JP4546843B2 - スラスト軸受の軌道盤の製造方法およびスラスト軸受の製造方法 - Google Patents

スラスト軸受の軌道盤の製造方法およびスラスト軸受の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はスラスト軸受の軌道盤の製造方法およびスラスト軸受の製造方法に関し、より特定的には軌道盤を焼入硬化する焼入工程を有するスラスト軸受の軌道盤の製造方法およびその軌道盤を備えたスラスト軸受の製造方法に関するものである。
スラスト軸受を構成する軌道盤の反り・うねりは、スラスト軸受の性能を低下させる要因の一つとなる。
たとえばスラストころ軸受の軌道盤の反り・うねりが大きい場合、軸受が動作する際、転動体であるころの転走面の一部のみが軌道盤に対して押し付けられる現象(片当たり)が生じる。この片当たりは、転動体であるころと軌道盤との間の油膜切れの原因となり得る。油膜切れが生じた場合、ころと軌道盤との間は金属接触となって、その部分の温度が上昇する。これにより、表面損傷や表面起点型の剥離が生じ、軸受の寿命が短くなるおそれがある。また、片当たりが生じることにより、片当たりの生じた部分で、ころと軌道盤との接触面圧が設計上予測される値を超える可能性がある。この場合、内部起点型の剥離が早期に生じて軸受の寿命が短くなるおそれがある。
また、スラスト軸受の軌道盤の反り・うねりが大きい場合、軸受の動作時の騒音や振動が大きくなる。動作音が小さいことが必要な環境で使用される軸受の場合、これは大きな問題となる。
これに対し、軌道盤に対応する環状体の焼入れの冷却工程において、環状体の組織がオーステナイト状態のうちに所定の加工を加える方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。これにより、焼入後における環状体のひずみが抑制される。
また、軌道盤に対応するリング状部材に対して所定の加工率で矯正焼戻しを行う方法が提案されている。これにより、熱処理完了後におけるリング状部材の寸法精度が向上する(たとえば特許文献2参照)。
また、冷間加工後のリング状部材を型で拘束して加熱する方法が提案されている。これにより、リング状部材のサイジングが行われるとともに加工応力が除去される。その結果、その後の熱処理の際に生じるリング状部材の変形が抑制される(たとえば特許文献3参照)。
特開平8−225851号公報 特開平9−256058号公報 特開平11−43717号公報
しかし近年、スラスト軸受が部品として使用される製品、たとえばカーエアコン・コンプレッサ、オートマチック・トランスミッション、マニュアル・トランスミッション、無段変速機、アクチュエータ付トランスミッション、電動ブレーキ、ディファレンシャル、トランスファ、船外機等はますます高機能化している。これに伴い、そこに使用されるスラスト軸受に対しては、さらなる高機能化および高精度化、たとえば長寿命化、低騒音化等が求められている。また、製品の価格競争力向上のため、スラスト軸受に対しても低コスト化の要求がある。
このような状況の下、前述の特許文献1〜3において開示された製造方法では、熱処理終了時におけるスラスト軸受の軌道盤の精度は十分とはいえない。また、熱処理終了後に研削加工を行えば十分な精度が得られるが、これでは製造コストが上昇し、前述の低コスト化の要求に応えることができない。さらに、熱処理の工程を追加する方法で精度を向上させることは、低コスト化の要求に反するものとなる。
そこで本発明の目的は、熱処理終了時におけるスラスト軸受の軌道盤の反り・うねりを抑制し、熱処理後に研削加工を行うことなく高精度のスラスト軸受の軌道盤を製造可能なスラスト軸受の軌道盤の製造方法およびスラスト軸受の製造方法を提供することである。
本発明のスラストころ軸受の軌道盤の製造方法は、軌道盤を焼入硬化する焼入工程を備えたスラストころ軸受の軌道盤の製造方法であって、焼入工程は軌道盤をAc1点より低い温度からAc1点以上の温度に加熱する加熱工程と、加熱工程によりAc1点以上の温度に加熱された軌道盤をM点以下の温度に冷却する冷却工程とを有している。加熱工程では軌道盤の転走面に転走面を押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷しながらAc1点より低い温度からAc1点以上の温度まで加熱する。冷却工程では軌道盤の転走面に転走面を押圧する応力を少なくとも転走部分全体に対して負荷しながらAc1点以上の温度からM点以下の温度に冷却する。さらに、冷却工程によりM 点以下の温度に冷却された軌道盤をA c1 点以下の温度に加熱した後冷却する焼戻工程を備え、焼戻工程において上記応力を少なくとも転走部分全体に対して負荷する。
一般に、熱処理による軌道盤の反り・うねりの主な原因は、熱処理前の加工により導入された応力やひずみが熱処理の際に開放されることに伴う変形、焼入れの冷却時において鋼の組織がオーステナイトからマルテンサイトに変化することに伴う変形等であると考えられている。そのため、加工により導入された応力やひずみを熱処理開始前に除去するための加熱矯正が対策として行われている。また、焼入れの際の冷却工程において、オーステナイト状態の鋼がマルテンサイト化する前に軌道盤を加工または/および拘束して、マルテンサイト化に伴う変形を緩和する方法(プレスクエンチ)が対策として行われている。また、熱処理により生じた変形を事後的に除去するために、熱処理終了後に加熱矯正する方法(プレステンパー)も対策として行われている。
