本発明の光学素子1は、光透過性を有する基材2表面に導電膜3を備えた導電膜形成体5に、複屈折層4を、積層して構成されている。この場合、複屈折層4は、導電膜3と複屈折層4との間に基材2が配置するように、導電膜3に対して間接に積層されて形成されていても(図1(A))、基材2と複屈折層4との間に導電膜3が配置するように、導電膜3に対して直接に積層されて形成されていてもよい(図1(B))。
基材2は、光透過性を有する基材構成材からなり、基材構成材単層で構成されても、複数種類の基材構成材を重ね合わせて多層に構成されてもよい。基材構成材は、光学的に等方性であることが好ましい。また、基材構成材には、必要に応じて光学的に異方性を備えた領域や遮光性を備えた領域を局所的に設けることもできる。また、基材構成材の光透過率は、用途に応じて適宜選定可能である。
基材構成材としては、ガラス基板などのガラス材の他、種々の材質からなる板状体を適宜選択できる。具体的には、基材構成材は、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース等からなるプラスチック基板であってもよいし、またさらにポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトン等のフィルムを用いることもできる。なお、光学素子を液晶表示装置に用いる場合には、基材構成材は無アルカリガラスであることが好ましい。また、基材構成材に用いるフィルムとしては、1軸延伸または2軸延伸したフィルム材を用いることが可能であり、フィルム材の内部にリタデーションを有するトリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどを用いることもできる。
導電膜3は、光透過性の有無を特段問われないが、電気伝導性を有する。ただし、導電膜3は、例えば、バックライト等の光源からの光を用いて一対の基板の間の駆動液晶層を透過させて明暗表示を行う液晶表示装置(透過型液晶表示装置)の基板に対して導電膜3を備えた光学素子1が組み込まれる場合のように、光が基板を透過する場合、その光は光学素子1を透過できる必要があることから、そのような場合に、導電膜3は光透過性を有するものであることを要し、特に導電膜3は透明性を有するものであることが好ましい。
導電膜3を構成する材料としては、電気伝導性を有するものを適宜選択することができるが、具体的には、透明性を有しないものとしてクロム薄膜などを挙げることができ、透明性を有するものとしては酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)やそれらの合金などを挙げることができる。
導電膜3の厚みは、50Å〜5000Å、好ましくは100Å〜2000Å程度である。導電膜3の厚みが50Åよりも薄いと、複屈折層4を形成する工程で基材2や導電膜3に生じる静電気などが複屈折層4に含まれる液晶分子の配向性を乱す虞がある。また、導電膜3の厚みが5000Åよりも厚いと、特に導電膜3として透明な導電膜を得ようとする場合、導電膜3の透明性が低下してきて、結局、導電膜3の着色が問題となる。
複屈折層4は、その厚み方向に互いに逆側を向く複屈折層4の表面の一方側から入射して複屈折層4の内部を進行して他方側の表面より出射する光につき、その光が複屈折層4の内部を進行する際に光を複屈折させる機能を有する層であり、複屈折層4の厚み方向にz軸をとり、z軸と垂直に交差し且つ複屈折層4表面とz軸との交点を通過する点を原点として互いに直交するようにx軸、y軸をとってxyz座標系(3次元空間座標系)を想定した場合、x軸、y軸、z軸方向の屈折率をnx、ny、nzとして、nx、ny、nzのうちのいずれか1つが他よりも大きいもしくは小さいような状態になっている層を挙げることができる。
例えば、複屈折層4は、その屈折率がnx>ny=nz、あるいは、ny>nx=nzであるような場合は、光軸は複屈折層4の面内方向を向き、「+Aプレート」(正のAプレート)として機能し、屈折率がnx=ny>nzであるような場合は、光軸は複屈折層4の法線方向(z軸方向)を向き、「−Cプレート」(負のCプレート)として機能し、屈折率がnx=ny<nzであるような場合は、光軸は複屈折層4の法線方向(z軸方向)を向き、いわゆる「+Cプレート」(正のCプレート)として機能する。
複屈折層4は、複屈折層4に含まれる液晶分子の光軸を所定の方向に向けた状態、すなわち液晶分子に所定の配向性が付与された状態、にて形成されている。複屈折層4に含まれる液晶分子は、個々の液晶分子の分子構造に応じた光軸を有し、その光軸に応じた複屈折特性を備えるが、このような液晶分子が光軸を所定の方向へ配向させて配向性を付与されて固定されることで、複屈折層4は、所定の方向に光軸を有するような層構造、すなわち所定の複屈折特性を有するような層構造を形成することとなる。具体的には、複屈折層4は、複屈折特性に対応して、上記したような「+Aプレート」、「−Cプレート」、「+Cプレート」などの機能を有する層構造を形成することができる。
複屈折層4を構成する液晶分子は、複屈折層4の複屈折特性に応じて適宜選択できる。例えば、複屈折層4が正のAプレートや正のCプレートの機能を発揮するような複屈折特性を有する層構造である場合には、複屈折層4を構成する液晶分子としては、ネマチック液晶相を形成可能な液晶分子やスメクチック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができ、複屈折層4が負のCプレートの機能を発揮するような複屈折特性を有する層構造である場合には、複屈折層4を構成する液晶分子としては、上記したネマチック液晶相を形成可能な液晶分子のほか、コレステリック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができる。
また、複屈折層4を構成する液晶分子としては、分子構造中に不飽和2重結合などの重合性官能基を有するものが好ましく、液晶相の状態で重合可能なもの(重合性液晶分子)が好ましく用いられ、重合性液晶分子としては分子の末端に不飽和2重結合を有するものがさらに好ましく用いられる。また、液晶分子としては、耐熱性の点から、重合性液晶分子のなかでも、3次元架橋重合可能なものであって、液晶分子の分子構造中における分子の末端部分に不飽和2重結合を2以上有するものが更に好ましく用いられる。したがって、複屈折層4は、このような重合性液晶分子を重合反応させて高分子構造を形成していることが好ましく、重合性液晶分子が分子相互に3次元に架橋重合して3次元架橋高分子構造を形成していることがより好ましい。このような複屈折層4では、重合性液晶分子の重合度は80以上程度であることが好ましく、90以上程度であることがより好ましい。重合性液晶分子の重合度が80より大きいことで、均一な配向性をより効果的に維持することができる。なお、ここに重合度とは、重合性液晶分子の重合性官能基の総数を100とした場合、重合反応に消費された重合性官能基の数を示し、また、重合性液晶分子が3次元架橋重合反応する場合には、3次元架橋重合を含んで重合反応に消費された重合性官能基の数である。
また、液晶分子としては、重合性液晶分子のモノマー、オリゴマー、ポリマー等が単一種類あるいは複数種類用いられてもよい。
複屈折層4を構成する液晶分子としては、複屈折Δnが0.03〜0.20程度であるものが好ましく、0.05〜0.15程度であるものが更に好ましい。
複屈折層4を形成するために用いられる重合性液晶分子としては、架橋重合性を有するネマチック液晶分子(架橋性ネマチック液晶分子)などを好ましく用いることができる。架橋性ネマチック液晶分子としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような重合性液晶分子として、より具体的には、下記化1に示す一般式(1)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(I))、下記化2に示す一般式(2)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(II))もしくは2種以上の混合物、化3、化4に示す化合物(化合物(III))のうちの1種の化合物或いは2種以上の混合物、またはこれらを組み合わせた混合物を用いることができる。
