JP5994016B2 - 多孔性フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電器自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧及び長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン電池の用途が広がっている。
非水電解液用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてポリプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステルが主にしようされている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒に溶かして使用している。
また、前記特許文献2、3に記載の多孔性フィルムは、いずれも二次電池のセパレータとして用いた場合、前記と同様に最近の電池の高エネルギー密度化に伴い、ポリプロピレンでは耐熱性が十分とは言い難くなってきており、より高温でもBD特性を発揮できることが求められている。
また、前記特許文献4に記載のセパレータは、通気性と耐熱性を有するポリオレフィン樹脂製多孔膜が得られるが、厳密な製造条件の制御を必要とし、且つ生産性も良くないという問題を有している。
また、特許文献5に記載の積層多孔性フィルムは、電池用セパレータとして適した電気抵抗を有し、あわせて適度な強度も保持されており、さらにポリプロピレン単層多孔性フィルムよりも優れたブレイクダウン特性を有するが、前記ポリプロピレン系樹脂を含む層の樹脂組成物の結晶融解ピーク温度より高い結晶融解ピーク温度を持つ樹脂組成物としてポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素系樹脂及びポリメチルペンテン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、更にフィラーを配合した層としていることが好ましいと示されており、具体的にはポリメチルペンテン樹脂として三井化学社製の商品名「TPX RT−18」(MFR=26g/10分、Tm=237℃)にフィラーとして硫酸バリウム、可塑剤として豊国精油社製の商品名「ハイカスターワックス HCOP」がポリメチルペンテン樹脂/フィラー/可塑剤=47.5/50.0/2.5質量%が実施例に示されており、フィラーを高充填するため得られる積層多孔性フィルムの厚み分布が悪く、且つ生産性も良くないという問題を有している。
本発明は、上の問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、電気性能に寄与する優れた透気特性を有しながら、安全性の確保の点で重要なブレイクダウン特性を具備した多孔性フィルムを提供することを目的とする。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%も含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。ここで、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特性する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
本発明におけるA層は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−100〜20℃の間に少なくとも1つ存在するポリ4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物を主成分とする。
本発明におけるポリ4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物は、動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−100〜20℃の間に少なくとも1つ存在することが重要である。なお、本発明における損失正接のピーク温度とは、損失正接(tanδ)がピーク値(極大値)を示す温度のことである。
ここで、損失正接のピーク温度が−100〜20℃の間に少なくとも1つ存在することにより、少なくとも1方向に延伸した際に破断することなく多孔化することが可能となるため好ましく、延伸加工の点では損失正接のピーク温度の下限としては−100℃以上であり、上限としては20℃以下である。また、損失正接のピーク温度が該温度範囲に少なくとも1つ存在することにより、少なくとも1 方向に延伸した際に延伸性が良好となり、延伸時の破断トラブル等が生じることは無い。また、延伸時の多孔化のし易さが良好となると考えられ、少なくとも1方向に延伸した場合の延伸性と延伸による多孔化のし易さとの両立が可能となる。また本発明の主旨を超えない範囲であれば、動的粘弾性測定により測定した損失正接のピークは−100〜20℃の間に2つ以上存在しても構わない。なお、現実的な損失正接のピーク個数の上限は5つである。
本発明のポリ4−メチル−1−ペンテン系重合体((a1)成分)は、4−メチルペンテン−1の単独重合体または4−メチルペンテン−1と他のα−オレフィンとの共重合体である。炭素原子数が2〜20の4−メチルペンテン−1以外のα−オレフィンとしては、たとえばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−ヘキサデセン、1−ドデセン、1−テトラドデセン、1−エイコセン等が挙げられる。これらの他のαオレフィンは1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。ポリ4−メチル−1−ペンテン系重合体が、α−オレフィンとの共重合体の場合、当該α−オレフィン重合単位の含有量は10質量%以下が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
本発明における軟質成分((a2)成分)は、少なくとも1方向に延伸した場合の延伸性と延伸による多孔化のし易さ及び耐薬品性の観点から、ビニル芳香族化合物と共役ジエンの共重合体、またはその水素添加誘導体を用いるのが特徴である。
本発明におけるビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体、またはその水素添加誘導体について説明する。前記共重合体は、一般的にゴム弾性を有し、柔軟で破れにくい特性を有しており、またその水素添加誘導体は押出工程時の耐熱性に優れるので、黄変などの問題を起こすことが無い。なお、本発明におけるビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体、またはその水素添加誘導体のガラス転移温度は0℃以下が好ましく、−20℃以下がより好ましい。ガラス転移温度が0℃以下であることによって、延伸時の多孔性付与の効果をより得ることができる。
