JP4872156B2 - スラリー及びリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びにリチウム二次電池 - Google Patents

スラリー及びリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、並びにリチウム二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はリチウム遷移金属複合酸化物を製造するためのスラリー、該スラリーを用いたリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、及び該リチウム遷移金属複合酸化物を用いた二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
実使用可能なリチウム二次電池を提供する正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が有望視されている。これら化合物の中でも、遷移金属としてコバルト、ニッケル、マンガンを使用する、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物を正極活物質とすると、高性能な電池特性を得られることが知られている。さらに、リチウム遷移金属複合酸化物の安定化や高容量化、安全性向上、高温での電池特性の改良のために、遷移金属サイトの一部を他の元素で置換したリチウム遷移金属複合酸化物を用いることも知られている(本発明においては、「遷移金属サイトの一部を他の元素で置換したリチウム遷移金属複合酸化物」も「リチウム遷移金属複合酸化物」なる概念に包含される)。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物としてスピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn24の場合では、Mn価数は形式上3.5価であり、3価と4価が半々ずつ混在している状態であるが、このMn価数より小さい価数の他の遷移金属でMnサイトを置換することにより、ヤーンテラー歪みのあるMn3価を減少させて結晶構造を安定化させ、最終的に電池特性を向上させることができる。
【0003】
これら遷移金属サイトの一部を他の元素で置換したリチウム遷移金属複合酸化物を製造する方法としては、原料となる固体状のリチウム源、遷移金属源、遷移金属サイト置換のための元素(以下、本明細書においては、「置換元素」という場合がある。)の化合物等を混合・焼成処理する乾式法や、上記リチウム源、遷移金属源、置換元素化合物等を水等の分散媒に分散させたスラリーを噴霧乾燥させた後に焼成処理する方法等様々なものを挙げることができる。これら製造法中、上記スラリーを噴霧乾燥させた後に焼成処理する方法は、リチウム遷移金属複合酸化物を球状に造粒でき、充填密度を高く(単位容積あたりのエネルギー密度を高く)することができる利点を有する。換言すれば、上記方法により製造したリチウム遷移金属複合酸化物を用いれば、乾式法で製造したリチウム遷移金属複合酸化物を用いる場合と比較して、同じ大きさの電池を製造した場合は、高容量の電池が得られ、又同じエネルギー容量の電池の場合は、小型化が可能となる等の利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記スラリーを噴霧乾燥させた後に焼成処理をする方法を用いる場合、用いる置換元素化合物によっては、スラリーの保存安定性が悪化する問題があった。即ち、スラリーを製造後放置しておくと、スラリー内の粒子の凝集が起こり、スラリーの粘度が上昇するのである。この粘度上昇によって、噴霧乾燥後の粒子径が不安定になったり、最終的には噴霧乾燥ができなくなったり等、スラリーの工業上の取扱いが容易ではなかったのである。
【0005】
また、遷移金属サイトを置換する元素の種類によってリチウム遷移金属複合酸化物の電池性能も変化するため、置換元素化合物における置換元素を選択する場合は、電池特性も十分考慮する必要がある。例えば、前記のスピネル型リチウムマンガン酸化物LiMn24においては、Mnサイトの置換はMn価数より小さい価数の他の遷移金属で行う方が電池特性の面から好ましいのである。
従ってスラリーの保存安定性を高くして、工業生産の利便性を向上(原料となるスラリーの作り置きが可能となる)させ、かつ高性能な電池特性を発揮するリチウム遷移金属複合酸化物を得るためには、用いる置換元素化合物を注意深く選択する必要がある。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、保存安定性の高いスラリー、該スラリーを用いた充填密度の高いリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法、及び該リチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、電池特性を損なうことなく、リチウム遷移金属複合酸化物製造時の原料であるスラリーの保存安定性を向上させるべく鋭意検討した結果、(1)スラリー中に周期表2A族元素の水酸化物を含有させることによって、スラリーの粘度上昇がほとんど起こらず、スラリーの保存安定性が格段に向上すること、(2)周期表2A族元素の“水酸化物”とすることで、噴霧乾燥後の造粒粒子の表面に形成される水酸基によって焼成時の反応性が高くなり、焼結が促進されるのみならず、リチウム遷移金属複合酸化物の充填密度をさらに高くすることができること、(3)該リチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いたリチウム二次電池が高性能な電池特性を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の第1の要旨は、リチウム源及び遷移金属源を含有する分散媒中に、周期表2A族元素の水酸化物を配合するスラリーに存するものである。