JP4907065B2 - 化合物半導体、その製造方法及び化合物半導体素子 - Google Patents

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Description

本発明は、低転位密度の化合物半導体、その製造方法及びそれを用いた化合物半導体素子に関するものである。
現在、携帯電話のパワーアンプやスイッチなどに用いられている化合物半導体素子はGaAs基板上にエピタキシャル法等によって様々なヘテロ構造を形成したものが主流である。例えば、携帯電話用のマイクロ波増幅素子又は高速スイッチング素子として用いられる高移動度トランジスタ(以下、HEMTと称する)の場合、GaAs基板上にn型AlGaAs電子供給層、及びInGaAsチャネル層を形成し、チャネル層における高移動度2次元電子ガスを利用した化合物半導体素子となっている。
近年の素子の高速化への要求から、GaAs基板を使用した素子からInP基板を使用した素子への切り替えが迫られている。InP基板を使用するとInGaAsチャネル層のIn組成をGaAs基板の場合と比較して高くすることができるため、電子輸送特性が飛躍的に向上するからである。
しかしながら、InP基板は、InPの積層欠陥エネルギーがGaAsのそれより小さいことに起因して、単結晶基板を製造することが困難であることに加え、In地金が貴重なため価格がGaAsの数倍以上と高価である。また、InP基板は割れやすく強度的にも問題があり、InP基板の使用は、エピタキシャル層形成時および素子作製プロセス時における歩留まり悪化の原因となっている。
そこで、HEMT用のInGaAs/InAlAs系のエピタキシャル層を、InP基板上に形成するのと同様にしてGaAs基板上に形成することにより、化合物半導体を作製する試みが盛んに行われている。しかし、GaAsの格子定数が5.6533Åであるのに対し、InP又はInPに格子整合するIn0.53Ga0.47AsやIn0.52Al0.48Asの格子定数は5.8688Åであり、したがって、上記の構成を採用する場合約4%の格子定数における不整合が生じる。このため、GaAs基板上にこれらを直接形成すると、これにより得られたHEMTには、格子不整合に起因するミスフィット転位が大量に導入されてしまう。
この不具合を解決するため、GaAs基板上のバッファ層にInGaAsやInAlAsの組成勾配層を設ける方法が公知である。従来では、この組成勾配層の格子定数を層の厚み方向に徐々に変えていくリニアグレーデッドバッファ法(例えば、非特許文献1参照)、又はこの組成勾配層の格子定数を層の厚み方向に段階的に変化させていくステップグレーデッドバッファ法(例えば、非特許文献2参照)が主に用いられている。前者は格子歪をバッファ層の中で徐々に緩和し、転位の発生を最小限に抑える方法であり、後者は段階的に組成を変えることにより界面で転位を曲げ、これにより転位が上層へ伝播するのを妨ぐ方法である。
W.E.Hoke et al.,J.Vac.Sci.Technol.B,19(2001)1505 S.Goze et al.,J.Cryst.Growth 201/202(2001)155
上述した従来方法は、いずれもミスフィット転位の低減には効果があり、実際にこれらの方法で作製したエピタキシャル基板を使用した化合物半導体素子が試作されているが、実用化には至っていない。これら従来方法の問題点は、バッファ層が0.5μm以上と非常に厚くなることである。例えばリニアグレーデッドバッファ法を採用した場合には、バッファ層厚1.5μmを要している。その理由は、膜厚が薄いと、格子不整合による歪が薄いバッファに集中して転位密度が非常に高くなるからである。一方ステップグレーデッドバッファ法では、各バッファ界面で転位の方向を変えられるため、バッファ膜厚を薄くできる。しかしながら、この場合でも、上記文献に開示されている例では、バッファ層厚は0.6μmである。このように組成勾配層を用いた従来のバッファ層によると、その膜厚を0.5μm以下にすることは困難である。
基板上に厚い膜を積むと原料をより多く必要とする上に成長時間が長くなるので、コストがかさむことになる。したがって、高価なInP基板を安価なGaAs基板で置き換えてもコストの削減は僅かということになり、低コスト化という目的を達成できない虞がある。
また、厚い膜を積むことにより表面の平坦性が損なわれるので、HEMTなどの化合物半導体素子を製作するためのエピタキシャル基板では、出来上がったHEMTの移動度への悪影響も考えられる。このほか、バッファ層の膜厚が厚いとバッファ層に高濃度の転位が集積するため、リーク電流の増大や、様々な信頼性が低下する虞があり、化合物半導体素子としての電気的特性や信頼性が低下するという傾向を生じる。
