液晶ディスプレイは、電場を負荷可能な電極を備えた対面する2枚の基板の間に、電場に応じて配向を制御可能に駆動用の液晶(駆動用液晶)が封入されて液晶層を形成しており、液晶層に含まれる駆動用液晶の配向性を電気的に制御することで液晶表示画面に所望の表示を行うことができるものであることから、薄型化や軽量化容易である点や、消費電力を低減できる点、フリッカーを生じ難い点等の利点があり、テレビや医療機器など様々な分野に用いられている。ただ、その一方で、液晶ディスプレイは、使用者が液晶表示画面を見る角度によっては光漏れや階調反転現象を生じる問題、即ち視野角の狭さという問題を抱えていた。
この問題を解決するため、液晶層からの出射光や液晶層への入射光の位相差を制御する機能を有する光学素子を設けた液晶表示装置が提案されている。そのような機能を有する光学素子として、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムを1軸延伸や2軸延伸処理したフィルム材の他、液晶分子を特定方向に配向させて固定した層を用いた位相差制御部材を用いることが提案されている(特許文献1から4)。
特許文献1には、フィルム面の法線方向に分子鎖を配向させた固有屈折率値が正のネマチック液晶ポリマーからなる視覚補償フィルムが提案されている。
特許文献2には、基板上に形成した垂直配向膜上に重合性液晶化合物を塗工することにより液晶化合物をホメオトロピック配向させた液晶層を製造する方法が提案されている。この方法では、長鎖アルキル型デンドリマー誘導体を用いて垂直配向膜が形成される。
特許文献3には、垂直配向膜の設けられていない基板上に、液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットと非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットとを含有する側鎖型液晶ポリマーを塗工し、その液晶ポリマーを液晶状態でホメオトロピック配向させた後、その配向状態を維持しつつ固定化してホメオトロピック配向液晶フィルムを製造する方法が提案されている。
特許文献4には、垂直配向膜の設けられていない基板に、基板側からバインダー層、次いでアンカーコート層を形成し、アンカーコート層に、側鎖型液晶ポリマーを塗工してホメオトロピック配向させた後、ホメオトロピック配向させた状態を維持したまま固定化して、ホメオトロピック配向液晶フィルムを製造する方法が提案されている。
特許文献1の視角補償フィルムは、配向膜を有する2枚の基板を用いてセルを作製し、この空セル内に液晶分子を封入し、液晶分子を垂直配向させ、その状態を維持させつつ液晶分子同士を光重合するという多くの工程の後にようやく得られるものであるから、生産コストが著しく増大するという問題がある。
特許文献2の方法では、長鎖アルキル型デンドリマー誘導体という特殊な材料を用いる必要があるため、生産コストが著しく増大してしまうという問題がある。
特許文献3、特許文献4の方法では、ホメオトロピック配向されるのは側鎖型液晶ポリマーであるので、ホメオトロピック配向の状態で固定されていても昇温に伴って流動性が増し、熱により複屈折特性が容易に影響を受けてしまうことから、所望の複屈折特性を維持することができる温度範囲が比較的狭い上、液晶ポリマーを固定化した部分の液晶ポリマーの配向性が不均一化し易い。すると、これらの方法で得られるホメオトロピック配向液晶フィルムでは、高い耐熱性が求められる光学機器に配置する液晶表示装置に用いることが困難になるという問題が生じてしまう。
そこで、こうした問題を解決するために、本発明者らは、配向の固定化された液晶性高分子で形成される層構造としての位相差層を有する位相差制御部材において、位相差層が、3次元架橋可能な液晶性モノマーとその液晶性モノマーの配向を促す配向促進剤とを含有する液晶材料を基材に塗布して得られた液晶塗布膜に含まれる液晶性モノマーに配向性を付与し、その配向性をできるだけ維持したまま液晶性モノマーを3次元架橋させて固定されることで形成されることにより、コストが安く耐熱性が良好で且つ広視野角を補償することができる位相差制御部材が得られる、ということを見出した。
この位相差制御部材は、液晶ディスプレイを構成する基板の間に位相差層を積層することによって対面する基板の少なくともいずれか一方の内部や基板との間に組み込まれること(インセル化)が可能であり、特にカラー表示可能な液晶ディスプレイに配置される基板の一方をなすカラーフィルタの着色層上に位相差層を積層することで組み込み可能であるから、光学補償する位相差層としての機能を発揮するのみならずカラーフィルタを保護する保護層としての機能を同時に発揮出来て、位相差層と保護層とを統合でき、部品点数を削減できるばかりか、液晶ディスプレイを製造する際のコストを低減することが可能となる。
インセル化した位相差層を形成した位相差制御部材を組み込んだ液晶ディスプレイを製造するにあたり、位相差層を構成する液晶分子(液晶モノマー)や光重合開始剤、その他の添加剤と供に適切な溶剤に溶解して液晶組成物を調整し、その調整された液晶組成物を基材などに対して塗布して、均一な塗布膜の成膜を行う必要がある。
一般に、成膜を行う方法としては、スピンコート法、ダイコート法、インクジェットコート法、スリットアンドスピンコート法などの方法が挙げられる。特に、液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタを製造するにあたっては、カラーフィルタの着色層を構成する色パターンを形成するためのインキ(レジスト組成物)を調整し、そのインキを基材に塗布して成膜を行う必要があり、その成膜には、液晶ディスプレイの大型化にともない大型基材に対してインキを塗布することが望まれてきたことも相俟って、ダイコート法による一括塗工方法(ダイコート法単独で塗布する方法)が広く用いられている。ダイコート法が広まった理由としては、ダイコート法によるインキの塗布精度の向上、塗布速度と塗布されるインキの吐出量の制御の高精度化、ダイヘッドと基材の被塗布面とを相対的に移動させることが可能になったこと、などの点が挙げられる。また、ダイコート法は、インキの必要量のみを被塗布面上に吐出して塗工するため、スピンコートなどに比べて、インキを効率よく使用できて経済的であり、ダイコート法に用いられる装置をコンパクトな寸法に出来る点でも利点がある。
このように、液晶ディスプレイの分野においてはダイコート法を用いることに利点が多いことから、液晶材料を基材に塗布する過程を経て位相差層を得ようする場合にもダイコート法を効果的に用いることが期待される。
ところで、位相差制御部材を組み込みインセル化した位相差層を形成した液晶ディスプレイを製造する場合、基材に位相差層を形成した後、位相差層の面内方向の所定位置に保護膜や柱状体などの構造体を積層させる処理、位相差層の面内方向の所定位置から液晶ディスプレイの設計に応じて定められる領域を切断する処理などが、後に行われる処理(後処理)として実施される。また、液晶ディスプレイは、2枚の基板を対面させて配置することを要するから、上記した後処理として、位相差層を組み込んだ一方の基板に対して他方の基板を対面させる処理が実施される必要もある。こうした様々な後処理を実施するには、位相差層の面内方向の位置を容易に特定できるような目印を配しておく必要があり、その目印をなす基準の位置としてアライメントマークが配置される。このアライメントマークは、基板において液晶ディスプレイの液晶表示画面をなす領域、すなわち液晶層からの出射光や液晶層への入射光が通過する領域を外れた位置に形成される。
液晶ディスプレイの製造においては、基材面と位相差層との間に位相差層と異なる構造体を所定の領域にパターン形成することが必要となる場合が多く、そのパターン形成を行う領域を指定する際にアライメントマークが必要となることから、アライメントマークについては、位相差層が形成された後の処理において必要とされる場合のみならず、位相差層が形成される前に必要となる場合が極めて多い。そこで、インセル化した位相差層を組み込んだ液晶ディスプレイを製造する場合において、基材に対して位相差層が形成される前にアライメントマークが配置されているのが通常となる。
例えば、インセル化した位相差層を組み込んだ液晶ディスプレイがカラーフィルタを備えるものである場合おいて、カラーフィルタは、位相差層を形成する前に、RGB3色に対応する色パターンとブラックマトリクスとからなる着色層をフォトリソグラフィ法にて基材にパターン形成して、基材と位相差層の間に着色層を介在させて構成される場合がある。そのような場合、カラーフィルタの着色層は次のように基材上に形成できる。
まず、基材に対してアライメントマークとブラックマトリクスを同時にその基板上に形成する。すなわち、基材上にブラックマトリクスを構成するインキ(レジスト組成物)を前面ベタに塗布し、ブラックマトリクスの配設位置とアライメントマークの配設位置の両方に対応するパターンを形成したマスクを介して露光し、さらに現像が行われる。こうして配置されたアライメントマークによれば、その配置位置を基準として基材の面内方向にどの方向に向かってどの程度離れた位置にブラックマトリクスが配置されているかを特定することができることとなり、アライメントマークは基材の面内方向の位置を特定するための基準となる目印をなす。ここで、色パターンが配置される位置はブラックマトリクスの配置パターンが配置される位置に対して相対的に定められる。配置されたアライメントマークを基準にブラックマトリクスの配置パターンが配置される位置が特定されるのであれば、そのアライメントマークを基準にしてどの方向に向かってどの程度離れた位置に色パターンが配置されているかということについても具体的に定められる。そうすると、アライメントマークを基準にした色パターンの配置に基づいて、アライメントマークに対応する位置とその位置を基準にして定められた色パターンの配設位置の両方に対応するマスクパターンを形成したフォトマスク(色パターン用マスク)を作成することができる。こうして作成される色パターン用マスクを用いてフォトリソグラフィ法を実施することにより、RGB各色についての色パターンを、基材面内方向に正確な位置にパターニングすることができ、着色層を正しく形成することができる。