また、本発明の第2の要旨は、該スラリーを噴霧乾燥し、これを焼成処理に共すリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法に存するものである。さらに、本発明の第3の要旨は、該リチウム遷移金属複合酸化物を用いたリチウム二次電池に存するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に係るリチウム遷移金属複合酸化物の製造は、スラリーを噴霧乾燥し、これを焼成処理に共す方法によって行われるが、まず、噴霧乾燥に共されるスラリーについて詳述する。
上記スラリーは、リチウム源及び遷移金属源を含有する分散媒中に、周期表2A族元素の水酸化物が配合されてなるが、無論、これら以外の構成成分を更に含有していてもよい。
【0010】
スラリーに配合される周期表2A族元素の水酸化物としては、特に制限はなく、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等の水酸化物を用いることができる。周期表2A族元素の水酸化物を用いることによって、スラリーの保存安定性が改善される。さらに、価数が2価であるこれら周期表2A族元素は、これまで多く用いられてきた3価の置換金属元素に比べて、Mnサイトを置換した場合のMn3価を4価にする能力が2倍である。即ち、理論的に3価の置換金属元素を用いる場合の半分の量で同じ量のMn3価を4価にすることができ、置換量としてはより少量で目的を達成できる利点もある。周期表2A族元素の水酸化物のうち、好ましいものは水酸化マグネシウムである。水酸化マグネシウムを用いることによって、スラリーのより高い安定性を確保することができる。尚、周期表2A族元素の水酸化物は、スラリー中で、周期表2A族元素の陽イオンとOH- とに解離していてもよい。
【0011】
スラリーに含有されるリチウム源としては、各種リチウム原料をスラリーの分散媒に溶解又は分散して得られる、Liを含有する各種のリチウム化合物、リチウムイオン等を挙げることができる。リチウム原料としては、例えば、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiOH・H2O、Li2O、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アルキルリチウム、リチウムハロゲン化物等を挙げることができる。より具体的には、例えば、Li2CO3、LiNO3、LiOH、LiOH・H2O、LiCl、LiI、酢酸Li、Li2O等を挙げることができる。無論これらリチウム原料を複数種用いてもよい。また、これらリチウム原料は、スラリー中でLi+とアニオンとに解離していてもよい。これらリチウム原料の中で好ましいのは、Li2CO3、LiNO3、LiOH・H2O、酢酸Liである。また、特に好ましいリチウム原料は、LiOH・H2Oである。この化合物は水溶性のリチウム化合物であるため、分散媒が水の場合にスラリー中の拡散効率や均一性が向上するだけでなく、N及びS等を含まない化合物なので、リチウム遷移金属複合酸化物の焼成工程の際に、NOx及びSOx等の有害物質を発生させない利点をも有する。
【0012】
スラリーに含有される遷移金属源としては、各種の遷移金属原料をスラリーの分散媒中に溶解又は分散して得られる、各種の遷移金属化合物、遷移金属イオンを挙げることができる。遷移金属原料としては、例えば、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、銅等の各種の遷移金属を含有するものを挙げることができる。また通常、遷移金属原料としては、遷移金属の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸等の有機酸塩、水酸化物、オキシ水酸化物、ハロゲン化物等を挙げることができる。無論、これらを複数種併用することもできる。また、これら遷移金属原料は、スラリー中で遷移金属カチオンとアニオンに解離していてもよい。
【0013】
遷移金属源は、好ましくは、マンガン原料を分散媒に溶解又は分散して得られるものである。マンガン原料としては、例えば、Mn34、Mn23、MnO2、MnCO3、Mn(NO32、MnSO4、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン、マンガンオキシ水酸化物、マンガン水酸化物、及びマンガンハロゲン化物からなる群から選ばれた少なくとも一種を挙げることができる。これらマンガン原料の中でも、Mn23、MnO2、Mn34は、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物を得ようとする場合に最終目的物のマンガン酸化数に近い価数を有しているため好ましい。さらに工業原料として安価に入手できる観点、及び湿式粉砕を行う際に反応性が高いという観点から、特に好ましいのはMn23である。
【0014】
リチウムと、遷移金属と、周期表2A族元素とのモル比は、目的とする遷移金属複合酸化物中のこれら元素のモル比に応じて適宜選択することができる。周期表2A族元素の遷移金属元素に対する比が大きすぎると目的とする結晶構造が得にくくなったり、電池特性が低下することがあるので、周期表2A族元素の遷移金属に対する比率は、モル比率で、通常0.1以下とする。ただし、この比率が小さすぎると周期表2A族元素を存在させる効果が有効に発揮されないことがあるので、通常0.001以上とする。
