JP6201500B2 - フッ素系樹脂多孔体 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ素系樹脂多孔体に関する。より詳細には、包装用、衛生用、畜産用、農業用、建築用、医療用、分離膜、水処理膜、光拡散板、電池用セパレータとして利用でき、特に、電池用セパレータ、及び、該電池用セパレータを用いてなる電池に好適に利用できるフッ素系樹脂多孔体に関する。
本発明はまた、このフッ素系樹脂多孔体を用いた電池用セパレータ及び電池に関する。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは電池などに使用するセパレータといった、各種の分野で利用されている。
中でも二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化および軽量化につながることから、非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より、リチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点から、セパレータが正極と負極の間に介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすため、セパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
一方、6フッ化リン酸リチウム等の電解質は、電池内の微量な水分と反応し、フッ化水素を発生しやすい。そのため、充放電のサイクルを繰り返す際に、正極と負極の間に介在するセパレータがフッ化水素により酸化劣化を起こし、電池のサイクル特性を低下させる場合がある。特に、セパレータの表面は、電極と接触する為、フッ化水素による劣化の影響を受けやすい。また、電池内で発生したフッ化水素が起因となり、電解質やセパレータとの連鎖的な反応により、更なるガスを発生し、電池の膨れを生じさせる可能性があり、電池の安全性が危惧される。
セパレータとしては、ポリエチレンやポリプロピレンの多孔質膜、ポリエチレンとポリプロピレンを積層した二層膜、ポリプロピレンの間にポリエチレンを挟んだ三層膜などが代表的なものとして挙げられるが、これらのセパレータでは、上述のようにフッ化水素等による劣化の影響を受けやすく、電池のサイクル特性の低下や、電池の膨れといった安全性への懸念が残る。また、これらのポリオレフィン系多孔膜は電解液に対する濡れ性が悪いといった課題があった。
このような課題に対し、電解液に対して良好な親和性を有するフッ素系樹脂を多孔化し、セパレータとして使用することが検討されている。
フッ素系樹脂を多孔化する手法としては、例えばポリフッ化ビニリデンを溶剤に溶かして湿式製膜した後、溶剤を除去して多孔体とする方法(特許文献1)、フッ素系樹脂に無機粒子を混合して製膜した後無機粒子を除去する方法(特許文献2〜4)、フッ素系樹脂に抽出可能な樹脂を配合して製膜後該樹脂を抽出する方法(特許文献5)、ポリフッ化ビニリデンに溶出可能な充填剤を混合して焼結成形した後、充填剤を溶出する方法(特許文献6)など、多数の方法及びそれからの多孔体が提案されている。
また、これらのフッ素系樹脂を多孔化する手法を用い、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる多孔膜(特許文献7)や、フッ化ビニリデンとヘキサフロロプロピレンとクロロトリフロロエチレンの三元共重合体に電解液が担持されてなるポリマー膜(特許文献8)、などが提案されている。また、エラストマーポリマーに、場合によりポリフッ化ビニリデンなどの有機電解質中に膨潤するポリマーを添加したセパレータ(特許文献9)も提案されている。
さらに、フッ化ビニリデン構成単位を少なくとも90重量%含有する熱可塑性フッ素系樹脂からなる多孔体を、溶融押出と冷延伸によって製造する方法(特許文献10)や、ポリフッ化ビニリデンに難相溶性樹脂を配合して製膜後、延伸して該難相溶性樹脂とマトリックス樹脂の界面に亀裂を生じさせて多孔化する方法(特許文献11)も提案されている。
特公昭59−12691号公報 特公昭62−17614号公報 特開昭61−242602号公報 特開平3−215535号公報 特公昭57−10888号公報 特開昭51−134761号公報 特開2000−309672号公報 特開2001−332307号公報 特開平11−102686号公報 特開平9−328566号公報 特公昭52−26788号公報
しかしながら、特許文献1〜6のような湿式多孔化方法では、多量の溶剤を使用し、その他の成分を除去する工程を含むため、溶剤や添加剤の回収のための設備が必要となり、生産性を著しく低下させる。
また、特許文献7、8において用いられるようなポリフッ化ビニリデン系樹脂は、ポリオレフィン等の結晶性樹脂と比較し、分子の側鎖にフッ素のような嵩高い分子が結合している為、結晶密度が低い。従って、ポリオレフィン等の多孔化方法としてみられるような、結晶ラメラ間を開裂して多孔化するという、いわゆる乾式多孔化方法を採用することは容易ではない。
また、特許文献9のようなセパレータでは、エラストマーポリマーがベースとなる為、耐熱性が著しく低下する恐れがある上、上記同様、湿式多孔化方法を採用しており生産性の観点からも問題がある。
また、特許文献10のような多孔体の製造においては、当該特許文献内に記載されているように溶融物を熱処理した後で延伸を行うと、部分的には均一な多孔化が実現されるが、上記同様、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の結晶密度が低く、乾式多孔化方法によりフィルム全体を均一に多孔化することはなお困難である。
さらに、特許文献11の多孔化方法においては、適切な難相溶性樹脂を選択しない限り、多孔質フィルムに外観不良が生じるのみならず、延伸変形に伴う応力が難相溶性樹脂とポリフッ化ビニリデン系樹脂の界面に伝わりにくかったり、そもそも樹脂によっては当該界面で亀裂を生じなかったりして、フィルム全体を均一に多孔化することは困難となる。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、均一な多孔構造と高い透気特性、耐熱性を有し、また、電池用セパレータとして利用する際に、電解液に対する親和性とフッ化水素ガスに対する耐劣化性に優れるフッ素系樹脂多孔体であって、高い生産性の下に製造することができるフッ素系樹脂多孔体、及びそれを用いた電池用セパレータと電池を提供することを目的とする。
本発明者は上記の課題を鑑みて鋭意検討を進めた結果、フッ素系樹脂を主成分とし、スチレン含有量が所定範囲であるスチレン系熱可塑性エラストマーを特定比率含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であるフッ素系樹脂多孔体が、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の要旨は以下の通りである。
[1] フッ素系樹脂(A)を主成分として50質量%以上含有し、かつ、スチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、45質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とするフッ素系樹脂多孔体。
