JP4734397B2 - 積層多孔性フィルム、それを利用したリチウムイオン電池用セパレータ、および電池 - Google Patents
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Description
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧および長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
非水電解液用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
電池用セパレータの安全に寄与する特性として、シャットダウン特性(以後、「SD特性」と称す)がある。このSD特性は、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。この時、積層多孔性フィルムの微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度(以後、「SD温度」と称す)という。
電池用セパレータとして使用する場合は、このSD特性を具備していることが必要である。
また、前記特許文献2〜4のポリプロピレン多孔性フィルムは、ポリプロピレンの結晶融解温度が高いことからBD特性においてはポリエチレン多孔性フィルムよりも優れている。しかしながら、前記特性が逆に災いしてSD特性については全く発揮し得ない為、これらの多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用するには電池の安全性を確保するという点で問題があった。
前記β活性は、本発明の積層多孔性フィルムが前記A層及び前記B層のみで構成される場合、さらに他の多孔質層が積層される場合のいずれにおいても積層多孔性フィルムの状態で測定している。
さらに本発明の積層多孔性フィルムは、ポリプロピレン系樹脂のβ晶を含有する膜状物を延伸することにより製造されるため、微細孔を形成させることができ、十分な連通性を確保することができる。また、前記A層で強度を保持することができるので、引裂強度や引張強度などの機械的強度においても優れている。そのため、構造維持や耐衝撃性の観点からもリチウムイオン電池用セパレータに有用である。
また、本発明の積層多孔性フィルムは、厳密な製造条件の制御を必要とせず、簡便にかつ効率よく生産することができる。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」を意図し、「Xより大きくYよりも小さいことが好ましい」旨の意図も包含する。
β活性は、延伸前の膜状物においてポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していたことを示す一指標と捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、透気特性を有する積層多孔性フィルムを得ることができる。
具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温させた際に、再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β活性を有すると判断している。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上175℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120℃以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
β活性度の上限値は特に限定されないが、β活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
詳細には、ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170〜190℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させたセパレータ用積層多孔性フィルムについて広角X線回折測定を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来する回折ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合、β活性があると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折測定に関する詳細は、Macromol.Chem.187,643−652(1986)、Prog.Polym.Sci.Vol.16,361−404(1991)、Macromol.Symp.89,499−511(1995)、Macromol.Chem.75,134(1964)、及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。β活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
中でも、前記A層の樹脂組成物にβ晶核剤を添加してβ活性を得ることが特に好ましい。β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進させることができ、β活性を有する多孔質層を備えた積層多孔性フィルムを得ることができる。
まず、A層について以下に詳細に説明する。
(ポリプロピレン系樹脂の説明)
A層に含まれるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔性フィルムの機械的強度の観点からはホモポリプロピレンがより好適に使用される。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠している。
MFRはJIS K7210に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほかの核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