【0015】
例えば、スピネル型リチウムマンガン複合酸化物を製造する時、リチウム:遷移金属:周期表2A族元素のモル比ををR1 :R2 :R3 と表した場合、通常0<R1 ≦1.5、好ましくは0.9≦R1 ≦1.2であり、1.0≦R2 <2、好ましくは1.8≦R2 <2であり、通常0<R3 ≦1、好ましくは0<R3 ≦0.2である。
【0016】
スラリーに用いられる分散媒としては、各種の有機溶媒、水性溶媒を使用することができるが、好ましいのは水である。
スラリー全体の重量に対する、リチウム原料、遷移金属原料及び2A族元素の水酸化物の総重量比は、通常10重量%以上、好ましくは12.5重量%以上、通常50重量%以下、好ましくは35重量%以下である。重量比が上記範囲以下の場合は、上記の各成分の合計量が極端に希薄なため噴霧乾燥により生成した球状粒子が必要以上に小さくなったり破損しやすくなったりする一方で、上記範囲以上となると、リチウム原料の飽和溶解度を超えることによりリチウム原料が溶解しきれずスラリーの均一性が保ちにくくなる場合がある。
尚、本発明のスラリーは、周期表2A族元素の水酸化物が固体として析出し、更に場合により、リチウム原料及び/又は遷移金属原料の一部が析出したものであってもよい。
【0017】
スラリー中の固形物の平均粒子径は通常2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下とする。スラリー中の固形物の平均粒子径が大きすぎると、焼成工程における反応性が低下するだけでなく、球状度が低下し、最終的な粉体充填密度が低くなる傾向にある。この傾向は、平均粒子径で50μm以下の造粒粒子を製造しようとした場合に特に顕著になる。また、必要以上に小粒子化することは、粉砕のコストアップに繋がるので、固形物の平均粒子径は通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上とする。
【0018】
スラリー中の固形物の平均粒子径を制御する方法としては、原料化合物を予めボールミル、ジェットミル等により乾式粉砕し、これを分散媒に攪拌等によって分散させる方法、原料化合物を分散媒に攪拌等によって分散後、媒体攪拌型粉砕機等を使用して湿式粉砕する方法等を挙げることができる。本発明においては、原料化合物を分散媒に分散後、媒体攪拌型粉砕機等を使用して湿式粉砕する方法を用いることが好ましい。湿式粉砕することによって、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0019】
尚、本発明においては、前記スラリー中の固形分の平均粒子径、後述する噴霧乾燥後の造粒粒子の平均粒子径及びリチウム遷移金属複合酸化物の平均粒子径は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。この方法の測定原理は下記の通りである。すなわち、スラリー又は粉体を分散媒に分散させ、該試料溶液にレーザー光を照射し、粒子に入射されて散乱(回折)した散乱光をディテクタで検出する。検出された散乱光の散乱角θ(入射方向と散乱方向の角度)は、大きい粒子の場合は前方散乱(0<θ<90°)となり、小さい粒子の場合は側方散乱又は後方散乱(90°<θ<180°)となる。測定された角度分布値から、入射光波長及び粒子の屈折率等の情報を用いて粒子径分布を算出する。更に得られた粒子径分布から平均粒子径を算出する。測定の際に用いる分散媒としては、例えば0.2重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を挙げることができる。
【0020】
また、噴霧乾燥に供される状態でのスラリーの粘度は、通常50mPa・s以上、好ましくは100mPa・s以上、特に好ましくは200mPa・s以上、通常3000mPa・s以下、好ましくは1000mPa・s以下、特に好ましくは800mPa・s以下である。粘度が上記範囲以下の場合は、噴霧乾燥により生成した球状粒子が必要以上に小さくなったり破損しやすくなったりする一方で、上記範囲以上となると、噴霧乾燥時のスラリー輸送に用いるチューブポンプでの吸引ができなくなる等取り扱いが困難になる。
【0021】
尚、スラリーの粘度測定は、公知のBM型粘度計を用いて行うことができる。BM型粘度計は、室温大気中において所定の金属製ローターを回転させる方式を採用する測定方法である。スラリーの粘度は、ローターをスラリー中に浸した状態でローターを回転させ、その回転軸にかかる抵抗力(捻れの力)から算出される。但し、室温大気中とは気温10℃〜35℃、相対湿度20%RH〜80%RHの通常考えられる実験室レベルの環境を示す。
【0022】
さらに、本発明においては、スラリーを室温大気中で30日保存した後に測定されるスラリー粘度の、保存前のスラリー粘度に対する変化率(下記式を参照)が、通常80%以上、好ましくは90%以上、通常120%以下、好ましくは118%以下である。本発明においては、粘度変化率を上記範囲内に抑えることにより、工業生産の利便性が向上する。
【0023】
【数1】
粘度変化率[%]={(室温大気中で30日保存後のスラリー粘度)/(保存前のスラリー粘度)}×100