本発明の目的は、従来技術における上述の問題点を解決することができる化合物半導体、およびその製造方法を提供することにある。
本発明の目的は、また、電気的特性や信頼性に優れた化合物半導体素子を提供することにある。
上記課題を解決するため、鋭意研究の結果、本発明者等は、GaAs基板上に5nm以上500nm以下の膜厚のInGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層を形成した後、該バッファ層上にInP、InGaAsあるいはInAlAs層等を積層することにより、その表面欠陥が少なく表面状態も良好になることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至ったものである。
本発明の特徴は、GaAs基板上に、GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶又はInP結晶が成層されて成る化合物半導体において、前記GaAs基板上にInGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層を介して前記結晶が形成され、該バッファ層の膜厚が5nm以上500nm以下である点にある。
GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶は、InGaAs又はInAlAs結晶であってもよい。InGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層の少なくとも上層5nmのIn組成はGaAsと格子整合する組成より高くてもよい。該化合物半導体を用いて、電気的特性や信頼性に優れたHEMT又はその他の化合物半導体素子を製造することができる。
本発明の他の特徴は、GaAs基板上に、GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶又はInP結晶を成長させる化合物半導体の製造方法において、GaAs基板上にInGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層を成長させ、該InGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層上にGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶又はInP結晶を成長させる点にある。
請求項1の発明によれば、GaAs基板上に、GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶又はInP結晶を成長させる化合物半導体の製造方法において、GaAs基板上に該GaAs基板と格子整合する組成となるようにInGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層を400℃以上580℃以下の温度で5nm以上300nm以下の膜厚にMOCVDにより成長させることにより、該InGaPまたはInGaAsP層からなるバッファ層の少なくとも上層5nmのIn組成が偏析効果によりGaAsと格子整合するIn組成より高くせしめ、該InGaPバッファ層又は該InGaAsPバッファ層上にInPバッファ層を400℃以上550℃以下の温度で成長させ、該InPバッファ層形成後、650℃以上730℃以下でアニールすることを特徴とする化合物半導体の製造方法が提案される。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、前記InGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層上にInPバッファ層を成長させ、該InPバッファ層を650℃以上730℃以下のアニール温度まで昇温してアニールし、InP結晶又はGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を成長させるための400℃以上700℃以下の結晶成長温度まで降温した後に、前記InP結晶又は化合物半導体結晶を成長させる化合物半導体の製造方法が提案される。
請求項3の発明によれば、請求項2の発明において、前記InPバッファ層の膜厚が20nm以上200nm以下であることを特徴とする化合物半導体の製造方法が提案される。
