JP4906342B2 - 立体模様形成布帛の製造方法 - Google Patents

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本発明は、立体模様形成布帛の製造方法に関し、詳細には、インクジェット方式を用いて、繊維を溶解、収縮または分解する抜蝕剤を布帛に付与してなる立体模様形成布帛の製造方法に関する。
インクジェット捺染において、インク化した薬剤を塗布し、布帛を構成する繊維を溶解、収縮または分解させ、布帛上に凹凸を有する立体模様を形成する加工方法、および、2種類以上の繊維を使用した複合素材において、そのうちの1種類の繊維のみを溶解、収縮または分解させ、いわゆるオパール調の透け感を布帛上に表現する加工方法が知られている。これらの加工方法は、溶解、収縮または分解加工を施す繊維の種類や、糸または布帛の構成などの諸条件により、その使用する薬剤や加工条件が異なるため、実に様々な方法が存在する。繊維収縮剤を使用した方法については、たとえば特許文献1に記載されている。
なかでも、とくにポリエステル系繊維(カチオン可染ポリエステル繊維を含む。以下、PET系繊維と称す)からなる布帛に対して、アルカリを主成分とした剤による繊維分解を利用した加工が、一般的に広く利用されている。代表的なPET系繊維の加工布としては、PET系繊維のパイル布帛および複合素材などがあり、前者は、立毛繊維を分解除去し表面に凹凸感のある立毛布帛を形成し、後者は、PET系繊維のみを溶解、収縮または分解し、他の繊維を残してオパール模様を形成する。
前記アルカリを主成分とした剤としては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどに代表されるアルカリ塩またはこれを含む溶液があげられ、これと同時にカチオン界面活性剤などのアルカリ加水分解反応促進剤(減量促進剤)を使用することもある。
具体的な加工方法としては、前記アルカリを主成分とした剤、および必要に応じて減量促進剤を含む繊維分解剤を、PET系繊維布帛上の抜蝕加工する領域に付与した後、スチーマーで加熱処理し、ついで、洗浄および減量加工などを施すことにより、その領域の繊維を除去する。これにより、布帛上において、繊維分解剤を塗布した領域の繊維のみが分解除去され、塗布しなかった領域の繊維が布帛上に残るため、凹凸状の立体模様を有するパイル布帛やオパール調の柄模様を有する複合布帛が得られるのである。
また、繊維分解しない領域のPET系繊維に対しては、インクジェット方式によれば、繊維抜蝕加工と同時に、着色インクによる着色加工を行なうことができるため、多彩な柄表現が行われている。
ところで、インクジェット方式を利用し、インク化した繊維抜蝕剤を布帛に付与する際の課題は、インクジェット方式を利用した捺染分野においては、この繊維抜蝕加工に限らず一般的な課題ではあるが、インクがにじみやすい事である。インク化した繊維抜蝕剤をインクジェット方式で布帛上に付与すると、付与された繊維抜蝕剤が、インクの溶媒とともに布帛の繊維方向または組織の方向に平面方向でにじむ。この結果、抜蝕加工される範囲が、目標とした領域よりも拡大しやすくなる。
このにじみの度合いについては、繊維抜蝕剤をインク化する際に使用する溶媒の粘度などの諸条件に起因するため、インクの粘度を増加させることにより、にじみの度合いは下がる傾向にある。しかし、インクジェット方式の場合は、それぞれのインクジェット捺染機の吐出条件により、インクの粘度には上限がある。また、布帛を構成している繊維の種類、単糸の太さ、糸の太さ、糸の撚られ方、および、織または編のあり方にも起因しており、それぞれについてインク受容層の構成を変更することで、ある程度の改善は可能である。しかし、多種多様な布帛を扱う上で、その都度それぞれについてにじみを考慮した最適な条件を探し出すことは非常に困難であり、にじみ範囲を細かく抑制することは非常に難しい。さらに、前記スチーマーでの加熱処理する際の高温水蒸気が、繊維抜蝕加工範囲の拡大に寄与することもあり、その範囲制御はより困難なものとなる。これらの原因により、布帛の組織、使用している糸の種類、加工条件および太さなどにより差異は存在するものの、押し並べて微細な抜蝕柄表現は非常に困難である。
また、前記繊維抜蝕加工と同時に、同布帛上の繊維抜蝕未加工部に着色インクを用いて色表現をする際は、繊維抜蝕加工部に近接する領域で染料がアルカリによって変色もしくは濃度低下を伴う恐れがあるため、繊維抜蝕剤の主成分であるアルカリに対して耐性のある染料を使用しなければならない。このように、繊維抜蝕未加工部に着色加工する場合は、使用できる染料に制限が生じるため、色彩の表現域が狭くなる。さらに、繊維抜蝕加工部と前記着色インクによる色表現加工部との境界においては、とくに多くのインク、すなわち、繊維抜蝕剤を含むインクと着色インクが付与されるため、にじみの原因となるインクの溶媒の量も非常に多くなる。そのため、繊維抜蝕加工部と繊維抜蝕未加工部(色表現加工部)との境界が、繊維抜蝕未加工部の領域側にずれやすく、境界が不鮮明になるという問題がある。
