JP3653296B2 - 電解用電極及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電解用電極及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、耐久性に優れた、特に陽極に酸素発生を伴う金属の表面処理、金属箔製造、回収等の電解における陽極として有用な電解用電極及びその製造方法に関する。
【0002】
従来、チタン又はチタン合金よりなる基体上に、白金族金属や白金族金属酸化物及びバルブ金属酸化物を被覆した電極が多くの電解工業の分野において使用されている。しかし、高電流密度下で運転される金属の高速めっきや金属箔製造の分野では、使用中に基体表面層に導電性の無い酸化物層が形成され、残存する電極触媒物質の量が十分であっても電極としての機能がなくなってしまうという不都合がある。このような導電性の無い酸化物の形成は、触媒層で発生する酸素や電解液の浸透により基体表面が化学的腐食を起こすためであると考えられる。
【0003】
この問題点を解決するため、電極基体と触媒層との間に新たな層(以下、中間層とする)を設け、電極基体を保護する方法がとられている。この中間層に対しては、
(1)十分な耐食性が有ること;(2)十分な電気伝導性があること;(3)電極基体との密着結合性が良好であること;(4)触媒層との密着結合性が良好であること;(5)クラックの無い層であること;(6)電気化学的な活性が少ないこと;(7)製造コストが安いこと等の特性を有していることが要求される。このような条件を満たすものとして、従来、互に原子価の異なる2種以上のバルブ金属の酸化物からなる中間層を形成する方法、バルブ金属酸化物と白金族金属又は電気伝導性のある白金族金属酸化物からなる中間層を形成する方法、バルブ金属又はその合金を溶射法やイオンプレーテイング等によって形成する方法等が提案されている。
【0004】
その具体例として、特開昭59−38394号公報には、基体上に4価の原子価を有するチタン及びスズから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物と5価の原子価を有するタンタル及びニオブから選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物との混合酸化物からなる中間層を設け、その上に電極活性物質を被覆した電極が提案されている。しかし、上記中間層は酸素発生活性能は無いものの電気伝導性が十分ではないという問題がある。
【0005】
また、特開昭57−192281号公報には、チタン又はチタン合金を基材とし、且つ金属酸化物よりなる電極被覆を有する電極において、その中間層としてタンタル及びニオブの導電性酸化物層を設けた酸素発生を伴う電解用電極が提案されているが、本中間層は耐食性が良好であるものの電気伝導性が十分ではない。特開平1−301876号公報には、導電性基体上にイリジウム40〜90モル%、白金0.1〜30モル%及びタンタル50〜10モル%を含有する、酸化イリジウム、白金金属及び酸化タンタルからなる下地層を介して、酸化イリジウム層又は多くとも50モル%のタンタルを含有する酸化イリジウム−酸化タンタル層を上地層として設けた酸素発生用電極が提案されている。この電極の下地層は電気伝導性が良好であるものの、耐食性に劣りまた酸素発生活性能を有するためにやがては基体の不働態化が起こるという問題がある。
【0006】
さらに、特開平5−287572号公報には、導電性基体上に、金属換算でイリジウム8.4〜14モル%及びタンタル86〜91.6モル%を含有する酸化イリジウムと酸化タンタルとの下地層を介して、金属換算でイリジウム80〜99.9モル%及びタンタル0.1〜20モル%を含有する酸化イリジウムと酸化タンタルとの上地層を設けた酸素発生用電極が提案されている。この電極の下地層は或る程度の耐食性と電気伝導性を有しているものの、基体への電解液及び触媒層からの酸素の浸透は避けられず、やがては基体の不働態化が起こるという問題を有しており、前記の課題の根本的な解決には至っていない。
【0007】
また、特開平5−171483号公報には、チタン又はその合金よりなる導電性基体上に、金属タンタル及び/又はその合金の粉末を減圧下の非酸化性雰囲気中でプラズマ溶射を行うことにより金属タンタル及び/又はその合金を主成分とする中間層を設け、該中間層上にタンタル化合物及びイリジウム化合物を含む溶液を塗布し、酸化性雰囲気中で360〜550℃に加熱することにより酸化イリジウムを20重量%以上含み残部が酸化タンタルよりなる電極活性層を設けた酸素発生陽極の製法が開示されている。上記の中間層は、溶射表面層より凸凹のある多孔質層となることから電極活性層との密着結合性が優れているものの、特公平5−57159公報に記載されているように、該多孔質層には通常3〜25%程度の気孔が存在するため、導電性基体への電解液の浸透を完全に制御することは難しく、またタンタル及びその合金も触媒層で発生する酸素や電解液の接触により化学的腐食を起こし、やがては該中間層も不働態化が起こるという問題があり、前記の課題を根本的に解決するには至っていない。
