JP4883851B2 - 展示ケース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の展示品を陳列し観覧に供するために使用される展示ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、博物館や美術館等において使用される陳列ケースとしては、少なくとも前面に透明なガラス戸等の戸板を装着したものが一般的であり、その戸板を引戸式に開閉できるようにしたものが多い。その際、単なる引戸式のものにすると、隣接する戸板の端部同士が重合するため、格調を損ねる上に、視界が部分的に遮られ、観覧者に良い印象を与えることができないという不具合が生じる。そこで、各戸板を全て可動式のものにし、各レールを2枚の戸板を同時に重合配置し得るいわゆるダブルレール構造にした改良品が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなものであれば、閉止時はダブルレールの一方に戸板を支持させることができ、開成時は特定のダブルレールを引き出して該レールに支持された戸板を隣接するダブルレール側へ移動させることができる。ところが、ダブルレールのうち通常は空いているレールが閉止時の戸板よりも前方に位置することとなり、このレールを隠蔽するために上下の化粧板が戸板から突出してしまい、外観上、見栄えが悪くなるという不具合を有している。さらに、ダブルレールには通常のレールの倍のレール巾が必要であり、それが前後可動であることから、レール全体をコンパクトに構成することができず、展示ケースにも大きな動作空間を確保しなければならないという問題が生じる。
【0004】
このような不具合を解消するために、近年、前記戸板の上下縁部を幅方向に沿って移動可能に支持する支持部材と、この支持部材をガイドすべく少なくとも隣接する戸板にまで連続的に延びるガイドレールと、前記戸板をガイドレールとともに閉止位置と該閉止位置から前方に引き出した開閉可能位置との間で前後方向に出入り自在に案内する支持機構とを具備してなり、前記支持機構を介して前方に引き出された戸板を、同時に前方に引き出された前記ガイドレールに沿って幅方向に移動させるようにしているものがある。このような構成のものであると、閉止位置において全ての戸板が面一になる上、ダブルレールのものに比べて、化粧板等も戸板の前面から突出することがなく、すっきりとした外観で格調の高い展示ケースを提供することが可能となる。
【0005】
ところで、この種の展示ケースでは、ケース本体の上部空間を大きく確保して、展示空間に広がりを持たせたいという要望がある。特に、ケース本体の背面側に掛け軸や絵画等の展示品を取り付ける場合には、背面側の上部空間をより大きく確保することが望ましいものである。しかしながら、前記戸板を前後方向に出入り自在に案内する支持機構は、通常、ケース本体の前面側の上下端部に設けてあり、前後方向すなわちケース本体の奥行方向に一定の設置スペースを必要とする。このように、ケース本体の上端部前面側には、支持機構の設置スペースが必要となるため、従来は、ケース本体の天井壁を、前記支持機構の後端部側から上方に傾斜させて、ケース本体の背面側の展示空間を大きく確保するようにしている。ところが、やはり上端部前面側に支持機構の設置スペースが存在するため、背面に取り付けた掛け軸や絵画等の展示品が観覧し難いという問題点があった。
【0006】
このような課題に鑑み、本発明では、展示ケースの上部空間を展示空間としてより広く利用できるような展示ケースを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、本発明の展示ケースは、ケース本体と、閉止位置において前記ケース本体に設けた開口部を略面一に閉止する位置に配置されるように構成したガラス板等の透明剛体を主体として形成される少なくとも3枚の戸板とを具備する展示ケースにおいて、全ての前記戸板を前記閉止位置と該戸板を開閉可能な状態とする開閉可能位置との間で厚み方向に略沿って同時に出入自在に支持する支持機構と、開閉可能位置において前記戸板を開閉可能に支持する開閉機構とを具備し、前記支持機構が、前記開口部において鉛直方向に略沿って位置する開口側縁部側に位置するように設けてあり、開口側縁部側に位置する端部戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた戸板の端部側を開閉可能に蝶持している蝶持機構であり、二枚の端部戸板に挟まれた中央戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた端部戸板を前記蝶持機構により開成させた状態でのみ中央戸板を幅方向に沿って移動可能に支持するガイド機構であることを特徴とする。
