JP4975271B2 - 電解的水処理電極 - Google Patents
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Description
従来有機CODに対しては生物化学処理が主に行われてきたが、場所と時間を取るため十分に大きな処理設備を必要とするが、不十分になるケースが多かった。そのため、薬液と前記生物化学処理の組み合わせ、あるいは電解処理や紫外線処理等と前記生物化学処理の組み合わせなどにより不十分な処理設備に対する対策が採られてきた。
紫外線処理は大規模な処理設備と液の濁度、着色によって大きな制限を受けるためにその用途は使用条件が限られるという点から電解処理が自然に脚光を浴びてきている。
この電解処理には種々の形式が知られているが、その作用としては陽極酸化処理による有機物の分解、CODの減少、あるいは着色物質の分解による脱色などが通常行われている。また最近ではラジカル発生並びにラジカルの強い酸化作用を利用した有機物分解処理等も行われるようになってきている。
また古くから使用されている白金電極はその過電圧が高く、水処理として使用されているが、白金は高価で寿命が比較的短いため、最近ではその使用が減少傾向にある。
また万能電極として導電性ダイアモンド電極が提案されている。この電極は極めて強い酸化作用と共に陽極としても安定に使えるという特徴があるために、多くの用途に展開されることが予想されている。しかし、現状では基材がシリコンとニオブに限定されていること、CVD法で作製されるために生産性が悪く、また高価になるためにその使用は限定的であるという問題がある。また、ダイアモンドを粉末として基材上に被覆する技術も提案されているが、実用化は今後の課題であると考えられる(特許文献3及び特許文献4)。
本発明の水処理用電極は、酸化タンタル50〜95モル%、残部が白金と金属イリジウムからなる触媒被覆層を含んでなる触媒被覆層を含む。白金は酸素過電圧が高くかつ酸化作用が大きいため、更にイリジウムは酸素発生用電極として極めて優れた耐久性を有するため、本発明で使用する。
白金やイリジウム等の白金族金属はそれ自体は電極物質として極めて活性であるので、水溶液中で陽極として使用すると酸素発生が主体となり、被処理水中に含まれるCOD成分や有機物の分解には必ずしも有効には働かない。一方酸化タンタルは、電極としての活性はないが、電極の安定化と電極物質の選択反応性に有効に働き、いわば助触媒的作用を有する。
このような機能を有する白金及び金属イリジウムと酸化タンタルと組み合わせることにより、次の理由で被処理水の電解的処理が効率良く行えると考えられる。つまり白金及び金属イリジウムは酸化タンタルの安定化作用によって電解によっても消耗が少なくなると共に、実質的な電極触媒である白金属族金属に掛かる過電圧が大きくなり、その電位が酸素又は水素発生過電圧より、有機物を分解する電位に近づく事により有効に有機物を分解し、あるいはCODの低下を行うことが出来るようになる。
50モル%未満であると、酸素発生の効率が上がってしまい目的とする被処理水処理の効率が下がる可能性が大きくなってしまう。
触媒被覆層の酸化タンタル以外の成分は白金及び金属イリジウムであるが、この他に、白金族金属以外の金属や不純物を含んでいても良く、その量は触媒被覆層全体に対して10モル%を上限とする。
このような構成から成る触媒被覆層を、基材上に担持して水処理用電極とする。
前記基材は、加工が容易であり、しかも陽極として使用した場合にそれ自体極めて優れた耐食性を示し、また陰極として使用した場合にも金属として腐食が起こらない金属や金属合金を使用して形成することが望ましく、本発明では前記性能を有する弁金属を基材材料とする。弁金属には、チタン、タンタル及びニオブなどが含まれる。この弁金属基材は自由な加工が可能であると共に、陽極電位が比較的高く、十分な酸化性を有し、陰極として還元にも十分に耐えられるため、水処理用に特に有効な電極用基材である。
弁金属基材上に触媒被覆層を形成するためには、触媒被覆層を構成する触媒物質を含む溶液を塗布して熱分解で析出させても良いが、タンタル成分と白金/イリジウムを分けて交互に焼き付けることでも良い。前者の熱分解ではイリジウムが酸化イリジウムとして析出する恐れがあり、これを回避してイリジウムを金属状態で析出させるためには後者の交互焼付けが特に有効である。この場合、最表面は酸化タンタルとして、必要に応じて再加熱などによりある程度の分散処理を行うと良い。
しかし通常の排水処理電解では陰極側のpHがアルカリ側に偏りやすく、陰極表面並びに近傍に沈殿物の生成が起こることが多い。そしてこの沈殿物を除去するために定時的に又は不定期に通電方向を変えている。通電方向を変えるためには電極に担持された電極物質(触媒被覆層)も電流方向の逆転に耐性のあることが必要であり、その点白金は金属として問題なく使えることが明らかになっている。またイリジウムは金属状態であれば全く問題なく、部分的に酸化物であっても前述した通り金属と金属酸化物のモル比が100:0〜70:30の範囲であれば特に問題は生じない。更に酸化タンタルは安定材であり、それ自体は正/負いずれでも安定に存在できる。
これにより強い電解酸化作用及び良好な耐腐食性が維持されたまま、有機物やCODの高い廃水の電解水処理に適した電極が提供できる。又この電極は、陰極としても安定に機能する。
前記電極を陽極、陰極の両方に使って定期的又は不定期に電流方向を変えながら電解処理を安定的に行うと、析出物を生じさせずに、特に陽極酸化分解処理が行える。また該電極を陽極及び陰極として組み合わせ、両電極に交差するように被処理水を流すことによってより有効に廃水の処理が行える。特に有機廃水処理やバラスト水の処理に有効である。