これに対し、本発明者は熱処理の各工程における拘束および矯正と熱処理終了後の軌道盤の反り・うねりとの関係について鋭意検討した。その結果、従来の対策とは異なり、焼入れの加熱工程において軌道盤を拘束した状態でAc1点より低い温度からAc1点以上の温度まで加熱した後、冷却工程においても軌道盤を拘束した状態でAc1点以上の温度からM点以下の温度まで冷却して焼入れを行うことで、軌道盤の反り・うねりを極めて小さくできることを見出した。これにより、本発明者は本発明に想到したものである。
本発明のスラスト軸受の軌道盤の製造方法によれば、熱処理終了時の軌道盤の反り・うねりが小さくなる。そのため、熱処理後の軌道盤に対して研削を行うことなく仕上げ(たとえばタンブラー)のみを行うことで十分な精度の軌道盤を製造することができる。その結果、高精度な軌道盤を低コストで製造できる。
なお、Ac1点とは鋼を連続的に加熱する際に、鋼がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。また、軌道盤の転走面とは軌道盤において転動体が転走する側の面をいう。また、軌道盤の転走部分とは転走面のうち転動体が転走する部分をいう。
さらに、焼戻工程において軌道盤の転走面に転走面を押圧する向きの応力を少なくとも転走部分全体に対して負荷する。これにより、熱処理終了時の反り・うねりがさらに小さな軌道盤を製造することができる。
上記製造方法において好ましくは、焼入工程は2枚以上の軌道盤に対して同時に実施される。これにより、製造の効率が向上し、軌道盤を一層低コストで製造することができる。
上記製造方法において好ましくは、焼戻工程において軌道盤の転走面に転走面を押圧する応力を2枚以上の軌道盤の少なくとも転走部分全体に対して負荷する。
これにより、熱処理終了時の軌道盤の反り・うねりがさらに小さくなるとともに、製造の効率が向上し、一層低コストで製造することができる。
上記製造方法において好ましくは、焼戻工程における加熱は誘導加熱により行われる。これにより、従来の雰囲気炉での加熱と比較して、昇温時間が短く、生産性が向上する。
上記製造方法において好ましくは、焼入れの加熱工程における加熱は誘導加熱により行われる。
これにより、従来の雰囲気炉での加熱と比較して、昇温時間が短く、生産性が向上する。また、雰囲気炉と比較して高温での保持時間が極めて短いため、拘束を行う治具の損傷が小さくなり、治具の寿命が長くなる。そのため、低コストで治具により拘束した焼入れが可能となり、製造コストがさらに低減できる。また、誘導加熱による焼戻しと組み合わせることにより、熱処理を加工等の他の製造工程と同一のラインで行うこと(インライン化)が可能となり、軌道盤の製造工程をワンライン化することが可能となる。これにより、製造のサイクルタイムを短縮することが可能となる。そのため、加工後の熱処理待ちおよび熱処理後の仕上げ待ちの仕掛り在庫を持つ必要がなくなり、低コスト化が可能となる。また、製品一つ一つに対する品質管理(ピースバイピースの品質管理)を行い得るため、高品質化が可能となる。
上記製造方法において好ましくは、焼入工程に先立って、鋼材を加工して軌道盤を形成する加工工程を備えている。加工工程においては鋼板をプレス加工することにより軌道盤を形成する。
これにより、軌道盤を削り出し加工する場合と比べて、低コストで製造することができる。
本発明のスラストころ軸受の製造方法は上記製造方法により軌道盤を製造する。
本発明の製造方法によれば、上記の高精度かつ低コストな軌道盤を用いてスラスト軸受を製造するため、高精度かつ低コストなスラスト軸受を製造することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の軌道盤の製造方法によれば、熱処理終了時におけるスラスト軸受の軌道盤の反り・うねりを抑制し、熱処理後に研削を行うことなく高精度のスラスト軸受の軌道盤およびスラスト軸受を製造可能となる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は本発明の一実施の形態である実施の形態1の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図1を参照して、本発明の実施の形態1の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図1を参照して、誘導熱処理装置1は、誘導コイル10と、下部拘束用治具30Aと、上部拘束用治具30Bと、中心軸31と、治具押えナット33とを備えている。誘導コイル10は冷却水を吐出するための冷却水吐出口11を有している。また、中心軸31は下端に膨出部311を有し、上部にねじ部312を有している。また、治具押えナット33は内径側にねじ溝を有している。
以下、同図を参照して熱処理の手順を説明する。
下部拘束用治具30Aには中心軸31が挿入される。下部拘束用治具30Aは中心軸の下端の膨出部311に接触するように配置される。中央部に穴を有するスラスト軸受の軌道盤61には、中心軸31が挿入される。軌道盤61は下部拘束用治具30Aの平滑な上面に接触するように配置される。軌道盤61は1枚でもよいが、熱処理の効率向上の観点から複数枚であることが好ましい。複数枚同時に熱処理を行う場合、軌道盤61は中心軸31を挟む両側に配置された誘導コイル10による加熱が可能な範囲で、積み重ねて配置される。上部拘束用治具30Bはその平滑な下面が軌道盤61の上部に接触するように配置される。また、上部拘束用治具30Bには、中心軸31が挿入される。治具押えナット33は内径側のねじ溝が中心軸31のねじ部312と噛み合うように中心軸31に嵌めこまれ、所定のトルクで締め付けられる。これにより、軌道盤61は転走面を押圧する向きの応力を転走部分全体に負荷される。
