JP5539604B2 - 多孔体の製造方法および多孔体 - Google Patents
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Description
例えば、特開平5−25305号公報(特許文献1)では超高分子量ポリエチレンと溶媒を混練・シート化し、延伸処理したのち溶媒を抽出することにより多孔膜が得られることが提案されている。
しかしながら、当該方法では、段落番号0045等で記載されているように、多孔膜全体に含まれている溶媒を洗浄用の有機溶媒で洗浄することにより除去しているため、有機溶媒が大量に必要となり、環境上の観点から好ましくない。
同じく、特開2004−95550号公報(特許文献3)でもリチウム二次電池用セパレーターとして用いる多孔性フィルムを、熱可塑性樹脂と充填剤とを含む樹脂組成物から成形したシートを少なくとも一軸方向に延伸することにより得ている。
しかしながら、これらの方法により得られる多孔性フィルムまたはシートでは全層に充填剤が存在していることにより単位面積あたりの質量(坪量)が大きくなるため、軽量化に向けた改善を行う余地がある。
一般的に単一ポリマーによる開孔延伸法と呼ばれている当該方法においては、製造工程において有機溶媒を必要とせず、かつ充填剤が存在していないので単位面積あたりの質量(坪量)も大きくはならない。しかしながら、該方法は結晶制御が非常に難しく、延伸温度や延伸倍率、多段延伸等の延伸条件において好ましい多孔構造を得ることができる条件が非常に狭いため(0025欄〜0028欄等)、工業的規模で生産する際の工程管理を考えると好ましくない。
当該方法は二酸化炭素や窒素等の不活性ガスの亜臨界または超臨界流体を用いれば環境への負荷が極めて少ないという利点がある。また、充填剤の配合を必須要件とはしていないので軽量化が容易である。
しかしながら、亜臨界または超臨界流体を利用して形成される微小孔はそれぞれ独立した状態でしか存在しないため、用途が限定されるという問題があった。すなわち、例えば電池用セパレーター、電解コンデンサー用隔膜、各種フィルター、逆浸透濾過膜、限外濾過膜または精密濾過膜等の用途においては、ある種の気体や液体等の流体を透過させる必要があるが、微小孔がそれぞれ独立した状態にあるのでは透過性を発揮できないため前記のような用途に使用することができない。
さらに、本発明は全体に均等な連通孔を有し、かつ単位面積あたりの質量が小さい多孔体を提供することを課題としている。特に電池用セパレーターとして使用した場合、電池重量を大きく増加させることなく、電解液の保持が良好であり、安全性が高い非水電解質2次電池を提供することができるセパレーターおよび電池を提供することを課題とするものである。
熱可塑性樹脂組成物からなる少なくとも1層の中間層と、該中間層の両側の接着性樹脂を含む樹脂組成物からなる接着層の外層に固着して一体化した剥離層を設けて少なくとも5層構造の積層体を作製する工程と、
得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることにより、前記積層体に微小孔を形成して多孔化する工程と、
前記積層体を多孔化した後に前記一体化した接着層と剥離層とを剥離する工程と、
を備えることを特徴とする多孔体の製造方法を提供している。
また、第2の発明として、表面に開口すると共に厚さ方向に連通性を有する多数の微小孔が存在する多孔体の製造方法であって、
少なくともポリプロピレン樹脂を含むハードセグメントと、ソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂組成物からなる少なくとも1層の中間層と、該中間層の両側に接着性樹脂として、エチレン系共重合体、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はこれらの水素添加誘導体、または変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなる接着層が積層された少なくとも3層構造の積層体を作製する工程と、
得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることにより、前記積層体に微小孔を形成して多孔化する工程と、
前記積層体を多孔化した後に前記接着層を剥離する工程と、
を備えることを特徴とする多孔体の製造方法を提供している。
このように、多孔体の孔径は用途に応じて調整されるが、包装用品、衛生用品、畜産用品、農業用品、建築用品、医療用品、分離膜、光拡散板、反射シートまたは電池用セパレーターの用途においては、平均孔径が0.001〜600μm程度とすることが好ましい。これは、平均孔径が0.001μmよりも小さいと気体や液体等の流体が多孔体を透過しにくくなり、一方、平均孔径が600μmよりも大きくなると多孔体の機械強度が低くなりすぎるおそれがあることによる。具体的には、多孔体を電池用セパレーターとして使用する場合には、平均孔径が0.01〜10μm、更に0.01〜2μmの範囲とすることがより好ましい。
其の際、接着層の外層に剥離層を固着して一体化しているため、接着層を剥離層と共に簡単に中間層より剥離することができる。
前記第2の発明では、中間層のA層を構成する熱可塑性樹脂組成物としてはハードセグメントとソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂組成物を用いている。