前記繊維抜蝕加工を利用した立体模様形成技術においては、その立体模様の微細さが要求されており、この要求を満たす技術開発が求められている。
特開平10−298863号公報
本発明は、布帛に使用されている繊維の種類、太さ、糸の太さ、糸の撚られ方、および、織または編のあり方によらず、繊維抜蝕加工領域とその周囲の繊維抜蝕未加工領域とが鮮明に分けられた、微細な立体模様の形成された布帛の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、布帛に、アルカリ性繊維抜蝕剤を含むインクを繊維抜蝕加工領域にインクジェット方式にて付与する工程、および、水に溶解させたときのpHが3.0〜8.0である塩を含むインクを該繊維抜蝕加工領域以外の領域にインクジェット方式にて付与する工程を含む立体模様形成布帛の製造方法に関する。
さらに、着色剤を含むインクをインクジェット方式にて付与する工程を含むことが好ましい。
前記アルカリ性繊維抜蝕剤が、炭酸グアニジンであることが好ましい。
前記布帛が、ポリエステル系繊維を含むことが好ましい。
また、前記記載の製造方法により得られる立体模様形成布帛に関する。
本発明は、布帛に使用されている繊維の種類、太さ、糸の太さ、糸の撚られ方、および、織または編のあり方によらず、繊維抜蝕加工領域とその周囲の繊維抜蝕未加工領域とが鮮明に分けられた、微細な立体模様の形成された布帛の製造方法を提供することができる。
本発明は、布帛に、アルカリ性繊維抜蝕剤を含むインクを繊維抜蝕加工領域にインクジェット方式にて付与する工程、および、水に溶解させたときのpHが3.0〜8.0である塩を含むインクを該繊維抜蝕加工領域以外の領域にインクジェット方式にて付与する工程を含む立体模様形成布帛の製造方法である。
本発明で使用される布帛は、アルカリ性の繊維抜蝕剤で抜蝕される繊維を含むものであればとくに限定されない。なかでも、強度、耐候性および耐薬品性に優れているため、スポーツ衣料、ファッション衣料、インナー衣料、自動車内装材および広告幕などの様々な用途で使用することができる点で、ポリエチレンテレフタレートなどからなるポリエステル繊維、および、常圧タイプまたは高圧タイプのカチオン可染ポリエステル繊維などのポリエステル系繊維を含んでいることが好ましい。たとえば、ポリエステル100%のパイル布帛、ポリエステル繊維/ナイロン繊維の複合布帛およびポリエステル繊維/綿の複合布帛などがあげられる。
ポリエステル系繊維を含む場合、その単糸繊度は、3デシテックス以下であることが好ましく、2デシテックス以下であることがより好ましい。下限としては、0.1デシテックスであることが好ましく、0.7デシテックスであることがより好ましい。単糸繊度が3デシテックスをこえると、完全に分解除去することが困難となる場合があり、視覚的、触感的あるいは機能的に問題となる傾向にある。また、トータル繊度としては、170デシテックス以下であり、110デシテックス以下であることが好ましい。下限としては、22デシテックスであることが好ましく、56デシテックスであることがより好ましい。トータル繊度が170デシテックスをこえると、布帛の風合いが硬くなり、それによってポリエステル系繊維の分解にバラツキや不良が発生するおそれがある。
本発明で使用される布帛において、抜蝕される繊維は25重量%以上含まれることが好ましく、25〜80重量%であることがより好ましい。抜蝕される繊維が25重量%より少ないと、立体模様が明確に表現できなくなる傾向にある。
なお、複合布帛を使用する場合は、それら異種の繊維を混紡、混繊、交撚、交織または交編などの方法により組み合わせることができる。
本発明で使用される布帛としては、編物、織物および不織布などがあげられるが、特に限定されない。織物としては、例えば、平織、綾織および朱子織などがあげられる。編物としては、例えば、平編、ゴム編およびパール編などの緯編、トリコット編、コード編、アトラス編、鎖編およびインレイ編などの経編があげられる。なかでも、バリエーションに富んだ立体模様を形成することができる点で、布帛の片面を主に抜蝕するポリエステル系繊維で構成し、布帛の他方の面を主に抜蝕されない繊維で構成するリバーシブルの編物が好ましい。すなわち、ポリエステル系繊維からなる層とナイロン繊維からなる層とで構成された編物である。リバーシブルの編物を形成する手法は公知の方法が使用でき限定されないが、なかでもプレーティング手法(添え糸編とも呼ばれる)が、強度保持に優れ、洗濯などの摩耗によるピリングの発生が少ないことから好ましい。布帛の形状としては、風合いがよいという点で立毛布が好ましい。立毛布とは、地組織が織編物、あるいは不織布で構成され、立毛を有する布帛をいう。なお、立毛をパイルともいうので、立毛布はパイル布とも呼ばれる。
