JP6379484B2 - 積層多孔性フィルム、電池用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、積層多孔性フィルムに関し、包装用品、衛生用品、畜産用品、農業用品、建築用品、医療用品、分離膜、電池セパレータとして利用でき、特に非水電解液電池用セパレータとして好適に利用できるものである。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔性フィルムは、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類・衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは電池などに使用する電池セパレータなど各種の分野で利用されている。
二次電池はOA、FA、家庭用電器または通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率が良く、機器の小型化及び軽量化につながることからリチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電器自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められ、大容量、高出力、高電圧及び長期保存性に優れている点より非水電解液二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は、通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使用することが出来ない。そのため高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。
非水電解液用の溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてポリプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステルが主にしようされている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒に溶かして使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点からセパレータが正極と負極の間に介在されている。当該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる通気性と電解液の拡散・保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすためのセパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
さらに、最近では適度なシャットダウン特性を持たせたセパレータが使われ始めている。シャットダウン特性とは高温状態(一般的には100〜140℃程度)になると電池セパレータの微細孔が閉塞される機能であり、また微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度という。シャットダウン特性は電池用セパレータをリチウムイオン二次電池に組み込んで使用した場合に安全に寄与する重要な特性である。例えば電池が異常を起こし高温状態になった際にシャットダウン特性を有する電池用セパレータではその微細孔が閉塞され、電池内部のイオン伝導を遮断することにより、その後の電池内部の温度上昇を防止できる。特に最近の電池の高容量化に伴い電池の安全性に対する重要度が増している中で、本特性の必要性は更に増している。
この種の微細孔を有するフィルムを製膜する技術としては下記に示すような種々の技術が提案されており、例えば特許文献1では、ポリエチレンとポリプロピレンの積層フィルムを一軸方向に温度を変えて2段階で延伸することにより多孔質化せしめることを特徴とする電池用セパレータの製造方法が提案されている。
また特許文献2や特許文献3には、多孔性フィルムの透過性を高めるために、結晶形態の一つであるβ晶を多く含むポリプロピレンシートを延伸して多孔性フィルムを得る方法が提案されている。
また特許文献4には、ポリプロピレンとポリエチレンとβ結晶型核剤からなる樹脂組成物を、該樹脂組成物中のポリプロピレン成分の結晶相が実質的にβ結晶相である膜状物に成形し、次いで該膜状物を60℃〜135℃で延伸することと特徴とする微多孔性膜の製造方法が提案されている。
特許2883726号広報 特許2509030号公報 国際公開2002/066233号公報 特開平9−255804号公報
しかしながら、前記特許文献1について、製造方法は厳密な製造条件の制御を必要とし、かつ生産性が良いとは言い難い。例えば、多孔質化する前の積層フィルムの作成時に高いドラフト比で高次構造を制御しながら製膜を行っているが、このような高いドラフト比で安定的な製膜を行うことは非常に困難である。また、多孔構造の発現を行うためには、低温度領域と高温度領域の2段階でかつ小さい延伸速度で多段延伸を行う必要があり、延伸速度が大きく制限され、生産性が非常に悪い。更に、当該製造方法により製造されたセパレータは延伸方向と同方向の引裂きに非常に弱く、延伸方向に裂け目が生じやすい問題を有している。
また、前記特許文献2〜4について、いずれの多孔性フィルムも電池用セパレータとして用いた場合、電池の安全性に大きく寄与するシャットダウン特性についての考慮がなされておらず、よって、これらの多孔性フィルムを電池用セパレータとして使用するには電池の安全性を確保するという点で問題がある。
本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、電気性能に寄与する優れた透気性能を有しながら、安全性の確保の点で重要なシャットダウン特性を具備した電池用セパレータ及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明は、少なくとも2層の多孔質層を積層した積層多孔性フィルムであって、前記2層の多孔質層のうち1層がポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とするA層と、もう1層が230℃でのひずみ速度が10〜10/secの範囲でのせん断粘度の累乗近似の微分値が−5000以下となるポリエチレン系樹脂組成物を主成分とするB層とを有することを特徴とする積層多孔性フィルムである。
また本発明は、前記A層がβ活性を有するのが好ましい。
また本発明は、前記A層のポリプロピレン系樹脂組成物について、前記ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤が含まれているのが好ましい。
また本発明は、前記β晶核剤が、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001〜5.0質量部の割合で含まれているのが好ましい。
本発明によれば、良好な通気特性を有しながら、シャットダウン特性を具備した積層多孔性フィルム及びその製造方法を提供できる。
本発明の積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池の一部破断斜視図である。 135℃で5秒間加熱後の透気度測定および広角X線回折測定におけるフィルムの固定方法を説明する図である。
以下、本発明の積層多孔性フィルムの実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%も含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。ここで、本発明における数値範囲の上限値及び下限値は、本発明が特性する数値範囲内から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の均等範囲に包含するものである。