請求項4の発明によれば、請求項2又は3の発明において、前記InPバッファ層を650℃以上730℃以下のアニール温度まで昇温してアニールした後、前記InP結晶又はGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を成長させる前に、650℃以上730℃以下のアニール温度から400℃以上700℃以下の結晶成長温度まで降温し、再び650℃以上730℃以下のアニール温度まで昇温する操作を1回以上5回以下加えた後に、400℃以上700℃以下の結晶成長温度まで降温する請求項2
又は3記載の化合物半導体の製造方法が提案される。
請求項5の発明によれば、請求項1、2、3又は4の発明において、GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶が、InGaAs又はInAlAs結晶である化合物半導体の製造方法が提案される。
本発明によれば、GaAs基板上に、InP結晶又はGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を有する化合物半導体において、上記GaAs基板上にInGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層を介し前記結晶が形成され、かつ該バッファ層の膜厚を5nm以上500nm以下とするので、表面状態が良好で、特性に優れた化合物半導体が得られ、信頼性などに優れた化合物半導体を工業的に有利に製造することができる。また、これにより、電気的特性や信頼性に優れた化合物半導体素子が得られる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例につき詳細に説明する。なお、ここではInGaPバッファ層の場合について説明するが、本発明はこの一実施形態に限定されるものではなく、例えばInGaAsPについても全く同様に扱うことができる。
図1は、本発明による化合物半導体の参考実施形態を示す層構造図である。化合物半導体エピタキシャル基板10は、半絶縁性GaAs基板1上にGaAsバッファ層2及びInGaPバッファ層3がこの順序で形成されている。なお、GaAsバッファ層2は、形成されていなくても良い。
InGaPバッファ層3の層厚は、本参考実施形態では30nmとなっており、In組成すなわちInとGaの総和モル数に対するInモル数の割合が、上層約5nmの範囲すなわちこの層の上のバリア層4との境界から約5nmの範囲では0.48よりも高く、それ以外の範囲では0.48となっている。InGaPバッファ層3の厚さは5nm以上500nm以下の範囲内であればよい。
なお、In組成が0.48の場合にはInGaPがGaAsと格子整合する。この0.48という値は一般に知られている3−5族4元混晶組成図から算出できる(例えば、永井治男、安達定雄、福井孝志“III-V 族半導体混晶”、コロナ社(1988))。InGaAsPの場合についても、同様にGaAsと格子整合するIn組成を決定できる。この場合のIn組成はAs組成に依存する。例えば、As組成を0.5とすると、In組成は0.24となる。別のAs組成であれば、In組成も異なる値となる。
InGaPバッファ層3の上には、InPから成るバリア層4、In組成が0.53のInGaAsから成るチャネル層5、In組成が0.52のInAlAsから成るスペーサ層6がこの順序で形成されている。スペーサ層6の上には、さらに、In組成が0.52のSiドープInAlAsから成る電子供給層7、In組成が0.52のInAlAsから成るショットキー層8、In組成が0.53のInGaAsから成りSiをドーピングしたコンタクト層9がこの順序で形成されている。
半絶縁性GaAs基板1上に形成される各層は、例えば、有機金属化学気相成長法(以下、MOCVD法と称することがある)により順次成層することができる。ここで、InGaPバッファ層3を形成する場合、In組成が均一に0.48となるように意図してInGaPバッファ層3を形成する。しかし、実際には、Inの偏析効果により、InGaPバッファ層3のうちバリア層4に近い領域、すなわちバッファ層3の上層約5nmの範囲の領域では、In組成は0.48よりも充分に大きくなり、バリア層4との境界付近ではInが過剰となる。一方、InGaPバッファ層3中のGaについては、バリア層4との境界付近では不足状態となる。
この結果、GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を有する層が、InGaPバッファ層3の最表面のInが過剰となっている領域の上に形成されることになる。このことは、実質的に、InP層の上にGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を有する層等を形成するのと同様の結果となることを意味する。したがって、半絶縁性GaAs基板1上に形成されたInGaPバッファ層3の表面の組成はInPの組成に極めて近く、格子不整合が極めて大きくなっているにもかかわらず、InGaPバッファ層3の表面状態の悪化につながるようなミスフィット転位の発生が抑えられる。
