JP7330490B2 - オゾン生成用電極 - Google Patents
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特許文献2に開示の電解用電極では、酸化鉛層と、その表面に酸化スズ及び酸化アンチモンを含有する積層構造からなる触媒層とすることで、酸化鉛の消耗を抑制して電極の耐久性を向上させる機能が開示されているが、陽極電流に対するオゾン生成効率を高めるための作用については開示されていない。
特許文献4に開示のアンチモンとニッケルを添加した酸化スズ電極では、ニッケル添加によってオゾン生成効率が高まることが開示されているが、オゾン生成効率を高めるための作用については開示されていない。
ことを特徴とするオゾン生成用電極である。
(a)酸化スズ60~97mol%と、
(b)酸化アンチモン1~10mol%と、
(c)元素群Aとしてニッケル、コバルト、セリウム、鉄の少なくとも一種の元素を0.5~5mol%と、
(d)元素群Bとしてビスマス、亜鉛、インジウムの少なくとも一種の元素を0.5~5mol%、
とからなることを特徴とするオゾン生成用電極であってもよい。また、前記電極基体が、チタンまたはチタン合金であってもよい。
本発明のオゾン生成用電極は、金属よりなる電極基体と、電極基体表面上の中間層と、前記中間層上の触媒層からなるオゾン生成用電極であって、前記触媒層は、スズの酸化物と、ニッケル、コバルト、セリウム、及び鉄の中から選択される1種又は2種以上の活性元素と、前記活性元素と金属間化合物を形成しうる融点が420℃以下の安定化元素を含むことを特徴とする。
本発明の電極において、使用される環境によっては強酸性や酸化性雰囲気に曝されることもあるので、電極基体の材質としては、チタン、ジルコニウム、ニオブ、鉄、タンタル、バナジウム及びそれらの金属を主成分とする合金からなる金属等、その表面に不動態層を形成して防食性を高める金属が好ましく挙げられ、これらの中でも特にチタン又はチタン合金が好ましく挙げられる。チタン合金としては、チタンを主体とする耐食性のある導電性の合金が使用され、例えばTi-Ta-Nb、Ti-Pd、Ti-Zr、Ti-W、Ti-Al等の組合せからなる、通常電極材料として使用されているTi基合金が挙げられる。これらの電極材料は板状、有孔板状、棒状、網板状等の所望形状に加工して電極基体として用いることができる。
本発明に用いる中間層としては、中間層に貴金属を含むものを用いることができる。例えば、貴金属又はその合金からなる耐食中間層、又は貴金属酸化物等を挙げることができる。貴金属としては、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、金、銀、パラジウム、白金が挙げられる。貴金属としては、白金、イリジウム、ロジウムが好ましい。これらの中でも特に白金が好ましい。合金としては、前記貴金属を二種類以上混合したものが挙げられる。貴金属酸化物としては酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化パラジウムなどが挙げられ、その他耐食性材料として公知のタンタル、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン等が挙げられる。
被覆率(%)=(写真平面での白金被覆面積)/(写真平面でのチタン基体表面積)×100
本発明の触媒層は、少なくともスズの酸化物と、ニッケル、コバルト、セリウム、及び鉄の中から選択される1種又は2種以上の活性元素と、前記活性元素と金属間化合物を形成しうる融点が420℃以下の安定化元素からなることを特徴としている。さらに、導電性を高めるためのドーパントを含んでいてもよい。触媒層の厚さは、特に限定されるものではないが、0.05μm~100μmであることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましい。
