JP5470936B2 - 無端ベルト、定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、無端ベルト、定着装置及び画像形成装置に関する。
近年、電子写真方式の画像形成装置において、加熱方式の定着装置に対する高速化の要求に応えるため、強度面で優れた金属製ベルトを定着ベルトとして用いることが提案されている。
特許文献1には、用紙上に形成された未定着トナー像を、電鋳プロセスによる金属性で、発熱体に接する面の表面あらさが0.5μm未満であるシームレスベルトを介して加熱溶融し、用紙上にトナー像を定着させる装置が記載されている。
特許文献2には、このような金属製の定着ベルトとして、熱伝導率が優れ、かつ寸法精度が高い、マンガン0.05〜0.6重量%を含むニッケル・マンガン合金からなるマイクロビッカース硬度が450〜650の無端状電鋳シートを基体として形成した定着ベルトが記載されている。
特開平7−13448号公報 特開平9−34286号公報
ところで、金属製ベルトは、例えば、ニッケル等の電鋳技術を利用できる金属の場合は電鋳法により成型され、ステンレス合金やニッケル合金等を用いる場合は、塑性加工法等により成型される。
本発明の目的は、金属製ベルトにおいて、使用時の繰り返し変形による亀裂の発生が低減された無端ベルトを提供することにある。
請求項1に記載の発明は、クロム15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン2重量%以上かつ4重量%以下を含む第1のステンレス鋼層と、当該第1のステンレス鋼層の外側に積層された銅層と、当該銅層の外側に積層された前記第1のステンレス鋼層と同一組成の第2のステンレス鋼層とを有し、当該銅層の厚さが当該第1のステンレス鋼層及び当該第2のステンレス鋼層のいずれよりも薄く、当該第1のステンレス鋼層、当該銅層及び当該第2のステンレス鋼層を加えた厚さが5μm以上かつ100μm以下である円筒状の金属層と、前記金属層の外側に積層された離型層と、を備え、前記金属層における前記銅層が発熱体として電磁誘導により加熱されることを特徴とする無端ベルトである。
請求項に記載の発明は、クロム15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン2重量%以上かつ4重量%以下を含む第1のステンレス鋼層と、当該第1のステンレス鋼層の外側に積層された銅層と、当該銅層の外側に積層された前記第1のステンレス鋼層と同一組成の第2のステンレス鋼層とを有し、当該銅層の厚さが当該第1のステンレス鋼層及び当該第2のステンレス鋼層のいずれよりも薄く、当該第1のステンレス鋼層、当該銅層及び当該第2のステンレス鋼層を加えた厚さが5μm以上かつ100μm以下である円筒状の金属層と、当該金属層の外側に積層された離型層と、を備える定着ベルトと、前記定着ベルトの外側に圧接される加圧部材と、前記加圧部材から遠い側において、前記定着ベルトの側に設けられ、当該定着ベルトの前記金属層における前記銅層を発熱体として電磁誘導により当該定着ベルトを加熱する加熱部材と、を備えることを特徴とする定着装置である。
請求項に記載の発明は、前記定着ベルトの受ける繰り返し歪み幅が、0.7%以上であることを特徴とする請求項に記載の定着装置である。
請求項に記載の発明は、トナー像を形成する像形成部と、前記像形成部で形成されたトナー像を記録材に転写する転写部と、クロム15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン2重量%以上かつ4重量%以下を含む第1のステンレス鋼層と、当該第1のステンレス鋼層の外側に積層された銅層と、当該銅層の外側に積層された前記第1のステンレス鋼層と同一組成の第2のステンレス鋼層とを有し、当該銅層の厚さが当該第1のステンレス鋼層及び当該第2のステンレス鋼層のいずれよりも薄く、当該第1のステンレス鋼層、当該銅層及び当該第2のステンレス鋼層を加えた厚さが5μm以上かつ100μm以下である円筒状の金属層と、当該金属層の外側に積層された離型層と、を備える定着ベルトと、当該定着ベルトの外側に圧接される加圧部材と、当該加圧部材から遠い側において、当該定着ベルトの側に設けられ、当該定着ベルトの当該金属層における当該銅層を発熱体として電磁誘導により当該定着ベルトを加熱する加熱部材とを有し、前記記録材に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着部と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
請求項1の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、使用時の繰り返し変形による亀裂の発生が低減された無端ベルトが提供できる。
請求項の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、長期に渡り故障の少ない定着装置が提供できる。
請求項の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、定着後に記録用紙が定着ベルトから剥離しやすい定着装置を提供できる。
請求項の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、長期に渡り故障の少ない画像形成装置が提供できる。
本実施の形態が適用される画像形成装置の概略構成図である。 定着装置の構成を示す図である。 本実施の形態が適用される定着ベルトの構成の一例を示す断面図である。 本実施の形態が適用される定着ベルトの構成の一例をさらに詳細に示す断面図である。 加圧部の歪みについて説明するための、定着装置における定着ベルトと圧力パッドとの部分の拡大図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、使用する図面は、本実施の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