その厚さは、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。下限としては、0.5mmであることが好ましく、1mmであることがより好ましい。厚さが5mmをこえると、後述する繊維を抜蝕するインクの浸透性のバラツキが生じ易くなり、繊維の抜蝕が不十分となる傾向にある。0.5mmより薄いと、立体模様を施した部分を、視覚的および触感的に明確に表現することが難しくなる傾向にある。
前記アルカリ性繊維抜蝕剤としては、水溶液の状態でpH10以上を示すアルカリであることが好ましい。pHが10より低いと、繊維抜蝕加工が施されない、もしくは、加工度合いが非常に弱く、不完全な加工状態となる傾向にある。具体的には、グアニジン弱酸塩、フェノール類、アルコール類、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、およびアルカリ土類金属水酸化物などがあげられる。なかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはグアニジン弱酸塩であることが好ましく、さらには、得られる凹凸効果が大きく、環境および安全面で優れている点で、グアニジン弱酸塩が好ましい。そのなかでも、苛性ソーダなどの他の強アルカリに比べて、水溶液のpHが10〜13と低く、作業の安全性や装置が腐蝕されにくい点、繊維を着色する場合に、使用する色素への影響が少ない点などから、とくに炭酸グアニジンが好ましい。この炭酸グアニジンにより繊維が分解されるが、その理由としては、推測するに、炭酸グアニジンの付与後に行なわれる熱処理の工程で、炭酸グアニジンが尿素とアンモニアに分解されることで強アルカリへと変化するためだと考えられる。
また、長時間安定した吐出が可能となる点で、前記繊維抜蝕剤は水溶解させてインク化処理を行なう。繊維抜蝕剤の濃度としては、10〜35重量%の範囲が好ましく、さらには15〜30重量%の範囲が好ましい。10重量%より少ないと、充分な凹凸効果を得ることができない傾向にあり、逆に35重量%をこえると、繊維抜蝕剤の水への溶解限度に近くなるため、析出物が発生するなどノズル詰まりの原因となり、長時間安定した吐出が困難となる傾向にある。
本発明で使用される水に溶解させたときのpHが3.0〜8.0である塩を含むインク(以下、繊維抜蝕抑止インクと称す)は、前記アルカリ性繊維抜蝕剤を中和する酸性物質または酸性イオンを供与するものであり、前記繊維抜蝕剤による抜蝕を抑止する。繊維抜蝕抑止インクに含まれる塩は、水に溶解させたときのpHが3.0〜8.0の範囲であり、中性もしくは弱酸性を示す。このとき、インクとして使用するときの塩の濃度、具体的には後述するように、好ましくは10〜50重量%の濃度において、そのpHが3.0〜8.0の範囲である。より好ましくは、濃度10重量%におけるpHが3.0〜8.0の範囲である。前記塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸マグネシウムおよび塩化ナトリウムなどがあげられる。なかでも、電離した際に硫酸イオン、硝酸イオンまたは塩素イオンといった強酸の陰イオンを生じる塩が好ましく、硫酸アンモニウムおよび硫酸マグネシウムが好ましい。さらには、硫酸アンモニウムが好ましい。pHは、4.5〜7.5であることが好ましい。pHが3.0より小さいと、繊維の表面劣化を起こしやすくなり、また設備の損傷を生じるおそれがあり、8.0をこえると、十分な繊維抜蝕抑止効果を得ることができない。
塩の濃度としては、10〜50重量%の範囲が好ましく、さらには20〜40重量%の範囲が好ましい。10重量%より少ないと、十分な繊維抜蝕抑止効果を得ることが困難となる傾向にあり、50重量%をこえると、水への溶解限度に近くなるため、析出物が発生するなどノズル詰まりの原因となり、長時間安定した吐出が困難となる傾向にある。
前記繊維抜蝕剤を含むインク(以下、繊維抜蝕インクと称す)および繊維抜蝕抑止インクの粘度は、25℃において、1〜10cpsであることが好ましく、1〜5cpsであることがより好ましい。1cps未満では吐出したインク滴が飛翔中に分裂し、立体模様のシャープ性に劣る傾向があり、10cpsをこえると、高粘度のため、ノズルからのインクの吐出が困難となる傾向にある。
繊維抜蝕インクおよび繊維抜蝕抑止インクには、安定して水へ溶解させるために、尿素を含有させることが好ましい。尿素は、インクジェット用インクとして重要な粘度や表面張力への影響が少なく、最適である。尿素の含有量としては、0.1〜10重量%の範囲が好ましく、さらには0.5〜5重量%の範囲が好ましい。尿素が0.1重量%より少ないと、溶解剤としての効果に乏しく、ノズル詰まりの原因となる傾向にあり、10重量%をこえると、本来の目的である布帛の立体模様が不充分となる傾向にある。
さらに、これらインクには、ノズルのエア詰まりを防止する点より、多価アルコール、多価アルコール誘導体、およびエチレンオキサイドが付加された界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも1種類を含有させることが望ましい。その含有量としては、0.1〜10重量%の範囲が好ましく、さらには0.5〜5重量%の範囲が好ましい。0.1重量%より少ないと、ノズルのエア詰まり防止効果が低くなり、エア詰まりを起こしやすいインクとなる傾向にあり、10重量%をこえると、インクが高粘度となってしまい、ノズルからの吐出が困難となる傾向にある。
