JP4734397B2 - 積層多孔性フィルム、それを利用したリチウムイオン電池用セパレータ、および電池 - Google Patents

積層多孔性フィルム、それを利用したリチウムイオン電池用セパレータ、および電池 Download PDF

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Description

本発明は積層多孔性フィルムに関し、包装用品、衛生用品、畜産用品、農業用品、建築用品、医療用品、分離膜、光拡散板、電池用セパレータとして利用でき、特に各種電子機器等の電源として利用されるリチウムイオン二次電池等の非水電解質電池用セパレータとして好適に用いられるものである。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは電池などに使用する電池セパレータなど各種の分野で利用されている。
特に二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化および軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。
非水電解液用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点からセパレータが正極と負極の間に介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすためセパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
最近の電池の高容量化に伴い、電池の安全性に対する重要度が増してきている。
電池用セパレータの安全に寄与する特性として、シャットダウン特性(以後、「SD特性」と称す)がある。このSD特性は、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。この時、積層多孔性フィルムの微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度(以後、「SD温度」と称す)という。
電池用セパレータとして使用する場合は、このSD特性を具備していることが必要である。
安全に寄与するもう一つの特性としてブレイクダウン特性(以後、「BD特性」と称す)がある。このBD特性は、SD特性の発現によっても発熱が収まらず、より高温(160℃以上)の状態となった場合でも、フィルムが破膜せず、正極と負極を隔て続けるという機能である。BD特性を有すれば高温になっても絶縁を保ち、電極間の広範囲な短絡を防止することができるため、電池の異常発熱による発火等の事故を防止できる。そのため、電池用セパレータとして使用する場合はこのBD特性も具備していることが好ましく、ブレイクダウン温度はより高い温度であることが好ましい。
このような要望に対して、特許2883726号公報(特許文献1)ではポリエチレンとポリプロピレンの積層フィルムを一軸方向に温度を変えて二段階で延伸することにより多孔質化せしめることを特徴とする電池用セパレータの製造方法が提案されている。
一方、β晶を含むポリプロピレンシートを延伸して多孔性フィルムを得る方法が種々提案されている。この多孔性フィルムの製造方法の特徴はβ晶を利用することにより多孔構造を得ることであり、延伸前のシートにβ晶が多く含まれる方が延伸して多孔構造を得るには好ましい。また、この方法は一般的な二軸延伸の方法であり、多孔性フィルムを得る方法としては生産性が非常に良い点でも特徴がある。
例えば、特許1953202号公報(特許文献2)では、ポリプロピレンにフィラーとβ晶核剤を所定量含有させた樹脂組成物をシート化し、特定の延伸条件で延伸することにより多孔性フィルムを得る製造方法が提案されている。また、特許2509030号公報(特許文献3)では、β晶含有率が高い(K>0.5)オリジナルポリプロピレンフィルムより二軸延伸して得られる超透過性ポリプロピレンのミクロポーラスフィルムが提案されている。また、特許3443934号公報(特許文献4)では、ポリプロピレンに特定のアミド系化合物を含有させて、特定条件で結晶化してβ晶を含む固化物を得、これを延伸することによりポリプロピレン製多孔性フィルムを製造する方法が提案されている。
特許2883726号公報 特許1953202号公報 特許2509030号公報 特許3443934号公報
しかしながら、前記特許文献1の製造方法では、厳密な製造条件の制御を必要とし、かつ生産性が良いとは言い難い。例えば、多孔質化する前の積層フィルムの作成時に高いドラフト比で高次構造を制御しながら製膜を行っているが、このような高いドラフト比で安定的な製膜を行うことは困難である。また、多孔構造の発現を行うためには低温度領域と高温度領域の2段階でかつ小さい延伸速度で多段延伸を行う必要があり、延伸速度が大きく制限され、生産性が悪くなる。さらに、当該製造方法により製造されたセパレータは延伸方向の引き裂きに非常に弱く、延伸方向に裂け目が生じやすいという問題点がある。
また、前記特許文献2〜4のポリプロピレン多孔性フィルムは、ポリプロピレンの結晶融解温度が高いことからBD特性においてはポリエチレン多孔性フィルムよりも優れている。しかしながら、前記特性が逆に災いしてSD特性については全く発揮し得ない為、これらの多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用するには電池の安全性を確保するという点で問題があった。
そこで本発明は、前記問題に鑑みてなされたもので、二次加工性において引き裂きを抑制することができ、力学特性のバランスのとれた積層多孔性フィルムを提供することを目的としている。
本発明は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層とを含み、かつ、β活性を有する積層多孔性フィルムであり、前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引裂強度(HMD)と、MDに対して垂直な方向(TD)の引裂強度(HTD)との比(HMD/HTD)が、0.08〜2.0であることを特徴とする積層多孔性フィルムである。
本発明のセパレータ用積層多孔性フィルムの少なくとも1層は、β活性を有するものとしているため、微細な多孔質層を設けることができ、優れた透気特性を発揮させることができる。
本発明のセパレータ用積層多孔性フィルムにおいて、「β活性」の有無は、後述する示差走査型熱量計によりβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出された場合、もしくは、後述する広角X線回折測定装置を用いた測定により、β晶に由来する回折ピークが検出された場合、β活性を有すると判断している。
前記β活性は、本発明の積層多孔性フィルムが前記A層及び前記B層のみで構成される場合、さらに他の多孔質層が積層される場合のいずれにおいても積層多孔性フィルムの状態で測定している。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、引裂強度HMDが4.5N/cm以上であることが好ましい。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、MDの引張強度(TMD)と、TDの引張強度(TTD)との比(TMD/TTD)が、0.5〜10で、引張強度TTDが、30kg/cm以上であることが好ましい。
また前記B層に、変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスから選ばれる化合物(X)のうち少なくとも1種が含まれていることが好ましい。
空孔率が10〜80%であり、25℃での透気度が10〜1000秒/100mlであり、かつ、135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上であることを特徴とする多孔性フィルムであることが好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を含有するB層とを有し、かつ、β活性を有する積層多孔性フィルムであり、25℃での透気度が1000秒/100ml以下であり、かつ、135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上である。ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を主成分とするB層とを含んでいるので、従来のポリプロピレン系樹脂製の積層多孔性フィルムのブレイクダウン特性を維持したまま、適切な温度範囲で孔が閉塞するシャットダウン特性を備えており、リチウムイオン電池用セパレータとして有用である。
さらに本発明の積層多孔性フィルムは、ポリプロピレン系樹脂のβ晶を含有する膜状物を延伸することにより製造されるため、微細孔を形成させることができ、十分な連通性を確保することができる。また、前記A層で強度を保持することができるので、引裂強度や引張強度などの機械的強度においても優れている。そのため、構造維持や耐衝撃性の観点からもリチウムイオン電池用セパレータに有用である。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、厳密な製造条件の制御を必要とせず、簡便にかつ効率よく生産することができる。