得られたスラリーを、噴霧乾燥後、これを焼成処理に共することによってリチウム遷移金属複合酸化物とすることができる。噴霧乾燥の方法は特に制限されないが、例えば、ノズルの先端に気体流とスラリーとを流入させることによってノズルからスラリー成分の液滴(本明細書においては、これを単に「液滴」という場合がある。)を吐出させ、適当な乾燥ガス温度や送風量を用いて飛散した該液滴を迅速に乾燥させる方法を用いることができる。気体流として供給する気体としては、空気、窒素等を用いることができるが、通常は空気が用いられる。これらは加圧して使用することが好ましい。気体流は、ガス線速として、通常100m/s以上、好ましくは200m/s以上、さらに好ましくは300m/s以上で噴射される。あまり小さすぎると適切な液滴が形成しにくくなる。ただし、あまりに大きな線速は得にくいので、通常噴射速度は1000m/s以下である。使用されるノズルの形状は、微少な液滴を吐出することができるものであればよく、従来から公知のもの、例えば、特許第2797080号公報に記載されているような液滴を微細化できるようなノズルを使用することもできる。尚、液滴は、環状に噴霧されることが生産性向上の点で好ましい。飛散した液滴は、これを乾燥する。前述の通り、飛散した該液滴を迅速に乾燥させるように、適当な温度や送風等の処理が施されるが、乾燥塔上部から下部に向かいダウンフローで乾燥ガスを導入するのが好ましい。この様な構造とすることにより、乾燥塔単位容積当たりの処理量を大幅に向上させることができる。また、液滴を略水平方向に噴霧する場合、水平方向に噴霧された液滴をダウンフローガスで抑え込むことにより、乾燥塔の直径を大きく低減させることが可能となり、安価且つ大量に製造することが可能となる。乾燥ガス温度は、通常50℃以上、好ましくは70℃以上とし、通常120℃以下、好ましくは100℃以下とする。温度が高すぎると、得られた造粒粒子が中空構造の多いものとなり、粉体の充填密度が低下する傾向にあり、一方、低すぎると粉体出口部分での水分結露による粉体固着・閉塞等の問題が生じる可能性があある。
【0024】
この様に噴霧乾燥することによって造粒粒子が得られるが、造粒粒子径としては、平均粒子径で好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下となるようにする。ただし、あまりに小さな粒径は得にくい傾向にあるので、通常は4μm以上、好ましくは5μm以上である。造粒粒子の粒子径は、噴霧形式、加圧気体流供給速度、スラリー供給速度、乾燥温度等を適宜選定することによって制御することができる。
【0025】
かかる処理により得られた造粒粒子は、次いで焼成処理される。焼成温度としては、原料として使用される遷移金属、置換元素の種類によって異なるものの、通常、500℃以上であり、また1000℃以下とするのが通常である。温度が低すぎると、結晶性の良いリチウム遷移金属複合酸化物を得るために長時間の焼成時間を要する傾向にある。また、温度が高すぎると、目的とするリチウム遷移金属複合酸化物以外の結晶相が生成するか、あるいは欠陥が多いリチウム遷移金属複合酸化物を生成する結果となり、二次電池とした際に容量の低下あるいは充放電による結晶構造の崩壊による劣化を招くことがある。
【0026】
一方、焼成の時間は温度によっても異なるが、通常前述の温度範囲であれば30分以上、50時間以下である。焼成時間が短すぎると結晶性の良いリチウム遷移金属複合酸化物が得られにくくなり、また長すぎるのはあまり実用的ではない。
結晶欠陥が少ないリチウム遷移金属複合酸化物を得るためには、焼成反応後、ゆっくりと冷却することが好ましく、例えば5℃/min.以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。
【0027】
焼成時の雰囲気は、製造する化合物の組成や構造に応じて、空気等の酸素含有ガス雰囲気や、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気とすることができる。例えば、層状構造のリチウムマンガン複合酸化物を製造する場合には真空中あるいは窒素やアルゴン等の不活性雰囲気中で行うことが好ましく、LiCoO2系、LiNiO2系、或いはスピネル型リチウムマンガン複合酸化物等を製造する際には、少なくとも徐冷過程においては、大気中あるいは酸素中等の酸素含有雰囲気中で行うことが好ましい。
【0028】
焼成に使用する加熱装置は、上記の温度、雰囲気を達成できるものであれば特に制限はなく、例えば箱形炉、管状炉、トンネル炉、ロータリーキルン等を使用することができる。かくして得られたリチウム遷移金属複合酸化物は、平均1次粒径としては、通常0.01μm以上、好ましくは0.02μm以上、更に好ましくは0.1μm以上、通常30μm以下、好ましくは3μm以下、更に好ましくは0.5μm以下である。また、平均2次粒径は通常1μm以上、好ましくは4μm以上、通常50μm以下、好ましくは40μm以下である。さらに、窒素吸着による比表面積が0.1〜5m/gであることが好ましい。1次粒子の大きさは、焼成温度、焼成時間等により制御することが可能であり、これらの1つ以上を増加させることにより、1次粒子の粒子径を大きくすることができる。2次粒子の粒子径は、噴霧乾燥工程における気液比等の噴霧条件により制御することが可能である。比表面積は1次粒子の粒径および2次粒子の粒径により制御することが可能であり、1次粒子の粒径及び/又は2次粒子の粒径を大きくすることにより減少する。又、粉体充填密度は、タップ密度(200回タップ後)で、通常は0.80g/mL以上、好ましくは1.0g/mL以上、さらに好ましくは1.50g/mL以上である。粉体充填密度は高ければ高いほど単位容積あたりのエネルギー密度を大きくすることができるが、現実的には3.00g/mL以下であり、通常2.5g/mL以下である。
【0029】