本発明の積層多孔性フィルムは、少なくとも2層の多孔質層を積層した積層多孔性フィルムであり、前記2層の多孔質層のうち1層がポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とするA層であり、もう1層が230℃でのひずみ速度が10〜10/secの範囲でのせん断粘度の累乗近似の微分値が−5000以下となるポリエチレン系樹脂組成物を主成分とするB層である。
以下に、本発明の積層多孔性フィルムを構成する各層の成分の詳細について説明する。
[A層]
本発明におけるA層について説明する。本発明におけるA層はポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とする。
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明におけるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、またはプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1―ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどαオレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、リチウムイオン二次電池用セパレータに用いる場合には機械的強度の観点からホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率が80〜99%であることが好ましく、より好ましくは83〜98%、特に好ましくは85〜97%であるものを使用する。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとセパレータの機械的強度が低下する恐れがある。一方アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合においてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率とは任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素―炭素結合による主鎖にたいして側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et at al.(Macromol.8,687(1975))に準拠している。
また、ポリプロピレン系樹脂は、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0以上とすることで、十分な押出成形性を有することができる。一方Mw/Mnが10.0以下とすることで、得られる積層多孔性フィルムは十分な機械強度を保持することができる。Mw/MnはGPC(ゲルパーエミッションクロマトグラフィー)法によって得られる。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時において十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔性フィルムは十分な強度を有することができる。尚、MFRはJIS K7210に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定している。
(β活性)
本発明のA層はβ活性を有することが好ましい。
β活性は、延伸前の膜状物にβ晶を生成したことを示す1指標として捉えることができる。延伸前の膜状物中のポリプロピレン系樹脂がβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、透気特性を有する積層多孔性フィルムを得ることができる。
前記β活性の有無は、示差走査型熱量計を用いて、積層多孔性フィルムの示差熱分析を行い、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度が検出されるか否かで判断している。
具体的には、示差走査型熱量計で積層多孔性フィルムを25℃から240℃まで走査温度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、更に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた際に、ポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)が検出された場合、β活性を有すると判断している。
また、前記のβ活性度は、検出されるポリプロピレン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で算出している。
β活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、ホモポリプロピレンの場合は、主に145以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上175℃以下に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜4モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合には、主に120℃以上140℃未満で検出されているβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
前記β活性度は大きい方が好ましく、具体的にはβ活性度は20%以上であることが好ましく、40%以上であることが更に好ましく、特に好ましいのは60%以上である。β活性度が20%以上であれば、延伸前の膜状物中においてもポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶が多く生成させることができることを示し、延伸により微細且つ均一な孔が多く形成され、結果として機械的強度が高く、透気性能に優れた積層多孔性フィルムとすることができる。
β活性度の上限値は特に限定されないが、β活性度が高いほど前記効果より有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
前述のβ活性を得る方法としては、溶融状態のポリプロピレン系樹脂を高ドラフトで成形する方法や、ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進される物質を添加しない方法や、特許3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレン系樹脂を添加する方法、及び樹脂組成物中にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。中でも、前記樹脂組成物中にβ晶核剤を添加してβ活性を得ることが好ましい。β晶核剤を添加することで、より均質に効率的にポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成を促進することができ、β活性を有する層を備えた積層多孔性フィルムを得ることができる。
次に本発明で用いるβ晶核剤について説明する。β晶核剤はポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に制限される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いることもできる。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンセンスルホン酸ナトリウムもしくはナフラレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分bとからなる二成分化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。