本発明の多孔性フィルムは、単層、積層と特に限定されるものではないが、必要に応じてA層と、A層とは異なる機能を持つ層(B層)とが積層されていることが好ましい。
ここで、多孔性フィルムの積層構成について説明する。最も単純な構成がA層とB層との2層構造、次に単純な構成が両外層と中層との2種3層構成であり、これらがより好ましい構成である。2種3層の形態の場合、A層/B層/A層であってもB層/A層/B層であっても構わない。またB層/A層/B層/A層/B層のような、2種5層の積層構造とすることもできる。層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
中でも、B層/A層/B層の2種3層構成は、得られる多孔性フィルムのカール度合いや表面平滑性が良好だけでなく、製造において延伸加工性が優れているため、更に好ましい。
A層及びB層以外の他の層が存在する場合、当該他の層はA層とB層との関係が前述した関係からはずれないように設ける必要がある。他の層の厚みの合計が全体の厚み1に対して0.1〜0.5、好ましくは0.1〜0.3となるようにすることが好ましい。
次に本発明におけるB層について説明する。本発明におけるB層は、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層であることが好ましい。
本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、電池用セパレータに用いる場合には機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
アイソタクチックペンタッド分率とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素―炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al.(Macromol.8,687(1975))に準拠する。
本発明のB層はβ活性を有することが好ましい。
β活性は、延伸前の膜状物にβ晶を生成したことを示す1指標として捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、透気特性を有する多孔性フィルムを得ることができる。
具体的には、示差走査型熱量計で多孔性フィルムを25℃から240℃まで走査温度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β活性を有すると判断する。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上175℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合には、主に120℃以上140℃未満で検出されているβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
β活性度が20%以上であれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶が多く生成させることができることを示し、延伸により微細且つ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気特性に優れた多孔性フィルムとすることができる。
β活性度の上限値は特に限定されないが、β活性度が高いほど前記効果より有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
次に本発明で用いるβ晶核剤について説明する。β晶核剤はポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に制限される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いることもできる。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる二成分化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
本発明の多孔性フィルムの形態としては、平面状、チューブ状の何れであっても良いが、製品として数丁取りが可能であることが生産性の観点から好ましく、更に内面コードなどの処理を施すのに簡便なことから平面状がより好ましい。
本発明の多孔性フィルムの厚みは1〜500μmが好ましく、より好ましくは5〜300μm、更に好ましくは5〜100μm、特に好ましくは7〜50μm、最も好ましくは10〜40μmである。厚みが1μm以上であれば、実質的に十分な透気特性を得ることができ、機械強度の観点においても問題とならないため好ましい。また、厚みが500μm以下であれば、実質的に十分な機械強度を得ることができ、透気特性の観点においても問題とならないため好ましい。
その指標として、本発明の多孔性フィルムを電池用セパレータ用途に用いる場合には、25℃での透気度は5〜3000秒/100mlが好ましい。
前記透気度の上限については、3000秒/100ml以下が好ましく、2000秒/100ml以下がより好ましく、1000秒/100ml以下が更に好ましく、500秒/100ml以下が特に好ましい。すなわち、前記透気度が3000秒/100ml以下であれば、連通性を有し、十分な透気特性を有することが示唆されるので、電池用セパレータとして使用する場合、室温使用時においてイオン伝達性を確保し、十分な電池特性を得ることができる。
一方、前記透気度の下限については特に限定しないが、5秒/100ml以上が好ましく、より好ましくは20秒/100ml以上であり、更に好ましくは50秒/100ml以上である。前記透気度が5秒/100ml以上であれば、孔径が適度に小さく、機械強度を十分に高く維持でき、電池用セパレータとして使用する場合、内部短絡等のトラブルを回避することができる。