製造されるリチウム遷移金属複合酸化物としては、例えば、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物等各種のものが挙げられる。
本発明の製造方法は、中でも、スピネル型の構造を有するリチウムマンガン複合酸化物を製造するのに好適である。上記スピネル型リチウムマンガン複合酸化物の具体的な基本組成は、LiMn24と表すことができるが、リチウムとマンガンと酸素との比は必ずしも厳密である必要はない。また、本発明においては、スラリーに、周期表2A族元素の水酸化物が含有される関係上、通常マンガンサイトの一部が該元素で置換される。
【0030】
得られたリチウム遷移金属複合酸化物を活物質として、電極さらには電池を作製することができる。例えば、電池の一例としては、正極、負極、電解質を有するリチウム二次電池が挙げられる。具体的には、正極と負極との間には電解質が存在し、かつ必要に応じてセパレーターが正極と負極が接触しないようにそれらの間に配置された二次電池を挙げることができる。
【0031】
正極は、例えば、本発明で得られたリチウム遷移金属複合酸化物(正極活物質)とバインダーと必要に応じて導電剤を有する合剤に、これらを均一に分散させる為の溶媒を一定量で混合して塗料とした後、集電体上に塗布・乾燥することによって得ることができる。ここで用いられる導電材としては、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック等を挙げることができ、またバインダーとしてはポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等が、分散用の溶媒としてはN−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。集電体の材質としてはアルミニウム、ステンレス等が挙げられる。正極は、通常、集電体上に正極合剤層を形成後、通常、ローラープレス、その他の手法により圧密する。
【0032】
一方、負極としては、カーボン系材料(天然黒鉛、熱分解炭素等)をCu等の集電体上に塗布したもの、或いはリチウム金属箔、リチウム−アルミニウム合金等が使用できる。
リチウム二次電池に使用する電解質は非水電解液であり、通常電解塩を非水系溶媒に溶解してなる。電解塩としてはLiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiBr、LiCF3SO3等のリチウム塩が挙げられる。また、非水系溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これら電解塩や非水系溶媒は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
【0033】
電池に用いられるセパレーターとしては、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の高分子、又はガラス繊維等の不織布フィルター、或いはガラス繊維と高分子繊維の複合不織布フィルター等を挙げることができる。
【0034】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて更に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない
<実施例1>
LiOH・H2O、Mn23、Mg(OH)2をそれぞれ最終的なスピネル型リチウムマンガン複合酸化物中の組成で、Li:Mn:Mg=1.04:1.94:0.06(モル比)となるように秤量し、これに純水を加えて固形分濃度30重量%のスラリーを調整した。このスラリーを攪拌しながら、循環式媒体攪拌型湿式粉砕機(シンマルエンタープライゼス社製:ダイノーミルKDL−A型)を用いて、スラリー中の固形分の平均粒子径が0.29μmになるまで粉砕した。300mlポットを用い、粉砕時間は6時間であった。このスラリーの粘度をBM型粘度計(トキメック社製)により測定した。測定は室温大気中で行い、特定の金属製ローターを装置本体の回転軸に固定し、該ローターをスラリー液面下に浸し、回転軸を回転させてローターにかかる抵抗力(捻れの力)により粘度を算出した。その結果、初期粘度は2030mPa・s、30日保存後の粘度は1930mPa・sで、粘度変化率は95.1%であった。これにより、粘度が非常に高い水準でもスラリー粘度の経時変化が小さく安定して保存できることが確認できた。
【0035】
このスラリーを噴霧乾燥に適した粘度(700mPa・s程度)まで水で希釈した後、二流体ノズル型スプレードライヤー(大川原化工機社製:L−8型スプレードライヤー)を用いて噴霧乾燥を行った。この時の乾燥ガスとして空気を用い、乾燥ガス導入量は45m3/min、乾燥ガス入り口温度は90℃とした。そして、噴霧乾燥により得られた造粒粒子を850℃で10時間焼成することにより、ほぼ仕込み通りのモル比組成を有するリチウムマンガン複合酸化物を得た。
【0036】
得られたリチウムマンガン複合酸化物は、平均二次粒子径10.3μm、最大粒径26μmのほぼ球状の形状を有する粒子であった。
尚、スラリー中の固形分の平均粒子径及び得られたリチウムマンガン複合酸化物の平均粒子径・最大粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製:LA−920型粒度分布測定装置)を用いて求めた。具体的には、室温大気中で、スラリー又は焼成物粉末を0.2重量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液に超音波分散及び攪拌により分散させ、透過率を70%〜95%の間に調節し、測定される粒度分布より平均粒径及び最大粒径を求めた。