[2] 前記フッ素系樹脂(A)が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、若しくはポリテトラフルオロエチレン系樹脂、又はそれらの混合物であることを特徴とする[1]に記載のフッ素系樹脂多孔体。
[3] 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のフッ素系樹脂多孔体。
[4] 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、重量平均分子量Mwが150,000以上であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体。
[5] [1]〜[4]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体を用いてなる電池用セパレータ。
[6] [5]に記載の電池用セパレータを用いてなる電池。
本発明によれば、均一な多孔構造と高い透気特性、耐熱性を有し、特に、電池用セパレータとして利用する際に、電解液に対する親和性とフッ化水素ガスに対する耐劣化性に優れたフッ素系樹脂多孔体を、高い生産性を持って提供することができる。
本発明のフッ素系樹脂多孔体を用いた電池用セパレータを収容している電池の概略断面図である。
以下、本発明の実施形態の一例としてのフッ素系樹脂多孔体(以下、「本多孔体」ともいう)、及び、その製造方法、並びに電池用セパレータとしての電池への適応形態について詳細に説明する。但し、本発明の範囲は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
以下に、本多孔体を構成する各成分について説明する。
<フッ素系樹脂(A)>
本多孔体を構成する樹脂組成物は、フッ素系樹脂(A)を主成分とすることが重要である。ここで主成分とは、本多孔体を構成する樹脂組成物のうち、50質量%以上を占める成分であることをいい、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
本発明に用いるフッ素系樹脂(A)としては、分子中にフッ素原子を含む合成高分子のことで、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等のフッ素原子含有ビニルモノマーの1種からなる重合体、又は、これらのフッ素原子含有ビニルモノマーの2種以上からなる共重合体、が用いられる。これらのフッ素原子含有ビニルモノマーは、エチレンや、プロピレン、ブテン等のαオレフィン、パーフルオロブチルエチレン等のフルオロアルキル基を有するフルオロオレフィン(ここで、フルオロアルキル基のアルキル基の炭素数は1〜21程度が好ましい。)、アルキルビニルエーテルやフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類(ここで、アルキルビニルエーテルのアルキル基の炭素数は1〜21程度が好ましい。)、フルオロアルキルメタクリレートやフルオロアルキルアクリレート等の(メタ)アクリレート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペンタフルオロプロピレン等のビニルモノマーとの共重合体として用いることもできる。また、2種以上のフッ素系樹脂をブレンドしてもよい。また、酸無水物等の官能基を修飾したフッ素系樹脂の変性物も用いることができる。
中でも、加工性や耐熱性の観点から、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフロオロアルキルエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニルなどが好ましく、特に、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体等のポリフッ化ビニリデン系樹脂や、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフロオロアルキルエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のポリテトラフルオロエチレン系樹脂が好ましい。
前記フッ素系樹脂(A)が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、即ち、フッ化ビニリデンの単独重合体又はフッ化ビニリデンと他のモノマーとの共重合体である場合、フッ化ビニリデンに由来する構成単位を、全構成単位中に70モル%以上含有すること(100モル%を含む)が好ましい。
また、前記フッ素系樹脂(A)が、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、即ち、テトラフルオロエチレンの単独重合体又はテトラフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体である場合、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位を、全構成単位中に20モル%以上含有すること(100モル%を含む)が好ましい。
前記フッ素系樹脂(A)がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRは0.03〜60g/10分であることが好ましく、0.3〜30g/10分であることがより好ましい。MFRが上記範囲であれば成形加工時に押出機の背圧が高くなりすぎることが無く生産性に優れる。
前記フッ素系樹脂(A)がポリテトラフルオロエチレン系樹脂である場合、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、例えば、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロアルキルエチレン共重合体等であれば温度297℃、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等であれば温度372℃で、荷重49NにおけるMFRはいずれも0.03〜60g/10分であることが好ましく、0.3〜30g/10分であることがより好ましい。MFRが上記範囲であれば成形加工時に押出機の背圧が高くなりすぎることが無く生産性に優れる。
前記フッ素系樹脂(A)の融点は、耐熱性の観点から130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。一方、成形加工性の観点から、350℃以下が好ましく、320℃以下がより好ましく、300℃以下がさらに好ましい。
<スチレン系熱可塑性エラストマー(B)>