これら好ましいβ晶核剤の具体例としては、新日本理化社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
本発明において、β晶核剤は、ポリプロピレン系樹脂に配合していることが好ましい。前記ポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類またはポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、β晶核剤0.0001〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.01〜3質量部であり、更に好ましくは0.1〜3質量部である。0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成・成長させることができ、延伸により所望の透気性能が得られる。また5.0質量部以下であれば、経済的にも有利になるほか、β晶核剤のブリードアウトによるトラブルが発生しにくいため好ましい。
本実施形態に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の主旨を超えない範囲で帯電防止性、耐熱性、滑り性、力学特性等の諸物性を更に調整、向上させる目的で必要に応じて各種添加剤を適宜配合することができる。
ここで、各種添加剤としては、例えば通常のポリオレフィンに使用される酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、防曇剤や帯電防止等の界面活性剤、滑剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、顔料等が挙げられ、本発明の主旨を越えなければ特に限定されるものではない。
[B層]
次にB層について説明する。本発明におけるB層は230℃でのひずみ速度が10〜10/secの範囲でのせん断粘度の累乗近似の微分値が−5000以下となるポリエチレン系樹脂組成物を主成分とする。
(ポリエチレン系樹脂)
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、その溶融状態での粘度挙動が重要である。具体的には、230℃でのせん断ひずみ速度が10〜10/secの範囲における複素粘度挙動を測定し、本範囲における複素粘度データを累乗近似した式を微分した値が−5000以下となるポリエチレン系樹脂組成物であることが重要である。本パラメータは、溶融時の最長緩和時間(その温度で変形を受けた場合に変形が完全に緩和するために必要な時間)を示すものであり、本パラメータが低くなればなるほど溶融時の最長緩和時間が長くなる。よって例えば製膜時に高ドラフト比で引き落とし成形した場合に、本パラメータが−5000以下であれば、溶融状態で受けた変形が緩和されず、同じドラフト比で比較すると配向が強くかかるため、多孔化しやすくなるので好ましい。なお、本発明における複素粘度測定は、JIS K7244−10に準拠して、230℃で、周波数が10〜10/secの範囲で測定した場合の粘度である。
本発明におけるポリエチレン系樹脂は、上記特性を満足すれば特に制限は無く、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系共重合体のエチレン単位の含有量は、通常50質量%を超えるものである。
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリエチレン系樹脂が好ましく、結晶化熱量の観点からは高密度ポリエチレンが最も好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は前記した溶融時の粘度挙動を満足すれば特に制限されるものではないが、通常MFRは0.03〜15g/10分が好ましく、0.3〜10g/10分がより好ましく、0.3〜1.0g/10分が更に好ましく。MFRが上記範囲であれば成形加工時に押出機の背圧が高くなりすぎることが無く生産性に優れる。尚、本発明におけるMFRはJIS K7210に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件下での測定値をさす。
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒や、メタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。
また、前記B層には、脂環族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、又はワックスから選ばれる化合物xのうち少なくとも1種が含まれていることが好ましい。当該化合物xはポリエチレン系樹脂に対し比較的良好な相容性を示し、ポリエチレン系樹脂が溶融している状態では相容化し、ポリエチレン系樹脂が結晶化する際に当該化合物xが結晶界面にブリードアウトするため、例えば延伸により多孔化する際に多孔化しやすくなるため、得られる積層多孔性フィルムの透気性能の調整をすることが可能となる。
(化合物x)
本発明に使用できる脂環族飽和炭化水素樹脂及びその変性体としては、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン樹脂及びそれらの変性体等が挙げられる。
本発明に使用できる石油樹脂とは、ナフサの熱分解などによる副生成物から得られるC4〜C10の脂環族オレフィン類やジオレフィン類、オレフィン性不飽和結合を有するC8以上の芳香族化合物で、それらの中に含まれる化合物の一種または二種以上を単独あるいは共重合することにより得られる脂肪族系、芳香族系及び共重合体系石油樹脂をいう。
石油樹脂としては、例えばC5留分を主原料とする脂肪族系石油樹脂、C9留分を主成分とする芳香族石油樹脂、それらの共重合体系石油樹脂、脂環族系石油樹脂が挙げられる。テルペン樹脂としては、β−ピネンからのテルペン樹脂やテルペン−フェノール樹脂が挙げられ、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジンなどのロジン樹脂、グリセリンやペンタエリストールで変性したエステル化ロジン樹脂などが例示できる。脂環族飽和炭化水素樹脂及びその変性体はポリエチレン系樹脂に混合した場合に比較的良好な相容性を示すため好ましく、色調の変化度合いや熱安定性といった面から石油樹脂がより好ましく、水添石油樹脂が更に好ましい。
水添石油樹脂は、石油樹脂を慣用の方法によって水素化することにより得られるものである。例えば、水素化脂肪族系石油樹脂、水素化芳香族系石油樹脂、水素化共重合系石油樹脂及び水素化脂環族系石油樹脂、並びに水素化テルペン系樹脂が挙げられる。水添石油樹脂の中でも水素化脂環族系石油樹脂で、シクロペンタジエン系化合物と芳香族ビニル系化合物とを共重合化して水素添加したものが好ましい。市販されている水添石油樹脂としては、「アルコン」(荒川化学工業)シリーズが挙げられる。
次に、本発明に使用できるワックスについて説明する。本発明におけるワックスとは融点が40〜200℃であり、融点よりも10℃高い温度での溶融粘度が50Pa・s以下である有機化合物をいう。
本発明に使用できるワックスは、極性または非極性ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、及びワックス改質剤を含む。具体的には、極性ワックス、非極性ワックス。フィッシャー−トロプシュワックス、酸化フィッシャー−トリプシュワックス、ヒドロキシステアロマイドワックス、機能化ワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ワックス改質剤、アモルファスワックス、カルナウバワックス、キャスター・オイルワックス、マイクロクリスタリンワックス、蜜ろう、カルナウバろう、キャスターワックス、植物ろう、カンデキラろう、日本ろう、ourculyワックス、ダグラスファーバーク・ワックス、米ぬかワックス、ホホバワックス、ヤマモモワックス、モンタンワックス、オゾケライトワックス、セレシンワックス、石油ろう、パラフィンワックス、化学変性炭化水素ワックス、置換アミドワックス、及びそれらの組み合わせ及び誘導体が挙げられる。中でも多孔構造を効率的に形成できる点から、パラフィンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックスが好ましい。