ハードセグメントは層の強度を保つ役割をし、ソフトセグメントは亜臨界または超臨界流体を含浸させる役割を有する。ぞれぞれのセグメントが前記役割を確実に果たすためには、ハードセグメントの比率が5〜95質量%であり、ソフトセグメントの比率が95〜5質量%であることが好ましい。ハードセグメントの比率が5質量%未満であると、A層が柔らかすぎて強度が保てず、また亜臨界または超臨界流体がA層にとどまることができず脱気してしまい、A層が多孔化できないおそれがある。一方、ソフトセグメントの比率が5質量%未満であると、亜臨界または超臨界流体の含浸量が少なくなり、十分な連通性を得ることが困難となる。より好ましくはハードセグメントの比率が10〜90質量%であり、ソフトセグメントの比率が90〜10質量%であり、更に好ましくはハードセグメントの比率が30〜80質量%であり、ソフトセグメントの比率が70〜20質量%である。
前記スチレン系熱可塑性樹脂としては、ハードセグメントとして、スチレンもしくはメチルスチレンなどのスチレン誘導体、インデンまたはビニルナフタレン等、好ましくはポリスチレンを用い、ソフトセグメントとしてポリブタジエンもしくはポリイソプレンなどの共役ジエン系ポリマー、またはエチレン/ブチレン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体もしくはポリイソブテンなどのポリオレフィン系エラストマーを用いたスチレン系熱可塑性樹脂が挙げられる。
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、ハードセグメントとして、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12等のポリアミドまたはこれらの共重合体を用い、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレングリコールやポリ(エチレン/プロピレン)ブロックポリグリコールなどのポリアルキレングリコールなどを用いたポリアミド系熱可塑性樹脂が挙げられる。
・エチレンの単独重合体樹脂、エチレンを主成分とし炭素数3以上のα−オレフィンを副成分とする共重合体樹脂;
・プロピレンの単独重合体樹脂、プロピレンを主成分としこれとエチレンもしくは炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体樹脂;
・1−ブテンの単独重合体樹脂、1−ブテンを主成分としこれとエチレン、プロピレンもしくは炭素数5以上のα−オレフィンとの共重合体樹脂;
・4−メチル−1−ペンテンの単独重合体樹脂、4−メチル−1−ペンテンを主成分とし、これとエチレン、プロピレン、1−ブテンもしくは炭素数6以上のα−オレフィンとの共重合体樹脂;
・上記樹脂の変性物
が挙げられる。これら2種類以上が混合されていても良い。
ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等が挙げられる。
水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるものである。
オレフィンエラストマーは、2種類または3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンとしてはエチレンもしくはプロピレン等のα−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては1,4−ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィンエラストマーとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
ハードセグメントとしてのプロピレン系樹脂にはホモポリマーとコポリマーがあり、更にコポリマーにはランダムコポリマーとブロックコポリマーがある。ホモポリマーはプロピレン単独重合体であり、アイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の程度の立体規則性を示すポリプロピレンである。
一方、コポリマーとしては、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンもしくは1−デセン等のα−オレフィンとの共重合体が使用される。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
プロピレン系樹脂には、プロピレン系単独重合体よりも融点が低い樹脂を混合することもできる。そのような融点が低い樹脂として、高密度あるいは低密度ポリエチレン等を例示することができ。その配合量は2〜50質量%であることが好ましい。
ソフトセグメントとしてのエチレン−プロピレンゴムには、エチレンとプロピレンの二元共重合体と、さらに第3成分としての非共役ジエンモノマーを少量含む三元重合体とがあるが、本発明においてはいずれを用いてもよい。前記非共役ジエンモノマーとしては、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネンまたはヘキサジエンなどが挙げられる。 エチレン−プロピレンゴムとしては、ゴム全体に対するエチレン含有率が7〜80質量%であるエチレン−プロピレンゴムが好ましく、10〜60質量%であるエチレン−プロピレンゴムがより好ましい。
エチレン−プロピレンゴムの含有量またはエチレン−プロピレンゴム中のエチレン含有率を調整することによりA層を構成する樹脂組成物全体に対するエチレン含有率を5〜95質量%とすることが好ましい。
ソフトセグメントを構成するエチレン−プロピレンゴム等の軟質成分の分散性の観点から、重合型ポリマーを用いる方が好ましい。
同様にプロピレンホモポリマーにエチレンプロピレンゴムやポリエチレン等を二軸押出機等の混練機を使ってブレンドすることにより、好ましいソフトセグメントの含有率をもつオレフィン系熱可塑性樹脂を得ることができる。
なかでも、オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、エチレン単量体にエチレン以外の単量体を共重合させることによりゴム状弾性を示すものが好適な例として挙げられる。