A層には、前述のような本発明の目的やA層の特性を損なわない程度の範囲で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤または他の成分を含んでいてもよい。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および積層多孔性フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。具体的には、酸化防止剤として、ハロゲン化銅、芳香族アミン等のアミン系酸化防止剤、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。市販されているものとしては、「IRGANOX B225」(チバスペシャルティケミカルズ社製)がある。他にも、「プラスチックス配合剤」のP178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤などが挙げられる。
次に、B層について説明する。
本発明のB層はポリエチレン系樹脂を含有することを特徴としている。B層は厚み方向に連通性を有する微細孔を多数有し、かつ前述したようにポリエチレン系樹脂を含有する組成物から構成されるのであれば、いかなる構造・構成を有していてもよい。例えば、ポリエチレン系樹脂組成物からなる膜状物に前記微細孔が設けられている構造であってもよいし、粒子状もしくは繊維状の微小物が凝集して層を成し、微小物同士の間隙が前記微細孔となっている構造であってもよい。本発明のB層は、均一な微細孔を形成でき、かつ空孔率等の制御を行いやすい前者の構造を有することが好ましい。
この結晶融解ピーク温度は、JIS K7121に準拠して、示差走査型熱量計を用いて、25℃から加熱速度10℃/分で昇温させた際の結晶融解温度のピーク値である。
B層には多孔化を促進させる物質を添加することが好ましい。中でも、B層には変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスから選ばれる化合物(X)のうち少なくとも1種が含まれていることがより好ましい。前記化合物(X)を添加することにより、より効率的に多孔構造を得ることができ、孔の形状や孔径を制御しやすくなる。
(ア)融点が40℃〜200℃である。
(イ)融点より10℃高い温度での溶融粘度が50Pa・s以下である。
中でも、核剤はポリエチレン系樹脂の結晶構造を制御し、延伸開孔時の多孔構造を細かくするという効果があるため好ましい。市販されているものとして、「ゲルオールD」(新日本理化社製)、「アデカスタブ」(旭電化工業社製)、「Hyperform」(ミリケンケミカル社製)、または「IRGACLEAR D」(チバスペシャルティケミカルズ社製)等が挙げられる。また、核剤の添加されたポリエチレン系樹脂の具体例としては、「リケマスター」(理研ビタミン社製)等が商業的に入手できる。
本発明の積層多孔性フィルムの積層構成について説明する。
基本的な構成となるA層とB層が少なくとも存在すれば特に限定されるものではない。最も単純な構成がA層とB層の2層構造、次に単純な構造が両外層と中層の2種3層構造であり、これらは好ましい構成である。2種3層の形態の場合、A層/B層/A層であってもB層/A層/B層であっても構わない。また、必要に応じて他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
A層とB層との総厚み比については、A層/B層の値が0.05〜20であることが好ましく、0.1〜15であることがより好ましく、0.5〜12であることが更に好ましい。A層/B層の値が0.05以上とすることで、A層のBD特性及び強度を十分に発揮することができる。また20以下とすることで、例えば電池に適用した時にSD特性が十分に発揮することができ、安全性を確保することができる。また、A層およびB層以外の他の層が存在する場合、他の層の厚みの合計は全体の厚み1に対して0.05〜0.5が好ましく、0.1〜0.3がより好ましい。
積層多孔性フィルムの形態としては平面状、チューブ状の何れであってもよいが、製品として数丁取りが可能であることから生産性がよく、さらに内面にコートなどの処理が可能できること等の観点から、平面状がより好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの厚みは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましい。一方で下限として、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。リチウムイオン電池用セパレータとして使用する場合、厚みが50μm以下であれば、積層多孔性フィルムの透気特性を十分に発現することができるため電気抵抗を小さくでき、電池の性能を十分に確保することができる。また、厚みが5μm以上あれば、リチウムイオン電池用セパレータとして必要な強度を維持できるとともに実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば大きな電圧がかかった場合にも短絡しにくく安全性に優れる。
本発明の積層多孔性フィルムのSD温度は、下限として100℃以上が好ましく、110℃がより好ましく、120℃以上が更に好ましい。一方で上限として140℃以下が好ましい。100℃未満でSD特性が発現してしまうと、例えば本発明の積層多孔性フィルムをリチウムイオン電池用セパレータとして使用し、その電池が夏場に自動車車内に放置された場合に、場所によっては100℃近くまで上昇する可能性があるので、この状態で電池としての機能しなくなることは好ましくない。一方、140℃より高い温度の場合は、電池として安全性を確保するという意味では不十分である。
SD温度を調整する手段としては、B層に含まれる熱可塑性樹脂として希望するSD温度に近い結晶融解ピーク温度を有する熱可塑性樹脂を選択する、またはB層の厚みを相対的に増減させるなどの手段が有効である。
本発明の積層多孔性フィルムは、25℃での透気度は1000秒/100ml以下であることが好ましく、より好ましくは800秒/100ml以下、更に好ましくは600秒/100ml以下である。1000秒/100ml以下とすることで、リチウムイオン電池用セパレータとして使用する場合、室温使用時に十分に優れた電池性能を有することができる。
また、積層多孔性フィルムの25℃での透気度が低いということは、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時に電荷の移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。一方、下限については特に限定しないが、10秒/100ml以上が好ましく、より好ましくは50秒/100ml以上、更に好ましくは100秒/100ml以上である。25℃での透気度が10秒/100ml以上であれば、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時において、内部短絡等のトラブルを回避することができる。