【0037】
得られたリチウムマンガン複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、立方晶のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の構造を有していることが確認された。この粉末10gを25mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.7g/mLであった。
<実施例2>
以下の(1)、(2)以外は実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
(1)スラリーの粉砕時間を4時間にして、スラリー中の固形分の平均粒子径を0.56μmとなるようにしたこと。
(2)スラリー中の固形分の平均粒径が実施例1と比較して大きい分、スラリー粘度が低くなるため、噴霧乾燥に適した粘度にスラリーを調整する必要がなく水での希釈工程を行わなかったこと。
【0038】
尚、噴霧乾燥に共される状態でのスラリー粘度は520mPa・s、室温大気中で30日保存した後のスラリー粘度は510mPa・sで、粘度変化率は98.1%であった。得られたリチウムマンガン複合酸化物は、平均粒子径10.7μm、最大粒径30μmであり、ほぼ球状の形状を有する粒子であった。また、得られたリチウムマンガン複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、立方晶のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の構造を有していることが確認された。この粉末10gを25mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.6g/mLであった。
<実施例3>
以下の(1)、(2)以外は実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
(1)スラリーの粉砕時間を2時間にして、スラリー中の固形分の平均粒子径を0.63μmとなるようにしたこと。
(2)スラリー中の固形分の平均粒径が実施例1と比較して大きい分、スラリー粘度が低くなるため、噴霧乾燥に適した粘度にスラリーを調整する必要がなく水での希釈工程を行わなかったこと。
【0039】
尚、噴霧乾燥に共される状態でのスラリーの粘度は250mPa・s、室温大気中で30日保存した後のスラリーの粘度は290mPa・sで、粘度変化率は116.0%であった。得られたリチウムマンガン複合酸化物は、平均粒子径10.8μm、最大粒径30μmであり、ほぼ球状の形状を有する粒子であった。また、得られたリチウムマンガン複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、立方晶のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の構造を有していることが確認された。この粉末10gを25mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.6g/mLであった。
<比較例1>
以下の(1)、(2)、(3)以外は実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
(1)原料の水酸化マグネシウムMg(OH)を酸化マグネシウムMgOに置き換えたこと。
(2)スラリーの粉砕時間を2時間にして、スラリー中の固形分の平均粒子径を0.71μmとなるようにしたこと。
(3)スラリー中の固形分の平均粒径が実施例1と比較して大きい分、スラリー粘度が低くなるため、噴霧乾燥に適した粘度にスラリーを調整する必要がなく水での希釈工程を行わなかったこと。
【0040】
尚、噴霧乾燥に共される状態でのスラリーの粘度は255mPa・s、室温大気中で30日保存した後のスラリーの粘度は630mPa・sで、粘度変化率は247.1%であり、激しく増粘した。得られたリチウムマンガン複合酸化物は、平均粒子径11.5μm、最大粒径30μmであり、ほぼ球状の形状を有する粒子であった。また、得られたリチウムマンガン複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、立方晶のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の構造を有していることが確認された。この粉末10gを25mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.6g/mLであった。
<比較例2>
以下の(1)、(2)、(3)、(4)以外は実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
(1)原料の水酸化マグネシウムMg(OH)を水酸化コバルトCo(OH)に置き換えたこと。
(2)最終生成物中のCo酸化数が3価であることを考慮して、Mnサイトを置換することによりMn3価を4価にする能力がMg2価の1/2倍であると計算して、それぞれ最終的なスピネル型リチウムマンガン複合酸化物中の組成でLi:Mn:Co=1.04:1.88:0.12(モル比)となるように秤量したこと。
(3)スラリーの粉砕時間を4時間にして、スラリー中の固形分の平均粒子径を0.44μmとなるようにしたこと。
(4)スラリー中の固形分の平均粒径が実施例1と比較して大きい分、スラリー粘度が低くなるため、噴霧乾燥に適した粘度にスラリーを調整する必要がなく水での希釈工程を行わなかったこと。