RGBのうちR(赤)について色パターン用マスクを用いて色パターンを配置する場合を例にしてみると、その色パターンを構成するインキをブラックマトリクスやアライメントマークの配置された基材面上にベタ塗りして塗布膜を作成し、その塗布面に対してやや離間した位置に色パターン用マスクを配置する。色パターン用マスクには、基材上のアライメントマークに対応した位置に光を通す光貫通孔が所定の大きさにて形成され、更に光貫通孔を形成している領域内にアライメントマークが設けられている。光貫通孔領域内に配置されるアライメントマークの形状は、基材上に配置されるアライメントマークの形状に応じて適宜選択され、例えば基材上に配置されるアライメントマークとして十字形状、点状のものなどが選択された場合に、それにあわせて光貫通孔領域内のアライメントマークとして、それぞれ矩形状、環状のものなどが選択されている。このように光貫通孔領域内にアライメントマークを形成した色パターン用マスクを、その光貫通孔に配置されたアライメントマークが基材上に設けられたアライメントマークに対して所定の相対的位置になるように配置することにより、基材と色パターン用マスクとを正しく対面配置させる。すなわち、このとき、色パターン用マスクには、基材上のアライメントマークを基準に色パターンの配置されるべき位置に対応させてパターンが形成されているので、色パターン用マスクに形成されたパターンは、基材上の色パターンの配置されるべき位置に対面する位置に正しく配置される。そして、正しく配置された色パターン用マスクを介して塗布面に光を照射することで露光され、さらに現像が行われて、基材上にR(赤)についての色パターンを正しくパターン形成することができる。なお、RGBのうちG(緑)、B(青)についての色パターンについても、R(赤)についての色パターンと同様にして基材に対して正しくパターン形成することができる。
このようにアライメントマークを目印として用いることで液晶ディスプレイを構成するカラーフィルタなどの基板を正しく作成することが可能となるが、ただし、それには基材上におけるアライメントマークの配置位置が正しく特定されることが極めて重要となる。基材上に配置されたアライメントマークの位置は、アライメントマークを配置した基材に光を照射して光の明暗を検出することで光学的に特定される。具体的には、基材の外部に光源を配置し、その光源から光を基材に向けて照射し、アライメントマークの配設領域やその周囲の領域における光の透過量や反射量を光センサにて検知して、その検知された結果に基づきアライメントマークの位置が正しく特定される。
これらを踏まえると、液晶ディスプレイの分野においては、インセル化した位相差層を備えた位相差制御部材を組み込んだ液晶ディスプレイが極めて有効であり、そのような液晶ディスプレイを製造するにあたっては、位相差層を構成する液晶分子を含む液晶材料を、アライメントマークの配置された基材に対してダイコート法を用いて基材に塗布して液晶塗布膜を得て、その液晶塗布膜に基づき位相差層を形成することが期待されていることになる。
特開平5−142531号公報
特開2002−174724号公報
特開2002−174725号公報
特開2003−121852号公報
位相差制御部材1は、光透過性を有する基材2に、基材2の表面に対して直接もしくは間接に位相差層4を積層して構成されており、基材2と位相差層4との間にアライメントマーク5が配置されている。
基材2は、光透過性を有する基材形成材からなり、基材形成材を単層で構成されても、複数種類の基材形成材にて多層に構成されてもよい。基材2には、部分的に遮光領域等が設けられてもよい。基材2の光線透過率は、適宜選定可能である。
基材形成材は、光学的に等方性を有するように構成されていることが好ましい。基材形成材としては、ガラス基板などのガラス材の他、種々の材質からなる板状体を適宜選択できる。特に位相差制御部材を液晶ディスプレイ用に用いる場合には、基板形成材は無アルカリガラスであることが好ましい。
さらに、基材形成材としては、このようなガラス基板のほか、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースなどからなるプラスチック基板であってもよいし、またさらにポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリプロプレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルケトンなどのフィルムを用いることもできる。
位相差層4は、その厚み方向に互いに逆側を向く位相差層4の表面の一方側から入射して位相差層4の内部を進行して他方側の表面より出射する光につき、その光が位相差層4の内部を進行する際に光を複屈折させる機能を有する層であり、位相差層4の厚み方向にz軸をとり、z軸と垂直に交差し且つ1点で交わるように相互に直交するx軸、y軸をとってxyz空間を想定した場合、x軸、y軸、z軸方向の光の屈折率をnx、ny、nzとして、屈折率がnx=ny<nzとなっており、いわゆる「+Cプレート」(正のCプレート)として機能する。
位相差層4は、分子構造中に重合性官能基を有する液晶分子(重合性液晶分子という)を重合反応させてなる高分子構造を形成している。
位相差層4は、液晶分子を特定の方向に配向させた状態にて形成されている。液晶分子は、その分子構造に応じた光軸を有し、その光軸の状態にて定まる複屈折特性を備えており、特定の方向に液晶分子を配向させて固定することで、正のCプレートの機能を有する層を構成することができる。
位相差層4を構成する液晶分子は、ネマチック液晶相を形成可能な液晶分子やスメクチック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができる。
位相差層4を構成する重合性液晶分子は、その液晶分子の構造中に不飽和2重結合を重合性官能基として有するものが好ましい。また、重合性液晶分子には、耐熱性の点から液晶相状態で架橋重合反応可能な重合性液晶分子(架橋重合性液晶分子、あるいは架橋性液晶分子という)がより好ましく用いられ、架橋重合性液晶分子としては分子構造の両末端に不飽和2重結合を有するもの(不飽和2重結合を2以上有するもの)が好ましい。なお、架橋重合性液晶分子を用いて位相差層4が形成される場合、位相差層4には、架橋重合性液晶分子を相互に架橋させてなる架橋高分子構造が形成されることになる。
位相差層4を得るために用いられる架橋性液晶分子としては、架橋性を有するネマチック液晶分子(架橋性ネマチック液晶分子)などをあげることができる。架橋性ネマチック液晶分子としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような架橋性液晶分子として、より具体的には、下記化1に示す一般式(1)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(I))、下記化2に示す一般式(2)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(II))もしくは2種以上の混合物、化3、化4に示す化合物(化合物(III))のうちの1種の化合物或いは2種以上の混合物、またはこれらを組み合わせた混合物を用いることができる。
化1に示す一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれに、水素またはメチル基を示すが、架橋性液晶分子が液晶相を示す温度の範囲をより広くするには少なくともR1及びR2のどちらか一方が水素であることが好ましく、両方が水素であることがより好ましい。また一般式(1)におけるX及び一般式(2)のYは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基のいずれであってもよいが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環と間のアルキレン基の鎖長を示すaおよびb並びに、一般式(2)におけるdおよびeは、それぞれ個別に1〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物(I)またはd=e=0である一般式(2)の化合物(II)は安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物(I)または(II)自体の結晶性が高い。また、aやb、あるいはdやeがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物(I)または一般式(2)の化合物(II)は、等方相転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物は、どちらについても液晶分子が液晶性を安定的に示す温度範囲(液晶相を維持する温度範囲)が狭いものとなり、位相差層4に用いるには好ましくない。
架橋性液晶分子として、上記した化1、化2、化3、化4では重合性を備える液晶(重合性液晶)のモノマーを例示したが、重合性液晶のオリゴマーや重合性液晶のポリマー等を用いてもよく、これらについても、上記した化1、化2、化3、化4などのオリゴマーやポリマーなどといった公知なものを適宜選択して用いることができる。
位相差層4においては、液晶分子の重合度(架橋重合性液晶分子の場合は、架橋重合度)が80以上程度であることが好ましく、90以上程度であることがより好ましい。位相差層4を構成する液晶分子の重合度が80より小さいと、均一な配向性を十分に維持できない虞がある。なお、上記重合度、架橋重合度は、液晶分子の重合性官能基のうち液晶分子の重合反応に消費された割合を示す。
