JP4850738B2 - 定着ローラの評価方法 - Google Patents

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本発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着ローラの品質、性能を評価する方法に関する。
電子写真方式の画像形成装置(複写機、複合機、プリンタ)に用いられる定着ローラ、なかでもカラープリンタに用いられる定着ローラは、一般的に、金属製の芯金の外周に、シリコーンゴムからなる弾性層を形成し、この弾性層の外周にPFAチューブからなる樹脂層(表層)を設けた構造になっている。
そして、従来、このようなPFAチューブを被覆した定着ローラにおいて、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度は、特許文献1の段落0013や特許文献2の段落0023に開示されているようなピーリング試験によって評価されてきた。また、特許文献3の段落0038に開示されているように、定着ローラを230℃の恒温槽に入れて所定時間放置することによって当該定着ローラを加熱し、ピーリング試験を行う方法も提案されている。
特許第2756918号(発行日:1998年5月25日) 特許第2963635号(発行日:1999年8月6日) 特開2001−312169号公報(公開日:2001年11月9日)
ここで、特許文献1や特許文献2に開示されている方法によればサンプルを70時間加熱する必要があり、特許文献3に開示されている方法によれば120時間〜360時間ローラを放置する必要があり、試験に長時間を要するという課題がある。
また、特許文献1〜3の方法では、試験において定着ローラに機械的なストレスを加えずに加熱しているため、定着ローラの実際の使用条件とは大きく異なり、この試験による評価結果は信頼度が高くないといった課題があった。
本発明は、上記のような従来の課題を解決するためになされたものであり、短時間かつ正確に定着ローラを評価可能な評価方法を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明は、画像形成装置の定着装置に構成される定着ローラの評価方法であり、芯金と、上記芯金の外周に形成される弾性材料からなる弾性層と、上記弾性層の外周に形成されるフッ素樹脂からなる樹脂層とを含む定着ローラの評価方法において、上記弾性層と上記樹脂層とを含めるようにして上記定着ローラの一部分をサンプルとして切り出し、切り出したサンプルに荷重を作用させながら当該サンプルを加熱し、この加熱後に上記サンプルにおいて上記樹脂層が上記弾性層から剥離するか否かを確認する工程を含むことを特徴とする。
上記工程によれば、機械的なストレスを与えながらサンプルを加熱していることになり、実際の定着ローラの使用条件(対となる他のローラに圧接されながら加熱されている)に近似した状態でサンプルを加熱していることになる。したがって、上記工程を実行することによって簡単に上記剥離が確認されるような定着ローラについては、実際に定着装置に使用される場合にも上記樹脂層の剥離が簡単に生じるものと推測でき、低品質であると評価できる。また、逆に、上記工程において上記剥離が確認されない定着ローラについては、実際に定着装置に使用される場合に上記樹脂層の剥離が生じ難いと推測でき、高品質であると評価できる。
また、本発明の評価方法のように、機械的なストレスを与えながらサンプルを加熱しているということは、荷重を作用させずに加熱する従来の評価方法よりも短時間で上記剥離を発生させることができる。さらに、機械的なストレスを与えながらサンプルを加熱しているということは、従来の評価方法よりも、実際の定着ローラの使用条件に近い状態でサンプルを加熱していることになり、評価の結果の信頼性が高い。それゆえ、本発明の評価方法によれば、従来の方法よりも、短時間かつ正確に定着ローラの評価を行うことができるという効果を奏する。
また、本発明は、以上の工程に加えて、上記定着装置においての上記定着ローラの周速度が300mm/s以上に設定されており、下記の限界温度をTr(℃)、上記定着装置において定着処理が実行される時の上記定着ローラの温度をTc(℃)とする場合、
Tr≧Tc+60
(上記工程において上記加熱は、温度X(℃)の加熱体を上記サンプルに接触させることによって行われる。そして、上記工程を複数回行い(上記工程を行う度に上記温度X(℃)を変更する)、上記剥離が確認されなかった各工程のなかから温度X(℃)が最高の工程を特定し、特定した工程の温度X(℃)を上記限界温度とする。)が満たされる定着ローラを合格品と判定することが好ましい。
本願の発明者らは、鋭意工夫の結果、上述のTr≧Tc+60を満たす定着ローラは、定着ローラの周速度が300mm/s以上の高速条件であっても上記樹脂層の剥離が生じ難いことを見出した。それゆえ、上述のTr≧Tc+60を満たす定着ローラを合格品として判定すれば、定着ローラの不良品発生率を低減させる事ができる。
また、本発明は、以上の工程に加えて、上記定着装置においての上記定着ローラの周速度が355mm/s以上に設定されており、下記の限界温度をTr(℃)、上記定着装置において定着処理が実行される時の上記定着ローラの温度をTc(℃)とする場合、
Tr≧Tc+75
(上記工程において上記加熱は、温度X(℃)の加熱体を上記サンプルに接触させることによって行われる。そして、上記工程を複数回行い(上記工程を行う度に上記温度X(℃)を変更する)、上記剥離が確認されなかった各工程のなかから温度X(℃)が最高の工程を特定し、特定した工程の温度X(℃)を上記限界温度とする。)が満たされる定着ローラを合格品と判定することが好ましい。
本願の発明者らは、鋭意工夫の結果、上述のTr≧Tc+75を満たす定着ローラは、定着ローラの周速度が355mm/s以上の高速条件であっても上記樹脂層の剥離が生じ難いことを見出した。それゆえ、上述のTr≧Tc+75を満たす定着ローラを合格品として判定すれば、定着ローラの不良品発生率を低減させる事ができる。