本発明の積層多孔性フィルムは、リチウムイオン電池用セパレータとして使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には135℃で5秒間加熱した後の透気度は10000秒/100ml以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100ml以上、さらに好ましくは50000秒/100ml以上である。135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
また、前記SD特性は、空孔率や孔径に左右される。以下の内容に限られないが、例えば、ポリエチレン系樹脂に化合物(X)を加え、前記化合物(X)の種類や配合量を調整すること、若しくは、核剤を添加してポリエチレン系樹脂の結晶を微小化することによって、135℃で5秒間加熱した後の透気度を制御することができる。
また、製造方法において、延伸倍率や延伸温度を調整することによって、135℃で5秒間加熱後の透気度を10000秒/100ml以上とすることが可能である。
一般に、延伸により製造される積層多孔質フィルムにおいては、製造方法によって力学特性のバランスは大きく変わる。
例えば、MDに強く配向するように延伸された多孔質フィルムの場合、MDの引張弾性率および引張強度に優れる一方で、MDの引裂強度やTDの引張強度はしばしば低下する。反対にTDに強く配向するように延伸された積層多孔質フィルムの場合、TDの引張弾性率および引張強度に優れる一方で、TDの引裂強度やMDの引張強度はしばしば低下する。
MDとTDとの二軸延伸をした場合も、MDおよびTDの延伸倍率や延伸温度によって力学特性は大きく変化する。
HMD/HTDが0.08以上であることによって、MDへの裂けやすさを抑制することができるため、二次加工における裂け、並びに突起物接触時のMDへの裂けを抑制できるだけでなく、カッター等の刃物でTDへフィルムをカットしやすくなるという効果がある。好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.13以上である。
一方で、HMD/HTDの上限は2.0以下であることによって、MDとTDの力学特性のバランスを十分に保つことができ、多孔構造を等方的に形成できる。さらに、MDの引張弾性率を十分に得ることができるため、ロールから巻き出す際などにかかる張力でフィルムが伸びにくくなり、二次加工を行う上では好ましい。好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.5以下である。
TMD/TTDが0.5以上であることによって、MDとTDの力学特性のバランスを保つことができ、多孔構造を等方的に形成できるだけでなく、MDの引張弾性率も十分に得ることができる。より好ましくは1.0以上であり、さらに好ましくは2.0以上である。
一方で、TMD/TTDが10以下であることによって、MDへの裂けやすさを十分に抑制することができる。より好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは3.0以下である。
MDの3%伸張時の引張弾性率が500MPa以上であることによって、ロールからの巻き出し、または二次加工における張力による変形が少なく、フィルムの折れや皺が発生しにくい。一方、上限は特に限定しないが、柔軟性等の物性を十分に保持することができる範囲として、6000MPa以下が好ましい。
次に本発明の積層多孔性フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造される積層多孔性フィルムのみに限定されるものではない。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、多孔化と積層の順序によって次の3つに大別される。
(a)ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層の多孔性フィルム(以後、「多孔性フィルムPP」と称する)と、ポリエチレン系樹脂を含有するB層の多孔性フィルム(以後、「多孔性フィルムPE」と称する)を作製し、ついで少なくとも多孔性フィルムPPと多孔性フィルムPEを積層する方法。
(b)ポリプロピレン系樹脂を主成分とする膜状物(以後、「無孔膜状物PP」と称する)とポリエチレン系樹脂を主成分とする膜状物(以後、「無孔膜状物PE」と称する)の少なくとも2層からなる積層無孔膜状物を作製し、ついで該無孔膜状物を多孔化する方法。
(c)ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層とポリエチレン系樹脂を含有するB層の2層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
前記(b)の方法としては、無孔膜状物PPと無孔膜状物PEをそれぞれ作製し、無孔膜状物PPと無孔膜状物PEをラミネートや接着剤等で積層した後に多孔化する方法、または、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法などが挙げられる。
前記(c)の方法としては、多孔性フィルムPPと無孔膜状物PE、または無孔膜状物PPと多孔性フィルムPEをラミネートする方法や接着剤等で積層化する方法が挙げられる。本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(b)の方法が好ましく、共押出を用いる方法がより好ましい。
すなわち、A層はβ活性を有する場合、延伸することにより微細孔を容易に形成することができる。一方、B層を多孔化する方法としては、例えば延伸法、相分離法、抽出法、化学処理法、照射エッチング法、発泡法、またはこれらの技術の組み合わせなど公知の方法を用いることができる。なかでも本発明においては延伸法を用いることが好ましい。
高分子添加剤を用いた例としては、有機溶媒に対する溶解性が異なる2種のポリマーを用いて無孔層または無孔膜状物を形成し、前記2種のポリマーのうち一方のポリマーのみが溶解する有機溶媒に浸漬して該一のポリマーを抽出する方法が挙げられる。より具体的にはポリビニルアルコールとポリ酢酸ビニルからなる無孔層または無孔膜状物を形成し、アセトンおよびn−ヘキサンを用いてポリ酢酸ビニルを抽出する方法、または、ブロックあるいはグラフト共重合体に親水性重合体を含有させて無孔層または無孔膜状物を形成し、水を用いて親水性重合体を除去する方法などが挙げられる。
前記物質としては、例えばステアリルアルコールもしくはセリルアルコールなどの高級脂肪族アルコール、n−デカンもしくはn−ドデカンなどのn−アルカン類、パラフィンワックス、流動パラフィンまたは灯油等が挙げられ、これらはイソプロパノール、エタノール、ヘキサンなどの有機溶媒で抽出できる。また、前記物質としてショ糖や砂糖などの水可溶性物質も挙げられ、これらは水で抽出できるため環境への負担が少ないという利点がある。