市販されているワックスの具体例としては、ポリエチレンワックスとしては「三井ハイワックス」(三井化学社製)シリーズ、「メタロセンワックス」(クラリアントジャパン社製)シリーズなどが挙げられ、マイクロクリスタリンワックスとしては「Hi−Mic」(日本精蝋社製)シリーズなどが挙げられる。
前記化合物xの配合量は、ポリエチレン系樹脂100質量部に対し、1〜20質量部が好ましく、3〜15質量部がより好ましく、5〜10質量部が更に好ましい。かかる範囲内とすることで目的とする良好な多孔構造が発現する効果が十分に得られ、製膜安定性も良好となる。
本発明のB層においては、積層多孔性フィルムの特性を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を含んでもよい。他の熱可塑性樹脂としては特に制限を受けないが、スチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、もしくはポリアリレート等のエステル系樹脂;ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンもしくはポリフェニレンサルファイド等のエーテル系樹脂;6ナイロン、6−6ナイロン、6−12ナイロン等のポリアミド系樹脂、アイオノマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
またB層においては、積層多孔性フィルムの特性を損なわない範囲で他の添加剤または他の成分を含んでいてもよい。前記添加剤としては、特に制限を受けないが、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、帯電防止剤、架橋剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロック剤、スリップ剤、又は着色剤などの添加剤が挙げられる。
中でも、本発明は結晶核剤を添加することによって、結晶核剤が、結晶成長のための核形成のための部位となり、秩序だったより速い結晶構造となる。よって、核生成のための部位を多くすることにより、小さく均質な結晶をより多く生じさせることができるため好ましい。
結晶核剤は、前記の特性を有する溶融状態からの冷却過程時に結晶成長のための核生成の効果が認められれば良く、例えば、ジベンジリデンソルビトール(DBS)化合物、1,3−O−ビス(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール、ジアルキルベンジリデンソルビトール、少なくとも一つの塩素または臭素置換基を有するソルビトールのジアセタール、ジ(メチルまたはエチル置換ベンジリデン)ソルビトール、炭素環を形成する置換基を有するビス(3,4−ジアルキルベンジリデン)ソルビトール、脂肪族、脂環族、および芳香族のカルボン酸、ジカルボン酸または多塩基性ポリカルボン酸、相当する無水物および金属塩などの有機酸の金属塩化合物、環式ビス−フェノールホスフェート、2ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボン酸などの二環式ジカルボン酸及び塩化合物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−ジカルボキシレートなどの二環式ジカルボキシレートの飽和の金属または有機の塩化合物、1,3:2,4−O−ジベンジリデン−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(m−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(m−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(m−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(m−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(m−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−エチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−イソプロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−n−プロピルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,3−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(3,5−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,3−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(3,4−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(3,5−ジエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(3,4,5−トリメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(2,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(3,4,5−トリエチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−メチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−エチルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−イソプロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(o−n−プロピルオキシカルボニルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(o−n−ブチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(o−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−(p−クロロベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−[(5,6,7,8, −テトラヒドロ−1−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3:2,4 −ビス−O−[(5,6,7,8, −テトラヒドロ−2−ナフタレン)−1−メチレン]−D−ソルビトール、1,3 −O−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3 −O−p−メチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3 −O−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−エチルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロルベンジリデン−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(2,4 −ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(2,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−ベンジリデン−2,4−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−2,4−O−ベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチル−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−メチル−ベンジリデン−2,4−O−p−クロルベンジリデン−D−ソルビトール、1,3−O−p−クロル−ベンジリデン−2,4−O−p−メチルベンジリデン−D−ソルビトールなどのジアセタール化合物、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2’−メチレン−ビス−(4−6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]、燐酸2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ヘベニン酸アミドなどの炭素数11〜22の脂肪族アミド、2ナトリウムヘキサヒドロフタル酸、シリカ、タルク、カオリン、炭化カルシウム等の無機粒子、グリセロール、グリセリンモノエステルなどの高級脂肪酸エステル、及び類似物が挙げられる。本発明で用いる結晶核剤は、中でも高級脂肪族エステルが好ましく、グリセリンモノエステルがより好ましい。
本発明において、結晶核剤はポリエチレン系樹脂100質量部に対して0.00001〜5.0質量部が好ましい。0.0001〜3.0質量部がより好ましく、0.001〜1質量部が更に好ましい。かかる範囲内であれば、ポリエチレン系樹脂が溶融状態からの冷却過程で結晶化する際に、結晶核数が増加し、結果として球晶サイズが微細となるため好ましく、溶融状態からの冷却過程時に結晶核剤がフィルムの表面にブリードすることがないため好ましい。
市販されている結晶核剤の具体例としては、「ゲルオールD」(新日本理化社製)、「アデカスタブ」シリーズ(旭電化工業社製)、「Millad」(ミリケンケミカル社製)、「Hyperform」(ミリケンケミカル社製)、「IRGACLEAR D」(チバスペシャルケミカルズ社製)などが挙げられ、また結晶核剤のマスターバッチとしては「リケマスターCN」(理研ビタミン社製)シリーズなどが挙げられる。
続いて、積層多孔性フィルムの構成について説明する。本発明の積層多孔性フィルムは、前記A層と前記B層が少なくとも存在すれば特に限定されるものではない。最も単純な構成がA層とB層との2層構造、次に単純な構成が両外層と中層との2種3層構成であり、これらが好ましい構成である。2種3層の形態の場合、A層/B層/A層であってもB層/A層/B層であっても構わない。またB層/A層/B層/A層/B層のような、2種5層の積層構造とすることもできる。層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
中でも、A層/B層/A層の2種3層構成は、得られる積層多孔性フィルムのカール度合いや表面平滑性が良好となるため特に優れている。
A層とB層との積層比は用途、目的に応じて適宜調整することができ、特に制約を受けるわけではないが、A層(2層以上ある場合はその厚みの合計)/B層(2層以上ある場合はその厚みの合計)の値が1〜10であり、好ましくは1〜8である。かかる範囲であれば透気度が良好であり、135℃で5秒加熱時の透気度を十分高めることが可能となる。
また、必要に応じて他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。他の層を積層しても、適宜処理を施すなどしても良く、A層とB層のみからなる積層構造に特に制限されるわけではない。
A層及びB層以外の他の層が存在する場合、当該他の層はA層とB層との関係が前述した関係からはずれないように設ける必要がある。他の層の厚みの合計が全体の厚み1に対して0.1〜0.5となるのが好ましく、0.1〜0.3となるのがより好ましい。
[積層多孔性フィルムの形態及び物性]
本発明の積層多孔性フィルムの形態としては、平面状、チューブ状の何れであっても良いが、製品として数丁取りが可能であることが生産性の観点から好ましく、更に内面コードなどの処理を施すのに簡便なことから平面状がより好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの厚みは1〜500μmであり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは7〜50μm、特に好ましくは10〜40mである。厚みが1μm以上、好ましくは5μm以上であれば、実質的に十分な透気特性を得ることができ、機械強度の観点においても問題とならないため好ましい。また、厚みが500μm以下、好ましくは300μm以下であれば、実質的に十分な機械強度を得ることができ、透気特性の観点においても問題とならないため好ましい。
また、本発明の積層多孔性フィルムは厚み方向に連通性を有する微細孔が多数存在し、優れた透気特性を有することも特徴である。
その指標として、本発明の積層多孔性フィルムをリチウムイオン二次電池用セパレータ用途に用いる場合には、25℃での透気度は5〜3000秒/100mlが好ましく、より好ましくは20〜2000秒/100mlであり、更に好ましくは50〜1000秒/100mlであり、特に好ましくは50〜500秒/100mlである。
すなわち、前記透気度が3000秒/100ml以下であれば、連通性を有し、十分な透気特性を有することが示唆されるので、電池用セパレータとして使用する場合、室温使用時においてイオン伝達性を確保し、十分な電池特性を得ることができる。
一方、透気度が5秒/100ml以上であれば、孔径が適度に小さく、電池用セパレータとして使用する場合、機械的強度が維持でき、内部短絡等のトラブルを回避することができる。
透気度は積層多孔性フィルムの厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には、100mlの空気が当該多孔性フィルムを通過するのに必要な秒数で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜けやすく、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が積層多孔性フィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方が積層多孔性フィルムの厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは積層多孔性フィルムの厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の透気度が低いということは、電池用セパレータとして使用する場合、イオンの移動が容易であることを意味し、電気特性に優れるため好ましい。なお、透気度は実施例に記載の方法で測定している。
本発明の積層多孔性フィルムは、電池用セパレータとして使用時において、シャットダウン特性を有することが好ましい。具体的には135℃で5秒間加熱後の透気度は10000秒/100ml以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100ml以上、さらに好ましくは50000秒/100ml以上である。135℃で5秒間加熱した後の透気度が10000秒/100ml以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