透気度は多孔性フィルムの厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には、100mlの空気が当該多孔性フィルムを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜けやすく、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が多孔性フィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が多孔性フィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは多孔性フィルムの厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の透気度が低いということは、電池用セパレータとして使用する場合、イオンの移動が容易であることを意味し、電気特性に優れるため好ましい。なお、透気度は実施例に記載の方法で測定される。
次に本発明の多孔性フィルムの製造方法について説明するが、本発明は係る製造方法により製造される多孔性フィルムのみに限定されるものではない。
本発明の多孔性フィルムの製造方法について、A層とB層とを積層させる場合は、多孔化と積層の順序によって次の3つに大別される。
(a)A層の多孔性フィルムとB層の多孔フィルムを作製し、ついで少なくともA層の多孔性フィルムとB層の多孔性フィルムを積層する方法。
(b)A層とB層の積層無孔膜状物を作成し、ついで該無孔膜状物を多孔化する方法。
(c)A層とB層の2層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
前記(b)の方法としては、A層の無孔膜状物とB層の無孔膜状物をそれぞれ作製し、A層の無孔膜状物とB層の無孔膜状物を熱ラミネートや接着剤等で積層化した後に多孔化する方法、または共押出でA層とB層を少なくとも有する積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法などが挙げられる。
前記(c)の方法としては、A層の多孔性フィルムとB層の無孔膜状物、またはA層の無孔膜状物とB層を熱ラミネート、接着剤、塗布等で積層化する方法が挙げられる。
本発明において、その工程の簡便さ、生産性の観点から(b)の方法が好ましく、共押出を用いる方法がより好ましい。
すなわちB層にβ活性を有させる場合、延伸することによって微細孔を容易に形成することができる。一方、A層を多孔化する方法としては、例えば延伸法、相分離法、抽出法、化学処理法、照射エッチング法、発泡法またはこれらの技術の組み合わせなど公知の方法を用いることができる。中でも本発明においては延伸法を用いることが好ましい。
前記積層無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸や逐次二軸延伸などの二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて二軸延伸を行う。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要な多孔性フィルムの膜厚、延伸条件、ドラフト率などの各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0mmである。ギャップが0.1mm以上とすることで、より十分な生産速度を確保することができる。一方、3.0mm以下とすることで、より十分な生産安定性を確保することができる。
キャストロールの冷却固化温度は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させたB層中のβ晶の比率を十分に増加させることができるため好ましい。
また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻きついてしまうなどのトラブルが起こり難く、効率よく製膜することが可能であるため好ましい。
延伸前のB層中のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、当該B層を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式により算出される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
縦延伸での延伸温度は概ね10〜130℃が好ましく、より好ましくは15〜125℃である。また、縦延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を制御しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
横延伸での延伸温度は概ね90〜150℃が好ましく、より好ましくは95〜130℃、更に好ましくは100℃〜125℃である。また、横延伸倍率は好ましくは1.5〜3倍、より好ましくは1.8〜2.5倍、更に好ましくは1.8〜2.3倍である。前記範囲内で横延伸を行うことで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
また、延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、750〜10000%/分がより好ましく、1000〜80000%/分が更に好ましい。前記範囲内の延伸速度で延伸することによって、大きな欠陥構造のような空孔が形成されることなく、微細な多孔構造を発現させることができる。
次に、本発明の前記多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、電池用セパレータ10は厚みが5〜40μmであることがなかでも好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。厚みを5μm以上にすることにより電池用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
多孔化させる前の積層無孔膜状物から表裏面を剥離させ、実質A層のみのサンプルを作製し、JIS K−7198 A法に記載の動的粘弾性測定法により、岩本製作所(株)製粘弾性スペクトロメーター「VES−F3」を用い、振動周波数10Hz、歪み0.1%にて、昇温速度=3℃/分で、−100℃〜250℃まで測定し、得られた損失正接(tanδ)のピーク温度を測定した。
得られた多孔性フィルムを1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
得られた多孔性フィルムの実質量W1を測定し、樹脂組成物の密度と厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
得られた多孔性フィルムから直径φ40mmの大きさでサンプルを切り出し、JIS P 8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。
