JP6128973B2 - 定着部材用の金属基材及びその製造方法、定着部材および定着装置 - Google Patents
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Description
マルテンサイト相を含むオーステナイト系ステンレス鋼を含み、その厚み方向において、
マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる領域によって、マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上のオーステナイト系ステンレス鋼からなる領域が挟まれている定着部材用の金属基材が提供される。
更に、本発明によれば、上記の定着部材と、該定着部材に対向して配置してなる加圧部材と、該定着部材の加熱手段とを備えている定着装置が提供される。
マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層と、マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層とを有し、
該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層が、該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層によって挟まれている積層構造を有する、定着部材用の金属基材の製造方法であって、
ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼板が、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼板によって挟まれている積層構造を有するオーステナイト系ステンレス積層鋼材を塑性加工することによって、該積層鋼材の有するオーステナイト系ステンレス鋼にマルテンサイト相を生じさせる工程を有する定着部材用の金属基材の製造方法が提供される。
本発明に係る、定着ベルト用の金属基材は、下記工程を含む方法によって製造されることができる。
(1)ステンレス鋼板から塑性加工であるところの絞り加工によってカップ形状部材を得る。絞り加工前のステンレス鋼板の厚みは1.0mm以下、特には、0.2mm以上0.5mm以下が好ましい。
(2)工程(1)で得たカップ形状部材を熱処理し、絞り加工で加えられた歪が除去されたカップ状部材を得る。
(3)工程(2)で得た歪を取り除いた状態のカップ形状部材を40%以上の加工率で塑性加工して薄肉化し、薄肉化されたカップ状部材の底部を切断して、0.05mm以下の厚みの金属製シームレスベルトを得る。
Si:0.01〜1.00質量%;
Mn:0.01〜2.00質量%;
Ni:6.00〜15.00質量%;
Cr:15.00〜20.00質量%;
残部:Feおよび不可避不純物。
上記不可避不純物としては、0.045質量%以下の割合で含まれることのあるP、及び0.030質量%以下の質量比で含まれることのあるS等が挙げられる。
C:0.01〜0.08質量%;
Si:0.01〜1.00質量%;
Mn:0.01〜2.00質量%;
Ni:8.00〜10.50質量%;
Cr:18.00〜20.00質量%。
残部:Feおよび不可避不純物。
また、上記不可避不純物としては、上記したように、0.045質量%以下の割合で含まれることのあるP、及び0.030質量%以下の質量比で含まれることのあるS等が挙げられる。
Md30=551−462(C+N)−9.2Si−8.1Mn−13.7Cr−29Ni−18.5Mo−68Nb・・・(式1)
なお、式1において用いられる材料の化学成分含有量としては、材料の元素分布をグロー放電発光分光分析法により測定した値を用いることができる。また、この測定には「GD-PROFTLER2」(株式会社堀場製作所社製)を用いることができる。
上述した本発明にかかる金属基材を用いて、未定着トナー画像の熱定着に用いる定着部材を製造することができる。未定着トナー画像の加熱定着に用いる定着部材は、未定着トナー画像と接する面と加熱手段による加熱面に対して摺動する面とを有する。
本実施例に係る金属基材の原材料としてのステンレス鋼板として、Niの含有量が8質量%以上のオーステナイト系ステンレス鋼板の両面を、Niの含有量が8質量%未満のオーステナイト系ステンレス鋼板で挟み込んだ積層鋼板を用意した。
(突き刺し強度測定)
図5は、上記で得られた金属製シームレスベルトの突き刺し強度測定の試験片を得る説明図である。上記製造工程から得た金属製シームレスベルト402を、図5(a)に示すように両端20mmの位置から4mm幅のリング状部材10を切り出した。次に図5(b)に示すようにリング状部材10を切り開き、短冊状の金属製シームレスベルト1を試験片として得た。
次に、硬度測定方法について説明する。硬度測定は、JIS Z 2244(2009)に基づくビッカース硬さ測定方法に従って行った。試験片は、突き刺し強度測定と同様に4mm幅の短冊状の試験片を切り出した。次に、金属製シームレスベルトの内周面側の表面を、3ミクロン相当のラッピングフィルムを用い、測定面の表面粗さが硬度測定に影響を与えない状態まで研磨し、その面の硬度を測定した。
次に、フェライト値測定方法について説明する。フェライト値とは、塑性加工によりオーステナイトからマルテンサイトに変態した変態量を簡易的に評価できる指標である。ただし、2mm以下の厚みではフェライト値は厚みに依存し小さくなる為、本測定でのフェライト値は本実施例および比較例の相対比較用のデータである。
本比較例では、JIS G 4305(2010)に基づくSUS304Lのステンレス鋼板(Niの含有量が8質量%以上)を用いた。該ステンレス鋼板は、冷間圧延により0.22mmの厚みに圧延した後、焼鈍処理を行った調質材を、本比較例1の定着ベルト向け金属製シームレスベルトの素材として使用した。該素材の先に述べた(式1)より求められるMd30は−14であった。
本比較例では、JIS G 4305(2010)に基づくSUS304Lのステンレス鋼板(Niの含有量が8質量%以上)を用いた。該ステンレス鋼板は、冷間圧延により0.30mmの厚みに圧延した後、焼鈍処理を行った調質材を、本比較例2の定着ベルト向け金属製シームレスベルトの素材として使用した。該素材の先に述べた(式1)より求められるMd30は−22であった。
