JP4884333B2 - 電解用電極 - Google Patents

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Description

本発明は、希薄な食塩水中で陽極として使用し殺菌能力の高い電解水を生成せしめるのに有用な電解用電極に関し、さらに詳しくは、極性を切替える条件下において、安定かつ高い塩素発生効率特性を有し、長期間にわたりその高い塩素発生効率を維持することができる電解用電極に関する。
水道水に食塩を加えた希薄食塩水を電解して陽極に塩素を発生させ、この塩素と水の反応により生成する次亜塩素酸の殺菌性を利用して、調理器具、厨房設備、医療器具、医療現場等を殺菌することは知られている。このような電解では、水道水を使用するため、水道水中のカルシウムやマグネシウムが、電解時に陰極側で生成するOH-と反応して、陰極表面に水酸化物として付着し陰極が詰まってしまうことがある。この付着物を除去するために、定期的に極性を切替えて使用すること、つまり2枚以上の同様の電極を使用し、陽極としての使用と陰極としての使用を繰り返すことが一般的に行なわれている。
水道水中で使用される電極としては、チタン及びチタン合金基体上に白金を電気めっきした電極が広く使用されており、この電極は、極性切替時の安定性が高く、白金の消耗量が小さいが、塩素発生効率が低いため、電解水を殺菌用として使用する場合、所定の有効塩素濃度を得るために、食塩濃度を高くする、電流値を高くする等の手段を講じなければならず、装置の維持費が高くなるという問題があった。
また、塩素発生効率を高めるため、導電性基体上に酸化イリジウム、酸化タンタル及び白金からなる被覆層を設けた電極が提案されている(特許文献1参照)。この提案の電極は、白金めっき電極と比較して塩素発生効率が高いという利点があるものの、希薄食塩水中で陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返し行なうと、徐々に塩素発生効率が低下し、消耗率が30%程度で初期効率の半分以下になってしまうという問題がある。
また、チタン及びチタン合金基体上に、酸化イリジウム、酸化タンタル及び白金からなる中間層と、酸化イリジウムと白金と酸化ニオブ、酸化タンタル及び酸化ジルコニウムより選ばれる金属酸化物からなる外層を設けた電極が、酸素発生用電極として提案されている(特許文献2参照)。この提案の電極を用いて希薄食塩水中で電解を行うと、白金めっき電極と比較して、初期には高い塩素発生効率が得られるが、希薄食塩水中で陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返し行なうと、急速に塩素発生効率が低下し、消耗率が30%程度で初期効率の半分以下になってしまうという問題がある。
特開平2-263989公報 特開平2-200790公報
本発明の目的は、希薄な食塩水中で陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返し行っても、安定かつ高い塩素発生効率特性を有し、長期間にわたりその高い塩素発生効率を維持することができる電解用電極を提供することである。
かくして、本発明によれば、
(a) チタン又はチタン合金よりなる電極基体と、
(b) 該電極基体上に設けられた酸化チタン層と、
(c) 該酸化チタン層上に設けられた、金属換算で、酸化イリジウム3〜30モル%と
酸化タンタル70〜97モル%の複合体からなる中間酸化物層と
(d) 該中間酸化物層上に設けられた、金属換算で、酸化ロジウム2〜35モル%、酸
化イリジウム30〜80モル%、酸化タンタル6〜35モル%及び白金12〜62
モル%の複合体、
とからなることを特徴とする電解用電極が提供される。
本発明の電極は、希薄食塩水中で陽極と陰極の極性を切替えての使用を繰り返し行なうことにより消耗量が大きくなっても高い塩素発生効率を維持するという優れた特性を有しており、また、電極基体表面に形成せしめた水素化チタン被膜に基づく薄い酸化チタン層と酸化イリジウム及び酸化タンタルからなる中間酸化物層が有する高い耐食性により、被覆層が脱落することがなく、被覆層が殆ど消耗されるまで用いることができ、電極寿命の著しい延長を図ることができるという優れた効果を奏する。
以下、本発明の電極及びその製造法についてさらに詳細に説明する。
発明の実施の形態
本発明において使用される電極基体の材質としては、チタンまたはチタン基合金が挙げられる。チタン基合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金が使用され、例えば、Ti−Ta−Nb、Ti−Pd、Ti−Zr、Ti−Al等の組み合わせからなる、通常電極材料として使用されているTi基合金が挙げられる。これらの電極材料は板状、有孔板状、棒状、網板状等の所望形状に加工して電極基材として用いることができる。