【0008】
このような構成のものであると、前記戸板を前後方向に移動可能に支持するべく前記ケース本体の奥行方向に設置スペースを必要とする支持機構が、ケース本体の上端部側に存在しなくなるため、ケース本体内の上部空間を展示空間としてより広く利用することができる。特に、ケース本体を構成する天井面をケース本体の開口部近傍からすぐに後上方へ傾斜させることが可能となり、従来のように前面側に位置する支持機構が邪魔になって、背面側に取り付けた掛け軸や絵画等の展示品が観覧し難いという問題点も有効に回避することが可能となる。
【0009】
また、他の態様としては、ケース本体と、閉止位置において前記ケース本体に設けた開口部を略面一に閉止する位置に配置されるように構成したガラス板等の透明剛体を主体として形成される少なくとも3枚の戸板とを具備する展示ケースにおいて、全ての前記戸板を前記閉止位置と該戸板を開閉可能な状態とする開閉可能位置との間で厚み方向に略沿って同時に出入自在に支持する支持機構と、開閉可能位置において前記戸板を開閉可能に支持する開閉機構とを具備し、前記支持機構が、前記開口部において開口下縁部側及び鉛直方向に略沿って位置する開口側縁部側に位置するように設けてあり、開口側縁部側に位置する端部戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた戸板の端部側を開閉可能に蝶持している蝶持機構であり、二枚の端部戸板に挟まれた中央戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた端部戸板を前記蝶持機構により開成させた状態でのみ中央戸板を幅方向に沿って移動可能に支持するガイド機構であることを特徴とする。
【0010】
この場合も、前述した請求項1記載の構成の場合と同様に、前記戸板を前後方向に移動可能に支持するべく前記ケース本体の奥行方向に設置スペースを必要とする支持機構が、ケース本体の上端部側に存在しなくなるため、ケース本体内の上部空間を展示空間としてより広く利用することができる。特に、ケース本体を構成する天井面をケース本体の開口部近傍からすぐに後上方へ傾斜させることが可能となり、従来のように前面側に位置する支持機構が邪魔になって、背面側に取り付けた掛け軸や絵画等の展示品が観覧し難いという問題点も有効に回避することが可能となる。
【0011】
簡単な構成で、電気的な同期駆動も取り易い戸板を移動させるための支持機構を構成するには、支持機構が、ケース本体側に設けた固定部と、この固定部に対して前後方向に移動可能に設けてあるとともに前記開閉機構の一部を支持する可動部とを具備し、前記可動部が、前記閉止位置と前記開閉可能位置との間を前記固定部に対して移動して前記戸板を前後方向に出入自在としているものであることが望ましい。
【0012】
特に、複数の戸板を設けた場合に、全ての戸板を同期させて前後方向へ確実に移動させるには、可動部が、前記ケース本体の開口部の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体を具備し、前記支持機構が、前記可動部本体の側縁部を前後方向に移動可能に支持しているものや、可動部が、前記ケース本体の開口部の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体を具備し、前記支持機構が、前記可動部本体の側縁部及び下縁部を前後方向に移動可能に支持しているものであることが望ましい。
【0013】
さらに、この場合の好適な実施の態様としては、支持機構が、前記固定部側に正逆方向に回転可能に設けたピニオン部と、前記可動部側に設けてなり前記ピニオン部の回転運動を前記可動部の直線運動へと変換するラック部とを具備しているものが挙げられる。
【0014】
さらに、中央戸板をより安定に支持し、且つその幅方向への移動をより安定なものとするためには、ガイド機構が、前記中央戸板の上下縁部に沿って設けてあることが望ましい。
【0015】
ガイド機構の具体的な実施の態様としては、ガイド機構が、ケース本体側又は中央戸板側の何れか一方側に設けた案内溝と、他方側に設けてなり前記案内溝内に転動可能に設けてあるローラとを具備し、前記ローラが案内溝に案内されて中央戸板を幅方向に沿って移動可能に支持しているものが挙げられる。
【0017】
さらに、前記開口部の端部を略完全に開成し得るようにするには、蝶持機構が、前記開口部において略鉛直方向に沿って位置する開口側縁部と、この開口側縁部に対応する端部戸板の側縁部との間に設けてあることが望ましい。