上記したような液晶分子を用い、位相差層4は、その光軸が上記にて想定したxyz空間におけるz軸方向を向くように、正の複屈折異方性の液晶分子を配向させて固定することにより形成される。
位相差層4は、その高分子構造(液晶分子が架橋重合性液晶分子である場合は、架橋高分子構造)を構成する個々の液晶分子のチルト角と方位角(位相差層4の平面視上、液晶分子の光軸が位相差層4の厚み方向に対して倒れる方位)について、位相差層4の厚さ方向および面内方向に異なる位置に存在する液晶分子同士のチルト角と方位角がそれぞれ互いに略等しい(理想的には、完全に等しい)ことが好ましい。この場合、位相差層4に含まれるそれぞれの液晶分子のチルト角と方位角は略均一に揃い、位相差層4は、その複屈折特性の均一なものとなり、面内方向にむらの少ないものとなる。
具体的には、位相差層4は、次のようにして形成することができる。
まず、位相差層4を構成する上記した化合物(I)化合物(II)化合物(III)のような液晶分子と、溶媒とを配合して液晶材料が調整される。液晶材料には、必要に応じて、液晶分子を垂直に配向させる配向助剤(垂直配向助剤ということがある)などを含む添加剤が適宜添加されてもよい。
液晶材料の調整に用いる溶媒としては、位相差層4を構成する液晶分子を溶解させることができるものであれば特に限定されず、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。単一種の溶媒を使用しただけでは、架橋性液晶分子等の配合物成分の溶解性が不充分である場合や、液晶材料を塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類とを混合した混合系溶媒である。液晶材料溶液の配合物成分の濃度は、液晶材料に用いる配合物成分の溶媒への溶解性や位相差層に望まれる層厚み等により異なるが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲である。
液晶材料に含まれる垂直配向助剤としては、ポリイミドや、界面活性剤やカップリング剤が具体的に例示される。
垂直配向助剤としてポリイミドを用いる場合、ポリイミドは、長鎖アルキル基を有するものであることが、位相差制御部材に形成される位相差層4の厚さを広い範囲で選択することができて好ましい。なお、垂直配向助剤がポリイミドである場合、ポリイミドとしては、具体的には、日産化学社製のSE−7511やSE−1211、あるいはJSR社製のJALS−2021−R2等を例示できる。
垂直配向助剤として界面活性剤を用いる場合、界面活性剤は、重合性液晶分子をホメオトロピック配向させることができるものであればよいが、位相差層の形成の際に液晶分子を液晶相への転移温度まで加熱する必要があることから、液晶相への転移温度でも分解されない程度に耐熱性を有していることが要請される。また、位相差層4の形成の際、液晶分子は有機溶媒に溶解させる場合があることから、そのような場合には、液晶分子を溶解させる有機溶媒との親和性が良好であることが要請される。このような要請をみたすものであれば、界面活性剤はノニオン系、カチオン系、アニオン系等の種類を限定されず、1種類の界面活性剤のみを用いてもよいし、複数種の界面活性剤を併用してもよい。
垂直配向助剤としてカップリング剤を用いる場合、カップリング剤としては、具体的には、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどのシラン化合物を加水分解して得られるシランカップリング剤や、アミノ基含有シランカップリング剤、フッ素基含有シランカップリング剤などを例示することができる。これらのカップリング剤は、複数種選択されて、液晶材料に添加されてもよい。
また、液晶材料には、必要に応じて、光重合開始剤、増感剤が添加される。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル(もしくはビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオサントン等を挙げることができる。
液晶材料に光重合開始剤が配合される場合、光重合開始剤の配合量は、0.01〜10重量%である。なお、光重合開始剤の配合量は、重合性液晶分子の配向をできるだけ損なわない程度であることが好ましく、この点を考慮して、0.1〜7重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
また、液晶材料に増感剤が配合される場合、増感剤の配合量は、重合性液晶分子の配向を大きく損なわない範囲で適宜選択でき、具体的には0.01〜1重量%の範囲内で選択される。光重合開始剤及び増感剤は、それぞれ、1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
このように液晶材料が調整されると、次いで、この液晶材料を基材2に塗布して液晶塗布膜を成膜する。
この液晶材料の塗布は、ダイコート法にて行われる。
ダイコート法によれば、基材2面に対して僅かに離間した位置に配置されたダイヘッドから液晶材料を吐出しながらそのダイヘッドを基材2面の面内方向に移動させることによって液晶塗布膜が形成される。ダイヘッドの移動方向が液晶塗布膜の成膜方向となる。このとき、液晶材料の塗布は、液晶塗布膜の成膜方向を横切る方向に基材2の端縁から垂れ落ちない程度の液晶材料の吐出量、ダイヘッドの移動速度にて実施されて、液晶塗布膜の成膜が行われることが好ましい。
液晶塗布膜は、その端縁位置よりも2mm以上内側(液晶塗布膜の面内方向内側)の位置にアライメントマーク5が配置されるように、アライメントマーク5を覆って成膜される。
また、液晶材料を塗布して液晶塗布膜を成膜した基材2は、さらに乾燥される。その乾燥は、大気圧下で自然乾燥も可能であるが、減圧乾燥によって減圧状態下で行うことにより、工程時間の短縮が可能となるため、工業生産的に好ましい。
次に、基材2の面に対してダイコート法による液晶材料の塗布によって成膜された液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子をホメオトロピック配向させる。液晶分子に対してホメオトロピック配向性を付与することは、液晶塗布膜を加熱して、液晶塗布膜の温度を、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が液晶相となる温度(液晶相温度)以上、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が等方相(液体相)となる温度未満にすることで、実施される。このとき液晶塗布膜の加熱手段は、特に限定されず、液晶塗布膜を形成した基材を加熱雰囲気下におく手段でもよいし、液晶塗布膜に赤外線を照射して加熱する手段でもよい。
なお、重合性液晶分子を配向させる方法は、上記方法による他、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子やこの液晶塗布膜の状態に応じ、液晶塗布膜を一旦等方相温度まで加熱し、その後に液晶塗布膜を冷却し、その冷却の過程で自発的に液晶分子に配向を誘起させる方法や、液晶塗布膜に対して所定方向から電場や磁場を負荷する方法によっても実現可能である。
また、液晶相となる温度範囲が室温よりも高く、通常室温では液晶相を示さない重合性液晶分子が液晶材料に含有される液晶分子として用いられた場合であっても、室温で過冷却状態の液晶相を示す液晶分子を含有した液晶材料であれば、その液晶材料を、液晶分子が液晶相を示す時間の範囲内で、室温でも、配向性を付与された液晶分子を含有する液晶塗布膜を形成するために使用することが可能である。
このようにして液晶塗布膜中に含まれる液晶分子に配向性が付与された状態が形成されると、液晶分子同士を重合反応(液晶分子が架橋重合性液晶分子の場合は、架橋重合反応)させる。
この重合反応は、液晶材料中に添加された光重合開始剤の感光波長の光(具体的には例えば紫外線)などの活性放射線を、液晶相の状態となっている液晶分子を含有している液晶塗布膜に向けて、その液晶塗布膜全面に照射することで進行する。このとき、液晶塗布膜に照射する光の波長は、この塗膜中に含まれている光重合開始剤の種類に応じて適宜選択される。なお、液晶塗布膜に照射する光は、単色光に限らず、光重合開始剤の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。
また、液晶分子の重合反応は、液晶塗布膜が液晶相を示す状態で、光重合開始剤の感光波長の光などの活性放射線を、遮光パターンを有するフォトマスクなどを介して液晶塗布膜に照射して(露光して)重合反応を部分的に進行させ(部分的重合工程という)、部分的重合工程の後、液晶分子が等方相となる温度(Ti)まで液晶塗布膜を加熱し、この状態でさらに感光波長の光などの活性放射線を液晶塗布膜に照射して重合反応を進行させる方法や、部分的重合工程の後に液晶塗布膜を温度Ti以上に加熱して液晶分子を熱重合させる処理を施すことにより液晶塗布膜に含まれる液晶分子の重合反応を所定の重合度に至るまで進める方法で実施されてもよい。なお、上記した温度Tiは、重合反応を進行させる前の液晶塗布膜において液晶分子が等方相となる温度である。
また、液晶分子の重合反応がフォトマスクを用いた部分的重合工程を経て実施される場合、液晶塗布膜を形成した基材に対して部分的重合工程が実施された後、その基材を、液晶分子の重合反応が不十分で未硬化な状態にある液晶材料を溶解可能な溶液に浸漬することにより、液晶塗布膜において液晶分子の重合反応が進まなかった部分を基材面から除去し、基材上に液晶相の液晶分子を含む層構造を所定のパターンで形成する(パターニングする)ことも可能である。