得られた多孔性フィルムを、縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように、中央部に40mmφの円状の穴を空けたアルミ板(材質:JIS規格A5052、サイズ:縦40mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間に挟み、図2(B)に示すように周囲をクリップ(KOKUYO社製、ダブルクリップ「クリーJ35」で拘束した。
アルミ板2枚で拘束した状態のフィルムを150℃以上の5℃刻みの各温度(150℃、155℃、160℃、165℃、・・・)に設定したオーブン(タバイエスペック社製、タバイギヤオーブン「GPH200」、ダンパー閉状態) に入れ、オーブン内温度を各温度に達してから、3分間保持した後、直ちに取り出し、フィルムの状態を確認して形状保持特性を観察し、破膜が認められた温度をブレイクダウン温度とした。
なお、フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部の400mmφの円状の穴にフィルムが設定されるように調整し、試料を作成しても構わない。
(6)示差走査型熱量測定(DSC)
得られた多孔性フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。この再昇温時にポリプロピレンのβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ活性の有無を以下の基準にて評価した。
○:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出された場合(β活性あり)
×:Tmβが145℃〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、β活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
前記ブレイクダウン特性の測定の場合と同様に、多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)(B)に示すように固定した。
アルミ板2枚に拘束した状態の多孔性フィルムを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で多孔性フィルムを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られた多孔性フィルムについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置: マックサイエンス社製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレンのβ晶の(300)面に由来するピークより、β活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、多孔性フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に多孔性フィルムが設置されるように調整し、試料として作成しても構わない。
A層を構成するポリ4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物について、(a1)成分として、ポリ4−メチル−1−ペンテン系重合体(TPX)(三井化学社製、TPX RT18、MFR:21g/10分[260℃、5kg荷重])60質量部に、(a2)成分として、結晶性オレフィン−エチレン・ブテン−結晶性オレフィンブロック共重合体(CEBC)(JSR社製、DYNARON6200P、MFR=2.5[230℃、2.16kg荷重])40質量部、及びマイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製、Hi−Mic1080)10質量部を加え、同型の同方向二軸押出機を用いて270℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A1を得た。なお、A層における損失正接のピーク温度は、−46℃、42℃であった。
また、B層を構成する樹脂組成物について、ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.3質量部を加え、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径φ40mm、L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物B1を得た。
樹脂組成物A1およびB1を別々の押出機にてA1側の押出機は200℃、B1側の押出機は255℃で押出し、2種3層のフィードブロックを通じて多層成型用のTダイより255℃で押出し、延伸後の層比がB1/A1/B1=3/1/3となるように積層させた後、125℃のキャスティングロールで冷却固化させて、厚さ110μmの積層無孔膜状物1を得た。
前記積層無孔状物1をロール延伸機にて10℃〜120℃で縦方向に3.8倍となるように延伸した後、テンター延伸機にて横方向に100℃で2.0倍に逐次二軸延伸をして多孔性フィルムを得た。
得られた多孔性フィルムの諸物性及び評価を行い、その結果を表1にまとめた。
A層を構成する(a2)成分をスチレン−ブタジエン−スチレントリブロック共重合体の水素添加物(SEBS)(クラレ社製、SEPTON 8006、数平均分子量200,000、スチレン含有量33%、水素添加率95%以上) とした以外は、参考例1と同様の方法にて樹脂組成物A2を作製し、厚さ110μmの積層無孔膜状物2を得た。なお、A層における損失正接のピーク温度は、−54℃、42℃であった。
得られた積層無孔膜状物2をロール延伸機での縦方向の延伸倍率を2.6倍とした以外は参考例1と同様の条件で多孔性フィルムを得た。
得られた多孔性フィルムの諸物性及び評価を行い、その結果を表1にまとめた。
A層を構成する混合樹脂組成物について、前記TPXを70質量部、前記SEBSを30質量部とした以外は、実施例2と同様の方法にて樹脂組成物A3を作製し、厚さ110μmの積層無孔膜状物3を得た。なお、A層における損失正接のピーク温度は、−54℃、42℃であった。
