本発明において製造される位相差制御部材1は、光透過性を有する基材2に、基材2の表面に対して直接もしくは間接に位相差層4を積層し、更に基材2上に位相差層4を介在させて柱体3を配設して構成されている。位相差制御部材1では、柱体3により、柱体3を配置されている部分が、柱体3を配置されていない部分よりも柱体3の基底部3bから先端部3aに向かう方向に突出しており、位相差制御部材1の表面に凹凸が形成されている。なお、図1に示す位相差制御部材1の例では、位相差層4上に柱体3が積層されて構成されており、また、基材2の表面に対して直接に位相差層4が形成されている。
基材2は、光透過性を有する基材形成材からなり、基材形成材を単層で構成されても、複数種類の基材形成材にて多層に構成されてもよい。基材2には、部分的に遮光領域等が設けられてもよい。基材2の光線透過率は、適宜選定可能である。
基材形成材は、光学的に等方性を有するように構成されていることが好ましい。基材形成材としては、ガラス基板などのガラス材の他、種々の材質からなる板状体を適宜選択できる。特に位相差制御部材を液晶ディスプレイ用に用いる場合には、基板形成材は無アルカリガラスであることが好ましい。
位相差層4は、その厚み方向に互いに逆側を向く位相差層4の表面の一方側から入射して位相差層4の内部を進行して他方側の表面より出射する光につき、その光が位相差層4の内部を進行する際に光を複屈折させる機能を有する層であり、位相差層4の厚み方向にz軸をとり、z軸と垂直に交差し且つ1点で交わるように相互に直交するx軸、y軸をとってxyz空間を想定した場合、x軸、y軸、z軸方向の光の屈折率をnx、ny、nzとして、nx、ny、nzのうちのいずれか1つが他よりも大きいもしくは小さいような状態になっている層を挙げることができる。
例えば、位相差層4は、その屈折率がnx>ny=nz、あるいは、ny>nx=nzであるような場合は、いわゆる「+Aプレート」(正のAプレート)として機能し、屈折率がnx=ny>nzであるような場合は、いわゆる「−Cプレート」(負のCプレート)として機能し、屈折率がnx=ny<nzであるような場合は、いわゆる「+Cプレート」(正のCプレート)として機能する。
位相差層4は、分子構造中に重合性官能基を有する液晶分子(重合性液晶分子という)を重合反応させてなる高分子構造を形成している。
位相差層4は、液晶分子を特定の方向に配向させた状態にて形成されている。液晶分子は、その分子構造に応じた光軸を有し、その光軸の状態にて定まる複屈折特性を備えており、特定の方向に液晶分子を配向させて固定することで、その配向状態に応じた複屈折特性を有する層構造を構成することができ、具体的には、いわゆる正のAプレート、負のCプレート、正のCプレートなどの機能を有する層を構成することができる。
位相差層4を構成する液晶分子は、位相差層4の複屈折特性に応じて適宜選択できる。例えば、位相差層4が正のAプレートや正のCプレートの機能を発揮するような複屈折特性を有する層構造である場合には、位相差層4を構成する液晶分子としては、ネマチック液晶相を形成可能な液晶分子やスメクチック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができ、位相差層4が負のCプレートの機能を発揮するような複屈折特性を有する層構造である場合には、位相差層4を構成する液晶分子としては、上記したネマチック液晶相を形成可能な液晶分子のほか、コレステリック液晶相を形成可能な液晶分子を用いることができる。
位相差層4を構成する重合性液晶分子は、その液晶分子の構造中に不飽和2重結合を重合性官能基として有するものが好ましい。また、重合性液晶分子には、耐熱性の点から液晶相状態で架橋重合反応可能な重合性液晶分子(架橋重合性液晶分子、あるいは架橋性液晶分子という)がより好ましく用いられ、架橋重合性液晶分子としては分子構造の両末端に不飽和2重結合を有するもの(不飽和2重結合を2以上有するもの)が好ましい。なお、架橋重合性液晶分子を用いて位相差層4が形成される場合、位相差層4には、架橋重合性液晶分子を相互に架橋させてなる架橋高分子構造が形成されることになる。
位相差層4を得るために用いられる架橋性液晶分子としては、架橋性を有するネマチック液晶分子(架橋性ネマチック液晶分子)などをあげることができる。架橋性ネマチック液晶分子としては例えば、1分子中に(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキタセン基、イソシアネート基等の重合性基を少なくとも1個有するモノマー、オリゴマー、ポリマー等が挙げられる。また、このような架橋性液晶分子として、より具体的には、下記化1に示す一般式(1)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(I))、下記化2に示す一般式(2)で表される化合物のうちの1種の化合物(化合物(II))もしくは2種以上の混合物、化3、化4に示す化合物(化合物(III))のうちの1種の化合物或いは2種以上の混合物、またはこれらを組み合わせた混合物を用いることができる。
化1に示す一般式(1)において、R1およびR2は、それぞれに、水素またはメチル基を示すが、架橋性液晶分子が液晶相を示す温度の範囲をより広くするには少なくともR1及びR2のどちらか一方が水素であることが好ましく、両方が水素であることがより好ましい。また一般式(1)におけるX及び一般式(2)のYは、水素、塩素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、シアノ基またはニトロ基のいずれであってもよいが、塩素またはメチル基であることが好ましい。また、一般式(1)の分子鎖両端の(メタ)アクリロイロキシ基と芳香環と間のアルキレン基の鎖長を示すaおよびb並びに、一般式(2)におけるdおよびeは、それぞれ個別に1〜12の範囲で任意の整数をとり得るが、4〜10の範囲であることが好ましく、6〜9の範囲であることがさらに好ましい。a=b=0である一般式(1)の化合物(I)またはd=e=0である一般式(2)の化合物(II)は安定性に乏しく、加水分解を受けやすい上に、化合物(I)または(II)自体の結晶性が高い。また、aやb、あるいはdやeがそれぞれ13以上である一般式(1)の化合物(I)または一般式(2)の化合物(II)は、等方相転移温度(TI)が低い。この理由から、これらの化合物は、どちらについても液晶分子が液晶性を安定的に示す温度範囲(液晶相を維持する温度範囲)が狭いものとなり、位相差層4に用いるには好ましくない。
架橋性液晶分子として、上記した化1、化2、化3、化4では重合性を備える液晶(重合性液晶)のモノマーを例示したが、重合性液晶のオリゴマーや重合性液晶のポリマー等を用いてもよく、これらについても、上記した化1、化2、化3、化4などのオリゴマーやポリマーなどといった公知なものを適宜選択して用いることができる。
位相差層4においては、液晶分子の重合度(架橋重合性液晶分子の場合は、架橋重合度)が80以上程度であることが好ましく、90以上程度であることがより好ましい。位相差層4を構成する液晶分子の重合度が80より小さいと、均一な配向性を十分に維持できない虞がある。なお、上記重合度、架橋重合度は、液晶分子の重合性官能基のうち液晶分子の重合反応に消費された割合を示す。
上記したような液晶分子を用い、位相差層4は、その機能に応じて、次のように形成される。
位相差層4が正のCプレートとしての光学補償機能を有する層である場合には、位相差層4は、その光軸が上記にて想定したxyz空間におけるz軸方向を向くように、正の複屈折異方性の液晶分子を配向させて固定することにより形成される。
具体的には、位相差層4は、次のようにして形成することができる。
まず、位相差層4を構成する上記した化合物(I)化合物(II)化合物(III)のような液晶分子と、溶媒とを配合して液晶材料が調整される。液晶材料には、必要に応じて、液晶分子を垂直に配向させる配向助剤(垂直配向助剤ということがある)などを含む添加剤が適宜添加されてもよい。
液晶材料の調整に用いる溶媒としては、位相差層4を構成する液晶分子を溶解させることができるものであれば特に限定されず、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、テトラリン等の炭化水素類、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン等のケトン類、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類等の1種又は2種以上が使用可能である。単一種の溶媒を使用しただけでは、架橋性液晶分子等の配合物成分の溶解性が不充分である場合や、液晶材料を塗布する際における塗布の相手方となる素材(基材を構成する素材)が侵される虞がある場合等には、2種以上の溶媒を混合使用することにより、これらの不都合を回避することができる。上記した溶媒のなかにあって、単独溶媒として好ましいものは、炭化水素系溶媒とグリコールモノエーテルアセテート系溶媒であり、混合溶媒として好ましいものは、エーテル類又はケトン類と、グリコール類とを混合した混合系溶媒である。液晶材料溶液の配合物成分の濃度は、液晶材料に用いる配合物成分の溶媒への溶解性や位相差層に望まれる層厚み等により異なるが、通常は1〜60重量%、好ましくは3〜40重量%の範囲である。