また、前記シャットダウン特性は、空孔率や孔径に左右される。以下の内容に限られないが、例えば、ポリエチレン系樹脂に前記化合物xを加え、当該化合物xの種類や配合量を調整すること、若しくは、結晶核剤を添加してポリエチレン系樹脂の結晶を微小化することによって、135℃で5秒間加熱した後の透気度を制御することができる。
また、製造方法において、延伸倍率や延伸温度を調整することによって、135℃で5秒間加熱後の透気度を10000秒/100ml以上とすることが可能である。
[積層多孔性フィルムの製造方法]
次に本発明の積層多孔性フィルムの製造方法について説明するが、本発明は係る製造方法により製造される積層多孔性フィルムのみに限定されるものではない。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、積層と多孔化の順序によって次の3つに大別される。
(a)A層の多孔性フィルムとB層の多孔性フィルムを作製し、ついで少なくともA層の多孔性フィルムとB層の多孔性フィルムを積層する方法。
(b)A層とB層の積層無孔膜状物を作成し、ついで該無孔膜状物を多孔化する方法。
(c)A層とB層の2層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
前記(a)の方法としては、A層の多孔性フィルムとB層の多孔性フィルムを熱ラミネートする方法や接着剤等で積層化する方法が挙げられる。
前記(b)の方法としては、A層の無孔膜状物とB層の無孔膜状物をそれぞれ作製し、A層の無孔膜状物とB層の無孔膜状物を熱ラミネートや接着剤等で積層化した後に多孔化する方法、または共押出でA層とB層を少なくとも有する積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法などが挙げられる。
前記(c)の方法としては、A層の多孔性フィルムとB層の無孔膜状物、またはA層の無孔膜状物とB層の多孔性フィルムを熱ラミネートや接着剤等で積層化する方法が挙げられる。
本発明において、その工程の簡便さ、生産性の観点から(b)の方法が好ましく、A層の無孔膜状物とB層の無孔膜状物を熱ラミネートで積層化した後で多孔化することが最も好ましい。
本発明の積層多孔性フィルムの製造方法は、前記分類とは別にB層の多孔化方法により分類することができる。
すなわちA層にβ活性を有させる場合、延伸することによって微細孔を容易に形成することができる。一方、B層を多孔化する方法としては、例えば延伸法、相分離法、抽出法、化学処理法、照射エッチング法、発泡法またはこれらの技術の組み合わせなど公知の方法を用いることができる。中でも本発明においてはその工程の簡便さ、生産性の観点から延伸法を用いることが好ましい。
前記無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて前記樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。またチューブラー法により製造したフィルムを切り開いて平面状とする方法も適用できる。
次にA層とB層の無孔膜状物は熱ラミネートで積層される。例えばA層/B層/A層の3層の積層においては、フィルムが3組の原反ロールスタンドから巻きだされ、加熱されたロール間でニップロールにて熱圧着されることにより積層化される。積層は各層を構成する樹脂組成物の融点以下で熱圧着することが必要である。
次に積層化した無孔膜状物を少なくとも直交する2方向に延伸する。積層化した無孔膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸や逐次二軸延伸などの二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて延伸を行う。
具体的には、まずA層、B層を構成するそれぞれの樹脂組成物をヘンシェルミキサー、スーパーヘンシェルミキサー、またはタンブラー型ミキサーなどを用いて混合した後、単軸押出機あるいは二軸押出機、ニーダー等で溶融混練後ペレット化する。A層を構成する樹脂組成物は少なくともポリプロピレン系樹脂及びβ晶核剤を含有しており、B層を構成する樹脂組成物はポリエチレン系樹脂組成物及び結晶核剤を主成分とし、所望により他の添加剤を添加することが好ましい。
次に、得られた樹脂組成物のペレットを押出機に投入し、Tダイから押出してA層及びB層を形成する無孔膜状物をそれぞれ成形する。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要な積層多孔性フィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率などの各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度が好ましく、より好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm未満では溶融押出時の背圧が高くなり過ぎ、生産速度という観点から好ましくない。
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜300℃が好ましく、200〜280℃の範囲であることが更に好ましい。押出加工温度が180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く溶融押出時の背圧が高くなることがなく成形性に優れるため好ましい。一方300℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化ひいては積層多孔性フィルムの機械強度の低下を抑制できるため好ましい。
まず、B層を形成する無孔膜状物を製膜する。B層を形成する無孔膜状物の製膜には、ドラフト比を好ましくは1〜200、より好ましくは20〜100で引き落としをかけた後にキャストロールに密着させ冷却固化させることが好ましい。ここでいうドラフト比とはTダイのリップギャップを、得られる無孔膜状物の厚みで除した値のことである。例えばTダイのリップギャップが1mm(1000μm)で、得られる無孔膜状物の厚みが20μmである場合のドラフト比は50となる。かかる範囲内であれば、無孔膜状物を例えば延伸により多孔化する際に多孔化しやすくなるため、得られる積層多孔性フィルムの透気特性を調整しやすくなる。
次に、A層を形成する無孔膜状物を製膜する。A層を形成する無孔膜状物の製膜時には、キャストロールによる冷却固化温度が本発明において非常に重要であり、ポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成・成長させ、A層中のβ活性度を調整することが出来る。
キャストロールの冷却固化温度は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させたA層中のβ活性度を十分に増加させることができるため好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻きついてしまうなどのトラブルが起こり難く、効率よく製膜することが可能であるため好ましい。
次にA層とB層の無孔膜状物は熱圧着によって積層される。熱圧着により積層される積層数は、2層以上でA層とB層が交互に積層されていれば、3層でも4層でもよい。例えばA層/B層/A層の3層の積層においては、フィルムが3組の原反ロールスタンドから巻きだされ、加熱されたロール間でニップロールにて熱圧着されることにより積層化される。積層は各層を構成する樹脂組成物の融点以下で熱圧着することが好ましい。加熱されたロールの温度は好ましくは110〜130℃、より好ましくは120〜130℃が好適である。かかる範囲内であれば、例えば無孔膜状物を延伸により多孔化する際にA層とB層の界面で剥離が生じることが無く、積層化された無孔膜状物を例えば延伸により多孔化する際にネッキング現象などが生じることなく良好な透気特性を付与することが可能となる。ニップ圧は1〜3kg/cm、巻きだし速度は0.1〜8m/minが好ましい。積層化した無孔膜状物の各層間の剥離強度は3〜60g/15mmの範囲が好適である。