得られた積層無孔膜状物3をロール延伸機での縦方向の延伸倍率を3.0倍とした以外は参考例1と同様の方法で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの諸物性及び評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例3と同様の方法にて厚さ110μmの積層無孔膜状物3を作製し、得られた積層無孔膜状物3をロール延伸機にて10℃〜120℃で縦方向に3.0倍となるように延伸した後、105℃に温調したφ200mmのロール2本で熱処理を施し、多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの諸物性及び評価を行い、その結果を表1にまとめた。
A層を構成する混合樹脂組成物について、前記TPXを75質量部、前記CEBCを25質量部とし、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製、Hi−Mic1080)を添加しない以外は参考例1と同様の方法にて樹脂組成物A4を作製し、厚さ105μmの積層無孔膜状物4を得た。なお、A層における損失正接のピーク温度は、−46℃、42℃であった。
得られた積層無孔膜状物4をロール延伸機での縦方向の延伸倍率2.6倍とし、テンター延伸機での横方向の延伸倍率を2.5倍とした以外は参考例1と同様の方法で多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムの諸物性及び評価を行い、その結果を表1にまとめた。
A層を構成する混合樹脂組成物について、前記TPXのみとした以外は参考例1と同様の方法にて、厚さ110μmの積層無孔膜状物5を得た。なお、A層における損失正接のピーク温度は存在しなかった。
得られた積層無孔膜状物5から参考例1と同様の条件で多孔性フィルムを得ようとした。しかし、積層無孔膜状物5を横方向に延伸する際に破断してしまい、多孔性フィルムを得ることができなかった。
参考例1にて、A層を構成する樹脂組成物を前記樹脂組成物B1とし、実質的に樹脂組成物B1単層となるように厚さ180μmの積層無孔膜状物6を得た。得られた積層無孔膜状物6をロール延伸機にて10℃〜85℃で縦方向に4.0倍となるように延伸した後、テンター延伸機にて横方向に140℃で5.0倍に逐次二軸延伸をして多孔性フィルムを得た。
これに対して、比較例1のようにA層を構成するポリ4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物が動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−100〜20℃の間に存在しない場合には、延伸時にフィルムが破断してしまい、多孔性フィルムを得ることができなかった。
また比較例2のように、ポリ−4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物を主成分とするA層を含まない場合には、透気特性が良好な多孔性フィルムとなるが、ブレイクダウン温度が190℃となり、十分なブレイクダウン特性を具備していなかった。
20 非水電解液電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 フィルム
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向
Claims (10)
- 動的粘弾性測定により周波数10Hzで測定した損失正接のピーク温度が−100〜20℃の間に少なくとも1つ存在するポリ4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物を主成分とする層(A層)を有する無孔膜状物を作製する工程と、当該無孔膜状物を少なくとも1方向に延伸する工程を有する多孔性フィルムの製造方法であって、
当該ポリ4−メチル−1−ペンテン重合体系樹脂組成物が、ポリ4−メチル−1−ペンテン系重合体である(a1)成分と、ビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合体、またはその水素添加誘導体である(a2)成分とを含み、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定される当該(a2)成分のメルトフローレートが0〜1g/10分である、多孔性フィルムの製造方法。 - 前記(a2)成分が、スチレン−ブタジエンブロック共重合体の水素添加誘導体であり、スチレン含有量が1質量%〜50質量%である、請求項1に記載の多孔性フィルムの製造方法。
- 前記(a1)成分と前記(a2)成分との割合が、質量比で(a1)/(a2)=55/45〜90/10である、請求項1または2に記載の多孔性フィルムの製造方法。
- 前記無孔膜状物が、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層(B層)を更に有する積層無孔膜状物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔性フィルムの製造方法。
- 前記積層無孔膜状物を作製する工程が熱ラミネート法又は共押出法である、請求項4に記載の多孔性フィルムの製造方法。
- 前記A層の無孔膜状物を作製する工程と、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層(B層)の多孔性フィルムを作製する工程と、前記A層の無孔膜状物と前記B層の多孔性フィルムを積層した後、少なくとも1方向に延伸して前記A層を多孔化する工程を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の多孔性フィルムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により前記A層の多孔性フィルムを作製する工程と、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層(B層)の多孔性フィルムを作製する工程と、前記A層の多孔性フィルムと前記B層の多孔性フィルムを積層する工程を有する、多孔性フィルムの製造方法。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により前記A層の多孔性フィルムを作製する工程と、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする層(B層)の無孔膜状物を作製する工程と、前記A層の多孔性フィルムと前記B層の無孔膜状物を積層した後に前記B層を多孔化する工程を有する、多孔性フィルムの製造方法。
- 前記B層がβ活性を有する、請求項4〜8のいずれか1項に記載の多孔性フィルムの製造方法。
- 前記B層がβ晶核剤を含有する、請求項9に記載の多孔性フィルムの製造方法。
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