【0008】
さらに、特開平2−282491公報には、バブル金属又はその合金よりなる導電性金属基体上に電極活性物質を被覆した電極において、該基体と電極活性物質層との間に、金属タンタル及びその合金を主成分とする薄膜中間層を設けた酸素発生陽極が開示されている。この薄膜中間層は、有機タンタル化合物又はタンタル塩化物を含む溶液を塗布し非酸化性雰囲気中で加熱することにより形成されるものであるが、この中間被覆層も導電性基体への電解液の浸透が起こり、導電性基体の不働態化が起こる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーテイング法、イオン注入法又は気相メッキ法により中間層を形成する方法も提案されているが、これらの方法により形成される薄膜中間層は、導電性基体への電解液の浸透を抑制する効果が有るものの、電極活性物質被覆層との密着性が十分ではなく、また設備が大型化しても生産性が悪く工業的利用においても難点がある。
【0009】
本発明の目的は、従来の電解用電極がもつ上記の如き問題を解決し、高電流密度下で運転される金属の高速めっきや金属箔製造用の陽極として用いても、充分に耐久性のある電解用電極及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、耐久性のある電解用電極、殊に、陽極に酸素発生を伴う電解において陽極として長期間にわたって使用可能な電極を開発すべく種々検討を重ねた結果、チタン金属とタンタル金属の合金層がチタン単体より耐食性に優れていることを発見し、そのチタンとタンタルの合金層上に該合金層を保護するため耐食性ある第1の中間層を設け、次いで該第1の中間層上に耐食性と導電性の良好な第2の中間層を形成し、更に該第2の中間層上に酸素発生活性物質である外層を設けることにより、耐久性に極めて優れた電解用電極が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
かくして本発明は、チタンとタンタルとの合金からなる表面層を有するチタン基体の該表面層上に、
(a) 3 〜 7 mol%の酸化イリジウムと93〜97mol%の酸化タンタルからなる第1の中間層、
(b) 10〜30mol%の酸化イリジウムと70〜90mol%の酸化タンタルからなる第2の中間層、及び
(c) 60〜98mol%の酸化イリジウムと2〜40mol%の酸化タンタルからなる外層
が順次設けられていることを特徴とする電解用電極を提供するものである。
【0012】
本発明はまた、チタンとタンタルとの合金からなる表面層を有するチタン基体の該表面層上に、
(a) イリジウム化合物とタンタル化合物をIr/Taの金属換算モル比が3/97〜7/93となる割合で含有する溶液を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理することにより、3 〜 7 mol%の酸化イリジウムと93〜97mol%の酸化タンタルからなる第1の中間層を形成せしめ、
(b) 該第1の中間層上に、イリジウム化合物とタンタル化合物をIr/Taの金属換算モル比が1/9 〜 3/7となる割合で含有する溶液を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理することにより、10 〜 30 mol%の酸化イリジウムと70〜90mol%の酸化タンタルからなる第2の中間層を形成せしめ、次いで
(c) 該第2の中間層上に、イリジウム化合物とタンタル化合物をIr/Taの金属換算モル比が60/40 〜 98/2となる割合で含有する溶液を塗布した後、酸化性雰囲気中で熱処理することにより、60 〜 98mol%の酸化イリジウムと2 〜 40mol%の酸化タンタルからなる外層を形成せしめる
ことを特徴とする前記の電解用電極の製造方法を提供するものである。
【0013】
以下に、本発明の電極及びその製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0014】