(画像形成装置)
図1は、本実施の形態が適用される画像形成装置の概略構成図である。ここでは、一般にタンデム型と呼ぶ中間転写方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。
図1に示す画像形成装置100は、像形成部の一例として、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備える。次に、画像形成装置100は、転写部の一例として、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成する各色成分トナー像を中間転写ベルト(像保持体)15に順次転写(一次転写)する一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写した重畳トナー画像を記録用紙P(記録材)である用紙に一括転写(二次転写)する二次転写部20とを備える。さらに、画像形成装置100は、定着部の一例として、二次転写された画像を記録用紙P上に定着する定着装置60を備える。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を備える。
図1に示すように、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム11と、感光体ドラム11を帯電する帯電器12と、感光体ドラム11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13と、各色成分トナーを収容し感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14とを有する。また、感光体ドラム11上に形成する各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーを除去するドラムクリーナ17と、を有する。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に略直線状に配置されている。
中間転写ベルト15は、各種ロールにより、図1に示す矢印B方向に循環駆動する。各種ロールとして、中間転写ベルト15を駆動する駆動ロール31と、中間転写ベルト15を支持する支持ロール32と、中間転写ベルト15に一定の張力を与え蛇行を防止するテンションロール33と、二次転写部20に設けるバックアップロール25と、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けるクリーニングバックアップロール34とを有している。
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟み感光体ドラム11に対向する一次転写ロール16を有する。二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置する二次転写ロール(転写部材)22と、二次転写ロール22の対向電極として中間転写ベルト15の裏面側に配置されたバックアップロール25と、バックアップロール25に二次転写バイアスを印加する給電ロール26とを有する。
二次転写部20の下流側に、中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ35を設ける。イエローの画像形成ユニット1Yの上流側に、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42を配設する。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43を配設する。
記録用紙搬送系には、用紙収容部50と、用紙収容部50中の記録用紙Pを取り出して搬送するピックアップロール51と、記録用紙Pを搬送する搬送ロール52と、記録用紙Pを二次転写部20へと送る搬送シュート53と、二次転写ロール22により二次転写された記録用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55と、記録用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56とを有する。
画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
図1に示すような画像形成装置100では、画像読取装置(図示せず)等から出力される画像データに画像処理を施した後、画像データをY、M、C、Kの4色の色材階調データに変換し、レーザ露光器13に出力する。レーザ露光器13は、入力される色材階調データに応じ、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの矢印A方向に回転する各感光体ドラム11に照射する。各感光体ドラム11の表面を帯電器12によって帯電した後、レーザ露光器13によって表面を走査露光し、静電潜像を形成する。形成した静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像する。
つぎに、感光体ドラム11上に形成するトナー像を、一次転写部10において中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写を行う。中間転写ベルト15は矢印B方向に移動してトナー像を二次転写部20に搬送する。記録用紙搬送系は、トナー像を二次転写部20に搬送するタイミングに合わせて、用紙収容部50から記録用紙Pを供給する。