液晶材料に含まれる垂直配向助剤としては、ポリイミドや、界面活性剤やカップリング剤が具体的に例示される。
垂直配向助剤としてポリイミドを用いる場合、ポリイミドは、長鎖アルキル基を有するものであることが、位相差制御部材に形成される位相差層4の厚さを広い範囲で選択することができて好ましい。なお、垂直配向助剤がポリイミドである場合、ポリイミドとしては、具体的には、日産化学社製のSE−7511やSE−1211、あるいはJSR社製のJALS−2021−R2等を例示できる。
垂直配向助剤として界面活性剤を用いる場合、界面活性剤は、重合性液晶分子をホメオトロピック配向させることができるものであればよいが、位相差層の形成の際に液晶分子を液晶相への転移温度まで加熱する必要があることから、液晶相への転移温度でも分解されない程度に耐熱性を有していることが要請される。また、位相差層4の形成の際、液晶分子は有機溶媒に溶解させる場合があることから、そのような場合には、液晶分子を溶解させる有機溶媒との親和性が良好であることが要請される。このような要請をみたすものであれば、界面活性剤はノニオン系、カチオン系、アニオン系等の種類を限定されず、1種類の界面活性剤のみを用いてもよいし、複数種の界面活性剤を併用してもよい。
垂直配向助剤としてカップリング剤を用いる場合、カップリング剤としては、具体的には、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシランなどのシラン化合物を加水分解して得られるシランカップリング剤や、アミノ基含有シランカップリング剤、フッ素基含有シランカップリング剤などを例示することができる。これらのカップリング剤は、複数種選択されて、液晶材料に添加されてもよい。
また、液晶材料には、必要に応じて、光重合開始剤、増感剤が添加される。
光重合開始剤としては、例えば、ベンジル(もしくはビベンゾイル)、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノメチルベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチロベンゾイルフォーメート、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオサントン等を挙げることができる。
液晶材料に光重合開始剤が配合される場合、光重合開始剤の配合量は、0.01〜10重量%である。なお、光重合開始剤の配合量は、重合性液晶分子の配向をできるだけ損なわない程度であることが好ましく、この点を考慮して、0.1〜7重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。
また、液晶材料に増感剤が配合される場合、増感剤の配合量は、重合性液晶分子の配向を大きく損なわない範囲で適宜選択でき、具体的には0.01〜1重量%の範囲内で選択される。光重合開始剤及び増感剤は、それぞれ、1種類のみ用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
このように液晶材料が調整されると、次いで、この液晶材料を基材2に塗布して液晶塗布膜を作成する。
この液晶材料の塗布方法としては、ダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート等といった各種印刷法やスピンコート方法などを、適宜採用することができる。
次に、基材2表面に塗布して作製された液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子には、例えば次に示すように配向性が付与される。ここに位相差制御部材1が正のCプレートである場合には、液晶分子をホメオトロピック配向させる。液晶分子に対する配向性の付与は、液晶塗布膜を加熱して、液晶塗布膜の温度を、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が液晶相となる温度(液晶相温度)以上、液晶塗布膜中に含まれる液晶分子が等方相(液体相)となる温度未満にすることで、実施される。このとき液晶塗布膜の加熱手段は、特に限定されず、液晶塗布膜を形成した基材を加熱雰囲気下におく手段でもよいし、液晶塗布膜に赤外線を照射して加熱する手段でもよい。
なお、重合性液晶分子を配向させる方法は、上記方法による他、液晶塗布膜に含まれる重合性液晶分子やこの液晶塗布膜の状態に応じ、液晶塗布膜を一旦等方相温度まで加熱し、その後に液晶塗布膜を冷却し、その冷却の過程で自発的に液晶分子に配向を誘起させる方法や、液晶塗布膜に対して所定方向から電場や磁場を負荷する方法によっても実現可能である。
また、液晶相となる温度範囲が室温よりも高く、通常室温では液晶相を示さない重合性液晶分子が液晶材料に含有される液晶分子として用いられた場合であっても、室温で過冷却状態の液晶相を示す液晶分子を含有した液晶材料であれば、その液晶材料を、液晶分子が液晶相を示す時間の範囲内で、室温でも、配向性を付与された液晶分子を含有する液晶塗布膜を形成するために使用することが可能である。
このようにして液晶塗布膜中に含まれる液晶分子に配向性が付与された状態が形成されると、液晶分子同士を重合反応(液晶分子が架橋重合性液晶分子の場合は、架橋重合反応)させる。
この重合反応は、液晶材料中に添加された光重合開始剤の感光波長の光(具体的には例えば紫外線)などの活性放射線を、液晶相の状態となっている液晶分子を含有している液晶塗布膜に向けて、その液晶塗布膜全面に照射することで進行する。このとき、液晶塗布膜に照射する光の波長は、この塗膜中に含まれている光重合開始剤の種類に応じて適宜選択される。なお、液晶塗布膜に照射する光は、単色光に限らず、光重合開始剤の感光波長を含む一定の波長域を持った光であってもよい。
また、液晶分子の重合反応は、液晶塗布膜が液晶相を示す状態で、光重合開始剤の感光波長の光などの活性放射線を、遮光パターンを有するフォトマスクなどを介して液晶塗布膜に照射して(露光して)重合反応を部分的に進行させ(部分的重合工程という)、部分的重合工程の後、液晶分子が等方相となる温度(Ti)まで液晶塗布膜を加熱し、この状態でさらに感光波長の光などの活性放射線を液晶塗布膜に照射して重合反応を進行させる方法や、部分的重合工程の後に液晶塗布膜を温度Ti以上に加熱して液晶分子を熱重合させる処理を施すことにより液晶塗布膜に含まれる液晶分子の重合反応を所定の重合度に至るまで進める方法で実施されてもよい。なお、上記した温度Tiは、重合反応を進行させる前の液晶塗布膜において液晶分子が等方相となる温度である。
また、液晶分子の重合反応がフォトマスクを用いた部分的重合工程を経て実施される場合、液晶塗布膜を形成した基材に対して部分的重合工程が実施された後、その基材を、液晶分子の重合反応が不十分で未硬化な状態にある液晶材料を溶解可能な溶液に浸漬することにより、液晶塗布膜において液晶分子の重合反応が進まなかった部分を基材面から除去し、基材上に液晶相の液晶分子を含む層構造を所定のパターンで形成する(パターニングする)ことも可能である。
なお活性放射線を照射して液晶塗布膜中の液晶分子を重合反応させることによる液晶塗布膜の硬化は、空気雰囲気下で実施されるのみならず、不活性ガス雰囲気中でも実施できる。
位相差層4は、正のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層である場合においては、その高分子構造(液晶分子が架橋重合性液晶分子である場合は、架橋高分子構造)を構成する個々の液晶分子のチルト角と方位角(位相差層4の平面視上、液晶分子の光軸が位相差層4の厚み方向に対して倒れる方位)について、位相差層4の厚さ方向および面内方向に異なる位置に存在する液晶分子同士のチルト角と方位角がそれぞれ互いに略等しい(理想的には、完全に等しい)ことが好ましい。この場合、位相差層4に含まれるそれぞれの液晶分子のチルト角と方位角は略均一に揃い、位相差層4は、その複屈折特性の均一なものとなり、面内方向にむらの少ないものとなる。
なお、リタデーションは、入射光に対して生じる常光と異常光との速度差であり、リタデーションの大きさは、常光に対する屈折率をno、異常光に対する屈折率をneとすると、複屈折Δn(noとneとの差)とd(位相差層4を通過する光の光路長)の積として与えられ、光学特性を示すものである。
