、高い生産性の下に製造することができるエチレンビニルアルコール系共重合体を用いた多孔体、及びその製造方法を提供する。【解決手段】エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とする多孔体。【選択図】なし

Description

本発明は、エチレンビニルアルコール系共重合体を用いた多孔体、及びその製造方法に関する。より詳細には、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、水処理膜、光拡散板、電子部材用セパレータとして利用でき、特に、コンデンサ用セパレータ、及び、該コンデンサ用セパレータを用いてなるコンデンサに好適に利用できるエチレンビニルアルコール系共重合体を用いた多孔体、及びその製造方法に関する。
本発明はまた、この多孔体を用いたコンデンサ用セパレータ、及びコンデンサに関する。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは、電解コンデンサ、電気二重層コンデンサ、リチウムイオンキャパシタといったコンデンサや、アルカリ電池、ニッケル金属水素化物電池、リチウム電池、リチウムイオン二次電池といった電池などの電子部材に使用するセパレータなど各種の分野で利用されている。
中でも、電気二重層コンデンサやリチウムイオンキャパシタなどのコンデンサは、二次電池と比較して1回あたりの充電容量は小さいものの、瞬間充放電特性に優れ、充放電における特性劣化がないため、各種機器の補助電源や回生エネルギーの貯蔵などに適用されており、自動車における電子制御ブレーキ用バックアップ電源やアイドリングストップバックアップ用途等で普及してきている。
電気二重層コンデンサでは、活性炭やカーボンブラック等を担持させた一対の電極の間にセパレータを挟み、これらに電解液が含浸されて製造される。電気二重層コンデンサに用いられる電解液としては、一般にプロピレンカーボネート等の有機溶媒にテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートやテトラエチルホスホニウムテトラフルオロボレート等を溶解したものが用いられる。
リチウムイオンキャパシタでは、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用した非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒として、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質が用いられる。
これらの電子部材には内部短絡の防止の点から、セパレータが正極と負極の間に介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、セパレータの内部をイオンが移動して一方の極側からもう一方の極側へ移動可能でなければならない。そのためには、セパレータが電解液に対する親和性(親液性)を有し、セパレータ内部が電解液で満たされた状態であることが必要である。さらに、電子部材の生産性向上や品質の観点から、セパレータへの電解液の浸透速度は速いことが望まれる。
セパレータの親液性向上検討として、部分親水化ポリオレフィン微多孔膜を使用した密閉型アルカリ二次電池セパレータ(特許文献1)や、エチレンビニルアルコール共重合体を含有する電池セパレータが提案されている(特許文献2)。
また、極性基含有オレフィン系共重合体よりなる多孔フィルム、及びその製造方法(特許文献3)や、微細多孔質膜の製造方法(特許文献4)が提案されている。
特開2000−248095号公報 特開平11−213982号公報 特開平10−204198号公報 特表2009−527633号公報
しかしながら、特許文献1のような密閉型アルカリ二次電池セパレータでは、部分的な親水化処理工程において、緻密な分散形態を実現するための高度な製版技術を用いた凸版印刷法やグラビア印刷法、あるいはスクリーン印刷法等により、部分的に親水化剤を適用する方法や、膜表面で疎水性孔を残しておきたい部分をマスキングし、その状態で膜全体を親水化処理するなどといった、非常に煩雑な後工程を行わなければならない。また、多孔膜内部の親水化処理が難しいことから、電解液の保液性に課題が残る。
また、特許文献2のような電池セパレータは粒子等の不活性フィラーの添加よる粒子延伸技術によって製造されるが、ガラス粒子やセラミック粒子などの無機フィラーやポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や種々の硬化ゴム粒子では、エチレンビニルアルコール共重合体への均一な分散が困難であり、記載されている好ましいフィラーの平均粒子サイズ(400〜800nm)から鑑みても、二次凝集が生じやすく、均一な分散を達成するのは困難である。
また、特許文献3のような水系電池セパレータに用いてもよい極性基含有オレフィン系共重合体よりなる多孔フィルムでは、製膜後に熱処理を行うことにより、熱処理媒体中において、結晶領域と非晶領域における溶融あるいは溶解あるいは膨潤温度差を利用して多孔化させているが、処理液体を用いることなど工程の煩雑さに課題が残る。
さらに、特許文献4のような微細多孔質膜の製造方法では、非多孔質前駆体を押出す工程、及び次いで前記非多孔質前駆体を二軸延伸する工程を含むが、実質的に両工程の間に熱処理工程が必要となり、前記非多孔質前駆体を十分に結晶化しなければ多孔化が達成できず、延伸多孔化における前工程が生じるため生産性を著しく低下させる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、優れた透気特性を有し、コンデンサ用セパレータとして利用する際に高い親液性を有すると共に、高い生産性の下に製造することができるエチレンビニルアルコール系共重合体を用いた多孔体、及びそれを用いたコンデンサ用セパレータとコンデンサを提供することを目的とする。
さらに、当該多孔体を高い生産性の下で得ることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の課題を鑑みて鋭意検討を進めた結果、エチレンビニルアルコール系共重合体を主成分とし、特定の重量平均分子量Mwを有する熱可塑性エラストマーを特定比率含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層である多孔体が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
[1] エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とする多孔体。
[2] 示差走査型熱量測定(DSC)における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来する結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g以上70J/g以下であることを特徴とする[1]に記載の多孔体。
[3] 前記熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の多孔体。
[4] 前記熱可塑性エラストマー(B)がスチレン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の多孔体。
[5] 前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であることを特徴とする[4]に記載の多孔体。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の多孔体を用いてなるコンデンサ用セパレータ。