【0018】
この場合の好適な実施の態様としては、蝶持機構が、前記開口部の開口側縁部側又は前記端部戸板の側縁部側の何れか一方側に設けた軸部と、この軸部を介して前記端部戸板が前記開口部に対して回転可能となるように少なくとも前記端部戸板の側縁部側又は前記開口部の開口側縁部側の他方側に設けた軸受部とを具備しているものが挙げられる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
この展示ケースAは、例えば、美術館等に設置されるもので、図1〜図3に示すように、ケース本体1内に、少なくとも底面11、背面12及び天井面13によって囲まれる位置に展示品を陳列するための展示空間Sを形成するとともに、その展示空間Sの開口部たる前面開口部14を閉止する位置に複数の戸板2を面一に設けた構成からなる。
【0021】
ケース本体1には、図1及び図2に示すように、前面開口部14の上縁部14aよりも上方に上化粧板15を設けるとともに、図1及び図3に示すように、下縁部14bよりも下方に下化粧板16を設けて、ケース本体1の上方空間及び下方空間の前面を隠蔽し、これら上下化粧板15、16間に前記戸板2を鉛直姿勢で設けている。これら上化粧板15の上端及び下化粧板16の下端は、ヒンジ(図示せず)によって蝶着してあるとともに、ガススプリング等の付勢手段Fによって開成方向に付勢してあり、通常は、図示しないラッチロックやマグネットキャッチ等に保持されてその先端面を戸板2の前面に近接して対向し得る位置に位置付けてある。そして、前記戸板2を前方へ引き出す際には、適当な操作によってそのロック状態若しくはキャッチ状態を解除して前記上下化粧板15、16を開成し、戸板2の前方から退避させ得るようにしている。また、これら上下化粧板15、16の前面は、戸板2の閉止位置Pにおいて、該戸板2の前面と面一になる位置に設けてある。
【0022】
戸板2は、図1〜図3に示すように、透明剛体であるガラス板からなるもので、その上下縁部2a、2bの内面側には、幅方向に略沿った保護枠21が取り付けてある。なお、本実施の形態では、前記ケース本体1の前面開口部14を閉止する位置に三枚の戸板2を設けている。
【0023】
このような構成のものにおいて、本実施の形態では、図2〜図4に示すように、前記展示ケースAが、前記戸板2を閉止位置P(図2〜図4中実線参照)と前記戸板2が開閉可能な状態となる開閉可能位置Q(図2〜図4中想像線参照)との間で、その厚み方向である前後方向に略沿って出入自在に支持する支持機構3を具備し、この支持機構3により前記戸板2の閉止位置Pと開閉可能位置Qとを異なる位置として、前記閉止位置Pでの気密性を高めるようにしている。そして、特に、本実施の形態では、図7に示すように、前記支持機構3を前記前面開口部14の鉛直方向に略沿った開口側縁部14c側に設けることによって、ケース本体1の上部空間をより大きく確保し得るようにしている。
【0024】
さらに、本実施の形態では、前記前面開口部14を閉止する位置に三枚の戸板2を設けているが、図1及び図5に示すように、これら三枚の戸板2のうち両端側の戸板2を前記開閉可能位置Qにおいて蝶持機構4により開閉可能に支持される端部戸板2Aとしている。すなわち、全ての戸板2を閉止位置Pから開閉可能位置Qへと前方へ引き出した後、前記端部戸板2Aを蝶持機構4を介して開閉することにより、前面開口部14の開口側縁部14c側を略完全に開成させて展示空間Sの端部側への展示物の出し入れ等を容易に行い得るようにしている。さらに、本実施の形態では、図1及び図6に示すように、二枚の端部戸板2Aに挟まれた中央の戸板2をガイド機構5により該戸板2の幅方向である左右方向に移動可能な中央戸板2Bとし、展示空間Sの中央部も確実に開放できるようにしている。
【0025】
以下、前記支持機構3、蝶持機構4及びガイド機構5について説明する。
【0026】
支持機構3は、図7〜図10に示すように、前記ケース本体1の前面開口部14の開口側縁部14c側に上下に対をなして設けた固定部31と、この固定部31に対して前後方向に移動可能となるように前記戸板2側に設けてある可動部32とを具備し、前記可動部32が、前記固定部31に対して前後方向に移動することにより、前記閉止位置Pと前記開閉可能位置Qとの間で前記戸板2を前後方向に出入自在としている。さらに、本実施の形態では、前記固定部31側にピニオン部6を正逆方向に回転可能に設けるとともに、前記可動部32側に前記ピニオン部6の回転運動を前記可動部32の直線運動へと変換するラック部7を設け、前記可動部32の前後方向への直線的な移動を可能としている。
【0027】