以下、本発明の積層多孔性フィルムの実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。
本実施形態の積層多孔性フィルムは、少なくとも2層の多孔質層を積層した積層多孔性フィルムであり、前記2層の多孔質層のうち1層がポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層であり、他の1層がポリエチレン系樹脂を含有するB層であり、かつ、該積層多孔性フィルムはβ活性を有している。
本発明の積層多孔性フィルムは、前記β活性を有することを重要な特徴としている。
β活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、透気特性を有する積層多孔性フィルムを得ることができる。
前記積層多孔性フィルムのβ活性の有無は、示差走査型熱量計を用いて、積層多孔性フィルムの示差熱分析を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出されるか否かで判断している。
具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β活性を有すると判断している。
また、前記積層多孔性フィルムのβ活性度は、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算している。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上175℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
積層多孔性フィルムのβ活性度は大きい方が好ましく、β活性度は20%以上であることが好ましい。40%以上であることがさらに好ましく、60%以上であることが特に好ましい。積層多孔性フィルムが20%以上のβ活性度を有すれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂のβ晶が多く生成することができることを示し、延伸により微細かつ均一な孔が多く形成され、結果として電気性能に優れた積層多孔性フィルムとすることができる。
β活性度の上限値は特に限定されないが、β活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
前記β活性の有無は、特定の熱処理を施した積層多孔性フィルムの広角X線回折測定により得られる回折プロファイルでも判断することができる。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させたセパレータ用積層多孔性フィルムについて広角X線回折測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合、β活性があると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折測定に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。β活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
前述した積層多孔性フィルムのβ活性を得る方法としては、前記A層の樹脂組成物のポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び前記A層の樹脂組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
中でも、前記A層の樹脂組成物にβ晶核剤を添加してβ活性を得ることが特に好ましい。β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進させることができ、β活性を有する多孔質層を備えた積層多孔性フィルムを得ることができる。
以下に、本発明の積層多孔性フィルムを構成する各層の成分の詳細について説明する。
[A層の説明]
まず、A層について以下に詳細に説明する。
(ポリプロピレン系樹脂の説明)
A層に含まれるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔性フィルムの機械的強度の観点からはホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜99%、更に好ましくは85〜99%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとフィルムの機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠している。
また、ポリプロピレン系樹脂は、分子量分布を示すパラメータである多分散度(重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比、Mw/Mnで表される)が1.5〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが1.5未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、積層多孔性フィルムの機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって得られる。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.1〜15g/10分であることが好ましく、0.5〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.1g/10分未満では成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く生産性が低下する。一方、15g/10分を超えるとフィルムの機械的強度が不足するため実用上問題が生じやすい。
MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
(β晶核剤の説明)
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほかの核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
市販されているβ晶核剤の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
前記ポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対しβ晶核剤0.0001〜5.0質量部が好ましい。0.001〜3.0質量部がより好ましく、0.01〜1.0質量部が更に好ましい。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成・成長させ、十分なβ活性が確保でき、積層多孔性フィルムとした際にも十分なβ活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。一方、5.0質量部以下の添加であれば、経済的にも有利になるほか、フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
前記A層はポリプロピレン系樹脂が主成分であることが重要である。具体的には、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤を用いる場合はポリプロピレン系樹脂とβ晶核剤の総和質量がA層の全質量に対して70質量%以上、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上を占める。
A層には、前述のような本発明の目的やA層の特性を損なわない程度の範囲で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤または他の成分を含んでいてもよい。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、酸化防止剤として、ハロゲン化銅、芳香族アミン等のアミン系酸化防止剤、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。市販されているものとしては、「IRGANOX B225」(チバスペシャルティケミカルズ社製)がある。他にも、「プラスチックス配合剤」のP178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤などが挙げられる。
[B層の説明]
次に、B層について説明する。
(ポリエチレン系樹脂の説明)
本発明のB層はポリエチレン系樹脂を含有することを特徴としている。B層は厚み方向に連通性を有する微細孔を多数有し、かつ前述したようにポリエチレン系樹脂を含有する組成物から構成されるのであれば、いかなる構造・構成を有していてもよい。例えば、ポリエチレン系樹脂組成物からなる膜状物に前記微細孔が設けられている構造であってもよいし、粒子状もしくは繊維状の微小物が凝集して層を成し、微小物同士の間隙が前記微細孔となっている構造であってもよい。本発明のB層は、均一な微細孔を形成でき、かつ空孔率等の制御を行いやすい前者の構造を有することが好ましい。