[7] [6]に記載のコンデンサ用セパレータを用いてなるコンデンサ。
[8] エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物を、
(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する工程と、
(b)前記工程(a)で成形した該成形物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、
(c)前記工程(b)で延伸した該成形物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程を含む、
多孔体の製造方法。
本発明によれば、優れた透気特性を有し、特に、コンデンサ用セパレータとして利用する際に高い親液性を有するエチレンビニルアルコール系共重合体を用いた多孔体を、高い生産性を持って提供することができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての多孔体(以下、「本多孔体」ともいう)、及び、その製造方法について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
以下に、本多孔体を構成する各成分について説明する。
<エチレンビニルアルコール系共重合体(A)>
本多孔体を構成する樹脂組成物は、エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とすることが重要である。ここで主成分とは、本多孔体を構成する樹脂組成物において最も多い質量比率を占める成分であることをいい、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
本発明に用いるエチレンビニルアルコール系共重合体(A)としては、エチレン単量体とビニルアルコール単量体が含まれる共重合体であるが、他の単量体がさらに共重合されてもよい。他の単量体を例示するならば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1―ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、一酸化炭素、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。また、2種以上のエチレンビニルアルコール系共重合体をブレンドしてもよい。また、ブチルアルデヒド等の水酸基と反応し得る化合物により部分的に修飾されたエチレンビニルアルコール系共重合体も用いることができる。さらに、酸無水物等の官能基を修飾したエチレンビニルアルコール系共重合体の変性物も用いることができる。
前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)のエチレン比率は、10モル%以上90モル%以下が好ましく、15モル%以上70モル%以下がより好ましく、20モル%以上50モル%以下がさらに好ましい。また、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)のビニルアルコール比率は、10モル%以上90モル%以下が好ましく、30モル%以上85モル%以下がより好ましく、50モル%以上80モル%以下がさらに好ましい。
前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、温度210℃、荷重2.16kgにおけるMFRは0.03〜60g/10分であることが好ましく、0.3〜30g/10分であることがより好ましい。MFRが上記範囲であれば成形加工時に押出機の背圧が高くなりすぎることが無く生産性に優れる。
前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)の融点は、構成される単量体比率に応じて決定され得るものであるが、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして利用する際に必要とされる耐熱性の観点から、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。
エチレンビニルアルコール系共重合体(A)としては、例えば、商品名「エバール」(株式会社クラレ製)、「ソアノール」(日本合成化学工業株式会社製)など市販されている商品を使用できる。
<熱可塑性エラストマー(B)>
本多孔体を構成する樹脂組成物は、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を含むことが重要である。前記熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mwは、160,000以上、1,000,000以下が好ましく、170,000以上、800,000以下がより好ましく、180,000以上、600,000以下がさらに好ましい。
また、熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比(分子量分布)Mw/Mnは、1.00以上、1.50以下が好ましく、1.00以上、1.30以下がより好ましく、1.00以上、1.10以下がさらに好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mwを、本発明の規定する範囲に選択することが、本発明における重要な点である。なぜならば、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する際、延伸前の樹脂組成物における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)のモルフォロジーが、均一な多孔構造と優れた透気特性を有する多孔体を得るに当たり、重要な因子となる為である。
具体的には、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、ドメインとして存在する前記熱可塑性エラストマー(B)が、粒子状に存在することが重要である。
一般に、マトリックス/ドメインの海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化させる場合、口金、もしくはノズル等の賦形設備より押し出されて流れる樹脂組成物を、キャストロール(冷却ロール)や空冷、水冷等の冷却固化設備により冷却固化する。その際、賦形設備と冷却固化設備の間のギャップ(間隙)において樹脂組成物が溶融伸長するため、ドメインである熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mwが小さい場合、ドメインが流れ方向(押出方向)に伸長した樹脂組成物が得られる。
このドメインが流れ方向(押出方向)に伸長した樹脂組成物を延伸する際に、変形により付与される応力が樹脂組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。これは、ドメインが予め伸長していることにより、応力を受ける界面の断面積が小さい為である。
一方、ドメインの重量平均分子量Mwが大きい場合、ドメインが溶融伸長の影響を受け難く、得られる延伸前の樹脂組成物内のドメインは粒子状を保ちやすい。そのため、得られた樹脂組成物を延伸する際に、変形により付与される応力がマトリックス/ドメインの界面に集中しやすく、また、応力を受ける界面の断面積も大きくなるため、界面剥離が生じやすく、その結果として均一な多孔構造を形成することが出来る。
