JP4857478B2 - ポリエステルの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、異物の少ないポリエステルを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、中でもポリブチレンテレフタレート(以下PBTと称する)は、成形性、耐熱性、機械的性質および耐薬品性などの特性がすぐれているため、電気部品や自動車部品などの成形材料としてばかりか、ソフト性やストレッチ性を生かした繊維用としても広く用いられている。
【0003】
PBTは、一般に直接重合法またはエステル交換法によって製造される。ここでいう直接重合法とは、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを主成分としてエステル化反応を行い、次いで減圧下で重縮合反応することによりPBTを製造する方法である。また、エステル交換法とは、テレフタル酸のエステル形成誘導体と1,4−ブタンジオールとを主成分としてエステル交換反応を行い、次いで減圧下で重縮合反応することによりPBTを製造する方法である。
【0004】
しかるに、直接重合法においては、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとのエステル化反応により反応水が生成し、また、反応場が酸性であるために、1,4−ブタンジオールの脱水環化反応によって、テトラヒドロフランと共に水が生成する。また、エステル交換反応においても、テトラヒドロフランの生成と共に水が生成する。
【0005】
したがって、このようなテトラヒドロフランの副生のために、1,4−ブタンジオールをより多く用いる必要があり、生産コストの面で問題となっていた。この問題に対処するために、例えば、特開昭48−47594号公報には、有機チタン化合物をエステル化反応触媒として用いることが、また、特開昭55−30010号公報には、有機チタン化合物と有機スズ化合物とを触媒として併用することが、それぞれ提案されている。
【0006】
しかしながら、チタン酸エステルに代表される有機チタン化合物は、優れた触媒活性を有する反面、水によって容易に加水分解を受け、かつ失活しやすいという本質的な欠点を有している。その結果、特に有機チタン化合物を用いたエステル化反応においては、触媒活性の持続性が保持できず、その反応だけではなく、引き続き行われる重縮合反応過程においては、前記の失活分に見合う触媒を新たに補填するなどの煩雑な手段を必要としていた。
【0007】
また、チタン酸エステル触媒が、反応過程で生成する水によって加水分解されて失活した際には、触媒残渣がエステル化生成物または重合体中に不溶化することになる。そして、このような触媒残渣に起因して、溶融状態の重合体にあっては、透明性の悪化、溶液状態にあっては、溶液ヘイズの悪化という不具合が現れる。かかる重合体中の不溶化は、時に異物となり、それが著しい場合には、成形品または繊維の強度低下を引き起こすなどの問題を招いていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものであり、その目的とするところは、異物の少ないポリエステルを製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のポリエステルの製造法は、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、触媒として有機チタン化合物を用い、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することによりポリエステルを製造するに際し、前記有機チタン化合物と共に、p−キシリレングリコール、2−ピリジンメタノールおよび2,6−ピリジンジメタノールから選ばれた少なくとも1種のヒドロキシアルキル基を1つ以上含有する環状化合物を、環状化合物/有機チタン化合物モル比として、0.1以上、10以下の範囲で反応系へ添加することを特徴とするポリエステルの製造法。
【0010】
なお、本発明のポリエステルの製造法においては、前記有機チタン化合物と前記環状化合物を予め混合して反応系へ添加することが好ましい条件である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明が対象とするポリエステルとは、ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することにより製造される主鎖にエステル結合を有する高分子量のポリエステルである。
【0013】
本発明で使用されるジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シュウ酸、アジピン酸および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体などが挙げられるが、これらの内でも、テレフタル酸を主成分とする芳香族ジカルボン酸を使用することが好ましい。
【0014】
本発明においては、主成分として用いるジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体および1,4−ブタンジオールの他に、上記の主成分以外のジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と、1,4−ブタンジオール以外のジオール成分、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどを、それぞれ共重合成分として使用することができる。なお、これらの共重合成分は、
それぞれ主成分に対して40モル%以下であることが好ましい。
【0015】
また、ジカルボン酸成分とジオール成分の比は、1,4−ブタンジオールの分解によるテトラヒドロフランの副生などの副反応を抑制するために、ジオール成分のジカルボン酸成分に対するモル比が1.1〜2.0の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明においては、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応を効果的に進めるために、これらの反応時に触媒を添加することが必要である。
【0017】