固定部31は、図7〜図10に示すように、前記前面開口部14の開口側縁部14c側に上下方向に対をなして設けた正面視略門形状のもので、L字形状の取付部材t1をボルト等の取付具で止着することにより前記ケース本体1に取り付けてある。この固定部31は、具体的には、一対の対向する水平壁311と、これら水平壁311の内方端側を連結する連結壁312と、前記水平壁311において前記連結壁312より若干外方位置の対向面側から互いに相寄る方向へと突出して設けた一対のガイド壁313とから構成される。前記水平壁311には、前記ガイド壁313よりさらに外方位置に貫通孔311aが設けてあり、この貫通孔311aに前記ピニオン部6を支持する駆動軸8が正逆方向に回転可能に取り付けてある。このピニオン部6は、外周に歯部61を有する周知の歯車である。また、前記駆動軸8は、前記ケース本体1の上下方向の略全長に亘って設けてあり、上下方向に対をなして前記ピニオン部6が取り付けてある。また、この駆動軸8の適宜箇所には、該駆動軸8を正逆方向に回転させるために駆動するモータ部Mと、前記駆動軸8の回転を適宜減速調整するための減速部Nとが設けてある。なお、図10中符号Rで示すものは、前記駆動軸8の回転位置を適切な位置で決定するために利用されるリミットスイッチである。
【0028】
可動部32は、図7に示すように、前記前面開口部14の開口縁部内に略密接な状態で位置する正面視略ロ字形状の可動部本体321を主体として構成されるもので、この可動部本体321は、前記ピニオン部6の歯部61と噛合する位置に設けたラック部7により前後方向に移動可能に支持されている。ラック部7は、前後方向に延出して設けた略直方体状のもので、その外面に前記ピニオン部6の歯部61と噛合する歯部71を有する周知の棒状の歯車である。また、このラック部7には、前記固定部31のガイド壁313を前後方向に転動して前記ラック部7の前後方向への移動を補助する上下に対をなす補助車輪72が、前後方向二箇所に設けてある。さらに、ラック部7は、その後端部及び前後方向中央部の内面側から突出した突起部73を具備し、移動時、この突起部73を前記固定部31の連結壁312の対向面に設けたスライド溝314内でスライドさせることにより、該ラック部7を蛇行することなく適正に前後方向に移動し得るように案内させている。また、この突起部73は、戸板2が開閉可能位置Qまで移動した際に、前記スライド溝314の後向面314aに当たって、該戸板2を開閉可能位置Qよりも前方に移動させることを禁止するストッパとしての役割も果たしている。そして、前記ラック部7の移動方向の先端部側である前面側には、前記可動部本体321が設けてある。この可動部本体321は、図7に示すように、前記ケース本体1の前面開口部14の開口縁部の形状と、その外縁が形成する形状が略相似形状である正面視略ロ字形のもので、幅方向に沿って位置する上下壁321a、321bと、上下方向に沿って位置する左右側壁321cとを具備している。そして、この可動部本体321は、その左右側壁321cの前面側に、図11に示すように、蝶持機構4の一部を構成する軸保持部41が支持させてあるとともに、図7に示すように、その上下壁321a、321bの幅方向の略全域に亘ってガイド機構5の一部を構成するローラ52が適宜箇所に間欠的に突設してある。
【0029】
蝶持機構4は、図11に示すように、前記前面開口部14において略鉛直方向に沿って位置する開口側縁部14cと、この開口側縁部14cに対応する端部戸板2Aの外側の側縁部2cとの間に設けてあり、前記端部戸板2Aの側縁部2cを開閉可能に支持するものである。具体的には、前記可動部本体321の左右側壁321cの前面側に適宜の手段で取り付けた軸保持部41と、この軸保持部41に保持させた軸部42と、この軸部42に対して正逆方向に回転可能となるように前記戸板2の側縁部2c側に設けた軸受部43とを具備しているような周知の蝶番機構である。前記軸保持部41は、前記前面開口部14の開口上下寸法と略等しい上下寸法を有するものである。また、軸受部43も、前記端部戸板2Aの上下寸法と略等しい上下寸法を有するもので、前記端部戸板2Aの背面側に設けた上下の保護枠21にその上下端部43aを適宜の手段で取り付けてある。このような構成のものにおいて、前記開閉可能位置Qにある前記端部戸板2Aを開成する際には、該端部戸板2Aの回転端側である他方の側縁部2d側に吸着把手等(図示せず)を取り付け、図5に示すように、前記蝶持機構4を介して前方へ向って鉛直軸心回りに回転することにより、端部戸板2Aを開成する。
【0030】