上記の如き電極基体には、通常行われているように、予め前処理をするのが望ましい。そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず、前述したチタン又はチタン基合金よりなる電極基体(以下、チタン基体という)表面を、常法に従い、例えばアルコール等で洗浄し及び/又はアルカリ溶液中での電解により脱脂した後、フッ化水素濃度が1〜20重量%のフッ化水素酸又はフッ化水素酸と硝酸、硫酸等の他の酸との混酸で処理することにより、チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は、チタン基体の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。なお、粗面化を十分行なうためにブラスト処理を併用してもよい。
このように酸処理されたチタン基体表面を熱濃硫酸と接触させて、該チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに、該チタン基体表面に水素化チタンの薄い層を形成せしめる。使用する濃硫酸は一般に40〜80重量%、好ましくは50〜60重量%の濃度のものが適しており、この濃硫酸には、必要により、処理の安定化を図る目的で、少量の硫酸ナトリウム、その他の硫酸塩等を添加してもよい。該熱濃硫酸との接触は、通常、チタン基体を濃硫酸の浴中に浸漬することにより行うことができ、その際の浴温は一般に約100〜約150℃、好ましくは約110〜約130℃の範囲内の温度とすることができ、また、浸漬時間は通常約0.5〜約10分間、好ましくは約1〜約3分間で十分である。この熱濃硫酸処理により、チタン結晶粒界内部表面を突起状に細かく粗面化するとともに、チタン基体の表面にごく薄い水素化チタンの被膜を形成せしめることができる。熱濃硫酸処理されたチタン基体は硫酸浴から取り出し、好ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中で急冷して、チタン基体の表面温度を約60℃以下に低下させる。この急冷には洗浄も兼ねて大量の冷水を用いるのが適当である。
以上の如くして前処理されたチタン基体は、大気中で焼成することにより、水素化チタンの被膜の層を熱分解して該層中の水素化チタンを実質的にほとんどチタン金属に戻し、さらにチタン基体表面近傍のチタンを低酸化状態の酸化チタンに変えることができる。この焼成は一般に約300〜約600℃、好ましくは約300〜約400℃の温度で10分〜4時間程度加熱することにより行うことができる。これにより、チタン基体表面にごく薄い導電性の酸化チタン層が形成される。この酸化チタン層の厚さは一般に100〜1,000オングストローム、好ましくは200〜600オングストロームの範囲内にあるのが好適であり、また、酸化チタンの組成はTiOxとしてxが一般に1<x<2、特に1.9<x<2の範囲内にあるのが望ましい。また別法として、前処理を行ったチタン基体は、上記の如き焼成処理を行わずに直接次の工程に付してもよい。この場合には、次工程での熱分解処理時にチタン基体表面の水素化チタンの被膜の層は、チタン金属及び低酸化状態の酸化チタンに変換される。
しかる後、このように焼成されたチタン基体上の酸化チタン面を、3〜30モル%の酸化イリジウムと70〜97モル%の酸化タンタル、好ましくは5〜15モル%の酸化イリジウムと85〜95モル%の酸化タンタルからなる混合酸化物(以下、中間酸化物ということがある)で被覆する。
この中間酸化物は、得られる電極の耐食性を向上させるのに役立つものであり、その被覆量(金属換算)は、一般に0.5〜10.0g・m-2、好ましくは1.0〜5.0g・m-2の範囲内とすることができる。
上記組成の中間酸化物によるチタン基体上もしくはチタン基体上の酸化チタン面の被覆は、具体的には、例えば、以下に述べるようにして行うことができる。
前述の如くして前処理されたチタン基体上もしくはチタン基体上の酸化チタン面に、イリジウム化合物とタンタル化合物を含む溶媒溶液、好ましくは低級アルコール溶液を塗布した後乾燥することにより、イリジウム化合物とタンタル化合物を付着せしめる。ここで使用しうるイリジウム化合物及びタンタル化合物としては、後述する焼成条件下で熱分解してそれぞれ酸化イリジウム及び酸化タンタルに転化しうる、低級アルコール溶媒に可溶性の化合物が包含され、具体的に、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、塩化イリジウム酸カリウム等が例示され、また、タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられる。
一方、これらのイリジウム化合物及びタンタル化合物を溶解しうる低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等又はこれらの混合物が挙げられる。
上記溶液中におけるイリジウム化合物とタンタル化合物の割合は、Ir/Taの金属換算モル比で、通常3/97〜30/70、好ましくは5/95〜15/85の範囲内とすることができる。
該溶液によるチタン基体上の前処理された面もしくはチタン基体上の酸化チタン面の塗布は、例えば、吹き付け法、ハケ塗り法、浸漬法等により行うことができ、このようにしてイリジウム化合物及びタンタル化合物の低級アルコール溶液が塗布されたチタン基体は、一般に、約20〜約100℃の範囲内の比較的低温で乾燥させた後、酸化性雰囲気中、通常大気中で焼成する。以上に述べた処理は、被覆量が前記の範囲内に達するまで繰り返して行うことができる。