B層に含まれているポリエチレン系樹脂は、その熱的特性が重要である。すなわち、B層を構成する組成物の結晶融解ピーク温度が前記A層を構成する組成物の結晶融解ピーク温度よりも低くなるようにポリエチレン系樹脂を選択する必要がある。具体的には、B層は結晶融解ピーク温度が100℃以上150℃以下であるポリエチレン系樹脂が好ましい。
この結晶融解ピーク温度は、JIS K7121に準拠して、示差走査型熱量計を用いて、25℃から加熱速度10℃/分で昇温させた際の結晶融解温度のピーク値である。
前記ポリエチレン系樹脂の種類として、具体的に超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、または超高密度ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂単独だけでなく、エチレンプロピレン共重合体、またはポリエチレン系樹脂と他のポリオレフィン系樹脂との混合物が挙げられる。中でも、ポリエチレン系樹脂単独が好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cmであることが好ましく、0.930〜0.970g/cmであることがより好ましく、0.940〜0.970g/cmであることが更に好ましい。密度が0.910g/cm以上であれば、リチウムイオン電池用セパレータとして用いる場合、適度なSD特性を有するB層を形成することができるため好ましい。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を有するだけでなく、延伸性が維持される点で好ましい。密度の測定は、密度勾配管法を用いるJIS K7112に準じて測定することができる。
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常MFRは0.03〜15g/10分であることが好ましく、0.3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば、混合するポリプロピレン系樹脂の溶融粘度に近いため、成形加工において安定した積層多孔性フィルムを得ることができる。一方、15g/10分以下であれば、成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため、製造上において好ましい。
なお、ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
(化合物(X)の説明)
B層には多孔化を促進させる物質を添加することが好ましい。中でも、B層には変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスから選ばれる化合物(X)のうち少なくとも1種が含まれていることがより好ましい。前記化合物(X)を添加することにより、より効率的に多孔構造を得ることができ、孔の形状や孔径を制御しやすくなる。
本発明における変性ポリオレフィン樹脂とは、不飽和カルボン酸又はその無水物、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸あるいはこれらの誘導体のモノエポキシ化合物と前記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物などが挙げられる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの中でも、無水マレイン酸がより好ましく用いられる。また、これらの共重合体は、各々単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
また、シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシランなどを挙げることができる。
変性ポリオレフィン樹脂を製造するには、例えば、予めポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、一旦重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。また変性はこれらの変性モノマーを単独で又は複数を併用し、その含有率が0.1質量%以上5質量%以下の範囲のものが好適に使用される。この中でもグラフト変性したものが好適に用いられる。
市販されている変性ポリオレフィン系樹脂を例示すれば、例えば「アドマー」(三井化学社製)、「モディック」(三菱化学社製)などが挙げられる。
脂環族飽和炭化水素樹脂及びその変性体について、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、クマロン−インデン樹脂、及びそれらの変性体等が挙げられる。
本発明における石油樹脂とは、ナフサの熱分解などによる副生物から得られるC4〜C10の脂肪族オレフィン類やジオレフィン類、オレフィン性不飽和結合を有するC8以上の芳香族化合物で、それらの中に含まれる化合物の一種又は二種以上を単独若しくは共重合することにより得られる脂肪族系、 芳香族系及び共重合系石油樹脂を言う。
石油樹脂としては、例えばC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主原料とする芳香族系石油樹脂、それらの共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂がある。テルペン樹脂としてはβ−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が、またロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリスリトールで変性したエステル化ロジン樹脂などが例示できる。脂環族飽和炭化水素樹脂及びその変性体はポリエチレン系樹脂に混合した場合に比較的良好な相溶性を示すが、色調や熱安定性といった面から石油樹脂がより好ましく、水添石油樹脂を用いることが更に好ましい。
水添石油樹脂は、石油樹脂を慣用の方法によって水素化することにより得られるものである。例えば、水素化脂肪族系石油樹脂、水素化芳香族系石油樹脂、水素化共重合系石油樹脂及び水素化脂環族系石油樹脂、並びに水素化テルペン系樹脂が挙げられる。水添石油樹脂の中でも、水素化脂環族系石油樹脂で、シクロペンタジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とを共重合して水素添加したものが特に好ましい。市販されている水添石油樹脂としては、「アルコン」(荒川化学工業社製)などが挙げられる。
本発明におけるエチレン系共重合体とは、エチレンと、酢酸ビニル、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物、またはカルボン酸エステル等の中から1種類以上とを共重合させることにより得られる化合物である。
エチレン系共重合体は、エチレン単量体単位の含有率が好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。一方、上限については、エチレン単量体単位の含有率が好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下であることが望ましい。エチレン単量体単位の含有率が所定の範囲内であれば、より効率的に多孔構造を形成することができる。
前記エチレン系共重合体は、MFRが0.1g/10分以上10g/10分以下のものが好適に用いられる。MFRが0.1g/10分以上であれば、押出加工性を良好に維持でき、一方、MFRが10g/10分以下で有ればフィルムの強度低下を起こしにくく、好ましい。
前記エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体として「EVAFLEX」(三井・デュポン ポリケミカル社製)、「ノバテックEVA」(日本ポリエチレン社製)、エチレン−アクリル酸共重合体として「NUCコポリマー」 (日本ユニカー社製)、「エバフレックス−EAA 」(三井・デュポンポリケミカル社製)、「REXPEARL EAA」(日本エチレン社製)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体として「ELVALOY」(三井・デュポンポリケミカル社製)、「REXPEARL EMA」(日本エチレン社製)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体として「REXPEARL EEA」(日本エチレン社製)、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸共重合体として「アクリフト」(住友化学社製)、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体として「ボンダイン」(住友化学社製)、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体として「ボンドファースト」(住友化学社製)などが商業的に入手できる。
本発明におけるワックスとは、以下の(ア)および(イ)の性質を満たす有機化合物のことである。
(ア)融点が40℃〜200℃である。
(イ)融点より10℃高い温度での溶融粘度が50Pa・s以下である。