本多孔体は、スチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含むことが重要である。前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量は、2質量%以上、50質量%以下が好ましく、3質量%以上、45質量%以下がより好ましく、5質量%以上、40質量%以下がさらに好ましい。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量とは、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を構成する全構成単位(全原料モノマーに由来する構成単位)に占めるスチレンに由来する構成単位の割合であり、核磁気共鳴装置(NMR)による組成分析により求められる。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量を、本発明の規定する範囲に選択することが、本発明における最も重要な点である。なぜならば、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含む樹脂組成物からなる層を少なくとも一軸方向に延伸して多孔化する際、延伸前の樹脂組成物における前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が、良好な多孔体を得るに当たり、重要な因子となる為である。
具体的には、前記フッ素系樹脂(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)からなるドメインから形成される海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化した後、少なくとも一方向に延伸して、多孔構造を形成する際、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、マトリックス/ドメインの界面にて解離が生じ、多孔の起点となる。しかしながら、ドメインの弾性率が高い場合、マトリックス/ドメイン間の弾性率差が小さくなるため、変形により付与される応力が組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。そのため、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の弾性率に大きく寄与するスチレン系熱可塑性エラストマー(B)に含まれるスチレン含有量は重要なファクターとなり、スチレン含有量が55質量%を超えるスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた場合、多孔構造が形成し難い。
一方、ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量が1質量%以上、55質量%以下の場合、得られた樹脂組成物を延伸する際において、変形により付与される応力が、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させやすく、界面剥離が生じやすくなり、均一な多孔構造を形成することが出来る。そのため、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量を、本発明の規定する範囲に選択することが、本発明において重要である。
また、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることが好ましく、10g/10分以下がより好ましく、5g/10分以下がさらに好ましく、流動しないことが最も好ましい。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のMFRが30g/10分以下が好ましい理由は、MFRが30g/10分以下のスチレン系熱可塑性エラストマー(B)であれば、延伸前の樹脂組成物における前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のモルフォロジーが、前記フッ素系樹脂(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、ドメインとして存在する前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、粒子状に存在しやすいからである。
一般に、マトリックス/ドメインの海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化させる場合、口金、もしくはノズル等の賦形設備より押し出されて流れる樹脂組成物を、キャストロール(冷却ロール)や空冷、水冷等の冷却固化設備により冷却固化する。その際、賦形設備と冷却固化設備の間のギャップ(間隙)において樹脂組成物が溶融伸長するため、ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の溶融粘度が低い場合、ドメインが流れ方向(押出方向)に伸長した樹脂組成物が得られる。
このドメインが流れ方向(押出方向)に伸長した樹脂組成物を延伸する際に、変形により付与される応力が樹脂組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。これは、ドメインが予め伸長していることにより、応力を受ける界面の断面積が小さい為である。
一方、ドメインの溶融粘度が高い場合、ドメインが溶融伸長の影響を受け難く、得られる延伸前の樹脂組成物内のドメインは粒子状を保ちやすい。そのため、得られた樹脂組成物を延伸する際に、変形により付与される応力がマトリックス/ドメインの界面に集中しやすく、また、応力を受ける界面の断面積も大きくなるため、界面剥離が生じやすく、その結果として均一な多孔構造を形成しやすくなる。そのため、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)として、MFRが前記上限以下のものを選択することが好ましい。
また、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)は、重量平均分子量Mwが150,000以上であることが好ましい。前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量は、160,000以上、1,000,000以下が好ましく、170,000以上、800,000以下がより好ましく、180,000以上、600,000以下がさらに好ましい。
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比(分子量分布)Mw/Mnは、1.00以上、1.50以下が好ましく、1.00以上、1.30以下がより好ましく、1.00以上、1.10以下がさらに好ましい。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量が150,000以上であえることが好ましい理由は、延伸前の樹脂組成物における前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のモルフォロジーが、前記フッ素系樹脂(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、ドメインとして存在する前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、粒子状に存在しやすいとともに、得られるフッ素系樹脂多孔体において、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のブリードアウトを抑制できるためである。また、また、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量Mnと重量平均分子量Mwの比(分子量分布)Mw/Mnが、前記好適範囲の場合、形成されるドメインの分散径が均一になりやすいため好ましい。