なお、本発明の評価対象となる定着ローラにおいて、上記フッ素樹脂は、耐熱性および離型性に優れた材料であることが好ましく、特にPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)が適している。但し、PFAに限定されるものではなく、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFAとPTFEとの混合物等であってもよい。
また、上記樹脂層の厚い定着ローラにおいては、樹脂層の柔軟性が低く、弾性層の変形に樹脂層が十分追従することができず、樹脂層と弾性層との界面でずれ応力が生じ易く、樹脂層の剥離が生じ易い。また、弾性層が厚く、弾性層を構成する弾性材料が低硬度である定着ローラにおいては、弾性層の変形が大きくなることから、樹脂層の剥離がさらに生じ易くなる。
したがって、樹脂層と弾性層とが厚く、弾性層を構成する弾性材料が低硬度の定着ローラは、樹脂層の剥離の有無を確認する工程を含む本発明の方法に適していると考えられる。より具体的には、上記樹脂層の厚みが40μm以上、上記弾性層の厚みが2mm以上、上記弾性材料のアスカーC硬度が20度以下である定着ローラは、本発明の方法に適しているといえる。
本発明の定着ローラの評価方法は、以上のように、上記弾性層と上記樹脂層とを含めるようにして上記定着ローラの一部分をサンプルとして切り出し、切り出したサンプルに荷重を作用させながら当該サンプルを加熱し、この加熱後に上記サンプルにおける樹脂層が上記弾性層から剥離するか否かを確認する工程を含むことを特徴とする。
それゆえ、従来の方法よりも、短時間かつ正確に定着ローラの評価を行うことができるという効果を奏する。
〔定着ローラについて〕
本発明の定着ローラの評価方法の一実施形態であるピーリング試験(剥離試験)について説明する前に、まず、試験の対象となる定着ローラの構成および製造方法について説明する。
図1は、評価対象の定着ローラを示した断面図である。同図に示すように、定着ローラは、金属製の芯金と、芯金の外周に形成されるシリコーンゴムからなる弾性層と、弾性層の外周に形成されるPFAチューブからなる樹脂層(表層)とを含む構成である。なお、この定着ローラの仕様の詳細は以下の通りである。
<定着ローラの仕様>
定着ローラ径:50mm
PFAチューブ:非導電・熱収縮(周方向及び軸方向の両方向)タイプ
PFAチューブ厚:30μm〜50μm
PFAチューブの内周面の処理方法:金属ナトリウムが溶解されている液体アンモニアを処理液としたエッチング処理
シリコーンゴム厚:2mm
シリコーンゴム硬度:20度(ASKER−C硬度)
シリコーンゴム熱伝導率:0.45W/(m・K)
芯金:アルミニウム製
芯金径:35.9mm
芯金肉厚:3mm
なお、上記PFAチューブ厚は、定着ローラの樹脂層の厚み(肉厚)に相当し、図1の参照符αに相当する長さである。また、上記シリコーンゴム厚は、定着ローラの弾性層の厚みに相当し、図1の参照符βに相当する長さである。
また、このようなPFAチューブを被膜した定着ローラの製造方法は、以下の通りである。
<定着ローラの製造方法>
(1)円筒状金型の内面に、内周面をエッチング処理したPFAチューブを固定する。
(2)塗布治具を用いて、PFAチューブの内周面にプライマーを塗布する。
(3)円筒状金型に固定されているPFAチューブに芯金を挿入する。
(4)芯金とPFAチューブとの隙間にシリコーンゴムを注入する。
(5)円筒状金型を加熱し、シリコーンゴムを加熱硬化させる(1次加硫)。
(6)芯金とシリコーンゴムとPFAチューブとから成る定着ローラを円筒状金型から取り外す。
(7)取り外した定着ローラをバッチ炉に入れ、加熱する(2次加硫)。
このような定着ローラは、電子写真方式の画像形成装置に構成される定着装置に構成されるものである。なお、画像形成装置とは、複合機、複写機、プリンタ等の印刷装置を意味する。
また、ここでの定着装置とは、第1定着ローラと第2定着ローラ(第2定着ローラは加圧ローラと称すこともある)とのローラ対から構成され、未定着のトナー像が形成された用紙を第1定着ローラと第2定着ローラとの間のニップ領域に挟み込み、第1定着ローラと第2定着ローラとを回転させることによってこの用紙を搬送し、第1定着ローラの周面の熱によって用紙上のトナー像を溶融させることによって当該トナー像を用紙に熱圧着させる装置を意味する。
ここで、上記した定着装置において、第1定着ローラおよび第2定着ローラのいずれも本実施形態のピーリング試験の試験対象となり得る。つまり、本実施形態のピーリング試験は、定着装置において加熱されるローラであって、用紙に圧接するローラを試験対象としているのである。
〔実施の形態〕
つぎに、本実施形態のピーリング試験(剥離試験,ホットプレート試験)について、図2および図3を参照して詳細に説明する。本実施の形態のピーリング試験は、定着ローラにおけるシリコーンゴム(弾性層)とPFAチューブ(樹脂層)との接着強度を評価するための試験である。
<ピーリング試験の手順>
(1)定着ローラにおいて弾性層(シリコーンゴム)と樹脂層(PFAチューブ)とを含めた層を被膜層とすると、図2および図3に示すように、試験の対象となる定着ローラから被膜層を幅10mmかつ長さ20mmの長方形状の大きさで芯金に沿って切り出し、切り出した被膜層を試験用のサンプルとして扱う。弾性層(シリコーンゴム)の厚さは1mm程度であれば良い。
(2)図3に示すように、加熱面が温度X(℃)になるように制御されたホットプレート(ここでは、アズワン株式会社製ND−1)上に、切り出したサンプルを置く。なお、サンプルのPFAチューブ側(表層側)がホットプレートの加熱面(加熱体)に接するように、ホットプレート上にサンプルを置く。
