JP6318997B2 - フッ素系樹脂多孔体 - Google Patents
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Description
本発明はまた、このフッ素系樹脂多孔体を用いた電池用セパレータ及び電池に関する。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より、リチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
また、自動車における電子制御ブレーキ用バックアップ電源やアイドリングストップバックアップ用途等において、電池と併用する態様などでリチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等も普及してきている。
[1] フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)を含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であって、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と前記相溶化剤(C)の混合組成比が(A)/(B)/(C)=45質量%〜98質量%/1質量%〜45質量%/1質量%〜30質量%(ただし(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)であり、前記相溶化剤(C)が、前記フッ素系樹脂(A)に親和性を有するセグメント(x)と、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に親和性を有するセグメント(y)を分子骨格内に有する熱可塑性樹脂であることを特徴とするフッ素系樹脂多孔体。
[2]前記セグメント(x)が、ポリ酢酸ビニル系セグメント、及び/又は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系セグメントであることを特徴とする[1]に記載のフッ素系樹脂多孔体。
[3]前記セグメント(y)が、ポリオレフィン系セグメント、及び/又は、ポリスチレン系セグメントであることを特徴とする[1]又は[2]に記載のフッ素系樹脂多孔体。
[4] 前記相溶化剤(C)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びスチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体。
[5] 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量(Mw)が150,000以上であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体。
[6] 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体。
[7] 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、スチレン含有量が1質量%以上、55質量%以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体。
[8] 前記フッ素系樹脂(A)が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載のフッ素系樹脂多孔体を用いてなる電池用セパレータ。
[10] [9]に記載の電池用セパレータを用いてなる電池。
本多孔体を構成する樹脂組成物は、フッ素系樹脂(A)を主成分とすることが重要である。ここで主成分とは、本多孔体を構成する樹脂組成物において最も多い質量比率を占める成分であることをいい、45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上がさらに好ましい。
また、前記フッ素系樹脂(A)と後述するスチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、後述する相溶化剤(C)との混合樹脂において、前記(A)と前記(B)と前記(C)との合計質量%を100質量%としたとき、前記混合樹脂における前記フッ素系樹脂(A)の組成比は、45質量%〜98質量%であることが重要である。
また、前記フッ素系樹脂(A)が、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、即ち、テトラフルオロエチレンの単独重合体又はテトラフルオロエチレンと他のモノマーとの共重合体である場合、テトラフルオロエチレンに由来する構成単位を、全構成単位中に20モル%以上含有すること(100モル%を含む)が好ましい。
本多孔体は、フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)を含有する樹脂組成物からなり、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、後述する相溶化剤(C)との混合樹脂において、前記(A)と前記(B)と前記(C)との合計質量%を100質量%としたとき、前記混合樹脂における前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の組成比は、1質量%〜45質量%であることが重要である。
また、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(分子量分布)Mw/Mnは、1.00以上、1.50以下が好ましく、1.00以上、1.30以下がより好ましく、1.00以上、1.10以下がさらに好ましい。
このドメインが流れ方向(押出方向)に伸長した樹脂組成物を延伸する際に、変形により付与される応力が樹脂組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げやすくなる。これは、ドメインが予め伸長していることにより、応力を受ける界面の断面積が小さい為である。
そのため、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の温度230℃、荷重2.16kgにおけるMFRが、30g/10分以下の場合、ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)が流れ方向(押出方向)に伸張し難く、得られる延伸前の樹脂組成物内のドメインは粒子状を保ちやすいため、好ましい。
なお、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量とは、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)を構成する全構成単位(全原料モノマーに由来する構成単位)に占めるスチレンに由来する構成単位の割合であり、核磁気共鳴装置(NMR)による組成分析により求められる。