なお、図示していないが、端部戸板2Aが閉止位置Pにある時及び閉止位置Pから開閉可能位置Qへと移動する時に、該端部戸板2Aが蝶持機構4を介して回転しないように確実にロックするとともに、開閉可能位置Qでは簡単にロックを解除して端部戸板2Aを開成することができるようなロック機構を前記端部戸板2A近傍に設けるようにしている。
【0031】
ガイド機構5は、図2、図3及び図12に示すように、前記戸板2の上下縁部2a、2bの内側に沿って設けた案内溝51と、前記案内溝51内を巾方向に沿って転動可能に設けたローラ52とを具備している。案内溝51は、前記戸板2の上下縁部2a、2bの内側に沿って設けた保護枠21の内面21a側に巾方向に沿って連続して設けてある。具体的には、前記保護枠21の内面側から後方に向って突出した上下壁511と、これら上下壁511の突出端側から互いに相寄る方向へ鉛直方向に略沿って延出した一対の後壁512とを具備している。この案内溝51は、前記ローラ52を転動可能に収容し得る奥行寸法及び上下寸法を有している。一方、ローラ52は、前記可動部本体321の上下壁321aの幅方向に略沿った複数箇所に水平軸心回りに回転可能に軸着してある。
【0032】
なお、図11に示すように、前記戸板2のうち端部戸板2Aの上下縁部2a、2bの内側に設けた保護枠21の内面21a側にも前記案内溝51と略同様の構成を有する溝部mが設けてあるが、この溝部mは、前記保護枠21の内面21a側から後方に向って突出した上下壁m1のみから構成されており、前記蝶持機構4を介して前記端部戸板2Aを前記可動部本体321に対し開閉する際に、この溝部mが開閉動作を妨げないようにしている。
【0033】
次に、この展示ケースAの戸板2を開成する場合の取扱方法を説明する。
【0034】
先ず、各戸板2が図1及び図4に示す面一な閉止位置Pにある状態で、前記上下化粧板15、16を回動退避させた後、モータ部Mを駆動させることによって、駆動軸8を回転させる。この駆動軸8の回転とともに前記ピニオン部6が回転し、このピニオン部6の回転移動がラック部7の前方への直線移動へと変換されるようにする。ラック部7が前方へ直線移動することによって、可動部32が前方へ移動することとなり、全ての戸板2が、図4中想像線に示すように、蝶持機構4及びガイド機構5とともに開閉可能位置Qへと移動する。そして、前記前面開口部14を開成させて展示空間S内の展示物の出し入れ等を行うには、先ず、端部戸板2Aを開成する。端部戸板2Aを開成させる際には、例えば、この端部戸板2Aの回転端部側である内側の側縁部2d側に吸着把手等(図示せず)を取り付け、図5に示すように、回転支持端側である外側の側縁部2cに設けた蝶持機構4を介して前方に向って鉛直軸心回りに回転させて開成する。このようにすると、展示空間Sの端部側が略完全に開成することとなり、展示物の出し入れ等が非常に行い易いものとなる。
【0035】
さらに、展示空間Sの中央部を開成して、展示物の出し入れ等を行うには、中央戸板2Bを幅方向へ移動させるようにすればよい。その際には、例えば、中央戸板2Bに対して吸着把手等(図示せず)を取り付けて幅方向へ牽引操作を行って、図6に示すように、中央戸板2Bを、前記ガイド機構5を介して幅方向にスライド移動させる。具体的には、前記中央戸板2Bの上下縁部2a、2bに設けた案内溝51内を前記可動部本体321側に設けたローラ52を転動させるようにする。
【0036】
一方、以上とは逆の操作を行うことにより、開成した前面開口部14を再び前記戸板2によって閉止することができる。
【0037】
このような構成のものであると、前記戸板2を前後方向に移動可能に支持するべくケース本体1の奥行方向に設置スペースを必要とする支持機構3が、図2に示すように、ケース本体1の上端部側に存在しなくなるため、該ケース本体1内の上部空間を展示空間Sとしてより広く利用することができる。特に、ケース本体1を構成する天井面13を前記前面開口部14近傍からすぐに後上方へ傾斜させることが可能となり、従来のように、前面側に位置する支持機構が邪魔になって、背面に取り付けた掛け軸や絵画等の展示品が観覧し難いという問題点も有効に回避することが可能となる。
【0038】
支持機構3が、ケース本体1側に設けた固定部31と、この固定部31に対して前後方向に移動可能に設けてあるとともに前記蝶持機構4及びガイド機構5の一部を支持する可動部32とを具備し、前記可動部32が、前記閉止位置Pと前記開閉可能位置Qとの間を前記固定部31に対して移動して前記戸板2を前後方向に出入自在としているものであるので、簡単な構成で、電気的な同期駆動も取り易い戸板2を移動させることができる。
【0039】