(3)図3に示すように、サンプルの上に、力(重量)が9.8N(1kgf)に相当するカウンターウエイトを置き、サンプルに荷重を加える。なお、カウンターウエイトは、金属製(本実施形態ではステンレス製)であり、高さ50mm、幅50mm、奥行き50mmの四角柱形状である。
(4)上記の荷重を加えた状態、かつ、温度X(℃)の加熱面をサンプルに接触させた状態で5時間放置することによって、サンプルを加熱する。
(5)5時間加熱後のサンプルについて、PFAチューブがシリコーンゴムから剥離するかを確認する。なお、ここでの確認とは、実験者が手でPFAチューブを軽く引っ張ることによってPFAチューブがシリコーンゴムから剥離するか否かを確認する作業を意味する。そして、この確認後、以下の指標に基づいて、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度を評価する。
(指標)
○:PFAチューブとシリコーンゴムとの間で界面剥離が生じなかったもの(シリコーンゴム部でのゴム破断に至ったもの)。
△:PFAチューブとシリコーンゴムとの接着面の一部分において、PFAチューブとシリコーンゴムとの界面剥離が生じたもの。
×:PFAチューブとシリコーンゴムとの接着面の全てにわたって、PFAチューブとシリコーンゴムとの界面剥離が生じたもの。
−:評価せず。
つぎに、本願の発明者は、以上にて述べたピーリング試験における試験対象として、計21本の定着ローラを用意した。これら21本の定着ローラは、PFAチューブの内周面に塗布されるプライマー塗布量、プライマーの種類、PFAチューブの厚み、PFAチューブの内周面の処理方法を変数(パラメータ)とし、その他の製造条件やスペックについては図1の定着ローラと同一とすることによって製造されたものである。なお、以下では、製造した21本の定着ローラを、実施例1〜13および比較例1〜8して表す(表1参照)。
そして、本実施形態では、実施例1〜13および比較例1〜8の各々について、ピーリング試験を複数回実行することにする(但し、試験の度に、ホットプレートの加熱面の温度X(℃)を変更する)。具体的には、一つの定着ローラからサンプルa,サンプルb,サンプルcの三つのサンプルを切り出す。そして、サンプルaについては温度X(℃)を250℃として試験を行い、サンプルbについては温度X(℃)を265℃として試験を行い、サンプルcについては温度X(℃)を280℃として試験を行う。このようにすれば、一つの定着ローラについて、温度X(℃)を互いに異ならせた3通りのピーリング試験が実行されることになる(250℃の試験と、265℃の試験と、280℃の試験とが実行される)。
また、本実施形態では、実施例1〜13および比較例1〜8の各々について、ピーリング試験を行った他、以下にて説明する第1の実写エージング試験を行った。
第1の実写エージング試験とは、実施例1〜13および比較例1〜8の各々を下記の(A)〜(D)の複合機の各々に搭載して、50枚間欠モード(50枚連続通紙した後3秒間停止する動作を繰り返すモード)にて合計20万枚を目標として印刷を行った場合の定着ローラ(つまり実施例1〜13および比較例1〜8)の劣化度合を評価する試験である。
(A)プロセス速度173mm/s(印字速度41枚/分)の複合機。
(B)プロセス速度225mm/s(印字速度45枚/分)の複合機。
(C)プロセス速度300mm/s(印字速度62枚/分)の複合機の試作機。
(D)プロセス速度355mm/s(印字速度70枚/分)の複合機の試作機。
なお、本明細書において、プロセス速度とは、定着ローラの周速度を示すものであることとする。
また、第1の実写エージング試験では、A4サイズ、かつ、単位面積当たりの質量が60g/mである用紙が用いられた。さらに、第1の実写エージング試験では、定着ローラの温度が190℃に制御される。
このようにして行った実施例1〜13および比較例1〜8に対するピーリング試験の結果、第1の実写エージング試験の結果を以下の表1に示す。
Figure 0004850738
以下では、まず表1の内容について説明する。
表1において、「プライマー塗布量」の各欄における値は、実施例5のプライマー塗布量に対する割合を示したものである。例えば、比較例1の3.7とは、比較例1のプライマー塗布量が実施例5のプライマー塗布量の3.7倍であることを示し、比較例7の0.6とは、比較例7のプライマー塗布量が実施例5のプライマー塗布量の0.6倍であることを示したものである。なお、実施例5のプライマー塗布量(単位面積当たりの塗布量)は0.06mg/cmである。
表1において、プライマーA、プライマーB、プライマーCの各々の意味は、以下の通りである。
プライマーA:樹脂系プライマー(東レ・ダウコーニング社製DY39−067)
プライマーB:ゴム系プライマー(東レ・ダウコーニング社製DY39−051A)
プライマーC:ゴム系プライマー(東レ・ダウコーニング社製DY39−051B)
表1において、処理A、処理B、処理Cの意味は以下の通りである。
処理A:金属ナトリウムが溶解された液体アンモニアを処理液としたエッチング処理。
処理B:エキシマレーザを用いたエッチング処理。
処理C:金属ナトリウムが溶解されたナフタレンとテトラヒドロフランとの混合液を処理液としたエッチング処理。
表1の「第1の実写エージング試験」の各欄における左側の評価(○、△、×)の意味は以下の通りである。
○:20万枚の印刷中においてしわの発生は無し。
△:印刷枚数が10万枚〜20万枚でしわが発生。
×:印刷枚数が10万枚以下でしわが発生。
表1の「第1の実写エージング試験」の各欄における右側の評価(○、△、×)の意味は以下の通りである。
○:20万枚の印刷中においてPFAチューブの剥離は無し。
△:印刷枚数が10万枚〜20万枚でPFAチューブの剥離が発生。
×:印刷枚数が10万枚以下でPFAチューブの剥離が発生。
以下、表1の内容について検討する。
(a)PFAチューブの厚みと、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度との関係(比較例1〜比較例3)