化1に示す一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれに、水素またはメチル基を示すが、重合性液晶分子が液晶相を示す温度の範囲をより広くするには少なくともR1及びR2のどちらか一方が水素であることが好ましく、両方が水素であることがより好ましい。また一般式(1)におけるX及び一般式(2)のYは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基のいずれであってもよいが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環と間のアルキレン基の鎖長を示すaおよびb並びに、一般式(2)におけるdおよびeは、それぞれ個別に1〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物(I)またはd=e=0である一般式(2)の化合物(II)は安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物(I)または(II)自体の結晶性が高い。また、aやb、あるいはdやeがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物(I)または一般式(2)の化合物(II)は、等方相転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物は、どちらについても液晶性を安定的に示す温度範囲(液晶相を維持する温度範囲)が狭いものとなり、本発明の光学素子1に使用される液晶材料として用いるには好ましくない。
液晶材料に配合される重合性液晶分子として、上記した化1、化2、化3、化4では重合性を備える液晶(重合性液晶)のモノマーを例示したが、重合性液晶のオリゴマーや重合性液晶のポリマー等を用いてもよく、これらについても、上記した化1、化2、化3、化4などのオリゴマーやポリマーなどといった公知なものを適宜選択して用いることができる。また、液晶材料に配向される重合性液晶分子としては、メルク社製のRMM34など市販のものを具体的に用いてもよい。
本発明において、複屈折層4は、液晶分子を含有する液晶材料を導電膜形成体5に塗布して液晶塗布膜を成膜し、この液晶塗布膜に含まれる液晶分子に所定の配向性を付与しつつ液晶塗布膜の硬化処理を施すことで液晶分子を固定して形成される。
複屈折層4が正のAプレートの機能を有する層構造である場合には、複屈折層4は、上記化合物(I)(II)(III)のように棒状の分子構造をもつ液晶分子を含む液晶材料にて液晶塗布膜を成膜してその液晶塗布膜に含まれる液晶分子の光軸の向きを揃えつつ且つその液晶分子の光軸が上記で想定したx軸とy軸を含む平面(xy平面)に対して平行するように配向(水平配向、プラナー配向)させ、液晶分子を所定の配向状態にて固定して膜を硬化させる硬化処理を液晶塗布膜に対して施されることにより、形成される。
複屈折層4が正のAプレートをなす場合は、好ましくは、導電膜形成体5と複屈折層4の間に液晶分子を水平配向させるための配向膜を介在させ、そして導電膜形成体5と複屈折層4の間に配向膜が介在するように複屈折層4を配向膜に対して直接に且つ導電膜形成体5と導電膜3に対して間接に形成する。なお、この場合、配向膜としては、水平配向膜が選択される。
導電膜形成体5と複屈折層4の間に配向膜を介在させた層構造は、次のように実現されうる。
すなわち、まず、基材2に導電膜3を作成して得られた導電膜形成体5上に、導電膜3に対して直接もしくは間接に、水平配向膜を作成する。水平配向膜を作成するにあたり、導電膜形成体5上に導電膜3に対してその配向膜を直接に作成するか間接に作成するかについては、光学素子の用途やその用途においてどのように用いられるかなどといった条件に応じて適宜選択可能である。
水平配向膜は、その水平配向膜を構成する各成分の配合された組成液(配向膜組成液)としてポリイミドを含む溶液を用い、この配向膜組成液をフレキソ印刷やスピンコート等の方法で導電膜形成体5表面上(基材2あるいは導電膜3上)に塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を硬化させることで、形成することができる。
なお、配向膜組成液としてのポリイミドを含む溶液は、日産化学社製のサンエバーシリーズや、JSR社製のAL−1254等を例示できる。
配向膜は、その膜厚が0.01〜1μm程度の範囲であることが好ましい。配向膜の膜厚が、0.01μmよりも薄いと、液晶分子を水平配向させることが困難になる虞がある。また、配向膜の膜厚が1μmよりも厚いと、この配向膜自体が光を乱反射させて光学素子1の光透過率が大きく低下する虞がある。
そして、導電膜形成体5に配向膜が作成されると、その配向膜の表面上に複屈折層4を作成することで、導電膜形成体5に対して間接に複屈折層4が作成される。
複屈折層4の作成は、例えば、複屈折層4を構成する物質を含む液晶材料にて液晶塗布膜を成膜して、その液晶塗布膜に含まれる液晶分子に配向性を付与し、配向性を付与された液晶分子を硬化させる硬化処理を行って液晶塗布膜を複屈折層となすことにより具体的に実施できる。
そこで、複屈折層4の作成にあたり、棒状の分子構造を備える液晶分子を含有する液晶塗布膜形成液を液晶材料として調整しておく。
液晶塗布膜形成液は、上記したような所定の分子構造を備えた液晶分子を、溶媒に混合させることで調整される。
液晶塗布膜形成液の調整に用いる溶媒としては、複屈折層4を構成する液晶分子を溶解させることができるものであれば特に限定されず、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。単一種の溶媒を使用しただけでは、架橋性液晶分子等の配合物成分の溶解性が不充分である場合や、液晶材料を塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類とを混合した混合系溶媒である。液晶材料溶液の配合物成分の濃度は、液晶材料に用いる配合物成分の溶媒への溶解性や位相差層に望まれる層厚み等により異なるが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲である。
液晶塗布膜形成液には、光重合開始剤が添加されてもよく、そのほか、必要に応じて、増感剤が適宜添加される。こうすることで、硬化処理をより効果的に実施することができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル(もしくはビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオサントン等を挙げることができる。
液晶塗布膜形成液に光重合開始剤が配合される場合、光重合開始剤の配合量は、0.01〜10重量%である。なお、光重合開始剤の配合量は、液晶分子の配向性をできるだけ損なわない程度であることが好ましく、この点を考慮して、0.1〜7重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
また、液晶塗布膜形成液に増感剤が配合される場合、増感剤の配合量は、液晶分子の配向を大きく損なわない範囲で適宜選択でき、具体的には0.01〜1重量%の範囲内で選択される。
また、光重合開始剤及び増感剤は、それぞれ、1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