なお、位相差層4が正のCプレートとしての機能を有する層である場合においては、基材2と位相差層4との間に予め垂直配向膜を介在させ、垂直配向膜の表面に対して直接に位相差層4が積層形成されてもよく、こうすることで、位相差層4の光軸をよりz軸方向に均一化しつつ向けることができて好ましい。この場合、位相差層4は、基材2の表面に対して間接に形成されることになる。
垂直配向膜は、垂直配向膜を構成する成分を含んだ垂直配向膜組成液をフレキソ印刷やスピンコート等の方法で基材2上に塗布して垂直配向膜形成用塗膜を形成し、この塗膜を硬化させることで形成することができる。垂直配向膜組成液としてはポリイミドを含む溶液が挙げられる。そのようなポリイミドを含む垂直配向膜組成液としては、具体的には、日産化学社製のSE−7511やSE−1211、あるいはJSR社製のJALS−2021−R2等を挙げることができる。
垂直配向膜は、その膜厚みが0.01〜1μm程度の範囲であることが好ましい。垂直配向膜の膜厚が、0.01μmよりも薄いと、液晶分子をホメオトロピック配向させることが困難になる虞が大きくなる。また、垂直配向膜の膜厚が1μmよりも厚いと、この垂直配向膜による光の散乱の程度が大きくなって位相差制御部材の光透過率の低下を来す虞が大きくなる。
なお、垂直配向膜が撥水性又は撥油性の高いものである場合には、垂直配向膜上に液晶材料を塗布して位相差層4を形成する前に、液晶分子をホメオトロピック配向させることが可能な範囲内でUV洗浄やプラズマ処理を施して、液晶組成液を塗布しようとする垂直配向膜表面の濡れ性を予め高めておいてもよい。
位相差層4が負のCプレートとしての光学補償機能を有する層である場合、位相差層4は、その光軸がz軸方向に向かうように、負の屈折率異方性の液晶分子を配向させて固定することにより形成できる。そのほか、負のCプレートとしての光学補償機能を有する位相差層4は、上記正のCプレートとしての機能を有する層である場合と同様の化合物(I)(II)(III)に示すような架橋性ネマチック液晶などの液晶分子を溶媒に添加した液晶材料を用いて、これにカイラル剤を更に添加して、重合性液晶分子にコレステリック規則性を付与してカイラルネマチック液晶となすための液晶材料(カイラル剤含有液晶材料ということがある)を調製し、このカイラル剤含有液晶材料を用いて形成してもよい。
また、位相差層4が負のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層である場合においては、上記した位相差層4が正のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層である場合と同様に、位相差層4の高分子構造や架橋高分子構造を構成する個々の液晶分子のチルト角と方位角について、位相差層4の厚さ方向および面内方向に異なる位置に存在する液晶分子同士のチルト角と方位角がそれぞれ互いに略等しいことが好ましく、理想的には、完全に等しいことが好ましい。
カイラル剤含有液晶材料を用いた位相差層4の形成については、具体的には、上記したような液晶分子と、カイラル剤と、光開始剤と、溶媒を混合して液晶材料を調整し、この液晶材料を、基材2面上に塗布して液晶塗布膜を作成して、液晶塗布膜に含まれる液晶分子を重合して焼成することにより、負のCプレートとしての光学補償機能を備える位相差層4が形成される。なお液晶分子の重合は、上記正のCプレートとしての機能を備える位相差層4を作成する場合と同様に、活性放射線を液晶塗布膜に照射することによって実施することができる。
カイラル剤は、分子内に光学活性な部位を有する低分子量化合物で、分子量1500以下の化合物であることが好ましい。具体的には、カイラル剤としては化1に示す化合物(I)、化2に示す化合物(II)や化3、化4に示す化合物(III)と溶液状態或いは溶融状態で相溶性を有し、かつ架橋性ネマチック液晶の分子の液晶性を損なうことなく螺旋ピッチを誘起できるものが選択される。ただし、カイラル剤としては、その分子構造中における両方の末端部位に重合性官能基を有するものが、耐熱性の良い位相差層4を得る上で好ましく、またカイラル剤は分子構造内に光学活性な部位を有する化合物であることが重要である。
このようなカイラル剤が、化1に示す化合物(I)、化2に示す化合物(II)や化3、化4に示す化合物(III)を重合性液晶分子として含む液晶材料において配合されると、その液晶材料を用いて位相差層4を形成するにあたり、位相差層4に含まれる重合性液晶分子に対して正の一軸ネマチック規則性で螺旋ピッチを誘起することができる。
カイラル剤は、液晶分子を螺旋状に配向させるために添加されるが、液晶分子が近紫外線領域の螺旋ピッチをとると選択反対現象により特定色の反射色を生じることから、カイラル剤の配合量は、選択反対現象が紫外領域になるような螺旋ピッチが得られるような量とすることが好ましい。
またカイラル剤としては、例えば1つもしくは2つ以上の不斉炭素を有する化合物、キラルなアミン、キラルなスルフォキシド等のようにヘテロ原子上に不斉点がある化合物、またはクムレン、ビナフトール等の軸不斉を持つ化合物等が挙げられるが、選択したカイラル剤の性質によっては、ネマチック規則性の破壊、配向性の低下を招き、また非重合性のカイラル剤の場合には重合性液晶の重合による硬化性能を低下させる事態を招くばかりか、液晶材料を用いて形成される位相差層の電気的信頼性を低下させる事態を招く虞があり、更に光学活性な部位を有するカイラル剤の多量使用はコストアップを招く。従ってカイラル剤としては、少量でも液晶分子の配向に螺旋ピッチを誘発させる効果の大きなカイラル剤を選択することが好ましく、より具体的には、例えばMerck社製S−811等の市販のものを用いることができる。
位相差層4が正のAプレートとしての光学補償機能を有する層である場合、位相差層4は、正の誘電率異方性の液晶分子をその光軸がx軸とy軸を含むxy平面に平行するように配向させて固定することにより形成される。
このとき、位相差層4と基材2との間に液晶分子を水平配向させることが可能な配向膜(水平配向膜)を介在させ、位相差層4は、その配向膜表面上に積層形成されることが好ましい。位相差層4と基材2との間に水平配向膜を介在させるには、基材2上に水平配向膜を成膜し、さらにその水平配向膜上に位相差層4を積層すればよい。
基材2上における水平配向膜の作成は、配向膜をなす樹脂膜を構成する樹脂材料を調整し、その樹脂材料を基材2上に塗布して水平配向膜形成用塗膜を形成し固化した後、水平配向膜形成用塗膜の表面をラビング処理や光配向処理を施すことによって水平配向膜形成用塗膜を配向膜となすことにより、具体的に実現することができる。
水平配向膜の表面上には、つぎのように位相差層4が積層される。
まず、上記化合物(I)(II)(III)といった液晶分子を溶媒に溶解させた液晶材料を調整しておき、その液晶材料を、先に成膜しておいた基材2の水平配向膜上に塗布して液晶塗布膜を作成し、その液晶塗布膜に含まれる液晶分子をプラナー配向(水平配向)させた状態にして重合させることで液晶分子を固定し、液晶塗布膜を位相差層4となす。こうして、正のAプレートとしての光学補償機能を発揮可能な位相差層4を得ることができる。
なお、正のAプレートとしての光学補償機能を発揮する位相差層4を作成するにあたり、液晶材料の調整に用いる溶媒は、正のCプレートを作成するための液晶材料に用いた溶媒と同様のものを適宜選択して用いることができ、また、液晶分子の重合は、上記正のCプレートとしての機能を有する位相差層4を作成する場合と同様に、光重合開始剤の感光波長の光や紫外線などといった活性放射線を液晶塗布膜に照射することによって実施することができる。
本発明の位相差制御部材1において、柱体3は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、及びアミド系又はエステル系ポリマー等の光硬化可能な感光性を有する樹脂材料から構成されている。位相差制御部材1において柱体3が配置される位置は、用途に応じて適宜設定される。例えば、位相差制御部材1が液晶ディスプレイを構成する基板に組み込まれて光学補償機能を発揮する部材としての用途で用いられる場合には、液晶ディスプレイの仕様に応じて基板の液晶表示画面となる部分が定まり、さらに基板において液晶表示画面を構成する個々の画素となる部分も定められるが、位相差制御部材1において画素とする部分は、基板の平面視上、基板において画素となる部分に対して重なり合う部分に定められる。そして、柱体3を配置する位置(柱体形成予定位置)は、位相差制御部材1において画素とする部分を除いた部分(非画素部)内に、適宜定められる。
柱体3の断面形状は、円柱形状、四角柱形状、多角柱形状、円錐台形状など特に限定されない。
柱体3について、位相差制御部材1面内方向断面の寸法は、位相差制御部材1の平面視上、非画素部から柱体3がはみ出ない寸法を適宜設定することができる。また、柱体3について、位相差制御部材1厚さ方向の寸法(柱体3の長さ)は、位相差制御部材1を液晶ディスプレイに組み込んだ場合に柱体3の長さに応じてセルギャップの大きさが規定されることから、0.5μmから10μmの範囲であることが好ましい。