本発明に使用可能な多価アルコールまたは多価アルコール誘導体としては、たとえばグリセリン、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジメチルエーテルなどがあげられる。
本発明に使用可能な界面活性剤としては非イオン性及び陽イオン性界面活性剤のエチレンオキサイド付加物が好ましい。なぜなら、陰イオン性界面活性剤は、繊維抜蝕剤との相容性および起泡性の面で問題があるおそれがあるためである。
エチレンオキサイドが付加された非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのエーテル型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルなどのエステル型非イオン性界面活性剤などがあげられる。
また、エチレンオキサイドが付加された陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩などのエチレンオキサイド付加物があげられる。
なかでも、作業の安全性に優れるという点でプロピレングリコールがさらに好ましい。また、アルカリ性水溶液中での安定性が高いという点で脂肪族4級アンモニウム塩のエチレンオキサイド付加物がさらに好ましい。
また、前記界面活性剤は、数平均分子量が5000以下の低粘度のものがとくに好ましい。数平均分子量が5000以上であると、インクの粘度が高くなり、インクの吐出安定性に欠ける傾向にある。
前記繊維抜蝕インクおよび繊維抜蝕抑止インクには、その他、必要に応じて乾燥防止剤、防腐剤および水溶性色素などを添加することができる。
前記繊維抜蝕インクおよび繊維抜蝕抑止インクは、インクジェット方式により、前記布帛に付与される。すなわち、布帛に、アルカリ性繊維抜蝕剤を含むインクを繊維抜蝕加工領域にインクジェット方式にて付与する工程、および、水に溶解させたときのpHが3.0〜8.0である塩を含むインクを該繊維抜蝕加工領域以外の領域にインクジェット方式にて付与する工程を含んでいる。
インクジェット方式を用いることで、凹凸の深さや幅を自由に調整することができる。また、捺染型のような柄の制約もなく、1ピクセルレベルの緻密な立体模様を自由に表現することができる。さらには、凹凸深さを徐々に変えることができるため、従来のロールやスクリーンによる方式で可能であった表現範囲に加え、凹凸によるグラデーション柄を表現することも可能である。また、時間的、コスト的および作業性に加え、大量の排水をださないことから、環境の面においても、従来の方式に比べて優れているといえる。
また、布帛上において、繊維の抜蝕を施したい領域に前記繊維抜蝕インクを付与し、それ以外の繊維を抜蝕しない領域に繊維抜蝕抑止インクを付与することで、繊維抜蝕インクが繊維を伝い、布帛上でにじみを生じたとしても、繊維抜蝕抑止インクにより繊維抜蝕が無効化される。これは、前記繊維抜蝕インクによる抜蝕作用は、後述する熱処理工程において進行するが、その際、同時に前記繊維抜蝕抑止インクから、前記繊維抜蝕インクに含まれるアルカリを中和する酸性物質または酸性イオンが供与されることによる。これにより、繊維抜蝕加工領域とその周囲の繊維抜蝕未加工領域とが鮮明に分けられるため、凹凸の柄際が鮮明で、微細な立体模様を形成することが可能となる。
また、前記したように、繊維抜蝕インクおよび繊維抜蝕抑止インクは、熱処理工程の前に布帛に付与されていればよく、その付与工程の順番はとくに限定されるものではない。繊維抜蝕インクを繊維抜蝕加工領域にインクジェット方式にて付与する工程のあとに、繊維抜蝕抑止インクを該繊維抜蝕加工領域以外の領域にインクジェット方式にて付与する工程を行なってもよいし、その逆でもよい。また、同時に行なってもよい。なかでも、繊維抜蝕インクおよび繊維抜蝕抑止インクの付与領域をより精密に制御できる点で、繊維抜蝕インクの付与工程と繊維抜蝕抑止インクの付与工程とを同時に行なうことが好ましい。具体的には、前記繊維抜蝕インクおよび繊維抜蝕抑止インクを備えるインクセットを準備し、凹凸の有無に応じてインクを適宜選択して印捺することが好ましい。
前記繊維抜蝕インクの付与量としては、1〜50g/m2の範囲が好ましく、さらには5〜30g/m2が好ましい。付与量が1g/m2より少ないと、充分な凹凸効果が得られにくい傾向にあり、逆に50g/m2をこえると、必要以上の量となるため、コスト高になる傾向にある。
前記繊維抜蝕抑止インクの付与量としては、1〜30g/m2の範囲が好ましく、さらには10〜20g/m2が好ましい。付与量が1g/m2より少ないと、十分な繊維抜蝕抑止効果を得ることができない傾向にあり、30g/m2をこえると、コスト高となる傾向にある。