なお活性放射線を照射して液晶塗布膜中の液晶分子を重合反応させることによる液晶塗布膜の硬化は、空気雰囲気下で実施されるのみならず、不活性ガス雰囲気中でも実施できる。
位相差層4は、基材2面内方向の領域上に全面ベタに形成されているのが通常である。ただし、このことは、位相差層4が基材2面内方向の一部の領域にのみ形成される場合、例えば、基材2上に、所定の間隔を隔てて複数の領域に位相差層4を形成する場合など、を排除するものではない。なお、基材2上に所定の間隔を隔てて複数の領域に位相差層4を形成することは、それぞれの位相差層4をなす液晶塗布膜を、それぞれ、その端縁位置より2mm以上内側にアライメントマーク5を配置するように成膜し、それぞれの液晶塗布膜に含まれる液晶分子を配向させ固定して位相差層4となすことにより、具体的に実現できる。
位相差層4の厚み(液晶塗布膜の成膜方向中央位置における厚みの平均値)は、光学補償機能を効果的に発揮させる観点から0.5から3.0μmであることが好ましい。
位相差制御部材1は、基材2と位相差層4との間にアライメントマーク5を配置している。アライメントマーク5の配置数は特に限定されるものではないが、2以上であることが、位相差制御部材1の所定位置を特定するための基準点からの距離と基準点を中心とした方向(方位)とを確実に規定することができ、位相差制御部材1上の位置を確実に特定することが出来て好ましい。
アライメントマーク5の形状は、特に限定されるものではなく、円形状、十字型形状など適宜選択可能である。
アライメントマーク5の寸法は、特に限定されるものではないが、直径1.0mmから10mmの範囲内に収まり、また、その厚みは0.05μmから2.0μmの範囲に収まるような寸法であることが通常である。
このような、アライメントマーク5は、基材2面に対して、アライメントマーク5を構成する材料を含有する組成物(アライメントマーク組成物)を、アライメントマーク5を配置しようとする位置(アライメントマーク配置予定位置)として定められた位置に塗布して、塗布された組成物を硬化させることで形成することができる。
また、アライメントマーク5は、フォトリソグラフィ法を用いて形成することができる。例えば、光硬化性を備えた樹脂材料を含有する組成物をアライメントマーク組成物として、このアライメントマーク組成物を基材2面に塗布して塗布膜を得て、その塗布膜に対し、アライメントマーク配置予定位置に対応するパターン形成したマスクを介して露光し現像することにより、アライメントマーク配置予定位置にアライメントマークを形成することができる。
その他、アライメントマーク5は、スパッタリング法、スパッタリングとフォトリソグラフィを組み合わせた手法、などにて形成することも可能である。
アライメントマーク5は、位相差層4を形成するにあたり作成される液晶塗布膜の端縁位置よりも2mm以上内側の領域内に配置されている。すなわち、位相差制御部材1をその厚み方向に見た場合(平面視上)、液晶塗布膜の端縁位置よりも2mm以上内側の領域から外側にアライメントマーク5の外側端がはみ出ないように、アライメントマーク5が配置されている。ここで、位相差制御部材1を液晶ディスプレイに用いる場合、液晶ディスプレイの設計に応じて位相差層4の設計が定まり、その設計に応じて液晶塗布膜の設計を具体的に定めることができ、このように具体的に定められる液晶塗布膜に応じて、その液晶塗布膜の端縁位置より2mm以上内側の所定位置にアライメントマーク5を配置する位置(アライメントマーク配置予定位置)を適宜定めることができる。
なお、液晶塗布膜には、その外側方向に端縁部分に、液晶塗布膜表面(界面)が盛り上がって盛り上がり部が形成されており、この盛り上がり部は、液晶塗布膜の端縁位置より2mmあるいはおおよそ2mmまでの領域に形成される。盛り上がり部は、基板表面位置から液晶塗布膜表面まで高さの増した部分に相当しており、液晶塗布膜の厚みが液晶塗布膜の中心の厚みにくらべて厚い部分をなしている。液晶塗布膜を位相差層となすにあたり、配向性を液晶分子に付与してその状態を維持する必要があるが、基板より遠い位置に存在する液晶分子ほど配向性を付与された状態が維持されにくいので、液晶塗布膜の盛り上がり部に含まれる液晶分子においては、その他の部分の液晶分子に比べて配向性を付与された状態が維持されにくく、液晶分子の配向性が乱れやすい。特に液晶塗布膜に含まれる液晶分子にホメオトロピック配向性を付与する場合、その他の配向性を付与する場合よりも弱い配向規制力で液晶分子の配向性が維持されるので、液晶塗布膜の盛り上がり部に含まれる液晶分子の配向性が乱れる虞は一層大きい。
そして、通常、液晶塗布膜に含まれる液晶分子に配向性を付与して固定されて液晶塗布膜を位相差層となした後において、液晶塗布膜表面の状態は、そのまま位相差層4に引き継がれ、液晶塗布膜における盛り上がり部は、図1に示すように位相差層4において位相差層盛り上がり部7を形成する。
すると、アライメントマーク5が、仮に2mmよりも外側位置に配置される場合(図1におけるアライメントマークQ)では、アライメントマークQが平面視上位相差盛り上がり部7に重なる位置に配置されているので、アライメントマークQの配置された領域に光を照射して光の明暗を検出することで光学的にライメントマークQの配置位置を特定しようとしても、位相差層盛り上がり部7における液晶分子の配向性の乱れによってアライメントマークQに照射された光が散乱し、アライメントマークの配置位置を正しく特定することが困難になってしまう虞がある。その点、位相差制御部材1のように、液晶塗布膜の端縁よりも2mm以上内側位置にアライメントマーク5が配置されるので、そのような虞を抑制することができる。
位相差制御部材1は、位相差層4が形成された後に位相差層4の面内方向の所定位置を基準とした所定の領域に加工を行う後処理を施されるものであってもよく、アライメントマーク5は、後処理を施される位相差層の面内方向の所定位置を定める基準となる位置を指定するための目印とされてもよい。なお、加工は、位相差制御部材1に物理的作用を及ぼすことを示し、たとえば、位相差制御部材1に対してそれとは別の固形の構造体を配置させ、対面させ、積層させることのほか、位相差制御部材1に対して液体の組成物を塗布することや、位相差制御部材1に切断することなど、物理的な力を作用させることを示す。
位相差制御部材1は、後処理として、具体的に、次のような処理が施されたものであってもよい。
位相差制御部材1は、基材2上に位相差層4を形成した後、位相差層4とは異なる構造体を配置、対面させる後処理が施されてもよい。
後処理は、位相差層4とは異なる構造体としての柱体3を位相差層4の表面上に配設する処理であってもよい(図2)。そのような位相差制御部材1では、柱体3により、柱体3を配置されている部分が、柱体3を配置されていない部分よりも柱体3の基底部3bから先端部3aに向かう方向に突出しており、位相差制御部材1の表面に凹凸が形成されている。なお、図2に示す位相差制御部材1の例では、位相差層4上に柱体3が積層されて構成されており、また、基材2の表面に対して直接に位相差層4が形成されている。
柱体3は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、及びアミド系又はエステル系ポリマー等の光硬化可能な感光性を有する樹脂材料から構成されている。位相差制御部材1において柱体3が配置される位置は、用途に応じて適宜設定される。例えば、位相差制御部材1が液晶ディスプレイを構成する基板に組み込まれて光学補償機能を発揮する部材としての用途で用いられる場合には、液晶ディスプレイの仕様に応じて基板の液晶表示画面となる部分が定まり、さらに基板において液晶表示画面を構成する個々の画素となる部分も定められるが、位相差制御部材1において画素とする部分は、基板の平面視上、基板において画素となる部分に対して重なり合う部分に定められる。そして、柱体3を配置する位置(柱体形成予定位置)は、位相差制御部材1面内方向の所定位置に定められる。この位相差制御部材1面内方向の所定位置は、位相差制御部材1において画素とする部分を除いた部分(非画素部)内より選択される位置として定められる。この柱体形成予定位置は、アライメントマーク5を基準にしてどの方向に向かってどの程度離れた位置に存在しているかを具体的に特定可能なものである。
柱体3の断面形状は、円柱形状、四角柱形状、多角柱形状、円錐台形状など特に限定されない。
柱体3について、位相差制御部材1面内方向断面の寸法は、位相差制御部材1の平面視上、非画素部から柱体3がはみ出ない寸法を適宜設定することができる。また、柱体3について、位相差制御部材1厚さ方向の寸法(柱体3の長さ)は、位相差制御部材1を液晶ディスプレイに組み込んだ場合に柱体3の長さに応じてセルギャップの大きさが規定されることから、0.5μmから10μmの範囲であることが好ましい。
柱体3は、基材2に位相差層4が形成された後、その位相差層4表面上に、たとえばフォトリソグラフィ法などを用いて形成できる。
具体的には、柱体3は、これを構成する上記したような樹脂材料からなる柱体形成用樹脂組成物を、位相差層4の表面上に塗布してこれを乾燥させる。その一方で、アライメントマーク5の配置位置に対応する位置に光貫通孔を形成するとともに光貫通孔の形成された領域内にアライメントマークを配置し、且つアライメントマーク5を基準に柱体3の形成を予定する位置(柱体形成予定位置)に対応したパターンを形成したマスク(柱体用マスク)を作成しておく。
次に、位相差制御部材1を柱体用マスクに対して所定の離間距離まで接近させる。このとき、平面視上、柱体用マスクのアライメントマークに、位相差制御部材1のアライメントマーク5がおおよそ重なりあっている。その後、位相差制御部材1のアライメントマーク5と、柱体用マスクのアライメントマークに光を照射して光の明暗を検出することで、双方のアライメントマークの配置位置関係を検出し、位相差制御部材1および/または柱体用マスクを相対的に移動させて、位相差制御部材1に配置されたアライメントマーク5と柱体用マスクに配置されたアライメントマークとを正しく対面させる。このときに、柱体用マスクにおいて柱体形成予定位置に対応したパターンが位相差制御部材1の柱体形成予定位置に正しく対向する。