本発明において、位相差制御部材1は、次に示すように所定の大きさの負荷をかける負荷過程とその負荷過程の後にその負荷を取り除く除荷過程を備える負荷・除荷試験を実施されることで定まる塑性変形率が15%以下である。
本発明において、負荷・除荷試験は、先端面を平面状に形成された圧子を用いて、その圧子の先端面を柱体の先端部に当接させるとともに、柱体3の先端部3aから基底部3bに向かう方向へ位相差制御部材1に対して3×104kgf/m2の負荷をかける負荷過程と該負荷を取り除く除荷過程とを備えて、位相差制御部材1の厚みについて負荷過程前と除荷過程後の両者を特定する試験である。ただし、柱体3の先端部3aは、1つの柱体3中、基材2表面から位相差制御部材1の厚さ方向に最も離間した端面部分を示し、柱体3の基底部3bは、柱体3の先端部3aに対して、位相差制御部材1の厚さ方向に反対側の端面部分を示す(図1、2)。
負荷・除荷重試験を行うにあたり、まず、位相差制御部材1の試験片(寸法;縦10cm×横10cm、基材2の厚み700μm、位相差層4の厚み1.5μm、柱体の設置数N個(Nは試験片に応じて適宜定まる正の有理数))を用いて、位相差制御部材1の全厚み(D1)を測定する(図1においてD1で示す)。このとき、位相差制御部材1の全厚みは、位相差制御部材1において基板に積層される層構造全体について積層方向の厚みであって柱体3の高さ(長さ)も含めた厚みを示す。その一方で、その試験片に形成された柱体3(N個)のなかから柱体3(n個)を選ぶ。そして、選択された柱体3により位相差制御部材1に形成された凹凸について、負荷過程を実施される前の位相差制御部材1の凹凸差の値(H)を測定する(図1においてHで示す)。この凹凸差の値は触針式膜厚計、光干渉膜厚計などを用いることで具体的に測定することができる。なお、位相差制御部材1の凹凸差の値(H)については、位相差制御部材1の全厚み(D1)より、柱体3以外の各層(位相差層4など)の厚みを減じることによっても特定することが可能である。
次に、微少硬度試験装置(例えば、H.FISCHER社製、フィッシャースコープ H-100)を用い、その試験片に形成された柱体(N個)の中から選択された柱体(n個)の先端部の先方より、材質がダイヤモンドであり、先端面が平面状で一辺100μmの正方形の形状をなしている圧子の先端面を柱体の先端部に当接させ、次のように圧子から試験片に対して柱体の先端部から基底部に向かう方向に負荷をかける(負荷過程)。なお、上記圧子としては、ヴィッカース圧子を上記形状に加工されたものが採用された。
負荷過程では、試験片にかけられる負荷は、2mN/秒で最大負荷(Q(mJ))に達するまで増加される。この最大負荷Qは、試験片の面積100cm2あたりに設けられた柱体(N(個))に3×104kgf/m2の負荷が均一にかけられたことを想定した場合に、圧子より負荷をかけられる柱体の個数(n個)あたりにかけられる負荷の値(300×9.8/(N/n)×1000(mN))として試験片に応じて定められる。さらに、試験片に対してかけられる負荷が最大負荷に達すると、その状態が5秒間保持される。
その後、試験片にかけられる負荷を2mN/秒で逆に減少させていき、試験片にかかる負荷が取り除かれて(除荷されて)0mNとなるまで負荷の減少が行われる(除荷過程)。そして試験片にかかる負荷が0mNとなったところで、再び5秒間その状態を保持する。そして、その際において試験片である位相差制御部材1の全厚み(D2)を測定する。負荷・除荷試験により、例えば図7に示すように、柱体3自体が塑性変形する場合や柱体3の一部が位相差層4内側に沈み込み位相差層4が塑性変形する場合など位相差制御部材1が塑性変形する場合、位相差制御部材1の塑性変形が大きくなるほどD2は小さくなり、D1とD2との差値は大きくなる。
こうして、負荷・除荷試験が実施されることで、負荷過程を実施する前の位相差制御部材の全厚み(D1)と除荷過程を実施した後の位相差制御部材の全厚み(D2)とが定められ、これらの値の差値として、位相差制御部材の全厚みの変化量(ΔH)が算出される。
そして、本発明でいう塑性変形率(W(%))は、負荷・除荷試験にて得られるH、ΔHを用いて式(1)にて定められる。
(数2) W=ΔH/H×100 ・・・(1)
本発明において、塑性変形率(W)は15%以下であるが、この塑性変形率の範囲は、位相差制御部材1を液晶ディスプレイに組み込んだ場合に液晶表示画面の輝度ムラを観察者に認識させない程度にとどめる範囲の値として特定した値である。すなわち、液晶ディスプレイについて、本発明者らは液晶表示画面の表示領域の一部分においてセルギャップが理想的な値から15%を超えて変化(低下)すると、その部分における光の透過率は4%を超えて変化(低下)し、輝度ムラとして観察者が認識できる程度の光の透過率の変化に達することを見出した。すると、セルギャップの塑性変化の大きさが理想的なセルギャップの値に対して15%を超える場合には、液晶ディスプレイの基板が荷重を受けた際に、セルギャップが大きく変化して表示画像に生じた輝度ムラが観察者に一見して認識されてしまう状態が、一時的でなく継続的に生じる状態となってしまう。そこで、これを応用し、セルギャップの塑性変化が理想的な値を基準にした塑性変化の割合で15%以下となるようにして観察者に輝度ムラを継続的に認識させないような位相差制御部材とした。本発明の位相差制御部材では柱体により表面凹凸が形成されており、位相差制御部材が液晶ディスプレイに組み込まれた場合にその表見凹凸差の値の変化がセルギャップの変化を規定することから、セルギャップの塑性変形の割合を15%以下とするべく、表面凹凸差の塑性変化を大きさ特定する塑性変形率(W)を15%以下とすることで、観察者に輝度ムラを継続的に認識させないような位相差制御部材が効果的に提供される。
なお、塑性変形率を特定する際に実施される負荷・除荷試験における3×104kgf/m2の負荷は、液晶ディスプレイに外部から負荷される平均的な応力として設定された値であるが、位相差制御部材に対して負荷をかける前後での、柱体3が位相差層4方向へ沈み込む量と柱体3自体の長さの変化量との合計(h1)と、柱体3以外の各層構造(基板やカラーフィルタを有する場合はその着色層)の厚みの変化量(h2)との比(h1/h2)が通常1000以上となる値でもあり、すなわち液晶ディスプレイの観察者に輝度ムラを認識させる程度のセルギャップの変化量における柱体3と位相差層4以外の各層構造(基板やカラーフィルタを有する場合はその着色層)の厚みの変化の寄与分の殆どない程度の値にもなっている。
なお、位相差制御部材1においては、位相差層4と柱体3の硬さにつき、位相差層4のほうが柱体3よりも圧倒的に軟質であるのが通常であるため、上記したh1のうち、特に柱体3が位相差層4方向へ沈み込む量による寄与分がその殆どを占めていると考えられ、すなわち、位相差制御部材1の厚みの変化は、柱体3が位相差層4方向へ沈み込む点に主な原因があると考えられる。
本発明の位相差制御部材1は、次に示すようにして製造される。
位相差制御部材1の基材2上に、目的に応じて適宜選択された機能(例えば、「+Cプレート」としての機能)を有する位相差層4に応じて上記に示すように調整された液晶材料を塗工して液晶塗布膜を作成する。
基材2の表面に液晶材料を塗工する方法としては、ダイコート、バーコート、スライドコート、ロールコート、スリットコート等といった各種印刷法やスピンコートなどの方法やこれらを組合せた方法を適宜用いることができる。
また、液晶材料を塗布して液晶塗布膜を成膜した基材2は、さらに乾燥されるが、その乾燥は、減圧乾燥によって減圧状態下で行われる他、大気圧下で行われてもよいが、大気圧下で自然乾燥されることが、液晶分子により均一に配向性を付与することができて好ましい。
そして、乾燥された液晶塗布膜を形成した基材2について、上記に示すように、得ようとする位相差層4の複屈折特性に応じて液晶分子に配向性を適宜付与して重合させることで、液晶塗布膜は位相差層4をなす。
なお、位相差層4は、基材2上に全面ベタに形成されている場合に限定されず、部分的に形成されていてもよい。
位相差層4を部分的に形成する方法としては、例えば各種印刷方法やフォトリソグラフィー法を用いて、基材2上にパターニング形成する方法などが具体的に例示できる。これによれば、位相差制御部材1において画素をなす領域など、予め所定の領域を定めて、その領域を狙って位相差層4を所定のパターンにて形成することが可能となる。