液晶塗布膜形成液が調整されると、液晶塗布膜形成液を導電膜形成体5上に水平配向膜の形成された面側上に塗布することで、この水平配向膜に対して直接に液晶塗布膜が形成される。
液晶塗布膜形成液を塗布する方法としては、ダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート等といった各種印刷法やスピンコートなどの方法やこれらを組み合わせた方法を適宜用いることが具体的に例示できる。なお、複屈折層4は、各種印刷方法やフォトリソグラフィー法を用いて導電膜形成体5に対してパターニングされて形成されてもよい。
液晶塗布膜形成液の塗布により液晶塗布膜が成膜されると、その液晶塗布膜が乾燥される。液晶塗布膜の乾燥は、液晶塗布膜を形成した基材を減圧状態下に静置くという減圧乾燥によって行われる他、大気圧下で行われてもよいが、大気圧下で自然乾燥されることが、液晶塗布膜に含まれる液晶分子をより均一に配向して複屈折層4を形成しやすいことから好ましい。
なお、液晶塗布膜形成液を塗布しようとする導電膜形成体5の配向膜などといった液晶塗布膜形成液の被塗布面の撥水性または撥油性が高い場合には、液晶分子を配向させることが可能な範囲内でUV洗浄やプラズマ処理を介在させることにより、配向膜などの被塗布面についての表面の濡れ性を予め高めてもよい。
次に、水平配向膜上に液晶塗布膜が形成されると、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を、例えば次に示すように液晶相にするとともに水平配向させる。
すなわち、液晶塗布膜を加熱して、液晶塗布膜の温度を、この中に含まれる液晶分子が液晶相となる温度(液晶相温度)以上、この液晶塗布膜中の液晶分子が等方相(液体相)となる温度未満にすることで、液晶分子を水平配向させる。このとき液晶塗布膜の加熱手段は、特に限定されず、加熱雰囲気下におく手段でもよいし、赤外線で加熱する手段でもよい。
なお、液晶分子を水平配向させる方法は、上記方法による他、液晶塗布膜に含まれる液晶分子やこの液晶塗布膜の状態に応じ、液晶塗布膜を減圧乾燥する方法によっても、液晶塗布膜に対して所定方向から電場や磁場を負荷する方法によっても実現可能である。
液晶塗布膜を減圧乾燥することによって、液晶分子を水平配向させる場合には、減圧状態とすることで液晶塗布膜を過冷却状態にすることでき、液晶塗布膜中の液晶分子を配向させた状態を保持したままこの液晶塗布膜を室温までさらに冷却できる。すると、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子を架橋反応させるまで、効率よく液晶分子を水平配向させた状態が維持される。
液晶塗布膜中において水平配向した液晶分子は、次にしめすように重合反応されることで固定される(硬化処理を施される)。そうして、液晶塗布膜は複屈折層4となる。このとき、液晶分子が架橋重合性液晶分子である場合には、液晶分子が架橋重合反応して液晶塗布膜中に3次元架橋構造が形成されて、液晶塗布膜が複屈折層4となるので、複屈折層4が3次元架橋構造を備えた層構造をなして形成されることとなり、光学素子はより強固な層構造を形成した複屈折層4を備えることになる。
硬化処理は、例えば液晶塗布膜に紫外線などの活性放射線を照射して液晶塗布膜に含まれる液晶分子に重合反応や架橋重合反応させることによって、具体的に実施することができる。
すなわち、この重合反応や架橋重合反応は、光重合開始剤の感光波長の光を液晶塗布膜に照射することで進行する。このとき、液晶塗布膜に照射する光の波長は、この液晶塗布膜中に含まれている液晶分子の種類に応じて適宜選択される。なお、液晶塗布膜に照射する光は、単色光に限らず、光重合開始剤の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。
液晶分子の重合反応や架橋重合反応は、空気雰囲気下で実施される場合、液晶分子が液晶相から等方相へ相転移する温度よりも1〜10℃低い温度まで液晶塗布膜を加熱しながら行なわれることが好ましい。こうすることで、この重合反応の際に液晶塗布膜に含まれる液晶分子の水平配向の乱れを低減することができる。また、この観点から、架橋重合反応を行なう温度は、液晶分子が液晶相から等方相へ相転移する温度よりも3〜6℃低い温度であることがより好ましい。
また、液晶塗布膜を過冷却状態にして液晶塗布膜中の液晶分子を配向させた状態を保持した場合、液晶塗布膜に対して加熱を施す処理をおこなうこと無く活性放射線を照射しても液晶相の状態で配向性を付与されたまま液晶塗布膜に含まれる液晶分子を固定することが可能となる。この場合は特に露光ステージを加熱する必要が無いので、生産を簡略化する上で好ましい。
液晶分子の重合反応や架橋重合反応は、空気雰囲気下に限られず、不活性ガス雰囲気中でも実施できる。液晶分子の架橋重合反応を不活性ガス雰囲気下で行う場合、液晶塗布膜を加熱せずに光重合開始剤の感光波長の光が液晶塗布膜に照射されることで行なわれる。なお、この架橋重合反応では、液晶塗布膜を液晶相温度にまで加熱しながら光重合開始剤の感光波長を含む光が液晶塗布膜に照射されることで行なわれてもよい。
ただ、液晶分子の重合反応や架橋重合反応が不活性ガス雰囲気下で行われる場合よりも、空気雰囲気下で行われる場合のほうが、架橋重合反応を行なう工程を実施するための設備を簡略化でき、光学素子の製造コストを抑制できる観点からは好ましい。
なお、上記したように液晶分子の重合反応や架橋重合反応を行う場合において、配向性の付与された液晶分子を含む液晶塗布膜を成膜している導電膜形成体は、液晶塗布膜を形成するための機器から露光装置に移送される。
このように液晶塗布膜に含まれる液晶分子が水平配向など所定の配向性を付与されて、重合反応すること、すなわち硬化処理が実施されることで、液晶塗布膜が硬化して複屈折層4が形成される。こうして、液晶塗布膜を形成した導電膜形成体5に対して硬化処理が施されて複屈折層4が形成されることで光学素子が得られる。
上記のようにして得られた光学素子は、さらにオーブン装置などの焼成装置に導入されて、圧力が大気圧、空気雰囲気の条件下で焼成されてもよい(焼成処理)。焼成処理を実施するにあたり、複屈折層4の焼成温度は、200〜250℃であるが、220〜230℃であることが焼成処理によって配向性に影響にほとんど影響を与えずに効果的に複屈折層4を強固にすることができる観点から好ましい。また、複屈折層4の焼成時間は、30〜150分である。
なお、複屈折層4が正のAプレートである場合において、導電膜形成体5に水平配向膜を作成し、その水平配向膜表面上に複屈折層4を形成する場合を例として説明したが、これに限らず、導電膜形成体5上に直接に複屈折層4を形成してもよい。導電膜形成体5上に直接に複屈折層4を形成することは、例えば基材2として一軸延伸したTACフィルムを用い、これに導電膜3を成膜して導電膜形成体5を得て、この導電膜形成体5上に、導電膜3に対して間接に(基材2に対して直接に)複屈折層4を形成することにより、具体的に実現できる。
複屈折層4が負のCプレートである場合には、複屈折層4は、上記正のAプレートの場合と同様に、上記化合物(I)(II)(III)のように棒状の分子構造をもつ液晶分子を含む液晶材料にて液晶塗布膜を作成してその液晶塗布膜の光軸がz軸に向かうように液晶分子を配向させて硬化処理を施すことにより形成される。具体的に例示すると、上記複屈折層4を正Aプレートとする場合に用いられたネマチック液晶相を形成可能な液晶分子と、カイラル剤と、光重合開始剤とを混合して液晶材料としての液晶塗布膜形成液を作成し、この液晶塗布膜形成液を導電膜形成体5表面上に導電膜3に対して直接にもしくは間接に塗布して液晶塗布膜を作成し、さらにこの液晶塗布膜を固定する(硬化処理を施す)ことにより液晶塗布膜を複屈折層4にすることができる。ここに、液晶塗布膜を作成した後、硬化処理が実施されるが、この硬化処理としては、上記にて正のAプレートの機能を有する層を形成した光学素子を得る場合と同様に、液晶塗布膜に活性放射線を照射して液晶分子に光重合反応を生じさせる処理や、液晶塗布膜を焼成する焼成処理により液晶分子に熱重合反応を生じさせる処理などが具体的に挙げられ、その処理の内容に応じて、液晶塗布膜形成液には、上記したような光重合開始剤などが適宜添加される。