その後、その柱体用マスクを介して位相差層4上の柱体形成用樹脂組成物に対して露光を行う。その際、アライメントマーク5と柱体用マスクの間には光を遮る遮光板を介在させておく。そうすることにより、アライメントマーク5の領域に活性放射線Wが照射されてしなう虞がなくなるので、その位置に柱体形成用樹脂組成物が残ってしまうことがなくなる。そうして、露光の後、さらに現像して柱体形成予定位置以外の柱体形成用樹脂組成物を取り除き、基材2をオーブンで加熱するなどといった公知方法を適宜用いて柱体形成予定位置に残された柱体形成用樹脂組成物を焼成する。
こうして、基材2に位相差層4および柱体3を積層した位相差制御部材1が得られる。
なお、位相差制御部材1に柱体3を設ける場合には、位相差層4の表面上に直接柱体3を設ける場合のみならず、ITO膜などの透明電極を介在させてもよい。透明電極は、厚さが2000Åやその前後であることが好ましい。このような透明電極は、スパッタリング法など公知の手段を適宜選択して実施することで製膜できる。
位相差制御部材1においては、基材2には、上記したように位相差層4の形成が行われる前に、基材2面内方向所定位置に、光を反射させる反射板や、その厚み方向に進行する光のうち所定範囲の波長の可視光を通過させる着色層などといった層構造がさらに配置されて、パターン形成されていてもよい。位相差制御部材1は、基材2上に、基材2表面に対して間接に位相差層4を形成して構成される。
次に、位相差制御部材1においては、着色層13が設けられていてよい。
このような位相差制御部材1につき、基材2の表面上に着色層13が形成されている場合を一例として説明する(図3、4)。図3、図4は、着色層13をさらに備えている位相差制御部材1の実施例の一つを説明するための断面を示すそれぞれ概略断面図、概略平面図である。なお、図4では、説明の都合上、位相差層4を省略している。
位相差制御部材1は、基材2の一方の表面に遮光性のブラックマトリクス15が縦横に格子状に塗工形成され、これによりブラックマトリクス15の非形成領域が開口部20として格子点状に多数形成される。つまりブラックマトリクス15の形成領域が遮光部に相当し、開口部20が透過部に相当する。
さらに基材2の上には、開口部20を覆うように三色の色パターン16,17,18が短冊状に配列されて、これら色パターン16,17,18とブラックマトリクス15とで着色層13が形成されている(図3、図4)。色パターン16,17,18は光透過性を有しており、透過する可視光を分光してそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光となす。したがって図4に二点鎖線で示すように、RGBの三色の色パターン(赤色(R)の色パターン16、緑色(G)の色パターン17、青色(B)の色パターン18)によってそれぞれ被覆された三つの開口部20があわさって、一つの画素21が形成される。
ブラックマトリクス15は、おおよそ短冊状に塗工される色パターン16,17,18の混色を防止するとともに、開口部20を平面視上区画化して、画素21の輪郭を鮮明化し、また位相差制御部材1が液晶セルに組み込まれる際に液晶セルに通常配置される駆動回路や液晶駆動用電極などを、透過光から隠蔽する機能をもつ。
ただし本発明においては、位相差制御部材1の用途や光学的な仕様によってはブラックマトリクス15を不要とする場合(この場合には、着色層13は、色パターン16、17、18で形成される。)もあり、またブラックマトリクス15を用いる場合も矩形格子状のほか、ストライプ状や三角格子状などに形成する場合もある。また着色層13を構成する色パターンについても、RGB方式の三色の場合のほか、その補色系であるCMY方式とすることも可能であり、さらに単色もしくは二色の場合、または四色以上の場合なども採りうる。また色パターンの形状も、短冊状にパターン形成する場合のほか、基材2上に全面塗工するパターンの場合や、矩形状や三角形状などの微細パターンを基材2上に多数分散配置するパターンの場合など、目的に応じて種々のパターンを採りうる。
色パターン16,17,18は、色種ごとに、色パターン形成材料としての各色種に対応する着色材料を溶媒に分散させた着色材料分散液を基材2に塗布して形成される塗膜を、例えばフォトリソグラフィ法で、例えば短冊状などといった所定形状にパターニングすることで形成されるほか、着色材料分散液を所定形状に基材2に塗布することによっても形成できる。
ブラックマトリクス15は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を基材2面にパターニングすることにより、形成することができる。また、ブラックマトリクス15は、黒色樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することにより形成することも可能である。
位相差制御部材1において、基材2上における着色層13の形成されていない領域に、アライメントマーク5が配置されている。
位相差制御部材1において、位相差層4は、アライメントマーク5の配置位置よりも2mm外側位置よりも外側の領域まで形成された液晶塗布膜に含まれる液晶分子を配向させ固定することによって形成されるものであり、且つ、着色層13とアライメントマーク5を配置形成した基材2に対して、着色層13とアライメントマーク5を覆って基板2の端縁位置もしくはおおよそ端縁位置まで積層形成されている。
このような位相差制御部材1によれば、基材2と位相差層4との間に着色層3とアライメントマーク5が介在形成されており、位相差層4の耐熱性が比較的高いことから、位相差層4で被覆される着色層13の耐熱性も向上し着色層13を保護することができ、位相差層4は、正のCプレートとしての光学補償機能と着色層13の保護機能とを同時に備えるものとなる。
この位相差制御部材1は、例えば、次のように作成することができる。
基材2上に、カーボン微粒子、金属酸化物等の遮光性粒子を含有させた樹脂材料を塗布して感光性樹脂膜でなる薄膜120を作成し(図6(A−1))、その一方で、アライメントマーク5の配置位置と、アライメントマーク5の配置位置を基準にした配設位置(アライメントマーク5からの距離とアライメントマーク5を基準とした方位)を定められたブラックマトリクス15の格子状の配置パターンに対応する位置との両方の位置についてパターン形成されたフォトマスク124aを作成しておく。次に、フォトマスク124aを基材2の薄膜120に対してやや離間して対向配置し、薄膜120に向けてフォトマスク124aを介して紫外線などの光線(図6におけるW)を照射して現像する。これにより、基材2上にアライメントマーク5とブラックマトリクス15とがパターニング形成される(図6(A−2))。
ブラックマトリクス15によって開口部20を区画形成された基材2上に予め定められた位置に各色の色パターンを形成する。例えば図示のようにRGBの三色の色パターンを備える着色層13を形成する場合、各色についての色パターンを形成する領域(色パターン形成領域)を予め定めておき、赤(R)の色パターン形成領域に色パターン16、緑(G)の色パターン形成領域に色パターン17、青(B)の色パターン形成領域に青色パターン18を、同時または任意の順番で形成し、着色層13を作製する。
各色の色パターンは、次のように顔料を着色剤として分散させた着色材料分散液であるインキを基材2上に塗布して、フォトリソグラフィ法を用いることで、所定形状・所定パターンにて膜状にパターニング形成できる。
図6(B−1)に示すように、まずアライメントマーク5とブラックマトリクス15を覆うように、基板12上に、第一色(ここでは例として赤色を選択する。)の着色剤を含有した赤色の感光性樹脂からなるインキを塗布して感光性樹脂層121を塗工形成する。その一方で、アライメントマーク5の配置位置に対応する位置を含む所定の部分に光貫通孔111を形成するとともに光貫通孔111領域内にアライメントマーク(図示せず)を配置し、且つアライメントマーク5の配置位置を基準にして定められた色パターン16の配置パターンに対応する位置にパターン形成されたフォトマスク124bを作成しておく。
次に、基材2の感光性樹脂層121をフォトマスク124bに対面させるとともに、基材2をフォトマスク124bに対して所定の離間距離まで接近させる。このとき、平面視上、フォトマスク124bのアライメントマークに、基材2上のアライメントマーク5がおおよそ重なりあっている。その後、基材2上のアライメントマーク5と、柱体用マスクのアライメントマークに光を照射して矢印P方向(図6中の矢印P)の光の明暗を検出することで、双方のアライメントマークの配置位置関係を検出し、引き続き前述のアライメントマーク同士が相対的に所定の位置に配置されるように、基材2および/またはフォトマスク124bを相対的に移動させる。例えば、基材2のアライメントマーク5が直交する2本の直線で十字形状に形成され、フォトマスク124bのアライメントマークの形状が2対の平行線で矩形状に形成されるような場合、アライメントマーク5の中心と、フォトマスク124bのアライメントマークの中心とが一致し、且つ、アライメントマーク5を形成する2本の直線のそれぞれがフォトマスク124bのアライメントマークを形成する2対の平行線の方向に向かうように、基材2に配置されたアライメントマーク5とフォトマスク124bに配置されたアライメントマークとの相対的な配置を定め、その配置となるように基材2および/またはフォトマスク124bを相対的に移動させる。そして、このような基材2および/またはフォトマスク124bの相対的な移動により、フォトマスク124bにおいて色パターンに対応したパターンが基材2の色パターンの形成されるべき位置に対面するように、基材2とフォトマスク124bとが配置されることになる。なお、アライメントマーク5の配置されている位置の特定は、従来公知な方法を適宜選択して用いることができる。