なお、本発明において、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポチスチレン換算の値をさし、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定、算出される。
前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)としては、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、側鎖にスチレン構造を有するグラフト共重合体、シェルにスチレン構造を有するコアシェル型多層構造ゴム等が好適に用いることができ、2種以上のブレンド物でもよい。中でも、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体などが好ましい。
本多孔体を構成する樹脂組成物中には、上記のスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
本発明において、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物において、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、45質量%以下含有することが重要である。
一般に、フッ素系樹脂の密度は、1.5g/cm以上と非常に大きいため、前記樹脂組成物中の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が45質量%を超える場合、前記フッ素系樹脂(A)の体積に対して、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の体積が大きくなり、形成される樹脂組成物のマトリックスがスチレン系熱可塑性エラストマーとなり、多孔構造が形成しにくくなると共に、耐熱性が著しく低下するおそれがある。
また、前記樹脂組成物中の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量が1質量%未満の場合、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との界面における多孔化が形成し難いおそれがある。
そのため、前記樹脂組成物中の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の含有量は、5質量%以上、43質量%以下が好ましく、10質量%以上、41質量%以下がより好ましく、15質量%以上、39質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上、37質量%以下が特に好ましい。
<その他の成分>
本多孔体を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記のフッ素系樹脂(A)及びスチレン系熱可塑性エラストマー(B)以外の成分、例えばフッ素系樹脂(A)以外の他の樹脂を含有することを許容することができる。他の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂等が挙げられる。中でも、前記フッ素系樹脂(A)として、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を用いる場合、相溶性の観点から、アクリル系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂が好ましい。
また、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)以外の熱可塑性エラストマーが含有されていてもよく、含有し得る他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、動的加硫系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーや、アクリル系熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー、及び、これらのブレンドやアロイ、変性物、動的架橋物、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、コアシェル型多層構造ゴムなどが挙げられる。
また、前記樹脂組成物には、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂や、シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、着色剤などの添加剤が挙げられる。
<本多孔体>
本多孔体は、フッ素系樹脂(A)を主成分とし、スチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、45質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層である。
本多孔体の形状としては特に制限はないが、シート状物、又は繊維状物、又は中空状物が挙げられる。「シート状物」とは、厚い(mmオーダー)プレートから薄い(μmオーダー)フィルムまでを含み、また、「繊維状物」とは、太いロッドから細い糸までを含み、また「中空状物」とは、太いパイプから細いチューブ、中空繊維、インフレーションフィルム等を意味する。勿論、インフレーションフィルムをカットしたシート状物を含むことは言うまでもない。
本多孔体は、前記樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有していればよい。すなわち、本多孔体は前記樹脂組成物からなる多孔層のみで形成しても良く、本多孔体の特徴を阻害しない範囲で、他の多孔層と積層して形成しても良い。
また、本多孔体がシート状物の場合は、シート状物の厚み方向に積層された積層シート状多孔体でもよく、繊維状物の場合は、いわゆる芯鞘構造状多孔体でもよく、中空状の場合は、中空体の径方向に積層された多孔体でもよい。
特に、本多孔体を電池用セパレータとして用いる場合、シート状物が好ましい。さらに、前記樹脂組成物からなる多孔層を、電池用セパレータとして一般的に用いられているポリオレフィン系樹脂多孔膜と積層させて本多孔体を形成してもよく、その場合、前記樹脂組成物からなる多孔層は本多孔体の最表層に配置されることが好ましい。
さらに、本多孔体において前記樹脂組成物からなる層は、少なくとも一軸方向に延伸されてなることが重要である。前記樹脂組成物からなる層が少なくとも一軸方向、好ましくは二軸方向に延伸されてなることによって、当該層が多孔化し、本多孔体が優れた透気特性を有することとなる。