上記のようにして負のCプレートとしての複屈折層4を作成する場合、カイラル剤が用いられているが、カイラル剤は、液晶塗布膜面の法線方向に複数の液晶分子を見た場合に液晶分子が螺旋状に配向している状態をなす配向性を液晶分子に付与することで、液晶塗布膜に含まれる液晶分子をコレステリック液晶相にすることを可能にするものである。
また、負のCプレートとしての複屈折層4を作成するにあたり、使用されるカイラル剤としては、ネマチック液晶相を形成可能な重合性液晶材料の液晶性を損なうことなく、これに螺旋ピッチを誘起してコレステリック液晶相を形成できるものであれば特に限定されない。ただし、液晶分子に螺旋ピッチを誘起させるために使用するカイラル剤は、少なくとも分子構造中に何らかのキラリティーを有していることが必須である。
カイラル剤としては、例えば1つもしくは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、またはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物等が挙げられるが、選択したカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性の破壊、配向性の低下を招き、また非重合性のカイラル剤の場合には重合性液晶の重合による硬化性能を低下させる事態を招くばかりか、液晶材料を用いて形成される複屈折層の電気的信頼性を低下させる事態を招く虞があり、更に光学活性な部位を有するカイラル剤の多量使用はコストアップを招く。従ってカイラル剤としては、少量でも液晶分子の配向に螺旋ピッチを誘発させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、より具体的には、例えばMerck社製S−811等の市販のものを用いることができる。
また、カイラル剤としては、その分子構造中における両方の末端部位に重合性官能基を有するものが、耐熱性の良い複屈折層4を得る上で好ましく、またカイラル剤は分子構造内に光学活性な部位を有する化合物であることが重要である。
カイラル剤は、液晶塗布膜に含まれる液晶分子をコレステリック液晶相にするために添加されるが、液晶分子が近紫外線領域の螺旋ピッチをとると選択反対現象により特定色の反射色を生じることから、カイラル剤の配合量は、選択反対現象が紫外領域になるような螺旋ピッチが得られるような量とすることが好ましい。
複屈折層4が正のCプレートである場合には、上記化合物(I)(II)(III)のように棒状の分子構造の液晶分子を含む液晶材料を用いて液晶塗布膜を作成してその液晶塗布膜に含まれる液晶分子の光軸が上記で想定したz軸方向に向かうように配向(ホメオトロピック配向)させて固定する(硬化処理を施す)ことにより、正のCプレートとしての機能を有する複屈折層4を形成することができる。
複屈折層4が正のCプレートである場合に用いられる液晶材料としては、上記したような液晶分子と、液晶分子の光軸を複屈折層4表面の法線方向に(上記に示すz軸方向に)向けさせて液晶分子に配向性を付与する配向助剤(垂直配向助剤ということがある)などを含む添加剤と、溶媒とを混合して作成させる液晶塗布膜形成液を用いることができる。なお、この液晶塗布膜形成液には、上記正のAプレートの機能を有する層を形成する場合と同様に、光重合開始剤などが適宜添加される。
また、複屈折層4が正のCプレートである場合、硬化処理としては、上記にて正のAプレートの機能を有する層を複屈折層4として形成する場合と同様に、液晶塗布膜に紫外線などの活性放射線を照射して液晶分子に光重合反応を生じさせる処理や、液晶塗布膜を焼成する焼成処理を行って液晶分子に熱重合反応を生じさせる処理などが挙げられる。
また、複屈折層4が正のCプレートである場合、導電膜形成体5に配向膜として垂直配向膜を成膜し、その垂直配向膜に対して直接に液晶塗布膜形成液を塗布して液晶塗布膜を成膜し、この液晶塗布膜を複屈折層4となすことで、光学素子を得てもよい。
この場合、配向膜は、複屈折層4が正のAプレートの場合において配向膜の厚みに好ましい範囲があるのと同様の理由で、その膜厚が0.01〜1μm程度の範囲であることが好ましい。
複屈折層4が、液晶分子の配向性に優れているか否か、光学特性に優れているか否かについては、複屈折層4に入射する光に対するリタデーションが指標となる。ここで、リタデーションは、入射光に対して生じる常光と異常光との速度差であり、リタデーションの大きさは、常光の屈折率noと異常光の屈折率neとすると、複屈折Δn(noとneとの差)とd(複屈折層4の膜厚)の積として与えられる。複屈折層4は、液晶分子の種類、液晶分子の配向の程度、複屈折層4の膜厚などを適宜選択することにより、液晶分子の配向特性、リタデーションの大きさを制御することができ、光学特性を制御できる。
複屈折層4が正のCプレートとしての機能を有する層である場合は、複屈折層4面内のリタデーションの大きさが小さい値であるように構成され、具体的には、リタデーションの大きさが1nm以下であることが好ましく、0.1nm以下であることがより好ましく、理想的にはゼロであることが好ましい。
本発明の光学素子1は、次のように製造できる。
まず、光透過性を有する基材2の表面に導電膜3を成膜して導電膜形成体5が作成される。
なお、導電膜3の成膜にあたっては、導電膜3の材料に応じて、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法(化学気相成長法)等の従前より公知な成膜方法にて基材2面上に導電膜3を適宜成膜することができる。
つぎに、導電膜形成体5上に作成しようとする複屈折層4の種類、例えば正のAプレート、正のCプレート、負のCプレートなどの種類、に応じて上記したように液晶塗布膜形成液を調整し、その液晶塗布膜形成液を、導電膜3を形成した導電膜形成体5の上に塗布し、液晶塗布膜が作成される。そして、液晶塗布膜に含まれる液晶分子に対して、上記したように複屈折層4の種類に応じて定められる配向性を液晶分子に付与するとともに液晶塗布膜の硬化処理を行い、複屈折層4が形成される。
こうして、基材2に導電膜3を形成した導電膜形成体5上に導電膜3に対して直接もしくは間接に複屈折層4が積層された光学素子1が製造される。
なお、本発明において、光学素子1が基材2に導電膜3を形成した導電膜形成体5上に導電膜3に対して間接に複屈折層4を積層して構成されている場合にあって、光学素子1の最表面に導電膜3が露出した状態にて光学素子1が形成される場合には、光学素子1が得られた後に必要に応じて導電膜3を除去することができる。導電膜3を除去は、物理的研磨法や、化学的機械研磨法、エッチング法などの公知の研磨方法を適宜選択して実施することができる。このように導電膜3を除去できることで、光学素子1が液晶表示装置に組み込まれるような場合に、そうした液晶表示装置の厚みをより薄くすることができる。
本発明の光学素子1によれば、基材2上に導電膜3を形成した導電膜形成体5に対して複屈折層4を形成して構成されているので、複屈折層4を形成する際に導電膜形成体5に静電気を生じても、複屈折層4に含まれる液晶分子の配向の乱れを抑制できる。
本発明の光学素子1は、液晶分子の配向性の乱れの発生を抑制されているので、光の偏光状態を制御する素子、例えば位相差を制御する素子(光学補償素子)等としてより有効なものである。したがって、この光学素子によれば、光漏れをより低減できる液晶表示装置を製造できるようになり、視野角のより拡大した、そしてコントラストのより向上した、さらに液晶表示画面の色むらの抑制された液晶表示装置を製造することができるようになる。