エチレン以外の単量体としては、α−オレフィン、酢酸ビニル(VA)、アクリル酸エチル(EA)等を挙げることができる。この中でα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンおよびこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。更にこれらエチレン単量体とα−オレフィン単量体に加えて、非共役系ジエン単量体、例えばシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等を共重合させたオレフィン系熱可塑性エラストマーも挙げられる。これらの中でもエチレン単量体と炭素数4〜10のα−オレフィン単量体との共重合体、特にエチレン単量体とプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンおよび/または1−デセン単量体との共重合体で、且つそのエチレン単量体/α−オレフィン単量体の質量比が、90/10〜50/50、好ましくは80/20〜60/40の共重合体が、ゴム状弾性に富み、工業的にも入手しやすく、二重結合も含まず耐候性に優れ好ましい。
スチレン系熱可塑性エラストマーとして、具体的にはスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)またはスチレン−エチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)等が挙げられる。
前記フィラーを配合する場合には、無機フィラーおよび有機フィラーの何れのフィラーも使用でき、1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの塩化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカなどの酸化物;タルク、クレー、マイカなどのケイ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、炭酸カルシウムまたは硫酸バリウムが好ましい。
無機フィラーは樹脂中の分散性向上のため、表面処理剤で無機フィラーの表面を被覆して疎水化してもよい。この表面処理剤としては、例えばステアリン酸またはラウリル酸等の高級脂肪酸またはそれらの金属塩を挙げることができる。
該有機フィラーとしては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾグアナミンなどの熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に架橋させたポリスチレンなどが好ましい。
具体的にはプラスチック配合剤(株式会社 大成社発行 昭和62年11月30日 第2版発行)P31〜P64、P83、P97〜P100、P154〜P158、P178〜P182、P271〜P275、P283〜294に記載の化合物等が挙げられる。より具体的には、P29〜64の可塑剤の項目に記載され、P49からP50の表4と、P52〜P54の表6に列挙されている可塑剤(TCP,TOP,PS,ESBO等)が使用可能である。また新・界面活性剤入門(三洋化成工業株式会社発行 1992年8月 第3版発行)に挙げられている界面活性剤類の化合物も可塑剤として好適に使用できる。
このように、中間層の外面を接着層により密封していることで、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させたのち急激な圧力の低下等を起こして前記超臨界状態または亜臨界状態から解放したときに、流体が容易に気化することを防くため、中間層の表面付近においても内部と同等な微小孔が確実に形成され、内部と表面における形成される微小孔を均一化することができる。
(a)酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、無水マレイン酸およびメタクリル酸グリシジルからなる群から選ばれる1種以上のコモノマーとエチレンとからなる共重合体(以下「エチレン系共重合体」と称す。)(b)軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体またはこれらの水素添加誘導体
(c)変性ポリオレフィン系樹脂
なお、前記第2の発明では、接着層(B層)は前記(a)、(b)または(c)を含む樹脂組成物からなるものとしている。
上記エチレン系共重合体としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸三元共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体、エチレン−アクリル酸エチル−メタクリル酸グリシジル三元共重合体が挙げられる。中でも、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体を好適に使用できる。
K 7210に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件下で測定する。
軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体を構成する芳香族系炭化水素としてはスチレンが好適に用いられ、α−メチルスチレン等のスチレン同族体なども用いることができる。また、共役ジエン系炭化水素としては、1,3−ブタジエン、1,2−イソプレン、1,4−イソプレン、1,3−ペンタジエン等が挙げられ、これらは水素添加誘導体であってもよい。これらは単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。