誘導コイル10に高周波電流を通電すると軌道盤61は誘導加熱される(加熱工程)。軌道盤61はAc1点以上の温度に加熱されて所定時間保持される。その後、通電が停止されるとともに誘導コイル10の冷却水吐出口11を通して冷却水が軌道盤61に吹き付けられる。これにより、軌道盤61はM点以下の温度に急速に冷却される(冷却工程)。以上の手順により、軌道盤61は転走面を押圧する向きの応力を負荷された状態で、焼入硬化される。このとき、一様に加熱および冷却を行うため、矢印で示すように誘導熱処理装置1のうち誘導コイル10以外の部分を中心軸31を回転軸として誘導コイル10に対して相対的に回転させることが好ましい。
さらに、再度誘導コイル10には高周波電流が通電され、軌道盤61はAc1点以下の温度に加熱される。その後軌道盤61は所定の時間、所定の温度で保持された後、加熱が中止されることで冷却される(焼戻工程)。以上の手順により、軌道盤61は転走面を押圧する向きの応力を負荷された状態で焼戻しされる。このとき、一様に加熱を行うため、矢印で示すように誘導熱処理装置1のうち誘導コイル10以外の部分を中心軸31を回転軸として誘導コイル10に対して相対的に回転させることが好ましい。
以上の工程により、軌道盤61は転走面を押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤61の転走部分全体に対して負荷されながら焼入れおよび焼戻しされる。
なお、応力は必ずしも負荷し続ける必要はなく、必要に応じて解除することができるが、変形を抑制する観点および工程数を少なくする観点から、熱処理開始前に軌道盤61を拘束し、かつ熱処理終了まで拘束し続けることが望ましい。また、軌道盤61は1枚ずつ熱処理を行うこともできるが、軌道盤61の製造コストをさらに低減するためには、複数枚同時に熱処理を行うことが望ましい。
本実施の形態によれば、反り・うねりが抑制され、熱処理終了時において精度の高い軌道盤61を製造することができる。
次に、本発明の製造工程を従来の製造工程と比較した場合の、本発明の製造工程の利点について図を用いて説明する。
図2は本実施の形態1の製造工程を従来の製造工程と比較して示す図である。
図2を参照して、両工程ともプレス加工により軌道盤を成形し、熱処理終了後にタンブラーによる仕上げを行う点は共通している。しかし、プレス加工により軌道盤61を成形した後、従来の製造工程では連続炉において浸炭または浸炭窒化焼入れおよび焼戻しを行うのに対し、本実施の形態の製造工程では誘導加熱焼入れおよび誘導加熱焼戻しを行う点で異なっている。
従来の製造工程における浸炭焼入れ、焼戻しは一般的には連続炉において行われる。連続炉は設備が比較的大規模になること、取り扱いに注意を要する浸炭用ガスが使用されることから、一般的には加工ラインとは別に配置される。そのため、成形された軌道盤61は一度連続炉まで運搬され、焼入れおよび焼戻しが行われた後、次の加工ラインまで運搬される。したがって、熱処理前および熱処理後の仕掛品が生じる。
これに対して、本実施の形態の製造工程における、誘導加熱設備は比較的小規模で、かつ取り扱いに注意が必要な浸炭ガス等も使用しないため、加工工程とともに1つのラインを構成する(ワンライン化する)ことができる。そのため、熱処理前および熱処理後の仕掛品が発生しない。これにより製造コスト低減が可能となる。また、製品の管理も容易となるため、ピースバイピースの品質管理を行い得る。これにより製品の高品質化が実現される。
さらに、前述のように、従来の工程では軌道盤の焼戻終了時において反り・うねりが大きいため、矯正するためのプレステンパーの工程が設けられる場合が多い。これに対して、本実施の形態では焼戻終了時において、軌道盤61の反り・うねりが小さいため、プレステンパーの工程は不要となる。そのため、高精度の軌道盤61を低コストで製造することが可能となる。
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図3を参照して、本発明の実施の形態2の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図3を参照して、本実施の形態における誘導熱処理装置1と、上述した図1の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、本実施の形態2で用いる誘導熱処理装置1は中心軸31およびこれに噛み合う治具押えナット33を有さない一方で、軌道盤61の内径側に誘導コイル10が配置される点で図1の誘導熱処理装置1と異なっている。
以下、同図を参照して熱処理の手順を説明する。
熱処理の手順も基本的には図1の熱処理方法と同様である。しかし、図1の熱処理方法とは異なり、上部拘束用治具30Bは治具押えナット33で締め付けられて軌道盤61に押し付けられるのではなく、他の手段(たとえば、油圧シリンダなど)により圧力を負荷される。これにより、転走面を押圧する向きの応力が、少なくとも軌道盤61の転走部分全体に対して負荷される。また、焼入れおよび焼戻しの加熱は、軌道盤61の外径側からだけでなく、内径側からも行われる。
本実施の形態によれば、軌道盤61は実施の形態1の場合と比較して、より均一に加熱される。そのため、反り・うねりの抑制に有利である。
(実施の形態3)