厚さ1mmのロールがけをしたチタン製エクスパンドメッシュを弁金属基材とし、アルミナサンドを用いて表面をブラスト処理によって粗面化し、これを85℃25%硫酸中にて1時間酸洗処理を行い、次のようにして触媒被覆層を形成した。
タンタルブトキシドのブタノール溶液に、塩化イリジウムのブタノール溶液、並びに塩化白金酸のブタノール溶液を所定割合(タンタル:白金:イリジウム=7:2:1(モル分率))で溶解し、それをブタノールにて希釈して塗布液を作製した。液濃度は全金属合計で0.2モル/lであった。
前記水処理用電極を陽極及び陰極として使用して電気分解の試験を行った。本実施例及び以下の実施例及び比較例において、電解電圧が開始時点より10V上昇した時点で、電極の寿命と判断してその寿命を計測した。寿命は陰極時間+陽極時間で表した。
電解開始後10分ほどで僅かではあるが生臭い臭気が出てきた。この臭気はオゾンによるものであり、陽極としての酸化作用も通常の金属電極に比較してかなり高いことが分かった。
1000時間の連続運転でも電圧の上昇はなく、安定して電解出来ることがわかった。
また電解後、電解液にペルオキソニ硫酸の生成が認められ、強い酸化作用のあることが分かった。
通常の酸素発生用の金属電極である、酸化イリジウム:酸化タンタル=70:30の被覆を、実施例1と同様の条件で実施例1と同じチタン製エクスパンドメッシュを弁金属基材表面に形成した電極を、陽極及び陰極として使用し、実施例1と同様に電解を行った。
初期電圧は実施例1より0.5V低かったが、電解時には臭気の発生はなく、また電解寿命は600から650時間であった。更にペルオキソ二流酸の生成は認められなかった。
実施例1と同じ基材を用いて、酸化タンタル層と白金+イリジウム層を交互に積層して電極を作製した。
まず実施例1と同じ条件で弁金属基材を準備した。
五塩化タンタルを35%塩酸に溶解し、加熱して塩素イオンを塩酸として揮散させ、Ta(OH)xC1(5−x)水溶液を作製した。これを10%塩酸にて希釈してタンタル塗布液とした。次いで塩化白金酸と塩化イリジウム酸を白金:イリジウム=90:10(モル比)となるようにイソプロピルアルコールに溶解して白金−イリジウム塗布液を得た。
つまり、まずタンタル液を弁金属基材に塗布し、60℃で15分間乾燥後、530℃で10分間熱分解処理を行った。この表面に上記白金−イリジウム液を塗布し、室温で乾燥後、515℃で15分間熱分解を行った。更にこの表面にタンタル液を塗布し、室温で乾燥後、515℃で15分間熱分解を行った。この後タンタルと白金−イリジウムの被覆を交互に繰り返して電極試料を作製した(タンタル:白金:イリジウム=70:27:3(モル比))。
陽極、陰極両方ともここで作製した電極を、アゾ染料によって着色した染料廃水中に入れ、20分ごとに交互に陽/陰を入れ替えて電解を行ったところ、30分ほどで脱色し、透明になった。
厚さ1mm、開口率50%のロール掛けしたチタン製エクスパンドメッシュを蓚酸で酸洗し、弁金属基材とした。
塗布液1(導電性酸化タンタル含有下地層用)として塩化タンタルに四塩化チタンを1:1(重量比)で混合し10%塩酸で希釈したものを準備した。上層の電極物質(触媒被覆層)用としては実施例1と同様にしてタンタル:白金:イリジウム=80:15:5(モル比)からなる塗布液2を準備した。
これにより得られた電極を使用して実施例1と同じ電解液条件で電解試験を行ったところ、オゾン臭は実施例1より強く、オゾンの発生がより盛んであることがわかった。また電解寿命試験では電流密度を20A/dm2とした場合に1000時間以上安定に電解できた。
実施例3で作製した水処理用電極を2枚縦方向に平行に並べるようにして組み込んだ電解槽を用意した。電極の並びに対して直角方向に被処理水が流れるようにパイプを取り付け、食塩を10g/l添加した着色廃水を被処理水として流しながら電解を行った。液の方向は当初陽極側から陰極側に流すようにした。
電流密度10A/dm2で電解したところ、電解槽出口では被処理水の着色が消え、また被処理水の残留塩素がほぼゼロであること、更に電解槽から出てくる処理済み水中の残留塩素はほぼゼロであった。またTHM(トリハロメタン)の生成の存在も見られなかった。
実施例4の電解槽を使用し、電極の並びに対して平行に被処理水が流れるようにパイプを取り付けたこと以外は実施例4と同じ条件で電解を行った。
その結果、被処理水は脱色されたが、残留塩素が約0.5ppm残留し、更にトレース程度ではあるがTHMの存在が認められた。
実施例4では、陽極では塩素を発生すると共に染料を分解、脱色を行い、陽極で発生した塩素は陰極まですぐに到達する為、液中の有機物との反応がほとんどなしに陰極に到達して陰極還元により塩素を分解したことによると考えられる。
他方比較例2では、陽極では塩素発生と共に廃水の脱色が行われるが、塩素の一部が陰極に達する前に液中の有機物と反応してTHMが生成すること、更に塩素が、陰極生成物である、苛性アルカリと反応して次亜塩素酸塩を生成し残留塩素として放出されたことによると考えられる。
Claims (1)
- 弁金属基材、及び当該弁金属基材の表面に形成された、酸化タンタル50〜95モル%、残部が白金と金属イリジウムからなる触媒被覆層を、タンタル塗布液と、白金塩とイリジウム塩のアルコール溶液を使用し、酸化タンタル層と、白金と金属イリジウムからなる層を交互に熱分解を繰り返して触媒被覆層を形成することを特徴とする電解的水処理用電極。
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