JP2016102135A - 多孔体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はまた、この多孔体を用いたコンデンサ用セパレータ、及びコンデンサに関する。
さらに、当該多孔体を高い生産性の下で得ることが可能な製造方法を提供することを目的とする。
[1] エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とする多孔体。
[2] 示差走査型熱量測定(DSC)における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来する結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g以上70J/g以下であることを特徴とする[1]に記載の多孔体。
[3] 前記熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の多孔体。
[4] 前記熱可塑性エラストマー(B)がスチレン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の多孔体。
[5] 前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であることを特徴とする[4]に記載の多孔体。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の多孔体を用いてなるコンデンサ用セパレータ。
[7] [6]に記載のコンデンサ用セパレータを用いてなるコンデンサ。
[8] エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物を、
(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する工程と、
(b)前記工程(a)で成形した該成形物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、
(c)前記工程(b)で延伸した該成形物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程を含む、
多孔体の製造方法。
本多孔体を構成する樹脂組成物は、エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とすることが重要である。ここで主成分とは、本多孔体を構成する樹脂組成物において最も多い質量比率を占める成分であることをいい、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましい。
本多孔体を構成する樹脂組成物は、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を含むことが重要である。前記熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mwは、160,000以上、1,000,000以下が好ましく、170,000以上、800,000以下がより好ましく、180,000以上、600,000以下がさらに好ましい。
また、熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比(分子量分布)Mw/Mnは、1.00以上、1.50以下が好ましく、1.00以上、1.30以下がより好ましく、1.00以上、1.10以下がさらに好ましい。
具体的には、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、ドメインとして存在する前記熱可塑性エラストマー(B)が、粒子状に存在することが重要である。
このドメインが流れ方向(押出方向)に伸長した樹脂組成物を延伸する際に、変形により付与される応力が樹脂組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。これは、ドメインが予め伸長していることにより、応力を受ける界面の断面積が小さい為である。
また、熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比(分子量分布)Mw/Mnが、前記好適範囲の場合、形成されるドメインの分散径が均一になりやすいため好ましい。
そのため、前記熱可塑性エラストマー(B)の温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが、30g/10分以下の場合、ドメインである熱可塑性エラストマー(B)が流れ方向(押出方向)に伸張し難く、得られる延伸前の樹脂組成物内のドメインは粒子状を保ちやすいため、好ましい。
中でも、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーが好ましく、特に、粘度の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量とは、スチレン系熱可塑性エラストマーを構成する全構成単位(全原料モノマーに由来する構成単位)に占めるスチレンに由来する構成単位の割合であり、核磁気共鳴装置(NMR)による組成分析により求められる。
具体的には、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、前記スチレン系熱可塑性エラストマーからなるドメインから形成される海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化した後、少なくとも一方向に延伸して、多孔構造を形成する際、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、マトリックス/ドメインの界面にて解離が生じ、多孔の起点となる。しかしながら、ドメインの弾性率が高い場合、マトリックス/ドメイン間の弾性率差が小さくなるため、変形により付与される応力が組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマーに含まれるスチレン含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマーの弾性率に大きく寄与するため、スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が1質量%以上55質量%以下の場合、得られた樹脂組成物を延伸する際において、変形により付与される応力が、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させやすく、界面剥離が生じやすくなり、均一な多孔構造を形成することが出来るため、好ましい。
前記樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が50質量%を超える場合、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)の体積に対して、前記熱可塑性エラストマー(B)の体積が大きくなり、形成される樹脂組成物のマトリックスが熱可塑性エラストマーとなり、多孔構造を形成しにくくなると共に、耐熱性が著しく低下するおそれがある。
また、前記樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量が1質量%未満の場合、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)と前記熱可塑性エラストマー(B)との界面における多孔構造を形成しにくいおそれがある。
そのため、前記樹脂組成物中の前記熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、5質量%以上49質量%以下が好ましく、10質量%以上48質量%以下がより好ましく、15質量%以上47質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上46質量%以下が特に好ましい。