具体的には、前記フッ素系樹脂(A)を主成分としてなるマトリックスに対し、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)がドメインとしてなる海島構造を有する樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化した後、少なくとも一方向に延伸して、多孔構造を形成する際、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、マトリックス/ドメインの界面にて解離が生じ、多孔の起点となる。しかしながら、ドメインの弾性率が高い場合、マトリックス/ドメイン間の弾性率差が小さくなるため、変形により付与される応力が組成物全体に均一に加わりやすくなり、マトリックス/ドメインの界面への応力集中を妨げる。ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)に含まれるスチレン含有量は、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の弾性率に大きく寄与するため、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)のスチレン含有量が1質量%以上、55質量%以下の場合、得られた樹脂組成物を延伸する際において、変形により付与される応力が、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させやすく、界面剥離が生じやすくなり、均一な多孔構造を形成することが出来るため、好ましい。
本多孔体は、フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)を含有する樹脂組成物からなり、前記相溶化剤(C)が、前記フッ素系樹脂(A)に親和性を有するセグメント(x)と、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に親和性を有するセグメント(y)を分子骨格内に有する熱可塑性樹脂であることが重要である。
また、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、前記相溶化剤(C)との混合樹脂において、前記(A)と前記(B)と前記(C)との合計質量%を100質量%としたとき、前記混合樹脂における前記相溶化剤(C)の組成比は、1質量%〜30質量%であることが重要である。
この時、前記相溶化剤(C)の組成、含有量を、本発明の規定する範囲内において適用することにより、ドメインであるスチレン系熱可塑性エラストマー(B)の均一な分散や微細化が可能となる。これは、前記相溶化剤(C)が、前記フッ素系樹脂(A)と高い親和性を示すセグメント、例えばポリ(メタ)アクリル酸エステル系セグメントやポリ酢酸ビニル系セグメントを有する熱可塑性樹脂や、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と高い親和性を示すセグメント、例えばポリオレフィン系セグメントやポリスチレン系セグメントを有するためである。すなわち、マトリックス/ドメインの界面に応力集中させることにより、多孔化する際、孔径の均一化や、微多孔化が可能となるため、前記相溶化剤(C)の組成、含有量を、本発明の規定する範囲内において適用することが重要となる。
(x):(y)=3:97〜97:3の範囲であることにより、前記相溶化剤(C)が前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の相溶性を向上させる。
一般に、フッ素系樹脂の密度は、1.5g/cm3以上と非常に大きいため、前記混合樹脂中の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の混合樹脂組成比が45質量%を超える場合、前記フッ素系樹脂(A)の体積に対して、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の体積が大きくなり、形成される樹脂組成物のマトリックスがスチレン系熱可塑性エラストマーとなり、多孔構造が形成しにくくなると共に、耐熱性が著しく低下するおそれがある。
また、前記混合樹脂中の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の混合樹脂組成比が1質量%未満の場合、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との界面における多孔化が形成し難いおそれがある。
また、前記混合樹脂中の前記相溶化剤(C)の混合樹脂組成比が30質量%を超える場合、相溶化剤(C)が、形成される樹脂組成物のドメインの主成分となりやすくなり、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との界面における多孔化が形成し難いおそれがある。
また、前記混合樹脂中の前記相溶化剤(C)の混合樹脂組成比が1質量%未満の場合、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との相溶性を向上する効果を十分に発揮できない恐れがある。
そのため、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と前記相溶化剤(C)の混合樹脂組成比(A)/(B)/(C)が、50質量%〜92質量%/5質量%〜40質量%/3質量%〜20質量%(ただし(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)であること好ましく、(A)/(B)/(C)が、55質量%〜85質量%/10質量%〜40質量%/5質量%〜15質量%(ただし(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)であることより好ましい。
本多孔体を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記のフッ素系樹脂(A)、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)以外の成分、例えば上記(A)、(B)、(C)以外の他の樹脂を含有することを許容することができる。他の樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリブチレンサクシネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアミドビスマレイミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、アラミド系樹脂等が挙げられる。また、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)以外の熱可塑性エラストマーが含有されていてもよく、含有し得る他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、動的加硫系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマーや、アクリル系熱可塑性エラストマー、ポリ乳酸系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、アイオノマー、及び、これらのブレンドやアロイ、変性物、動的架橋物、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体、コアシェル型多層構造ゴムなどが挙げられる。
本多孔体は、フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)を含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層である。
また、本多孔体がシート状物の場合は、シート状物の厚み方向に積層された積層シート状多孔体でもよく、繊維状物の場合は、いわゆる芯鞘構造状多孔体でもよく、中空状の場合は、中空体の径方向に積層された多孔体でもよい。
特に、本多孔体を電池用セパレータとして用いる場合、シート状物が好ましい。さらに、前記樹脂組成物からなる多孔層を、電池用セパレータとして一般的に用いられているポリオレフィン系樹脂多孔膜と積層させて本多孔体を形成してもよく、その場合、前記樹脂組成物からなる多孔層は本多孔体の最表層に配置されることが好ましい。
また、厚みが120μm以下であれば、多孔性フィルムの電気抵抗を小さくできるので電池の性能を十分に確保することができる。