本比較例では、JIS G 4305(2010)に基づくSUS304のステンレス鋼板(Niの含有量が8質量%以上)を用いた。該ステンレス鋼板は、冷間圧延により0.22mmの厚みに圧延した後、焼鈍処理を行った調質材を、本比較例3の定着ベルト向け金属製シームレスベルトの素材として使用した。該素材の先に述べた(式1)より求められるMd30は12であった。
本比較例では、JIS G 4305(2010)に基づくSUS301のステンレス鋼板(Niの含有量が8質量%未満)を用いた。該ステンレス鋼板は、冷間圧延により0.30mmの厚みに圧延した後、焼鈍処理を行った調質材を、本比較例の定着ベルト向け金属製シームレスベルトの素材として使用した。該素材の先に述べた(式1)より求められるMd30は87であった。
表2における熱処理温度とは、図4(b)に示すカップ形状部材300の熱処理時の保持温度である。また、表3における厚みとは、図4(c)に示す金属製シームレスベルト402の側壁厚みである。
2 突起物
3 ウレタンゴムプレート
10 リング状部材
11 定着ベルト
12 セラミックヒータ
20 加圧ローラ
30 記録材
101 基材
102 弾性層
103 表層
200 ステンレス鋼板
201 円板形状部材
300 カップ形状部材
301 歪が除去されたカップ形状部材
401 薄肉化したカップ状部材
402 金属製シームレスベルト
T トナー
N 定着ニップ
Claims (14)
- 定着部材用の金属基材であって、
マルテンサイト相を含むオーステナイト系ステンレス鋼を含み、
その厚み方向において、
マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる領域によって、
マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上のオーステナイト系ステンレス鋼からなる領域が挟まれている、
ことを特徴とする定着部材用の金属基材。 - 前記金属基材が、
マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上である層と、マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満である層とを有し、
該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上である層が、該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満である層によって挟まれている積層構造を有する、請求項1に記載の金属基材。 - 前記積層構造が、
前記マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上である層と、
該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上である層を挟んでいる前記マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満である層との3層からなる請求項2に記載の金属基材。 - 厚みが、30μm以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の金属基材。
- 前記金属基材が、エンドレスベルト形状を有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属基材。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の金属基材を有することを特徴とする定着部材。
- 前記金属基材と、該金属基材上に弾性層および離型層がこの順に積層されている請求項6に記載の定着部材。
- 前記弾性層がシリコーンゴムを含む請求項7に記載の定着部材。
- 前記離型層が、フッ素樹脂を含む請求項7または8に記載の定着部材。
- 請求項6〜9のいずれか一項に記載の定着部材と、該定着部材に対向して配置してなる加圧部材と、該定着部材の加熱手段とを備えていることを特徴とする定着装置。
- 該加熱手段が該定着部材の金属基材に直接または間接的に接するように配置されている請求項10に記載の定着装置。
- マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層と、マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層とを有し、
該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層が、該マルテンサイト相を含み、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼からなる層によって挟まれている積層構造を有する、定着部材用の金属基材の製造方法であって、
ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼板が、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼板によって挟まれている積層構造を有するオーステナイト系ステンレス積層鋼材を塑性加工することによって、該積層鋼材の有するオーステナイト系ステンレス鋼にマルテンサイト相を生じさせる工程を有することを特徴とする定着部材用の金属基材の製造方法。 - 前記塑性加工における前記オーステナイト系ステンレス積層鋼材の厚さに関する加工率が、少なくとも40%である請求項12に記載の製造方法。
- 前記オーステナイト系ステンレス積層鋼材が、ニッケル含有量が8質量%以上であるオーステナイト系ステンレス鋼板が、ニッケル含有量が8質量%未満であるオーステナイト系ステンレス鋼板によって挟まれている積層構造を有する積層鋼板を圧延して得られる圧延クラッド材である請求項12または13に記載の製造方法。
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