定着ローラにおいて、シリコーンゴム(弾性層)の弾性を極力損なうことなく、より広いニップ幅や用紙の剥離性を確保し、また、光沢ムラが生じないようにするために、定着ローラ用のPFAチューブとしては30μmの厚みのものが従来から一般的に用いられている。
しかし、比較例1の結果から、PFAチューブの厚みが30μmである定着ローラにおいては、プロセス速度300mm/s以上の高速条件下で使用されると、PFAチューブにしわが発生するという問題があることがわかる。これは、プロセス速度が速くなることにより、PFAチューブに加わる機械的、熱的ストレスが大きくなるためである。
また、プロセス速度が高速の条件において定着ローラのPFAチューブのしわを抑制するには、比較例2、比較例3の結果から、PFAチューブの厚みを40μm以上にすることによってPFAチューブの機械的な強度を向上させるのが効果的であることがわかる。しかしながら、PFAチューブの厚みを厚くすると、PFAチューブがシリコーンゴムから剥離しやすくなる傾向があることもわかる。これは、PFAチューブを厚くすることによって、PFAチューブの柔軟度が低くなり、PFAチューブがシリコーンゴムの変形に十分追従することができなくなることから、PFAチューブとシリコーンゴムとの界面でのずれ応力が大きくなるためである。
(b)プライマーの塗布量と上記接着強度との関係(比較例3〜4、実施例1〜8)
比較例3〜比較例4および実施例1〜実施例8に対するピーリング試験の結果から、プライマーの塗布量が少ないほど、ピーリング試験における定着ローラの限界剥離温度(限界温度)が高くなることがわかる。
ここで、定着ローラの限界剥離温度とは、当該定着ローラを試験対象としてピーリング試験を複数回行い(試験の度に、ホットプレートの加熱面の温度X(℃)を変更する)、PFAチューブの剥離が確認されなかった各ピーリング試験のなかから温度X(℃)が最高のピーリング試験を特定し、特定したピーリング試験の温度X(℃)を意味するものである。
この限界剥離温度について、実施例2の定着ローラを例にして説明すると以下の通りである。実施例2の定着ローラに対して、温度X(℃)が250℃のピーリング試験と温度X(℃)が265℃のピーリング試験と温度X(℃)が280℃のピーリング試験とが行われている(合計3回)。ここで、PFAチューブの剥離が確認されなかった試験は、温度X(℃)が250℃の試験と、温度X(℃)が265℃の試験とであり、このうち、温度X(℃)が最高のピーリング試験は温度X(℃)が265℃のピーリング試験である。したがって、実施例2の定着ローラの限界剥離温度は265℃となる。
この限界剥離温度の高い定着ローラほど、PFAチューブを剥離するためには、より高温下での加熱が必要になる。それゆえ、以上にて説明した限界剥離温度は、定着ローラにおいてのPFAチューブの剥がれ難さを示した尺度といえる。したがって、定着ローラにおいて、この限界剥離温度が高いほど上記の接着強度が高いといえ、限界剥離温度が低いほど上記の接着強度が低いといえる。
以下、プライマーの塗布量と限界剥離温度との関係についてより詳細に検討する。例えば、プライマーの塗布量が3.3以上である比較例3および比較例4は、ピーリング試験における温度X(℃)を250℃にしてもPFAチューブが剥離するため(×評価または△評価)、限界剥離温度が250℃未満であるものと考えられる。これに対し、プライマーの塗布量が2.3以下である実施例2〜実施例8は、PFAチューブの限界剥離温度が265℃となる。すなわち、プライマーの塗布量が少なくなるにつれて、限界剥離温度は高くなり、プライマーの塗布量が多くなるにつれて、限界剥離温度は低くなり、プライマーの塗布量と限界剥離温度との間には負の相関関係が成立している。これは、プライマーの塗布量が多すぎると、シリコーンゴムとPFAチューブとの間に形成されるプライマー層の厚さが増し、プライマー層の内部で剥離(分断)が生じるためと考えられる。
また、ピーリング試験の結果から、プライマーの塗布量が2.3以下である実施例2〜実施例8は、プライマーの塗布量が3.3以上である比較例3および比較例4よりも、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が高いといえる。
さらに、第1の実写エージング試験の結果から、プライマーの塗布量が2.3以下の実施例2〜実施例8においては、プロセス速度が355mm/sの高速条件でPFAチューブの剥離が発生せず、プライマーの塗布量が3.3以上の比較例3および比較例4においては、プロセス速度が300mm/sでもPFAチューブの剥離が発生した(△または×評価)。したがって、第1の実写エージング試験の結果から、実施例2〜実施例8は、比較例3および比較例4よりも、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が高いといえる。また、これにより、本実施の形態のピーリング試験の結果は、第1の実写エージング試験の結果と一致していることもわかる。
(c)プライマーの種類と接着強度との関係(比較例5〜6、実施例2〜10)
比較例5〜比較例6および実施例2〜実施例10に対するピーリング試験の結果から、プライマーの種類によっても、定着ローラの限界剥離温度が大きく変わることがわかる。
具体的には、プライマーAまたはプライマーBが用いられている実施例2〜10は、ピーリング試験において温度X(℃)が265℃の場合にはPFAチューブの剥離が起こらない。つまり、実施例2〜10では、限界剥離温度が少なくとも265℃以上であることがわかる。これに対し、プライマーCが用いられている比較例5〜6は、ピーリング試験において温度X(℃)が250℃でもPFAチューブが完全に剥離する(×評価)。つまり、比較例5〜比較例6では、限界剥離温度が250℃未満であることがわかる。したがって、ピーリング試験の結果から、プライマーAまたはプライマーBが用いられている定着ローラは、プライマーCが用いられている定着ローラよりも、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が高いといえる。