前記繊維抜蝕抑止インクは、前記繊維抜蝕加工領域以外の領域(以下、繊維抜蝕加工を施さない領域ということもある)全域に付与することが好ましい。付与量を抑える場合には、繊維抜蝕加工領域と繊維抜蝕加工を施さない領域との境界線の全長にわたり、その境界から繊維抜蝕加工を施さない領域側に少なくとも3mmの幅をもつ領域として付与するのが好ましい。また、後述するように着色インクを付与する場合であって、繊維抜蝕加工を施さない領域に着色インクを付与する際には、その着色インクを付与する領域全域に付与することが好ましい。使用した着色剤およびその使用濃度によりその程度は変わるが、繊維抜蝕抑止インクの有無により、着色濃度に差異が生じることがあるためである。付与量を抑える場合には、繊維抜蝕加工領域と繊維抜蝕加工を施さない領域との境界線の全長にわたり、その境界から繊維抜蝕加工を施さない領域側に少なくとも5mmの幅をもつ領域として付与するのが好ましい。
また、より多彩な柄表現が可能となる点で、さらに、着色剤を含むインク(以下、着色インクと称す)をインクジェット方式にて付与する工程を含んでいることが好ましい。着色インクは、着色する繊維の種類に応じて選択すればよい。
例えば、ポリエステル系繊維の着色インクとしては、堅牢度、鮮明性および発色性に優れる分散染料を水分散させたインクを主に使用することができる。分散染料の種類としては、特に限定されるものではないが、その色素母体に、アントラキノン系、アゾ系またはキヌロフタロン系の構造をもつものがあげられる。その他、顔料を水分散させたインク、または、カチオン可染型ポリエステル繊維を使用する場合は、カチオン染料を水溶解または水分散させたインクを使用することができる。
ナイロン繊維の着色インクとしては、反応性染料、酸性染料または金属錯塩型染料を水溶解させたインクが使用可能である。反応性染料の種類は、反応基として、モノクロロトリアジン基、モノフロロトリアジン基、ジフロロモノクロロピリミジン基およびトリクロロピリミジン基などから選択される1種を少なくとも1つ有する反応性染料が好ましい。その他の反応基を持つ反応性染料は、アルカリ雰囲気下で加水分解を起こし易く、アルカリ性繊維抜蝕剤を含むインクと布帛上で混合された場合に、反応基が分解し、他種繊維への着色濃度が低下する可能性が高い。
綿繊維の着色インクとしては、反応性染料、酸性染料または金属錯塩型染料を水溶解させたインクなどが使用可能である。
なお、前記繊維抜蝕抑止インクにより、アルカリ系繊維抜蝕剤によって色素母体が破壊され変退色をおこしやすい、例えば、ジアゾ構造をもつ染料群を保護する効果も得られるため、これら染料を使用することも可能である。
前記着色インクは、さまざまな色のさまざまな濃度水準で水に溶解または分散させたインクのセットであり、柄部の色相や濃度に応じて適宜選択使用されるものである。したがって色は特に限定されない。イエロー、マゼンタ、シアンの3原色に、ブラックを加えた少なくとも4色を備えるものが汎用的であるが、これに限定されるものではない。同様に着色用色素の含有量もとくに限定されないが、実用性、保存安定性および吐出安定性を考慮すると、着色インクに対して0.1〜25重量%であることが好ましい。色素含有量が0.1重量%より低いと、地色の濃度によっては、着色インクの濃度が低すぎて、意味をなさないものとなってしまう。25重量%をこえると、インクが高粘度となる、または溶解性が不良になることなどから、吐出安定性に劣る傾向にある。
その付与量もとくに限定されるものではないが、1〜50g/m2が好ましく、5〜30g/m2がより好ましい。付与量が1g/m2より少ないと、かすれ状の欠点が発生する可能性が高くなる傾向にあり、50g/m2をこえると、滲みが発生し、画像が不鮮明となる傾向にある。
前記着色インクはいずれも、必要に応じて、乾燥防止剤、防腐剤、粘度調整剤および紫外線吸収剤などを含有することができる。
また、前記着色インクは、熱処理工程の前に布帛に付与されていればよく、その付与工程の順番はとくに限定されるものではない。繊維抜蝕インクを繊維抜蝕加工領域にインクジェット方式にて付与する工程のあとに、着色インクをインクジェット方式にて付与する工程を行なってもよいし、その逆でもよい。また、同時に行なってもよい。さらに、繊維抜蝕抑止インクの付与工程に対しても同様に、その順序は限定されない。なかでも、繊維抜蝕インク、繊維抜蝕抑止インクおよび着色インクの付与領域をより精密に制御できる点で、繊維抜蝕インクの付与工程、繊維抜蝕抑止インクの付与工程および着色インクの付与工程を同時に行なうことが好ましい。具体的には、前記繊維抜蝕インク、繊維抜蝕抑止インクおよび着色インクを備えるインクセットを準備し、凹凸の有無、凹部と凸部の柄の色相および濃度に応じてインクを適宜選択して印捺することが好ましい。また、複合布帛に対して印捺する場合は、各種繊維を着色することができる着色インクを使用することにより、より多彩な柄表現が可能となる。