本多孔体を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記のエチレンビニルアルコール系共重合体(A)及び熱可塑性エラストマー(B)以外の成分、例えばエチレンビニルアルコール系共重合体(A)以外の他の樹脂を含有することを許容することができる。他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
本多孔体は、エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層である。
また、本多孔体がシート状物の場合は、シート状物の厚み方向に積層された積層シート状多孔体でもよく、繊維状物の場合は、いわゆる芯鞘構造状多孔体でもよく、中空状の場合は、中空体の径方向に積層された多孔体でもよい。
特に、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いる場合、シート状物が好ましい。さらに、前記樹脂組成物からなる多孔層を、セパレータとして一般的に用いられているポリオレフィン系樹脂多孔膜と積層させて本多孔体を形成してもよく、その場合、前記樹脂組成物からなる多孔層は本多孔体の最表層に配置されることが好ましい。
また、厚みが150μm以下、好ましくは100μm以下であれば、セパレータの抵抗を小さくできるのでコンデンサの性能を十分に確保することができる。
透気度は厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該多孔体を通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは厚み方向の孔のつながり度合いである。本多孔体の透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えばコンデンサ用セパレータとして使用した場合、透気度が低いということはイオンの移動が容易であることを意味し、該セパレータを用いたコンデンサが性能に優れるものとなるため好ましい。
なお、本多孔体の透気度の下限には特に制限はないが、通常1秒/100mL程度である。透気度は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
一方、空孔率の上限については80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。空孔率が80%以下であれば、微細孔が増えすぎて本多孔体の強度が低下する問題もなくなり、ハンドリングの観点からも好ましい。
なお、空孔率は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
具体的には、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、前記熱可塑性エラストマー(B)からなるドメインから形成される海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化した後、少なくとも一方向に延伸して、多孔構造を形成する際、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、マトリックス/ドメインの界面にて解離が生じ、多孔の起点となる。しかしながら、前記樹脂組成物からなる多孔層の前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが10J/gより小さい場合、マトリックスであるエチレンビニルアルコール系共重合体(A)において、高い弾性率を有する結晶成分が少なく、マトリックス/ドメイン間の弾性率差が小さくなるため、変形により付与される応力が組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げやすい。
一方、前記樹脂組成物からなる多孔層の前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが10J/g以上70J/g以下の場合、マトリックスであるエチレンビニルアルコール系共重合体(A)の結晶成分によりマトリックスの弾性率が向上するため、得られた樹脂組成物を延伸する際において、変形により付与される応力が、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させやすく、界面剥離が生じやすくなり、均一な多孔構造を形成しやすい。また、前記樹脂組成物からなる多孔層の前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが70J/gより大きい場合、後述する低温延伸工程において前記樹脂組成物の降伏応力が非常に大きくなり、マトリックス/ドメインの界面剥離を生じさせるために非常に大きなエネルギーが必要となり、延伸に対して変形が追随できず、破断するおそれがある。
なお、本発明の規定するΔHmは、上記再昇温過程において、半結晶性樹脂にみられるような冷結晶化が生じる場合においても、再昇温過程で生じる結晶融解ピークから算出されたΔHmを適用する。すなわち、再昇温過程において生じる冷結晶化における発熱ピーク面積から算出される結晶化エンタルピー(ΔHc)を、再昇温過程で得られるΔHmからの差し引くことは行わない。さらに本発明は、前記樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有していればよいが、本多孔体が他の層と積層される場合、積層体についてそのままDSC測定を行うと、前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmが低く見積もられるおそれがある。そのため、本多孔体が積層体の場合、本発明の多孔層を剥離し、この多孔層についてΔHmを測定することができる。剥離が困難である場合は、DSC測定によって積層体全体における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHmを算出するとともに、積層体全体における前記多孔層の積層比を算出し、以下の計算式より、本発明の規定するΔHmを算出することができる。なお、積層比の算出は、特に限定されるものではないが、光学顕微鏡、電子顕微鏡等による断面観察により算出されることが好ましい。
本多孔体のΔHm(J/g)=積層体全体における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来するΔHm(J/g)/積層体全体における前記多孔層の積層比(%)/100(%)
次に、本多孔体の製造方法について説明する。上記の通り、本多孔体においては、エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、50質量%以下含有する樹脂組成物からなる層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化されてなることが重要である。
より具体的には、本多孔体は、前記樹脂組成物を(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する工程と、(b)前記工程(a)で成形した該成形物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、(c)前記工程(b)で延伸した該成形物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程と、を経由して製造されることが好ましい。
前記樹脂組成物を溶融押出し、前記樹脂組成物からなる実質的に無孔状の層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融押出し、Tダイ、丸ダイ、ノズル、中空ノズル等の賦形設備より押出し、キャストロール(冷却ロール)や、空冷、水冷等の設備で冷却固化するという方法が挙げられる。また、インフレーション法や、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