スズ酸化物は、酸化物としては比較的高い導電性を有しながら、通常の酸素発生電極より高い酸素過電圧を有する電極触媒材料であるので、水分子の陽極反応過程において、オゾン分子の吸着中間体と酸素分子の吸着中間体が競争的に電極触媒表面に形成される。しかしながら、スズ酸化物を単独で触媒層として使用するだけでは、酸素分子の吸着中間体の形成から酸素発生する反応が極めて優勢となる。したがって、スズ酸化物にオゾン分子形成を促進させる活性元素を含有させた触媒層とすることで、オゾン発生効率を十分に高めることが有効となる。
本発明の活性元素は、スズ酸化物のオゾン生成活性を高めるための、いわば助触媒的作用を有する。メカニズムは明らかでないが、活性元素が、近接するスズ酸化物の電子密度に影響を及ぼすことでスズ酸化物に特定の反応選択性が付与されること(リガンド効果)、あるいは活性元素自身が前述したオゾン分子の吸着中間体を形成しやすい活性サイトとして作用することにより、オゾン生成活性が高められていると考えられる。オゾン生成活性を高めることに寄与する元素としては、ニッケル、コバルト、セリウム、及び鉄の中から選択される1種もしくは2種以上であることが好ましい。
本発明の安定化元素は、前述の活性元素のオゾン生成活性をさらに高める作用を有する。
活性元素は触媒層形成時に凝集することによって活性増強効果が偏在してしまいオゾン生成の活性サイトとして有効に作用しなくなる問題が生じうる。そこで、活性元素を触媒層中へ微細分散化させるとともに、酸化物や水酸化物への変化を防止する効果が期待できる安定化元素を導入することで、これらの問題が解消されて、従来よりも高い効率でオゾンを電解生成することが可能となる。活性元素と相乗作用を示す安定化元素としては、融点が420℃以下と比較的低く、かつ活性元素と金属間化合物を形成しうる金属種であることが好ましい。触媒層形成時に、安定化元素が活性元素に拡散して部分的にでも金属間化合物を形成することで、活性元素は触媒層形成時に凝集することによって活性増強効果が偏在することによるオゾン生成活性の低下を抑制する効果を発揮する。活性元素へ十分に拡散するには、バルク状態の融点が420℃以下である必要がある。融点が420℃超だと、触媒層形成時に活性元素相に十分に拡散しない恐れがある。具体的に、上記のような効果を発揮する安定化元素としては、ビスマス(融点:271℃)、亜鉛(融点:419℃)、及びインジウム(融点:157℃)から選択される1種又は2種以上が例示できるが、安定化元素は、前記効果を発揮するものであれば上記例示に限定されるものではない。
本発明の触媒層は、導電性を高めるためのドーパントを含ませることによって、電極全体の電気抵抗を小さくし、電解電圧を下降させると共に、大電流を流せるようにする事によって、電力使用量の低減を図りつつ、オゾン発生効率を高まることも可能である。具体的に、導電性を高めることに寄与する元素としては、アンチモン、ストロンチウムの中から選択される1種もしくは2種以上が例示できるが、ドーパントは、スズ酸化物の導電性に関わるキャリヤ濃度や移動度を高めるためのものであれば上記例示に限定されるものではない。
本発明の触媒層は、上記の通り、少なくともスズの酸化物と、ニッケル、コバルト、セリウム、及び鉄の中から選択される1種又は2種以上の活性元素と、前記活性元素と金属間化合物を形成しうる融点が420℃以下の安定化元素からなる。さらに、導電性を高めるためのドーパントを含んでいてもよい。
活性元素の含有量は、0.1~20mol%が好ましく、0.5~5mol%がより好ましい。活性元素の割合が0.1mol%未満であると、オゾン生成活性を十分に高めることができなくなり、オゾン発生効率が著しく低下する。一方、20mol%を超えると、活性元素の凝集が進みすぎて微細分散化と化合状態の安定化が困難となり、場合によっては水溶液中に活性元素が溶出していく恐れが生じる。
安定化元素の含有量は、0.2~20mol%が好ましく、0.5~5mol%がより好ましい。安定化元素の割合が0.2mol%未満であると、活性元素に対して十分に拡散しきらずに、活性元素の微細分散化と化合状態の安定化が困難になる。一方、20mol%を超えると、未反応の安定化元素の増加によって実効的な電極表面積を低下させたり、場合によっては水溶液中に安定化元素が溶出したりする恐れが生じる。