つぎに、基材2に形成された感光性樹脂層121に向けて、フォトマスク124bを介して活性放射線(図6においてW)により露光して現像を行う。その際、フォトマスク124bの上方(光源側)には遮光版110を介在させておく(図6(B−2)、(B−3))。そうすることにより、アライメントマーク5の領域に活性放射線Wが照射されてしなう虞がなくなるので、その位置に赤色の感光性樹脂層が残ってしまうことがなくなり、その後に続いて形成する色パターンをマスク露光する際に、精度よくアライメントマークの読み込みが可能となる。以下、同様にして、緑色の色パターン17、青色の色パターン18を形成することができる。
なお、図6に示す例では、ブラックマトリクス15を構成する材料にてアライメントマーク5を形成する場合について説明したが、これに限られず、位相差制御部材が、基板と位相差層との間に、2色以上の色パターンを有する着色層が介在している場合にあっては、アライメントマーク5は、それらの色パターンのうちいずれか1色を構成する色パターン形成材料をなすインキにて形成されたものとして位相差制御部材1が構成されてもよい。例えば、着色層13が色パターン16、17、18を備える場合、アライメントマーク5は、これらの色パターン16、17、18のいずれかを構成するインキにて形成されてもよい。
また、アライメントマーク5は、ブラックマトリクス15が配置される前に、基材2上に別途配置されていてもよい。その場合、ブラックマトリクス15は、アライメントマーク5を配置された基材2上に配置される。ブラックマトリクス15は、そのブラックマトリクス用インキを、アライメントマークの配置領域を除いた有効表示面積を含む領域にベタ塗工する以外は、上記色パターン16,17,18を形成した場合と同様に、マスク露光・現像を用いて、基板2上の正しい位置に形成することができる。すなわち、フォトマスク124aとして、ブラックマトリクス15の配設パターンに対応してパターン形成し、且つ、アライメントマーク5の配置位置に応じた位置に光貫通孔を設けているとともに光貫通孔領域内にアライメントマークを配置したものを用意し、基材2をフォトマスク124aに近接配置させた後、光貫通孔領域内に形成されるアライメントマークと基板2のアライメントマーク5とが相対的に所定の位置に配置されるように、基材2および/またはフォトマスク124aを移動して微調整し、そうした後、基材2に対してマスク露光し、現像することにより、基板2上の正しい位置にブラックマトリクス15を形成することができる。
こうして、基板2上に着色層13が形成されるとともにその着色層13の領域から外れた位置にアライメントマーク5が配設されたものが得られる。さらに、基板2に対して着色層13とアライメントマーク5を覆って上記した液晶材料を塗布して液晶塗布膜を成膜する。このとき、液晶塗布膜は、その端縁位置の2mm以上内側にアライメントマーク5が配置されるように、成膜される。そして、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を配向させて固定して、液晶塗布膜を位相差層4となし、基材2と位相層4との間に着色層3を形成した位相差制御部材1が得られる。
なお、この位相差制御部材1は、位相差層4の表面上に、位相差層4と異なる構造体として柱体3が配設される処理を後処理として施されたもの、としてもよい(図5)。その場合、柱体3は、位相差層4の画素21の透過光領域と重ならない部分より定められた柱体形成予定位置に適宜設けられる。例えば、柱体3は、位相差層4上にあってブラックマトリクス15の形成領域に対して位相差制御部材1の平面視上重なり合う部分内に定められた柱体形成予定位置に設けられる。図5の例では、位相差層4上にあってブラックマトリクス15における各色パターン16,17,18の長手方向に平行する部分に対して平面視上重なり合う部分内に柱体形成予定位置を定めて、その柱体形成予定位置に柱体3が形成されている。
着色層13を備えた位相差制御部材1は、液晶ディスプレイなどといった光学機器におけるカラーフィルタに組み込まれて使用されることができる。
また、本発明の位相差制御部材1においては、基材2と位相差層4の間にアライメントマーク5を覆って保護増が介在してもよい。また、位相差制御部材1が、基材2と位相差層4の間に着色層13を積層形成して構成される場合にあっては、位相差制御部材1は、その着色層13と位相差層4の間にアライメントマーク5を覆って保護層を介在させ、保護層を着色層13の表面上に直接形成して構成されているもの、であってもよい。
保護層は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂材料や、多官能エポキシを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂塗料といった樹脂組成物を位相差層4表面に塗布して樹脂塗布膜を成膜し、この樹脂塗布膜を乾燥させ、さらに硬化させることによって形成することができる。樹脂塗布膜の硬化は、樹脂組成物の性質に応じて公知の硬化方法を適宜実施することができ、例えば、多官能アクリレートを含有するアクリル系ポリマーの材料からなる透明樹脂材料にて樹脂塗布膜を成膜する場合、その樹脂塗布膜の硬化は、樹脂塗布膜にUV光を照射することなどにより実施できる。
この位相差制御部材1によれば、位相差層4をなす液晶塗布膜における盛り上がり部に光散乱が生じてしまってアライメントマークを光学的に特定することが困難になる虞を抑制するのみならず、保護層を設けることで、液晶塗布膜を形成しようとする面を平坦化することが可能となり、アライメントマーク5の凹凸によりアライメントマーク5周囲の液晶塗布膜の液晶分子の配向性の乱れを生じて、液晶分子の光散乱を加速させる虞を抑制することができる。
なお、位相差制御部材1おいて、柱体3や着色層13などの構造体(位相差層4と異なる構造体)を定められたパターンで配置する方法としてフォトリソグラフィ法が用いられる場合を例としたが、これに限定されず、これらの構造体はインクジェット法にてパターン形成されてもよい。
位相差制御部材1は、位相差層4の面内方向の所定位置を基準とした所定の領域を切断する処理が後処理として施されたものであってもよい。例えば、位相差制御部材1のアライメントマーク5の配設位置よりも基材2面内方向内側の所定位置を通って、位相差層4を形成するにあたって成膜された液晶塗布膜の成膜方向に位相差制御部材1を切断する処理が後処理として実施されてもよい。この後処理は、アライメントマーク5の配設位置を基準にして基材2面内方向内側の領域を、基材2面内方向内側の所定位置を通過して液晶塗布膜の成膜方向に切断する処理となる。
位相差制御部材1は、位相差制御部材を組み込まれた一方の基板において位相差層の面内方向の所定位置を基準とした所定の領域に、他方の基板の所定の領域を対面させる処理が後処理として施されたものであってもよい。このことは、液晶ディスプレイに位相差制御部材1が組み込まれる場合を例にして示すことができる。
本発明で得られる位相差制御部材1を組み込んだ液晶ディスプレイについて説明する。
なお、液晶ディスプレイとしては、IPSモード、もしくはFFSモード(Fringe Field Switchingモード)であって、着色層13を備える位相差制御部材1を組み込んでいる場合(図7)、を例として説明する。図7は、液晶ディスプレイ51を説明するための図である。
液晶ディスプレイ51は、図7に示すように、対面する一対の基板25(表示側基板たる観察者側基板22、駆動液晶側基板たるバックライト側基板23)の間に、電場に置かれた状態で電場の変化に応じて駆動可能(配向を変動可能)に液晶ディスプレイ駆動用の液晶組成物(駆動用液晶組成物24)を封入されて駆動液晶層28を形成している。そして、液晶ディスプレイ51は、バックライト側基板23の厚さ方向に、バックライト側基板23の外側位置からバックライト側基板23に向かって光を照射するバックライト(図示しない)を配設して構成されている。
観察者側基板22は、基材2上に、ブラックマトリクス15と色パターン16,17,18を備えた着色層13を積層し、その着色層13表面を覆って位相差層4を形成しており、さらに位相差層4上には、柱体3が、その基底部(図7において上方側の部分)を、位相差層4表面上にあって、着色層13のブラックマトリクスの形成領域に対して観察者側基板22の厚みの方向に重なりあう領域内に所定のパターンで定められた多数の柱体形成予定位置に、分散配置されている。そして、観察者側基板22には、基板2の厚さ方向の表面のうち着色層13の非形成面の上には、直線偏光板33が配置されている。
バックライト側基板23は、透明な基材41のインセル側(駆動用液晶組成物24の封入される側)の面上に、駆動液晶層28の液晶44に対する電圧の印加有無のスイッチング駆動する駆動用回路と、これにより電圧の負荷量が制御される液晶駆動用電極とを設けている(図示せず)。さらに、バックライト側基板23のインセル側の最表面は、多数の柱体3の先端部(同図における下方)と当接している。そして、バックライト側基板23には、そのアウトセル側(インセル側とは逆側)の面に、直線偏光板42が配置されている。
なお、液晶ディスプレイ51において、観察者側基板22の直線偏光板33と、バックライト側基板23の直線偏光板42とは、互いの透過軸が直交するように配されている。なお、図中、直線偏光板33、42の透過軸は矢印にて示す。
この液晶ディスプレイ51では、観察者側基板22に、基材2と着色層13と位相差層4、柱体3が積層されてなる層構造が備えられており、この層構造は、本発明で得られる位相差制御部材1を構成する。