二次転写部20では、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像を、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれた記録用紙P上に静電転写する。その後、トナー像を静電転写した記録用紙Pを搬送ベルト55により定着装置60まで搬送し、定着装置60は、記録用紙P上の未定着トナー像を熱及び圧力で処理し記録用紙P上に定着する。定着画像を形成した記録用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けた排紙載置部に搬送する。
(定着装置60)
次に、本実施の形態における定着装置60について説明する。
図2は、定着装置60の構成を示す図である。本実施の形態では、電磁誘導加熱方式を採用する定着装置60を例に挙げて説明する。
図2に示すように、定着装置60は、無端ベルトである定着ベルト61、交流電流により生じる磁界によって定着ベルト61を発熱させる加熱部材の一例としての磁場発生ユニット85、定着ベルト61に対向するように配置する、加圧部材の一例としての加圧ロール62、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧される圧力パッド64を有する。
無端ベルトである定着ベルト61は、圧力パッド64とベルトガイド部材63、定着ベルト61の両端部に配置するエッジガイド部材(図示せず)によって回動自在に支持される。そして、加圧部(ニップ部)Nにおいて加圧ロール62に圧接され、加圧ロール62に従動して矢印E方向に回動する。
定着ベルト61の詳細は後述する。
ベルトガイド部材63は、定着ベルト61の内部に配置するホルダ65に取り付ける。そして、ベルトガイド部材63は、定着ベルト61の回動方向に向けた複数のリブ(図示せず)で形成し、定着ベルト61内周面との接触面積を小さくする。さらに、ベルトガイド部材63は、摩擦係数が低く、かつ熱伝導率が低いPFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の耐熱性樹脂で形成する。これにより、ベルトガイド部材63と定着ベルト61内周面との摺動抵抗を低減し、熱の発散を低くするように構成する。
圧力パッド64は、定着ベルト61を介して加圧ロール62から押圧されて加圧部Nを形成する。圧力パッド64は、バネや弾性体によって加圧ロール62を、例えば35kgfの荷重で押圧するようにホルダ65により支持する。圧力パッド64は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体からなる。圧力パッド64は、加圧ロール62側に凹部と凸部が形成されている。これにより、定着ベルト61が、圧力パッド64の加圧ロール62側の面から離れる際に急激な曲率の変化を生じ、定着後の記録用紙Pが定着ベルト61から剥離しやすくしている。このため、定着ベルト61は、加圧部Nにおいて、予め定められた歪み(加圧部の歪み)を繰り返し受けることになる。なお、加圧部の歪みについては、後述する。
加圧部Nの下流側近傍に配設する剥離補助部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト61の回転方向と対向する方向(カウンタ方向)に向け、バッフルホルダ72により保持する。また、圧力パッド64と定着ベルト61との間に低摩擦シート68を配設し、定着ベルト61内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を低減する。本実施の形態では、低摩擦シート68は圧力パッド64と別体に構成し、両端をホルダ65に固定する。
ホルダ65に、定着装置60の長手方向に亘って潤滑剤塗布部材67を配設する。潤滑剤塗布部材67は、定着ベルト61内周面に接触し、定着ベルト61と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給する。なお、潤滑剤としては、例えば、シリコーンオイル、フッ素オイル等の液体状オイル;固形物質と液体とを混合させたグリース等、さらにこれらを組み合わせたものが挙げられる。
加圧ロール62は、例えば、直径16mmの中実の鉄製のコア(円柱状芯金)621と、コア621の外周面を被覆する、例えば厚さ12mmのシリコーンスポンジ等のゴム層622と、例えば、厚さ30μmのPFA等の耐熱性樹脂被覆または耐熱性ゴム被覆による表面層623とを有する。なお、加圧ロール62の製造方法としては、例えば、PFAチューブ(表面層623になる)の内周面に、接着用プライマーを塗布したフッ素樹脂チューブと中実シャフト(コア621になる)とを成形金型内にセットし、フッ素樹脂チューブと中実シャフトとの間に液状発泡シリコーンゴムを注入後、加熱処理(150℃、2時間)によりシリコーンゴムを加硫、発泡させてゴム層622を形成する方法が挙げられる。
加圧ロール62は、定着ベルト61に対向するように配置し、矢印D方向に、例えば140mm/secのプロセススピードで回転し、定着ベルト61を従動させる。また、加圧ロール62と圧力パッド64とにより定着ベルト61を挟持した状態で保持して加圧部Nを形成し、この加圧部Nに未定着トナー像を保持した記録用紙Pを通過させ、熱及び圧力を加えて未定着トナー像を記録用紙Pに定着する。
磁場発生ユニット85は、断面が定着ベルト61の形状に沿った曲線形状を有し、定着ベルト61の外周表面と0.5mm〜2mm程度の間隙で設置する。磁場発生ユニット85は、磁界を発生させる励磁コイル851と、励磁コイル851を保持するコイル支持部材852と、励磁コイル851に電流を供給する励磁回路853とを有する。