このことを確認するため、GaAs基板上にInGaP層を形成した試料を用いて、InGaP層内におけるGaとInとの濃度分布を実際に測定した。図2はその測定結果を示すグラフである。図2に示すグラフは、GaAs基板上にMOCVD法によりIn組成が0.48になるように意図してInGaP層を約24nmの厚さに形成し、このInGaP層中のInとGaとの濃度をSIMS分析を行って測定した結果を示すものである。横軸はInGaP層の表面からの深さを示し、縦軸はIn及びGaの濃度を示している。
図2から判るように、InGaP層をそのIn組成が均一に0.48となるように成長形成させたにもかかわらず、実際には、最表面のInが過剰になっていることがわかる。一方、Gaは最表面で不足している。また、得られた試料の表面状態を観察したところHaze値が数ppmであった。このことからも、InGaP層の表面はInPの組成に極めて近く、格子不整合が極めて大きくなっているにもかかわらず、InGaP層の表面状態の悪化につながるようなミスフィット転位の発生が抑えられていることが理解された。
また、InGaP層におけるInが過剰となる膜厚はその成長温度等によるが、おおよそ5nm程度以上であることが図2からわかる。InGaP層の膜厚が薄すぎると、単位膜厚当たりの格子ミスフィットによる応力が大きすぎて、本発明で期待されるミスフィット転位の発生抑制効果が減少すると考えられる。
次に、InGaPバッファ層の成長条件について検討するため、GaAs基板上に、MOCVD法により、InGaP層を30nm、さらにInP層を100nm形成して化合物半導体エピタキシャル基板を作製した。各エピタキシャル膜の成長温度は400〜700℃の範囲で検討した。成長温度によって、得られたエピタキシャル基板の表面状態がどのようになるのかを観察すると共に、Haze値を測定した。その結果は次の通りであった。
成長温度(℃) 表面状態 Haze値(ppm)
400〜580 鏡面 数百〜1000
580〜600 鏡面 1000〜2000
600〜700 白濁 数千〜数万
成長温度600℃以上では表面が白濁していた。一方成長温度が600℃を下回った場合にはその表面に良好な鏡面が得られ、特に580℃以下ではHaze値が2000ppmを下回った。したがって、InGaPバッファ層3は400℃以上、600℃以下の成長温度条件で成長させるのが好ましく、より好ましい成長温度条件は、400℃〜580℃である。
次にMOCVD成長温度を550℃に固定し、GaAs基板上にInGaPバッファ膜厚を15nm〜300nmの範囲で種々変えて成層し、その上にInP層を100nmの厚さに形成して化合物半導体エピタキシャル基板を作製した。InGaPバッファの膜厚によって、得られたエピタキシャル基板の表面状態がどのようになるのかを観察すると共に、Haze値を測定した。その結果は次の通りであった。
InGaP層の厚さ(nm) 表面状態 Haze値(ppm)
15〜100 鏡面 数百〜1300
100〜300 鏡面 数百〜1100
上記結果から判るように、InGaPの膜厚が厚くなるとHaze値が減少する傾向を有する。しかし、その減少による変化値は非常に小さかった。また、図2からわかるように、InGaP層の組成がInの偏析のために影響を受け始めるのは表面から5nm〜10nmの距離からである。このことから、転位を有効に閉じ込められる最小膜厚とは5nm〜10nm程度であると推定される。InGaP層の膜厚をこの最小膜厚から厚くするにつれて、InGaP層の表面状態は徐々に改善される。しかし、膜厚が100nm程度以上となると、その改善の度合は小さくなる。以上の事実から推察すると、InGaP層内、特にその最表面付近では、In組成が高い層が存在し、しかもInGaP層を600℃未満の温度で5nm以上の膜厚に成長した場合には格子不整合によるミスフィット転位が有効に閉じ込められると考えられる。
InGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層の膜厚は、通常、5nm以上500nm以下であるが、好ましくは5nm以上300nm以下、より好ましくは5nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上50nm以下である。