前記照射エッチング法は中性子線またはレーザーなどを照射して微小な穴を形成させる方法である。
前記融着法は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリマー微細パウダーを用い、成形後に前記ポリマー微細パウダーを焼結する方法である。
前記発泡法としては機械的発泡法、物理的発泡法、または化学的発泡法等があり、本発明においてはいずれも用いることができる。
積層無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて二軸延伸を行うことが好ましい。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では生産速度という観点から好ましくなく、また3.0mmより大きければ、ドラフト率が大きくなるので生産安定性の観点から好ましくない。
キャストロールによる冷却固化温度は、本発明において非常に重要であり、延伸前の膜状物中のβ晶を生成・成長させ、膜状物中のβ晶比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させた膜状物中のβ晶比率を十分に増加させることができ好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
延伸前の膜状物のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレンのα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
延伸温度は、用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、縦延伸での延伸温度は概ね0〜135℃、好ましくは15〜130℃で制御される。前記温度範囲であれば多孔構造の制御が容易であり、機械強度や収縮率などの諸物性のバランスがとりやすい。
さらに、0℃を下回ると延伸応力が非常に強くなるため延伸破断をしやすく、またロールで延伸する場合、設備への負荷が大きい、ロールと延伸前膜状物との密着性が悪くなるため延伸ムラが発生しやすいといった問題が生じる。一方、135℃を越えるとB層中のポリエチレン系樹脂が流動するため安定的な延伸が難しくなる。
横延伸での延伸温度は概ね80〜150℃、好ましくは90〜140℃である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。また、前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がより好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
次に、本発明の前記積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池について、図1に参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、電池用セパレータ10は厚みが5〜40μmであることがなかでも好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。厚みを5μm以上にすることにより電池用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
次に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔性フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロF300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.1質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A1を得た。
またポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm3、MFR:1.1g/10分)80質量部に水添石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンP115)20質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ35mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて230℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B1を得た。
樹脂組成物A1およびB1を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA1/B1/A1=2/1/2となるように積層させた後、125℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を110℃でMDに3.8倍、次いで105℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、115℃で14%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
樹脂組成物A1およびB1を実施例1と同様に積層させた後、125℃のキャストロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を、110℃でMDに3.8倍、次いで100℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸した後、115℃でTDに14%弛緩して積層多孔質フィルムを得た。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)40質量部に対し、ポリプロピレン系コポリマー樹脂(住友化学社製、D101、MFR:0.5g/10分)60質量部、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.1質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A2を得た。
またポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm3、MFR:1.1g/10分)90質量部に水添石油樹脂(荒川化学工業社製、アルコンP115)10質量部を加え、(東芝機械社製、口径φ35mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて230℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B2を得た。
樹脂組成物A2およびB2を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA2/B2/A2=2/1/2となるように積層させた後、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を90℃でMDに5.0倍、次いで90℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
樹脂組成物A1およびB1を実施例1と同様に積層させた後、127℃のキャストロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を作製した。
前記積層無孔膜状物を95℃でMDに5.4倍、次いで95℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.1質量部、酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、IRGANOX−B225)0.2質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A3を得た。
樹脂組成物A3およびB1を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA3/B1/A3=2/1/2となるように積層させた後、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を95℃でMDに4.3倍、次いで95℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン0.2質量部、酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製、IRGANOX−B225)0.2質量部を加え、同方向二軸押出機(東芝機械社製、口径φ40mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A4を得た。
またポリエチレン系樹脂として、高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm3、MFR:1.1g/10分)80質量部に、マイクロクリスタリングワックス(日本精鑞社製、Hi−Mic1090)20質量部を加え、(東芝機械社製、口径φ35mm、スクリュ有効長L/D=32)を用いて200℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B3を得た。
樹脂組成物A4およびB3を別々の押出機にて200℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率がA4/B3/A4=3/1/3となるように積層させた後、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物を90℃でMDに5.0倍、次いで90℃でTDに2.5倍に逐次二軸延伸をした後、125℃で22%熱弛緩して積層多孔性フィルムを得た。
最外層にポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)、および、中間層にポリエチレン系樹脂として高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製、Hi−Zex3300F、密度:0.950g/cm3、MFR:1.1g/10分)になるように別々の押出機にて押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより押出し、延伸後の膜厚比率が1/1/1となるように積層させた後、100℃のキャスティングロールで冷却固化させて、積層無孔膜状物を得た。
前記積層無孔膜状物は、120℃に加熱された熱風循環オ−ブン中で24時間放置して熱処理した。続いて、熱処理した積層無孔膜状物は、ロール延伸機にて25℃でMDに1.7倍、引き続き100℃で更にMDに2.0倍延伸させ、積層多孔性フィルムを得た。
積層多孔性フィルムの断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製、S−4500)にて観察し、その層構成及び厚みから層比を測定した。
(2)厚み
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内の厚みを不特定に30箇所測定しその平均を厚みとした。
(3)空孔率
積層多孔性フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
(4)引張強度
測定には、引張圧縮試験機(インテスコ社製、200X型)を用いた。試験片としては、積層多孔性フィルムを測定方向に長さ80mm、幅15mmの長方形に切り出したものを使用した。試験片の長さ方向における両端部をチャック間距離40mmでチャックし、クロスヘッドスピード200mm/分で引っ張り、破断点における応力を引張強度として記録した。上記測定を5回行い、その平均値を算出した。
試験片における測定方向をMDとした際の引張強度をTMD、TDとした際の引張強度をTTDとした。
(5)透気度
25℃の空気雰囲気下にて、JIS P8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。測定には、デジタル型王研式透気度専用機(旭精工社製)を用いた。
(6)135℃で5秒間加熱後の透気度
積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部にφ40mmの円状の穴を空けたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚さ1mm)2枚の間にはさみ、図2(B)に示すように周囲をクリップ(コクヨ社製、ダブルクリップ「クリ−J35」)で固定した。次に、グリセリン(ナカライテスク社製、1級)を底面から100mmとなるまで満たした、135℃のオイルバス(アズワン社製、OB−200A)の中央部に、アルミ板2枚で固定された状態のフィルムを浸漬し、5秒間加熱した。加熱後直ちに、別途用意した25℃のグリセリンを満たした冷却槽に浸漬して5分間冷却した後、2−プロパノール(ナカライテスク社製、特級)、アセトン(ナカライテスク社製、特級)で洗浄し、25℃の空気雰囲気下にて15分間乾燥した。この乾燥後のフィルムの透気度を前記(5)の方法に従い測定した。