また、プライマーAまたはプライマーBが用いられている実施例2〜10では、プロセス速度が355mm/sの高速条件で第1の実写エージング試験を行っても、PFAチューブの剥離が発生していない。これに対し、プライマーCが用いられている比較例5〜6では、プロセス速度を300mm/s以上にして第1の実写エージング試験を行うと、PFAチューブの剥離が発生してしまう。したがって、第1の実写エージング試験の結果から、プライマーAまたはプライマーBが用いられている定着ローラは、プライマーCが用いられている定着ローラよりも、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が高いといえる。そして、実施の形態のピーリング試験の結果は、第1の実写エージング試験の結果と一致していることもわかる。
(d)PFAチューブの内周面の処理と接着強度との関係(比較例7、実施例6および11)
比較例7、実施例6、実施例11のピーリング試験の結果から、PFAチューブの内周面の処理方法によっても、PFAチューブの限界剥離温度が大きく変わることがわかる。具体的には、処理Aや処理Bを採用した実施例6や実施例11の場合、限界剥離温度が少なくとも265℃以上であるのに対し、処理Cを採用した比較例7の場合、ピーリング試験において温度X(℃)が250℃でもPFAチューブが完全に剥離する。つまり、比較例7は限界剥離温度が250℃未満であることがわかる。したがって、ピーリング試験の結果から、処理Aや処理Bが採用されている定着ローラは、処理Cが採用されている定着ローラよりも、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が高いといえる。
また、処理Aや処理Bを採用した実施例6や実施例11では、プロセス速度が355mm/sの高速条件で第1の実写エージング試験を行ってもPFAチューブの剥離が発生していないのに対し、処理Cを採用した比較例7では、プロセス速度を300mm/s以上にして第1の実写エージング試験を行うと、PFAチューブの剥離が発生してしまうことがわかった。したがって、第1の実写エージング試験の結果から、処理Aや処理Bが採用されている定着ローラは、処理Cが採用されている定着ローラよりも、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が高いといえる。また、以上の検討により、本実施の形態のピーリング試験の結果は、第1の実写エージング試験の結果と一致していることもわかる。
(e)PFAチューブ厚40μmでの接着強度(比較例8、実施例12、実施例13)
上記の(a)〜(d)はいずれもPFAチューブ厚が50μmでの検討結果であることから、つぎに、PFAチューブ厚40μmの場合についても、検討を行った。
比較例8、実施例12、実施例13のピーリング試験の結果および第1の実写エージング試験の結果より、PFAチューブの厚みが40μmの場合でも、プライマーの塗布量を少なくすると、シリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が向上することがわかる。また、比較例8、実施例12、実施例13についても、ピーリング試験の結果は、第1の実写エージング試験の結果と一致していることがわかる。
以上、(a)〜(e)に示した検討結果から、PFAチューブの厚さや内周面の処理方法、プライマーの種類やプライマーの塗布量等、PFAチューブの接着強度に影響を与える種々のパラメータの条件がどうであろうとも、限界剥離温度が250℃以上であった定着ローラはいずれも、プロセス速度が300mm/s以上で第1の実写エージング試験を行ってもPFAチューブの剥離が発生しない事がわかった。
また、ピーリング試験による限界剥離温度が265℃以上であった定着ローラはいずれも、プロセス速度が355mm/s以上で第1の実写エージング試験を行っても、PFAチューブの剥離が発生しないこともわかった。
さらに、本実施形態のピーリング試験の結果は、第1の実写エージング試験の結果との間で矛盾がなく、このピーリング試験は定着ローラのPFAチューブの接着強度試験として問題ないこともわかった。
つぎに、本願の発明者は、定着ローラの限界剥離温度と定着温度との関係を検討するために、さらに計7本の定着ローラを製造し、この7本の定着ローラについて第2の実写エージング試験を行った(表2参照)。なお、定着温度とは、定着装置において定着処理が行われる時の定着ローラの温度であり、定着ローラの周面に用紙が接触する時の定着ローラの温度である。
この7本の定着ローラは、プライマー塗布量を互いに異ならせることによって限界剥離温度が互いに異なるように製造されたものである。なお、この7本の定着ローラを、定着ローラA〜定着ローラGとして表す。
Figure 0004850738
ここで、第2の実写エージング試験とは、定着ローラA〜Gを以下の(E)(F)の各々に搭載し、定着温度を180℃、190℃、200℃の3通りで、50枚間欠モードにて合計20万枚を目標として印刷を行った場合の定着ローラの劣化度合を判定する試験である。
(E)プロセス速度300mm/s(印字速度62枚/分)である複合機の試作機(シャープ株式会社製)。
(F)プロセス速度355mm/s(印字速度70枚/分)である複合機の試作機(シャープ株式会社製)。
なお、第2の実写エージング試験では、A4サイズ、かつ、単位面積当たりの質量が60g/cmの用紙が用いられた。
また、表2の「第2の実写エージング試験」の各欄における評価(○、△、×、−)の意味は以下の通りである。
○:20万枚の印刷中においてPFAチューブの界面剥離は無し。
△:印刷枚数が10万枚〜20万枚でPFAチューブの界面剥離が発生。