また本発明の光学素子1は、複屈折層4が液晶分子を3次元架橋重合させてなる構造を有している場合、熱による複屈折特性への影響も低減でき、耐熱性を向上させたものとなる。
なお、本発明の光学素子1は、正のCプレート、正のAプレート、負のCプレートのいずれかが複屈折層4として単層に形成されている場合に限定されず、複屈折層4として複数種類の層が形成されていてもよい。すなわち、例えば、光学素子1には、正のCプレートと正のAプレートといった2種類の層や、正のCプレートと正のAプレートと負のCプレートの3種類の層が複屈折層として形成されていてもよい。また、複屈折層4が単層である場合においても、面内方向全てに同一の複屈折特性を有する層である場合に限定されず、部分的に複屈折特性の異なる層を形成していてもよい。例えば、複屈折層4が単層で形成されている場合に、複屈折層4が全体に正のCプレート、正のAプレート、負のCプレート、その他負のAプレートのいずれかにて形成されるのみならず、部分的に負のAプレートが形成されていてもよいし、所定の領域ごとに正のCプレートと負のCプレートを交互に形成した複屈折層4とすることも可能である。
光学素子1が複屈折特性の異なる複数の複屈折層4を形成していると、そのような光学素子を備えた液晶表示装置を製造する場合に、例えば正のAプレートと負のCプレートとして準備された別体の位相差フィルムを粘着剤の層を介して液晶セルに貼り付けて配設するといった工程を実施する必要がなくなり、粘着剤の層を減じることができるため、位相差フィルムと粘着剤の層の界面に生じる光の反射により液晶表示装置のコントラスト低下が生じてしまう虞がより低減される。
なお、本発明の光学素子1は、着色層、光を反射させる反射板、偏光板などをさらに設けていてもよい。本発明の光学素子1においては、導電膜形成体5に、全面にあるいは部分的に、着色層を設けてもよく(図2(A)、(B)、(C))、同様に、反射板、偏光板などについても導電膜形成体5の全面にあるいは部分的に設けられてよい。また、光学素子1において、着色層は、複屈折層4の表面上に形成されていてもよく(図2(D))、これと同様に、光を反射させる反射板、偏光板などについても複屈折層4の表面上に形成されていてもよい。
本発明の光学素子1において、導電膜形成体5が、着色層を形成している場合の実施例について、特に、複屈折層4が正のAプレートである場合の一例について、次に説明する(図2(A))。
この光学素子1は、図2(A)の例に示すように、基材2表面上に導電膜3を成膜してなる導電膜形成体5上、ブラックマトリクス8(BM)、所定の波長の光を透過する画素14を設けて着色層7を形成している。この例では、着色層7は、導電膜形成体5における基材2表面に対して直接に形成されており、導電膜3に対しては基材2を介して間接に形成されている。
さらに、図2(A)の例に示す光学素子1は、導電膜形成体5の着色層7の表面上に、配向膜(図示せず)を成膜しており、さらに配向膜の表面上に直接に複屈折層4が積層形成されている。したがって、複屈折層4は、導電膜形成体5上に対して間接に形成されており、導電膜3に対しても間接に形成されている。
画素14は、可視光線のうち透過させる光の透過率の最も大きい波長を異にするサブ画素として赤(R)のサブ画素9、緑(G)のサブ画素10、青(B)のサブ画素11を設けて構成されている。
導電膜形成体5上において、着色層7は、ブラックマトリクス8(BM)が設けられ、さらに、赤(R)のサブ画素9、緑(G)のサブ画素10、青(B)のサブ画素11を順次設けられ、ブラックマトリクス8(BM)と、赤(R)のサブ画素9と、緑(G)のサブ画素10と、青(B)のサブ画素11とが設けられることで構成されるが、ブラックマトリクス8(BM)、赤(R)のサブ画素9、緑(G)のサブ画素10、青(B)のサブ画素11は、それぞれ予め定められた位置やパターンで形成される。
ブラックマトリクス8は、導電膜形成体5面上に各色のサブ画素(着色サブ画素)9、10、11の配置される位置に対応する領域を、平面視上、個々の着色サブ画素9、10、11ごとに区画化するように形成される。
このブラックマトリクス8は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を所定形状に基材2面にパターニングすることにより、形成することができる。また、ブラックマトリクス8は、黒色樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することにより形成することも可能である。
着色層7を構成する赤(R)のサブ画素9、緑(G)のサブ画素10、青(B)のサブ画素11は、それぞれ赤色、緑色、青色各々についての着色材料を溶媒に分散させた着色材料分散液の塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で、所定形状にパターニングすることで形成されるほか、各色のサブ画素に対応する色相に応じた着色材料を分散させた溶液(着色材料分散液)を所定形状に塗布することによってもパターニングできる。この着色材料分散液の塗布のパターニング形態としては、ストライプ型、モザイク型、トライアングル型等種々なパターンを適宜選択することができる。
図2(A)の例において、複屈折層4が着色層7の上に形成されるにあたり、まず、配向膜としての水平配向膜が成膜される。水平配向膜は、光学素子1において複屈折層4が正のAプレートである場合について前述したのと同様に、着色層7表面上に配向膜組成液を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を硬化させることで、成膜することができる。
着色層7の表面上に水平配向膜が成膜されると、さらにその水平配向膜の表面上に、上述した化合物(I)(II)(III)のような液晶分子を含む液晶材料としての液晶塗布膜形成液が塗布されて液晶塗布膜が成膜される。液晶塗布膜形成液の塗布には、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、静電印刷法、無版印刷法といった各種印刷方法や、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ディップコート法、キスコート法、スプレーコート法、ダイコート法、コンマコート法、インクジェット法、スピンコート法、スリットコート法などの方法といった塗工方法やこれらを組合せた方法を適宜用いることができる。
この液晶塗布膜の形成にあたり、予め着色層7の表面に対して、UV(紫外線)を照射する処理(UV洗浄処理)や、コロナ放電を作用させる処理(コロナ処理)などが施されると、着色層7の濡れ性が向上し、着色層7と液晶塗布膜との接触をより緊密にすることができて好ましい。
着色層7上の水平配向膜の表面上に液晶塗布膜が形成されると、液晶塗布膜に含まれる液晶分子に予め定められた配向性を付与して架橋重合させ、上記したように硬化処理を施す。
液晶塗布膜に含まれる液晶分子が重合されると、この液晶塗布膜が複屈折層4をなし、着色層7を備えた光学素子1が製造される。
着色層7は、上記したように、着色画素(サブ画素)を複数色(複数種類)備える場合に限定されず、着色画素を単色備えて構成されてもよい。この場合、着色層7は、ブラックマトリクス8を備えなくてもよい。
また、本発明の光学素子1は、前述したように、導電膜形成体5の基材2と複屈折層4の間に着色層7が積層形成されている場合に限定されず、(図2(D))のように、本発明の光学素子1は、導電膜形成体5の基材2と着色層7の間に複屈折層4が積層形成されている場合であってもよい。光学素子1が、導電膜形成体5の基材2と着色層7の間に複屈折層4が積層形成されているように構成される場合、このような光学素子1は、導電膜形成体5に着色層7を設ける前に複屈折層4を形成し、さらに導電膜形成体5の複屈折層4上に着色層7が形成されることで具体的に製造できる。