本多孔体を電池用セパレータとして用いる場合、シート状物としての多孔体の厚みは、1μm〜50μmが好ましく、1μm〜30μmがより好ましい。電池用セパレータとして使用する場合、厚みが1μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
また、厚みが50μm以下、好ましくは30μm以下であれば、多孔性フィルムの電気抵抗を小さくできるので電池の性能を十分に確保することができる。
本多孔体の透気度は15000秒/100mL以下が好ましく、2000秒/100mL以下がより好ましく、500秒/100mL以下が更に好ましい。透気度が15000秒/100mL以下であれば、多孔体に連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度は厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該多孔体を通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは厚み方向の孔のつながり度合いである。本多孔体の透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば電池用セパレータとして使用した場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
なお、本多孔体の透気度の下限には特に制限はないが、通常1秒/100mL程度である。
透気度は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
本多孔体の空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた多孔性フィルムとすることができる。
一方、空孔率の上限については80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。空孔率が80%以下であれば、微細孔が増えすぎて本多孔体の強度が低下する問題もなくなり、ハンドリングの観点からも好ましい。
なお、空孔率は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
<本多孔体の製造方法>
次に、本多孔体の製造方法について説明する。上記の通り、本多孔体においては、フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、45質量%以下含有する樹脂組成物からなる層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化されてなることが重要である。
より具体的には、本多孔体は、前記樹脂組成物を(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、又は繊維状物、又は中空状物に、冷却固化し成形する工程と、(b)前記工程(a)で成形した該シート状物、又は繊維状物、又は中空状物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、(c)前記工程(b)で延伸した該シート状物、又は繊維状物、又は中空状物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程と、を含む経由して製造されることが好ましい。
[工程(a)]
前記樹脂組成物を溶融押出し、前記樹脂組成物からなる実質的に無孔状の層を少なくとも一層有するシート状物、又は繊維状物、又は中空状物に、冷却固化し成形する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融押出し、Tダイ、丸ダイ、ノズル、中空ノズル等の賦形設備より押出し、キャストロール(冷却ロール)や、空冷、水冷等の設備で冷却固化するという方法が挙げられる。また、インフレーション法や、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
なお、「実質的に無孔状の層」とは、前記樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化し成形する工程において、意図的に当該層に空孔を設けないことを意味し、当該工程における不測の要因で意図せず微細なピンホールが生じている場合も含むことを意味する。
前記樹脂組成物の溶融押出において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、前記フッ素系樹脂(A)がポリフッ化ビニリデン系樹脂である場合、概ね180〜250℃が好ましく、190〜240℃がより好ましく、200〜230℃が更に好ましい。前記フッ素系樹脂(A)がポリテトラフルオロエチレン系樹脂である場合、概ね240〜400℃が好ましく、250〜390℃がより好ましく、250〜380℃が更に好ましい。押出加工温度が上記下限以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性が向上することから好ましい。一方、押出加工温度を上記上限以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる本多孔体の機械的強度の低下を抑制できる。
また、冷却固化温度、例えばキャストロールの冷却固化温度は好ましくは0〜160℃、より好ましくは40〜140℃、更に好ましくは50〜130℃である。冷却固化温度を上記下限以上とすることで、前記フッ素系樹脂(A)の結晶化を促進し、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が生じやすく、延伸時において多孔体を形成しやすいために好ましい。また、上記上限以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく成形することが可能であるので好ましい。
[工程(b)]
工程(b)では、工程(a)により得られたシート状物、又は繊維状物、又は中空状物を−20℃以上90℃以下の温度で延伸する(以下、この工程(b)を「低温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(b)における延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらは単独で行っても2つ以上組み合わせて行ってもよい。中でも、生産性の観点から、工程(a)における流れ方向(即ち、押出方向ないしは引き取り方向、以下「縦方向」又は「MD」と称す場合がある。)への延伸が好ましく、前記樹脂組成物内の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)への応力集中をさせる観点から、延伸速度を上げやすいロール延伸法が好ましい。
ここで、−20℃以上の温度で延伸することで、延伸雰囲気下を−20℃未満の温度にするための特殊な設備が不要であるため、生産上好ましい。また延伸雰囲気下におけるフッ素系樹脂(A)の弾性率が高くなりすぎず、延伸に対して変形が追随でき、破断するおそれが小さい。一方、90℃以下の温度で延伸することで、フッ素系樹脂(A)の弾性率が低くなりすぎず、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)への応力集中が適度に発現し、前記樹脂組成物からなる層を容易に多孔化することができる。低温延伸工程における温度は、特に0℃以上70℃以下であることが好ましい。