導入する極性基としては、酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩化物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、イミド基、オキサゾリン基、水酸基などが挙げられる。
具体的には、商品名「タフテックM」(旭化成(株)製)、「エポフレンド」(ダイセル化学(株)製)などが市販されている。
前記変性ポリオレフィン樹脂とは、不飽和カルボン酸またはその誘導体、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂をいう。
不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、シトラコン酸またはイタコン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミドまたはエステル等が挙げられるが、例えば無水マレイン酸、無水シトラコン酸もしくは無水イタコン酸等に代表される無水物が好ましい。そのほか、上記不飽和カルボン酸またはその酸無水物の誘導体のモノエポキシ化合物と上記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物なども挙げられる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの中でも無水マレイン酸がより好ましく用いられる。また、これらの共重合体は、各々単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
前記シラン系カップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、メタクロイルオキシトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリアセチルオキシシランなどを挙げることができる。
例えばC層を構成する材料としては樹脂、金属、紙、布などが挙げられる。なかでも、C層は樹脂、特に熱可塑性樹脂から構成されていることが好ましい。
例えば、A層が組成の異なる複数層から構成されていてもよい。具体的には、フィラーを含有しない層とフィラーを含有する層が交互に積層されている場合、またはフィラーを含有しない層が連続して積層されている場合等が挙げられる。
また、A層の両側に存在する2つのB層の一方または両方が組成の異なる複数層から構成されていてもよい。2つのB層のそれぞれの層の組成または構造は同一であってもよいし、異なっていても良い。
さらに、B層の両側に存在する2つのC層の一方または両方が組成の異なる複数層から構成されていてもよい。2つのC層のそれぞれの層の組成または構造は同一であってもよいし、異なっていても良い。
なかでも、本発明の第1工程において作製される積層体は、C層/B層/A層/B層/C層の順に積層されており、かつ2つずつ存在するB層およびC層のそれぞれが同一の組成を有する3種5層の積層構造を有することが最も好ましい。
traが0.95より大きければ、B層およびC層の実質的な厚みが極端に薄くなってしまい、B層およびC層を取り除きにくくなる。また、B層の厚みが極端に薄いと蓋の役割を果たさない。すなわち、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させ、次いで超臨界状態または亜臨界状態から逸脱させたときに、A層の表面から気体が薄いB層を通り抜けて拡散・蒸発により放出されるため、A層に発泡を生じない領域、いわゆる無孔層が生じるおそれがあるので好ましくない。一方、traが0.05より小さければ、A層が極端に薄くなってしまい。この場合もB層およびC層を剥離しにくくなる。
さらには、全層の厚みtに対するB層の厚みtbの割合trb(=tb/t)が0.01〜0.1であることが好ましく、全層の厚みtに対するC層の厚みtcの割合trc(=tc/t)が0〜0.5であることが好ましい。
なお、本発明においていずれかの工程で延伸処理を行う場合には、前記tra、trbおよびtrcは延伸処理後における測定値から算出されるものである。また、A層、B層またはC層がが複数層から構成される場合は、ta、tbまたはtcはその総和を示す。
まず、各層を構成する成分をヘンシェルミキサー等の粉体混合機や、一軸あるいは二軸混練機もしくはニーダー等の混練機を用いて混合し、一旦造粒してもよい。
各層を構成する樹脂組成物または造粒物を用いて前記積層体を作製する。積層体の作製方法としては、熱接着法、押出しラミネーション法、ドライラミネーション法、共押出法等が挙げられる。なかでも、Tダイ成形法またはインフレーション成形法による共押出法が特に好適に用いられる。
また、剥離層のC層に予め接着層のB層を積層させておき、公知のラミネート技術を用いて、B層にA層を張り合わせることによっても前記積層体を作製することができる。
中間層のA層の表面においては接着層のB層がいわゆる蓋をしているので、A層の表面において過飽和状態を作り出すことができ、A層の表面にスキン層を生じさせることなく厚さ方向に連通性を有する微小孔を形成できる。
本工程においては、通常A層と共に前記B層およびC層にも超臨界状態または亜臨界状態で含浸させた流体が該状態から解放された時に微小孔が形成される。一方、積層体の最表面においては微小孔が形成されず無孔層となってしまうが、B層およびC層は後の工程で剥離するため、厚さ方向の連通性は損なわれない。
なかでも好ましい気体としては、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、エチレン、エタン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロエタン、テトラフルオロメタン、トリフルオロメタンおよび1,1−ジフルオロエチレンが挙げられる。 このうち不活性ガスである二酸化炭素と窒素は非可燃性であり非毒性であり、かなりの安価であり、さらに、ほとんどのポリマーに対して非反応性であるという点で特に好ましい。