本発明の電極においては、基体としてチタンが使用される。使用するチタン基体は通常行われているように、予め前処理することが望ましい。そのような前処理の好適具体例としては以下に述べるものが挙げられる。先ず、チタン基体の表面を常法に従い、例えばアルコール等による洗浄及び/又はアルカリ溶液中での電解により脱脂した後、フッ化水素濃度が1〜20重量%のフッ化水素酸又はフッ化水素酸と硝酸、硫酸等の他の酸との混酸で処理することにより、チタン基体表面の酸化膜を除去するとともにチタン結晶粒界単位の粗面化を行う。該酸処理は、チタン基体の表面状態に応じて常温ないし約40℃の温度において数分間ないし十数分間行うことができる。このように酸処理されたチタン基体表面を水洗し、乾燥する。
【0015】
本発明の1つの特徴は、チタン基体の表面を改質処理して、チタン基体にチタンとタンタルの合金からなる耐食性に優れた表面層を形成する点にある。
【0016】
チタンとタンタルの合金からなる表面層の形成は、例えば、チタン基体を陰極とし、且つタンタルを電極棒としてチタン基体表面を走査して放電加工することにより行うことができる。該放電加工は一般に非酸化性雰囲気、例えばアルゴン雰囲気中で実施することが望ましい。
【0017】
放電加工に使用するタンタル電極棒の直径は通常1〜10mmの範囲内で選択することができるが、作業効率等の観点から一般に直径が4mm以上のものが好適である。
【0018】
また、放電条件は使用するタンタル電極棒の径によって異なり、例えば直径6mmのタンタル電極棒を使用する場合には、電極放電パルスは200〜600Hz、コンデンサー容量は100〜400μFとすることができる。
【0019】
このようにして1dm2あたり5〜30分間放電加工を行い、チタン基体表面にチタンとタンタルの合金層を形成する。このようにして形成されるチタンとタンタルの合金層表面は一般に粗面化されており、表面あらさ計((株)小坂研究所製 表面粗さ・輪郭形状測定機SEF−30D)で測定したあらさ値は通常50〜200μm程度である。
【0020】
以上の如くして形成されるチタンとタンタルとの合金層は少なくても10μm、好ましくは30μm以上の厚みを有することができる。該合金層の厚みが10μm未満では一般にチタン基体に充分な耐食性を付与することができない。一方、該合金層の厚みの上限には特に制限はないが、必要以上に厚くしても、それに伴うだけの効果は得られず、却って経済的に不利になるので、通常、150μm以下、好ましくは100μm以下が適当である。
【0021】
以上の如くして形成されるチタン基体のチタンとタンタルの合金からなる表面層上に、各々酸化イリジウムと酸化タンタルからなる、上層にいくにつれて酸化イリジウムの含有率が高くなる3つの層、すなわち第1の中間層、第2の中間層及び外層を順次被覆する。ここで、酸化イリジウムは実質的に結晶性を有するIrO2よりなる。また、酸化タンタルは非結晶性の酸化物 Ta2O5で示され、後述する酸化の条件等でコーティング物の結合性を強化するものである。
【0022】
第1の中間層は3〜7mol%、好ましくは約5mol%の酸化イリジウムと93〜97mol%、好ましくは約95mol%の酸化タンタルからなるものであり、チタン基体のチタンとタンタルの合金からなる表面層の粗面化された凸凹部を被覆し、基体の耐食性の向上に寄与する。第1の中間層の被覆量は、一般に0.1〜5.0g/m2、好ましくは0.5〜3.0g/m2の範囲内とすることができる。
【0023】
以下、第1の中間層の形成について具体的に説明する。
【0024】
チタン基体のチタンとタンタルの合金からなる表面層上に、イリジウム化合物とタンタル化合物を含む溶媒溶液、好ましくは低級アルコール溶液を塗布した後乾燥することにより、イリジウム化合物とタンタル化合物を付着せしめる。ここで使用しうるイリジウム化合物及びタンタル化合物としては、後述する焼成条件下で熱分解してそれぞれ酸化イリジウム及び酸化タンタルに転化しうる低級アルコール溶媒に可溶性の化合物が包含される。そのようなイリジウム化合物としては塩化イリジウム酸、塩化イリジウム、塩化イリジウムカリ等が例示され、また、タンタル化合物としては、例えば塩化タンタル、タンタルエトキシド等が挙げられる。
【0025】
一方、これらのイリジウム化合物及びタンタル化合物を溶解しうる低級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール又はこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
上記溶液中におけるイリジウム化合物とタンタル化合物の割合はIr/Taの金属換算モル比で3/97〜7/93の範囲内、好ましくは約5/95とすることができる。
【0027】