励磁コイル851は、例えば、相互に絶縁された直径φ0.5mmの銅線材を16本〜20本程度束ねたリッツ線を、長円形状や楕円形状、長方形状等の閉環状に巻いて形成したものを用いる。励磁コイル851に励磁回路853によって予め定められた周波数の交流電流を印加することにより、励磁コイル851の周囲に交流磁界Hが発生する。交流磁界Hが、後述する定着ベルト61の金属層を横切る際に、電磁誘導作用によってその交流磁界Hの変化を妨げる磁界を発生するように渦電流Iが生じる。励磁コイル851に印加する交流電流の周波数は、例えば、10kHz〜50kHzに設定する。渦電流Iが定着ベルト61の金属層を流れることによって、金属層の抵抗値Rに比例した電力W(W=IR)によるジュール熱が発生し、定着ベルト61を加熱する。
コイル支持部材852は、耐熱性を有する非磁性材料で構成する。このような非磁性材料としては、例えば、耐熱ガラス、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、PPS等の耐熱性樹脂、またはこれらにガラス繊維を混合した耐熱性樹脂が挙げられる。
なお、本実施の形態では、定着ベルト61を加熱する加熱部材の一例として磁場発生ユニット85を備える電磁誘導加熱方式の定着装置60について説明したが、加熱部材としては、輻射ランプ発熱体、抵抗発熱体を採用することもできる。
輻射ランプ発熱体としては、例えば、ハロゲンランプ等が挙げられる。抵抗発熱体としては、例えば、鉄−クロム−アルミ系、ニッケル−クロム系、白金、モリブデン、タンタル、タングステン、炭化珪素、モリブデン−シリサイド、カーボン等が挙げられる。
定着装置60では、加圧ロール62の矢印D方向への回転に伴い、定着ベルト61が従動回転し、励磁コイル851により発生した磁界に曝される。この際、定着ベルト61中の金属層には渦電流が発生し、定着ベルト61の外周面が定着可能な温度まで加熱される。このようにして加熱された定着ベルト61は、加圧ロール62との加圧部Nまで移動する。搬送手段により、未定着トナー像がその表面に設けられた記録用紙Pが定着入口ガイド56を介して定着装置60に搬入される。記録用紙Pが定着ベルト61と加圧ロール62との加圧部Nを通過した際に、未定着トナー像は定着ベルト61により加熱され記録用紙Pの表面に定着される。その後、画像が表面に形成された記録用紙Pは、搬送手段により搬送され、定着装置60から排出される。また、加圧部Nにおいて定着処理を終え、外周面の表面温度が低下した定着ベルト61は、励磁コイル851方向へと回転し、次の定着処理に備えて再度加熱される。
(定着ベルト61)
次に、本実施の形態が適用される定着ベルト61について説明する。
図3は、本実施の形態が適用される定着ベルト61の構成の一例を示す断面図である。図3に示すように、定着ベルト61は、内周側から順に、基材となる金属層61a、弾性層61b、離型層61cを設けた3層構成の長尺の円筒形状をなしている。すなわち、金属層61aの内周面が定着ベルト61の内側表面61iに、離型層61cの外周面が定着ベルト61の外側表面61oになっている。
そして、本実施の形態が適用される定着ベルト61の金属層61aは、側面に継ぎ目がない。よって、定着ベルト61は無端(シームレス)ベルトである。
しかし、金属層61aを基材とする金属製ベルトは、成型加工の際の残留歪が蓄積している。そして、金属製ベルトを定着ベルトとして使用する場合、定着の際に加えられる繰り返し変形によってさらに歪みが蓄積するため、疲労破壊による亀裂を生じ易い。
図4は、本実施の形態が適用される定着ベルト61の構成の一例をさらに詳細に示す断面図である。
ここでは、金属層61aは3層の多層構造をなしている。すなわち、多層構造の金属層61aは、内周側から、ベース金属層611、発熱金属層612および中間金属層613から構成されている。そして、ベース金属層611および中間金属層613は、本実施の形態では、クロム(Cr)15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル(Ni)11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン(Mn)2重量%以上かつ4重量%以下を含むステンレス鋼層である。さらに、このステンレス鋼層は、銅(Cu)0.2重量%以下、モリブデン(Mo)0.1重量%以下、シリコン(Si)1重量%以下、リン(P)0.1重量%以下、イオウ(S)0.01重量%以下、炭素(C)0.1重量%以下、窒素(N)0.1重量%以下である。そして、残部が鉄(Fe)である。
そして、発熱金属層612は、例えば銅(Cu)層である。
発熱金属層612は、励磁コイル851が発生した磁界により渦電流が生じて発熱する。ベース金属層611および中間金属層613は、発熱金属層612を挟んで、発熱金属層612を保護するとともに、発熱金属層612と同様に、励磁コイル851が発生した磁界により渦電流が生じて発熱する。
金属層61aの厚さは、5μm〜100μmであるのが好ましい。そして、例えば、ベース金属層611および中間金属層613がそれぞれ20μmであり、発熱金属層612が10μmであって、金属層61aとしての厚さが50μmである。
ここで、本実施の形態が適用される定着ベルト61のステンレス鋼層の組成について説明する。
Crを15重量%〜18重量%添加する理由は、Fe中にCrを固溶させFe−Cr合金とし、固溶強化の効果で繰り返しの曲げ変形による疲労破壊に対する強度を向上させるためである。なお、Crの添加量が15重量%より少ないと固溶強化の効果が十分に得られず、18重量%を超えると硬化し過ぎて硬く、脆くなり過ぎる。
また、Niを11重量%〜14重量%添加する理由は、Fe中にNiを固溶させFe−Ni合金とし、固溶強化の効果で繰り返し曲げ変形による疲労破壊に対する強度を向上させるためである。しかし、Niの添加量が11重量%より少ないと固溶強化の効果が十分に得られず、14重量%を超えると硬化し過ぎて硬く脆くなり過ぎる。
そして、Mnを2重量%〜4重量%添加する理由は、Fe−Cr−Ni合金中にMnを固溶させFe−Cr−Ni−Mn合金とすることで、塑性加工の際の硬化する度合いを和らげ、加工硬化による脆化を防ぎ、繰り返し曲げ変形による疲労破壊に対する強度を向上させるためである。しかし、Mnの添加量が2重量%より少ないと、加工硬化による脆化を防ぐ効果が十分に得られず、Mnの添加量が4重量%を超えると、加工により硬化し過ぎてかえって硬く、脆くなり過ぎる。