積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させる具体的な方法は公知の方法に従って良い。
例えば、積層体をオートクレーブ等の耐圧容器に入れ、上に例示したような流体にして積層体に含浸させる気体状または液体状の物質を封入する。ついで、耐圧容器内の温度または/および圧力を上げて超臨界状態または亜臨界状態をつくる。すなわち、耐圧容器内の温度を0.5Tc以上、好ましくは臨界温度以上に上げるか、または/および、耐圧容器内の圧力を0.5Pc以上、好ましくは臨界圧力以上に上げる。特に、耐圧容器内の温度を臨界温度以上に上げるとともに圧力を臨界圧力以上に上げることがより好ましい。
窒素を使用した場合、窒素の臨界温度が126.2K、臨界圧力が3.40MPaであるから、温度は常温のまま圧力を3MPa以上とすることが好ましい。
亜酸化窒素を使用した場合、亜酸化窒素の臨界温度が309.6K、臨界圧力が7.24MPaであるから、温度は常温のまま圧力を7MPa以上とすることが好ましい。
エチレンを使用した場合、エチレンの臨界温度が282.4K、臨界圧力が5.04MPaであるから、温度を283.2K以上とし、圧力を5MPa以上とすることが好ましい。
エタンを使用した場合、エタンの臨界温度が305.2K、臨界圧力が4.88MPaであるから、温度は常温のまま圧力を4.5MPa以上とすることが好ましい。
このとき温度または圧力は急激に常温または常圧まで戻しても良いし、徐々に下げていっても良い。また、常温以下の温度または常圧以下の圧力にまで一端下げてから、常温または常圧まで戻しても良い。
B層およびC層を剥離する方法は特に限定されず公知の手段を用いてよいが、例えば力をかけて引裂くことにより剥離することができる。B層およびC層を剥離する際は加熱または冷却などの前処理を行ってもよく、剥離剤などを用いてもよい。
延伸温度は特に限定されるものではないが、各層を構成する熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度、好ましくは融点より30℃以下で延伸することが好ましい。延伸温度が融点に近づきすぎると、B層およびC層が剥離しにくくなる可能性が生じる。
これらの処理は公知方法で行うことができる。例えば前記熱処理は、加熱ロールによる接触加熱、オーブン中での空気中加熱等、公知の任意の方法で行うことができる。また、前述の延伸装置を転用することも可能である。熱処理温度は、積層体を構成する各層を構成する熱可塑性樹脂の融点未満の任意の温度で行うことができるが、好ましくは100℃以上で前記樹脂の融点未満、より好ましくは110℃以上130℃以下としている。
本発明の多孔体の物性は、中間層Aを構成する前記熱可塑性樹脂組成物の種類、亜臨界または超臨界流体を含浸する条件、延伸条件(延伸倍率、延伸温度等)等によって自由に調整することができる。
例えば、おむつや生理用品などの衛生用品に使用する場合、透気度は1〜2,000秒/100mlであることが好ましい。
また、電池用セパレーターとして用いる場合、透気度は1〜500秒/100mlであることが好ましい。
例えば、A層を構成する熱可塑性樹脂におけるソフトセグメントの含有量が多くなれば、超臨界状態または亜臨界状態の流体が含浸しやすくなるから、透過性や空孔率は大きくなる。また、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させる時間を長くしたりしても、透過性や空孔率を大きくすることができる。
耐熱性の指標として 本発明の多孔体は、その熱収縮率が25%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。熱収縮率が25%よりも大きいと、本発明の多孔体を電池用セパレーターとして用いた場合、多孔体の端部にて正極と負極が接触し、短絡してしまうことが懸念される。
なかでも、本発明の多孔体はフィルム状を呈することが好ましい。即ち、多孔体の平均厚みは1〜250μmで、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは10〜150μmである。
なお、平均厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて面内を不特定に5箇所測定し、その平均を算出して得られる値である。
なかでも、本発明の多孔体は各種電子機器等の電源として利用されるリチウムイオン二次電池等の非水電解液電池用セパレーターとして好適に用いられる。
本発明においては、多孔化の手段として亜臨界または超臨界流体を用い、先行文献1に記載の発明のように有機溶媒を大量に使用することがないので、環境に対する負荷を軽減できる。特に亜臨界または超臨界流体として二酸化炭素や窒素などの無毒な不活性ガスを用いればさらに環境に対する負荷を軽減できる。
さらに、本発明の多孔体の製造方法は、製造条件の幅が広く、工程管理が行いやすいという利点がある。
また、可塑剤や溶媒を除去することにより多孔化する方法においては当該可塑剤や溶媒が除去されずに残存する可能性があるが、本発明では亜臨界または超臨界流体を利用することから前記のような残存の問題は生じず、不純物のより少ない多孔体が製造できる。
図1に本発明の製造方法の第1実施形態の概略工程図を示す。
本発明の多孔体11の製造方法は、まず、熱可塑性樹脂組成物からなる中間層となるA層2と、A層2の両側に接着性樹脂を含む樹脂組成物からなる2つの接着層からなるB層3−1、3−2を積層させ、さらに2つのB層3−1、3−2のそれぞれの上に剥離層であるC層4−1、4−2を積層させた3種5層構造の積層体1を作製する第1工程と、