×:印刷枚数が10万枚以下でPFAチューブの界面剥離が発生。
−:評価せず(界面剥離無しと考えられるため)。
また、図4は、表2に示されるプロセス速度300mm/sにおける試験結果とプロセス速度355mm/sにおける試験結果との各々について、定着ローラの限界剥離温度と定着温度との関係を簡易にグラフ化したものである。
図4および表2に示すように、PFAチューブの剥離耐久性を確保するためには、定着温度が高くなるほど、限界剥離温度が高い定着ローラが必要になることがわかる。
特に、表2の「第2の実写エージング試験」の各欄における評価が○を合格と扱う場合、表2からすれば、
プロセス速度が300mm/s以上の複合機においては、
Tr≧Tc+60
(Tr→定着ローラの限界剥離温度 Tc→定着温度)
また、プロセス速度が355mm/s以上の複合機においては、
Tr≧Tc+75
の関係を満たす定着ローラの品質は合格となる。
つまり、上記の関係を満たす定着ローラによれば、複合機、複写機、プリンタのプロセス速度を高速化した場合においても、PFAチューブのしわや剥離が生じることを抑制でき、品質的にも安定でコストアップにも繋がることがない。
以上にて本実施形態のピーリング試験を説明したが、本実施形態のピーリング試験には、シリコーンゴムからなる弾性層とPFAチューブからなる樹脂層とを含めるようにして定着ローラの一部分をサンプルとして切り出し、切り出したサンプルに荷重を作用させながら当該サンプルを加熱し、この加熱後に上記サンプルにおける樹脂層が上記弾性層から剥離するか否かを確認する工程が含まれている。
この工程によれば、機械的なストレスを与えながらサンプルを加熱していることになり、実際の定着ローラの使用条件(加圧ローラに圧接されながら加熱されている)に近似した状態でサンプルを加熱していることになる。したがって、上記工程を実行することによって簡単に上記剥離が確認されるような定着ローラについては、実際に定着装置に使用される場合にも上記樹脂層の剥離が簡単に生じるものと推測でき、低品質であると評価できる。また、逆に、上記工程において上記剥離が確認されない定着ローラについては、実際に定着装置に使用される場合に上記樹脂層の剥離が生じ難いと推測でき、高品質であると評価できる。
また、機械的なストレスを与えながらサンプルを加熱しているということは、荷重を作用させずに加熱する従来の評価方法よりも短時間で上記剥離を発生させることができる。さらに、機械的なストレスを与えながらサンプルを加熱しているということは、上記の従来の評価方法よりも、実際の定着ローラの使用条件に近い状態でサンプルを加熱していることになり、評価の結果の信頼性が高い。それゆえ、上記の工程によれば、従来の方法よりも、短時間かつ正確に定着ローラの評価を行うことができるという効果を奏する。
また、弾性層の厚い定着ローラにおいては、樹脂層の柔軟性が低く、弾性層の変形に樹脂層が十分追従することができず、樹脂層と弾性層との界面でずれ応力が生じ易く、樹脂層の剥離が生じ易い。また、弾性層が厚く、弾性層を構成する弾性材料が低硬度である定着ローラにおいては、弾性層の変形が大きくなることから、樹脂層の剥離がさらに生じ易くなる。
したがって、樹脂層と弾性層とが厚く、弾性層を構成するシリコーンゴムが低硬度の定着ローラは、樹脂層の剥離の有無を確認する工程を含む本実施の形態のピーリング試験に適していると考えられる。より具体的には、PFAチューブからなる樹脂層の厚みが40μm以上、シリコーンゴムからなる弾性層の厚みが2mm以上、シリコーンゴムのアスカーC硬度が20度以下である定着ローラは、本実施形態のピーリング試験に適しているといえる。
また、本実施形態の評価方法において評価対象となる定着ローラの弾性層は、シリコーンゴムであるが、耐熱性に優れた弾性材料であればシリコーンゴムに限定されず、フッ素ゴム、シリコーンゴムとフッ素ゴムとの混合物等であってもよい。さらに、本実施形態の評価方法において評価対象となる定着ローラの樹脂層は、PFAチューブであるが、耐熱性および離型性に優れた樹脂(フッ素樹脂)であればPFAに限定されず、PTFE、PFAとPTFEとの混合物等であってもよい。
〔参考例〕
つぎに、定着ローラにおけるPFAチューブの接着強度を評価する方法であって、本発明の一実施形態のピーリング試験とは異なる試験方法である空転試験(空転加速試験,空転エージング試験)について、図に基づいて説明する。
<空転試験>
(1)試験対象となる定着ローラを複合機の定着装置にセットする。これにより、図5および図6に示すように、定着装置において、定着ローラおよび加圧ローラは、所定の荷重で互いに圧接されて、それらの間に定着ニップ部が形成され、定着ローラが回転すると、加圧ローラが定着ローラの回転方向とは逆方向に従動回転するようになる。
(2)図5および図6に示すように、厚さ0.3mm、幅30mm、長さ135mmのPTFE製からなる長方形シートを、加圧ローラの周面上の計5箇所に貼り付ける。なお、図6に示すように、5枚の長方形シートは、加圧ローラの軸方向に沿って直列するように貼り付けられる。また、少なくとも、軸方向の中央部と、軸方向の一方の端部付近と、軸方向の他方の端部付近とには、長方形シートが貼り付けられるものとする。
(3)図5に示す定着ローラを所定の温度(実機での使用温度)に制御し、定着ローラを所定の周速度(実機での使用速度)で回転させる。
(4)シートが定着ニップ部を通過する度に、定着ローラにおいてPFAチューブに繰り返し機械的なストレスが加わることにより、PFAチューブとシリコーンゴムとの接着面が劣化していき、最終的に、長方形シートのエッジ近傍に定着ローラ周面が当接することによって、定着ローラにおいてPFAチューブがシリコーンゴムから剥離する。そして、定着ローラの回転開始時からPFAチューブが剥離するまでの時間の長さに基づいてシリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度を評価する。具体的に、剥離するまでの時間が長いほどシリコーンゴムに対するPFAチューブの接着強度が強いと評価する。