なお、「実質的に無孔状の層」とは、前記樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化し成形する工程において、意図的に当該層に空孔を設けないことを意味し、当該工程における不測の要因で意図せず微細なピンホールが生じている場合も含むことを意味する。
また、冷却固化温度、例えばキャストロールの冷却固化温度は好ましくは20〜160℃、より好ましくは40〜140℃、更に好ましくは50〜130℃である。冷却固化温度を上記下限以上とすることで、前記エチレンビニルアルコール共重合体系樹脂(A)の結晶化を促進し、前記熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が生じやすく、延伸時において多孔体を形成しやすいために好ましい。また、上記上限以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく成形することが可能であるので好ましい。
工程(b)では、工程(a)により得られた前記成形物を−20℃以上90℃以下の温度で延伸する(以下、この工程(b)を「低温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(b)における延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらは単独で行っても2つ以上組み合わせて行ってもよい。中でも、生産性の観点から、工程(a)における流れ方向(即ち、押出方向ないしは引き取り方向、以下「縦方向」又は「MD」と称す場合がある。)への延伸が好ましく、前記樹脂組成物内の前記熱可塑性エラストマー(B)への応力集中をさせる観点から、延伸速度を上げやすいロール延伸法が好ましい。
工程(c)では、工程(b)において延伸された前記成形物を100℃以上160℃以下の温度でさらに延伸する(以下、この工程(c)を「高温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(c)における延伸方法については、上述の工程(b)と同様の方法を採用することができるが、中でも、ロール延伸法や、テンター延伸法が好ましく、特に、工程(b)により形成された孔を拡張する観点から、ロール延伸法により、さらに流れ方向(縦方向)へ延伸することが好ましい。
ここで、100℃以上の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔を伸長し、孔径を拡大できる。一方、160℃以下の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔の閉塞を抑制することができる。高温延伸工程における温度は、特に110℃以上150℃以下であることが好ましい。
また、工程(c)の後に熱処理を行う場合、熱処理工程における温度は120℃以上200℃以下であることが、寸法安定性の点において好ましい。
本発明の他の実施態様は、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いたコンデンサである。
本発明のコンデンサは、本多孔体をコンデンサ用セパレータとして用いたものであればその他の構成部材が特に限定されるものではなく、コンデンサ用として従来公知の電極や電解液などを用いて構成することができる。
実施例、比較例で使用した熱可塑性エラストマーをクロロホルムに溶解した後、GPCを用いて重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び、分子量分布Mw/Mnを測定、算出した。分子量の算出は、ポリスチレン標準サンプルの分子量を検量線に用いて行った。
実施例、比較例で使用した原材料に関して、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でMFRを測定した。ただし、エチレンビニルアルコール系共重合体に関しては、温度210℃、荷重2.16kgの条件下でMFRを測定した。
実施例、比較例で使用したスチレン系熱可塑性エラストマーについて、NMRを用いて組成分析を行い、スチレン含有量を算出した。
得られた多孔性フィルムを1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
得られた多孔性フィルムから直径φ40mmの大きさでサンプルを切り出し、JIS P8117(2009年)に準拠して透気度(秒/100mL)を測定した。
得られた多孔性フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
得られた多孔性フィルムのDSC測定を行った。30℃から250℃まで加熱速度10℃/分で昇温後、1分間保持し、次に250℃から30℃まで冷却速度10℃/分で降温後、1分間保持し、更に30℃から250℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた。このとき再昇温過程におけるエチレンビニルアルコール系共重合体に由来する結晶融解ピーク温度、及び、該結晶融解ピーク面積から結晶融解エンタルピー(ΔHm)を算出した。結果として、同一組成の場合、同様の数値が得られたため、表1では同様の組成における結晶融解ピーク温度、及び、ΔHmはまとめて表記した。
電気二重層コンデンサの電解液として広く用いられるプロピレンカーボネートを用いて、得られた多孔性フィルムの静的接触角測定を行った。口径1.8mmのシリンジから、液滴量1μLのプロピレンカーボネートを多孔性フィルムに滴下し、滴下後3秒後の接触角を測定した。さらに滴下後13秒後、23秒後、33秒後と10秒間隔で接触角を測定した。さらに滴下後10分後の状態を確認した。接触角はθ/2法にて算出した。このとき、液滴が多孔性フィルムに浸透し、接触角が算出できない状態を「浸透」と表記した。
・A−1;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールAT4403B、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率44モル%、MFR;3.5g/10分、融点;164℃)
・A−2;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールET3803RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率38モル%、MFR;4.0g/10分、融点;173℃)
・A−3;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールDC3203RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率32モル%、MFR;3.8g/10分、融点;183℃)
・A−4;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールDT2904RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率29モル%、MFR;3.8g/10分、融点;188℃)
・A−5;エチレンビニルアルコール共重合体(グレード名;ソアノールV2504RB、日本合成化学工業株式会社製、エチレン比率25モル%、MFR;4.0g/10分、融点;195℃)
・B−1;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2006、株式会社クラレ製、スチレン含有量;35質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;271,000、分子量分布Mw/Mn;1.09)
・B−2;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8006、株式会社クラレ製、スチレン含有量;33質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;285,000、分子量分布Mw/Mn;1.11)