前記第1工程で得られた積層体1に、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させ、次いで該状態から解放して前記流体を気化させる第2工程と、
得られた積層体を少なくとも一軸方向に延伸する第3工程と、
2つのB層3−1、3−2と2つのC層4−1、4−2を剥離する第4工程とからなる。
エチレン−プロピレンゴムの含有量は5〜95質量%であることが好ましく、15〜75質量%であることがより好ましく、30〜60質量%であることがさらに好ましい。
エチレン−プロピレンゴムとしては、ゴム全体に対するエチレン含有率が30〜55質量%であるエチレン−プロピレンゴムが特に好ましい。
エチレン−プロピレンゴムの含有量およびエチレン−プロピレンゴム中のエチレン含有率を調整することにより、A層を構成するポリプロピレン樹脂組成物全体に対するエチレン含有率が5〜70質量%となることが好ましく、5〜50質量%となることがより好ましく、10〜30質量%となることが特に好ましい。
前記剥離層のC層4−1、4−2を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体またはナイロン、特に6ナイロンを用いることが好ましい。
こうして得られる積層体においては、全層の厚みtに対するA層の厚みtaの割合tra(=ta/t)が0.1〜0.5、B層の厚みtbの割合trb(=tb/t)が0.01〜0.1、C層の厚みtcの割合trc(=tc/t)が0.1〜0.5となるように調整している。
なお、各層を構成する樹脂組成物が2成分以上含む場合は予め混合してペレット化しておくのが好ましい。
より具体的には、二酸化炭素を使用する場合は圧力を7Mpa以上、好ましくは10Mpa以上に上げている。窒素を使用する場合は圧力を3Mpa以上、好ましくは10Mpa以上に上げている。耐圧容器内の温度は常温でよいが、加熱することもできる。
その後、耐圧容器内の圧力または温度を常圧または常温に戻すことにより、含浸された二酸化炭素または窒素を気化させる。耐圧容器内の圧力または温度は漸減させてもよいし、一気に常圧または常温に戻してもよい。
この工程では、A層2、B層3−1、3−2およびC層4−1、4−2の内部は多孔化されるが、C層4−1、4−2の表面では含浸したガスは外面から解放されて孔は形成されず、いわゆる無孔層5が形成される。
延伸処理することにより亜臨界または超臨界流体により生じた微孔を広げて、隣接する独立した微小孔を連通することができ、A層2において厚さ方向の連通性を確実なものとすることができる。
本工程の延伸方法は、縦方向(長手方向)に延伸してから横方向に延伸する逐次二軸延伸が好ましい。延伸倍率としては、面積倍率で4〜16倍、好ましくは4〜9倍としている。延伸温度は40〜80℃であることが好ましい。
また、A層2がポリプロピレン樹脂からなる場合、従来のポリエチレン樹脂のみからなる多孔性フィルムより高い耐熱性を発揮することができる。
さらに、A層2にはフィラーを配合しないことで、前記多孔体11は25μmあたりの厚みに換算したときの単位面積あたりの質量(秤量という)を10〜30g/m2、好ましく10〜20g/m2と軽量化されている。
本発明の多孔体11を電池用セパレーターとして使用する場合は、透気度を50〜500秒/100mlとしている。これは、透気度を50秒/100ml未満にすると、電解液保持性が低下して二次電池の容量が低くなったり、サイクル性が低下したりするおそれがある。一方、透気度が500秒/100mlを超えると、イオン伝導性が低くなり十分な電池特性を得ることができないことによる。好ましくは100〜300秒/100mlである。
また、空孔率は30〜70%としている。これは、空孔率が30%未満ではイオン透過性が低く十分な電池性能を得ることが困難である一方、空孔率が70%を越えると電池の安全性の観点から好ましくないことによる。より好ましくは35〜65%である。
正極板21、負極板22の両極をセパレーター10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、セパレーター10は厚さが5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましい。厚みが5μm未満であるとセパレーターが破れやすくなり、40μmを越えると電池用セパレーターとして所定の電池缶に捲回して収納する際、電池面積が小さくなり、ひいては電池容量が小さくなるからである。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.4mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。即ち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)に導電助剤としてリン状黒鉛を質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにした。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚さ20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
この場合、接着層のB層3−1、3−2の表面に剥離層を設けていないが、接着層を中間層の両側外面に積層して、空気溜まりをさせない状態で密着させていることにより、接着層が中間層に対して蓋の役割を果たす。
中間層のA層2と両側外面の接着層のB層3−1、3−2を積層した後、該積層体に第1実施形態と同様に、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させ、次いで該状態から解放して前記流体を気化させて、中間層のA層2に微小孔を形成する。
その後、延伸して、微小孔を連通させた後、両側外層の接着層のB層3−1、3−2を剥離する。