基材2に位相差層4が形成されると、その上に、たとえばフォトリソグラフィー法などを用いて、柱体3が形成される。具体的には、柱体3は、これを構成する上記したような樹脂材料からなる柱体形成用樹脂組成物を、位相差層4の表面上に塗布してこれを乾燥させ、柱体3の形成を予定する位置(柱体形成予定位置)に対応したパターンを形成したマスクを介して位相差層4上の柱体形成用樹脂組成物に対して露光した後、現像して柱体形成予定位置以外の柱体形成用樹脂組成物を取り除き、基材2をオーブンで加熱するなどといった公知方法を適宜用いて柱体形成予定位置に残された柱体形成用樹脂組成物を焼成することにより形成される。
こうして、基材2に位相差層4および柱体3を積層した位相差制御部材1が得られる。
なお、本発明の位相差制御部材1は、基材2に積層される位相差層4が単層である場合を例として詳細に説明したが、これに限定されず、位相差層4は複数積層されてもよい。この場合、位相差層4の種類も、1つに限定されることなく、複数種類であってもよい。例えば、位相差制御部材1には、基材2上に、「+Aプレート」の機能を有する層構造を積層し、さらにその上に「+Cプレート」の機能を有する層構造を積層して位相差層4が形成されてもよい。
また、単層に位相差層4が形成される場合においても、位相差層4の複屈折特性を部分的に変更してもよい。例えば、位相差層4は、部分的に液晶分子の配向性を異ならせ、正のCプレート、負のCプレートとしての光学補償機能を有する層となしてもよい。
本発明の位相差制御部材1には、基材2に積層された液晶塗布膜に含まれる液晶分子を重合させて位相差層4となした後であって、柱体3を配置する前に、重合された液晶分子を含む位相差層4を更に加熱する処理(重合後加熱処理ということがある)が施されることが、位相差層4の硬さをさらに向上させることができて好ましい。ただし、重合後加熱処理を行う場合、基材2は、耐熱性を有することが必要であることから、基材2を構成する基材形成材として耐熱性を有するガラス基板などが好ましく用いられる。
重合後加熱処理を行うにあたり、位相差層4の加熱温度は、150〜260℃であるが、200〜250℃であることが、重合後加熱処理後において位相差層4を、重合後加熱処理の前よりも効果的に硬くすることができる観点から好ましい。重合後加熱処理を行う時間については、5〜90分であるが、重合後加熱処理を行う際の加熱温度についての上記観点と同様の観点から、15〜30分程度であることが好ましい。なお、加熱温度が260度もしくは加熱時間が90分を超えると、位相差層4の硬度・強度は上がるが黄変が強くなり、一方加熱温度が150度もしくは加熱時間が5分を下回ると、十分な硬度・強度が得られない。そして、位相差層4は、加熱された後、降温される。
重合後加熱処理は、位相差層4を形成した基材2を、オーブン装置などの焼成装置に導入し、圧力が大気圧、空気雰囲気の条件下で焼成することによって具体的に実施できる。その他、赤外線照射による方法でも実施することができる。
また、重合後加熱処理の工程を行うにあたり、位相差層4の加熱の際の昇温、加熱後の降温は徐々に行われることが好ましい。
本発明において重合後加熱処理を行うと、より確実に位相差制御部材1の塑性変形率を15%以下にすることができるという利点がある。また、この重合後加熱処理は、活性放射線の照射などにより液晶分子の重合反応を実施した後に行われるので、液晶分子の配向性を乱す虞が小さい。
また、本発明の位相差制御部材において、塑性変形率をより小さくするには、上記した重合後加熱処理を行う方法の他、(1)液晶塗布膜を形成する工程において、重合性液晶分子同士を重合させるために行われる紫外線照射などの光照射の際に、露光量を多くして、より重合度を向上させる方法や、(2)液晶塗布膜を構成する液晶材料に多官能性重合モノマーを添加して、液晶塗布膜の重合を増加させる方法などがあるが、上記した重合後加熱処理であることが、これら(1)(2)の方法よりも簡便に位相差層4の硬さを向上させることができて好ましい。
さらに、位相差層4の硬さの向上は、重合性液晶分子の種類を選択することにより行われることも可能であり、すなわち、液晶分子を重合させた後に得られる液晶ポリマーのガラス転移点(Tg)が120℃以上となるようにする液晶分子を選択する方法などがある。なお、液晶分子の種類を選択する方法によって塑性変形率をより小さくした位相差制御部材を得ようとする場合、上記重合性液晶分子が有する官能基の数は、5個以下が好ましい。重合性官能基をこれ以上に有する重合性液晶分子を用いると、得られる液晶ポリマーが不安定でありもろくなる可能性が生じる。
本発明の位相差制御部材1においては、基材2には、上記したように位相差層4の種類やその作成方法などに応じて水平配向膜や垂直配向膜などの配向膜が配置されてもよいが、そのほかにも、光を反射させる反射板や、その厚み方向に進行する光のうち所定範囲の波長の可視光を通過させる着色層などといった層構造がさらに配置されていてもよく、これらの層構造は、基材2全面に設けられるのみならず、部分的に設けられていてもよい。この場合、位相差制御部材1は、基材2上に、基材2表面に対して間接に位相差層4を形成して構成されることになる。
また、位相差制御部材1には、位相差層4と柱体3との間に、ITO膜などの透明電極を設けてもよい。透明電極は、厚さが2000Åやその前後であることが好ましい。このような透明電極は、スパッタリング法など公知の手段を適宜選択して実施することで製膜できる。
次に、本発明の位相差制御部材1において、着色層13がさらに設けられているものについて説明する。
このような位相差制御部材1につき、基材2の表面上に着色層13が形成されている場合を一例として説明する(図2、3)。図2、図3は、着色層13をさらに備えている位相差制御部材1の実施例の一つを説明するための断面を示すそれぞれ概略断面図、概略平面図である。なお、図3では、説明の都合上、位相差層4を省略している。
位相差制御部材1は、基材2の一方の表面に遮光性のブラックマトリクス15が縦横に格子状に塗工形成され、これによりブラックマトリクス15の非形成領域が開口部20として格子点状に多数形成される。つまりブラックマトリクス15の形成領域が遮光部に相当し、開口部20が透過部に相当する。
さらに基材2の上には、開口部20を覆うように三色の色パターン16,17,18が短冊状に配列されて、これら色パターン16,17,18とブラックマトリクス15とで着色層13が形成されている(図2、図3)。色パターン16,17,18は光透過性を有しており、透過する可視光を分光してそれぞれ赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の光となす。したがって図3に二点鎖線で示すように、RGBの三色の色パターン(赤色(R)の色パターン16、緑色(G)の色パターン17、青色(B)の色パターン18)によってそれぞれ被覆された三つの開口部20があわさって、一つの画素21が形成される。
ブラックマトリクス15は、おおよそ短冊状に塗工される色パターン16,17,18の混色を防止するとともに、開口部20を平面視上区画化して、画素21の輪郭を鮮明化し、また位相差制御部材1が液晶セルに組み込まれる際に液晶セルに通常配置される駆動回路や液晶駆動用電極などを、透過光から隠蔽する機能をもつ。
ただし本発明においては、位相差制御部材1の用途や光学的な仕様によってはブラックマトリクス15を不要とする場合(この場合には、着色層13は、色パターンで構成される。)もあり、またブラックマトリクス15を用いる場合も矩形格子状のほか、ストライプ状や三角格子状などに形成する場合もある。また着色層13を構成する色パターンについても、RGB方式の三色の場合のほか、その補色系であるCMY方式とすることも可能であり、さらに単色もしくは二色の場合、または四色以上の場合なども採りうる。また色パターンの形状も、短冊状にパターン形成する場合のほか、基材2上に全面塗工するパターンの場合や、矩形状や三角形状などの微細パターンを基材2上に多数分散配置するパターンの場合など、目的に応じて種々のパターンを採りうる。
色パターン16,17,18は、色種ごとに、各色種に対応する着色材料を溶媒に分散させた着色材料分散液を基材2に塗布して形成される塗膜を、例えばフォトリソグラフィー法で、例えば短冊状などといった所定形状にパターニングすることで形成されるほか、着色材料分散液を所定形状に基材2に塗布することによっても形成できる。
ブラックマトリクス15は、例えば、金属クロム薄膜やタングステン薄膜等、遮光性又は光吸収性を有する金属薄膜を基材2面にパターニングすることにより、形成することができる。また、ブラックマトリクス15は、黒色樹脂等の有機材料を所定形状に印刷することにより形成することも可能である。
位相差制御部材1では、位相差層4は、基材2の着色層13上に、着色層13を覆うように積層形成される。こうすると、位相差層4の耐熱性が比較的高いことから、位相差層4で被覆される着色層13の耐熱性も向上させることができる。位相差層4は、その機能(光学補償機能(例えば、正のCプレートとしての機能)など)に応じて、上記したようにして適宜形成することができる。