なお、光学素子1においては、着色層7は、導電膜形成体5が作成された後に形成される場合に限定されず、導電膜形成体5が作成される前に、すなわち基材2に導電膜3が形成される前に、基材2表面上に形成されてもよい。例えば、基材2に着色層7を形成して、着色層7上に導電膜3を成膜して、着色層7を備えた導電膜形成体5を作成し、このような導電膜形成体5上に複屈折層4を導電膜3に対して間接に積層して光学素子1が形成されてもよい(図2(E))。
なお、上記着色層7を形成している光学素子1について、配向膜の表面に対して直接に複屈折層4を形成する場合、すなわち導電膜形成体5と複屈折層4との間に配向膜が介在する場合、を例として説明したが、本発明の光学素子1はこれに限定されず、導電膜形成体5と複屈折層4との間に配向膜を介在形成せずに構成されたものでもよい。
配向膜を形成せず着色層7を形成している光学素子1は、例えば、基材2として一軸延伸したTACフィルムを用い、これに導電膜3を成膜して導電膜形成体5を得て、その導電膜3に対して直接に着色層7を作成し、さらに基材2表面上に複屈折層4を形成する方法などを採用することによって、具体的に製造することができる。
また、上記着色層7を形成している光学素子1について、複屈折層4が正のAプレートである場合を例として説明したが、これに限定されず、例えば複屈折層4は正のCプレートでも負のCプレートでも、正のAプレートや負のAプレート、さらにはハイブリッド配向にて構成されたものであってもよい。
本発明の光学素子1には、図3に示すように、必要に応じて、複屈折層4の表面に、保護層12やスペーサ13が設けられてもよい。
また、本発明の光学素子1が、導電膜形成体5の基材2と着色層7の間に複屈折層4が積層形成されているように構成される場合にあっては、光学素子1は、その着色層7と複屈折層4の間に保護層12が介在し、該保護層12が複屈折層4の表面上に直接形成されて構成されているものであってもよい。
保護層12は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂材料や、多官能エポキシを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂塗料といった樹脂組成物を複屈折層4表面に塗布して樹脂塗布膜を成膜し、この樹脂塗布膜を乾燥させ、さらに硬化させることによって形成することができる。樹脂塗布膜の硬化は、樹脂組成物の性質に応じて公知の硬化方法を適宜実施することができ、例えば、多官能アクリレートを含有するアクリル系ポリマーの材料からなる透明樹脂材料にて樹脂塗布膜を成膜する場合、その樹脂塗布膜の硬化は、樹脂塗布膜にUV光を照射することなどにより実施できる。
スペーサ13は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、及びアミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなり光硬化可能な感光性塗料を、複屈折層4や保護層12の表面上に塗布してこれを乾燥させ、スペーサ13の形成を予定する位置(スペーサ形成予定位置)に対応したパターンを形成したマスクを介して露光した後、現像してスペーサ形成予定位置以外の感光性塗料を取り除き、スペーサ形成予定位置に残された感光性塗料を焼成することにより形成される。
こうして得られる図2、図3の例に示すような光学素子1は、着色層7を備えることから、カラー表示可能な液晶表示装置に組み込まれるカラーフィルタとして有効に使用することができる。
本発明の光学素子1を組み込んだ液晶表示装置について説明する。
液晶表示装置が、IPSモードである場合を例として詳細に説明する。
本発明の液晶表示装置21は、図4(A)に示すように、対向する一対の基板25(表示側基板たる観察者側基板22、駆動液晶側基板たるバックライト側基板23)の間に、電場に置かれた状態で電場の変化に応じて駆動可能(配向を変動可能)な液晶表示装置駆動用の液晶組成物(駆動用液晶組成物24)を封入して駆動液晶層28を形成して構成される。図4(A)の例の場合、観察者側基板22は、透明な基材2表面上に導電膜3と着色層7とをそれぞれ形成し、導電膜3と着色層7の間に基材2を介在させており、さらに複屈折層4を、着色層7の表面上に形成し、導電膜3の上に直線偏光板33を配して構成されている。ここに、観察側基板22には、基材2に導電膜3を形成した導電膜形成体上に導電膜3に対して間接に複屈折層4を形成してなる層構造が備えられており、したがって、この液晶表示装置21において、光学素子1は、その液晶表示装置21の観察者側(図4(A)中上方に相当)に設置される観察側基板22に組み込まれている。表示側基板22に組み込まれた光学素子1における複屈折層4は、上記のように液晶分子が透明な基材2に対し、例えば水平配向した状態で固定化されて正のAプレートを形成している。
バックライト側基板23には、透明な基材41のインセル側(駆動用液晶材料24の封入される側)に駆動用回路43と、これにより電圧の負荷量を制御されて駆動液晶層28の電場の状態を制御する電極(駆動用電極44)とが設けられ、さらに基材41よりも外側位置に直線偏光板42が設けられて、直線偏光板42と駆動液晶層28との間に基材41が配置されている。
なお、液晶表示装置21において、観察者側基板22の直線偏光板33と、バックライト側基板23の直線偏光板42とは、互いの透過軸が直交するように配されている。
また、液晶表示装置21には、必要に応じて、表示側基板22における直線偏向板33の内側に、位相差フィルム30を介在させてもよい。さらに、液晶表示装置21において、位相差フィルム30は、必要に応じて複数枚、複数種類介在させていてもよい。したがって、例えば、液晶表示装置21は、光学素子1の複屈折層4を正のAプレートとして機能する層として光学素子1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のCプレートとしての機能を有するもの、さらにその他の機能を有するものと、2枚以上を積層させて構成されていてもよい。
本発明の液晶表示装置21によれば、複屈折層4が透明な基材2と基材41との間に位置するように、光学素子1を組み込むことができ、いわゆるインセル型の複屈折層4を備えた液晶表示装置を形成することができる。
なお、光学素子を組み込んだ液晶表示装置は、IPSモードに限らず、他のモード、例えばVAモードであってもよい。液晶表示装置51が、VAモードである場合には、図4(B)に示すように、対面する一対の基板55(観察者側基板52、バックライト側基板53)の間に液晶組成物(駆動用液晶組成物54)を封入して駆動液晶層58を形成して構成される。観察者側基板52は、導電膜3を、基材2と駆動液晶層58の間に位置するように形成し、導電膜3上に着色層7、複屈折層4を順次形成して光学素子1が組み込まれ、さらに光学素子1の外側位置に直線偏光板63を設けており、バックライト側基板53は、VAモード用の駆動用回路と電極を従前より公知なものを適宜選択して設けて、透明な基材71上に駆動用電極層74を形成して、さらに基材71の外側位置に直線偏光板72を設けている。また、この液晶表示装置51は、対面する一対の基板の最外側の直線偏光板63、72を互いに透過軸を直交させて配置している。さらに、この液晶表示装置51は、駆動液晶層58と観察者側基板52との界面や、駆動液晶層58とバックライト側基板53との界面に、配向膜80、81を形成して駆動液晶層58に封入された駆動用液晶組成物54の配向を規制しており、さらに、導電膜3と駆動用電極層74とで、駆動液晶層58が電場を負荷されて、駆動用液晶組成物54の配向が制御される構成となっている。なお、液晶表示装置51には、必要に応じて、観察者側基板52における直線偏向板63の内側に、位相差フィルム30を介在させてもよい
次に、複屈折層4が正のAプレートの機能を有する層である場合を例として、光学素子1の実施例について説明する。
実施例1.