図1に示した化合物半導体エピタキシャル基板10は以上の考え方に従って構成されたもので、膜厚の薄い高品質の格子不整合系バッファ層を得ることができる。
次に、本発明の一実施の形態について図3を参照して説明する。図1に示す構成において、InGaPバッファ層の効果をさらに高めるために鋭意検討した結果、InGaPバッファ層に続いてInPバッファ層を比較的低い温度で成長し、さらに比較的高い温度でアニールを行なうと転位密度をよりいっそう低減でき、化合物半導体素子を製造したときの素子の特性を向上させることが可能であることを本発明者らは見出した。
図3に示した化合物半導体20は、上述の考え方を適用したものであり、InGaPバッファ層3とInPから成るバリア層4との間にInPバッファ層4Aを設けた点でのみ図1の化合物半導体10と異なっている。したがって、図3の各部のうち、図1の各部と対応する部分には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。
図3において採用されているバッファ層の構成について説明する。転位密度の低減効果を高めるためInGaPバッファ層に続いて別のバッファ層を成長する場合、この別のバッファ層は熱伝導を考慮するとInPでなければならない。InGaAsやInAlAsは熱伝導係数が小さいからである。InAlAsやInGaAsなどの三元系の化合物半導体はInPやGaAsなどの二元系化合物半導体と比較して熱伝導度が低い。このため、この化合物半導体を用いて化合物半導体素子を製造すると、これにより得られた素子の動作時の放熱が十分でなく、素子の温度が上昇し、特性が低下する。熱伝導度は、例えばInGaAsでは0.05W/cm・℃、InPでは0.68W/cm・℃で一桁の違いがある。
また、InGaPバッファ層3の表面付近のIn濃度が高く、InGaPバッファ層3の組成がInPに近いことを考慮すると、InGaPバッファ層の直上にInPバッファ層4Aを形成することにより格子定数差の少ない(格子不整合の小さい)界面が形成される。InPバッファ層4Aの成長温度は、InGaPバッファ層3の表面付近の平坦性や転位密度と関係している。InGaPバッファ層3は薄く、平坦性が良好で、ミスフィット転位なども少ない。しかし、InGaPバッファ層3の上に接して形成されるInPバッファ層4Aの成長条件を適切に選ぶことにより該InPバッファ層4Aの表面の平坦性をInGaPバッファ層3の表面の平坦性よりも良好なものとすることができる可能性があるので、発明者らはInPバッファ層4Aの成長温度、膜厚について検討を加えた。
上記検討のため、まず、GaAs基板上にMOCVD法により、550℃でInGaP層を30nm成長し、このInGaP層上に、InP層を成長温度400℃〜600℃の範囲で50nm成長した。さらにInP層を成長温度550℃で500nm成長し、エピタキシャル基板を作製した。そして、これにより得られたエピタキシャル基板の表面状態を評価した。その結果は次のとおりであった。

成長温度(℃) 表面状態 Haze値(ppm)
400以上 450以下の場合 鏡面 数百〜1000
450より高く500以下の場合 鏡面 数百〜2000
500より高く550以下の場合 鏡面 1000〜2000
550より高く600以下の場合 白濁 数千〜10000

成長温度が550℃を上回ると表面がよりよい鏡面にはならない傾向が見られた。550℃以下では表面は良好な鏡面でHaze値が2000ppm以下となった。400℃を下回ると、PH3 の分解が不十分となり、InP層の成長速度が著しく遅くなる。したがってInP層の成長温度は400℃以上550℃以下が好ましく、より好ましくは400℃以上500℃以下である。
InPバッファ層成長後に、650℃以上730℃以下の温度でアニールを加えると、このアニールによりわずかに残った格子歪がより完全に緩和され、ミスフィット転位もループ化されて上層への伝播を防ぐことができる。なお、アニールの操作はInPバッファ成長直後に行うことが好ましい。
図3に示した化合物半導体エピタキシャル基板10は以上の考え方に従って構成されたもので、バッファ層の膜厚が薄いにもかかわらず、良好な特性を有した化合物半導体素子を与える化合物半導体となる。ここで、図3に示したバッファ層構造を採用する場合には、InGaPバッファ層3とInPバッファ層4Aとの合計膜厚が5nm以上500nm以下の範囲内であればよい。InGaPバッファ層3に代えて、InGaAsPバッファ層を用いる場合も同様に、InGaAsPバッファ層とInPバッファ層4Aとの合計膜厚が5nm以上500nm以下の範囲内であればよい。
InGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層の膜厚とInPバッファ層の膜厚の合計の膜厚は5nm以上500nm以下であればよく、好ましくは25nm以上500nm以下、より好ましくは25nm以上200nm以下、さらに好ましくは30nm以上130nm以下である。
InPバッファ層の膜厚は20nm以上200nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以上100nm以下、さらに好ましくは20nm以上80nm以下である。
InPバッファ層内に僅かに残った転位がさらに上の層に伝播するのを防止するため、InPバッファ層の上にInPバリア層を形成することが好ましい。このInPバリア層の成長温度は、従来のInP成長温度でよい。例えばMOCVD法では550℃〜700℃程度である。
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。本実施例では高電子移動度トランジスタ(HEMT)を例に挙げたが、ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT)やp−i−nフォトダイオードにも同様に適用できる。また、本実施例では成長法として有機金属化学気相成長法(Metalorganic chemical vapor deposition :MOCVD)を用いたが、分子線エピタキシー(Molecular beam epitaxy:MBE)等を用いることもできる。また本実例ではInGaPバッファ層を例に挙げたが、InGaAsPバッファ層も同様に用いることができる。
(参考例1)
図1に示した層構造による化合物半導体ヘテロ構造を有するHEMT用エピタキシャル基板をMOCVD法を用いて参考例1を次のようにして作製した。MOCVD薄膜作製装置に半絶縁性GaAs基板1を導入し、昇温して基板表面処理を施した後、AsH3 ガス及び金属有機化合物を原料として半絶縁性GaAs基板1の上にGaAs層から成るバッ
ファ層2を形成した。次にAsH3 ガスをPH3 ガスに切り替え、InGaPバッファ層3(In組成0.48)を30nm形成した。このときInGaPバッファ層の成長温度は550℃とした。さらに温度を適当に調整し、原料を切り替えながら、順にInP層4(In組成0.52)、InGaAsチャネル層5(In組成0.53)、InAlAsスペーサ層6(In組成0.52)、電子供給層(Siプレーナードープ層)7、InAlAsショットキー層8(In組成0.52)、それにSiをドーピングしたInGaAsコンタクト層9(In組成0.53)を形成した。得られたエピタキシャル基板の表面状態は良好で、白濁、クロスハッチ等は全く観察されなかった。
次に上記HEMT用エピタキシャル基板をファンデアポー(van der Pauw)法によるホール測定により評価した。このエピタキシャル基板のコンタクト層9をエッチングにより除去し、室温でホール測定を行ったところ、移動度9100cm2 /V・sとInP基板を使用したHEMT用エピタキシャル基板と同等の値を示した。
(参考例2)
InGaPバッファの成長温度を500℃、膜厚を15nmとした以外は参考例1と全く同様の条件で、参考例2のHEMT用エピタキシャル基板を作製した。得られたエピタキシャル基板の表面状態は良好で、白濁、クロスハッチ等は全く観察されなかった。
上記エピタキシャル基板のコンタクト層9をエッチングして室温でホール測定を行ったところ、移動度8900cm 2 /V・sとInP基板を使用したHEMT用エピタキシャル基板と同等の値を示した。
(実施例1)
図3に示した層構造による化合物半導体ヘテロ構造を有するHEMT用エピタキシャル基板をMOCVD法を用いて次のようにして作製した。まず参考例1と同様にInGaPバッファ層3(In組成0.48)を30nm形成した。このときInGaPバッファ層の成長温度は550℃とした。次に温度を435℃まで下げ、InPバッファ層4Aを50nm成長した。さらに温度を650℃のアニール温度まで昇温してアニールを行い、640℃に降温した後に、原料を切り替えながら、順にInP層4、InGaAsチャネル層5(In組成0.53)、InAlAsスペーサ層6(In組成0.52)、Siプレーナードープ層7、InAlAsショットキ層8(In組成0.52)、それにSiをドーピングしたInGaAsコンタクト層9(In組成0.53)を形成した。得られたエピタキシャル基板の表面状態は良好で、白濁、クロスハッチ等は観察されなかった。
次に上記HEMT用エピタキシャル基板のコンタクト層9をエッチングして室温でホール測定を行ったところ、移動度9100cm 2 /V・sとInP基板を使用して製造されたHEMT用エピタキシャル基板とほぼ同等の値を示した。