本発明において使用される触媒は、有機チタン化合物であり、具体例としては、チタン酸のメチルエステル、テトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステル、テトライソプロピルエステル、テトライソブチルエステル、テトラ−tert−ブチルエステル、シクロヘキシルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステル、トリルエステル、あるいはこれらの混合エステルなどが挙げられるが、これらの内でもチタン酸のテトラ−n−プロピルエステル、テトラ−n−ブチルエステルおよびテトライソプロピルエステルが好ましく、チタン酸のテトラ−n−ブチルエステルが特に好ましく使用される。
【0018】
これらの有機チタン化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。また、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応時に同一種を用いてもよく、異種の有機チタン化合物を用いてもよい。さらに、この有機チタン化合物を適当な有機溶媒と一緒に添加してもよい。この場合の有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび1,4−ブタンジオールなどが用いられる。
【0019】
上記有機チタン化合物の添加量は、生成するポリエステル100重量部に対して0.005重量部以上、0.5重量部以下が好ましく、特に0.01重量部以上、0.2重量部以下の範囲が好ましい。
【0020】
この有機チタン化合物の添加時期については、特に限定されるものでなく、エステル化反応前に一括添加してもよく、重縮合反応終了までの任意の段階で分割添加してもよい。
【0021】
さらに、エステル化またはエステル交換反応および重縮合反応においては、反応を効果的に進める上で、有機チタン化合物以外の触媒を別途使用することができ、通常使用されている触媒、例えば三酸化アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドなどのジルコニア化合物およびスズ化合物などを用いてもよく、特にスズ化合物の使用が好ましい。
【0022】
スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズオキサイド、メチルフェニルスズオキサイド、テトラエチルスズ、ヘキサエチルジスズオキサイド、シクロヘキサヘキシルジスズオキサイド、ジドデシルスズオキサイド、トリエチルスズハイドロオキサイド、トリフェニルスズハイドロオキサイド、トリイソブチルスズアセテート、ジブチルスズジアセテート、ジフェニルスズジラウレート、モノブチルスズトリクロライド、ジブチルスズジクロライド、トリブチルスズクロライド、ジブチルスズサルファイドおよびブチルヒドロキシスズオキサイド、メチルスタンノン酸、エチルスタンノン酸、ブチルスタンノン酸などのアルキルスタンノン酸などが挙げられるが、これらの中でも、特にモノアルキルスズ化合物、またはスタンノン酸が好ましく使用される。
【0023】
上記の有機チタン化合物以外の触媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。また、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応時に同一種を用いてもよく、異種の有機チタン化合物以外の触媒を用いてもよい。さらに、この有機チタン化合物以外の触媒を適当な有機溶媒と一緒に添加してもよい。
【0024】
上記有機チタン化合物以外の触媒の添加量は、生成するポリエステル100重量部に対して0.01重量部以上、0.2重量部以下の範囲で添加することが好ましい。
【0025】
この有機チタン化合物以外の触媒の添加時期は、特に限定されるものでなく、エステル化反応前に一括添加してもよく、重縮合反応終了までの任意の段階で分割添加してもよい。
【0026】
本発明のポリエステルの製造法においては、上記有機チタン化合物と共に、ヒドロキシアルキル基を1つ以上含有する環状化合物を反応系へ添加することが必須の要件であり、これにより異物の少ないポリエステルを製造することが可能となる。
【0027】
本発明で使用するヒドロキシアルキル基を1つ以上含有する環状化合物とは、化合物を構成する原子が分子内で環を作って結合しあっている化合物にヒドロキシアルキル基が1つ以上付加した化合物のことであり、例えば、シクロヘキサン環などの脂環式構造を含む脂環式化合物、ベンゼン環を含む芳香族化合物、ナフタレン環などの二つ以上の環構造を含む多環式化合物、2種以上の異なった原子で環が構成されている複素環式化合物などの環状化合物に、ヒドロキシアルキル基が1つ以上付加した化合物のことである。なお、ヒドロキシアルキル基とは、脂肪族炭化水素にヒドロキシル基のついた構造のことであり、脂肪族炭化水素としては、特に限定されるものではないが、炭素数1以上、20以下のものが好ましい。
【0028】
上記ヒドロキシアルキル基を1つ以上含有する環状化合物の具体例としては、p−キシリレングリコール、2−ピリジンメタノールおよび2,6−ピリジンジメタノールが特に好ましい。
【0029】
上記環状化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。また、エステル化反応またはエステル交換反応および重縮合反応時に同一種を用いてもよく、異種の環状化合物を用いてもよい。さらに、この環状化合物を適当な有機溶媒と一緒に添加してもよい。
【0030】
この環状化合物の添加時期については、特に限定されるものでなく、エステル化反応前に一括添加してもよく、重縮合反応終了までの任意の段階で分割添加してもよいが、異物の少ないPBTを得るためには、反応系内において有機チタン化合物が存在する際には、必ず上記環状化合物が存在するように添加時期を考慮することが好ましい。例えば、予め有機チタン化合物と上記環状化合物を混合して添加することがより好ましく、有機溶剤を用いて有機チタン化合物と上記環状化合物の混合溶液を作成し、それを添加することが最も好ましい。
【0031】