[導電膜の成膜]
基材としてのガラス基板(コーニング社製、7059ガラス)の表面上に、導電膜を成膜して導電膜形成体を得た。導電膜の構成材料としては、ITOが用いられ、ITOの膜を成膜するにあたっては、スパッタリング法が用いられた。スパッタリング法は、温度が180℃ の条件で実施され、その実施には、シンクロン社製RAS1100が用いられた。形成された導電膜の厚みは、200Åであった。なお導電膜の厚みは、触針式段差計(Sloan社製、「DEKTAK」)を用いて計測された。
[配向膜の作成]
導電膜形成体上には次のように配向膜が形成された。導電膜形成体表面における、ITO膜の形成された面とは反対側の面(導電膜形成体の厚み方向に逆を向く2つの表面のうちITO膜の形成された面に対する背面)に、配向膜として水平配向膜(JSR社製、AL−1254)を、フレキソ印刷を用いて塗工し、200℃で1時間焼成した後、ラビング処理を施して配向膜を作成し、ITO膜に対して間接に配向膜を積層形成したもの、すなわち基板を挟んでITO膜と配向膜とが積層形成されたもの、が得られた。
[液晶塗布膜の作成]
まず、ネマチック液晶相を示す重合可能な液晶分子(重合性液晶分子)としてRMM34(メルク社製)(22重量部)と、光重合開始剤(チバガイギー社製、Irg907)(1.3重量部)溶媒としてのクロロベンゼン(75重量部)とを混合して液晶塗布膜形成液を作製する。
次に、配向膜を形成した導電膜形成体をスピンコーター(ミカサ社製、1H−700C)に設置して、導電膜形成体の配向膜面上に液晶塗布膜形成液をスピンコーティングすることにより、液晶塗布膜形成液を塗布して液晶塗布膜を作成した。これにより、導電膜と液晶塗布膜との間に基材が位置するように、導電膜形成体上に導電膜に対して間接に液晶塗布膜形成液のスピンコーティングが実施されて液晶塗布膜が作成された。
[液晶塗布膜に含まれる液晶分子を液晶相にした状態の形成]
配向膜を形成した導電膜形成体に更に液晶塗布膜を形成したもの(液晶塗布膜形成基材)を、スピンコーターから取り出してホットプレート上へ移し、そのホットプレート上で80℃、3分間加熱して、液晶塗布膜中の溶媒を除去させるとともに液晶塗布膜中に含まれる液晶分子を液晶相に転移させた。この液晶相への転移の確認は、液晶塗布膜が白濁状態から透明状態となったことを目視にて確認することで行われた。
[液晶分子の架橋重合反応(硬化処理)]
液晶相の状態となした液晶分子を速やかに固定する処理を行うために、ホットプレートから紫外線照射装置までローラーコンベヤにてローラー搬送することにより、液晶塗布膜形成基材を移送した。そして、窒素雰囲気下で、目視にてほぼ透明状態の液晶塗布膜に向けて、紫外線照射装置(ハリソン東芝ライティング社製、「商品名TOSCURE751」)を用いて出力が50mW/cm2の紫外線(365nm)を30秒間照射して、液晶塗布膜中の液晶分子を架橋重合反応させることで、液晶分子の配向を固定する硬化処理を施し、液晶塗布膜を複屈折層となし、本発明の光学素子を得た。
得られた光学素子について、さらに次のように焼成処理が施され、焼成された光学素子を用いて、光学素子の複屈折層の配向性の良否を評価した。
[焼成処理]
光学素子は、焼成装置(タバイエスペック社製、品名「PVHC−211」)を用いて230℃で30分間加熱焼成された。
焼成後、複屈折層の膜厚を測定した。この膜厚は、約1.0μmであった。
光学素子の配向性の良否の評価は、配向性の乱れの程度を次のように観察することによって測定して実施された。
[配向性の評価]
光学素子における複屈折層の配向性の良否についての評価は、光学素子を、クロスニコルに配した2枚の偏光板の間に介在させ、一方の偏光板(第1の偏光板)に対してその偏光板の法線方向外側位置から偏光板に向けて光を照射した状態で、光学素子を回転させた場合に、他方側の偏光板(第2の偏光板)を通過する光量が、第2の偏光板の面内の異なる位置でばらついて、第2の偏光板を通過する光の量にムラが観察されるか否かを評価することで実施された。
なお、光学素子を最初に2枚の偏光板の間に介在させるにあたり、光学素子は、第1の偏光板の法線方向の平面視上、所定の配向性を理想的に付与された液晶分子の光軸の方向が第1の偏光板の光の透過軸に対して方位角0°(ゼロ度)の方向であり、且つ、第1の偏光板の面に対して仰角0°(ゼロ度)の方向にある場合の配置状態に、配置された。また、光学素子の回転は、第1の偏光板の面に対して仰角90°の方向(第1の偏光板の面の法線方向)を回転軸として、第1の偏光板の光の透過軸に対する液晶分子の光軸の方向を方位角0°から90°まで徐々に変化させることで実施された。
2枚の偏光板を通過する光の量は、光学素子の回転に応じた光学素子の面とクロスニコルの偏光板の面との相対角度の変化に応じて変化するが、光学素子の複屈折層が理想的な配向性を備える場合には、光学素子の回転により複屈折層の光軸がクロスニコルの偏光板の光の透過軸に一致した場合(方位角0°もしくは90°)に、第2の偏光板を通過する光の量が最小となる状態(暗状態)となり、第2の偏光板の外側からその法線方向に第2の偏光板を観察した者が均一な暗状態を認識する。さらに、第2の偏光板の面内で第2の偏光板を通過する光量には殆どムラが認識されなくなる(均一な暗視野として認識される)。また、上記した方位角が45°の場合に、2枚の偏光板を通過する光の量が最大になる。
光学素子の配向性は次のように評価した。すなわち、暗状態を形成する位置に光学素子を配置した場合に、第2の偏光板の面内方向に均一な暗状態が観察され、且つ、その位置から光学素子を回転させて第2の偏光板を通過する光の量を増やしても光の量のムラが第2の偏光板の面内に観察されないとき、光学素子の配向性が良好であると評価した。そして、暗状態を形成する位置に光学素子を配置して第2の偏光板の面内に均一な暗状態が観察されず部分的に光漏れを生じてムラが観察されたり全体に光漏れ生じてしまったり、あるいは、暗状態の位置から光学素子を回転させて第2の偏光板を通過する光の量にムラが観察されるとき、光学素子の配向性が不良であると評価した。
光学素子について、配向性を評価したところ良好であった。このことから、光学素子の複屈折層では、複屈折層の面内方向および厚み方向に異なる位置にある液晶分子は、互いに水平配向を十分に均一に付与されていることがわかる。
なお、焼成処理は、光学素子の硬度を高めるが、その一方で、焼成時に加えられるエネルギーによって複屈折層の配向性を乱すように作用するので、焼成処理を行う前の光学素子は、焼成後の光学素子よりも配向性は良好である。
実施例2.