なお、液晶ディスプレイ51には、必要に応じて、観察者側基板22における直線偏光板33の内側に、位相差フィルム30を介在させてもよい。図7に示す例では、液晶ディスプレイ51として、複屈折層4を正のCプレートとしての光学補償機能を有する層として形成した位相差制御部材1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のAプレートとしての光学補償機能を有するものが示されている。図7中、複屈折層4、位相差フィルム30の光学補償機能を規定する複屈折特性は、それぞれ屈折率楕円体100,101にて示す。
さらに、液晶ディスプレイ51において、位相差フィルム30は、必要に応じて複数枚、複数種類介在させていてもよい。したがって、例えば、液晶ディスプレイ51は、複屈折層4を正のCプレートとしての光学補償機能を有する層として形成した位相差制御部材1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のAプレートとしての光学補償機能を有するもの、さらにその他の機能を有するものと、2枚以上を積層させて構成されていてもよい。
なお、位相差制御部材1を組み込む液晶ディスプレイは、上記IPSモードなどに限らず、例えばMVAモードやOCBモード(Optically Compensated Birefringenceモード)などといった他のモードであってもよい。
このような液晶ディスプレイ51は、次のように組み立てられる。
すなわち、図8に示すように、基材2上に形成された着色層13の領域の外側にアライメントマーク5を配置し、着色層13表面とアライメントマーク5を覆って液晶塗布膜を成膜し且つその液晶塗布膜を位相差層4となすことで位相差制御部材1を組み込んだ表示側基板たる観察者側基板22を作成する。一方で、駆動液晶側基板たるバックライト側基板23を作成する。バックライト側基板23には、基材2に配置されているアライメントマーク5と対面するような位置にアライメントマーク6を配置しておく。アライメントマーク5、6は、適宜選択され、図8の例では、アライメントマーク5として十字形状のもの、アライメントマーク6として矩形状のものが選択されている。
このように観察者側基板22とバックライト側基板23とを作成した後、後処理として、観察者側基板22とバックライト側基板23とを相対的にみて所定の配置にしつつ対向させることで、観察者側基板22とバックライト側基板23とを一対の基板25となす処理を次のように行う。すなわち、観察者側基板22の柱体3をバックライト側基板23に対面させ、ついで、位相差制御部材1を組み込んだ表示側基板たる観察者側基板22のアライメントマーク5と、駆動液晶側基板たるバックライト側基板23のアライメントマーク6とに光を照射して光の明暗により検出しつつ、平面視上アライメントマーク5、6が相対的に所定の配置となるように、観察者側基板22および/またはバックライト側基板23を移動させる。これにより、観察者側基板22とバックライト側基板23とが相対的にみて所定の配置をなして対向した状態が形成される。
その後、一対の基板25において対面し合うアライメントマーク5とアライメントマーク6の配設位置よりも内側位置にて基板25を切断して、アライメントマーク5およびアライメントマーク6を切り離す処理を行う。この処理を行うにあたり、アライメントマーク6の配設位置よりどの程度内側位置にて基板25の切断が行われるかという点、および、基板25の切断方向の点については液晶ディスプレイ51の液晶表示画面の設計に応じて適宜選択される。
そして、一対の基板25の間に駆動用液晶組成物24を封入して駆動液晶層28を形成し、さらに、位相差フィルム30、直線偏光板33,42、を貼り付けることで液晶ディスプレイが具体的に組み立てられる。
なお、上記にて説明した液晶ディスプレイ51では、基板25においてアライメントマーク5、6が最終的に切り離された状態で製造されているが、これに限定されない。すなわち、液晶ディスプレイ51を製造するにあたり、アライメントマーク5、6の切り離しは必要に応じて実施されればよい。
また、液晶ディスプレイを製造するにあたっては、観察者側基板22の積層構造を一枚の大型な基材上に多面形成して複数の観察者側基板22を一体的に形成してなる観察者側基板ユニットと、バックライト側基板23の積層構造を一枚の大型な基材上に多面形成して複数のバックライト側基板23を一体的に形成してなるバックライト側基板ユニットとが用いられもよい。この場合、観察者側基板ユニットには、所定位置にアライメントマークが配置され、バックライト側基板ユニットには、観察者側基板のアライメントマークの配置位置に対して対応する位置として指定される位置にアライメントマークが配置される。そして、観察者側基板ユニットとバックライト側基板ユニットとを近接させ、ついで、観察者側基板ユニット、バックライト側基板ユニットのそれぞれに配置されたアライメントマークを相対的に所定の配置となして、一対の基板25を多数一体的に形成し、個々の基板25に切断されて、一対の対面する基板25が得られる。さらに、基板25に液晶層を形成するとともに、偏光板などが貼り付けられ、液晶ディスプレイが得られる。
次に、位相差層4が正のCプレートである場合を例として、位相差制御部材1の実施例について説明する。
実施例1.
まず、基材としてのガラス基板(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35)を準備し、着色材料分散液を用いてガラス基板に着色層を形成した。着色層の形成は次に示すようにして実施された。
[着色層の形成]
<着色層の形成に用いる着色材料分散液の調整>
ブラックマトリクス(BM)、及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色パターンの着色材料分散液として、顔料分散型フォトレジストを用いた。顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合することにより得られた。得られた顔料分散型フォトレジストは、下記に示すような組成である。尚、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。
(ブラックマトリクス用フォトレジスト)
・黒顔料・・・・・14.0重量部
(大日精化工業(株)製、TMブラック#9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部
(ビックケミー(株)製、Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部
(昭和高分子(株)製、VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部
(綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部
(4,4´−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部
(エチレングリコールモノブチルエーテル)
(赤色(R)着色画素用フォトレジスト)
・赤顔料・・・・・4.8重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・1.2重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(緑色(G)着色画素用フォトレジスト)
・緑顔料・・・・・3.7重量部
(C.I.PG7(大日精化製、セイカファストグリーン5316P))
・黄顔料・・・・・2.3重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(青色(B)着色画素用フォトレジスト)
・青顔料・・・・・4.6重量部
(C.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F))
・紫顔料・・・・・1.4重量部
(C.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF))
・顔料誘導体・・・・・0.6重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース12000)
・分散剤・・・・・2.4重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
尚、上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
<着色層の形成>
洗浄処理を施したガラス基板上面に、上記各色の着色材料分散液を次に示すように塗布し、ガラス基板に着色層を積層形成した。
まず、ガラス基板に、上述で調製したBM用フォトレジストをダイコート法で塗布し、90℃、3分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、アライメントマークとBMの配設位置に対応する所定のパターンに形成されたマスクを用いて露光(100mJ/cm2)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベーク(焼成)し、厚さが1.2μmのアライメントマークとBMを同時に形成したガラス基板(BM形成基材)を作製した。BMは、平面視上一方向に伸びるフォトレジストのパターンとこれに直交する方向に伸びるフォトレジストのパターンとで格子状に形成された。アライメントマークはガラス基材の端位置より15mm内側位置にアライメントマークの外側端が配置されるように十字形状に形成された。