ワックスについて、極性または非極性ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス及びワックス改質剤を含む。具体的には、極性ワックス、非極性ワックス、フィッシャー−トロプシュワックス、酸化フィッシャー−トロプシュワックス、ヒドロキシステアロマイドワックス、機能化ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ワックス改質剤、アモルファスワックス、カルナウバワックス、キャスター・オイルワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜蝋、カルナウバ蝋、キャスターワックス、植物蝋、カンデリラ蝋、日本蝋、ouricuryワックス、ダグラスファーバーク・ワックス、米ぬかワックス、ホホバワックス、ヤマモモワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、石油蝋、パラフィンワックス、化学変性炭化水素ワックス、置換アミドワックス、及びこれらの組み合わせ及び誘導体が挙げられる。中でも多孔構造を効率的に形成できる点から、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスが好ましく、SD特性の観点より孔径をより微小化できるマイクロクリスタリンワックスが更に好ましい。市販されているポリエチレンワックスとしては「FT−115」(日本精蝋社製)、マイクロクリスタリンワックスとしては「Hi−Mic」(日本精蝋社製)などが挙げられる。
前記化合物(X)のうち、リチウムイオン電池用セパレータとして用いる場合、SD特性がより効果的に働くものとして脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスがより好ましく、成形性の観点からワックスが更に好ましい。
前記化合物(X)の配合量は、ポリエチレン系樹脂と化合物(X)との界面を剥離させて微細孔を形成させる場合、B層に含まれるポリエチレン系樹脂100質量部に対し、下限として1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。一方、上限として50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下が更に好ましい。前記化合物(X)の配合量がポリエチレン系樹脂100質量部に対し、1質量部以上とすることで、目的とする良好な多孔構造が発現する効果が十分に得られる。また、化合物(X)の配合量が50質量部以下とすることで、より安定した成形性を確保することができる。
B層においては、必要に応じてポリエチレン系樹脂や多孔化を促進させる化合物(X)以外に、積層多孔性フィルムの熱特性、具体的にはSD特性を損なわない範囲で熱可塑性樹脂を用いても良い。前述のポリエチレン系樹脂との混合させることができる他の熱可塑性樹脂としては、スチレン、AS樹脂、もしくはABS樹脂等のスチレン系樹脂:ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートもしくはポリアリレート等のエステル系樹脂;ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンもしくはポリフェニレンサルファイド等のエーテル系樹脂;6ナイロン、6−6ナイロン、6−12ナイロン等のポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
またB層には、必要に応じて熱可塑性エラストマー等のゴム成分と呼ばれているものを添加しても良い。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン・ブタジエン系、ポリオレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、1,2−ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル系、アイオノマーなどが挙げられる。
B層においては、ポリエチレン系樹脂や多孔化を促進させる化合物(X)以外に、一般に樹脂組成物に配合される添加剤または他の成分を含んでいてもよい。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
中でも、核剤はポリエチレン系樹脂の結晶構造を制御し、延伸開孔時の多孔構造を細かくするという効果があるため好ましい。市販されているものとして、「ゲルオールD」(新日本理化社製)、「アデカスタブ」(旭電化工業社製)、「Hyperform」(ミリケンケミカル社製)、または「IRGACLEAR D」(チバスペシャルティケミカルズ社製)等が挙げられる。また、核剤の添加されたポリエチレン系樹脂の具体例としては、「リケマスター」(理研ビタミン社製)等が商業的に入手できる。
[積層構造の説明]
本発明の積層多孔性フィルムの積層構成について説明する。
基本的な構成となるA層とB層が少なくとも存在すれば特に限定されるものではない。最も単純な構成がA層とB層の2層構造、次に単純な構造が両外層と中層の2種3層構造であり、これらは好ましい構成である。2種3層の形態の場合、A層/B層/A層であってもB層/A層/B層であっても構わない。また、必要に応じて他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
A層とB層との総厚み比については、A層/B層の値が0.05〜20であることが好ましく、0.1〜15であることがより好ましく、0.5〜12であることが更に好ましい。A層/B層の値が0.05以上とすることで、A層のBD特性及び強度を十分に発揮することができる。また20以下とすることで、例えば電池に適用した時にSD特性が十分に発揮することができ、安全性を確保することができる。また、A層およびB層以外の他の層が存在する場合、他の層の厚みの合計は全体の厚み1に対して0.05〜0.5が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。
[積層多孔性フィルムの形状および物性の説明]
積層多孔性フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、製品として数丁取りが可能であることから生産性がよく、さらに内面にコートなどの処理が可能できること等の観点から、平面状がより好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの厚みは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。一方で下限として、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。リチウムイオン電池用セパレータとして使用する場合、厚みが50μm以下であれば、積層多孔性フィルムの透気特性を十分に発現することができるため電気抵抗を小さくでき、電池の性能を十分に確保することができる。また、厚みが5μm以上あれば、リチウムイオン電池用セパレータとして必要な強度を維持できるとともに実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
本発明の積層多孔性フィルムの物性は、A層またはB層の組成、積層数や積層比、他の性質の層との組み合わせ、製造方法によって自由に調整できる。
本発明の積層多孔性フィルムのSD温度は、下限として100℃以上が好ましく、110℃がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。一方で上限として140℃以下が好ましい。100℃未満でSD特性が発現してしまうと、例えば本発明の積層多孔性フィルムをリチウムイオン電池用セパレータとして使用し、その電池が夏場に自動車車内に放置された場合に、場所によっては100℃近くまで上昇する可能性があるので、この状態で電池としての機能しなくなることは好ましくない。一方、140℃より高い温度の場合は、電池として安全性を確保するという意味では不十分である。
SD温度を調整する手段としては、B層に含まれる熱可塑性樹脂として希望するSD温度に近い結晶融解ピーク温度を有する熱可塑性樹脂を選択する、またはB層の厚みを相対的に増減させるなどの手段が有効である。
(25℃での透気度)
本発明の積層多孔性フィルムは、25℃での透気度は1000秒/100ml以下であることが好ましく、より好ましくは800秒/100ml以下、更に好ましくは600秒/100ml以下である。1000秒/100ml以下とすることで、リチウムイオン電池用セパレータとして使用する場合、室温使用時に十分に優れた電池性能を有することができる。
また、積層多孔性フィルムの25℃での透気度が低いということは、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時に電荷の移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。一方、下限については特に限定しないが、10秒/100ml以上が好ましく、より好ましくは50秒/100ml以上、更に好ましくは100秒/100ml以上である。25℃での透気度が10秒/100ml以上であれば、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時において、内部短絡等のトラブルを回避することができる。