該溶液のチタン基体の合金層上への塗布は、例えば、吹き付け法、ハケ塗り法、浸漬法等により行うことができ、このようにしてイリジウム化合物及びタンタル化合物の低級アルコール溶液を適用したチタン基体は、約20〜約150℃の範囲内の比較的低温で乾燥させた後、酸化性雰囲気中、通常大気中で焼成する。
【0028】
以上に述べた処理は被覆量が前記の範囲内に達するまで繰り返して行うことができる。該焼成は例えば、電気炉、ガス炉、赤外線炉などの適当な加熱炉中で一般に約400〜約700℃、好ましくは約450〜約600℃の範囲内の温度に加熱することによって行うことができる。その際の加熱時間は焼成すべき基体の大きさに応じて大体5分〜2時間程度とすることができる。この焼成によりイリジウム化合物及びタンタル化合物はそれぞれ酸化イリジウム及び酸化タンタルに変わり、第1の中間層を形成する。
【0029】
以上述べた如くして被覆される酸化イリジウム及び酸化タンタルからなる第1の中間層の上に、10〜30mol%、好ましくは15〜25mol%の酸化イリジウムと70〜90mol%、好ましくは75〜85mol%の酸化タンタルからなる第2の中間層を設ける。この第2の中間層において、酸化イリジウムの含有量が10mol%より少ないと、電気伝導性が悪くなる傾向がみられ、一方、30mol%を越えると酸素発生活性能が大きくなり、また耐食性が低下する可能性がある。
【0030】
この第2の中間層の形成は、塗布する溶液中のイリジウム化合物とタンタル化合物のIr/Ta金属換算モル比を10/90 〜 30/70、好ましくは15/85〜25/75の範囲内となるように変更する以外は、第1の中間層の形成と同様にして行うことができる。第2の中間層の被覆量は一般に0.5〜10.0g/m2、好ましくは1.0〜5.0g/m2の範囲内になるようにするのが適当である。
【0031】
以上のようにして耐食性と電気伝導性を有する第2の中間層を形成することができ、チタンとタンタルの合金層を形成した耐食性のあるチタン基体改質層上に耐食性のある第1の中間層、更に耐食性と電気伝導性を有した第2の中間層を形成することにより、画期的な高耐久性を有する電極を得ることができる。
【0032】
以上述べた如くして形成される酸化イリジウム及び酸化タンタルから構成される第2の中間層の上には、さらに60〜98mol%、好ましくは70〜95mol%の酸化イリジウムと2〜40mol%、好ましくは5〜30mol%の酸化タンタルからなる外層を設ける。この外層において、酸化イリジウムの含有量が60mol%未満では、高電流密度で使用した場合、酸素発生活性能が不足し、電極寿命が短くなる傾向があり、一方98mol%を越えると、電極触媒(外層)の消耗が増える傾向が見られる。
【0033】
この外層の形成もまた、塗布する溶液中のイリジウム化合物とタンタル化合物のIr/Taの金属換算モル比が60/40 〜 98/2、好ましくは70/30 〜 95/5の範囲内となるように変更する以外は、第1の中間層の形成と同様にして行うことができる。
【0034】
外層の被覆量は一般に10〜60g/m2、好ましくは30〜50g/m2の範囲内となるようにするのが適当である。
【0035】
以上述べた如くして製造される本発明の電極は、高電流密度下で長時間使用してもチタン界面の不働態化が起こりにくく、長寿命であり、高電流密度下で運転される金属の高速めっきや金属箔製造用陽極として好適に使用することができる。
【0036】
【実施例】
次に実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、該実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
実施例1〜6、比較例1〜8
JIS2種相当のチタン板素材を(t3.0×w100×l100mm)をアルコールで洗浄後、20℃の8重量%フッ化水素酸水溶液中で2分間処理した後、水洗し乾燥した。次いで酸化被膜を除去したチタン板を陰極とし、φ6mmのタンタル電極を使用してアルゴン置換したグローボックス中で放電加工を10分間行った。その後タンタルの放電加工を行ったチタン板をファインカッターにてt3.0×w10×l10mmに切断した。EPMA(エレクトロンブローブマイクロアナライザー)にて、放電加工を行ったチタン板の断面の元素分析を行ったところ、チタン金属中にタンタル金属が分散した合金層が確認された。またこの合金層の厚さは30〜50μmであった。塩化イリジウム酸のブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、Ir2.8g/l及びTa50.0g/l(モル配合比:5Ir-95Ta)を含有する塗布液を調製し、マイクロピペットで1cm2当たり3.0μl秤量し、それを上記のようにして作製したチタンとタンタルの合金層を形成したチタン基体の改質層上に塗布した後、室温で30分間真空乾燥させ、更に500℃の大気中で10分間焼成した。この工程を2回繰返した。