一方、Cuを0.2重量%以下、Moを0.1重量%以下、Siを1重量%以下、Pを0.1重量%以下、Sを0.01重量%以下とする理由は、Fe−Cr−Ni合金中におけるCu、Mo、Si、P、Sが存在すると、不純物として結晶粒界に析出して結晶粒界を硬く脆くさせるためである。
そして、CとNとをそれぞれ0.1重量%以下とする理由は、Fe−Cr−Ni合金中にC、Nが存在すると、C、NがFeと反応して硬く脆い化合物であるセメンタイトを生成し、脆化するためである。
次に、弾性層61bと離型層61cとを説明する。
弾性層61bは、弾性と耐熱性が得られる材料で構成されている。例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の公知の耐熱性ゴムが用いうる。中でもシリコーンゴムは、表面張力が小さく、弾性に優れる点で好ましい。このようなシリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、MQ(ポリジメチルシリコーンゴム)、VMQ(メチルビニルシリコーンゴム)、PMQ(メチルフェニルシリコーンゴム)、FVMQ(フルオロシリコーンゴム)などが挙げられる。
離型層61cは、トナー像に対し適度な離型性を示す材料で構成されている。例えば、フッ素ゴム、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA、FEP(四フッ化エチレン六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
さて、定着ベルト61の製造方法について説明する。
まず、ステンレス鋼板(例えば、厚み0.2mm)に、例えば、1,100℃の水素(H)雰囲気下にて熱処理を施す。そして、2枚のステンレス鋼板および銅板(例えば、厚み0.1mm)のそれぞれの接着面を研磨して、表面に形成されている酸化被膜を除去する。その後、2枚のステンレス鋼板の間に銅板を挟み、冷間(再結晶化温度より低い温度)状態で圧延加工を行う。それにより、銅層が2層のステンレス鋼層に挟まれたクラッド鋼板(3層での厚みが、例えば、0.4mm)を得る。そして、このクラッド鋼板を、例えば水素雰囲気下で、例えば処理温度900℃、処理時間60分にて熱処理を施す。
次に、クラッド鋼板を深絞り法、へら絞り法、プレス法等により、筒状に成型する。その後、回転塑性加工(スピンドル加工)にて、開口部と底部とを有する筒状に成型する。そして、開口部と底部とを切断除去して、無端ベルト(シームレスベルト)を得る。
その後、金属層61aの外周面に、弾性層61bをリング塗布法、浸漬塗布法、注入成型法等で形成する。さらに、弾性層61bの外周面に、離型層61cを静電粉体塗布法、スプレー塗布法、浸漬塗布法、遠心製膜法等で形成する。
以上により、定着ベルト61が製造される。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をより具体的に説明する。なお、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例では、図4に示した多層構造の金属層61aを用いた定着ベルト61を使用した。
表1は、実施例1〜10および比較例1〜7について、金属層61aのベース金属層611および中間金属層613に用いたステンレス鋼層の組成を示す表である。なお、実施例1〜10および比較例1〜7において、ベース金属層611と中間金属層613とは、同じ組成のステンレス鋼層を用いた。
なお、定着ベルト61に使用されるステンレス鋼は、製造時(溶解/鋳造時)に予め定められた組成に基づいて、各構成元素が計量されて、仕込まれている。しかし、表1に示す組成は、溶解/鋳造/圧延されたステンレス鋼材よりサンプリングし、元素定量分析(原子吸光または誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分析により求めたものである。
表1では、ステンレス鋼層の組成として、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)、リン(P)、イオウ(S)、炭素(C)、窒素(N)について、重量%で表している。なお、鉄(Fe)については、残量(Bal.)として表している。
なお、表1は、評価条件(加圧部の歪み)および評価結果(結果)を合わせて示している。これらについては、後述する。
(定着ベルトの作製)
ここで、実施例1〜10および比較例1〜7に用いた定着ベルト61の作製方法を説明する。
始めに、金属層61aについて説明する。金属層61aの作製方法は、実施例1〜10および比較例1〜7において同じである。
まず、実施例1〜10および比較例1〜7において、表1に示す組成のステンレス鋼板(厚み0.2mm)に、1,100℃の水素雰囲気下にて熱処理を施した。そして、2枚のステンレス鋼板および銅板(厚み0.1mm)のそれぞれの接着面を研磨して、表面に形成されている酸化被膜を除去した。その後、2枚のステンレス鋼板の間に銅板を挟み込み、冷間(再結晶化温度より低い温度)状態で圧延加工を行った。それにより、銅層が2層のステンレス鋼層に挟み込まれたクラッド鋼板(3層での厚み0.4mm)を得た。そして、このクラッド鋼板を水素雰囲気下で、処理温度900℃、処理時間60分の条件にて熱処理を施した。
次に、クラッド鋼板をプレス・深絞り加工にて深さ10mm程度の円筒容器状に成型した。その後、回転塑性加工(スピンドル加工)にて、開口部と底部とを有する筒状に成型した。そして、開口部と底部とを切断除去して、内径30mm、長さ370mm、肉厚50μmの無端ベルト(シームレスベルト)を得た。なお、無端ベルトは、ステンレス鋼層のベース金属層611の厚さが20μm、Cuの発熱金属層612の厚さが10μm、ステンレス鋼層の中間金属層613の厚さが20μmである。
