JP4864327B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、硬化物の接着強度を向上させながらも常温で優れた伸びを有し靭性に優れる熱硬化性エポキシ樹脂組成物に関するものである。
従来、エポキシ樹脂はその硬化物の強度や弾性率が大きいこと、接着強度が大きいこと、耐熱性に優れていること、耐薬品性に優れていることなどが知られ、広い工業分野において利用されている。
しかし、エポキシ樹脂を用いた組成物は、上記のような特長はあるものの、その硬化物は非常に脆いという欠点がある。これは熱等により硬化させた後に、その硬化物は多少の歪みにより破壊されることを意味しており、種々の用途において非常に問題となる。例えば、自動車、家電、その他の応用製品に組み込まれる電気部品に使用される場合、脆い硬化物であると機械的振動や熱による膨張収縮によりひび割れが発生し、腐食や性能低下の原因となり好ましくない。
硬化物の脆さを解消するために、ブタジエン骨格を有するゴム状材料を添加することが試みられている(特許文献1参照)。しかし、添加する量があまり多くないため、その硬化物がゴム等の弾性体のように伸縮性を帯びるほど柔軟な硬化物を得ることは困難である。
また、エポキシ樹脂自体の変性を行うことも試みられている(特許文献2参照)。当該特許において、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを5モル付加した化合物をグリシジルエーテル化して得たエポキシ樹脂化合物を用いており、それを用いた硬化物は可撓性を有するものの優れた伸びという点においては十分でなかった。
また、本発明者らは、硬化物に可撓性、靭性を付与するエポキシ樹脂組成物を提案している(特許文献3参照)。しかし、それは常温での硬化物の伸縮性において十分でなかった。
特開平07−268079号公報 特開2003−246837号公報(請求項4および段落30) 特願2004−248872(請求項1および2)
本発明は、硬化物の接着強度を向上しつつも常温で優れた伸びを有し靱性に優れる性能を発現する熱硬化性エポキシ樹脂組成物を提供する事を目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、後述するエポキシ樹脂およびアミン系硬化剤を必須成分として含有する熱硬化性樹脂組成物が上記の目的を達成しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はグリコールのグリシジルエーテルとフェノール類化合物を反応させて得られる化合物であり、下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(A)および一般式(2)、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミンおよびポリオキシペンチレントリアミンから選ばれる1種または2種以上である硬化剤(B)からなる熱硬化性エポキシ樹脂組成物を用いることにより上記目的を達成できることを見出した。
Figure 0004864327
(mは1〜20の自然数、nは1〜14の自然数、Xはハロゲン原子またはC1〜5のアルキル基、aおよびbは0〜4の整数、GおよびGはグリシジル基又は水素原子(ただし、G1、G2が同時に水素原子であることはない)、RはC1 〜10のアルキレン基またはアルキリデン基、Rはアルキレン基、アルキリデン基、スルホニル基、酸素原子または原子団の存在しない直接結合を示す。)
Figure 0004864327
(nは1〜40の自然数、RはC1〜10のアルキレン基またはアルキリデン 基を示す。)
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、優れた可撓性および接着性を示し、エポキシ樹脂硬化物として特筆すべき伸び率を示すという特長を有する。これらの特長から、本発明により得られるエポキシ樹脂組成物を用いることにより、応力が加わっても容易には破壊されず、傷が入っても割れにくい硬化物を作成する効果を発現することができる。
本発明における一般式(1)で示されるエポキシ樹脂<以下、(A)成分ともいう>はグリコールのグリシジルエーテル化合物とフェノール類化合物から合成される。このグリコールのグリシジルエーテル化合物は、少なくとも一つ好ましくは二つのグリシジルエーテルを有する化合物であり以下のものがある。すなわち、メチレングリコール,ジメチレングリコール,トリメチレングリコールおよびポリメチレングリコールのグリシジルエーテル、エチレングリコール,ジエチレングリコール,トリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールのグリシジルエーテル、プロピレングリコール,ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールのグリシジルエーテル、テトラメチレングリコール,ジテトラメチレングリコール,トリテトラメチレングリコール,ポリテトラメチレングリコールのグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのグリシジルエーテルなどが挙げられ、好ましくはポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルおよびネオペンチルグリコールのグリシジルエーテルが用いられる。これらの脂肪族骨格を導入することにより、(A)成分の可撓性を向上することができる。
また、本発明における(A)成分を合成するために用いられるもう一方の化合物であるフェノール類化合物としては、ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、テトラメチルビフェノール、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールF、テトラブロモビスフェノールSなどが挙げられ、好ましくはビフェノールおよびビスフェノールAが用いられる。これらの芳香族骨格を導入することにより、(A)成分の機械強度および耐熱性を向上することができる。