位相差層4の表面上には、柱体3が配設される。柱体3は、位相差層4の画素21と重ならない部分より定められた柱体形成予定位置に、上記したようにして適宜設けられる。
例えば、柱体3は、位相差層4上にあってブラックマトリクス15の形成領域に対して位相差制御部材1の平面視上重なり合う部分内に定められた柱体形成予定位置に設けられる。図3の例では、位相差層4上にあってブラックマトリクス15における各色パターン16,17,18の長手方向に平行する部分に対して平面視上重なり合う部分内に柱体形成予定位置を定めて、その柱体形成予定位置に柱体3が形成されている。
なお、柱体3が形成される位置は、図3の例に限定されず、図4の例に示すように、位相差層4上の部分にあって、且つブラックマトリクス15において各色パターン16,17,18の長手方向を平面視上横切る領域内の部分に対して重なり合う部分に、柱体形成予定位置を定めて、その柱体形成予定位置に柱体3が形成されていてもよい。なお、上述した図3に示す例のみならず、図4に示す例においても、色パターン16,17,18によってそれぞれ被覆された三つの開口部20があわさって、一つの画素21が形成されており、柱体3は平面視上画素21の領域内へはみ出ないように設けられている。
なお、着色層13を備えた位相差制御部材1は、基材2上に着色層13を形成して、さらにその上に位相差層4を積層形成する場合(図2)、に限定されない。位相差制御部材1は、基材2に対して位相差層4を形成し、さらに位相差層4上に着色層13の少なくとも一部を形成して構成されるものであってもよい。例えば、図2に示す着色層13を備えた位相差制御部材1の例では、基材2と位相差層4の間に、着色層13を構成する色パターン16,17,18とブラックマトリクス15の両者が設けられている場合であったが、位相差制御部材1は、着色層13を構成する色パターン16,17,18、ブラックマトリクス15のなかから一部を基材2と位相差層4の間に介在させ、他(色パターン16,17,18とブラックマトリクス15のうち基材2と位相差層4の間に介在配置させないもの)を基材2から位相差層4までの積層構造に対してその外側に配置させて構成されることも可能である。より具体的には、例えば、位相差制御部材1は、基材2に着色層13の一部としてのブラックマトリクス15を形成し、この基材2におけるブラックマトリクス15の形成面上に、ブラックマトリクス15とブラックマトリクス15の非形成部分の両方を被覆して位相差層4を成膜し、さらに位相差層4上に色パターン16,17,18を形成し、その上に柱体3を配置してなるもの、とすることができる。
また、本発明の位相差制御部材1が、基材2と位相差層4の間に着色層13が積層形成されているように構成される場合にあっては、位相差制御部材1は、その着色層13と位相差層4の間に保護層を介在させ、該保護層を着色層13の表面上に直接形成して構成されているもの、であってもよい。
保護層は、多官能アクリレートを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂材料や、多官能エポキシを含有するアクリル系、アミド系又はエステル系ポリマー等の材料からなる透明樹脂塗料といった樹脂組成物を位相差層4表面に塗布して樹脂塗布膜を成膜し、この樹脂塗布膜を乾燥させ、さらに硬化させることによって形成することができる。樹脂塗布膜の硬化は、樹脂組成物の性質に応じて公知の硬化方法を適宜実施することができ、例えば、多官能アクリレートを含有するアクリル系ポリマーの材料からなる透明樹脂材料にて樹脂塗布膜を成膜する場合、その樹脂塗布膜の硬化は、樹脂塗布膜にUV光を照射することなどにより実施できる。
この位相差制御部材1によれば、着色層13の表面に凹凸が生じていても、保護層を設けることで、平坦化された面を形成することが可能となり、より確実に平坦な面上に位相差層4を形成することができる。
このように着色層13を備えた位相差制御部材1は、液晶ディスプレイなどといった光学機器におけるカラーフィルタに組み込まれて使用されることができる。
次に、本発明の位相差制御部材1を用いた液晶ディスプレイについて説明する。
なお、液晶ディスプレイとしては、IPSモードであって、着色層13を備える位相差制御部材1を組み込んでいる場合(図5)、を例として説明する。図5は、液晶ディスプレイ51を説明するための図である。
本発明の液晶ディスプレイ51は、図5に示すように、対向する一対の基板25(表示側基板たる観察者側基板22、駆動液晶側基板たるバックライト側基板23)の間に、電場に置かれた状態で電場の変化に応じて駆動可能(配向を変動可能)に液晶ディスプレイ駆動用の液晶組成物(駆動用液晶組成物24)を封入して駆動液晶層28を形成している。そして、液晶ディスプレイ51は、バックライト側基板23の厚さ方向に、バックライト側基板23の外側位置からバックライト側基板23に向かって光を照射するバックライト(図示しない)を配設して構成されている。
観察者側基板22は、基材2上に、ブラックマトリクス15と色パターン16,17,18を備えた着色層13を積層し、その着色層13表面を覆って位相差層4を形成しており、さらに位相差層4上には、柱体3が、その基底部(図5において上方側の部分)を、位相差層4表面上にあって、着色層13のブラックマトリクスの形成領域に対して観察者側基板22の厚みの方向に重なりあう領域内に所定のパターンで定められた多数の柱体形成予定位置に、分散配置されている。そして、観察者側基板22には、基板2の厚さ方向の表面のうち着色層13の非形成面の上には、直線偏光板33が配置されている。
バックライト側基板23は、透明な基材41のインセル側(駆動用液晶組成物24の封入される側)の面上に、駆動液晶層28の液晶44に対する電圧の印加有無のスイッチング駆動する駆動用回路と、これにより電圧の負荷量が制御される液晶駆動用電極とを設けている(図示せず)。さらに、バックライト側基板23のインセル側の最表面は、多数の柱体3の先端部(同図における下方)と当接している。そして、バックライト側基板23には、そのアウトセル側(インセル側とは逆側)の面に、直線偏光板42が配置されている。
なお、液晶ディスプレイ51において、観察者側基板22の直線偏光板33と、バックライト側基板23の直線偏光板42とは、互いの透過軸が直交するように配されている。なお、図中、直線偏光板33、42の透過軸は矢印にて示す。
この液晶ディスプレイ51では、観察者側基板22に、基材2と着色層13と位相差層4、柱体3が積層されてなる層構造が備えられており、この層構造は、本発明における位相差制御部材1を構成する。すなわち、液晶ディスプレイ51には、位相差制御部材1が組み込まれて構成されている。
なお、液晶ディスプレイ51には、必要に応じて、観察者側基板22における直線偏光板33の内側に、位相差フィルム30を介在させてもよい。図5に示す例では、液晶ディスプレイ51として、複屈折層4を正のCプレートとしての光学補償機能を有する層として形成した位相差制御部材1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のAプレートとしての光学補償機能を有するものが示されている。図5中、複屈折層4、位相差フィルム30の光学補償機能を規定する複屈折特性は、それぞれ屈折率楕円体100,101にて示す。
さらに、液晶ディスプレイ51において、位相差フィルム30は、必要に応じて複数枚、複数種類介在させていてもよい。したがって、例えば、液晶ディスプレイ51は、複屈折層4を正のCプレートとしての光学補償機能を有する層として形成した位相差制御部材1を組み込み、且つ、位相差フィルム30として、正のAプレートとしての光学補償機能を有するもの、さらにその他の機能を有するものと、2枚以上を積層させて構成されていてもよい。
また、液晶ディスプレイ51においては、図6に示すように、観察者側基板22が、基材2上のインセル側に着色層13を形成し、さらに着色層13上に、正のAプレートとしての光学補償機能を発揮する層を積層しさらに正のCプレートとしての光学補償機能を発揮する層を積層してなる位相差層4を形成し、そしてその上に柱体3を配置し、基材2上のアウトセル側に直線偏光板33を配置して構成されていてもよい。なお、図6中、位相差層4の有する正のCプレートとしての光学補償機能と正のAプレートとしての光学補償機能とを規定する複屈折特性は、それぞれ屈折率楕円体100,101にて示す。このような液晶ディスプレイ51では、正のAプレートもインセル化されるので、上記に示した位相差フィルム30を不要とすることができるようになる。
なお、位相差制御部材1を組み込む液晶ディスプレイは、上記IPSモードに限らず、例えばMVAモードやOCBモード(Optically Compensated Birefringenceモード)などといった他のモードであってもよい。
次に、位相差層4が正のCプレートである場合を例として、位相差制御部材1の実施例について説明する。
実施例1.