本発明で使用されるインクジェット印捺装置は、繊維抜蝕剤の熱による分解、および、着色用インクとして反応性染料を用いる場合において、反応性染料の反応基の加熱による加水分解を防ぐため、インクを加熱しない方式であればとくに限定されない。たとえば、荷電変調方式、帯電噴射方式、マイクロドット方式およびインクミスト方式などの連続方式、ピエゾ変換方式および静電吸引方式などのオンデマンド方式など、いずれも採用可能である。なかでも、インク吐出量の安定性および連続吐出性に優れ、比較的安価で製造できる点で、ピエゾ方式が好ましい。
ここで、布帛に前記繊維抜蝕インクなどをインクジェット方式にて付与する工程の前に、前記布帛にインク受理層を形成する工程を含むことが好ましい。これにより形成されたインク受理層が、ノズルから吐出されたインクを瞬時に受け止め、適度に保持するため、繊維抜蝕インクなどの滲みを防止し、より鮮明な立体模様加工を得ることができる。
前記インク受理層は、通常、水溶性高分子を主成分としたインク受理剤により形成される。水溶性高分子としては、たとえば、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、グアガム、ポリビニルアルコールおよびポリアクリル酸などをあげることができる。これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、耐薬品性および耐アルカリ性に優れ、低価格および流動性に優れるカルボキシメチルセルロースが好ましい。インク受理層には、必要に応じて、還元防止剤、界面活性剤、防腐剤、耐光向上剤などを含有させることができる。
前記インク受理剤は、固形分換算で1〜20g/m2付与されることが好ましく、2〜10g/m2がより好ましい。付与量が1g/m2より少ないと、インク受容能力に劣るため、インクが滲んだり、裏抜けする傾向にあり、20g/m2をこえると、布帛が硬くなることから、インクジェットプリンタでの搬送性が不良となったり、取り扱い時に受容剤が布帛から脱落し易くなったりする傾向にある。
また、その付与方法は、ディップニップ法、ロータリースクリーン法、ナイフコーター法、キスロールコーター法およびグラビアロールコーター法などがあげられる。なかでも、布帛表面だけでなく、布帛全体にインク受容層を付与することができ、インク受容能力に優れる布帛の製造が可能となる点で、ディップニップ法が好ましい。
インクジェット方式にて繊維抜蝕インク、繊維抜蝕抑止インクおよび必要に応じて着色インクを付与した後、熱処理する。熱処理することにより、繊維が抜蝕され、凹凸が発現し、着色インクを付与した場合は、繊維への着色が行なわれる。
熱処理の条件としては、160〜190℃にて約10分間程度処理することが好ましい。160℃より低いと、抜蝕が不十分となる傾向にあり、また、とくにポリエステル系繊維への着色も不十分となる傾向にある。190℃をこえると、繊維が焦げて黄変するなどの現象が発生しやすくなり、また、ナイロン繊維を使用する場合は、その着色が逆に不十分となる傾向にある。熱処理は、乾熱処理または湿熱処理のいずれでもよい。なかでも、形成される凹凸形状が良好となる点、および、着色を同時に行う場合においては、良好な発色性を同時に得られるなどの点で、湿熱による処理がより好ましい。
さらに、熱処理をした後、布帛上に残留しているインク受理層、未固着染料、さらには繊維の分解物などを布帛から脱落させることを目的として、洗浄処理を行うことが好ましい。この洗浄処理方法については、通常実施されているハイドロサルファイト、界面活性剤およびソーダ灰などを用いた還元洗浄などが用いられる。
また、さらに、前記還元洗浄時に減量処理を行うことが好ましい。
減量処理を行なうことにより、繊維の分解などが不十分で毛羽状で残留している繊維を除去することができ、更に鮮明な凹凸が形成可能となる。減量処理には、減量促進剤であるカチオン界面活性剤、アルカリ浸透剤および苛性ソーダなどの強アルカリ剤が使用される。
減量処理の条件としては、特に限定されるものではないが、例えば、減量促進剤1〜5g/Lおよび苛性ソーダ(顆粒)2〜15g/Lを用いて、処理温度70〜90℃で、10〜60分間処理すればよい。
減量促進剤としては、脂肪族アミン塩陽イオン界面活性剤、脂肪族アミン塩の4級アンモニウム塩陽イオン界面活性剤、芳香族4級アンモニウム塩陽イオン界面活性剤および複素環4級アンモニウム塩陽イオン界面活性剤などが使用できる。
このように、洗浄処理および/または減量処理をすることで、完全に繊維を除去することができる。
以下に実施例を示す。なお、実施例中で使用している「%」は重量基準の割合を示すものとする。
製造例1
(布帛Aの作製)
表面(印捺面)が、ポリエステル繊維(東レ(株)製、66dtex/144f)、裏面が、6ナイロン(東レ(株)製、78dtex/24f)で構成された厚さ2mmの複合布帛(経編のリバーシブル(トリコットハーフ)組織)に、下記組成物を混合し、ホモジナイザーを用いて1時間攪拌して得られた処理液を、固形分換算で2g/m2になるようにディップニップ法で付与し、170℃で2分間乾燥してインク受理層が形成された複合布帛Aを得た。
インク受理層形成処理液
DKSファインガムHEL−1 2%
(第一工業製薬(株)製、エーテル化カルボキシメチルセルロース)