(135℃で5秒間加熱後の透気度)
本発明の積層多孔性フィルムは、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には135℃で5秒間加熱した後の透気度は10000秒/100ml以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100ml以上、さらに好ましくは50000秒/100ml以上である。135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
また、前記SD特性は、空孔率や孔径に左右される。以下の内容に限られないが、例えば、ポリエチレン系樹脂に化合物(X)を加え、前記化合物(X)の種類や配合量を調整すること、若しくは、核剤を添加してポリエチレン系樹脂の結晶を微小化することによって、135℃で5秒間加熱した後の透気度を制御することができる。
また、製造方法において、延伸倍率や延伸温度を調整することによって、135℃で5秒間加熱後の透気度を10000秒/100ml以上とすることが可能である。
空孔率は多孔構造を規定する為の重要なファクターであって、フィルム中の空間部分の割合を示す数値である。本発明の積層多孔性フィルムにおいては、空孔率が15%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。一方で、上限については80%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、65%以下が更に好ましい。空孔率が15%以上であれば、連通性を十分に確保し透気特性に優れた積層多孔性フィルムとすることができる。また、空孔率が80%以下であれば、積層多孔性フィルムの機械的強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、フィルムの流れ方向(以後、「MD」と称する)、およびフィルムの流れ方向と垂直方向(以後、「TD」と称する)の力学特性のバランスが重要である。
一般に、延伸により製造される積層多孔質フィルムにおいては、製造方法によって力学特性のバランスは大きく変わる。
例えば、MDに強く配向するように延伸された多孔質フィルムの場合、MDの引張弾性率および引張強度に優れる一方で、MDの引裂強度やTDの引張強度はしばしば低下する。反対にTDに強く配向するように延伸された積層多孔質フィルムの場合、TDの引張弾性率および引張強度に優れる一方で、TDの引裂強度やMDの引張強度はしばしば低下する。
MDとTDとの二軸延伸をした場合も、MDおよびTDの延伸倍率や延伸温度によって力学特性は大きく変化する。
種々の力学特性を好適に有する多孔性フィルムにおいて、MDの引裂強度(HMD)とTDの引裂強度(HTD)との比(HMD/HTD)は、0.08〜2.0であることが重要である。
MD/HTDが0.08以上であることによって、MDへの裂けやすさを抑制することができるため、二次加工における裂け、並びに突起物接触時のMDへの裂けを抑制できるだけでなく、カッター等の刃物でTDへフィルムをカットしやすくなるという効果がある。好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.13以上である。
一方で、HMD/HTDの上限は2.0以下であることによって、MDとTDの力学特性のバランスを十分に保つことができ、多孔構造を等方的に形成できる。さらに、MDの引張弾性率を十分に得ることができるため、ロールから巻き出す際などにかかる張力でフィルムが伸びにくくなり、二次加工を行う上では好ましい。好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.5以下である。
またHMDについて、4.5N/cm以上であることが好ましく、より好ましくは5.5N/cm以上である。前記HMDが4.5N/cm以上であることによって、MDへの裂けやすさを抑制できる。上限値としては特に無いが、前記HMD/HTDが前述の範囲から外れない範囲が好ましい。
MDの引張強度(TMD)とTDの引張強度(TTD)との比(TMD/TTD)は、0.5〜10であることが好ましい。
MD/TTDが0.5以上であることによって、MDとTDの力学特性のバランスを保つことができ、多孔構造を等方的に形成できるだけでなく、MDの引張弾性率も十分に得ることができる。より好ましくは1.0以上であり、さらに好ましくは2.0以上である。
一方で、TMD/TTDが10以下であることによって、MDへの裂けやすさを十分に抑制することができる。より好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。
またTTDについて、30MPa以上であることが好ましく、より好ましくは35MPa以上である。TTDが30MPa以上であれば、フィルムのハンドリングにおいて十分な強度である。一方、上限は特に限定しないが、前記TMD/TTDが前述の範囲から外れない範囲が好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムは、ハンドリングにおいてMDの力学特性が重要であり、MDの3%伸張時の引張弾性率は500MPa以上が好ましく、より好ましくは700MPa以上である。
MDの3%伸張時の引張弾性率が500MPa以上であることによって、ロールからの巻き出し、または二次加工における張力による変形が少なく、フィルムの折れや皺が発生しにくい。一方、上限は特に限定しないが、柔軟性等の物性を十分に保持することができる範囲として、6000MPa以下が好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムは、二軸延伸により得ることが好ましい。二軸延伸によって異方性が小さくなり、物性的なバランスが十分に取れた積層多孔性フィルムを得ることができる。
また本発明の積層多孔性フィルムは、他の物性もA層、B層を構成する樹脂組成物の組成、層構成、製造方法などによって自由に調整することができる。
[製造方法の説明]
次に本発明の積層多孔性フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造される積層多孔性フィルムのみに限定されるものではない。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、多孔化と積層の順序によって次の3つに大別される。
(a)ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層の多孔性フィルム(以後、「多孔性フィルムPP」と称する)と、ポリエチレン系樹脂を含有するB層の多孔性フィルム(以後、「多孔性フィルムPE」と称する)を作製し、ついで少なくとも多孔性フィルムPPと多孔性フィルムPEを積層する方法。
(b)ポリプロピレン系樹脂を主成分とする膜状物(以後、「無孔膜状物PP」と称する)とポリエチレン系樹脂を主成分とする膜状物(以後、「無孔膜状物PE」と称する)の少なくとも2層からなる積層無孔膜状物を作製し、ついで該無孔膜状物を多孔化する方法。
(c)ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層とポリエチレン系樹脂を含有するB層の2層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
前記(a)の方法としては、多孔性フィルムPPと多孔性フィルムPEをラミネートする方法や接着剤等で積層化する方法が挙げられる。
前記(b)の方法としては、無孔膜状物PPと無孔膜状物PEをそれぞれ作製し、無孔膜状物PPと無孔膜状物PEをラミネートや接着剤等で積層した後に多孔化する方法、または、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法などが挙げられる。
前記(c)の方法としては、多孔性フィルムPPと無孔膜状物PE、または無孔膜状物PPと多孔性フィルムPEをラミネートする方法や接着剤等で積層化する方法が挙げられる。本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(b)の方法が好ましく、共押出を用いる方法がより好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、前記分類とは別にB層の多孔化方法により分類することもできる。
すなわち、A層はβ活性を有する場合、延伸することにより微細孔を容易に形成することができる。一方、B層を多孔化する方法としては、例えば延伸法、相分離法、抽出法、化学処理法、照射エッチング法、発泡法、またはこれらの技術の組み合わせなど公知の方法を用いることができる。なかでも本発明においては延伸法を用いることが好ましい。
前記延伸法とは、樹脂に化合物を混合した組成物を用いて無孔層または無孔膜状物を形成し、延伸することにより樹脂と化合物の界面を剥離させて微細孔を形成する方法である。前記相分離法は、転換法またはミクロ相分離法とも呼ばれる技術で、高分子溶液の相分離現象に基づき細孔を形成する方法である。具体的には、(a)高分子の相分離により微細孔を形成する方法、(b)重合時に微細孔を形成させながら多孔化する方法に大別される。前者の方法としては溶媒を用いる溶媒ゲル化法と熱溶融急冷凝固法があり、いずれを用いてもよい。