該焼成は、例えば、電気炉、ガス炉、赤外線炉などの適当な加熱炉中で、通常約450
〜約600℃、好ましくは約450〜約550℃の範囲内の温度に加熱することによって行うことができる。その際の加熱時間は焼成すべき基体の大きさ等に応じて大体5分〜2時間程度とすることができる。この焼成によりイリジウム化合物及びタンタル化合物はそれぞれ酸化イリジウム及び酸化タンタルに変わり、中間酸化物を形成する。
以上のようにしてチタン基体上に耐食性及び電気伝導性を有する中間酸化物層を形成することができ、電極の耐久性を高めることができる。
しかる後、このようにしてチタン基体上に酸化チタン層を介して形成された中間酸化物層上に、ロジウム化合物、イリジウム化合物、タンタル化合物及び白金化合物を含む溶液を塗布し、乾燥した後焼成して、該中間酸化物層上に酸化ロジウム−酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体を析出、担持せしめる。
ここで使用するロジウム化合物、イリジウム化合物、タンタル化合物及び白金化合物としては、以下に述べる条件下で分解してそれぞれ酸化ロジウム、酸化イリジウム、酸化タンタル及び白金に転化しうる化合物が包含され、具体的には、ロジウム化合物としては、例えば、塩化ロジウム、硝酸ロジウム等が挙げられ、特に塩化ロジウムが好適である。また、イリジウム化合物としては、例えば、塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、硝酸イリジウム等が挙げられ、特に塩化イリジウム酸が好適である。さらに、タンタル化合物としては、例えば、塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられ、特にタンタルエトキシドが好適である。白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金等が挙げられ、特に塩化白金酸が好適である。
一方、これらロジウム化合物、イリジウム化合物、タンタル化合物及び白金化合物を溶解して溶液を調製するための溶媒としては、低級アルコールが好適であり、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等又はこれらの混合物が挙げられる。
低級アルコール溶液中におけるロジウム化合物、イリジウム化合物、タンタル化合物及び白金化合物の合計の濃度は、合計金属濃度換算で、一般に20〜200g/L、好ましくは40〜150g/Lの範囲内とすることができる。該金属濃度が20g/Lより低いと、触媒担持効率が悪くなり、また、200g/Lを越えると、触媒が凝集しやすくなり、触媒活性、担持強度、担持量の不均一性等の問題が生ずる可能性がある。
また、ロジウム化合物、イリジウム化合物、タンタル化合物及び白金化合物の相対的使用割合は、金属換算で、ロジウム化合物は一般に2〜35モル%、好ましくは5〜25モル%、イリジウム化合物は一般に30〜80モル%、好ましくは45〜65モル%、タンタル化合物は一般に6〜35モル%、好ましくは10〜18モル%、そして白金化合物は一般に12〜62モル%、好ましくは20〜40モル%の範囲内とすることができる。
チタン基体上の酸化チタン層を介して形成された中間酸化物層面に該溶液が塗布された基体は、必要により、約20〜約150℃の範囲内の温度で乾燥させた後、酸素含有ガス雰囲気中、例えば空気中で焼成される。焼成は、例えば、電気炉、ガス炉、赤外線炉等の適当な加熱炉中で、一般に約450〜約600℃、好ましくは約500〜約550℃の範囲内の温度に加熱することによって行うことができる。加熱時間は、焼成すべき基体の大きさ等に応じて、大体5分〜30分間程度とすることができる。この焼成により、該中間酸化物層の表面に酸化ロジウム−酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体を担持させることができる。1回の担持操作で充分量の酸化ロジウム−酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体を担持することができない場合には、以上に述べた溶液の塗布−(乾燥)−焼成の工程を所望の回数繰り返し行うことができる。
ここで、「酸化ロジウム−酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体」とは、酸化ロジウムと酸化イリジウムと酸化タンタルと白金の4成分が相互作用を及ぼすように混合又は緊密に接触した状態にある組成物をいう。
該中間酸化物層上に担持せしめられる酸化ロジウム−酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体における各成分の割合は、金属換算で、酸化ロジウム2〜35モル%、好ましくは5〜25モル%;酸化イリジウム30〜80モル%好ましくは45〜65モル%;酸化タンタル6〜35モル%、好ましくは10〜18モル%;白金12〜62モル%、好ましくは20〜40モル%の範囲内であることができる。