また、本多孔体の透気度の下限は、均一かつ微細な多孔構造を有する点を踏まえて、50秒/100mL以上が好ましい。
透気度は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
一方、空孔率の上限については80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。空孔率が80%以下であれば、微細孔が増えすぎて本多孔体の強度が低下する問題もなくなり、ハンドリングの観点からも好ましい。
なお、空孔率は後述の実施例の項に測定方法が記載されている。
次に、本多孔体の製造方法について説明する。上記の通り、本多孔体においては、フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)を含有する樹脂組成物からなる層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化されてなることが重要である。
より具体的には、本多孔体は、前記樹脂組成物を(a)溶融押出し、前記樹脂組成物からなる層を少なくとも一層有するシート状物、又は繊維状物、又は中空状物に、冷却固化し成形する工程と、(b)前記工程(a)で成形した該シート状物、又は繊維状物、又は中空状物を、−20℃以上90℃以下の温度で延伸する工程と、(c)前記工程(b)で延伸した該シート状物、又は繊維状物、又は中空状物を、さらに100℃以上160℃以下の温度で延伸する工程と、を含む経由して製造されることが好ましい。
前記樹脂組成物を溶融押出し、前記樹脂組成物からなる実質的に無孔状の層を少なくとも一層有するシート状物、又は繊維状物、又は中空状物に、冷却固化し成形する方法としては特に限定されず、公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融押出し、Tダイ、丸ダイ、ノズル、中空ノズル等の賦形設備より押出し、キャストロール(冷却ロール)や、空冷、水冷等の設備で冷却固化するという方法が挙げられる。また、インフレーション法や、チューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
なお、「実質的に無孔状の層」とは、前記樹脂組成物を溶融押出し、冷却固化し成形する工程において、意図的に当該層に空孔を設けないことを意味し、当該工程における不測の要因で意図せず微細なピンホールが生じている場合も含むことを意味する。
また、冷却固化温度、例えばキャストロールの冷却固化温度は好ましくは20〜160℃、より好ましくは40〜140℃、更に好ましくは50〜130℃である。冷却固化温度を上記下限以上とすることで、前記フッ素系樹脂(A)の結晶化を促進し、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)との弾性率差が生じやすく、延伸時において多孔体を形成しやすいために好ましい。また、上記上限以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく成形することが可能であるので好ましい。
工程(b)では、工程(a)により得られたシート状物、又は繊維状物、又は中空状物を−20℃以上90℃以下の温度で延伸する(以下、この工程(b)を「低温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(b)における延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらは単独で行っても2つ以上組み合わせて行ってもよい。中でも、生産性の観点から、工程(a)における流れ方向(即ち、押出方向ないしは引き取り方向、以下「縦方向」又は「MD」と称す場合がある。)への延伸が好ましく、前記樹脂組成物内の前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)への応力集中をさせる観点から、延伸速度を上げやすいロール延伸法が好ましい。
工程(c)では、工程(b)により得られた前記樹脂組成物からなる多孔性層を100℃以上160℃以下の温度でさらに延伸する(以下、この工程(c)を「高温延伸工程」と称す場合がある。)。工程(c)における延伸方法については、上述の工程(b)と同様の方法を採用することができるが、中でも、ロール延伸法や、テンター延伸法が好ましく、特に、工程(b)により形成された孔を拡張する観点から、ロール延伸法により、さらに流れ方向(縦方向)へ延伸することが好ましい。
ここで、100℃以上の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔を伸長し、孔径を拡大できる。一方、160℃以下の温度で延伸することで、工程(b)で形成された孔の閉塞を抑制することができる。高温延伸工程における温度は、特に110℃以上150℃以下であることが好ましい。
また、工程(c)の後に熱処理を行う場合、熱処理工程における温度は120℃以上200℃以下、特に140℃以上180℃以下であることが寸法安定性の点において好ましい。
続いて、本多孔体を電池用セパレータとして収容している電池の一例として、非水電解液二次電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
実施例、比較例で使用したスチレン系熱可塑性エラストマーについて、NMRを用いて組成分析を行い、スチレン含有量を算出した。また、後述の相溶化剤(C−1)についても同様に組成分析を行い、スチレン含有量とメタクリル酸メチル含有量を算出し、質量比率を求めた。
実施例、比較例で使用したフッ素系樹脂、及び、スチレン系熱可塑性エラストマーに関して、温度230℃、荷重2.16kgの条件下でMFRを測定した。
実施例、比較例で使用したスチレン系熱可塑性エラストマーをクロロホルムに溶解した後、GPCを用いて重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、及び、分子量分布Mw/Mnを測定、算出した。分子量の算出は、ポリスチレン標準サンプルの分子量を検量線に用いて行った。
得られた多孔性フィルムについて、1/1000mmのダイヤルゲージを用いて、面内を不特定に5ヶ所測定しその平均を厚みとした。
得られた多孔性フィルムから直径40mmの大きさで円状にサンプルを切り出し、JIS P8117(2009年)に準拠して透気度(秒/100mL)を測定した。
得られた多孔性フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
・A−1;ポリフッ化ビニリデン(グレード名;KYNAR710、アルケマ株式会社製、融点;170℃、MFR;9g/10分)
・B−1;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON2006、株式会社クラレ製、スチレン含有量;35質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;271,000、分子量分布Mw/Mn;1.09)
・B−2;スチレン系熱可塑性エラストマー(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、グレード名;SEPTON8006、株式会社クラレ製、スチレン含有量;33質量%、MFR;流動せず、重量平均分子量Mw;285,000、分子量分布Mw/Mn;1.11)
・C−1;スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(グレード名;セビアンMAS30F、セグメントの質量比率;スチレン/メタクリル酸メチル=40質量%/60質量%、ダイセルポリマー株式会社製)