前記抽出法では、後工程で除去可能な添加剤を、B層を構成する熱可塑性樹脂組成物に混合し、無孔層または無孔膜状物を形成したのち前記添加剤を薬品などで抽出して微細孔を形成する方法である。添加剤としては高分子添加剤、有機物添加剤、無機物添加剤などが挙げられる。
高分子添加剤を用いた例としては、有機溶媒に対する溶解性が異なる2種のポリマーを用いて無孔層または無孔膜状物を形成し、前記2種のポリマーのうち一方のポリマーのみが溶解する有機溶媒に浸漬して該一のポリマーを抽出する方法が挙げられる。より具体的にはポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルからなる無孔層または無孔膜状物を形成し、アセトンおよびn−ヘキサンを用いてポリ酢酸ビニルを抽出する方法、または、ブロックあるいはグラフト共重合体に親水性重合体を含有させて無孔層または無孔膜状物を形成し、水を用いて親水性重合体を除去する方法などが挙げられる。
有機物添加剤を用いた例としては、B層を構成する熱可塑性樹脂が不溶である有機溶媒に可溶な物質を配合して無孔層または無孔膜状物を形成し、前記有機溶媒に浸漬して前記物質を抽出除去する方法が挙げられる。
前記物質としては、例えばステアリルアルコールもしくはセリルアルコールなどの高級脂肪族アルコール、n−デカンもしくはn−ドデカンなどのn−アルカン類、パラフィンワックス、流動パラフィンまたは灯油等が挙げられ、これらはイソプロパノール、エタノール、ヘキサンなどの有機溶媒で抽出できる。また、前記物質としてショ糖や砂糖などの水可溶性物質も挙げられ、これらは水で抽出できるため環境への負担が少ないという利点がある。
前記化学処理法は、高分子基体の結合を化学的に切断したり、逆に結合反応を行ったりすることにより、微細孔を形成する方法である。より具体的には、酸化還元剤処理、アルカリ処理、酸処理などの薬品処理により微細孔を形成する方法が挙げられる。
前記照射エッチング法は中性子線またはレーザーなどを照射して微小な穴を形成させる方法である。
前記融着法は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリマー微細パウダーを用い、成形後に前記ポリマー微細パウダーを焼結する方法である。
前記発泡法としては機械的発泡法、物理的発泡法、または化学的発泡法等があり、本発明においてはいずれも用いることができる。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法の好ましい態様としては、β活性を有するポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物と、ポリエチレン系樹脂および化合物(X)が含まれている樹脂組成物を用いて、A層とB層の少なくとも2層からなる積層無孔膜状物を作製し、前記積層無孔膜状物を延伸することにより厚み方向に連通性を有する微細孔を多数形成させることを特徴とする積層多孔性フィルムの製造方法が挙げられる。
積層無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて樹脂組成物を溶融し、Tダイから共押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
積層無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて二軸延伸を行うことが好ましい。
例として、A層を構成することになるβ活性を有するポリプロピレン系樹脂を主成分とする樹脂組成物と、B層を構成することになるポリエチレン系樹脂と化合物(X)とが含まれている樹脂組成物を用いて延伸法にて多孔化するように、Tダイから共押出により2種3層構成の積層無孔膜状物を作製し、前記積層無孔膜状物を二軸延伸することにより多孔化する積層多孔性フィルムの製造方法を以下に説明する。
A層を構成する樹脂組成物は、少なくともポリプロピレン系樹脂およびβ晶核剤を含有することが好ましい。これらの原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練した後、ペレット化する。
B層を構成する樹脂組成物を作製する場合、B層の説明で述べたポリエチレン系樹脂、化合物(X)および必要によりその他添加物等の原材料を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練した後、ペレット化する。
前記A層用樹脂組成物のペレットと前記B層用樹脂組成物のペレットを押出機に投入し、Tダイ共押出用口金から押出す。Tダイの種類としては、2種3層用マルチマニホールドタイプでも構わないし、2種3層用フィードブロックタイプでも構わない。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね150〜300℃が好ましく、180〜280℃の範囲であることが更に好ましい。150℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れて好ましい。一方、300℃以下では樹脂組成物の劣化を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は、本発明において非常に重要であり、延伸前の膜状物中のβ晶を生成・成長させ、膜状物中のβ晶比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させた膜状物中のβ晶比率を十分に増加させることができ好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、得られる延伸前の膜状物のβ晶比率は30〜100%に調整することが好ましい。40〜100%がより好ましく、50〜100%が更に好ましく、60〜100%が特に好ましい。延伸前の膜状物のβ晶比率を30%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性の優れた多孔性フィルムを得ることができる。
延伸前の膜状物のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレンのα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
ついで、得られた積層無孔膜状物を二軸延伸する。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。本発明の目的であるSD特性に優れた積層多孔性フィルムを作製する場合には、各延伸工程で延伸条件を選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。なお、膜状物の引き取り(流れ)方向(MD)への延伸を「縦延伸」といい、MDに対して垂直な方向(TD)への延伸を「横延伸」という。
逐次二軸延伸を用いる場合、縦延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。2倍以上で縦延伸を行うことで適度な空孔起点を発生させることができる。10倍以下で縦延伸を行うことで、適度な空孔起点を発現させることができる。
延伸温度は、用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、縦延伸での延伸温度は概ね0〜135℃、好ましくは15〜130℃で制御される。前記温度範囲であれば多孔構造の制御が容易であり、機械強度や収縮率などの諸物性のバランスがとりやすい。
さらに、0℃を下回ると延伸応力が非常に強くなるため延伸破断をしやすく、またロールで延伸する場合、設備への負荷が大きい、ロールと延伸前膜状物との密着性が悪くなるため延伸ムラが発生しやすいといった問題が生じる。一方、135℃を越えるとB層中のポリエチレン系樹脂が流動するため安定的な延伸が難しくなる。
横延伸での延伸倍率は好ましくは1.1〜10倍、より好ましくは1.2〜8倍、更に好ましくは1.4〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができるとともに、物性のバランスをとりやすくなる。
横延伸での延伸温度は概ね80〜150℃、好ましくは90〜140℃である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。また、前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がより好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
このようにして得られた積層多孔性フィルムは、寸法安定性の改良等を目的として好ましくは100〜150℃程度、より好ましくは110〜140℃程度の温度で熱処理を行う。熱処理工程中には、必要に応じて1〜25%の弛緩処理を施しても良い。この熱処理後均一に冷却して巻き取ることにより、本発明の積層多孔性フィルムが得られる。
[電池用セパレータの説明]
次に、本発明の前記積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、電池用セパレータ10は厚みが5〜40μmであることがなかでも好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。厚みを5μm以上にすることにより電池用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