ステンレス鋼層であるベース金属層611および中間金属層613には、プレス・深絞り加工および回転塑性加工にて加えられた応力により、歪みが蓄積している。なお、蓄積した歪みの量は、無端ベルトとしての形状を同じとしているので、使用したステンレス鋼層の組成によって異なることになる。
一方、発熱金属層612に用いたCuは展性に富むため、歪みの蓄積は、ステンレス鋼層であるベース金属層611および中間金属層613に比べ少ない。
次に、弾性層61bと離型層61cとについて説明する。
無端ベルトの外側表面に、JIS K6253で規定されるデュロメータ硬さがA35となるように調整された液状シリコーンゴム(KE1940−35、液状シリコーンゴムA35品、信越化学工業株式会社製)を、膜厚が200μmとなるように塗布し、乾燥させて乾燥状態の液状シリコーンゴム層を得た。
上記の乾燥状態の液状シリコーンゴム層の表面に、PFAディスパージョン(500CL、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製)を、膜厚が30μmとなるように塗布し、380℃で焼成した。
これにより、シリコーンゴムからなる弾性層61bとPFAからなる離型層61cとを形成した。
以上により、定着ベルト61を得た。
(加圧ロール62の作製)
内面に接着用プライマーを塗布した外径50mm、長さ340mm、厚さ30μmのフッ素樹脂チューブ(表面層623となる)と金属製のコア621とを成形金型内にセットする。そして、フッ素樹脂チューブとコア621との間に液状発泡シリコーンゴム(ゴム層622となる)を注入する。その後、加熱処理(150℃、2時間)を行うことにより、シリコーンゴムを加硫、発泡させ、ゴム弾性を有した加圧ロール62を作製する。ゴム層622の層厚は2mmである。
(電磁誘導発熱空回転耐久評価)
作製した定着ベルト61と加圧ロール62とを、図2に示す定着装置60を備えた画像形成装置100(富士ゼロックス株式会社製、Docu Print C620)に取りつけた。
この画像形成装置100にて、実施例1〜10および比較例1〜7のそれぞれの定着ベルト61を、前述したように電磁誘導加熱により定着ベルト61を加熱しながら、200時間連続して空回転(連続200時間空回転)させた。そして、定着ベルト61の発熱持性(信頼性)および定着ベルト61の金属層61aに発生する亀裂の有無について評価(電磁誘導発熱空回転耐久評価)した。なお、空回転とは、記録用紙Pへのトナーの定着を行うことなく、定着ベルト61を加圧ロール62に圧接させ、加圧ロール62を回転させることをいう。
ここで、発熱特性(信頼性)とは、連続200時間空回転の間、定着ベルト61が設定された温度を維持するように発熱するか否かを示すものである。定着ベルト61は、評価の開始時期(初期)において、180℃に設定されている。そして、定着ベルト61は、この温度を維持するように運転されている。ところが、金属層61aのステンレス鋼層のベース金属層611または中間金属層613に亀裂が入ると、Cuの発熱金属層612にも亀裂が入り、渦電流が流れにくくなる。このため、電磁誘導加熱の効率が悪くなり定着ベルト61の温度が維持されなくなる。つまり、定着ベルト61の温度が低下する。したがって、定着ベルト61の温度を評価することで、定着ベルト61の発熱状態、すなわち発熱特性(信頼性)が評価できる。
なお、定着ベルト61の温度は、赤外線温度計により、モニタした。
一方、亀裂の発生は、音の発生や目視観察により判定した。多くの場合、亀裂が入るとき「パキ」という音がする。このようなとき、幅0.1mmで長さ10mm程度の亀裂が、金属層61aの外側表面に見られ、目視で亀裂の発生の有無が判定できる。なお、連続200時間空回転において、上記の音の発生がない場合においても、200時間経過後、金属層61aの外側表面を観察し、亀裂の有無を判定した。
次に、設定した評価条件(加圧部の歪み)について説明する。
図5は、加圧部の歪みについて説明するための、定着装置60における定着ベルト61と圧力パッド64との部分の拡大図である。定着ベルト61は矢印E方向に回転する。
圧力パッド64は、低摩擦シート68を介して定着ベルト61に当接している。そして、圧力パッド64は、領域Iでは、定着ベルト61の外側表面61oに対しては圧縮応力(内側表面61iに対しては引っ張り応力)を発生するように、凹状に形成されている。そして、圧力パッド64は、領域IIでは、定着ベルト61の外側表面61oに対しては引っ張り応力(内側表面61iに対しては圧縮応力)が発生するように凸状に形成されている。
前述したように、圧力パッド64をこのような形状にすることで、定着ベルト61が、圧力パッド64の加圧ロール62側の面から離れる際に急激な曲率の変化を生じ、定着後の記録用紙Pが定着ベルト61から剥離しやすくしている。
ここで、加圧部Nにおいて、圧力パッド64によって定着ベルト61が繰り返し受ける歪みを加圧部の歪みと呼ぶ。
そして、実施例1〜10および比較例1〜7では、圧力パッド64によって定着ベルト61に与えられる加圧部の歪みが0.7%以上になるように設定した。
具体的には、金属層61aの表面に歪みゲージ(例えば、共和電業株式会社製KFEL−2−120−C1L1M2R等)を貼り付け、圧力パッド64との加圧部Nによって与えられる歪みを測定した。そして、定着ベルト61の外側表面61oが領域Iで受ける引っ張り応力による歪みと、領域IIにおいて受ける圧縮応力による歪みとを足し合わせて、加圧部の歪みとした。例えば、引っ張り応力による歪みを+、圧縮応力による歪みを−として、領域Iにおいて、圧縮応力による歪みが−0.3%、領域IIにおいて、引っ張り応力による歪みが+0.5%とすると、定着ベルト61の受ける加圧部の歪み(繰り返し歪み幅)は0.8%となる。