・C−2;スチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;モディパーSV10B、セグメントの質量比率;スチレン/酢酸ビニル=90質量%/10質量%、日油株式会社製)
・C−3;スチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;モディパーSV30B、セグメントの質量比率;スチレン/酢酸ビニル=70質量%/30質量%、日油株式会社製)
・C−4;スチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;モディパーS501、セグメントの質量比率;スチレン/酢酸ビニル=50質量%/50質量%、日油株式会社製)
・C−5;エチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;エバフレックスEV270、セグメントの質量比率;エチレン/酢酸ビニル=72質量%/28質量%、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)
・C−6;エチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;エバフレックスEV45LX、セグメントの質量比率;エチレン/酢酸ビニル=54質量%/46質量%、三井・デュポンポリケミカル株式会社製)
・C−7;エチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;レバプレン600HV、セグメントの質量比率;エチレン/酢酸ビニル=40質量%/60質量%、ランクセス株式会社製)
・C−8;エチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;レバプレン700HV、セグメントの質量比率;エチレン/酢酸ビニル=30質量%/70質量%、ランクセス株式会社製)
・C−9;エチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;レバプレン800HV、セグメントの質量比率;エチレン/酢酸ビニル=20質量%/80質量%、ランクセス株式会社製)
・C−10;エチレン−酢酸ビニル共重合体(グレード名;レバプレン900HV、セグメントの質量比率;エチレン/酢酸ビニル=10質量%/90質量%、ランクセス株式会社製)
フッ素系樹脂(A−1)を60質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を30質量%、相溶化剤(C−1)を10質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。
次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例1の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を50質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を30質量%、相溶化剤(C−1)を20質量%の割合に変更した以外は、実施例1と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−2)を9質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み150μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。
次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−3)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−4)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−5)を9質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み150μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2にまとめた。
フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−6)を9質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み150μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比52%(延伸倍率1.52倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比163%(延伸倍率2.63倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2にまとめた。
フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−8)を9質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み150μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2にまとめた。
実施例8で得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表1にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−9)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−10)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表2にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を74質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を17質量%、相溶化剤(C−7)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を27質量%、相溶化剤(C−7)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を57質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を25質量%、相溶化剤(C−7)を18質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を50質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を23質量%、相溶化剤(C−7)を27質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
実施例3の配合を、フッ素系樹脂(A−1)を64質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−2)を27質量%、相溶化剤(C−7)を9質量%の割合に変更した以外は、実施例3と同様の条件で、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表3にまとめた。
スチレン系熱可塑性エラストマー、及び、相溶化剤を添加せず、フッ素系樹脂(A−1)単体を、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表4に記載したようにフィルムが破断した。