このような空転試験を開発した理由を以下説明する。実際の定着装置では、用紙が定着ニップ部を通過する際に、定着ローラにおけるPFAチューブとシリコーンゴムとの界面に動的な機械的ストレスが加わるが、本実施の形態のピーリング試験では、試験用サンプルに静的な荷重(ストレス)しか加えられない。そこで、定着ローラの実際の使用状態により即した評価方法として、このような空転試験を見出すに至った。この空転試験では、長方形シートが定着ローラに当接することにより、定着ローラの周面に動的な機械的ストレスを加えることになる。
つぎに、上記空転試験による定着ローラの評価結果を表3に示す。なお、試験条件としては、定着ローラの温度を190℃に設定し、定着ローラの回転速度(周速度)を300mm/sとした。
試験の対象となる定着ローラとしては、表1にて示した比較例3、比較例5、実施例1、実施例5、実施例8を選定した。また、加圧ローラに貼り付けるシートとして3種類のシート(シートA、シートB、シートC)を用意し、全ての試験対象についてシートの種類毎に試験を実施した。この試験の結果を表3に示す。
Figure 0004850738
シートA、シートB、シートCの各々の意味は以下の通りである。
シートA:厚紙(単位面積当たりの質量200g/m、厚さ0.2mm)。
シートB:PTFE製シート(厚さ0.1mm)。
シートC:PTFE製シート(厚さ0.3mm)。
また、表3の各欄に示される記号、数値の意味は以下の通りである。
数値(H):試験開始からPFAチューブの剥離が生じるまでに要した時間。
○:30時間回転させても、剥離は生じない。
―:試験を行わず。
表3の比較例3の結果について検討する。比較例3は、比較的にPFAチューブが剥がれ易い定着ローラであるにも拘わらず、加圧ローラに貼り付けるシートとして厚紙や厚さ0.1mmのPTFEを選定した場合、30時間回転を続けてもPFAチューブが剥離しなかった。これに対し、加圧ローラに対して厚さ0.3mmのPTFE製のシートを貼り付けた場合、試験開始から9時間経過後に、シートのエッジが定着ニップ部を通過する付近でPFAチューブがシリコーンゴムから剥離した。
このようになった理由としては、厚紙を用いた場合、試験条件が実際の系(定着ローラの実際の使用条件)に近くなるものの、PTFE製のシートに比べて耐熱性や機械的強度に劣るために、繰り返し、同じ厚紙が定着ニップ部を通過することで当該厚紙が経時的に劣化(炭化)していき、PFAチューブとシリコーンゴムとの界面に十分な機械的ストレスが加えられなくなるためである。
従って、加圧ローラに貼り付けるシートとして厚紙を選定した場合、PFAチューブの剥離を発生させる事自体が困難になり、上記シートの種類として厚紙を選定することは好ましくない。それゆえ、厚紙に比べて耐熱性や耐久性に優れるPTFE等の耐熱性樹脂を上記シートとして選定する事が好ましい。
但し、表3の比較例3を検討すると、PTFE製のシートにおいても、厚さが0.1mmと薄いと、PFAチューブとシリコーンゴムとの界面に十分なストレスが加わらず、30時間ではPFAチューブが剥離しない事がわかった。これに対し、厚さ0.3mmのPTFE製のシートを用いた場合、比較例3、比較例5、実施例1、実施例3、実施例8のいずれの結果から明らかなように、30時間以内でPFAチューブの剥離が生じる。これらの結果から、厚さが0.1mmのPTFE製のシートを用いる場合、試験に長時間要するという不都合が生じ、PTFE製のシートの厚さは0.3mm以上であることが望ましいことがわかる。
厚さ0.3mmのPTFE製のシートを用いた場合、比較例3、比較例5、実施例1、実施例3、実施例8の結果から明らかなように、空転試験の結果と、第1の実写エージング試験の結果との間に非常に強い相関関係が見られ、空転試験で15時間以上PFAチューブが剥離しなければ、定着ローラとして合格であると判定できることがわかる。
なお、シートの材質としてはPTFEに限定される訳ではなく、耐熱性と耐久性に優れる樹脂であれば適宜(例えばポリイミド等)変更することが可能である。
以上示した空転試験は、回転する定着ローラと該定着ローラを圧接して回転する加圧ローラとの間に記録材を通過させ、該記録材に形成されたトナー像を熱定着させる定着装置に構成される定着ローラの評価方法において、上記定着ローラは、芯金と、上記芯金の外周に形成される弾性材料からなる弾性層と上記弾性層の外周に形成されるフッ素樹脂からなる樹脂層とを含んだ構成であり、上記加圧ローラの周面にシートを貼り付けた状態かつ定着ローラを加熱した状態で、上記定着ローラと加圧ローラとの間に上記記録材を通過させずに上記定着ローラおよび加圧ローラを回転させることを特徴とする、と表現することができる。
このような方法によれば、上記回転によって加圧ローラ周面に貼り付けられているシートが定着ローラに当接し、定着ローラに動的な機械的ストレスを加えることができる。ここで、弾性層と樹脂層との接着強度が弱い定着ローラである場合、上記機械的ストレスによって短時間で上記樹脂層の剥離が発生し、弾性層と樹脂層との接着強度が強い定着ローラである場合、短時間では上記樹脂層の剥離が生じない。それゆえ、上記方法によれば、上記回転の開始から上記樹脂層の剥離までに要した時間の長さに基づいて定着ローラにおける上記弾性層に対する上記弾性層の接着強度を推定することが可能になる。
また、定着ローラの周速度を300mm/s以上とし、上記シートが厚さ3mmの耐熱性樹脂製シートである場合、試験時間を短縮化する事が可能である。より具体的に説明すると、このような条件にて空転試験を実施する場合、表3の結果から明らかな通り、弾性層に対する樹脂層の接着強度の強い合格品の定着ローラ(実施例1、実施例5、実施例8)であっても、15〜25時間で剥離が生じており、定着ローラ一本当たりの試験に要する時間として約15時間あれば十分になるからである(つまり、定着ローラを15時間回転させても剥離が生じなければ当該定着ローラを合格と判断し、15時間以内で剥離が生じれば不合格と判断すれば、定着ローラ一本当たりの試験時間は15時間程度で十分となる)。