積層化された無孔膜状物は少なくとも直交する2方向に延伸し、積層多孔性フィルムにする。延伸方法については例えばロール延伸とテンター延伸が挙げられる。ロール延伸は低温延伸した後、高温延伸する多段延伸が好ましい。前記多段延伸によって、A層とB層が十分に多孔化され、十分な層間剥離強度を有することができる。
前記低温延伸は、延伸ロールの周速差によって押出機からの引き取り方向(流れ方向)に延伸(縦延伸)を行う。低温延伸の温度は10〜50℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。低温延伸の温度が10℃以上であると、破断することなく延伸することができ、一方で50℃以下とすることで十分な多孔化が発現することができるため好ましい。また、低温延伸の倍率は1.1〜2.5倍が好ましく、1.5〜2.5倍がより好ましい。低温延伸の倍率が1.1倍以上であると、十分な透気特性が得ることができ、一方で2.5倍以下とすることで、十分な空孔率を確保することができる。
低温延伸した積層フィルムは、次いで高温延伸を行う。高温延伸は延伸ロールの周速差で縦延伸を行う。高温延伸の温度は70〜130℃が好ましく、80〜125℃がより好ましい。規定された延伸温度の範囲で行うことによって、十分な透気特性が得ることができる。また、高温延伸の倍率は1.5〜2.5倍が好ましく、1.5〜2.0倍がより好ましい。規定された延伸倍率の範囲で行うことによって、十分な透気特性が得ることができる。
続いてテンター延伸機によって、押出機からの引き取り方向とは直交方向に延伸(横延伸)を行う。テンター延伸機による横延伸について、延伸温度は概ね90〜150℃が好ましく、より好ましくは95〜130℃、更に好ましくは100℃〜125℃である。また、延伸倍率は1.5〜3.0倍が好ましく、より好ましくは1.8〜2.5倍、更に好ましくは1.8〜2.3倍である。規定された範囲内で延伸することによって、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
また、延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、750〜10000%/分がより好ましく、1000〜80000%/分が更に好ましい。前記範囲内の延伸速度で延伸することで、大きな欠陥構造のような空孔が出来ることなく微細な多孔構造を発現させることができる。
このようにして得られた積層多孔性フィルムは、寸法安定性の改良などを目的として好ましくは100〜150℃程度、より好ましくは110〜140℃程度の温度で熱処理を行うのが良い。なお、熱処理工程中には、必要に応じて1〜30%の弛緩処理を施しても良い。この熱処理後均一に冷却して巻き取ることにより、本発明の積層多孔性フィルムが得られる。
[電池用セパレータ]
次に、本発明の前記積層多孔性フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体としている。この渦巻き状に巻回する際、電池用セパレータ10は厚みが5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることが特に好ましい。厚みを5μm以上にすることにより電池用セパレータが破れにくくなり、40μm以下にすることにより所定の電池缶に捲回して収納する際電池面積を大きくとることができ、ひいては電池容量を大きくすることができる。
前記正極板21、電池用セパレータ10および負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極および負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液電池を作製している。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
本実施形態では、負極として、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に平均粒径10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板としたものを用いている。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
本実施形態では、正極としては、下記のようにして作製される帯状の正極板を用いている。すなわち、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板としている。
以下に実施例および比較例を示し、本発明の積層多孔性フィルムについてさらに詳しく説明するが、本発明は何ら制限を受けるものではない。なお、本明細書中に表示される積層多孔性フィルムについての種々の測定値および評価は次のようにして行った。ここで、積層多孔性フィルムの押出機からの引き取り方向(流れ方向)を縦方向、その直交方向を横方向とよぶ。
(1)溶融粘度測定
本発明のB層の主成分であるポリエチレン系樹脂組成物を230℃の測定温度にてせん断ひずみ速度が10〜10/secの範囲における複素粘度挙動を測定した。前記範囲における複素粘度データを累乗近似した式を微分した値を算出した。
(2)厚み
得られた積層多孔性フィルムを1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内を不特定に5箇所測定しその平均を厚みとした。
(3)透気度(ガーレー値)
得られた積層多孔性フィルムから直径φ40mmの大きさでサンプルを切り出し、JIS P8117に準拠して25℃での透気度(秒/100ml)を測定した。
(4)135℃で5秒間加熱後の透気度
得られた積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように中央部にφ40mmの円状の穴をあけたアルミ板(材質:JIS規格A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間に挟み、図2(B)に示すように周囲にグリセリン(ナカライテスク社製、1級)を底面から100mmとなるまで満たした。135℃のオイルバス(アズワン社製、OB−200A)の中央部に、アルミ板2枚で固定された状態のフィルムを浸漬し、5秒間過熱した、加熱後直ちに別途用意した25℃のグリセリンを満たして冷却槽に浸漬して5分間冷却した後、2−プノパノール(ナカライテスク社製、特級)で洗浄し、25℃の空気雰囲気下にて15分乾燥させた後に上記(3)の方法に従い測定した。
更に、得られた積層多孔性フィルムについて次のようにしてβ活性の評価を行った。
(5)示差走査型熱量測定(DSC)
得られた積層多孔性フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25℃から240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240℃から25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25℃から240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、再昇温時にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜175℃にピークが検出されるか否かによりβ活性の有無を以下の基準にて評価した。また、ポリプロピレン系樹脂がランダムポリプロピレンの場合は、上述の(β活性)に基づいてβ活性の有無を評価した。
○:Tmβが145℃〜175℃の範囲内に検出された場合(β活性あり)
×:Tmβが145℃〜175℃の範囲内に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、β活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