また、熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mwが150,000よりも小さい場合、得られる多孔体から、熱可塑性エラストマー(B)がブリードアウトしやすく、その結果、経時劣化が促進されやすい。
このようなことから、前記熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mwを、本発明で規定する範囲に選択することが重要となる。
また、熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比(分子量分布)Mw/Mnが、前記好適範囲の場合、形成されるドメインの分散径が均一になりやすいため好ましい。
なお、本発明において、熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポリスチレン換算の値を指し、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定、算出される。
また、前記熱可塑性エラストマー(B)の温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、30g/10分以下が好ましく、10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下がさらに好ましく、1g/10分以下がさらに好ましく、流動しないことが最も好ましい。
前述の通り、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する際、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、ドメインとして存在する前記熱可塑性エラストマー(B)が粒子状に存在することが、均一な多孔構造と優れた透気特性を有する多孔体を得るに当たり好ましい。
そのため、前記熱可塑性エラストマー(B)の温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが、30g/10分以下の場合、ドメインである熱可塑性エラストマー(B)が流れ方向(押出方向)に伸張し難く、得られる延伸前の樹脂組成物内のドメインは粒子状を保ちやすいため、好ましい。
本発明に用いる熱可塑性エラストマー(B)とは、アミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、動的加硫系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーや、アクリル系熱可塑性エラストマー、乳酸系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー、及び、これらのブレンドやアロイ、変性物、動的架橋物であり、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、コアシェル型多層構造ゴムなども含まれる。
中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーが好ましく、特に、粘度の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(B)が、スチレン系熱可塑性エラストマーである場合、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、及び、これらの変性体や、水添体、側鎖にスチレン構造を有するグラフト共重合体、シェルにスチレン構造を有するコアシェル型多層構造ゴム等が好適に用いることができ、2種以上のブレンド物でもよい。中でも、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体が好ましい。
前記熱可塑性エラストマー(B)が、スチレン系熱可塑性エラストマーである場合、前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、1質量%以上55質量%以下であることが好ましい。前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、2質量%以上50質量%以下がより好ましく、3質量%以上45質量%以下がさらに好ましく、5質量%以上40質量%以下が最も好ましい。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量とは、スチレン系熱可塑性エラストマーを構成する全構成単位(全原料モノマーに由来する構成単位)に占めるスチレンに由来する構成単位の割合であり、核磁気共鳴装置(NMR)による組成分析により求められる。
前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が、1質量%以上55質量%以下であることが好ましい理由としては、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する際、延伸前の樹脂組成物における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が大きくなることにより、均一な多孔構造と優れた透気特性を有する多孔体を得られるためである。
具体的には、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、前記スチレン系熱可塑性エラストマーからなるドメインから形成される海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化した後、少なくとも一方向に延伸して、多孔構造を形成する際、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、マトリックス/ドメインの界面にて解離が生じ、多孔の起点となる。しかしながら、ドメインの弾性率が高い場合、マトリックス/ドメイン間の弾性率差が小さくなるため、変形により付与される応力が組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマーに含まれるスチレン含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマーの弾性率に大きく寄与するため、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が1質量%以上55質量%以下の場合、得られた樹脂組成物を延伸する際において、変形により付与される応力が、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させやすく、界面剥離が生じやすくなり、均一な多孔構造を形成することが出来るため、好ましい。
本多孔体を構成する樹脂組成物中には、上記の熱可塑性エラストマー(B)の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物において、前記熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有することは、本発明において重要である。
前記樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が50質量%を超える場合、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)の体積に対して、前記熱可塑性エラストマー(B)の体積が大きくなり、形成される樹脂組成物のマトリックスが熱可塑性エラストマーとなり、多孔構造を形成しにくくなると共に、耐熱性が著しく低下するおそれがある。