接着層のB層を剥離した状態で、第1実施形態の表面に微小孔が開口すると共に、内部の微小孔と連通した多孔体を製造することができる。
即ち、図4(A)に示すように、A層2に対して、第1、第2実施形態と同様に、超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させ、次いで該状態から解放して前記流体を気化させている。この状態で、図4(B)に示すように、A層2には独立した微小孔2aや、隣接した微小孔が連通した連通微小孔2bが混在した状態で形成される。また、A層2の両側外面には第1、第2実施形態のように蓋となる接着層を積層していないため、無孔のスキン層2cが残存する。
この状態で、延伸処理を行うことで、前記独立した微小孔2a、連通した微小孔2bをさらに連通させ、微小孔2a、2bが連通した図4(C)に示す三次元網状に連通した微小孔を形成することができる。図4(C)において、斜線部分が樹脂部を示し、空白部分が微小孔を表す。
実施例は、前記第1実施形態の製造方法により多孔体(多孔フィルム)を製造した。
中間層のA層を構成する熱可塑性樹脂組成物としてポリプロピレンにエチレンプロピレンゴムを含有させた熱可塑性エラストマー(三菱化学株式会社製「Zelas5013」)を、
接着層のB層を構成する樹脂組成物として接着性樹脂[三井化学社製、アドマーQF551]を、
剥離層のC層を構成する熱可塑性樹脂組成物としてポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート樹脂、イーストマンケミカル製「イースターPETG6763」)を準備した。
得られた積層体を圧力容器に仕込み、常温下で圧力容器内に不活性ガスである二酸化炭素を封入した。ついで圧力を15MPaまで上げて二酸化炭素を亜臨界状態または超臨界状態とし、この状態を1時間保持して積層体に亜臨界状態または超臨界状態の二酸化炭素を含浸させた。その後、圧力容器のバルブを全開放して容器内の圧力を解放した。
得られた積層体をストレッチャーにて延伸温度70℃で、縦方向(長手方向)に2.5倍、横方向に2倍の延伸倍率で逐次延伸を行い、その後125℃で熱固定を行った。
その後、B層とC層を剥離して、実施例1の多孔フィルムを得た。
使用する樹脂、層比、流体含浸条件、延伸条件を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして多孔フィルムを得た。なお、実施例2〜6は本発明方法の実施例に相当するが、実施例6の方法で製造された多孔フィルムはA層にジエン共重合体の水添スチレンブタジエンエラストマー「ダイナロン1320P」を含むため、ジエン共重合体を含まない実施例1〜4の透気度より劣るため、製造された多孔フィルムは参考実施例6としている。
「ゼラス5013」;ポリプロピレンホモポリマーにエチレン−プロピレンゴムを含有されている重合型のポリプロピレン樹脂組成物(三菱化学株式会社製「Zelas5013」、密度0.88g/cm3、メルトフローレート0.8g/10分)
「ゼラス7023」;ポリプロピレンホモポリマーにエチレン−プロピレンゴムを含有されている重合型のポリプロピレン樹脂組成物(三菱化学株式会社製「Zelas7023」、密度0.88g/cm3、メルトフローレート0.8g/10分)
「F104A」;ポリプロピレンホモポリマー(三井住友ポリオレフィン株式会社製「F104A」、密度0.9g/cm3、メルトフローレート3.2g/10分))
「T310V」;エチレン−プロピレンゴム(出光興産株式会社製「T310V」、密度0.88g/cm3)
「PETG」;ポリエステル樹脂(イーストマンケミカル製「イースターPETG6763」)
「EG8200」;オレフィン系熱可塑性エラストマー(詳細にはエチレンと1−オクテンの共重合体)(ダウケミカル製「エンゲージ8200」)
「8630P」;水添スチレンブタジエンエラストマー(JSR(株)製「ダイナロン1320P」)
「QF551」;変性ポリオレフィン樹脂(三井化学(株)製「アドマーQF551」)、
「ノバミッド」;ナイロン樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「ノバミッド1022」)
「EVAL」;エチレン−ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製「エバールSP292」、密度;1.13g/cm3、メルトフローレート;2.2g/10分)
比較例1は前記特許文献1の特開平5−25305号公報の実施例1に記載の方法で多孔膜を作製した。
即ち、重量平均分子量が2.0×106の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)20質量%と、重量平均分子量が3.9×105の高密度ポリエチレン(HDPE)66.7質量%と、メルトインデックス(190℃、2.16kg荷重)2.0g/10分の低密度ポリエチレン(LDPE)13.3質量%とを混合した原料樹脂15質量部と、流動パラフィン(64cst/40℃)85質量部とを混合し、ポリエチレン組成物の溶液を調製した。
次に、このポリエチレン組成物の溶液100質量部に、2,5−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(「BHT」、住友化学工業(株)製)0.125質量部と、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシルフェニル)−プロピオネート〕メタン(「イルガノックス1010」、チバガイギー製)0.25質量部とを酸化防止剤として加えた。この混合液を撹拌機付のオートクレーブに充填し、200℃で90分間撹拌して均一な溶液を得た。 この溶液を直径45mmの押出機により、Tダイから押出し、冷却ロールで引取りながらゲル状シートを成形した。