また、この低温延伸工程における延伸倍率は特に制限はないが1.15倍以上、4.00倍以下、特に1.25倍以上、3.00倍以下であることが好ましい。延伸倍率が上記下限以上であると、マトリックス/ドメインの界面に応力が集中し、変形に伴う界面の剥離により、多孔構造を形成しやすく、上記上限以下であると、形成された多孔構造が過度の変形により閉塞されることがないため、好ましい。
[工程(c)]
工程(c)では、工程(b)により得られた前記樹脂組成物からなる多孔性層を100℃以上160℃以下の温度でさらに延伸する(以下、この工程(c)を「高温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(c)における延伸方法については、上述の工程(b)と同様の方法を採用することができるが、中でも、ロール延伸法や、テンター延伸法が好ましく、特に、工程(b)により形成された孔を拡張する観点から、ロール延伸法により、さらに流れ方向(縦方向)へ延伸することが好ましい。
ここで、100℃以上の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔を伸長し、孔径を拡大できる。一方、160℃以下の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔の閉塞を抑制することができる。高温延伸工程における温度は、特に110℃以上150℃以下であることが好ましい。
また、この高温延伸工程における延伸倍率は特に制限はないが1.25倍以上、6.00倍以下、特に1.40倍以上、5.00倍以下であることが好ましい。さらに、低温延伸工程と高温延伸工程とを合わせた延伸倍率として、1.4倍以上、24倍以下、特に1.75倍以上、15倍以下あることが好ましい。延伸倍率が上記下限以上であると、孔径の拡張や多孔構造の保持を行いやすく、上記上限以下であると、孔の閉塞を抑制することができ、好ましい。
本多孔体の製造方法において、前記各工程は、(a)、(b)、(c)の順に連続していること、特に工程(b)の後に工程(c)を行うことによって、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が延伸時に伸長しすぎることなく、前記樹脂組成物からなる層を容易に多孔化することができる。仮に、工程の順序が、(a)、(c)、(b)の順に経由して行われる場合、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)が、工程(c)により伸長してしまい、応力を受ける界面の断面積が小さい為、多孔化が困難となるため好ましくない。これは、前述した、工程(a)において、ドメインが流れ方向に伸長した状態と同じである。なお、本多孔体の製造方法は、(a)、(b)、(c)の順に各工程を行えばよく、(a)、(b)、(c)の各工程の間にそれ以外の工程を含んでも良い。また、工程(c)の後にそれ以外の工程を含んでも良い。
具体的には、工程(c)の後に、寸法安定性向上の観点から、熱処理を行うことが好ましい。また、さらなる孔の拡張の目的で、工程(c)の後に、テンター延伸法等により縦方向と直交する方向(以下、「横方向」又は「TD」と称す場合がある。)に延伸(横延伸)することも好ましい。さらに、テンター延伸法等により横延伸した後、寸法安定性向上の観点から、熱処理を行うことも好ましい。また、さらなる寸法安定性の観点から、得られた多孔体を電子線架橋等により架橋させても良いし、後述するように他の多孔層等と積層する場合に密着性を向上する観点から、得られた多孔体にコロナ放電処理、プラズマ処理等を施して表面処理を行っても良い。
工程(c)の後に横延伸を行う場合、その横延伸工程における温度は100℃以上160℃以下、特に110℃以上150℃以下であることが、孔径の更なる拡張と孔の閉塞抑制の点において好ましい。また、その際の延伸倍率は、孔径の更なる拡張と孔の閉塞抑制の点において、1.25倍以上、6.00倍以下、特に1.40倍以上、5.00倍以下であることが好ましい。
また、工程(c)の後に熱処理を行う場合、熱処理工程における温度は120℃以上200℃以下、特に140℃以上180℃以下であることが寸法安定性の点において好ましい。
また、前記樹脂組成物からなる多孔層以外の他の多孔層を有する本多孔体とする場合、前記工程(a)において、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物の層と、他の多孔層を構成する組成物の層とを、共押出法やラミネート法などによって積層し、実質的に無孔状の積層体を作製した後、工程(b)及び工程(c)において延伸して多孔化することにより本多孔体を製造しても良く、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を含有する樹脂組成物からなる層を、前記工程(a)〜(c)を経て多孔化した後、他の多孔層とラミネート法やコーティング法などによって積層して、本多孔体を製造しても良い。
<電池>
続いて、本多孔体を電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
前記正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製する。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解液が好ましい。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
次に、実施例および比較例を示し、本多孔体について更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本多孔体の実施形態として、シート状物に賦形した。以下、本多孔体を多孔性フィルムと呼ぶ。また、多孔性フィルムの引き取り(流れ)方向を「MD」方向、その直角方向を「TD」方向と記載する。
(1)スチレン含有量
実施例、比較例で使用したスチレン系熱可塑性エラストマーについて、MNRを用いて組成分析を行い、スチレン含有量を算出した。
(2)MFR
実施例、比較例で使用した原材料に関して、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でMFRを測定した。ただし、テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロブチルエチレン共重合体に関しては、温度297℃、荷重49Nの条件下でMFRを測定した。
(3)分子量、分子量分布
実施例、比較例で使用したスチレン系熱可塑性エラストマーをクロロホルムに溶解した後、GPCを用いて重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び、分子量分布Mw/Mnを測定、算出した。分子量の算出は、ポリスチレン標準サンプルの分子量を検量線に用いて行った。
(4)厚み