図4は本発明の実施の形態3の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図4を参照して、本発明の実施の形態3の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図4を参照して、本実施の形態における誘導熱処理装置1と上述の図1の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、本実施の形態3で用いる誘導熱処理装置1は誘導コイル10に代えて、焼入用誘導コイル10Aと焼戻用誘導コイル10Bとがそれぞれ中心軸31を挟む両側に配置される点で図1の誘導熱処理装置1と異なる。また、焼入用誘導コイル10Aは第1の焼入用誘導コイル10A1と、第1の焼入用誘導コイル10A1に隣接し、かつ焼戻用誘導コイル10Bとの間に配置された第2の焼入用誘導コイル10A2からなっている。第2の焼入用誘導コイル10A2は冷却水吐出口11を有している。また、図1の誘導熱処理装置1では配置されたすべての軌道盤61が同時に加熱可能に構成されているのに対し、本実施の形態3では一部の軌道盤61のみが加熱可能に構成されている。具体的には、一部の軌道盤61の端面にのみ対向することができるように、誘導コイル10A、10Bの高さはセットされた複数の軌道盤61の高さよりも小さくなっている。さらに、本実施の形態3では、誘導コイル10A、10Bおよび中心軸31の一方または両方が中心軸31の軸方向に移動可能であることにより、中心軸31が誘導コイル10A、10Bに対して相対的に移動可能な構成となっている。
以下、同図を参照して熱処理の手順を説明する。
下部拘束用治具30A、上部拘束用治具30B、軌道盤61、治具押えナット33は図1の場合と同様に配置され、軌道盤61の転走面を押圧する向きの応力が、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷される。
次に、誘導コイル10Aおよび10Bに高周波電流が通電されるとともに、中心軸31は誘導コイル10Aおよび10Bに対して相対的に移動する。これに伴い軌道盤61は通電された第1の焼入用誘導コイル10A1に挟まれる位置に到達する。これにより軌道盤61はAc1点以上の温度に誘導加熱される。そして、加熱された軌道盤61は第1の焼入用誘導コイル10A1に対して相対的に移動しつつ、第2の焼入用誘導コイル10A2に挟まれる位置に到達し、その間所定時間Ac1点以上の温度に保持される。その後、軌道盤61に対する第2の焼入用誘導コイル10A2による加熱が中止されるとともに、軌道盤61には冷却水吐出口11から冷却水が吹き付けられ、M点以下の温度に急速に冷却される。以上の手順により、軌道盤に転走面を押圧する向きの応力を負荷された状態で、焼入れが実施される。
さらに軌道盤61は誘導コイル10A、10Bに対して相対的に移動し、焼戻用誘導コイル10Bに挟まれる位置に到達する。これにより、軌道盤61はAc1点以下の所定の焼戻温度に加熱される。そして、加熱された軌道盤61は焼戻用誘導コイル10Bに対して相対的に移動しつつ、所定時間経過後加熱範囲から離脱することで、空冷される。これにより、軌道盤61に転走面を押圧する向きの応力を負荷した状態で焼戻しが実施される。
以上の工程により、軌道盤61は転走面を押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷されながら焼入れおよび焼戻しされる。
本実施の形態によれば、誘導コイル10A、10Bの長さを超えて軌道盤61を積み重ねても、軌道盤61の熱処理を行うことができる。
(実施の形態4)
次に、本発明の製造方法により製造可能なスラスト軸受の一例について、図に基づいて説明する。
図5は本発明の製造方法により製造可能なスラスト軸受の一例を示す概略断面図である。また、図6は本発明の製造方法により製造可能なスラスト軸受の転動体周辺の構成の一例を示す概略部分断面図である。
図5(a)を参照して、スラスト軸受60は、たとえば一対の軌道盤61、61と、複数の転動体62と、環状の保持器63とを備えている。転動体62は一対の軌道盤61、61の間において、軌道盤61、61の転走面61A、61Aに接触して配置されている。さらに、転動体62は保持器63により周方向に所定のピッチで配置され、かつ転動自在に保持されている。
なお、図5(a)においては転動体62は単列に配置されているが、(b)〜(e)のように複列に配置されてもよい。また、保持器63の形状は図5(a)において示された形状に限られず、たとえば(b)〜(e)に示すような形状であってもよい。また、図5(a)〜(c)においては保持器63は金属製であるが、保持器63の材質は金属に限られず、たとえば(d)および(e)に示すように材質は樹脂であってもよい。また、複列の転動体62を有する場合、図5(b)〜(d)では、径方向に隣り合う転動体は保持器に設けられた単一の保持領域で保持されているが、(e)に示すように保持領域が分離され、複数の保持領域においてそれぞれの転動体62が保持されてもよい。
図6(a)を参照して、転動体周辺は、たとえば一対の軌道盤61、61と、転動体62と、保持器63とからなっている。一方の軌道盤61は径方向内径側に転走面61Aと交差する方向に延びる内径フランジ611を有しており、他方の軌道盤61は径方向外径側に転走面61Aと交差する方向に延びる外径フランジ613を有している。また、内径フランジ611の先端部には径方向外径側に突出する内径フランジ突出部612が形成されており、外径フランジ613の先端部には径方向内径側に突出する外径フランジ突出部614が形成されている。内径フランジ突出部612および外径フランジ突出部614の作用により、軌道盤61と保持器63および保持器63に保持されている転動体62は分離しない構成となっている。