前記正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液電池を作製している。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
本実施形態では、負極として、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
[実施例の説明]
次に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔性フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロF300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.1質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A1を得た。
またポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm、MFR:1.1g/10分)80質量部に水添石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンP115)20質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ35mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて230℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B1を得た。
樹脂組成物A1およびB1を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA1/B1/A1=2/1/2となるように積層させた後、125℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を110℃でMDに3.8倍、次いで105℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、115℃で14%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
(実施例2)
樹脂組成物A1およびB1を実施例1と同様に積層させた後、125℃のキャストロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を、110℃でMDに3.8倍、次いで100℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸した後、115℃でTDに14%弛緩して積層多孔質フィルムを得た。
(実施例3)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)40質量部に対し、ポリプロピレン系コポリマー樹脂(住友化学社製、D101、MFR:0.5g/10分)60質量部、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.1質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A2を得た。
またポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm、MFR:1.1g/10分)90質量部に水添石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンP115)10質量部を加え、(東芝機械社製、口径φ35mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて230℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B2を得た。
樹脂組成物A2およびB2を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA2/B2/A2=2/1/2となるように積層させた後、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を90℃でMDに5.0倍、次いで90℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
(実施例4)
樹脂組成物A1およびB1を実施例1と同様に積層させた後、127℃のキャストロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を95℃でMDに5.4倍、次いで95℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
(実施例5)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.1質量部、酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、IRGANOX−B225)0.2質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A3を得た。
樹脂組成物A3およびB1を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA3/B1/A3=2/1/2となるように積層させた後、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を95℃でMDに4.3倍、次いで95℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
実施例1乃至5にて得られた積層多孔性フィルムの諸特性の測定および評価を行い、その結果を表1にまとめた。
(比較例1)
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.2質量部、酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、IRGANOX−B225)0.2質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A4を得た。
またポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm、MFR:1.1g/10分)80質量部に、マイクロクリスタリングワックス(日本精鑞社製、Hi−Mic1090)20質量部を加え、(東芝機械社製、口径φ35mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて200℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B3を得た。
樹脂組成物A4およびB3を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA4/B3/A4=3/1/3となるように積層させた後、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を90℃でMDに5.0倍、次いで90℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
(比較例2)
最外層にポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)、および、中間層にポリエチレン系樹脂として高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm、MFR:1.1g/10分)になるように別々の押出機にて押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率が1/1/1となるように積層させた後、100℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物は、120℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で24時間放置して熱処理した。続いて、熱処理した積層無孔膜状物は、ロール延伸機にて25℃でMDに1.7倍、引き続き100℃で更にMDに2.0倍延伸させ、積層多孔性フィルムを得た。
(1)層比
積層多孔性フィルムの断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4500)にて観察し、その層構成及び厚みから層比を測定した。
(2)厚み
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内の厚みを不特定に30箇所測定しその平均を厚みとした。
(3)空孔率
積層多孔性フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
(4)引張強度
測定には、引張圧縮試験機(インテスコ社製、200X型)を用いた。試験片としては、積層多孔性フィルムを測定方向に長さ80mm、幅15mmの長方形に切り出したものを使用した。試験片の長さ方向における両端部をチャック間距離40mmでチャックし、クロスヘッドスピード200mm/分で引っ張り、破断点における応力を引張強度として記録した。上記測定を5回行い、その平均値を算出した。