まず、実施例1と同様に基材に導電層を成膜して導電膜形成体を得て、その導電膜形成体について、導電膜形成体表面におけるITO膜の形成された面とは反対側の面上に、次に示すように、ブラックマトリクス(BM)及び赤色のサブ画素(R)、緑色のサブ画素(G)、青色のサブ画素(B)を備える着色層を作成し、さらに、着色層表面上に、実施例1と同様にして、配向膜および複屈折層を順次積層形成して光学素子を作成した。なお、この光学素子は、導電膜と複屈折層の間に、導電膜に近い位置に配置する順に基材、着色層、配向膜を介在して構成されており、導電膜に対して間接に複屈折層を形成している。
[着色層の作製]
<着色層の形成に用いる着色材料分散液の調整>
ブラックマトリクス(BM)及び赤色のサブ画素(R)、緑色のサブ画素(G)、青色のサブ画素(B)の夫々を形成するための着色材料を分散させた着色材料分散液として、次に示すような顔料分散型フォトレジストを用いた。顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合することにより得られた。得られた顔料分散型フォトレジストは、下記に示すような組成である。尚、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。
(ブラックマトリクス用フォトレジスト)
・黒顔料・・・・・14.0重量部
(大日精化工業(株)製、TMブラック#9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部
(ビックケミー(株)製、Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部
(昭和高分子(株)製、VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部
(綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部
(4,4´−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部
(エチレングリコールモノブチルエーテル)
(赤色(R)着色画素用フォトレジスト)
・赤顔料・・・・・4.8重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・1.2重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(緑色(G)着色画素用フォトレジスト)
・緑顔料・・・・・3.7重量部
(C.I.PG7(大日精化製、セイカファストグリーン5316P))
・黄顔料・・・・・2.3重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(青色(B)着色画素用フォトレジスト)
・青顔料・・・・・4.6重量部
(C.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F))
・紫顔料・・・・・1.4重量部
(C.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF))
・顔料誘導体・・・・・0.6重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース12000)
・分散剤・・・・・2.4重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
尚、上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
<着色層の形成>
実施例1と同様に導電膜を成膜して得られた導電膜形成体を用い、その導電膜形成体上に、さらに次に示すように、各色のサブ画素について着色材料分散液を塗布して着色層を積層形成し、着色層を備えた導電膜形成体を得た。
まず、導電膜形成体におけるガラス基板面上(すなわち導電膜の非形成面)に、上記のように調製したBM用フォトレジストを、スピンコート法を用いて塗布し、90℃、3分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、所定のパターンに形成されたマスクを用いて露光(100mJ/cm2)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベーク(焼成)し、厚さが1.2μmのBMを形成した基板(BM形成基板)を作製した。
次に、予め赤色のサブ画素に対応する位置に対応するように調整した赤色(R)の顔料分散型フォトレジストを上記BM形成基材上にスピンコート法にて塗布し、80℃、3分間の条件でプリベークし、各色パターンに応じた所定の着色パターン用フォトマスクを用いて、紫外線露光(300mJ/cm2)した。さらに、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、60分間ポストベーク(焼成)し、BMパターンに対して所定の位置に膜厚2.6μmの赤色(R)のサブ画素のパターンを形成した。
続いて、上記赤色(R)のサブ画素のパターンの形成方法と同様の方法を用いて、緑色(G)のサブ画素、青色(B)のサブ画素それぞれにつき、パターンを形成した。
こうして、ガラス基板上に、BM、赤色のサブ画素、緑色のサブ画素、及び青色のサブ画素から構成される着色層が形成された。
こうして着色層を備えた導電膜形成体を得て、さらに着色層の表面上に、実施例1と同様に配向膜および複屈折層を形成して、光学素子を得た。
得られた光学素子について、実施例1と同様にして焼成処理を行い、焼成された光学素子を用いて、光学素子の配向性の評価を行った。
結果、得られた光学素子では、実施例1と同様に均一な暗状態が観察され、配向性の評価は良好であった。これにより、光学素子における複屈折層に含まれる液晶分子は良好に水平配向を付与されていることが確認できた。
比較例1
基材に導電膜を成膜しなかった他は、実施例1と同様にして、基材に配向膜と複屈折層を積層形成して焼成処理を行い、光学素子を得た。
得られた光学素子について、実施例1と同様にして、配向性の評価を行った。この光学素子においては、配向性の評価は不良であった。光学素子の製造にあたり、液晶分子に均一な配向性を付与した後に液晶塗布膜の露光処理で液晶分子を固定化する際にローラー搬送が行われるが、この光学素子では、そのローラー搬送時においてローラーと接触した領域を中心に光漏れが認められ、その領域における液晶分子の配向性の乱れが認められた。さらに、この光学素子においては、配向性の乱れが認められた部分と、その部分以外の配向性に乱れの認められない部分とでは、光学素子を徐々に回転させた場合における光透過量が相違し、そのことがムラとして視認され、両部分は液晶分子の光軸方向を異にしていることが認められた。
実施例1、2、比較例1により、本発明の光学素子によれば、配向性の乱れが抑えられていることが判る。