なお、図6(a)では軌道盤61が一対である場合について説明したが、(g)〜(k)のように軌道盤61は1枚であってもよい。また、図6(a)では軌道盤61がフランジ611、613を有する場合について説明したが、(c)(d)(e)(f)(k)のように一方または両方がフランジ611、613を有さないものであってもよい。また、図6(a)では軌道盤61のフランジ611、613が突出部612および614を有する場合について説明したが、(b)〜(k)のように一方または両方が突出部612および614を有さないものであってもよい。この場合、突出部612および614を有さない軌道盤61と、保持器63および保持器63に保持されている転動体62とは分離可能となっている。
以上のように、軌道盤61はフランジ611、613を有する場合がある。以下、軌道盤61がフランジ611、613を有する場合の本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
図7は本発明の実施の形態4の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図7を参照して、本発明の実施の形態4の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図7を参照して、本実施の形態4における誘導熱処理装置1と上述の図1に示した実施の形態1の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、本実施の形態4で熱処理される軌道盤61は内径フランジ611を有している。そのため、たとえば2枚の軌道盤61を熱処理する場合、まず1枚目の軌道盤61は転走面61Aの転走部分全体が下部拘束用治具30Aの平滑な上面に接触するように転走面61Aを下に向けて配置される。次に2枚目の軌道盤61は1枚目の軌道盤61の上部に転走面61Aを上に向けて配置される。さらに、その上部には上部拘束用治具30Bが、その平滑な下面が転走面61Aの転走部分全体と接触するように配置される。これにより、図1と同様に軌道盤61は転走面61Aを押圧する向きの応力を、軌道盤61の転動部分全体において負荷される。
次に、誘導コイル10に高周波電流が通電され、以後の熱処理は図1の実施の形態1の場合と同様に行われる。このようにして、内径フランジ611を有する軌道盤61は、転走面61Aを押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷されながら焼入れおよび焼戻しされる。
図8は実施の形態4の第1の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図8を参照して、本発明の実施の形態4の第1の変形例の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図8を参照して、本実施の形態4の第1の変形例における誘導熱処理装置1と上述の図7に示した実施の形態4の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、図7では図1と同様に中心軸31を有し、拘束用治具30および治具抑えナット33で軌道盤61に応力を負荷する構成を有するが、図8では図3の場合と同様に軌道盤61の内径側に誘導コイル10を配置する構成となっている点で異なっている。
次に、本変形例の熱処理の手順を説明する。まず、図7の場合と同様に下部拘束用治具30A、軌道盤61、および上部拘束用治具30Bが配置される。そして、治具押えナット33を使用せず、図3の場合と同様に上部拘束用治具30Bに圧力を負荷され、軌道盤61が拘束される。次に、誘導コイル10に高周波電流が通電され、以後の熱処理は図1の実施の形態1の場合と同様に行われる。このようにして、内径フランジ611を有する軌道盤61は、転走面61Aを押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷されながら焼入れおよび焼戻しされる。
図9は実施の形態4の第2の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図10は実施の形態4の第3の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図9および図10を参照して、本発明の実施の形態4の第2および第3の変形例の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図9および図10を参照して、第2および第3の変形例における誘導熱処理装置1と、上述の図8に示した本実施の形態4および第1の変形例の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、図7および図8では軌道盤61が内径フランジ611を有しているが、図9および図10では軌道盤61は外径フランジ613を有している点で異なっている。この場合、図9および図10に示したように外径フランジ613を拘束用治具30A、30Bの径方向外側に出した状態で軌道盤61を拘束すれば、上述の図7および図8の場合と同様に軌道盤61を拘束した状態で焼入れおよび焼戻しをすることができる。