試験片における測定方向をMDとした際の引張強度をTMD、TDとした際の引張強度をTTDとした。
(5)透気度
25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。測定には、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
(6)135℃で5秒間加熱後の透気度
積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部にφ40mmの円状の穴を空けたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップ(コクヨ社製、ダブルクリップ「クリ−J35」)で固定した。次に、グリセリン(ナカライテスク社製、1級)を底面から100mmとなるまで満たした、135℃のオイルバス(アズワン社製、OB−200A)の中央部に、アルミ板2枚で固定された状態のフィルムを浸漬し、5秒間加熱した。加熱後直ちに、別途用意した25℃のグリセリンを満たした冷却槽に浸漬して5分間冷却した後、2−プロパノール(ナカライテスク社製、特級)、アセトン(ナカライテスク社製、特級)で洗浄し、25℃の空気雰囲気下にて15分間乾燥した。この乾燥後のフィルムの透気度を前記(5)の方法に従い測定した。
(7)引裂強度
JIS K7128−1に準拠して測定した。試験片におけるスリット方向をMDとした際の引裂強度をHMD、TDとした際の引裂強度をHTDとした。
(8)3%伸張時の引張弾性率
測定には、引張圧縮試験機(インテスコ社製、200X型)を用いた。試験片としては、積層多孔性フィルムをMDに長さ200mm、TDに幅5mmで切り出したものを使用した。試験片のチャック間距離150mm、クロスヘッドスピード5mm/minの条件で引張した。チャック間が3%伸張したときロードセルにかかる負荷より、次の式から3%伸張時の引張弾性率を求めた。サンプルの厚みは3ヶ所測定した平均値から求めた。
引張弾性率(MPa)={負荷(kg)×9.8(m/s)/伸張距離(mm)}/断面積(mm)×チャック間距離(mm)
5点測定した引張弾性率の平均値を引張弾性率とした。
さらに、得られた積層多孔性フィルムについて次のようにしてβ活性の評価を行った。
(9)示差走査型熱量測定(DSC)
積層多孔性フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145℃〜160℃にピークが検出されるか否かにより、以下のようにβ活性の有無を評価した。
○:Tmβ が145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β活性あり)
×:Tmβ が145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、β活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
(10)広角X線回折測定
積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)(B)に示すように固定した。
アルミ板2枚に拘束した状態のフィルムを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でフィルムを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたフィルムについて、以下の測定条件で、中央部がφ40mmの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:マックサイエンス社製 型番XMP18A
・X線源:CuKα 線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θ スキャン、2θ 範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレンのβ晶の(300)面に由来するピークより、β活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部がφ40mmの円状の穴にフィルムが設置されるように調整し、試料を作成しても構わない。
(11)突起物接触裂け耐性試験
FUDOHレオメータ(レオテック社製、J型)に、曲率半径0.5mmの針を取り付けて試験した。フィルムに針を垂直に300mm/分の速度で押し付ける試験を5回行った中で、針の接触によってフィルムがMDに裂けた回数(n)を記録した。なお、×以外のものを実用レベルとした。
◎:MDに裂けが全く見られなかった。(n=0)
○:MDに裂けが一部生じた。(n=1,2)
△:MDに裂けが生じないものがあった。(n=3,4)
×:MDに裂けが常に生じた。(n=5)
Figure 0004734397
Figure 0004734397
表1に各実施例及び比較例における組成および製造条件を、表2に各実施例及び比較例において得られた物性値を示す。
本発明で前記HMD/HTDの値が規定する範囲内で構成された実施例の積層多孔性フィルムは、本発明で規定する以外の範囲で構成された比較例のフィルムに比しバランスの取れた力学特性を有することがわかる。
一方で、前記HMD/HTDの値が規定した範囲から外れる比較例の積層多孔性フィルムは、特定の方向への異方性があるために、二次加工において裂けが発生しやすい積層多孔性フィルムとなった。
なお、実施例の中でも、突起物接触裂け耐性試験より実施例1,2,5がより好ましい態様である。
本発明の積層多孔性フィルムは、優れた透気特性を有し、かつバランスのとれた力学特性を具備しているため、電池用セパレータとして好適に利用することができる。
本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池の一部破断斜視図である。 135℃で5秒間加熱後の透気度及び広角X線回折測定におけるフィルムの固定方法を説明する図である。
符号の説明
10 電池用セパレータ
20 リチウムイオン電池
21 正極板
22 負極板
31 アルミ板
32 フィルム
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向

Claims (10)

  1. ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を含有するB層とを有し、かつ、β活性を有する積層多孔性フィルムであり、前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引裂強度(HMD)と、前記積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)の引裂強度(HTD)との比(HMD/HTD)が、0.08〜2.0であることを特徴とする積層多孔性フィルム。
  2. 前記引裂強度HMDが、4.5N/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
  3. 前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張強度(TMD)と、前記積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)の引張強度(TTD)との比(TMD/TTD)が、0.5〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層多孔性フィルム。
  4. 前記引張強度TTDが、30MPa以上であることを特徴とする請求項3に記載の積層多孔性フィルム。
  5. 前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の3%伸張時の引張弾性率が、500MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
  6. 前記B層に、変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスから選ばれる化合物(X)のうち少なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
  7. 空孔率が15〜80%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
  8. 25℃での透気度が10〜1000秒/100mlであり、かつ、135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムからなることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ。
  10. 請求項9に記載のリチウム電池用セパレータが組み込まれていることを特徴とする電池。
JP2008287853A 2008-11-10 2008-11-10 積層多孔性フィルム、それを利用したリチウムイオン電池用セパレータ、および電池 Active JP4734397B2 (ja)

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