上記(A)成分を公知の技術を用いて数平均分子量が通常600〜5000の範囲、好ましくは800〜4500の範囲、より好ましくは900〜4000の範囲になるようエポキシオリゴマー化物の合成を行う。
分子量が600より小さい場合には、それを用いた硬化物は十分な伸びを示さず所望の効果を発現することができなくなる。一方、分子量が5000より大きい場合には化合物の粘度が数十万mPa・s(25℃)以上と大きくなるので、当該化合物を多量配合すると配合樹脂としての粘度は高くなり取り扱いが難しくなり好ましくない。
(A)成分は必須成分であるが、硬化物の物性を悪くしない範囲で任意の他のエポキシ樹脂を配合し、主剤となるエポキシ樹脂を構成することができる。
(A)成分以外のエポキシ樹脂として使用することのできる樹脂としては、少なくとも一つ好ましくは二つ以上のオキシラン環を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は必要に応じて二種類以上配合して使用しても良い。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトールなどのポリグリシジルエーテル、およびグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトールなどのアルキレンオキサイド付加体のポリグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールにアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
脂環式エポキシ樹脂は、特に限定されるものではないが、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられる。
(A)成分の配合割合は、エポキシ樹脂全体(本発明でいうところの(A)成分とそれ以外のエポキシ成分の総和)の通常60〜100重量%、好ましくは75〜100重量%である。
(A)成分以外のエポキシ樹脂の配合割合は、エポキシ樹脂全体(本発明でいうところの(A)成分とそれ以外のエポキシ成分の総和)の通常0〜40重量%、好ましくは0〜25重量%である。
本発明に係る熱硬化性エポキシ樹脂組成物において使用する硬化剤<以下、(B)成分ともいう>は、一般式(2)、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミンおよびポリオキシペンチレントリアミンから選ばれるいわゆるアミン化合物である。
Figure 0004864327
(nは1〜40の自然数、RはC1〜10のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。)
(B)成分として使用することのできる硬化剤としては特に限定されないが、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン、ポリオキシペンチレンジアミン、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミン、ポリオキシペンチレントリアミンなどが挙げられる。好ましくは、ポリオキシプロピレンジアミンが用いられる。
また、(B)成分のポリオキシアルキレンポリアミン誘導体とは、一般式(2)または一般式(3)のアミン部位の一部または全部を既知の方法で変性した化合物である。既知の変性方法としては、カルボン酸による変性(ポリアミノアミド)、エポキシ化合物による変性(アミン−エポキシアダクト化合物)、ミカエル反応(マイケル付加ポリアミン)、マンニッヒ反応、尿素またはチオ尿素との反応、ケトンによる変性(ケチミン、シッフ塩基)などが挙げられる。これら(B)成分は単独または併用して用いることができる。
(B)成分以外にも、必要に応じて他の硬化剤を併用することができる。他の硬化剤としては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミンなどのアミン系硬化剤または一般的な酸無水物などが挙げられる。これらを任意に選択し、単独または2種以上を併用して用いることができる。
(B)成分の配合割合は、硬化剤全体(本発明でいうところの(B)成分とそれ以下のアミン化合物等の総和)の通常60〜100重量%、好ましくは75〜100%である。
硬化剤全体の配合量は、エポキシ樹脂全体のエポキシ当量により決められ、エポキシ当量1に対し、硬化剤の当量が、通常は0.8〜1.2、より好ましくは0.9〜1.0となる量を配合する。
本発明の熱硬化性エポキシ樹脂組成物には、硬化物の物性を損なわない範囲において、上記の成分以外に硬化促進剤を加えることができる。この硬化促進剤を加えることにより、硬化速度を早くすることができ生産性の向上につながり好ましい。
硬化促進剤として使用することのできる化合物としては特に限定されないが、2−エチル−4−メチルイミダゾール<2E4MZ>、2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール<2E4MZ−CN>、2,4−ジアミノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]エチル−s−トリアジン<2MZ−A>、2−フェニルイミダゾリン<2PZL>2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール<TBZ>等のイミダゾール類、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール<DMP−30>、ベンジルジメチルアミン<BDMA>、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセンー7<DBU>等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、三級アミン塩、四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、オクチル酸スズ等の金属塩等の公知の化合物が挙げられる。これら促進剤は硬化に要する時間やポットライフなど樹脂組成物に対する要求に対して適切に選択される。