(実施の形態5)
図11は本発明の実施の形態5におけるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す図である。図11を参照して、本発明の実施の形態5の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図11を参照して、本実施の形態5における誘導熱処理装置1と上述の図1の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、本実施の形態5では軌道盤61が内径フランジ611を有している。そのため、図11で示した誘導熱処理装置1は中間部拘束用治具30Cを有する点で図1で示した誘導熱処理装置1と異なっている。中間部拘束用治具30Cはたとえば軌道盤61の内径よりも大きな内径を有し、さらに上面および下面が平行かつ平滑な円筒状の形状を有している。
次に同図を参照して、熱処理の手順を説明する。
1枚目の軌道盤61は下部拘束用治具30Aに接触し、かつ転走面61Aを上向きにして配置される。中間部拘束用治具30Cはその上に重ねて、かつその平滑な下面が軌道盤61の転走面61Aの少なくとも転走部分全体に接触するように配置される。次に2枚目の軌道盤61は中間部拘束用治具30Cの上に重ねて、かつ軌道盤61の転走面61Aの少なくとも転走部分全体が中間部拘束用治具30Cの平滑な上面に接触するように配置される。この中間部拘束用治具30Cと2枚の軌道盤61、61との組み合わせを1つの単位として、誘導コイル10が加熱可能な範囲でこれらが複数個積み重ねられる。その上部に上部拘束用治具30Bが配置され、図1の場合と同様に治具押えナット33により締め付けられる。これにより、軌道盤61は転走面61Aを押圧する向きの応力を転走部分全体に負荷される。この状態で、軌道盤61は図1の場合と同様に、転走面を押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷されながら焼入れ、焼戻しされる。
図12は、実施の形態5の第1の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図13は、実施の形態5の第2の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図12および図13を参照して、本発明の実施の形態5の第1および第2の変形例の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図11では中心軸31および治具抑えナット33を使用する場合について説明したが、図12に示す誘導熱処理装置1のように、図3の場合と同様に中心軸31および治具抑えナット33に代えて軌道盤61の内径側に誘導コイル10を配置する構成を用いてもよい。また、図13に示す誘導熱処理装置1のように、図4の場合と同様に中心軸31が誘導コイル10Aおよび10Bに対して相対的に移動可能な構成を用いてもよい。この場合の軌道盤61の拘束は図11の場合と同様に行い、以後の熱処理の手順は図3および図4の場合と同様である。
図14は、実施の形態5の第3の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図15は、実施の形態5の第4の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図16は、実施の形態5の第5の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図14、図15、および図16を参照して、本発明の実施の形態5の第3、第4、および第5の変形例の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図14〜図16を参照して、図14〜図16に示した第3、第4、および第5の変形例における誘導熱処理装置1と、上述の図11〜図13に示した本実施の形態5および第1、第2の変形例の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、図11〜図13では軌道盤61は内径フランジ611を有しているのに対し、図14〜図16では軌道盤61は外径フランジ613を有している点で異なっている。この場合、外径フランジ613を図14〜図16に示したように中間部拘束用治具30Cの径方向外側に出した状態で軌道盤61を拘束すれば、図11〜図13で説明した上述の方法と同様に軌道盤61を拘束した状態で、焼入れおよび焼戻しをすることができる。
(実施の形態6)
図17は本発明の実施の形態6の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図18は図17の領域XVIIIの部分を拡大して示した部分拡大図である。図17および図18を参照して、本発明の実施の形態6の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図17および図18を参照して、本実施の形態における誘導熱処理装置1と上述の図11の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、本実施の形態6の誘導熱処理装置1では中間部拘束用治具30Cに代えてフランジ611、613を有さない軌道盤61が使用される点で図11の誘導熱処理装置1と異なっている。
次に同図を参照して、熱処理の手順を説明する。