【0041】
尚、噴霧乾燥に共される状態でのスラリーの粘度は850mPa・s、30日後のスラリーの粘度は1600mPa・sで、粘度変化率は188.2%であり、激しく増粘した。得られたリチウムマンガン複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、立方晶のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の構造を有していることが確認された。この粉末10gを25mlのガラス製メスシリンダーに入れ、200回タップした後の粉体充填密度(タップ密度)を測定した結果、1.7g/mLであった。
<比較例3>
以下の(1)、(2)以外は実施例1と同様にしてリチウムマンガン複合酸化物を得た。
(1)原料の水酸化マグネシウムMg(OH)をベーマイトAlOOHに置き換えたこと。
(2)最終生成物中のAl酸化数が3価であることを考慮して、Mnサイトを置換することによりMn3価を4価にする能力がMg2価の1/2倍であると計算して、それぞれ最終的なスピネル型リチウムマンガン複合酸化物中の組成でLi:Mn:Al=1.04:1.88:0.12(モル比)となるように秤量した。
【0042】
噴霧乾燥に共される状態でのスラリーの粘度は1200mPa・s、30日後のスラリーの粘度は1700mPa・sで、粘度変化率は141.7%であり、激しく贈粘した。
得られたリチウムマンガン複合酸化物の粉末X線回折を測定したところ、立方晶のスピネル型リチウムマンガン複合酸化物の構造を有していることが確認された。
<電池評価試験例>
以下の方法で本発明の実施例及び比較例の電池評価を行った。
A.正極の作製と容量確認及びレート試験
実施例及び比較例で得られたリチウムマンガン複合酸化物を75重量%、アセチレンブラック20重量%、ポリテトラフルオロエチレンパウダー5重量%の割合で秤量したものを乳鉢で十分混合し、薄くシート状にしたものを9mmφ、12mmφのポンチを用いて打ち抜いた。この際、全体重量は各々約8mg、約18mgになるように調整した。これをAlのエキスパンドメタルに圧着して正極とした。ここで、Li金属を対極としてコインセルを組んだ場合には9mmφに打ち抜いた正極を使用し、炭素材料を活物質とする負極を対極としてコインセルを組んだ場合には12mmφに打ち抜いた正極を使用した。
【0043】
9mmφに打ち抜いた前記正極を試験極とし、Li金属を対極としてコインセルを組んだ。これに、0.5mA/cm2の定電流充電、即ち正極からリチウムイオンを放出させる反応を上限4.35Vで行い、ついで0.5mA/cm2の定電流放電、即ち正極にリチウムイオンを吸蔵させる反応を下限3.2Vで行った際の正極活物質単位重量当たりの初期充電容量をQs(C)mAh/g、初期放電容量をQs(D)mAh/gとした。
B.負極の作製と容量確認
負極活物質としての平均粒径約8〜10μmの黒鉛粉末(d002=3.35Å)と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデンとを重量比で92.5:7.5の割合で秤量し、これをN−メチルピロリドン溶液中で混合し、負極合剤スラリーとした。このスラリーを20μmの厚さの銅箔の片面に塗布し、乾燥して溶媒を蒸発させた後、12mmφに打ち抜き、0.5ton/cm2でプレス処理をしたものを負極とした。
【0044】
なお、この負極を試験極とし、Li金属を対極として電池セルを組み、0.2mA/cm2の定電流で負極にLiイオンを吸蔵させる試験を下限0Vで行った際の負極活物質単位重量当たりの初期吸蔵容量をQfmAh/gとした。
C.コインセルの組立
図1に示す構成のコイン型セルを使用して、電池性能を評価した。即ち、正極缶1の上に正極2を置き、その上にセパレータ3として厚さ25μmの多孔性ポリエチレンフィルムを置き、ポリプロピレン製ガスケット4で押さえた後、負極5を置き、厚み調整用のスペーサー6を置いた後、非水電解液溶液として、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させたエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の体積分率3:7の混合溶媒を電解液として用い、これを電池内に加えて十分しみ込ませた後、負極缶7をのせ電池を封口した。なおこの時、正極活物質の重量と負極活物質重量のバランスは、ほぼ
【0045】
【数2】
正極活物質重量[g]/負極活物質重量[g]=(Qf/1.2)/Qs(C)
となるように設定した。
D.サイクル試験
このように得られた電池の高温特性を比較するため、電池の1時間率電流値、即ち1Cを
【0046】
【数3】
1C[mA]=Qs(D)×正極活物質重量[g]
と設定し、以下の試験を行った。
まず室温で定電流0.2C充放電2サイクル及び定電流1C充放電1サイクルを行い、次に50℃の高温で定電流0.2C充放電1サイクル、ついで定電流1C充放電100サイクルの試験を行った。なお充電上限は4.2V、下限電圧は3.0Vとした。
【0047】
この時50℃での1C充放電100サイクル試験部分の1サイクル目放電容量Qh(1)に対する、100サイクル目の放電容量Qh(100)の割合を高温サイクル容量維持率P、即ち
【0048】
【数4】
P[%]={Qh(100)/Qh(1)}×100
とし、この値で電池の高温特性を比較した。
表−1に、前記実施例及び比較例で得られた正極材料を用いた電池の50℃サイクル試験における初期放電容量と高温サイクル容量維持率、スラリーの粘度変化率、及びリチウムマンガン複合酸化物のタップ密度を示す。表−2に、電流密度0.5mA/cm2での初期放電容量をQs(D)mAh/gを示す。