比較例1で得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比25%(延伸倍率1.25倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比100%(延伸倍率2.00倍)を掛けて高温延伸を行ったが、得られたMD延伸フィルムは鱗状のムラが見られた。得られたフィルムの評価結果を表4にまとめた。
フッ素系樹脂(A−1)を40質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を30質量%、相溶化剤(C−1)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表4に記載したようにフィルムが破断した。
フッ素系樹脂(A−1)を30質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を30質量%、相溶化剤(C−1)を40質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行ったところ、表4に記載したようにフィルムが破断した。
フッ素系樹脂(A−1)を41質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を50質量%、相溶化剤(C−7)を9質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形しようとしたが、Tダイより吐出された溶融樹脂が流れにくく、キャストロールで引き取る際に、シートがちぎれてしまい、表4に記載したように未延伸シート状物が得られなかった。
相溶化剤を添加せず、フッ素系樹脂(A−1)を70質量%、スチレン系熱可塑性エラストマー(B−1)を30質量%の割合で配合し、2軸押出機(スクリュー径25mmφ)に投入し、設定温度200℃で溶融混練後、Tダイにてシート状に賦形した後、100℃に設定したキャストロールにて冷却固化を行い、厚み100μmの未延伸シート状物を得た。
その後、得られた未延伸シート状物を、20℃に設定したロール(X)と40℃に設定したロール(Y)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50倍)を掛けて低温延伸を行った。次いで、115℃に設定したロール(P)と115℃に設定したロール(Q)間において、ドロー比50%(延伸倍率1.50)を掛けて高温延伸を行い、MD延伸多孔フィルムを得た。
次いで、得られたMD延伸多孔フィルムを、京都機械社製フィルムテンター設備にて、予熱温度145℃、予熱時間12秒間で予熱した後、延伸温度145℃、延伸時間6秒間で2.1倍横方向に延伸した後、160℃で18秒間熱処理を行い、二軸延伸多孔フィルムを得た。得られたフィルムの評価結果を表4にまとめた。
一方、フッ素系樹脂単体からなる比較例1では、フィルムが破断し、比較例2では、一部白化する箇所は見られるものの、鱗状のムラが生じる。すなわち、フッ素系樹脂単体では、低温延伸特性や多孔体の均一化に課題が残ることがわかった。
また、フッ素系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーと相溶化剤の混合樹脂組成比において、本発明が規定するフッ素系樹脂の混合樹脂組成比率が逸脱した比較例3や、本発明が規定するフッ素系樹脂、及び、相溶化剤の混合樹脂組成比率が逸脱した比較例4にでは、フィルムが破断し、多孔フィルムが得られなかった。これは、未延伸シートを形成する樹脂組成物のマトリックスをフッ素系樹脂が構築するにあたり、フッ素系樹脂の混合樹脂組成比率が不十分であるためと考えられる。
さらに、フッ素系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーと相溶化剤の混合樹脂組成比において、本発明が規定するフッ素系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーの混合樹脂組成比率が逸脱した比較例5では、未延伸シート状物が得られなかった。これは、スチレン系熱可塑性エラストマーの重量比が45質量%を超える為、スチレン系熱可塑性エラストマーが海島構造のマトリックスとして形成されることに起因すると考えられる。
他方、本発明が規定する相溶化剤を用いていない参考例では、非常に優れた透気性と高い空孔率を有している多孔フィルムが得られているものの、走査型電子顕微鏡(SEM)によるTD方向に切った断面の観察写真(図4)を、実施例5や実施例13のTD方向に切った断面の観察写真(図2、3)と比較すると粗大な多孔構造が形成されていることが観察された。
参考例の多孔フィルムは、非常に優れた透気性と高い空孔率を有することを求められる用途に適している。一方、本発明のフッ素系樹脂多孔体は、参考例の多孔フィルム程ではないが実用上優れた透気性を維持しつつ、特に均一かつ緻密な多孔構造を要求されるような用途に極めて有用である。
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極
Claims (10)
- フッ素系樹脂(A)を主成分とし、かつ、スチレン系熱可塑性エラストマー(B)、及び、相溶化剤(C)を含有する樹脂組成物からなる多孔層を少なくとも一層有し、当該多孔層が、少なくとも一軸方向に延伸されることにより多孔化された層であって、前記フッ素系樹脂(A)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)と前記相溶化剤(C)の混合組成比が(A)/(B)/(C)=45質量%〜98質量%/1質量%〜45質量%/1質量%〜30質量%(ただし(A)と(B)と(C)の合計質量%を100質量%とする。)であり、前記相溶化剤(C)が、前記フッ素系樹脂(A)に親和性を有するセグメント(x)と、前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)に親和性を有するセグメント(y)を分子骨格内に有する熱可塑性樹脂であることを特徴とするフッ素系樹脂多孔体。
- 前記セグメント(x)が、ポリ酢酸ビニル系セグメント、及び/又は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系セグメントであることを特徴とする請求項1に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 前記セグメント(y)が、ポリオレフィン系セグメント、及び/又は、ポリスチレン系セグメントであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 前記相溶化剤(C)が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びスチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の重量平均分子量(Mw)が150,000以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、温度230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が30g/10分以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 前記スチレン系熱可塑性エラストマー(B)の、スチレン含有量が1質量%以上、55質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 前記フッ素系樹脂(A)が、ポリフッ化ビニリデン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載のフッ素系樹脂多孔体を用いてなる電池用セパレータ。
- 請求項9に記載の電池用セパレータを用いてなる電池。
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