内径フランジ611を有する1枚目の軌道盤61は下部拘束用治具30Aに接触し、かつ転走面61Aを上向きにして配置される。フランジ611、613を有さない軌道盤61はその上に重ねて、かつ内径フランジ611を有する軌道盤61の転走面61Aの少なくとも転走部分全体に接触するように配置される。次に内径フランジ611を有する2枚目の軌道盤61はフランジ611、613を有さない軌道盤61の上に重ねて、かつ内径フランジ611を有する軌道盤61の転走面61Aの少なくとも転走部分全体がフランジ611、613を有さない軌道盤61に接触するように配置される。フランジ611、613を有さない軌道盤61はこのような配置が可能となるように複数枚重ねて配置されてもよい。以上の軌道盤61の組み合わせを1つの単位として、誘導コイル10が加熱可能な範囲でこれらが複数個積み重ねられる。以下、図11の場合と同様にして、転走面61Aを押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤61の転走部分全体に対して負荷されながら焼入れ、焼戻しが実施される。
図19は、実施の形態6の第1の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図20は、実施の形態6の第2の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図19および図20を参照して、本発明の実施の形態6の第1および第2の変形例の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図17では中心軸31および治具抑えナット33を使用する場合について説明したが、図19に示す誘導熱処理装置1のように、図3の場合と同様に中心軸31および治具抑えナット33に代えて軌道盤61の内径側に誘導コイル10を配置する構成を用いてもよい。また、図20に示す誘導熱処理装置1のように、図4の場合と同様に中心軸31が誘導コイル10Aおよび10Bに対して相対的に移動可能な構成を用いてもよい。この場合の軌道盤61の拘束は図17および図18の場合と同様に行い、以後の熱処理の手順は図3および図4の場合と同様である。
図21は、実施の形態6の第3の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図22は、図21の領域XXIIの部分を拡大して示した部分拡大図である。また、図23は、実施の形態6の第4の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。また、図24は、実施の形態6の第5の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。図21〜図24を参照して、本発明の実施の形態6の第3、第4、および第5の変形例の製造方法およびその製造方法に使用される誘導熱処理装置を説明する。
図21〜図24を参照して、図21〜図24に示した第3、第4、および第5の変形例における誘導熱処理装置1と、上述の図17〜図20に示した本実施の形態6および第1、第2の変形例の誘導熱処理装置1とは基本的に同様の構成を有している。しかし、図17〜図20では軌道盤61は内径フランジ611を有しているのに対し、図21〜図24では軌道盤61は外径フランジ613を有している点で異なっている。この場合、外径フランジ613を図21〜図24に示したようにフランジ611、613を有さない軌道盤61の径方向外側に出した状態で軌道盤61を拘束すれば、図17〜図20で説明した上述の方法と同様に軌道盤61を拘束した状態で、焼入れおよび焼戻しをすることができる。
以下、本発明の実施例1について説明する。
本発明の製造方法で作製したスラスト軸受の軌道盤と、従来の一般的製造方法で作製したスラスト軸受の軌道盤との反り・うねりおよび硬度を調査して比較する実験を行った。
以下、実験の手順を説明する。実験に供する材料としてS55C、SAE1070、SK5、SUJ2を選択した。プレス加工により内径φ25mm、外径φ40mm、厚さ1mmの円盤状の軌道盤を作製した。熱処理には図1に示す誘導熱処理装置を使用した。軌道盤を40枚重ねて拘束し、転走面を押圧する向きの応力を、少なくとも軌道盤の転走部分全体に対して負荷した。そして、誘導コイルに高周波電流(10kHz)を通電し、誘導加熱により軌道盤全体がAc1点以上の温度になるように加熱した。所定時間経過後、加熱を停止するとともに、水を吹き付けることで軌道盤をM点以下の温度に急冷した。この軌道盤のうち一部は拘束した状態を保持しつつ誘導加熱により220℃〜230℃で10秒間保持し、加熱を停止することにより空冷して焼戻しを行った(後述の実施例A〜D)。また、他の一部は拘束を中止し、雰囲気炉において160℃で2時間保持することにより焼戻しを行った(後述の実施例E〜H)。
一方、従来の製造方法の例として、SPC、SCM415、SCM420、SUJ2を材料として選択した(後述の比較例A〜D)。軌道盤は本実施例と同様に、プレス加工により作製した。SPC、SCM415、SCM420の軌道盤については浸炭炉において880℃で40分間保持して浸炭を行った後、820℃で10分間保持して拡散を行い、その後油冷することにより焼入れを行った。また、SUJ2の軌道盤については光輝熱処理炉において850℃で40分間保持した後、油冷することにより焼入れを行った。その後、軌道盤を160℃で2時間保持することで焼戻しを行った。さらに、200℃で1時間のプレステンパー(加熱矯正)により、反り・うねりを軽減する処理を行った。