複合体中の酸化ロジウムの割合が2モル%未満では触媒の消耗にともない塩素発生効率の低下が大きくなり、反対に35モル%を越えると触媒の消耗速度が大きくなる。また、酸化イリジウムの割合が30モル%未満では触媒の消耗にともない塩素発生効率の低下が大きくなり、反対に80モル%を越えると触媒の消耗速度が大きくなる。さらに、酸化タンタルの割合が6モル%未満では触媒の消耗速度が大きくなり、一方35モル%を越えると塩素発生効率が低くなる。さらにまた、白金の割合が12モル%未満では塩素発生効率が低くなり、一方62モル%を越えると触媒の消耗にともない塩素発生効率の低下が大きくなる。
このようにして製造される本発明の電解用電極は、中間酸化物層の存在により被覆物の密着性が良好であり、且つまた、触媒の消耗量が少なく耐久性に優れていて、陽極及び陰極として極性を切替えて使用しても、安定かつ高い塩素発生効率を長期にわたり発揮するという顕著な効果を奏し、例えば、希薄な食塩水の電気分解用の陽極として極めて有用である。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、該実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1〜4、比較例1〜3
JIS2種相当のチタン板素材(t1.0mm×w100mm×l100mm)をアルコールで洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間処理し、120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いで、チタン基体を硫酸水溶液から取りだし、窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。さらに、20℃の0.3重量%フッ化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。水洗後、400℃の大気中で1時間加熱処理して、チタン基体表面に薄い酸化チタン層を形成せしめた。
次いで、イリジウム濃度100g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液とタンタル濃度100g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液を混合して、イリジウム5.9g/L及びタンタル50g/Lを含有する塗布液を調製した後、この溶液をピペットで0.27ml秤量し、それをチタン基体表面に形成せしめた薄い酸化チタン層に塗布した後、室温で30分間乾燥し、さらに、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を1回繰返し、中間酸化物層を形成せしめた。
次いで、ロジウム濃度100g/Lに調整した塩化ロジウムのブタノール溶液とイリジウム濃度100g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液とタンタル濃度100g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液と白金濃度200g/Lに調整した塩化白金酸のブタノール溶液を、Rh−Ir−Ta−Ptの組成比が下記表−1に示すモル%となるようにそれぞれ秤量し、次いで、Rh−Ir−Ta−Ptの金属換算合計量が75g/Lとなるようにブタノールにて希釈し、表−1に示す実施例1〜4及び比較
例1〜3の溶液を作製した。
この溶液をピペットで0.2ml秤量し、それをチタン基体表面に形成せしめた薄い酸化チタン層に塗布した後、室温で30分間乾燥し、さらに、550℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を5回繰返し、該酸化チタン層上に酸化ロジウム−酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体が担持された表−1に示す実施例電極1〜4及び比較例電極1〜3を作製した。
比較例4〜5
JIS2種相当のチタン板素材(t1.0mm×w100mm×l100mm)をアルコールで洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間処理し、120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いで、チタン基体を硫酸水溶液から取りだし、窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。さらに、20℃の0.3重量%フッ化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。
水洗後、ジニトロジアンミン白金を硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/L、pH≒2、50℃に調整した状態の白金めっき浴中にて、15mA/cmで約50秒間めっきを行って、電着量が0.1mg/cmの白金をチタン基体上に析出させた。
このようにして白金を析出させたチタン基体を400℃の大気中で1時間加熱処理した。