ドーパントの含有量は、0.5~20mol%が好ましく、1~10mol%がより好ましい。ドーパントの割合が0.5mol%未満、あるいは20mol%を超えると、導電性に関わるキャリヤ濃度や移動度の調整に適した濃度範囲を逸脱してしまって、電極全体の電気抵抗を下げる効果が十分に発揮されなくなる。
ただし、これら含有モル比率は、スズの酸化物、活性元素、安定化元素、及びドーパントの総量に対する比率とする。
本発明のオゾン生成用電極の製造方法において、触媒層を形成する方法としては、気相中におけるスパッタ法、イオンプレーティング法等の方法のほか、液相中におけるめっき法によってもよく、塗布液を用いて成膜後、熱分解法によっても良い。特に、熱分解法と電気めっき法が好ましい。
本発明のオゾン生成用電極の用途としては、水電解により生成したオゾンの強力な酸化作用を利用する用途が主に挙げられる。金属電極基体と、該金属基体表面上の中間層と、該中間層上にスズの酸化物と、活性元素と、安定化元素からなる触媒層を有する電極を用いることで、スズの酸化物に活性元素のみを付与した触媒層を有する電極を用いる場合よりも、オゾン発生効率を大きく向上して、高濃度のオゾンを含有したオゾン水を簡便に製造することが可能となる。製造したオゾン水は、強力な酸化作用によって殺菌、消臭、廃棄汚水の浄化、半導体材料の洗浄等に利用することができる。さらに、発生したオゾンは短時間で無害化するので、薬剤を投入する方法と比較して低環境負荷の処理とすることができる。
金属基体としてチタン板、中間層として白金、触媒層としてスズ酸化物、活性元素であるニッケル、安定化元素であるインジウム、ドーパントとしてアンチモンからなる電極を製造した。
(1)金属基体の調製
チタンを基体として、JIS1種チタン板素材(t0.5mm×100mm×100mm)をアセトンに浸漬させ10分間超音波洗浄して脱脂した後、20℃の8重量%弗化水素酸水溶液中で2分間処理し、次いで、120℃の60重量%硫酸水溶液中で3分間処理した。次いでチタン基体を硫酸水溶液から取りだし、窒素雰囲気中で冷水を噴霧し急冷した。更に20℃の0.3重量%弗化水素酸水溶液中に2分間浸漬した後水洗した。
前記チタン基体上に、ジニトロジアンミン白金を硫酸溶液に溶解して白金含有量5g/L、pH≒2、50℃に調整した状態の白金めっき浴中で、30mA/cm2で約6分間のめっきを行って、電着量が1.7mg/cm2の多孔性白金被覆層(厚み0.5μm程度)をチタン基体上に形成した。
触媒層形成用塗布液として、エタノールに塩化スズ(IV)五水和物288g/L、塩化ニッケル(II)六水和物2.1g/L、塩化インジウム(III)四水和物4.9g/L、塩化アンチモン(III)12.3g/Lを溶解した溶液を作製した。
前記白金被覆層を形成したチタン基体上に、前記触媒層形成用塗布液を刷毛にて塗布後、60℃10分乾燥し、さらに550℃の大気中で10分間焼成した。この塗布・乾燥・焼成を10回繰り返すことで、実施例1の電極を作製した。
金属基体としてチタン板、中間層として白金、触媒層としてスズ酸化物、活性元素である鉄、安定化元素である亜鉛、ドーパントとしてアンチモンからなる電極を製造した。
(1)金属基体の調製
実施例1と同様にして、チタン基体を得た。
実施例1と同様にして、チタン基体上に白金被覆層を形成した。
塩化ニッケル(II)六水和物の代わりに塩化鉄(III)六水和物2.4g/L、塩化インジウム(III)四水和物の代わりに塩化亜鉛(II)1.2g/Lとして、塩化アンチモン(III)を2.5g/L添加した以外は実施例1と同様にして、実施例2の電極を作製した。
金属基体としてチタン板、中間層として白金、触媒層としてスズ酸化物、活性元素であるセリウム、安定化元素であるビスマス、ドーパントとしてアンチモンからなる電極を製造した。
(1)金属基体の調製