なお、定着ベルト61の外側表面61oから見て加圧部の歪みを説明したが、定着ベルト61の内側表面61iから見てもよく、圧縮応力が引っ張り応力に、引っ張り応力が圧縮応力になる点が異なるが、加圧部の歪みとしては同じとなる。
そして、図5では、圧力パッド64は、定着ベルト61の外側表面61oから見て、圧縮応力の領域Iと引っ張り応力の領域IIとがともに発生する形状としたが、一方のみを発生する形状としてもよい。
ここでは、形状の異なる圧力パッド64を複数用意し、加圧部の歪みが予め定められた値(ここでは、0.7%)に達しない場合には、圧力パッド64を変更して、加圧部の歪みが予め定められた値(ここでは、0.7%)以上となる場合を実施例および比較例とした。
これは、加圧部の歪みが、圧力パッド64の定着ベルト61に当接する部分の形状(曲げ変形の大きさ)および金属層61aを構成するベース金属層611および中間金属層613のステンレス鋼層の材質により定まるためである。すなわち、実施例1〜10および比較例1〜7のそれぞれの定着ベルト61に対して、加圧部の歪みを予め定められた値(ここでは、0.7%)になるように、圧力パッド64の形状を決めることは容易ではない。そこで、実施例1〜10および比較例1〜7のそれぞれの定着ベルト61に対して、圧力パッド64を変更して、加圧部の歪みを測定し、加圧部の歪みが予め定められた値(ここでは、0.7%)以上となる圧力パッド64を選んでいる。
表1の加圧部の歪み(%)の欄には、このようにして設定した加圧部の歪みを%で示している。
以上説明したように、定着ベルト61は、回転する毎に繰り返し曲げ変形による歪みを受ける。これにより、定着ベルト61、特に、金属層61aのステンレス鋼層に歪みが蓄積し、疲労破壊にいたる。よって、加圧部の歪みが大きいほど、金属層61aに大きな応力がかかることになる。
なお、前述したように、金属層61aを塑性加工により作製しているので、金属層61a、特にベース金属層611および中間金属層613のステンレス鋼層に加工歪みが蓄積している。そのため、ベース金属層611および中間金属層613には、この加工歪みに加え、定着ベルト61使用時の加圧部の歪みが加わることになる。
したがって、疲労破壊は、金属層61a、特にベース金属層611および中間金属層613のステンレス鋼層の持つ特性と、金属層61aの作製時の加工歪みと、使用時に繰り返される曲げ変形(加圧部の歪み)とにより決まると考えられる。
表1の結果の欄に、実施例1〜10および比較例1〜7について、電磁誘導発熱空回転耐久評価の結果を示す。
Figure 0005470936
表1に示すように、実施例1〜10の定着ベルト61では、連続200時間空回転において、初期の発熱特性(180℃)が維持された。そして、連続200時間空回転後において、定着ベルト61の金属層61aに亀裂は見いだされなかった。
一方、比較例1〜7の定着ベルト61では、発熱特性(信頼性)の欄に示すように、空回転開始後21時間から38時間の間において、発熱不良の状態になった。そして、いずれの定着ベルト61の金属層61aにも亀裂の発生が見いだされた。
比較例1〜7において、発熱不良が生じたのは、前述したように、銅層である発熱金属層612に亀裂が発生し、電磁誘導加熱の効率が低下したためである。
さて、実施例1〜10の定着ベルト61と比較例1〜7の定着ベルト61との違いは、ベース金属層611および中間金属層613に用いたステンレス鋼層の組成が違うことにある。したがって、電磁誘導発熱空回転耐久評価による結果の差は、ベース金属層611および中間金属層613に用いたステンレス鋼層の組成の違いによると考えられる。
表2は、本実施の形態における定着ベルト61の金属層61aに用いたステンレス鋼層のそれぞれの組成の範囲を%で示したものである。
主な組成は、Feを除くと、Cr、Ni、Mnである。Feは残部を占めている。
実施例1〜10の金属層61aに用いたステンレス鋼層の組成は、表2に示す組成の範囲に含まれている。
一方、比較例1〜7は、主な組成であるCr、Ni、Mnの少なくとも1つにおいて、表2に示す範囲を逸脱している。
Figure 0005470936
比較例1〜7についての電磁誘導発熱空回転耐久評価の結果を説明する。
CrとNiを含むクロム・ニッケル系ステンレス(鋼)は、常温でオーステナイト相を示すことから、オーステナイト系ステンレス(鋼)と呼ばれる。実施例1〜10および比較例1〜7の定着ベルト61に用いられたステンレス鋼層も、オーステナイト系ステンレスに含まれる。
オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間加工だけで硬化(加工硬化)する。このため、オーステナイト系ステンレスは、絞り加工に向くといわれている。この反面、オーステナイト系ステンレス鋼は、冷間加工において、歪み(残留歪み)が蓄積しやすい。このため、使用時に繰り返し変形による歪みが加わると、疲労破壊にいたりやすい。
つまり、オーステナイト系ステンレス鋼は、成型時に加工硬化が起こりやすいと、使用時の繰り返し変形により、短い時間で疲労破壊に至ると考えられる。一方、加工硬化が起こりにくいと、成型が難しくなるという傾向にある。よって、加工性がよく、疲労破壊しにくいステンレス鋼が求められることになる。
さて、比較例1〜7を見てみる。
まず、比較例1の金属層61aに使用されたステンレス鋼層(比較例1のステンレス鋼層、以下同様に記載する)は、Cr、Ni、Mnについてすべての組成が表2に示した値を超えている。このため、比較例1のステンレス鋼層は、加工硬化により、硬く、脆くなり過ぎていたと考えられる。
比較例2のステンレス鋼層では、Cr、Niのそれぞれの組成は表2に示した値を超えている。一方、Mnの組成が表2に示した値を下回っている。このため、比較例2のステンレス鋼層は、Mnを添加しているにもかかわらず、加工硬化の度合いを和らげることができず、硬く、脆くなり過ぎていたと考えられる。