次いで、イリジウム濃度100g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液とタンタル濃度100g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液を混合し、イリジウム5.9g/L及びタンタル50g/Lを含有する塗布液を調製した後、この溶液をピペットで0.27ml秤量し、それを白金を析出させたチタン基体上に塗布した後、室温で30分間乾燥し、さらに、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を1回繰返し、中間酸化物層を形成せしめた。
次いで、イリジウム濃度100g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液とタンタル濃度100g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液と白金濃度200g/Lに調整した塩化白金酸のブタノール溶液を、Ir−Ta−Ptの組成比が下記表−1に示すモル%となるようにそれぞれ秤量し、次いで、Ir−Ta−Ptの金属換算合計量が70.5g/Lとなるようにブタノールにて希釈し、表−1に示す比較例4〜5の溶液を作製した。
この溶液をピペットで0.27ml秤量し、それを中間酸化物層に塗布した後、室温で30分間乾燥し、さらに、500℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を11回繰返し、該中間酸化物層上に酸化イリジウム−酸化タンタル−白金複合体が担持された表−1に示す比較例電極4〜5を作製した。
比較例6〜8
JIS2種相当のチタン板素材(t1.0mm×w100mm×l100mm)をアルコールで洗浄し、熱シュウ酸水溶液で前処理した後、水洗した。次いで、イリジウム濃度100g/Lに調整した塩化イリジウム酸のブタノール溶液とタンタル濃度100g/Lに調整したタンタルエトキシドのブタノール溶液と白金濃度200g/Lに調整した塩化白金酸のブタノール溶液を、Ir−Ta−Ptの組成比が表−1に示すモル%となるようにそれぞれ秤量し、次いで、Ir−Ta−Ptの金属換算合計量が75g/Lとなるようにブタノールにて希釈し、表−1に示す比較例6〜8の溶液を作製した。
この溶液をピペットで0.2ml秤量し、それを上記前処理したチタン基体上に塗布した後、室温で30分間乾燥し、さらに、550℃の大気中で10分間焼成した。この塗布−乾燥−焼成工程を5回繰返して比較例電極6〜8を作製した。
このようにして得られた電極を25℃の1重量%の塩化ナトリウム水溶液中にて、5A/dmで60秒間電解した後、−5A/dmで60秒間電解する操作を交互に繰返す切替え電解を100時間行ない、被覆物を加速的に消耗させた。電解前後の塩素発生効率を下記表−1に示す。なお、塩素発生効率は0.1重量%塩化ナトリウム水溶液中での測定値である。
比較例電極3〜6では、電解試験前の塩素発生効率は24〜34%であるが、電解試験後の塩素発生効率は10〜12%と低下しているのに対し、本発明に従う実施例電極1〜4では、電解試験前の塩素発生効率が41〜45%と高く、電解試験後でも34〜38%と高い塩素発生効率を維持している。また、電解試験による被覆物の消耗量を蛍光X線膜厚計にて測定した結果は、下記表−1に示すとおりであり、比較例電極3〜6の被覆物の消耗量は35〜46%であるのに対し、実施例電極1〜4の被覆物の消耗量は20〜26%と少なかった。
引き続き、実施例電極1〜4及び比較例電極1〜2を25℃の1重量%の塩化ナトリウム水溶液中にて、5A/dmで60秒間電解した後−5A/dmで60秒間電解する操作を交互に100時間繰返して行ない、被覆物を加速的に消耗させた。電解前後の塩素発生効率を下記表−2に示す。電極の消耗量は実施例、比較例共に40%以上と大きいが、比較例電極1〜2の電解試験後の塩素発生効率は16〜17%と初期の半分以下に低下しているのに対し、実施例電極1〜4は電解試験後でも28〜31%と高い塩素発生効率を維持している。
以上のとおり、本発明の電極は、陽極及び陰極として極性切替えて使用することにより被覆物が大きく消耗した状態であっても、高い塩素発生効率を維持することができるという優れた特性を有している。
Figure 0004884333
Figure 0004884333

Claims (1)

  1. (a) チタン又はチタン合金よりなる電極基体と、
    (b) 該電極基体上に設けられた酸化チタン層と、
    (c) 該酸化チタン層上に設けられた、金属換算で、酸化イリジウム3〜30モル%と
    酸化タンタル70〜97モル%の複合体からなる中間酸化物層と
    (d) 該中間酸化物層上に設けられた、金属換算で、酸化ロジウム2〜35モル%、酸
    化イリジウム30〜80モル%、酸化タンタル6〜35モル%及び白金12〜62
    モル%の複合体、
    とからなることを特徴とする電解用電極。
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