・B−3;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2002、株式会社クラレ製、スチレン含有量;30質量%、MFR;70g/10分、重量平均分子量Mw;59,700、分子量分布Mw/Mn;1.03)
・B−4;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2104、株式会社クラレ製、スチレン含有量;65質量%、MFR;0.4g/10分、重量平均分子量Mw;87,600、分子量分布Mw/Mn;1.02)
・B−5;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8104、株式会社クラレ製、スチレン含有量;60質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;130,000、分子量分布Mw/Mn;1.06)
・C−1;ポリプロピレン(グレード名;ノバテックPP FY6HA、日本ポリプロ株式会社製)
エチレンビニルアルコール系共重合体、熱可塑性エラストマーを、表1〜3に示す配合割合にて配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シート状物を得た。
上述の条件にて得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、表1〜3に示すドロー比を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、表1に示すドロー比を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1〜3にまとめた。
上述の条件にて得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度100℃、予熱時間32秒間で予熱した後、延伸温度100℃、延伸時間32秒間で2倍横方向に延伸した後、120℃で32秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1及び表2にまとめた。
上述の条件にて得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度110℃、予熱時間32秒間で予熱した後、延伸温度110℃、延伸時間32秒間で2倍横方向に延伸した後、130℃で32秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1及び表3にまとめた。
上述の条件にて得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度120℃、予熱時間32秒間で予熱した後、延伸温度120℃、延伸時間32秒間で2倍横方向に延伸した後、140℃で32秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
ポリオレフィン系樹脂(C−1)と、熱可塑性エラストマー(B−1)を、表3に示す配合割合にて配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、120℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、3.0倍横方向に延伸した後、145℃で熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
エチレンビニルアルコール系共重合体、熱可塑性エラストマーを、表4に示す配合割合にて配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表4に記載したように比較例1〜3に示すいずれの未延伸シート状物においても、フィルムが破断した。なお、多孔フィルムが得られなかったため、DSCによるΔHmの算出は、上記未延伸シート状物にて行った。結果を表4にまとめた。
表4に示すように、熱可塑性エラストマーを添加せず、エチレンビニルアルコール系共重合体(A−3)単体を2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練し、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み200μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、120℃に設定したロール(P)と120℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行ったところ、透明性の高いMD延伸フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表4にまとめた。
エチレンビニルアルコール系共重合体(A−3)を40質量%、熱可塑性エラストマー(B−1)を60質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度230℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形しようとしたが、Tダイより吐出された溶融樹脂が流れにくく、キャストロールで引き取る際に、シートがちぎれてしまい、表4に記載したように未延伸シート状物が得られなかった。なお、未延伸シート状物が得られなかったため、DSCによるΔHmの算出を含め、各種評価を行うことができなかった。結果を表4にまとめた。
また、本発明の規定する熱可塑性エラストマーを用いなかった比較例4では、延伸は可能であるものの、フィルムが白化することもなく、多孔体が形成されなかった。
さらに、比較例5では、本発明が規定する熱可塑性エラストマーの重量比を逸脱しているため、未延伸シート状物が得られなかった。これは、熱可塑性エラストマーの重量比が50質量%を超えるため、熱可塑性エラストマーが海島構造のマトリックスとして形成されることに起因すると考えられる。
Claims (8)
- エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とする多孔体。
- 示差走査型熱量測定(DSC)における前記エチレンビニルアルコール系共重合体(A)に由来する結晶融解エンタルピー(ΔHm)が10J/g以上70J/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔体。
- 前記熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多孔体。
- 前記熱可塑性エラストマー(B)がスチレン系可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔体。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であることを特徴とする請求項4に記載の多孔体。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の多孔体を用いてなるコンデンサ用セパレータ。
- 請求項6に記載のコンデンサ用セパレータを用いてなるコンデンサ。
- エチレンビニルアルコール系共重合体(A)を主成分とし、かつ、重量平均分子量Mwが150,000以上の熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上50質量%以下含有する樹脂組成物を、
(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、繊維状物、及び中空状物からなる群より選ばれる一種の成形物に、冷却固化し成形する工程と、
(b)前記工程(a)で成形した該成形物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、
(c)前記工程(b)で延伸した該成形物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程を含む、
多孔体の製造方法。
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