また、前記樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が1質量%未満の場合、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との界面における多孔構造を形成しにくいおそれがある。
そのため、前記樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、5質量%以上49質量%以下が好ましく、10質量%以上48質量%以下がより好ましく、15質量%以上47質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上46質量%以下が特に好ましい。
<その他の成分>
本多孔体を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記のエチレンビニルアルコール系共重合体(A)及び熱可塑性エラストマー(B)以外の成分、例えばエチレンビニルアルコール系共重合体(A)以外の他の樹脂を含有することを許容することができる。他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
また、前記樹脂組成物には、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などの添加剤が挙げられる。
<本多孔体>
本多孔体は、エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層である。
本多孔体の形状としては特に制限はないが、シート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物が挙げられる。「シート状物」とは、厚い(mmオーダー)プレートから薄い(μmオーダー)フィルムまでを含み、また、「繊維状物」とは、太いロッドから細い糸までを含み、また「中空状物」とは、太いパイプから細いチューブ、中空繊維、インフレーションフィルム等を意味する。勿論、インフレーションフィルムをカットしたシート状物を含むことは言うまでもない。
本多孔体は、前記樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有していればよい。すなわち、本多孔体は前記樹脂組成物からなる多孔層のみで形成しても良く、本多孔体の特徴を阻害しない範囲で、他の多孔層と積層して形成しても良い。
また、本多孔体がシート状物の場合は、シート状物の厚み方向に積層された積層シート状多孔体でもよく、繊維状物の場合は、いわゆる芯鞘構造状多孔体でもよく、中空状の場合は、中空体の径方向に積層された多孔体でもよい。
特に、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いる場合、シート状物が好ましい。さらに、前記樹脂組成物からなる多孔層を、セパレータとして一般的に用いられているポリオレフィン系樹脂多孔膜と積層させて本多孔体を形成してもよく、その場合、前記樹脂組成物からなる多孔層は本多孔体の最表層に配置されることが好ましい。
さらに、本多孔体において前記樹脂組成物からなる層は、少なくとも一軸方向に延伸されてなることが重要である。前記樹脂組成物からなる層が少なくとも一軸方向、好ましくは二軸方向に延伸されてなることによって、当該層が多孔化し、本多孔体が優れた透気特性を有することとなる。
本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いる場合、シート状物としての多孔体の厚みは、1μm〜150μmが好ましく、5μm〜100μmがより好ましい。コンデンサ用セパレータとして使用する場合、厚みが1μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
また、厚みが150μm以下、好ましくは100μm以下であれば、セパレータの抵抗を小さくできるのでコンデンサの性能を十分に確保することができる。
本多孔体の透気度は1000秒/100mL以下が好ましく、100秒/100mL以下がより好ましく、50秒/100mL以下が更に好ましい。透気度が1000秒/100mL以下であれば、多孔体に連通性があることを示し、優れた透気特性を示すことができるため好ましい。
透気度は厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該多孔体を通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは厚み方向の孔のつながり度合いである。本多孔体の透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えばコンデンサ用セパレータとして使用した場合、透気度が低いということはイオンの移動が容易であることを意味し、該セパレータを用いたコンデンサが性能に優れるものとなるため好ましい。
なお、本多孔体の透気度の下限には特に制限はないが、通常1秒/100mL程度である。透気度は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
本多孔体の空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた多孔性フィルムとすることができる。
一方、空孔率の上限については80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。空孔率が80%以下であれば、微細孔が増えすぎて本多孔体の強度が低下する問題もなくなり、ハンドリングの観点からも好ましい。
なお、空孔率は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
本多孔体は、前記樹脂組成物からなる多孔層の示差走査型熱量測定(DSC)における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来する結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g以上70J/g以下であることが好ましい。前記多孔層のDSCにおけるΔHmは、20J/g以上65J/g以下であることが好ましく、30J/g以上60J/gであることがさらに好ましい。
前記多孔層のDSCにおける前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが、上記範囲であることが好ましい理由としては、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する際、延伸前の樹脂組成物における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が大きくなることにより、均一な多孔構造と優れた透気特性を有する多孔体を得られるためである。
具体的には、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、前記熱可塑性エラストマー(B)からなるドメインから形成される海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化した後、少なくとも一方向に延伸して、多孔構造を形成する際、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、マトリックス/ドメインの界面にて解離が生じ、多孔の起点となる。しかしながら、前記樹脂組成物からなる多孔層の前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが10J/gより小さい場合、マトリックスであるエチレンビニルアルコール系共重合体(A)において、高い弾性率を有する結晶成分が少なく、マトリックス/ドメイン間の弾性率差が小さくなるため、変形により付与される応力が組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げやすい。