(7)引裂強度
JIS K7128−1に準拠して測定した。試験片におけるスリット方向をMDとした際の引裂強度をHMD、TDとした際の引裂強度をHTDとした。
(8)3%伸張時の引張弾性率
測定には、引張圧縮試験機(インテスコ社製、200X型)を用いた。試験片としては、積層多孔性フィルムをMDに長さ200mm、TDに幅5mmで切り出したものを使用した。試験片のチャック間距離150mm、クロスヘッドスピード5mm/minの条件で引張した。チャック間が3%伸張したときロードセルにかかる負荷より、次の式から3%伸張時の引張弾性率を求めた。サンプルの厚みは3ヶ所測定した平均値から求めた。
引張弾性率(MPa)={負荷(kg)×9.8(m/s2)/伸張距離(mm)}/断面積(mm2)×チャック間距離(mm)
5点測定した引張弾性率の平均値を引張弾性率とした。
積層多孔性フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで冷却速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で再昇温した。再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145℃〜160℃にピークが検出されるか否かにより、以下のようにβ活性の有無を評価した。
○:Tmβ が145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β活性あり)
×:Tmβ が145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、β活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)(B)に示すように固定した。
アルミ板2枚に拘束した状態のフィルムを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でフィルムを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られたフィルムについて、以下の測定条件で、中央部がφ40mmの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:マックサイエンス社製 型番XMP18A
・X線源:CuKα 線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θ スキャン、2θ 範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレンのβ晶の(300)面に由来するピークより、β活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部がφ40mmの円状の穴にフィルムが設置されるように調整し、試料を作成しても構わない。
FUDOHレオメータ(レオテック社製、J型)に、曲率半径0.5mmの針を取り付けて試験した。フィルムに針を垂直に300mm/分の速度で押し付ける試験を5回行った中で、針の接触によってフィルムがMDに裂けた回数(n)を記録した。なお、×以外のものを実用レベルとした。
◎:MDに裂けが全く見られなかった。(n=0)
○:MDに裂けが一部生じた。(n=1,2)
△:MDに裂けが生じないものがあった。(n=3,4)
×:MDに裂けが常に生じた。(n=5)
本発明で前記HMD/HTDの値が規定する範囲内で構成された実施例の積層多孔性フィルムは、本発明で規定する以外の範囲で構成された比較例のフィルムに比しバランスの取れた力学特性を有することがわかる。
一方で、前記HMD/HTDの値が規定した範囲から外れる比較例の積層多孔性フィルムは、特定の方向への異方性があるために、二次加工において裂けが発生しやすい積層多孔性フィルムとなった。
なお、実施例の中でも、突起物接触裂け耐性試験より実施例1,2,5がより好ましい態様である。
20 リチウムイオン電池
21 正極板
22 負極板
31 アルミ板
32 フィルム
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向
Claims (10)
- ポリプロピレン系樹脂を主成分とするA層と、ポリエチレン系樹脂を含有するB層とを有し、かつ、β活性を有する積層多孔性フィルムであり、前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引裂強度(HMD)と、前記積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)の引裂強度(HTD)との比(HMD/HTD)が、0.08〜2.0であることを特徴とする積層多孔性フィルム。
- 前記引裂強度HMDが、4.5N/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の引張強度(TMD)と、前記積層多孔性フィルムの流れ方向に対して垂直方向(TD)の引張強度(TTD)との比(TMD/TTD)が、0.5〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記引張強度TTDが、30MPa以上であることを特徴とする請求項3に記載の積層多孔性フィルム。
- 前記積層多孔性フィルムの流れ方向(MD)の3%伸張時の引張弾性率が、500MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 前記B層に、変性ポリオレフィン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂若しくはその変性体、エチレン系共重合体、またはワックスから選ばれる化合物(X)のうち少なくとも1種が含まれていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 空孔率が15〜80%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 25℃での透気度が10〜1000秒/100mlであり、かつ、135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムからなることを特徴とするリチウムイオン電池用セパレータ。
- 請求項9に記載のリチウム電池用セパレータが組み込まれていることを特徴とする電池。
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