また、可動部32が、前記ケース本体1の前面開口部14の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体321を具備し、前記支持機構3が、前記可動部本体321の側縁部である左右側壁321bを前後方向に移動可能に支持しているので、前記ケース本体1内の上部空間を展示空間Sとしてより広く利用し得る上、特に、複数の戸板2を設けた場合に、全ての戸板2を同期させて前後方向へ確実に移動させることが可能となる。
【0040】
さらに、支持機構3が、前記固定部31側に正逆方向に回転可能に設けたピニオン部6と、前記可動部32側に設けてなり前記ピニオン部6の回転運動を前記可動部32の直線運動へと変換するラック部7とを具備しているので、簡単な構成且つ機構的な同期も図り易い構成で、前記可動部を直線的に前後移動させることが可能となる。
【0041】
開閉機構が、前記支持機構3により閉止位置Pから開閉可能位置Qへと移動させた戸板2を幅方向に沿って移動可能に支持するガイド機構5であるので、簡単な構成で、前記前面開口部14の任意の位置を良好に開成することが可能となる。
【0042】
この場合に、ガイド機構5が、前記戸板2の上下縁部2a、2bに沿って設けてあるので、戸板2をより安定に支持し、且つその幅方向への移動をより安定なものとすることが可能である。
【0043】
ガイド機構5が、前記戸板2側に設けた案内溝51と、可動部本体321に設けてあり前記案内溝51内に転動可能に設けてあるローラ52とを具備し、前記ローラ52が案内溝51に案内されて戸板2を幅方向に沿って移動可能に支持しているものであるので、吊り機構により戸板を幅方向に沿って移動可能に支持している場合と比べて、戸板脱落の危険性が少なくなる上、ガラス板である戸板の撓み等も有効に防止することができる。
【0044】
また、開閉機構が、前記支持機構3により閉止位置Pから開閉可能位置Qへと移動させた戸板2の端部側を開閉可能に蝶持している蝶持機構4であるので、前面開口部14の開口側縁部よりも外方に戸板の引き込みスペースを設ける等しなくとも、確実に前面開口部14の端部側を開成することが可能となり、展示空間Sの端部側に配置した展示物の出し入れ等も非常に行い易いものとなる。
【0045】
さらに、蝶持機構4が、前記前面開口部14において略鉛直方向に沿って位置する開口側縁部14cと、この開口側縁部14cに対応する戸板2の側縁部2cとの間に設けてあるので、前記前面開口部14の端部を略完全に開成することができる。
【0046】
さらに、蝶持機構4が、前記前面開口部14の開口側縁部14c側に設けた軸保持部41に保持させた軸部42と、この軸部42に対して回転可能となるように前記端部戸板2Aの側縁部2c側に設けた軸受部43とを具備しているので、簡単な構成で端部戸板2Aを開閉可能に蝶持することができる。
【0047】
なお、本発明における構成は、以上説明したものに限定されないのは勿論である。例えば、本実施の形態では、前記前面開口部を閉止する位置に複数枚の戸板を設けるようにしていたが、これに限定されない。さらに、本実施の形態では、支持機構が、前記前面開口部14の開口側縁部14c側に位置するように設けてあったが、これに限定されず、図13に示すように、前記前面開口部14の開口側縁部14c側及び開口下縁部14d側に位置するように設けてあってもよい。すなわち、正面視略ロ字形状の可動部本体321の左右側壁321c及び下壁321bを支持する位置に支持機構3を設けるようにしている。また、戸板を開閉可能に支持する機構も、蝶持機構とガイド機構を組み合わせるものに限定されない。その他の構成も本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0048】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような構成で実施され以下に記載されるような効果を奏する。
【0049】
すなわち、本発明は、前記戸板を前記閉止位置と該戸板を開閉可能な状態とする開閉可能位置との間で厚み方向に略沿って出入自在に支持する支持機構が、前記支持機構が、前記開口部において鉛直方向に略沿って位置する開口側縁部側に位置するように設けてあるので、ケース本体の奥行方向に設置スペースを必要とする支持機構が、該ケース本体の上端部側に存在しなくなるため、ケース本体内の上部空間を展示空間としてより広く利用することができ、さらに、ケース本体の上端部前面側に位置する支持機構が邪魔になって、背面に取り付けた掛け軸や絵画等の展示品が観覧し難いという問題点も有効に回避することが可能となる。
【0050】
また、前記支持機構が、前記開口部において開口下縁部側及び鉛直方向に略沿って位置する開口側縁部側に位置するように設けてある場合も同様の効果を奏するものである。