【0038】
次いで第2の中間層を得るため、塩化イリジウム酸ブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、Ir9.37g/l及びTa50.0g/l(モル配合比:15Ir-85Ta)を含有する塗布液を調製した後、この塗布液を用いて前記と同様の工程を3回繰返した。
【0039】
次に外層を得るため、塩化イリジウム酸のブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、Ir50.0g/l及びTa20.2g/l(モル配合比:70Ir-30Ta)を含有する塗布液を調製した後、この塗布液を用いて前記と同様の工程を8回繰返して実施例電極−1を作製した。
【0040】
上記実施例電極−1と同様の方法でコーテイング層の組成を表−1に示すようにかえた実施例電極−2〜6及び比較例電極−1〜8を作製した。
【0041】
比較例9〜11
実施例電極−1と同様の方法でチタンとタンタルの合金層を形成したt3.0×w10×l10mmチタン基体の改質層上に、H2PtCl6をブタノールに溶解した白金金属濃度10g/lの溶液をマイクロピペットで1cm2当り3.0μl秤量し、それを上記基体に塗布した後、室温で30分間真空乾燥させ、更に500℃の大気中で10分間焼成した。この工程を5回繰返した。次に実施例電極−1と同じ組成の外層を実施例電極−1と同様の方法で形成して比較例電極−9を作製した。
【0042】
また、チタン板を熱シュウ酸水溶液で洗浄し、その上に実施例電極−2と同じ組成の第1の中間層、第2の中間層及び外層をそれぞれ実施例電極−2と同様の方法で形成して比較例電極−10を作製した。
【0043】
更にチタン板を熱シュウ酸水溶液で洗浄し、その上に塩化イリジウム酸のブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、Ir5.90g/l及びTa50.0g/l(モル配合比:10Ir-90Ta)を含有する塗布液を調製した後、マイクロピペットで1cm2当り3.0μl秤量し、塗布した後、室温で30分間真空乾燥させ、更に500℃の大気中で10分間焼成した。この工程を4回繰返した。次いで外層を得るため、塩化イリジウム酸のブタノール溶液と塩化タンタルのエタノール溶液を混合し、Ir50.0g/l及びTa5.23g/l(モル配合比:90Ir-10Ta)を含有する塗布液を調製した後、この塗布液を用いて前記と同様の工程を8回繰返して比較例電極−11を作製した。
【0044】
このようにして得られた各電極を次の条件下で電解したときの電極寿命を表−1及び表−2に示す。
【0045】
<電解条件>
電解液 :1M H2SO4−1M Na2SO4
電流密度:4A/cm2
対極 :Pt
極間距離:10mm
表−1及び表−2に示す結果から実施例電極は電極寿命が長いことがわかる。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【効果】
以上説明したように、本発明の電解用電極によれば、チタン基体の表面にタンタル電極を使用した放電加工により耐食性の良好なチタン−タンタルの合金層を形成し、該合金層上に耐食性の良好な第1の中間層を形成し、更に耐食性と電気伝導性の良好な第2の中間層を形成することにより、チタン−タンタルの合金層は粗面化されているため該合金層と第1の中間層及び第2の中間層との密着性に優れ、またチタン基体の不働態化が抑制され、そして該第2の中間層上に触媒層である外層を形成することにより、長時間使用できる電解用電極を提供することができる。
Claims (1)
- チタンとタンタルとの合金からなる表面層を有するチタン基体の該表面層上に、
(a) 3 〜 7mol%の酸化イリジウムと93〜97mol%の酸化タンタルからなり且つ被覆量が0.1〜5.0g/m 2 の第1の中間層、
(b) 10〜30mol%の酸化イリジウムと70〜90mol%の酸化タンタルからなる第2の中間層、及び
(c) 60〜98mol%の酸化イリジウムと2 〜40mol%の酸化タンタルからなる外層、
なお、上記の mol %はいずれも金属換算での mol %である、
が順次設けられていることを特徴とする電解用電極。
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