【0049】
【表1】
Figure 0004872156
【0050】
【表2】
Figure 0004872156
表−1のスラリー粘度変化率のデータから、本発明によって保存安定性が格段に改善されたスラリーを得ることが可能であることがわかる。また表−1、2の電池特性データ(容量維持率、初期放電容量)より、実施例のリチウム二次電池の電池特性は、比較例のリチウム二次電池の電池特性とほぼ同等であり、良好な電池性能を示すことがわかる。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、保存安定性が格段に改良されたスラリーを得ることができ、該スラリーは工業生産に用いるのに好適である。従って該スラリーを原料とする本発明に係る製造方法により、充填密度が高く、電池性能的にも良好なリチウム遷移金属複合酸化物を安価かつ大量に製造することが可能となる。
【0052】
そして、このように充填密度が高められたリチウム遷移金属複合酸化物をリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用することにより、単位容積当たりのエネルギー密度が向上し、同じ大きさの電池の場合には高容量の電池が得られ、又同じエネルギー容量であれば、より小型化された電池を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 コインセルの電池の構造例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 正極缶
2 正極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 負極
6 スペーサー
7 負極缶

Claims (10)

  1. リチウム源及び遷移金属源を分散媒中で湿式粉砕して得られるスラリーを、焼成処理に供するリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法であって、該遷移金属源が、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つの遷移金属を含有したものであり、該分散媒中に水酸化マグネシウムを含有させ、該スラリー中の固形分の平均粒子径を2μm以下にすることを特徴とするリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  2. スラリーを室温大気中で30日保存した後に測定されるスラリー粘度の、保存前のスラリー粘度に対する変化率が80%〜120%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。但し、室温大気中とは気温10℃〜35℃、相対湿度20%RH〜80%RHの環境を示す。
  3. リチウム源が、LiCO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiO、ジカルボン酸リチウム、クエン酸リチウム、脂肪酸リチウム、アルキルリチウム、及びリチウムハロゲン化物からなる群から選ばれた少なくとも一種のリチウム原料を分散媒に溶解又は分散して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  4. リチウム源が、LiCO、LiNO、LiOH・HO、及び酢酸Liからなる群から選ばれた少なくとも一種のリチウム原料を分散媒に溶解又は分散して得られるものであることを特徴とする請求項3に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  5. 遷移金属源が、マンガン原料を分散媒に溶解又は分散して得られるものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  6. マンガン原料が、Mn、Mn、MnO、MnCO、Mn(NO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン、クエン酸マンガン、脂肪酸マンガン、マンガンオキシ水酸化物、マンガン水酸化物、及びマンガンハロゲン化物からなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項5に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  7. スラリーを噴霧乾燥し、これを焼成処理に供することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  8. 噴霧乾燥の際にスラリーの液滴を環状に噴霧させることを特徴とする請求項7に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  9. 得られるリチウム遷移金属複合酸化物の平均二次粒子径を1〜50μmとすることを特徴とする請求項7又は8に記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
  10. 得られるリチウム遷移金属複合酸化物の、粉末10gを25mLのガラス製メスシリンダーに入れ200回タップした後のタップ密度が0.8g/mL〜3.0g/mLの範囲にあることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のリチウム遷移金属複合酸化物の製造方法。
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