【0051】
支持機構が、ケース本体側に設けた固定部と、この固定部に対して前後方向に移動可能に設けてあるとともに前記開閉機構の一部を支持する可動部とを具備し、前記可動部が、前記閉止位置と前記開閉可能位置との間を前記固定部に対して移動して前記戸板を前後方向に出入自在としているものであるならば、簡単な構成で、電気的な同期駆動も取り易い戸板を移動させるための支持機構を構成することができる。
【0052】
また、可動部が、前記ケース本体の開口部の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体を具備し、前記支持機構が、前記可動部本体の側縁部を前後方向に移動可能に支持しているものや、可動部が、前記ケース本体の開口部の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体を具備し、前記支持機構が、前記可動部本体の側縁部及び下縁部を前後方向に移動可能に支持しているものであるならば、特に、複数の戸板を設けた場合に、全ての戸板を同期させて前後方向へ確実に移動させることが可能となる。
【0053】
さらに、支持機構が、前記固定部側に正逆方向に回転可能に設けたピニオン部と、前記可動部側に設けてなり前記ピニオン部の回転運動を前記可動部の直線運動へと変換するラック部とを具備しているならば、簡単な構成且つ機構的な同期も図り易い構成で、前記可動部を直線的に前後移動させることが可能となる。
【0054】
開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた戸板を幅方向に沿って移動可能に支持するガイド機構であるならば、簡単な構成で、前記前面開口部の任意の位置を良好に開成することが可能となる。
【0055】
この場合に、ガイド機構が、前記戸板の上下縁部に沿って設けてあるならば、戸板をより安定に支持し、且つその幅方向への移動をより安定なものとすることが可能である。
【0056】
ガイド機構が、ケース本体側又は戸板側の何れか一方側に設けた案内溝と、他方側に設けてなり前記案内溝内に転動可能に設けてあるローラとを具備し、前記ローラが案内溝に案内されて戸板を幅方向に沿って移動可能に支持しているものであるならば、吊り機構により戸板を幅方向に沿って移動可能に支持している場合と比べて、戸板脱落の危険性が少なくなる上、ガラス板である戸板の撓み等も有効に防止することができる。
【0057】
また、開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた戸板の端部側を開閉可能に蝶持している蝶持機構であるならば、開口部の開口側縁部よりも外方に戸板の引き込みスペースを設ける等しなくとも、確実に開口部の端部側を開成することが可能となり、展示空間の端部側に配置した展示物の出し入れ等も非常に行い易いものとなる。
【0058】
さらに、蝶持機構が、前記開口部において略鉛直方向に沿って位置する開口側縁部と、この開口側縁部に対応する戸板の側縁部との間に設けてあるならば、前記開口部の端部を略完全に開成し得るようにすることができる。
【0059】
さらに、蝶持機構が、前記開口部の開口側縁部側又は前記戸板の側縁部側の何れか一方側に設けた軸部と、この軸部を介して前記戸板が前記開口部に対して回転可能となるように少なくとも前記戸板の側縁部側又は前記開口部の開口側縁部側の他方側に設けた軸受部とを具備しているならば、簡単な構成で戸板を開閉可能に蝶持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態において戸板が閉止位置にある状態を示す展示ケースの全体斜視図。
【図2】同戸板の上部構造を示す要部拡大側断面図。
【図3】同戸板の下部構造を示す要部拡大側断面図。
【図4】同戸板の取扱方法を説明するための模式的な平断面図。
【図5】同戸板の取扱方法を説明するための模式的な平断面図。
【図6】同戸板の取扱方法を説明するための模式的な平断面図。
【図7】同要部を示す斜視図。
【図8】同支持機構を示す平面図。
【図9】同支持機構を示す背面図。
【図10】同要部を示す右側面図。
【図11】同要部を示す拡大斜視図。
【図12】同要部を示す拡大斜視図。
【図13】同一変形例において要部を示す斜視図。
【符号の説明】
1…ケース本体
14…開口部(前面開口部)
14c…開口側縁部
14d…開口側縁部
2…戸板
2a…上縁部
2b…下縁部
2c…側縁部
3…支持機構
31…固定部
32…可動部
4…蝶持機構
41…軸受部
42…軸部
5…ガイド機構
51…案内溝
52…ローラ
6…ピニオン部