比較例3のステンレス鋼層では、Niの組成が表2に示した値を超えている。一方、Mnの組成は0.1重量%以下と少ない。よって、比較例3のステンレス鋼層は、比較例2の場合の同様に、加工硬化により、硬く、脆くなり過ぎていると考えられる。
比較例4のステンレス鋼層では、Crの組成が表2に示した範囲を下回っている。Mnの組成は、表2に示した範囲を上まわっている。Crの成分が少ないため、繰り返しの曲げ変形に対する疲労強度が低いことが考えられる。
比較例5のステンレス鋼層では、NiおよびMnの組成が表2に示した範囲を下回っている。このため、繰り返しの曲げ変形に対する疲労強度が低いと考えられる。なお、比較例5のステンレス鋼層の組成は、SUS304として知られているステンレス鋼に近い。したがって、本実施の形態においては、SUS304は使用し得ない。
比較例6のステンレス鋼層では、Cr、Niのそれぞれの組成が表2に示した範囲を下回っている。このため、繰り返しの曲げ変形に対する疲労強度が低いと考えられる。
比較例7のステンレス鋼層では、比較例6より、さらにCr、Niの組成が表2に示した範囲を下回っている。このため、繰り返しの曲げ変形に対する疲労強度が低いと考えられる。
以上、比較例1〜4は、加工硬化により、硬く、脆くなり過ぎているため、加圧部の歪みによる繰り返しの曲げ変形が加わって、空回転の開始から短い時間で、疲労破壊に至ったと思われる。一方、比較例5〜7は、繰り返しの曲げ変形に対する疲労強度が低いために、空回転の開始から短い時間で、疲労破壊に至ったと思われる。
以上説明したように、本実施の形態における定着ベルト61では、連続200時間空回転において、発熱不良や亀裂の発生を低減しうる。
なお、本実施の形態では、金属層61aとして、3層の多層構造の金属層61aを用いた。しかし、金属層61aとして、ステンレス鋼層からなる単層構造の金属層61aとしてもよい。
1Y,1M,1C,1K…画像形成ユニット、11…感光体ドラム、12…帯電器、13…レーザ露光器、14…現像器、15…中間転写ベルト、16…一次転写ロール、17…ドラムクリーナ、20…二次転写部、60…定着装置、61…定着ベルト、61a…金属層、61b…弾性層、61c…離型層、62…加圧ロール、63…ベルトガイド部材、64…圧力パッド、65…ホルダ、67…潤滑剤塗布部材、68…低摩擦シート、70…剥離補助部材、71…剥離バッフル、85…磁場発生ユニット、100…画像形成装置、621…コア、622…ゴム層、623…表面層、851…励磁コイル、852…コイル支持部材、853…励磁回路

Claims (4)

  1. クロム15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン2重量%以上かつ4重量%以下を含む第1のステンレス鋼層と、当該第1のステンレス鋼層の外側に積層された銅層と、当該銅層の外側に積層された前記第1のステンレス鋼層と同一組成の第2のステンレス鋼層とを有し、当該銅層の厚さが当該第1のステンレス鋼層及び当該第2のステンレス鋼層のいずれよりも薄く、当該第1のステンレス鋼層、当該銅層及び当該第2のステンレス鋼層を加えた厚さが5μm以上かつ100μm以下である円筒状の金属層と、
    前記金属層の外側に積層された離型層と、
    を備え
    前記金属層における前記銅層が発熱体として電磁誘導により加熱されることを特徴とする無端ベルト。
  2. クロム15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン2重量%以上かつ4重量%以下を含む第1のステンレス鋼層と、当該第1のステンレス鋼層の外側に積層された銅層と、当該銅層の外側に積層された前記第1のステンレス鋼層と同一組成の第2のステンレス鋼層とを有し、当該銅層の厚さが当該第1のステンレス鋼層及び当該第2のステンレス鋼層のいずれよりも薄く、当該第1のステンレス鋼層、当該銅層及び当該第2のステンレス鋼層を加えた厚さが5μm以上かつ100μm以下である円筒状の金属層と、当該金属層の外側に積層された離型層と、を備える定着ベルトと、
    前記定着ベルトの外側に圧接される加圧部材と、
    前記加圧部材から遠い側において、前記定着ベルトの側に設けられ、当該定着ベルトの前記金属層における前記銅層を発熱体として電磁誘導により当該定着ベルトを加熱する加熱部材と、
    を備えることを特徴とする定着装置。
  3. 前記定着ベルトの受ける繰り返し歪み幅が、0.7%以上であることを特徴とする請求項に記載の定着装置。
  4. トナー像を形成する像形成部と、
    前記像形成部で形成されたトナー像を記録材に転写する転写部と、
    クロム15重量%以上かつ18重量%以下、ニッケル11重量%以上かつ14重量%以下、マンガン2重量%以上かつ4重量%以下を含む第1のステンレス鋼層と、当該第1のステンレス鋼層の外側に積層された銅層と、当該銅層の外側に積層された前記第1のステンレス鋼層と同一組成の第2のステンレス鋼層とを有し、当該銅層の厚さが当該第1のステンレス鋼層及び当該第2のステンレス鋼層のいずれよりも薄く、当該第1のステンレス鋼層、当該銅層及び当該第2のステンレス鋼層を加えた厚さが5μm以上かつ100μm以下である円筒状の金属層と、当該金属層の外側に積層された離型層と、を備える定着ベルトと、当該定着ベルトの外側に圧接される加圧部材と、当該加圧部材から遠い側において、当該定着ベルトの外側に設けられ、当該定着ベルトの当該金属層における当該銅層を発熱体として電磁誘導により当該定着ベルトを加熱する加熱部材とを有し、前記記録材に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着部と、
    を備えることを特徴とする画像形成装置。
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