実施例1と同様にして、チタン基体を得た。
実施例1と同様にして、チタン基体上に白金被覆層を形成した。
塩化ニッケル(II)六水和物の代わりに塩化セリウム(III)七水和物3.3g/L、塩化インジウム(III)四水和物の代わりに塩化ビスマス(III)2.8g/Lとした以外は実施例1と同様にして、実施例3の電極を作製した。
金属基体としてチタン板、中間層として白金、触媒層としてスズ酸化物、活性元素であるコバルト、安定化元素である亜鉛、ドーパントとしてアンチモンからなる電極を製造した。
(1)金属基体の調製
実施例1と同様にして、チタン基体を得た。
実施例1と同様にして、チタン基体上に白金被覆層を形成した。
塩化ニッケル(II)六水和物の代わりに塩化コバルト(II)六水和物2.1g/L、塩化インジウム(III)四水和物の代わりに塩化亜鉛(II)1.2g/Lとして、塩化アンチモン(III)を2.5g/L添加した以外は実施例1と同様にして、実施例4の電極を作製した。
塩化ニッケル(II)六水和物、塩化インジウム(III)四水和物、塩化アンチモン(III)を使用しない以外は実施例1と同様にして電極を製造した。
塩化ニッケル(II)六水和物、塩化インジウム(III)四水和物を使用しない以外は実施例1と同様にして電極を製造した。
塩化インジウム(III)四水和物を使用しない以外は実施例1と同様にして電極を製造した。
<電極分析方法>
成分分析は、主に蛍光X線分析装置を用いて元素含有量の評価を行った。必要に応じて、電極の触媒層を削り取った試験片の誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP分析)も行って、定量分析した。補足評価として、エネルギー分散型X線分光装置(EDX)、X線光電子分光分析装置(XPS)、及びX線源としてCuKαを用いたX線回折分析装置(XRD)による評価を行い、元素の分布と化合状態を評価した。また、電極構造の観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)により行った。
作製した電極(電解面積8cm2)を陽極として電解装置(セル)に設置した。電解装置は、処理槽と、陽極(アノード)と、陰極(カソード)、これら電極に直流電流を印加する電源とから構成される。そして、これら電極間に位置して、処理槽内の陽極の存する一方の領域と陰極の存する他方の領域とに区画する陽イオン交換膜(隔膜:デュポン社製Nafion(商品名))が設けられる。また、この処理槽内には、電解液(電解質溶液)として0.5M H2SO4が貯溜される。陽極領域の電解液量は150ml、陰極領域の電解液量は150mlとした。そして、電源により1600mA、電流密度約200mA/cm2の定電流にて13.5秒電解した。また、溶液の温度は常温とした。得られた陽極水のオゾン量をヨウ素法により求め、オゾン発生効率を求めた。
表1に示されるように、実施例1~4では、オゾン発生効率が全て11.5%以上であり、オゾン発生用として良好な電極であると評価できる。一方、比較例1~3では、安定化元素が添加されていないため、活性元素の微細分散化と化合状態安定化の作用が十分に発揮されず、良好なオゾン発生効率を示さなかった。
このように、本発明の電極を用いることで、オゾン発生効率を大きく向上させることが可能であることが確認された。
Claims (1)
- 金属よりなる電極基体と、
前記電極基体表面上の中間層と、
前記中間層上の触媒層からなるオゾン生成用電極であって、
前記触媒層は、スズの酸化物と、ニッケル、コバルト、セリウム、及び鉄の中から選択される1種又は2種以上の活性元素と、前記活性元素と金属間化合物を形成しうる融点が420℃以下の安定化元素を含み、
前記安定化元素が、亜鉛であり、
前記触媒層が、導電性を高めるためのドーパントを含み、
前記ドーパントが、アンチモンであることを特徴とするオゾン生成用電極。
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