得られた多孔性フィルムを1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(5)透気度
得られた多孔性フィルムから直径φ40mmの大きさでサンプルを切り出し、JIS P8117に準拠して透気度(秒/100mL)を測定した。
(6)空孔率
得られた多孔性フィルムの実質量Wを測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量Wを計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W−W)/W}×100
実施例、比較例で使用した原材料は以下の通りである。
(フッ素系樹脂)
・A−1;ポリフッ化ビニリデン(グレード名;KYNAR710、アルケマ社製、融点;170℃、MFR;9g/10分)
・A−2;テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロブチルエチレン共重合体(グレード名;FluonETFE C88AXP、旭硝子社製、融点;256℃、MFR;11g/10分)
・A−3;テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロブチルエチレン共重合体(グレード名;FluonETFE LM740AP、旭硝子社製、融点;228℃、MFR;32g/10分)
・A−4;テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロブチルエチレン共重合体(グレード名;FluonETFE LM730AP、旭硝子社製、融点;228℃、MFR;25g/10分)
・A−5;テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロブチルエチレン共重合体(グレード名;FluonETFE LM720AP、旭硝子社製、融点;227℃、MFR;13g/10分)
(スチレン系熱可塑性エラストマー)
・B−1;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2005、クラレ社製、スチレン含有量;20質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;271,000、分子量分布Mw/Mn;1.09)
・B−2;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2006、クラレ社製、スチレン含有量;35質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;271,000、分子量分布Mw/Mn;1.09)
・B−3;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8006、クラレ社製、スチレン含有量;33質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;285,000、分子量分布Mw/Mn;1.11)
・B−4;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON4044、クラレ社製、スチレン含有量;32質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;184,000、分子量分布Mw/Mn;1.06)
・B−5;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON4055、クラレ社製、スチレン含有量;30質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;269,000、分子量分布Mw/Mn;1.12)
・B−6;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2104、クラレ社製、スチレン含有量;65質量%、MFR;0.4g/10分、重量平均分子量Mw;87,600、分子量分布Mw/Mn;1.02)
・B−7;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8104、クラレ社製、スチレン含有量;60質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;130,000、分子量分布Mw/Mn;1.06)
(実施例1)
フッ素系樹脂(A−1)を70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例2)
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマーをスチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比52%(延伸倍率1.52倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比163%(延伸倍率2.63倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例3)
実施例2で得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例4)
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマーをスチレン系熱可塑性エラストマー(B−3)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比52%(延伸倍率1.52倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比163%(延伸倍率2.63倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例5)
実施例4で得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例6)
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマーをスチレン系熱可塑性エラストマー(B−4)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例7)
実施例6で得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例8)
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマーをスチレン系熱可塑性エラストマー(B−5)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例9)
実施例8で得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例10)
フッ素系樹脂(A−1)を85質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を15質量%の割合で配合した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例11)