MSリキッド 5%
(明成化学工業(株)製、ニトロベンゼンスルホン酸塩、還元防止剤、有効成分30%)
水 93%
製造例2
(布帛Bの作製)
表面(印捺面)が、カチオン可染ポリエステル繊維(東レ(株)製、84dtex/72f)、裏面が、6ナイロン(東レ(株)製、78dtex/24f)で構成された厚さ2mmの複合布帛(丸編のプレーティング手法による鹿の子組織)に、製造例1同様にしてインク受理層を形成し、複合布帛Bを得た。
製造例3
(布帛Cの作製)
ポリエステル繊維(東レ(株)製、66dtex/144f)で構成された厚さ3mmのパイル布帛に、製造例1同様にしてインク受理層を形成し、複合布帛Cを得た。
製造例4
(PET系繊維抜蝕インクa−1の調製)
下記組成をそれぞれ混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過した。ついで、真空脱気処理し、PET系繊維抜蝕インクa−1(25℃における粘度3cps)を得た。なお、炭酸グアニジン20%水溶液のpHは12である。
PET系繊維抜蝕インクa−1
炭酸グアニジン(PET系繊維抜蝕剤) 20%
尿素(溶解安定剤) 5%
ジエチレングリコール(乾燥防止剤) 5%
水 70%
製造例5
(PET系繊維抜蝕インクa−2の調製)
下記組成をそれぞれ混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過した。ついで、真空脱気処理し、PET系繊維抜蝕インクa−2(25℃における粘度2cps)を得た。なお、水酸化ナトリウム10%水溶液のpHは14である。
PET系繊維抜蝕インクa−2
水酸化ナトリウム(PET系繊維抜蝕剤) 10%
尿素 5%
水 85%
製造例6
(PET系繊維抜蝕抑止インクb−1の調製)
下記組成をそれぞれ混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過した。ついで、真空脱気処理し、PET系繊維抜蝕抑止インクb−1(pH5.0、25℃における粘度3cps)を得た。なお、硫酸アンモニウム40%水溶液のpHは4.5である。
PET系繊維抜蝕抑止インクb−1
硫酸アンモニウム(抜蝕抑止剤) 40%
尿素(溶解安定剤) 5%
ジエチレングリコール(乾燥防止剤) 5%
水 50%
製造例7
(PET系繊維抜蝕抑止インクb−2の調製)
下記組成をそれぞれ混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過した。ついで、真空脱気処理し、PET系繊維抜蝕抑止インクb−2(pH8.0、25℃における粘度3cps)を得た。なお、硫酸マグネシウム15%水溶液のpHは7.5である。
PET系繊維抜蝕抑止インクb−2
硫酸マグネシウム(抜蝕抑止剤) 15%
尿素 5%
ジエチレングリコール 5%
水 75%
製造例8
(PET系繊維着色用3原色インクセットcの調製)
下記組成をそれぞれ混合し、スターラーを用いて1時間攪拌後、ADVANTEC高純度濾紙No.5A(東洋濾紙(株)製)にて減圧濾過した。ついで、真空脱気処理し、PET系繊維着色用3原色インクセットcを得た。
PET系繊維着色用3原色インクセットc
(Blueインク)
Kiwalon Polyester Blue BGF 10%
(紀和化学工業(株)製、分散染料、C.I.Disperse Blue 73)
Disper TL(明成化学工業(株)製、染料分散剤) 2%
ジエチレングリコール(乾燥防止剤) 5%
水 83%
(Redインク)
Kiwalon Polyester Red BFL 10%
(紀和化学工業(株)製、分散染料、C.I.Disperse Red 92)
Disper TL 2%
ジエチレングリコール 5%
水 83%
(Yellowインク)
Kiwalon Polyester Yellow 6GF 10%
(紀和化学工業(株)製、分散染料、C.I.Disperse Yellow 114)
Disper TL 2%
ジエチレングリコール 5%
水 83%
実施例1
製造例4で得た繊維抜蝕インクa−1、製造例6で得た繊維抜蝕抑止インクb−1、製造例8で得た着色用インクセットcを、製造例1〜3で得たインク受理層をもつ布帛A、布帛Bおよび布帛Cに対し、インクジェット方式でそれぞれ印捺した。
ここで、PET系繊維抜蝕加工領域を領域X、PET系繊維抜蝕未加工領域(非着色領域)を領域Y、PET系繊維抜蝕未加工領域(PET系繊維色柄着色領域)を領域Zとし、図1に示すように印捺した。すなわち、布帛1に、縦25mm、横40mmの長方形2の重心から、直径10mmの円3および辺長5mm正方形4を描き、これらの円3と正方形4とで囲まれる領域を領域X、長方形2の長辺の中点を結んだ線の左側で、かつ領域Xを含まない領域を領域Y、長方形2の長辺の中点を結んだ線の右側で、かつ領域Xを含まない領域を領域Zとした。もちろん、本発明の製造方法による効果は、この印捺柄に限定されるものではない。