一方、前記樹脂組成物からなる多孔層の前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが10J/g以上70J/g以下の場合、マトリックスであるエチレンビニルアルコール系共重合体(A)の結晶成分によりマトリックスの弾性率が向上するため、得られた樹脂組成物を延伸する際において、変形により付与される応力が、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させやすく、界面剥離が生じやすくなり、均一な多孔構造を形成しやすい。また、前記樹脂組成物からなる多孔層の前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが70J/gより大きい場合、後述する低温延伸工程において前記樹脂組成物の降伏応力が非常に大きくなり、マトリックス/ドメインの界面剥離を生じさせるために非常に大きなエネルギーが必要となり、延伸に対して変形が追随できず、破断するおそれがある。
前記多孔層のΔHmは、示差走査型熱量計で本多孔体を30℃から高温保持温度まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に高温保持温度から30℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に30℃から上記高温保持温度まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来する結晶融解ピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出する。このとき、上記高温保持温度は、用いるエチレンビニルアルコール系共重合体(A)の結晶融解ピーク温度Tmに対し、Tm+20℃以上、かつ、Tm+100℃以下の範囲において、任意に選択できる。
なお、本発明の規定するΔHmは、上記再昇温過程において、半結晶性樹脂にみられるような冷結晶化が生じる場合においても、再昇温過程で生じる結晶融解ピークから算出されたΔHmを適用する。すなわち、再昇温過程において生じる冷結晶化における発熱ピーク面積から算出される結晶化エンタルピー(ΔHc)を、再昇温過程で得られるΔHmからの差し引くことは行わない。さらに本発明は、前記樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有していればよいが、本多孔体が他の層と積層される場合、積層体についてそのままDSC測定を行うと、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが低く見積もられるおそれがある。そのため、本多孔体が積層体の場合、本発明の多孔層を剥離し、この多孔層についてΔHmを測定することができる。剥離が困難である場合は、DSC測定によって積層体全体における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmを算出するとともに、積層体全体における前記多孔層の積層比を算出し、以下の計算式より、本発明の規定するΔHmを算出することができる。なお、積層比の算出は、特に限定されるものではないが、光学顕微鏡、電子顕微鏡等による断面観察により算出されることが好ましい。
本多孔体のΔHm(J/g)=積層体全体における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHm(J/g)/積層体全体における前記多孔層の積層比(%)/100(%)
<本多孔体の製造方法>
次に、本多孔体の製造方法について説明する。上記の通り、本多孔体においては、エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、50質量%以下含有する樹脂組成物からなる層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化されてなることが重要である。
より具体的には、本多孔体は、前記樹脂組成物を(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する工程と、(b)前記工程(a)で成形した該成形物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、(c)前記工程(b)で延伸した該成形物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程と、を経由して製造されることが好ましい。
[工程(a)]
前記樹脂組成物を溶融押出し、前記樹脂組成物からなる実質的に無孔状の層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融押出し、Tダイ、丸ダイ、ノズル、中空ノズル等の賦形設備より押出し、キャストロール(冷却ロール)や、空冷、水冷等の設備で冷却固化するという方法が挙げられる。また、インフレーション法や、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
なお、「実質的に無孔状の層」とは、前記樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化し成形する工程において、意図的に当該層に空孔を設けないことを意味し、当該工程における不測の要因で意図せず微細なピンホールが生じている場合も含むことを意味する。
前記樹脂組成物の溶融押出において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、前記エチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)の熱分解温度を鑑みると、概ね180〜260℃が好ましく、190〜250℃がより好ましく、200〜240℃が更に好ましい。押出加工温度が上記下限以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、押出加工温度を上記上限以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、熱分解、得られる本多孔体の機械的強度の低下を抑制できる。
また、冷却固化温度、例えばキャストロールの冷却固化温度は好ましくは20〜160℃、より好ましくは40〜140℃、更に好ましくは50〜130℃である。冷却固化温度を上記下限以上とすることで、前記エチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)の結晶化を促進し、前記熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が生じやすく、延伸時において多孔体を形成しやすいために好ましい。また、上記上限以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく成形することが可能であるので好ましい。
[工程(b)]