まず、基材としてのガラス基板(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35)を準備し、着色材料分散液を用いてガラス基板に着色層を形成した。着色層の形成は次に示すようにして実施された。
[着色層の形成]
<着色層の形成に用いる着色材料分散液の調整>
ブラックマトリクス(BM)、及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の色パターンの着色材料分散液として、顔料分散型フォトレジストを用いた。顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合することにより得られた。得られた顔料分散型フォトレジストは、下記に示すような組成である。尚、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。
(ブラックマトリクス用フォトレジスト)
・黒顔料・・・・・14.0重量部
(大日精化工業(株)製、TMブラック#9550)
・分散剤・・・・・1.2重量部
(ビックケミー(株)製、Disperbyk111)
・ポリマー・・・・・2.8重量部
(昭和高分子(株)製、VR60)
・モノマー・・・・・3.5重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・添加剤・・・・・0.7重量部
(綜研化学(株)製L−20)
・開始剤・・・・・1.6重量部
(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)
・開始剤・・・・・0.3重量部
(4,4´−ジエチルアミノベンゾフェノン)
・開始剤・・・・・0.1重量部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
・溶剤・・・・・75.8重量部
(エチレングリコールモノブチルエーテル)
(赤色(R)着色画素用フォトレジスト)
・赤顔料・・・・・4.8重量部
(C.I.PR254(チバスペシャリティケミカルズ社製、クロモフタールDPP Red BP))
・黄顔料・・・・・1.2重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(緑色(G)着色画素用フォトレジスト)
・緑顔料・・・・・3.7重量部
(C.I.PG7(大日精化製、セイカファストグリーン5316P))
・黄顔料・・・・・2.3重量部
(C.I.PY139(BASF社製、パリオトールイエローD1819))
・分散剤・・・・・3.0重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
(青色(B)着色画素用フォトレジスト)
・青顔料・・・・・4.6重量部
(C.I.PB15:6(BASF社製、ヘリオゲンブルーL6700F))
・紫顔料・・・・・1.4重量部
(C.I.PV23(クラリアント社製、フォスタパームRL−NF))
・顔料誘導体・・・・・0.6重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース12000)
・分散剤・・・・・2.4重量部
(ゼネカ(株)製、ソルスパース24000)
・モノマー・・・・・4.0重量部
(サートマー(株)製、SR399)
・ポリマー1・・・・・5.0重量部
・開始剤・・・・・1.4重量部
(チバガイギー社製、イルガキュア907)
・開始剤・・・・・0.6重量部
(2,2´−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4´,5´−テトラフェニル−1,2´−ビイミダゾール)
・溶剤・・・・・80.0重量部
(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
尚、上記ポリマー1は、ベンジルメタクリレート:スチレン:アクリル酸:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=15.6:37.0:30.5:16.9(モル比)の共重合体100モル%に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを16.9モル%付加したものであり、重量平均分子量は42500である。
<着色層の形成>
洗浄処理を施したガラス基板上面に、上記各色の着色材料分散液を次に示すように塗布し、ガラス基板に着色層を積層形成した。
まず、ガラス基板に、上述で調製したBM用フォトレジストをスピンコート法で塗布し、90℃、3分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、所定のパターンに形成されたマスクを用いて露光(100mJ/cm2)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベーク(焼成)し、厚さが1.2μmのBMを形成したガラス基板(BM形成基材)を作製した。BMは、平面視上一方向に伸びるフォトレジストのパターンとこれに直交する方向に伸びるフォトレジストのパターンとで格子状に形成された。
次に、予め赤色の色パターンに対応する位置に対応するように調整した赤色(R)の顔料分散型フォトレジストを上記BM形成基材上にスピンコート法で塗布し、80℃、3分間の条件でプリベークし、各色の色パターンに応じた所定の着色パターン用フォトマスクを用いて、紫外線露光(300mJ/cm2)した。さらに、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、60分間ポストベーク(焼成)し、BMの配置パターンに対して所定の位置に膜厚2.6μmの赤色(R)の色パターンを短冊状に形成した。このとき、色パターンは、その短冊状の長手方向が、BMのパターンにおける一方向に伸びるフォトレジストのパターンに対して平行するように、形成されていた。
続いて、上記赤色(R)の色パターンのパターン形成方法と同様の方法を用いて、緑色(G)の色パターン、青色(B)の色パターンそれぞれにつき、パターン形成した。
こうして、ガラス基板上に、BMおよび、赤色の色パターン、緑色の色パターン、青色の色パターンから構成される着色層が形成された。
着色層を備えたガラス基板に対して、着色層の表面上に垂直配向膜を次のように成膜した。
[垂直配向膜の作成]
垂直配向膜を構成する垂直配向膜材料を、着色層表面上にフレキソ印刷法を用いて塗布して塗布膜(配向膜形成膜)を得て、この配向膜形成膜を備えたガラス基板を200℃で、1時間、ホットプレート上で焼成することにより、配向膜形成膜を垂直配向膜(膜厚み700Å)となした。
こうして得られた着色層と垂直配向膜とを備えたガラス基板をスピンコーター(ミカサ社製、1H−360S)に設置して、着色層の上にあって垂直配向膜の表面上に、次に示すようにして調整された液晶材料をスピンコーティングすることにより、液晶材料3(mL)を基材上に塗布して液晶塗布膜を作製した。なお、この例では、液晶塗布膜は、垂直配向膜を介して着色層の上に形成されることになる。
[液晶材料の作成]
下記化合物(a)〜(d)に示すような重合性液晶分子、光重合開始剤、シランカップリング剤、溶媒を混合して下記組成の液晶材料を調整した。
<液晶材料の組成>
化合物(a) 8.3 重量部
化合物(b) 4.7 重量部
化合物(c) 5.4 重量部
化合物(d) 5.4 重量部
光重合開始材 1.3 重量部
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア907)
シランカップリング剤 0.05重量部
(アミン基含有シランカップリング剤(GE東芝シリコーン社製、TSL−8331))
溶媒 75.0 重量部
(クロロベンゼン)
[液晶塗布膜に含まれる液晶について液晶相状態の形成]
液晶塗布膜の形成された基板を、ホットプレート上にて100℃、5分間加熱して、溶媒を除去するとともに液晶塗布膜中に含まれる液晶分子を液晶相に転移させた。この液晶相への転移の確認は、液晶塗布膜が白濁状態から透明状態となったことを目視にて確認することで行われた。なお、この際、液晶分子は、ホメオトロピック配向性を付与される。
[液晶分子の架橋重合反応]
次に、窒素雰囲気下で、透明状態の液晶塗布膜に、紫外線照射装置(ハリソン東芝ライティング社製、「商品名TOSCURE751」)を用いて出力が10mW/cm2の紫外線(365nm)を60秒間照射して、液晶塗布膜中の液晶分子を架橋重合反応させて液晶分子をこれに配向性を付与した状態で固定し、液晶塗布膜を位相差層となした。
[重合後加熱処理]
位相差層を形成した基材は、さらに、ホットプレート上にて200℃、15分間加熱する処理(重合後加熱処理)を施された。重合後加熱処理の後に得られた位相差層についてその厚みの大きさが測定された。位相差層の厚みは、1.2μmであった。
重合後加熱処理を施した位相差層を形成した基材において、位相差層表面上に、次のように柱体を配設した。
[柱体の配設]
まず、柱体を構成する柱体形成用樹脂組成物として紫外線硬化型透明ネガ型レジスト(JSR社製、NN700)を用い、この柱体形成用樹脂組成物を位相差層上にスピンコーティング法により塗布、乾燥し、塗布膜を形成した。
次に、その塗布膜から離間距離100μmの位置にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、位相差層表面上の塗布膜に向けて、予め定めておいた柱体形成予定位置をなす部分に、紫外線を10秒間照射した。これにより、塗布膜は、その塗布膜のうち紫外線の照射された部分が硬化した状態となる。なお、柱体形成予定位置は、塗布膜上の部分にあって、且つ、塗布膜の厚み方向に見て(平面視上)短冊状の色パターンの長手方向に平行して一方向に伸びるブラックマトリクスの領域内の部分に対して重なり合う部分より、予め選択されて定められた。また、柱体形成予定位置として、ガラス基板の面積100cm2あたりまず、80000箇所が選択された。さらに、80000箇所の各箇所について同様に、選択された箇所における中心部分を基準にして一方向に伸びるフォトレジストのパターンに対して水平な方向に50μm離間して平面視上画素の領域に重ならない位置に、更に1箇所が追加選択されることで、計160000箇所が選択された。