このときのインクジェット印捺条件を以下に示す。
インクジェット印捺条件
印捺装置:オンデマンド方式シリアル走査型インクジェット印捺装置
ノズル径:50μm
駆動電圧:100V
周波数:5kHz
解像度:360dpi
印捺量:
(1)領域X(PET系繊維抜蝕加工領域)
PET系繊維抜蝕インク 40g/m2
(2)領域Y(PET系繊維抜蝕未加工領域)
PET系繊維抜蝕抑止インク 10g/m2
(3)領域Z(PET系繊維抜蝕未加工かつPET系繊維色柄着色領域)
PET系繊維抜蝕抑止インク 10g/m2
PET系繊維着色3原色インクセット 各色15g/m2
布帛を乾燥した後、HTスチーマーを用いて175℃で10分間湿熱処理した。さらに、トライポールTK(第一工業製薬(株)製、ノニオン界面活性剤)を2g/L、ソーダ灰を2g/L、ハイドロサルファイトを1g/L含むソーピング浴にて、80℃で10分間処理して洗浄した後、水洗し、乾燥して捺染物を得た。
実施例2
実施例1同様にして、繊維抜蝕インクa−1、繊維抜蝕抑止インクb−2および着色用インクセットcを、布帛A、布帛Bおよび布帛Cにそれぞれ印捺し、捺染物を得た。
実施例3
実施例1同様にして、繊維抜蝕インクa−2、繊維抜蝕抑止インクb−1および着色用インクセットcを、布帛A、布帛Bおよび布帛Cにそれぞれ印捺し、捺染物を得た。
実施例4
実施例1同様にして、繊維抜蝕インクa−2、繊維抜蝕抑止インクb−2および着色用インクセットcを、布帛A、布帛Bおよび布帛Cにそれぞれ印捺し、捺染物を得た。
比較例1
繊維抜蝕抑止インクb−1を用いなかったこと以外は、実施例1同様にして、繊維抜蝕インクa−1および着色用インクセットcを、布帛A、布帛Bおよび布帛Cにそれぞれ印捺し、捺染物を得た。このときのインクジェット印捺条件を以下に示す。ここで、前記領域Yに相当する領域には、印捺を行なっておらず、領域Zに相当する領域には、着色インクのみを印捺している。
インクジェット印捺条件
印捺装置:オンデマンド方式シリアル走査型インクジェット印捺装置
ノズル径:50μm
駆動電圧:100V
周波数:5kHz
解像度:360dpi
印捺量:
(1)領域X(PET系繊維抜蝕加工領域)
PET系繊維抜蝕インク 40g/m2
(2)領域Yに相当する領域(PET系繊維抜蝕未加工領域)
印捺せず
(3)領域Zに相当する領域(PET系繊維抜蝕未加工かつPET系繊維色柄着色領域)
PET系繊維着色3原色インクセット 各色15g/m2
比較例2
繊維抜蝕インクをa−2としたこと以外は、比較例1同様にして印捺物を得た。
上記実施例1〜4および比較例1〜2で得られた印捺物について、以下の2項目で評価した。その結果を表1に示す。
(1)領域XとYとの境界、領域XとZとの境界における凹凸シャープ性
各領域境界のシャープ性を、拡大鏡を用いて、下記基準に従って目視判定した。
◎ 境界が極めて鮮明である
○ 境界が鮮明である
△ 境界がやや不鮮明である
× 境界が不鮮明である
(2)領域XとZとの境界、領域YとZとの境界における色柄の鮮明性、濃色性
色柄の鮮明性は目視により、濃色性は反射濃度をマクベスRD918(GretagMacbeth社製)を用いて測定し、下記基準に従って総合的に判定した。
◎ 境界が極めて鮮明で且つ濃色に色柄が表現されている
○ 境界が鮮明且つ濃色に色柄が表現されている
△ 境界がやや不鮮明で濃度不良を有する表現となっている
× 境界が不鮮明且つ濃度不良を有する表現となっている
Figure 0004906342
繊維抜蝕インクa−1を使用した実施例1および2は、凹凸境界のシャープ性、凹凸境界の色柄表現ともに良好で、とくに実施例1は極めて高い優位性があるといえる。繊維抜蝕インクa−2を使用した実施例3および4については実施例1、2にはやや劣るものの、比較例よりも優位性のある結果が得られた。
とくに繊維の方向にインクのにじみが生じやすい布帛AおよびBについては、凹凸境界のシャープ性および凹凸境界の色柄表現の両方で、実施例が比較例よりも非常に高い優位性をもつことが示された。
本発明の実施例において、印捺する柄を示す図である。
符号の説明
1 布帛
2 縦25mm、横40mmの長方形
3 直径10mmの円
4 1辺5mmの正方形

Claims (4)

  1. 布帛に、アルカリ性繊維抜蝕剤を含むインクを繊維抜蝕加工領域にインクジェット方式にて付与する工程、および、水に溶解させたときのpHが3.0〜8.0である塩を含むインクを該繊維抜蝕加工領域以外の領域にインクジェット方式にて付与する工程を含む立体模様形成布帛の製造方法。
  2. さらに、着色剤を含むインクをインクジェット方式にて付与する工程を含む請求項1記載の立体模様形成布帛の製造方法。
  3. 前記アルカリ性繊維抜蝕剤が、炭酸グアニジンである請求項1または2記載の立体模様形成布帛の製造方法。
  4. 前記布帛が、ポリエステル系繊維を含む請求項1、2または3記載の立体模様形成布帛の製造方法。
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