7…ラック部
8…駆動軸
A…展示ケース
P…閉止位置
Q…開閉可能位置
Claims (10)
- ケース本体と、閉止位置において前記ケース本体に設けた開口部を略面一に閉止する位置に配置されるように構成したガラス板等の透明剛体を主体として形成される少なくとも3枚の戸板とを具備する展示ケースにおいて、
全ての前記戸板を前記閉止位置と該戸板を開閉可能な状態とする開閉可能位置との間で厚み方向に略沿って同時に出入自在に支持する支持機構と、開閉可能位置において前記戸板を開閉可能に支持する開閉機構とを具備し、前記支持機構が、前記開口部において鉛直方向に略沿って位置する開口側縁部側に位置するように設けてあり、
開口側縁部側に位置する端部戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた戸板の端部側を開閉可能に蝶持している蝶持機構であり、
二枚の端部戸板に挟まれた中央戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた端部戸板を前記蝶持機構により開成させた状態でのみ中央戸板を幅方向に沿って移動可能に支持するガイド機構であることを特徴とする展示ケース。 - ケース本体と、閉止位置において前記ケース本体に設けた開口部を略面一に閉止する位置に配置されるように構成したガラス板等の透明剛体を主体として形成される少なくとも3枚の戸板とを具備する展示ケースにおいて、
全ての前記戸板を前記閉止位置と該戸板を開閉可能な状態とする開閉可能位置との間で厚み方向に略沿って同時に出入自在に支持する支持機構と、開閉可能位置において前記戸板を開閉可能に支持する開閉機構とを具備し、前記支持機構が、前記開口部において開口下縁部側及び鉛直方向に略沿って位置する開口側縁部側に位置するように設けてあり、
開口側縁部側に位置する端部戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた戸板の端部側を開閉可能に蝶持している蝶持機構であり、
二枚の端部戸板に挟まれた中央戸板の開閉機構が、前記支持機構により閉止位置から開閉可能位置へと移動させた端部戸板を前記蝶持機構により開成させた状態でのみ中央戸板を幅方向に沿って移動可能に支持するガイド機構であることを特徴とする展示ケース。 - 支持機構が、ケース本体側に設けた固定部と、この固定部に対して前後方向に移動可能に設けてあるとともに前記開閉機構の一部を支持する可動部とを具備し、前記可動部が、前記閉止位置と前記開閉可能位置との間を前記固定部に対して移動して前記戸板を前後方向に出入自在としていることを特徴とする請求項1又は2記載の展示ケース。
- 可動部が、前記ケース本体の開口部の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体を具備し、前記支持機構が、前記可動部本体の側縁部側を前後方向に移動可能に支持していることを特徴とする請求項3記載の展示ケース。
- 可動部が、前記ケース本体の開口部の開口縁部に略密接した状態で前後方向に移動可能に設けた正面視略ロ字形の可動部本体を具備し、前記支持機構が、前記可動部本体の側縁部側及び下縁部側を前後方向に移動可能に支持していることを特徴とする請求項3記載の展示ケース。
- 支持機構が、前記固定部側に正逆方向に回転可能に設けたピニオン部と、前記可動部側に設けてなり前記ピニオン部の回転運動を前記可動部の直線運動へと変換するラック部とを具備していることを特徴とする請求項3、4又は5記載の展示ケース。
- ガイド機構が、前記中央戸板の上下縁部に沿って設けてあることを特徴とする請求項1記載の展示ケース。
- ガイド機構が、ケース本体側又は中央戸板側の何れか一方側に設けた案内溝と、他方側に設けてなり前記案内溝内に転動可能に設けてあるローラとを具備し、前記ローラが案内溝に案内されて中央戸板を幅方向に沿って移動可能に支持していることを特徴とする請求項1又は7記載の展示ケース。
- 蝶持機構が、前記開口部において略鉛直方向に沿って位置する開口側縁部と、この開口側縁部に対応する端部戸板の側縁部との間に設けてあることを特徴とする請求項1記載の展示ケース。
- 蝶持機構が、前記開口部の開口側縁部側又は前記端部戸板の側縁部側の何れか一方側に設けた軸部と、この軸部を介して前記端部戸板が前記開口部に対して回転可能となるように少なくとも前記端部戸板の側縁部側又は前記開口部の開口側縁部側の他方側に設けた軸受部とを具備していることを特徴とする請求項1又は9記載の展示ケース。
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