その後、塗布膜を0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、塗布膜の未硬化部分を除去した。さらに、未硬化部分の除去された塗布膜を形成した基材を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施し、塗布膜においてアルカリ現像で除去されずに残った部分を柱体となした。柱体は、位相差層と接触している端部にあたる柱体の基端部の直径が10μmで、高さが3.5μmの寸法の円柱形状にて得られた。また、柱体は、位相差層上に100cm2あたり160000個配設された。
こうして、基板に、着色層、位相差層、柱体が設けられている位相差制御部材が得られた。この位相差制御部材は、柱体によりその柱体の配設位置で突出して、位相差制御部材表面に凹凸が形成されている。
得られた位相差制御部材について、次に示すようにして、塑性変形率を測定した。
[塑性変形率の測定]
位相差制御部材の塑性変形率(W)は、位相差制御部材を硬度計測器に設置し、ダイヤモンドからなり先端面を一辺100(μm)の正方形の平面形状に形成された圧子を用いた負荷・除荷試験後の位相差制御部材の全厚み(D2)と、負荷・除荷試験前の位相差制御部材の全厚み(D1)および凹凸差(H)を計測し、ΔH=(D1−D2)に基づき、(ΔH/H)×100にて示される数式にて算出される。
そこで、まず負荷・除荷試験前の位相差制御部材の全厚み(D1)が測定された。また、位相差制御部材表面に形成された凹凸差の大きさ(H)を測定した。
<負荷・除荷試験>
位相差制御部材に設けられた柱体の中から、上記圧子にて負荷をかける柱体として隣設する柱体が2個選ばれた。ついで、その選択された2個の柱体に対して柱体の先端部上方より圧子の先端面を当接させ、次のように位相差制御部材に負荷がかけられた(負荷過程)。負荷過程では、圧子による位相差制御部材の柱体への負荷を2mN/秒で最大負荷になるまで増した。ここに最大負荷は、位相差制御部材100cm2あたり設けられた柱体に対して3×104kgf/m2の負荷が均一にかけられた場合を想定して、圧子により負荷を受ける柱体の個数あたりの負荷として定められる。本実施例では、位相差制御部材100cm2あたり柱体は160000個であることから、圧子によって負荷を受ける柱体2個に対する最大負荷は36.8mN(柱体1個では、18.4mN)となる。柱体に対する負荷が最大負荷に達すると、最大負荷を柱体にかけた状態が5秒間保持された。その後、柱体に対する負荷を2mN/秒で0mNとなるまで逆に減少させた(除荷過程)。除荷過程の後、柱体にかかる負荷が0mNの状態を再び5秒間保持した。
負荷・除荷試験の後、位相差制御部材の全厚み(D2)が測定された。こうして得られた、H、ΔH(ΔH=D1−D2)、に基づき、塑性変形率(W=(ΔH/H)×100)(%)を算出した。なお、位相差制御部材に対する負荷の増加、保持、減少といった制御は、硬度計測機(H.FISCHER社製、フィッシャースコープ H-100)を用いて実施された。また、位相差制御部材の全厚み(D1、D2)と、凹凸差の大きさ(H)は、電子顕微鏡(JCM−5700、JEOL社製)、および触針式膜厚計アルファステップ(テンコール社製)を用いて測定された。
この位相差制御部材について、H、ΔHは、それぞれ3.5μm、0.25μmであり、塑性変形率は、7.1%であった。
位相差制御部材を組み込んだ液晶ディスプレイを作製し、この液晶ディスプレイに押圧力を加えた際の液晶表示画面の表示状態を観察することで、輝度ムラを生じるか否かについての測定がなされた。
[輝度ムラの測定]
<液晶ディスプレイの作成>
まず、液晶ディスプレイに封入される駆動液晶の分子を水平に配向させる水平配向膜を構成する配向膜組成物としてAL1254(JSR社製)が準備された。この配向膜組成物を、フレキソ印刷法を用いて位相差制御部材の位相差層と柱体とを被覆するように塗布して塗布膜を得て、この塗布膜を焼成し、さらにその塗布膜の表面にレーヨン製ラビング布を用いてラビング処理を施して、その塗布膜を水平配向膜となした。
つぎに、表面上に画素電極(TFT)を形成されたガラス基板を用意し、さらにガラス基板のTFTの形成面上に水平配向膜を、位相差制御部材と同様にして形成した。
水平配向膜を形成した位相差制御部材と、水平配向膜やTFTを形成したガラス基板とを柱体を介して対面させ、さらにエポキシ樹脂をシール材とし、そのシール材を用いて位相差制御部材とこれに対向するガラス基板との隙間を、位相差制御部材とこれに対向するガラス基板の周囲位置にてシールし、150℃で0.3kg/m2の圧力をかけることで位相差制御部材とこれに対向するガラス基板とを接合して、さらに、対面する位相差制御部材とガラス基板との間に形成された空間部に、電場の変化に応じて配向を変化させる駆動用の液晶(ZLI4792,メルク社製)を封入して駆動液晶層を形成し、一体の構造体(液晶セル)を得た。そして、この液晶セルの厚さ方向外側位置に、2枚の偏光板を、液晶セルを挟みこむとともに透過軸を直交させて配置して貼り付け、液晶ディスプレイが作製された。この液晶ディスプレイは、位相差制御部材を組み込んだ基板と、TFTを配置した基板との間に駆動液晶層が形成された構造を備えており、位相差制御部材を組み込んだ基板が表示側基板をなし、TFTを配置した基板が駆動液晶側基板をなしている。
<輝度ムラの測定>
まず、得られた液晶ディスプレイの駆動液晶層基板側の外側位置から光を照射するとともに、液晶表示画面を白表示させて液晶表示画面の状態を目視にて確認した。
つぎに、液晶ディスプレイを用い、口径2cmの円柱型で先端面が平面である圧子を利用して、その圧子の先端面を表示側基板表面に押し付け、表示側基板表面に負荷をかけた。表示側基板表面に対する負荷は、最大で3×104kgf/m2の応力となるまで徐々に増やされ、負荷が最大となるまで増やされた後、圧子による表示側基板表面に対する負荷が取り除かれた(除荷)。除荷の後更に5秒間室温で放置した後、液晶ディスプレイの駆動液晶層基板側の外側位置から光を照射するとともに、液晶表示画面を白表示させて液晶表示画面の状態を目視にて確認した。
表示側基板表面に圧子を押し付ける前後での液晶表示画面の状態を比較し、表示側基板表面に圧子を押し付ける前後で、液晶表示画面の圧子を押し付けた部分における輝度の変化が認識されるか否かを判定した。そして、観察者が輝度の変化を認識できないと判定した場合には、液晶ディスプレイは輝度ムラの継続的な発生を抑制され、良好なものであると評価し、観察者が輝度の変化を認識できたと判定した場合には、輝度ムラの継続的な発生が十分に抑制されておらず、液晶ディスプレイは不良なものであると評価した。
本実施例1で得られた位相差制御部材を用いた液晶ディスプレイでは、白表示時において、圧子との接触した部分に輝度の変化が認識されず、その液晶ディスプレイは良好なものであると評価された。
実施例2
柱体として、位相差層と接触している柱体の基底部の直径が12μmで、高さが3.5μmの寸法の円柱形状のものが形成され、柱体形成予定位置として位相差層上に100cm2あたり80000箇所が選択されるに留めて、80000箇所の各箇所について1箇所の追加選択が行われずに、柱体形成予定位置を80000箇所とし、柱体の配設数も80000個としたほかは、実施例1と同様にして位相差制御部材を得た。
位相差制御部材の塑性変形率については、圧子にて負荷をかける柱体として柱体が1個選ばれ、その1個の柱体に対して柱体の先端部上方より圧子の先端面を当接させて最大荷重36.8mNまで負荷をかける以外は実施例1と同様に負荷・除荷試験を行って位相差制御部材の全厚み(D1、D2)を測定し、また、実施例1と同様にして位相差制御部材の凹凸差(H)を測定するとともに、それらの値に基づき塑性変形率(W)を算出した。この位相差制御部材について、Hは、3.5μm、ΔHは0.38μmであり、塑性変形率(W)は、10.9%であった。なお、塑性変形率(W)を得る際に用いる圧子には実施例1と同様のものが用いられた。
位相差制御部材を用いて実施例1と同様に液晶ディスプレイを作成し、その良否について実施例1と同様に評価された。この位相差制御部材を組み込んだ液晶ディスプレイは良好なものであった。
比較例1.
柱体として、位相差層と接触している端部にあたる柱体の基端部の直径が10μmで、高さが3.5μmの寸法の円柱形状としたほかは、実施例2と同様にして位相差制御部材を得た。
位相差制御部材の凹凸差(H)、その全厚みに基づくΔH、塑性変形率(W)と、位相差制御部材を組み込んだ液晶ディスプレイの良否の評価は、実施例2と同様に実施された。結果、位相差制御部材のHは、3.5μm、ΔHは0.73μm、塑性変形率は、20.9%であり、また、位相差制御部材を組み込んだ液晶ディスプレイの良否については、不良なものであると評価された。また、この液晶ディスプレイについては、除荷の後更に5秒間放置した後における液晶表示画面の状態のみならず、除荷の後更に30秒間室温で放置した後における液晶表示画面の状態についても観察者の目視による確認がなされた。そして、表示側基板表面に圧子を押し付ける前における液晶表示画面の状態と、除荷の後更に30秒間室温で放置した後における液晶表示画面の状態とを比較し、実施例2と同様にして輝度の変化が認識されるか否かを判定した。このとき、本比較例の液晶ディスプレイでは輝度の変化が認識されると判定され、輝度ムラの発生した状態が継続していることが確認された。