フッ素系樹脂(A−2)を70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度280℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み130μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例12)
フッ素系樹脂(A−3)を70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度250℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み130μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例13)
フッ素系樹脂(A−4)を70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度260℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み130μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(実施例14)
フッ素系樹脂(A−5)を70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度280℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み130μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
(比較例1)
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマーをスチレン系熱可塑性エラストマー(B−6)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表2に記載したようにフィルムが破断した。
(比較例2)
実施例1のスチレン系熱可塑性エラストマーをスチレン系熱可塑性エラストマー(B−7)に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表2に記載したようにフィルムが破断した。
(比較例3)
スチレン系熱可塑性エラストマーを添加せず、フッ素系樹脂(A−1)単体とした以外は、実施例1と同様の条件で、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表2に記載したようにフィルムが破断した。
(比較例4)
比較例3で得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行ったが、得られたMD延伸フィルムは鱗状のムラが見られた。得られたフィルムの評価結果を表2にまとめた。
(比較例5)
フッ素系樹脂(A−1)を50質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を50質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形しようとしたが、Tダイより吐出された溶融樹脂が流れにくく、キャストロールで引き取る際に、シートがちぎれてしまい、表2に記載したように未延伸シート状物が得られなかった。
Figure 0006201500
Figure 0006201500
表1より、実施例1〜14で得られた本発明のフッ素系樹脂多孔体は、優れた透気性と高い空孔率を有することが分かる。
一方、本発明が規定するスチレン含有量の範囲外であるスチレン系熱可塑性エラストマーを用いた比較例1、2では、フィルムが破断し、多孔フィルムが得られなかった。これは、用いたスチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が本発明の範囲を逸脱するため、キャストシートの製膜時において、ドメインを形成するスチレン系熱可塑性エラストマーの弾性率が高く、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げたため、フィルムが破断したものと考えられる。さらに、スチレン系熱可塑性エラストマーを用いなかった比較例3では、フィルムが破断し、比較例4では、一部白化する箇所は見られるものの、鱗状のムラが生じる。すなわち、フッ素系樹脂単体では、低温延伸特性や多孔体の均一化に課題が残ることがわかった。また、比較例5では、本発明が規定するスチレン系熱可塑性エラストマーの重量比を逸脱しているため、未延伸シート状物が得られなかった。これは、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量比が40質量%を超える為、スチレン系熱可塑性エラストマーが海島構造のマトリックスとして形成されることに起因すると考えられる。
本発明のフッ素系樹脂多孔体は、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。リチウム電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;水処理用中空糸膜;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に使用できる。
10 電池用セパレータ
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋

Claims (6)

  1. フッ素系樹脂(A)を主成分として50質量%以上含有し、かつ、スチレン含有量が1質量%以上55質量%以下であるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)を1質量%以上、45質量%以下含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層は、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であることを特徴とするフッ素系樹脂多孔体。
  2. 前記フッ素系樹脂(A)が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、若しくはポリテトラフルオロエチレン系樹脂、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のフッ素系樹脂多孔体。
  3. 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素系樹脂多孔体。
  4. 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、重量平均分子量Mwが150,000以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体を用いてなる電池用セパレータ。
  6. 請求項5に記載の電池用セパレータを用いてなる電池。
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