工程(b)では、工程(a)により得られた前記成形物を−20℃以上90℃以下の温度で延伸する(以下、この工程(b)を「低温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(b)における延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらは単独で行っても2つ以上組み合わせて行ってもよい。中でも、生産性の観点から、工程(a)における流れ方向(即ち、押出方向ないしは引き取り方向、以下「縦方向」又は「MD」と称す場合がある。)への延伸が好ましく、前記樹脂組成物内の前記熱可塑性エラストマー(B)への応力集中をさせる観点から、延伸速度を上げやすいロール延伸法が好ましい。
ここで、−20℃以上の温度で延伸することで、延伸雰囲気下を−20℃未満の温度にするための特殊な設備が不要であるため、生産上好ましい。また延伸雰囲気下におけるエチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)の弾性率が高くなりすぎず、延伸に対して変形が追随でき、破断するおそれが小さい。一方、90℃以下の温度で延伸することで、エチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)の弾性率が低くなりすぎず、熱可塑性エラストマー(B)への応力集中が適度に発現し、前記樹脂組成物からなる層を容易に多孔化することができる。低温延伸工程における温度は、特に0℃以上70℃以下であることが好ましい。
また、この低温延伸工程における延伸倍率は特に制限はないが1.15倍以上、4.00倍以下、特に1.25倍以上、3.00倍以下であることが好ましい。延伸倍率が上記下限以上であると、マトリックス/ドメインの界面に応力が集中し、変形に伴う界面の剥離により、多孔構造を形成しやすく、上記上限以下であると、形成された多孔構造が過度の変形により閉塞されることがないため、好ましい。
[工程(c)]
工程(c)では、工程(b)において延伸された前記成形物を100℃以上160℃以下の温度でさらに延伸する(以下、この工程(c)を「高温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(c)における延伸方法については、上述の工程(b)と同様の方法を採用することができるが、中でも、ロール延伸法や、テンター延伸法が好ましく、特に、工程(b)により形成された孔を拡張する観点から、ロール延伸法により、さらに流れ方向(縦方向)へ延伸することが好ましい。
ここで、100℃以上の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔を伸長し、孔径を拡大できる。一方、160℃以下の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔の閉塞を抑制することができる。高温延伸工程における温度は、特に110℃以上150℃以下であることが好ましい。
また、この高温延伸工程における延伸倍率は特に制限はないが1.25倍以上、6.00倍以下、特に1.40倍以上、5.00倍以下であることが好ましい。さらに、低温延伸工程と高温延伸工程とを合わせた延伸倍率として、1.4倍以上、24倍以下、特に1.75倍以上、15倍以下であることが好ましい。延伸倍率が上記下限以上であると、孔径の拡張や多孔構造の保持を行いやすく、上記上限以下であると、孔の閉塞を抑制することができ、好ましい。
本多孔体の製造方法において、前記各工程は、(a)、(b)、(c)の順に連続していること、特に工程(b)の後に工程(c)を行うことによって、前記熱可塑性エラストマー(B)が延伸時に伸長しすぎることなく、前記樹脂組成物からなる層を容易に多孔化することができる。仮に、工程の順序が、(a)、(c)、(b)の順に経由して行われる場合、前記熱可塑性エラストマー(B)が、工程(c)により伸長してしまい、応力を受ける界面の断面積が小さい為、多孔化が困難となるため好ましくない。これは、前述した、工程(a)において、ドメインが流れ方向に伸長した状態と同じである。なお、本多孔体の製造方法は、(a)、(b)、(c)の順に各工程を行えばよく、(a)、(b)、(c)の各工程の間にそれ以外の工程を含んでも良い。また、工程(c)の後にそれ以外の工程を含んでも良い。
具体的には、工程(c)の後に、寸法安定性向上の観点から、熱処理を行うことが好ましい。また、さらなる孔の拡張の目的で、工程(c)の後に、テンター延伸法等により縦方向と直交する方向(以下、「横方向」又は「TD」と称す場合がある。)に延伸(横延伸)することも好ましい。さらに、テンター延伸法等により横延伸した後、寸法安定性向上の観点から、熱処理を行うことも好ましい。また、さらなる寸法安定性の観点から、得られた多孔体を電子線架橋等により架橋させても良いし、後述するように他の多孔層等と積層する場合に密着性を向上する観点や、電解液に対する更なる親液性の向上の観点から、得られた多孔体にコロナ放電処理、プラズマ処理等を施して表面処理を行っても良い。
工程(c)の後に横延伸を行う場合、その横延伸工程における温度は100℃以上160℃以下であることが、孔径の更なる拡張と孔の閉塞抑制の点において好ましい。また、その際の延伸倍率は孔径の更なる拡張と孔の閉塞抑制の点において、1.25倍以上、6.00倍以下、特に1.40倍以上、5.00倍以下であることが好ましい。
また、工程(c)の後に熱処理を行う場合、熱処理工程における温度は120℃以上200℃以下であることが、寸法安定性の点において好ましい。
また、前記樹脂組成物からなる層以外の他の多孔層を有する本多孔体とする場合、前記工程(a)において、前記エチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物の層と、他の多孔層を構成する組成物の層とを、共押出法やラミネート法などによって積層し、実質的に無孔状の積層体を作製した後、工程(b)及び工程(c)において延伸して多孔化することにより本多孔体を製造しても良く、前記エチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物からなる層を、前記工程(a)〜(c)を経て多孔化した後、他の多孔層とラミネート法やコーティング法などによって積層して、本多孔体を製造しても良い。
<コンデンサ>
本発明の他の実施態様は、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いたコンデンサである。
本発明のコンデンサは、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いたものであればその他の構成部材が特に限定されるものではなく、コンデンサ用として従来公知の電極や電解液などを用いて構成することができる。
次に、実施例および比較例を示し、本多孔体について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本多孔体の実施形態として、シート状物に賦形した。以下、本多孔体を多孔性フィルムと呼ぶ。また、多孔性フィルムの引き取り(流れ)方向を「MD」方向、その直角方向を「TD」方向と記載する。
(1)分子量、分子量分布
実施例、比較例で使用した熱可塑性エラストマーをクロロホルムに溶解した後、GPCを用いて重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び、分子量分布Mw/Mnを測定、算出した。分子量の算出は、ポリスチレン標準サンプルの分子量を検量線に用いて行った。
(2)MFR
実施例、比較例で使用した原材料に関して、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でMFRを測定した。ただし、エチレンビニルアルコール系共重合体に関しては、温度210℃、荷重2.16kgの条件下でMFRを測定した。
(3)スチレン含有量
実施例、比較例で使用したスチレン系熱可塑性エラストマーについて、NMRを用いて組成分析を行い、スチレン含有量を算出した。