本発明において、上記環状化合物の添加量は特に限定されるものではないが、生成するポリエステル100重量部に対して、0.001重量部以上、1重量部以下が好ましく、特に0.005重量部以上、0.5重量部以下の範囲が好ましい。また、上記環状化合物の添加量は有機チタン化合物に対しても定義することができ、この場合には、環状化合物/有機チタン化合物モル比として、0.1以上、10以下、特に1以上、8以下の範囲である。
【0032】
本発明において、直接重合法を用いる場合には、まずエステル化反応を行ってオリゴマーとし、次いで重縮合反応することによりポリエステルを製造する。このエステル化反応の方法は特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、通常のポリエステル製造に用いられるエステル化条件をそのまま適用することができ、例えば反応温度を180〜250℃、特に200〜240℃の範囲とした条件で行うことが好ましい。また、エステル化反応後のオリゴマーの反応率は97%以上であることが好ましい。
【0033】
本発明において、エステル交換法を用いる場合には、まずエステル交換反応を行ってオリゴマーとし、次いで重縮合反応することによりポリエステルを製造する。このエステル交換反応の方法は特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、通常のポリエステル製造に用いられるエステル交換条件をそのまま適用することができ、例えば反応温度を120〜250℃、特に140〜240℃の範囲とした条件で行うことが好ましい。また、エステル交換反応後のオリゴマーの反応率は80%以上であることが好ましい。
【0034】
エステル化反応またはエステル交換反応から得られたオリゴマーは、次いで重縮合反応させるが、その方法は特に限定されるものではなく、回分法でも連続法でもよく、通常のポリエステルの製造に用いられる重合条件をそのまま適用することができ、例えば反応温度を230〜260℃、好ましくは240〜255℃、圧力を667Pa以下、好ましくは133Pa以下の減圧下とした条件で行うことがより好ましい。
【0035】
本発明の方法によりポリエステルを製造するに際しては、本発明の目的を損なわない範囲であれば、通常の添加剤、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、離形剤、染料および顔料を含む着色剤などの1種または2種以上を添加することができる。
【0036】
かくして、本発明の方法により得られるポリエステルは、異物の少ないポリマーであり、電気部品や自動車部品などの成形材料としてばかりか、フイルム用、繊維用としても広く用いることができる。
【0037】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0038】
なお、実施例中の固有粘度は、o−クロロフェノール中、25℃で測定した値である。
【0039】
溶液ヘイズは、ポリマー5.4gをフェノール/テトラクロロエタン(60:40重量%)混合溶媒40mLに95℃で溶解した溶液を、30mm石英セルに入れ、日本電色工業製ヘイズメーターを用いて常温で測定した値である。
[実施例1]
テレフタル酸1132g、1,4−ブタンジオール1100g(1,4−ブタンジオール/テレフタル酸モル比:1.8)を用いてエステル化反応を行い、次いで重縮合反応を行った。
【0040】
すなわち、テレフタル酸の全量、1,4−ブタンジオールの全量、テトラ−n−ブチルチタネート(以下TBTと称する)0.8gおよびp−キシリレングリコール1.3g(TBTに対し4.0モル倍)を、精留塔の付いた反応器に仕込み、190℃、窒素気流下にエステル化反応を開始した後、徐々に昇温し、225℃で3時間エステル化反応を行った。得られた反応物にTBT1.0gおよびp−キシリレングリコール1.6g(TBTに対し4.0モル倍)を添加し、250℃、67Paで2時間30分重縮合反応を行った。
[実施例2]
有機溶剤として1,4−ブタンジオールを用いて、テトラ−n−ブチルチタネートとp−キシリレングリコールを混合した溶液を作成して添加した以外は、実施例1と同様にして行った。
[実施例3]
p−キシリレングリコールの代わりに、2−ピリジンメタノールをTBTに対し4.0モル倍になるように用いてエステル化反応および重縮合反応した以外は、実施例2と同様にして行った。
[実施例4]
2−ピリジンメタノールをTBTに対し1.2モル倍に減量してエステル化反応および重縮合反応した以外は、実施例3と同様にして行った。
[比較例4]
p−キシリレングリコールの代わりに、ベンジルアルコールをTBTに対し4.0モル倍になるように用いてエステル化反応および重縮合反応した以外は、実施例2と同様にして行った。
[比較例1]
エステル化反応時および重縮合反応時にp−キシリレングリコールを添加しないこと以外は、実施例1と同様にして行った。
[比較例2]
p−キシリレングリコールの代わりに、ヒドロキノンをTBTに対し4.0モル倍になるように添加した以外は、実施例2と同様にして行った。
[比較例3]
p−キシリレングリコールの代わりに、ペンタエリスリトールをTBTに対し2.0モル倍になるように添加した以外は、実施例2と同様にして行った。
【0041】
このようにして得られた各ポリエステル(PBT)の固有粘度および溶液ヘイズの測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のポリエステルの製造法によれば、異物の少ないポリエステルを得ることができる。
Claims (2)
- ジカルボン酸またはそのエステル形成誘導体と、1,4−ブタンジオールを主成分とするジオール成分とを、触媒として有機チタン化合物を用い、エステル化反応またはエステル交換反応し、次いで重縮合反応することによりポリエステルを製造するに際し、前記有機チタン化合物と共に、p−キシリレングリコール、2−ピリジンメタノールおよび2,6−ピリジンジメタノールから選ばれた少なくとも1種のヒドロキシアルキル基を1つ以上含有する環状化合物を、環状化合物/有機チタン化合物モル比として、0.1以上、10以下の範囲で反応系へ添加することを特徴とするポリエステルの製造法。
- 前記有機チタン化合物と前記環状化合物を予め混合して反応系へ添加することを特徴とする請求項1に記載のポリエステルの製造法。
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