次に、調整した赤色(R)の顔料分散型フォトレジストを上記BM形成基材上にダイコート法で塗布し、80℃、3分間の条件でプリベークし、一方で、各色の色パターンに応じた所定の色パターン用フォトマスクを用意した。色パターン用フォトマスクには、BM形成基材上のアライメントマークの配置位置に応じて定められた位置に光貫通孔を設けるとともに、光貫通孔領域内に矩形状のアライメントマークが配置されている。この色パターン用フォトマスクを用い、これにBM形成基材を近接させた。このとき、平面視上、BM形成基材上のアライメントマークが色パターン用フォトマスクの光貫通孔領域内に入り込んだ。次に、色パターン用フォトマスクのアライメントマークの配置位置と、BM形成基材上のアライメントマークの配置位置とを検出し、色パターン用フォトマスクとBM形成基材との相対的な配置が所定の配置となるように、色パターン用フォトマスクおよび/またはBM形成基材を移動した。その後、遮光板でBM形成基板への光照射を遮蔽しつつBM形成基材に向けて紫外線露光(300mJ/cm2)した。さらに、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、60分間ポストベーク(焼成)し、BMの配置パターンに対して所定の位置に膜厚2.0μmの赤色(R)の色パターンを短冊状に形成した。このとき、色パターンは、その短冊状の長手方向が、BMのパターンにおける一方向に伸びるフォトレジストのパターンに対して平行するように、形成されていた。
続いて、上記赤色(R)の色パターンのパターン形成方法と同様の方法を用いて、緑色(G)の色パターン(膜厚1.9μm)、青色(B)の色パターン(膜厚2.0μm)それぞれにつき、パターン形成した。
こうして、ガラス基板上に、BMおよび、赤色の色パターン、緑色の色パターン、青色の色パターンから構成される着色層が形成された。
着色層を備えたガラス基板に対して、着色層の表面上に位相差層を次のように成膜した。
[位相差層の製膜]
次に上記で構成した下地カラーフィルタ上に、次に示すように調整された液晶材料を、ダイコート法を用いてベタ塗りして液晶塗布膜を成膜した。液晶塗布膜は、ガラス基材の端縁位置より10mm内側の位置まで成膜された。ところで、アライメントマークは、その外側端がガラス基材の端縁位置よりも15mm内側に位置している。したがって、アライメントマークは、液晶塗布膜の端縁位置よりも5mm内側に位置しているように配置され、すなわち2mm以上内側位置に配置されていることになる。なお、ダイコート法は、大日本スクリーン製造社製、リニアコータ(登録商標)を用いて実施された。
[液晶材料の作成]
下記化合物(a)〜(d)に示すような重合性液晶分子、光重合開始剤、シランカップリング剤、溶媒を混合して下記組成の液晶材料を調整した。
<液晶材料の組成>
化合物(a) 8.3 重量部
化合物(b) 4.7 重量部
化合物(c) 5.4 重量部
化合物(d) 5.4 重量部
光重合開始材 1.3 重量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア907)
シランカップリング剤 0.05重量部
(アミン基含有シランカップリング剤(GE東芝シリコーン社製、TSL−8331))
溶媒 75.0 重量部
(クロロベンゼン)
[液晶塗布膜に含まれる液晶について液晶相状態の形成]
液晶塗布膜の形成された基板を、ホットプレート上にて100℃、5分間加熱して、溶媒を除去するとともに液晶塗布膜中に含まれる液晶分子を液晶相に転移させた。この液晶相への転移の確認は、液晶塗布膜が白濁状態から透明状態となったことを目視にて確認することで行われた。なお、この際、液晶分子は、ホメオトロピック配向性を付与される。
[液晶分子の架橋重合反応]
次に、窒素雰囲気下で、透明状態の液晶塗布膜に、超高圧水銀灯を光源とする紫外線照射装置を用いて、波長365nmで500mJ/cm2の紫外線(を照射して、液晶塗布膜中の液晶分子を架橋重合反応させて液晶分子をこれに配向性を付与した状態で固定し、液晶塗布膜を位相差層となした。
[重合後加熱処理]
位相差層を形成した基材は、さらに、ホットプレート上にて200℃、30分間加熱する処理(重合後加熱処理)を施された。
こうして位相差層の形成された位相差制御部材を得た。重合後加熱処理の後に得られた位相差制御部材を用い、位相差層の端縁位置を基準位置として位相差層の表面までの高さを測定した。位相差層の高さは、位相差層の端縁位置から0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、4mm内側位置での値が測定された。0.5mmでは、2.0μm、1mmでは2.4μm、1.5mmでは、1.8μmと表面までの高さが安定していないものの、2mm、4mmでいずれも1.2μmであり高さが安定していた。ここに、液晶分子に付与される液晶塗布膜面内方向全体にわたり液晶塗布膜に含まれる液晶分子にホメオトロピック配向性を付与して固定しているので、液晶塗布膜を位相差層となす際に液晶塗布膜の表面の状態には大きな変動がなく、液晶塗布膜の盛り上がり部は、そのまま位相差層の表面において盛り上がる部分(位相差盛り上がり部)をなしている。
これにより、液晶塗布膜表面は、液晶塗布膜の端縁から2mmまで盛り上がり、それを超えた液晶塗布膜内側位置では平坦になっていることが確認される。
また、得られた位相差制御部材について、次に示すようにして、アライメントマークとその周囲領域の光散乱(光散乱)と、その領域に対面する位相差層の部分における液晶分子の配向状態(配向性)について測定がなされた。
[光散乱]
光散乱の測定は、位相差制御部材に配置されたアライメントマークとその周辺に光を照射し、その反射光を目視により観察しすることによって行われた。この観察において、アライメントマークの輪郭が明確に観察され、アライメントマークが良好に視認でき、散乱光によって輪郭がぼやける部分が認められなかった。
[配向性]
配向性は、位相差制御部材のアライメントマークを、クロスニコルに配置した2枚の偏光板の間に配置し2枚の偏光板を通過する光の状態の変化(光が通過せず暗視野の状態にあるか、光が通過し明視野の状態にあるか)を偏光顕微鏡にて観察することよって実施された。この観察において、位相差制御部材の方位角度によらず均一な暗視野が実現されており、アライメントマークの確認を妨げるような配向性の乱れが抑えられていることが確認された。
実施例2
実施例1で得られた位相差制御部材について、位相差層表面上に、次のように柱体を配設する処理を後処理として施した。
[柱体の配設]
まず、柱体を構成する柱体形成用樹脂組成物として紫外線硬化型透明ネガ型レジスト(JSR社製、NN700)を用い、この柱体形成用樹脂組成物を位相差層上にダイコート法により位相差層全面に塗布、減圧乾燥を行い、さらにホットプレートを用いて100℃3分の条件で加熱して溶剤を除去して、塗布膜を形成した。
一方、位相差層上に柱体を配置しようとする位置(柱体形成予定位置)が、塗布膜上の部分にあって、且つ、塗布膜の厚み方向に見て(平面視上)短冊状の色パターンの長手方向に平行して一方向に伸びるブラックマトリクスの領域内の部分に対して重なり合う部分より、予め80000箇所選択されて定められた。
さらに、そして、柱体形成予定位置に対応するパターンでパターン形成したフォトマスク(柱体用マスク)を作成した。さらに柱体用マスクには、アライメントマークの配置位置に応じて定められた位置に光貫通孔を設けるとともに、光貫通孔領域内に矩形状のアライメントマークを配置した。この柱体用マスクを用い、これに位相差制御部材の塗布膜を対面させるとともに、柱体用マスクに対して位相差制御部材を近接させた(離間距離100μm)。このとき、平面視上、位相差制御部材のアライメントマークが柱体用マスクの光貫通孔領域内に入り込んだ。次に、柱体用マスクのアライメントマークの配置位置と、位相差制御部材のアライメントマークの配置位置とを検出し、柱体用マスクと位相差制御部材との相対的な配置が所定の配置となるように、柱体用マスクおよび/または位相差制御部材を移動した。このとき、柱体用マスクにおいて柱体形成予定位置に対応したパターン形成位置が位相差制御部材の柱体形成予定位置に対向した。なお、アライメントマークの確認には、アライナーが用いられた。
そして、柱体用マスクを介して、塗布膜に向けて(塗布膜の柱体形成予定位置に向けて)プロキシミティアライナにより18.0kWの超高圧水銀ランプによる紫外線を10秒間照射した。このとき、位相差制御部材におけるアライメントマークの配置位置を覆って、超高圧水銀ランプと柱体用マスクとの間に、遮光板を介在させた。これにより、塗布膜は、その塗布膜のうち紫外線の照射された部分が硬化した状態となる。
その後、塗布膜について0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、60分間ポストベーク(焼成)し、位相差層表面の柱体形成予定位置に柱体が配置された。
配置された柱体について、その配置状態を顕微鏡で確認した。
柱体が予め定められた柱体形成予定位置に正しく配置することができていることが確認された。
比較例1.
アライメントマークを基材の端縁位置から9mm内側の位置に配置し、液晶塗布膜を基材の端縁位置から10mm内側の位置まで成膜することで、液晶塗布膜の端縁位置から1mmの位置にアライメントマークを配置したほかは実施例1と同様にすることで、基材上に着色層と位相差層を形成したもの(比較用部材)を作成した。
比較用部材を用いて、実施例1と同様に、アライメントマークとその周囲の領域について光散乱、配向性を測定した。光散乱については、アライメントマーク周辺の領域で白濁が生じて散乱光の発生が認められ、アライメントマークの輪郭にぼやける部分が認められた。また、配向性については、比較例にアライメントマーク周辺ではクロスニコル状態にもかかわらず、アライメントマークの周縁における十字型の角部分の領域付近から光漏れが観察された。したがって、比較用部材では、アライメントマークとその周囲において液晶分子の配向性の乱れによる光散乱が生じて、アライメントマークの確認を妨げる程度になっていることが確認された。