得られたシートを二軸延伸機にセットして、温度115℃、延伸速度0.5m/分で5
×5倍に同時二軸延伸を行った。得られた延伸膜を塩化メチレンで洗浄して残留する流動パラフィンを抽出除去した後、100℃で30秒熱セットすることによってポリエチレン微多孔膜を得た。
比較例2は前記特許文献3の特開2004−95550号公報の実施例1に記載の方法で多孔性フィルムを作製した。
高密度ポリエチレン(株式会社プライムポリマー製「HI−ZEX7000FP」、密度;0.956g/cm3、メルトフローレート;0.04g/10分)100質量部、軟質ポリプロピレン(出光石油化学社製「PER R110E」)15.6質量部、硬化ひまし油(豊国製油株式会社製「HY−CASTOR OIL」、分子量938)9.4質量部、硫酸バリウム(堺化学社製「B−55」)187.5質量部をブレンドしてコンパウンドを行った。 次に、得られたコンパウンドを用いて温度210℃でインフレーション成形を行い、原反シートを得た。
次に得られた原反シートを70℃でシートの長手方向(MD)に1.23倍、次いでll5℃で横方向(TD)に2.86倍の逐次延伸を行い、多孔性フィルムを得た。
1/1000mmのダイアルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(測定2;透気度(ガーレ値))
JIS P 8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。
(測定3;空孔率)
空孔率は多孔体中の空間部分の割合を示す数値である。空孔率の算出方法は、多孔体の実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、多孔体の実質量との差から下記式に基づき空孔率を算出する。
空孔率Pv(%)={(W0−W1)/W0}×100
(測定4;坪量)
坪量は単位面積あたりの質量を表す数値である。その測定方法は、多孔体を10cm角に切り出し、その質量を測定する。厚みによる依存性が大きいので、今回は25μmあたりの厚みに換算し、この操作を3回繰り返し、その平均を坪量とした。
比較例2の多孔性フィルムでは全層に充填剤が存在しているため坪量が33g/m2と重たくなってしまうが、実施例1〜6の多孔性フィルムでは坪量が10〜12g/m2と小さく、軽量化が可能であることがわかった。
2 中間層のA層
3−1、3−2 接着層のB層
4−1、4−2 剥離層のC層
10 セパレーター
11 多孔体
20 非水電解質電池
21 正極板
22 負極板
Claims (7)
- 表面に開口すると共に厚さ方向に連通性を有する多数の微小孔が存在する多孔体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂組成物からなる少なくとも1層の中間層と、該中間層の両側の接着性樹脂を含む樹脂組成物からなる接着層の外層に固着して一体化した剥離層を設けて少なくとも5層構造の積層体を作製する工程と、
得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることにより、前記積層体に微小孔を形成して多孔化する工程と、
前記積層体を多孔化した後に前記一体化した接着層と剥離層とを剥離する工程と、
を備えることを特徴とする多孔体の製造方法。 - 前記中間層の熱可塑性樹脂組成物は、少なくともポリプロピレン樹脂を含むハードセグメントと、ソフトセグメントを有し、
前記接着層は、エチレン系共重合体と、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はこれらの水素添加誘導体、または変性ポリオレフィン系樹脂を含むものである請求項1に記載の多孔体の製造方法。 - 表面に開口すると共に厚さ方向に連通性を有する多数の微小孔が存在する多孔体の製造方法であって、
少なくともポリプロピレン樹脂を含むハードセグメントと、ソフトセグメントを有する熱可塑性樹脂組成物からなる少なくとも1層の中間層と、該中間層の両側に接着性樹脂として、エチレン系共重合体、軟質の芳香族系炭化水素と共役ジエン系炭化水素との共重合体又はこれらの水素添加誘導体、または変性ポリオレフィン系樹脂を含む樹脂組成物からなる接着層が積層された少なくとも3層構造の積層体を作製する工程と、
得られた積層体に超臨界状態または亜臨界状態の流体を含浸させた後に、該超臨界状態または亜臨界状態から解放して前記流体を気化させることにより、前記積層体に微小孔を形成して多孔化する工程と、
前記積層体を多孔化した後に前記接着層を剥離する工程と、
を備えることを特徴とする多孔体の製造方法。 - 前記微小孔を形成する多孔化工程の後、あるいは、前記接着層の剥離工程の後に、少なくとも一軸方向に延伸して前記微小孔を更に連通させる延伸工程を含む請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の多孔体の製造方法。
- 前記超臨界状態または亜臨界状態で含浸させる流体が、二酸化炭素または窒素である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の多孔体の製造方法。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の製造方法で製造され、前記少なくとも1層の中間層は、ポリプロピレン樹脂を含むハードセグメントと、エチレンプロピレンゴムを含むがジエン共重合体は含まないソフトセグメントとよりなる熱可塑性樹脂組成物からなり、透気度が1〜10,000秒/100mlである多孔体を用いていることを特徴とする電池用セパレーター。
- 請求項6に記載の電池用セパレーターを備えることを特徴とする電池。
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