上記化合物の配合割合は、(A)成分および(B)成分の配合エポキシ樹脂組成物100部に対して、0.1〜2.0部配合することが好ましい。
上記成分以外にも必要に応じて、着色剤、酸化防止剤、レベリング剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、樹脂粒子、濡れ性改良剤などを添加することができる。
以下、本発明の詳細を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
<実施例1>
ネオペンチルグリコール(一般式(1)でのRが炭素数5)のジグリシジルエーテル(SR−NPG(阪本薬品工業(株)製)エポキシ当量145)690g)とビフェノール(本州化学工業(株)製 水酸基当量93)210gを反応させた化合物であって、エポキシ当量435g/eq、粘度114000mPa・s(25℃)である化合物(以下、A−1と略す)とポリオキシプロピレンジアミン(ジェファーミンD400(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ(株)製)活性水素当量200)をエポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤の活性水素当量が同じになるように各々100g、23g仕込み、均一になるように配合物を40〜60℃に加温し撹拌し本発明にかかる樹脂組成物を得た。さらに、当該組成物を100℃で3時間かけて加熱し、硬化物を作成し、物性評価を行った。その結果を表1に示した。
<実施例2>
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを359g、ビフェノールの代わりにビスフェノールA(試薬 水酸基当量114)141gを用いたこと以外は実施例1と同様に反応させた化合物であって、エポキシ当量432g/eq、粘度61000mPa・s(25℃)である化合物(以下、A−2と略す)を用いた以外は実施例1と同様にして、物性評価を行った。その結果を表1に示した。
<実施例3〜4>
表1に示す処方配合に従って、(A)成分および(B)成分を撹拌混合したこと以外は実施例1と同様にして、液状組成物(本発明の樹脂組成物)を得た後、物性評価を行った。その結果を表1に示した。
<比較例1〜4>
表1に示す処方配合に従って、一般的なエポキシ樹脂(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)または可撓性を付与できると言われているエポキシ樹脂(ダイマー酸変性エポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイドを2モル付加した化合物をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂<以下、ビスフェノールA2POエポキシ樹脂とする>)および硬化剤を撹拌混合したこと以外は実施例1〜4と同様にして液状組成物を得た後硬化物を作成し、物性評価を行った。その結果を表1に示した。
以下に、上述の実施例等における評価方法を説明する。
引張り強度、引張り伸び率:得られた硬化物をJIS K 7113に準じ、(株)島津製作所製引張試験機「AG−IS 20kN」を用い、引張速度5mm/minで引張り強度および破壊伸び率を測定した。引張り伸び率は、その数値が大きいほどより良い靱性、可撓性を示していることを意味し、100%以上伸びることが好ましく、120%以上伸びることがさらに好ましい。
引張せん断強度:JIS K 6850に準じ、2枚の鋼板(SUS304)をエポキシ樹脂組成物50mgで貼りあわせて試験片を得た(接着面積3.125cm)。各々得られた試験片を最低1日間温度23℃、湿度50%の恒温恒湿下で状態調整を行った。(株)島津製作所製引張試験機「AG−IS 20kN」を用い、引張速度5mm/minで引張せん断強度を測定した。
ショアー硬度(タイプA):各々得られた硬化物(50mm×50mm×4mm)について、最低1日間温度23℃、湿度50%の恒温恒湿下で状態調整を行った。同条件下、当該硬化物を2枚重ね合わせて、JIS K 7215に準じ測定した。
耐熱折り曲げ性:得られた硬化物(80mm×10mm×4mm)について、最低1日間温度23℃、湿度50%の恒温恒湿下で状態調整を行った。同条件下、当該硬化物の両端を持ち完全に二つ折りにした。このとき曲げている途中で折れてしまうものを×、二つ折りにしても折れないものを○とした。
Figure 0004864327
上記表1に示したように、実施例で示した熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、(A)成分および(B)成分を配合することにより優れた伸びを示し、優れた曲げ耐性を有する柔軟性の優れた硬化物を提供しうることが分かった。
硬化物の接着性および高温耐熱性が要求される、例えば、接着剤、封止剤、注型剤、ソルダーレジスト等に利用することができる。

Claims (1)

  1. グリコールのグリシジルエーテルとフェノール類化合物を反応させて得られる化合物であり、下記一般式(1)で示されるエポキシ樹脂(A)をエポキシ樹脂全体の60〜100重量%、および一般式(2)、ポリオキシエチレントリアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシブチレントリアミンおよびポリオキシペンチレントリアミンから選ばれる1種または2種以上である硬化剤(B)からなる熱硬化性エポキシ樹脂組成物。
    Figure 0004864327
    (mは1〜20の自然数、nは1〜14の自然数、Xはハロゲン原子またはC1〜5のアルキル基、aおよびbは0〜4の整数、GおよびGはグリシジル基又は水素原子(ただし、G、Gが同時に水素原子であることはない)、RはC1〜10のアルキレン基またはアルキリデン基、Rはアルキレン基、アルキリデン基、スルホニル基、酸素原子または原子団の存在しない直接結合を示す。)
    Figure 0004864327
    (nは1〜40の自然数、RはC1〜10のアルキレン基またはアルキリデン基を示す。)
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