(4)厚み
得られた多孔性フィルムを1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(5)透気度
得られた多孔性フィルムから直径φ40mmの大きさでサンプルを切り出し、JIS P8117(2009年)に準拠して透気度(秒/100mL)を測定した。
(6)空孔率
得られた多孔性フィルムの実質量Wを測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量Wを計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W−W)/W}×100
(7)結晶融解ピーク温度、結晶融解エンタルピー(ΔHm)
得られた多孔性フィルムのDSC測定を行った。30℃から250℃まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に250℃から30℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に30℃から250℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた。このとき再昇温過程におけるエチレンビニルアルコール系共重合体に由来する結晶融解ピーク温度、及び、該結晶融解ピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。結果として、同一組成の場合、同様の数値が得られたため、表1では同様の組成における結晶融解ピーク温度、及び、ΔHmはまとめて表記した。
(8)親液性評価
電気二重層コンデンサの電解液として広く用いられるプロピレンカーボネートを用いて、得られた多孔性フィルムの静的接触角測定を行った。口径1.8mmのシリンジから、液滴量1μLのプロピレンカーボネートを多孔性フィルムに滴下し、滴下後3秒後の接触角を測定した。さらに滴下後13秒後、23秒後、33秒後と10秒間隔で接触角を測定した。さらに滴下後10分後の状態を確認した。接触角はθ/2法にて算出した。このとき、液滴が多孔性フィルムに浸透し、接触角が算出できない状態を「浸透」と表記した。
実施例、比較例、参考例で使用した原材料は以下の通りである。
(エチレンビニルアルコール系共重合体)
・A−1;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールAT4403B、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率44モル%、MFR;3.5g/10分、融点;164℃)
・A−2;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールET3803RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率38モル%、MFR;4.0g/10分、融点;173℃)
・A−3;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールDC3203RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率32モル%、MFR;3.8g/10分、融点;183℃)
・A−4;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールDT2904RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率29モル%、MFR;3.8g/10分、融点;188℃)
・A−5;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールV2504RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率25モル%、MFR;4.0g/10分、融点;195℃)
(熱可塑性エラストマー)
・B−1;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2006、株式会社クラレ製、スチレン含有量;35質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;271,000、分子量分布Mw/Mn;1.09)
・B−2;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8006、株式会社クラレ製、スチレン含有量;33質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;285,000、分子量分布Mw/Mn;1.11)
・B−3;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2002、株式会社クラレ製、スチレン含有量;30質量%、MFR;70g/10分、重量平均分子量Mw;59,700、分子量分布Mw/Mn;1.03)
・B−4;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2104、株式会社クラレ製、スチレン含有量;65質量%、MFR;0.4g/10分、重量平均分子量Mw;87,600、分子量分布Mw/Mn;1.02)
・B−5;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8104、株式会社クラレ製、スチレン含有量;60質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;130,000、分子量分布Mw/Mn;1.06)
(ポリオレフィン系樹脂)
・C−1;ポリプロピレン(グレード名;ノバテックPP FY6HA、日本ポリプロ株式会社製)
(実施例1〜29の未延伸シート状物の製膜条件)
エチレンビニルアルコール系共重合体、熱可塑性エラストマーを、表1〜3に示す配合割合にて配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シート状物を得た。
(実施例1〜29のMD延伸多孔フィルムの製膜条件(縦延伸条件))
上述の条件にて得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、表1〜3に示すドロー比を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、表1に示すドロー比を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1〜3にまとめた。
(実施例2、4、6、8、13、15、18、20の二軸延伸多孔フィルムの製膜条件(横延伸条件))
上述の条件にて得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度100℃、予熱時間32秒間で予熱した後、延伸温度100℃、延伸時間32秒間で2倍横方向に延伸した後、120℃で32秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1及び表2にまとめた。
(実施例9、23、25の二軸延伸多孔フィルムの製膜条件(横延伸条件))
上述の条件にて得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度110℃、予熱時間32秒間で予熱した後、延伸温度110℃、延伸時間32秒間で2倍横方向に延伸した後、130℃で32秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1及び表3にまとめた。