InPバッファ層4Aの成長までは実施例1と同様に行い、700℃のアニール温度まで昇温してアニールを行い、さらにInPバリア層4以降の層の成長は実施例1と全く同様の条件で行ってHEMT用エピタキシャル基板を作製した。このとき得られたエピタキシャル基板の表面状態は良好で、白濁、クロスハッチ等は全く観察されなかった。
HEMT用エピタキシャル基板のコンタクト層9をエッチングして室温でホール測定を行ったところ、移動度9600cm 2 /V・sと実施例1と比較してさらに良好な結果が得られた。
InPバッファ層4Aの成長までは実施例1と同様に行い、700℃のアニール温度まで昇温してアニールを行い、その後逆に温度を480℃まで下げた。この後480℃から700℃の温度の上げ下げを3回(700℃への昇温は合計4回)行った後、温度を480℃としてInPバリア層4以降の成長は実施例1と同様に行って、HEMT用エピタキシャル基板を作製した。このとき得られたエピタキシャル基板の表面状態は良好で、白濁、クロスハッチ等は全く観察されなかった。
HEMT用エピタキシャル基板の最上層のコンタクト層9をエッチングして室温でホール測定を行ったところ、移動度10100cm 2 /V・sと実施例2と比較してさらに良好な結果が得られた。
本発明による化合物半導体の参考実施形態を示す層構造図。 図1のInGaP層のIn偏析現象を示しているGaとInとの濃度分布の測定結果を示すグラフ。 本発明による化合物半導体の一実施形態を示す層構造図。
符号の説明
1 半絶縁性GaAs基板
2 GaAsバッファ層
3 InGaPバッファ層
4 バリア層(InP)
4A InPバッファ層
5 チャネル層(InGaAs)
6 スペーサ層(InAlAs)
7 電子供給層(SiドープInAlAs)
8 ショットキ層(InAlAs)
9 コンタクト層(SiドープInGaAs)
10、20 化合物半導体(エピタキシャル基板)

Claims (5)

  1. GaAs基板上に、GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶又はInP結晶を成長させる化合物半導体の製造方法において、
    GaAs基板上に該GaAs基板と格子整合する組成となるようにInGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層を400℃以上580℃以下の温度で5nm以上300nm以下の膜厚にMOCVDにより成長させることにより、該InGaPまたはInGaAsP層からなるバッファ層の少なくとも上層5nmのIn組成が偏析効果によりGaAsと格子整合するIn組成より高くせしめ、
    該InGaPバッファ層又は該InGaAsPバッファ層上にInPバッファ層を400℃以上550℃以下の温度で成長させ、
    該InPバッファ層形成後、650℃以上730℃以下でアニールする
    ことを特徴とする化合物半導体の製造方法。
  2. 前記InGaPバッファ層又はInGaAsPバッファ層上にInPバッファ層を成長させ、該InPバッファ層を650℃以上730℃以下のアニール温度まで昇温してアニールし、InP結晶又はGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を成長させるための400℃以上700℃以下の結晶成長温度まで降温した後に、前記InP結晶又は化合物半導体結晶を成長させる請求項1記載の化合物半導体の製造方法。
  3. 前記InPバッファ層の膜厚が20nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項2記載の化合物半導体の製造方法。
  4. 前記InPバッファ層を650℃以上730℃以下のアニール温度まで昇温してアニールした後、前記InP結晶又はGaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶を成長させる前に、650℃以上730℃以下のアニール温度から400℃以上700℃以下の結晶成長温度まで降温し、再び650℃以上730℃以下のアニール温度まで昇温する操作を1回以上5回以下加えた後に、400℃以上700℃以下の結晶成長温度まで降温する請求項2又は3記載の化合物半導体の製造方法。
  5. GaAsの格子定数よりもInPの格子定数に近い化合物半導体結晶が、InGaAs
    又はInAlAs結晶である請求項1、2、3又は4記載の化合物半導体の製造方法。
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