また、弾性層の厚い定着ローラにおいては、樹脂層の柔軟性が低く、弾性層の変形に樹脂層が十分追従することができず、樹脂層と弾性層との界面でずれ応力が生じ易く、樹脂層の剥離が生じ易い。また、弾性層が厚く、弾性層を構成する弾性材料が低硬度である定着ローラにおいては、弾性層の変形が大きくなることから、樹脂層の剥離がさらに生じ易くなる。
したがって、樹脂層と弾性層とが厚く、弾性層を構成するシリコーンゴム(弾性材料)が低硬度の定着ローラは、樹脂層を剥離させることの必要な本参考例の空転試験に適していると考えられる。より具体的には、PFAチューブ(フッ素樹脂)からなる樹脂層の厚みが40μm以上、シリコーンゴムからなる弾性層の厚みが2mm以上、シリコーンゴムのアスカーC硬度が20度以下である定着ローラは、空転試験に適しているといえる。
以上説明してきたように、本実施形態のピーリング試験や本参考例の空転試験によれば、定着ローラの周速度が300mm/sの以上の高速複合機に用いられる定着ローラについて、しわ発生とPFAチューブの剥離とが生じ難い定着ローラを容易に見出すことができ、またその評価に要する労力、時間も大幅に軽減できる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、上述した実施形態において開示された各技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明の定着ローラの評価方法は、電子写真方式のプリンタ、複写機、複合機などに用いられる定着ローラの品質・性能を評価する試験として好適である。
定着ローラを示した断面図である。 図1に示した定着ローラの斜視図である。 本発明の一実施形態のピーリング試験に用いられる試験設備を示した側面図である。 定着温度と限界剥離温度との関係を示したグラフである。 定着ローラと加圧ローラとを備えた定着装置を示した断面図である。 図5の定着ローラおよび加圧ローラを示した斜視図である。

Claims (6)

  1. 画像形成装置の定着装置に構成される定着ローラの評価方法であり、芯金と、上記芯金の外周に形成される弾性材料からなる弾性層と、上記弾性層の外周に形成されるフッ素樹脂からなる樹脂層とを含む定着ローラの評価方法において、
    上記弾性層と上記樹脂層とを含めるようにして上記定着ローラの一部分をサンプルとして切り出し、切り出したサンプルに荷重を作用させながら当該サンプルを加熱し、この加熱後に上記サンプルにおいて上記樹脂層が上記弾性層から剥離するか否かを確認する工程を含み、
    上記定着装置においての上記定着ローラの周速度は300mm/s〜355mm/sに設定されており、
    下記の限界温度をTr(℃)、上記定着装置において定着処理が実行される時の上記定着ローラの温度をTc(℃)とする場合、
    Tr≧Tc+75
    (上記工程において上記加熱は、温度X(℃)の加熱体を上記サンプルに接触させることによって行われる。そして、上記工程を複数回行い(上記工程を行う度に上記温度X(℃)を変更する)、上記剥離が確認されなかった各工程のなかから温度X(℃)が最高の工程を特定し、特定した工程の温度X(℃)を上記限界温度とする。)
    が満たされる定着ローラを合格品と判定することを特徴とする定着ローラの評価方法。
  2. 画像形成装置の定着装置に構成される定着ローラの評価方法であり、芯金と、上記芯金の外周に形成される弾性材料からなる弾性層と、上記弾性層の外周に形成されるフッ素樹脂からなる樹脂層とを含む定着ローラの評価方法において、
    上記弾性層と上記樹脂層とを含めるようにして上記定着ローラの一部分をサンプルとして切り出し、切り出したサンプルに荷重を作用させながら当該サンプルを加熱し、この加熱後に上記サンプルにおいて上記樹脂層が上記弾性層から剥離するか否かを確認する工程を含み、
    上記定着装置においての上記定着ローラの周速度は300mm/sに設定されており、
    下記の限界温度をTr(℃)、上記定着装置において定着処理が実行される時の上記定着ローラの温度をTc(℃)とする場合、
    Tr≧Tc+60
    (上記工程において上記加熱は、温度X(℃)の加熱体を上記サンプルに接触させることによって行われる。そして、上記工程を複数回行い(上記工程を行う度に上記温度X(℃)を変更する)、上記剥離が確認されなかった各工程のなかから温度X(℃)が最高の工程を特定し、特定した工程の温度X(℃)を上記限界温度とする。)
    が満たされる定着ローラを合格品と判定することを特徴とする定着ローラの評価方法。
  3. 上記樹脂層の厚みが40μm〜50μmの定着ローラを評価対象とすることを特徴とする請求項1または2に記載の定着ローラの評価方法。
  4. 上記フッ素樹脂がPFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)である定着ローラを評価対象とすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の定着ローラの評価方法。
  5. 上記弾性層の厚みが2mm以上である定着ローラを評価対象とすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の定着ローラの評価方法。
  6. 上記弾性材料のアスカーC硬度が20度以下である定着ローラを評価対象とすることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の定着ローラの評価方法。
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