(実施例27の二軸延伸多孔フィルムの製膜条件(横延伸条件))
上述の条件にて得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度120℃、予熱時間32秒間で予熱した後、延伸温度120℃、延伸時間32秒間で2倍横方向に延伸した後、140℃で32秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
(参考例1)
ポリオレフィン系樹脂(C−1)と、熱可塑性エラストマー(B−1)を、表3に示す配合割合にて配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、120℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、3.0倍横方向に延伸した後、145℃で熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
(比較例1〜3)
エチレンビニルアルコール系共重合体、熱可塑性エラストマーを、表4に示す配合割合にて配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表4に記載したように比較例1〜3に示すいずれの未延伸シート状物においても、フィルムが破断した。なお、多孔フィルムが得られなかったため、DSCによるΔHmの算出は、上記未延伸シート状物にて行った。結果を表4にまとめた。
(比較例4)
表4に示すように、熱可塑性エラストマーを添加せず、エチレンビニルアルコール系共重合体(A−3)単体を2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行ったところ、透明性の高いMD延伸フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表4にまとめた。
(比較例5)
エチレンビニルアルコール系共重合体(A−3)を40質量%、熱可塑性エラストマー(B−1)を60質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形しようとしたが、Tダイより吐出された溶融樹脂が流れにくく、キャストロールで引き取る際に、シートがちぎれてしまい、表4に記載したように未延伸シート状物が得られなかった。なお、未延伸シート状物が得られなかったため、DSCによるΔHmの算出を含め、各種評価を行うことができなかった。結果を表4にまとめた。
Figure 2016102135
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(注1)装置の測定限界の99999秒/100mLであり、実質的に連通孔を形成していない。
(注2)未延伸シート状物のΔHm、及び、結晶融解ピーク温度
表1〜3より、実施例1〜29で得られた本発明の多孔体としての多孔性フィルムは、優れた透気特性と高い空孔率を有することが分かる。また、得られた多孔体に対して、電気二重層コンデンサの電解液として広く用いられるプロピレンカーボネートの接触角を測定した結果、初期(液滴がフィルムに設置してから3秒後)の接触角が小さく、さらには、経時により、接触角が低下する傾向が確認され、プロピレンカーボネートが多孔体に浸透していく様子が確認された。参考例として、ポリオレフィン系の多孔性フィルムの接触角測定を行ったところ、初期の接触角は、実施例と同等程度の値を示したが、経時による変化は見られなかった。さらに、プロピレンカーボネート滴下後10分後において、状態を確認したところ、実施例1〜29の多孔性フィルムはいずれも液滴がフィルムに浸透したのに対し、参考例のポリオレフィン系の多孔性フィルムでは、浸透は見られず接触角も初期値と同等の値を示した。すなわち、本多孔体は、コンデンサ用セパレータとして優れた親液性を有する多孔体であると言える。
一方、表4より、本発明が規定する重量平均分子量の範囲外である熱可塑性エラストマーを用いた比較例1〜3では、低温延伸でのドローを掛けてすぐにフィルムが破断し、多孔フィルムが得られなかった。これは、用いた熱可塑性エラストマーの重量平均分子量Mwが本発明の範囲を逸脱するため、キャストシートの製膜時において、ドメインを形成する熱可塑性エラストマーがシートの流れ方向に伸長し、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げた結果、フィルムが破断したものと思われる。
また、本発明の規定する熱可塑性エラストマーを用いなかった比較例4では、延伸は可能であるものの、フィルムが白化することもなく、多孔体が形成されなかった。
さらに、比較例5では、本発明が規定する熱可塑性エラストマーの重量比を逸脱しているため、未延伸シート状物が得られなかった。これは、熱可塑性エラストマーの重量比が50質量%を超えるため、熱可塑性エラストマーが海島構造のマトリックスとして形成されることに起因すると考えられる。
本発明の多孔体は、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。具体的には、電子部材用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;水処理用中空糸膜;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に使用でき、特に、コンデンサ用セパレータとして有用である。

Claims (8)

  1. エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とする多孔体。
  2. 示差走査型熱量測定(DSC)における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来する結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g以上70J/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔体。
  3. 前記熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔体。
  4. 前記熱可塑性エラストマー(B)がスチレン系可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔体。
  5. 前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の多孔体。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔体を用いてなるコンデンサ用セパレータ。
  7. 請求項6に記載のコンデンサ用セパレータを用いてなるコンデンサ。
  8. エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物を、
    (a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する工程と、
    (b)前記工程(a)で成形した該成形物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、
    (c)前記工程(b)で延伸した該成形物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程を含む、
    多孔体の製造方法。
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