(6)広角X線回折測定(XRD)
前記135℃で5秒間加熱後の透気度の測定と同様に、積層多孔性フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)(B)に示すように固定した。
アルミ板2枚に拘束した状態の積層多孔性フィルムを設定温度180℃、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の時間をかけて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点で積層多孔性フィルムを取り出し、アルミ板2枚に拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却して得られた積層多孔性フィルムについて、以下の測定条件で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・広角X線回折測定装置:マックサイエンス社製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40kV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5°〜25°、走査間隔:0.05°、走査速度:5°/min
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β活性なし)
なお、積層多孔性フィルムが60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴にフィルムが設置されるように調整しても構わない。
(実施例1)
A層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物として、ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、MFR:3g/10分)100質量部に対し、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン0.1質量部を加え、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径φ40mm、L/D:32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物A1を得た。
次にB層を構成するポリエチレン系樹脂組成物として、高密度ポリエチレンPE−1(三井化学社製、ハイゼックス3000B、密度:0.961g/cm、MFR:0.63g/10分)を押出機にて200℃で押出し、リップギャップを1mmとしたTダイより200℃で押出し、エアノズルにて25℃で冷却しながら厚み20μm(ドラフト比:50)の無孔膜状物を得た。
次に、A層を製膜すべく前記樹脂組成物A1を押出機にて200℃で押出をして、125℃のキャスティングロールで冷却固化させて、厚み90μmの無孔膜状物を得た。
続いて、表層がA層で、裏層がB層の積層無孔膜状物を次のように製造した。2組のA層の無孔膜状物とB層の無孔膜状物とを、それぞれ巻きだし速度1m/minで巻きだし、加熱ロールに導き、温度125℃、線圧1.5kg/cmで熱圧着し、その後同速度で50℃の冷却ロールに導いて巻き取った。
巻き取った積層無孔膜状物を、縦方向に50℃に保持されたニップロール間で75%延伸を行い、引き続き80℃に保持されたロール間で65%延伸を行った後、テンター延伸機にて横方向に100℃で2.0倍に逐次二軸延伸をして積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの結果を表1に示す。
(実施例2)
横方向の延伸倍率を2.5倍にした以外は、実施例1と同様の方法にて積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの結果を表1に示す。
(実施例3)
横延伸の延伸倍率を3.0倍にした以外は、実施例1と同様の方法にて積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの結果を表1に示す。
(実施例4)
B層の無孔膜状物の厚みを70μmとした以外は、実施例1と同様の方法にて積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1にて、ポリエチレン系樹脂組成物として高密度ポリエチレンPE−2(三井化学社製、ハイゼックス3300F、密度:0.950g/cm、MFR:1.1g/10分)を用いた以外は同様の方法にて積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの結果を表1に示す。透気性を有する積層多孔性フィルムを得ることができなかった。
(比較例2)
実施例1にて、ポリエチレン系樹脂組成物として高密度ポリエチレンPE−3(三井化学社製、ハイゼックス2200J、密度:0.964g/cm、MFR:5.2g/10分)を用いた以外は同様の方法にて積層多孔性フィルムを得た。得られた積層多孔性フィルムの結果を表1に示す。透気性を有する積層多孔性フィルムを得ることができなかった。
Figure 0006379484
表1より、本発明で規定する積層多孔性フィルムは、透気特性が良好で、135℃で5秒間加熱後の透気度が大きくなることから、優れたシャットダウン特性を有することがわかった。一方、比較例1,2は、積層多孔性フィルムに連通性を発現させることができなかった。
本発明の積層多孔性フィルムは、優れた透気性能を有し、かつシャットダウン特性を具備しているため、電池用セパレータとして好適に利用することができる。
10 電池用セパレータ
20 非水電解液電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 フィルム
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向

Claims (8)

  1. 少なくとも2層の多孔質層を積層した積層多孔性フィルムであって、前記2層の多孔質層のうち1層がポリプロピレン系樹脂組成物を主成分とするA層と、もう1層が230℃でのひずみ速度が10〜10/secの範囲でのせん断粘度の累乗近似の微分値が−5000以下となるポリエチレン系樹脂組成物を主成分とするB層とを有することを特徴とする積層多孔性フィルム。
  2. 前記ポリエチレン系樹脂組成物のMFRは0.03〜15g/10分である請求項1に記載の積層多孔性フィルム。
  3. 前記A層はβ活性を有する請求項1または2に記載の積層多孔性フィルム。
  4. 前記A層のポリプロピレン系樹脂組成物について、ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤が含まれている請求項1〜3のいずれかに記載の積層多孔性フィルム。
  5. 前記β晶核剤は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001〜5.0質量部の割合で含まれている請求項に記載の積層多孔性フィルム。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムからなる電池用セパレータ。
  7. 前記A層と前記B層とをそれぞれ別々に溶融押出して積層した積層膜状物を、10℃〜50℃の延伸温度で少なくとも1方向に延伸する工程を少なくとも1回以上経ることにより多孔化することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔性フィルムの製造方法。
  8. 前記A層と前記B層とをそれぞれ別々に溶融押出して積層した積層膜状物を、少なくと
    も直交する2方向に延伸して多孔化することを特徴とする請求項に記載の積層多孔性フ
    ィルムの製造方法。
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