上記熱処理が終了した軌道盤について、反り・うねり、表面硬度および内部硬度の測定を行った。反り・うねりは真円度測定器を用いて測定した。また、表面硬度および内部硬度はビッカース硬度計(荷重1kgf(9.8N))を用いて測定した。
図25は軌道盤における反り・うねりの測定部位を示す図である。また、図26は反り・うねりの測定により得られるプロファイルの一例を示す図である。
図25を参照して、測定は破線で示すように内径から1mmの位置、外径から1mmの位置、および中央部の位置について行った。図26を参照して、測定により得られた高さのプロファイルから高さの最高点と最低点との差を読み取り、反り・うねりの値とした。
表1は本実験の結果を示している。表1を参照して、本発明の製造方法に係る熱処理方法で作製された軌道盤の反り・うねりの平均値は実施例A〜Dについては従来の熱処理方法で作製された軌道盤の14〜23%、実施例E〜Hについては17〜28%であった。このことから、本発明の製造方法に係る熱処理方法で熱処理された軌道盤の反り・うねりは、従来の方法で熱処理された軌道盤と比べて非常に小さいことが分かる。一方、本発明の製造方法に係る熱処理方法で作製された軌道盤の反り・うねりの標準偏差は実施例A〜Dについては従来の熱処理方法で作製された軌道盤の17〜33%、実施例E〜Hについては24〜47%であった。したがって、本発明の製造方法に係る熱処理方法によれば、従来の方法と比べて反り・うねりの値が平均的に小さいのみならず、そのばらつきも非常に小さい軌道盤を製造可能であることが分かる。このことは、本発明の製造方法によれば品質の信頼性の非常に高い製品を製造することが可能であることを意味している。これは設計上極めて有利な特性であり、本発明の製造方法は製品に厳しい規格を要求される分野において極めて有利である。
なお、上記実験結果は内径φ25mm、外径φ40mm、厚さ1mmの円盤状の軌道盤についてのものであるが、同様の実験を内径φ60mm、外径φ85mm、厚さ1mmの円盤状の軌道盤についても行った。その結果、本発明の製造方法に係る熱処理方法で作製された軌道盤の反り・うねりの最大値は28μmであること等、上記内径φ25mm、外径φ40mm、厚さ1mmの円盤状の軌道盤の場合と同様の効果が得られることが確認された。
また、表1を参照して、本発明の製造方法に係る熱処理方法で処理した軌道盤の表面硬度は、軸受として機能するために必要な硬度である653HV以上が確保されていた。また、内部硬度も653HV以上が確保されていた。
なお、反り・うねりの簡易的な測定方法(選別方法)として、スリットゲージを用いて、所定値以上の反り・うねりを有する軌道盤を選別する方法がある。
図27〜図29は軌道盤の選別方法を示した概略斜視図である。
図27を参照して、スリットゲージ90は幅T+dのスリット91を有している。ここで、Tは軌道盤61の厚さである。また、dは反り・うねりの上限値である。
このスリット91に軌道盤61を挿入すると、軌道盤61の反り・うねりがd以下であれば通り抜けることができるが、dを超える場合、通り抜けることができない。これにより、反り・うねりがdを超える軌道盤61を選別することができる。
この方法は、多くの軌道盤から反り・うねりが所定の値を超える軌道盤を選別する場合、たとえば量産工程における選別に有効である。
なお、図27では軌道盤61がフランジ611、613を有さない場合について説明したが、図28、図29のようにフランジ611、613を有する場合についても同様に選別を行うことができる。
図28および図29を参照して、スリットゲージ90は図27の場合と基本的に同様の構成を有している。しかし、スリット91の幅がT+T+dである点で異なっている。また、選別において、測定用治具100を使用する点でも異なっている。ここで、測定用治具100は両底面が平行な平面である円筒状の形状を有し、かつフランジ611、613の高さより大きな厚さTを有している。
この測定用治具100の底面と軌道盤61の転走面61Aとが全周にわたって接触するように合わせ、スリット91に挿入する。そうすると、軌道盤61の反り・うねりがd以下であれば通り抜けることができるが、dを超える場合、通り抜けることができない。これにより、反り・うねりがdを超える軌道盤61を選別することができる。
以下、本発明の実施例2について説明する。
転がり軸受の転走面と転動体との接触部分のうち最大荷重となる部分においては、塑性変形が発生して残留する場合がある。この残留変形量については、転動体の変形量と転走面の変形量との和が転動体の直径の0.01%以下であれば、軸受のなめらかな回転や疲労寿命に対して悪影響がないことが経験的に知られている。
そこで、本発明の製造方法で作製した軌道盤を用いて作製したスラストころ軸受と、従来の一般的製造方法で作製した軌道盤を用いて作製したスラストころ軸受との許容静転動体荷重を測定し、安全率を比較する実験を行った。
以下、実験の手順を説明する。実施例1で作製した実施例A〜Hおよび比較例A〜Dの軌道盤を用いてスラストころ軸受を作製した。アムスラー試験機を用い、作製した軸受に荷重を負荷して転動体の直径の0.01%の総永久変形量が発生する荷重を測定した。この測定結果から、安全率を算出した。ここで、安全率は式1で示される。
=C/P0max ・・・(式1)
:安全率、C:基本静定格荷重、P0max:最大静転動体荷重
なお、安全率の数値は低い方が軸受の特性が優れていることを示している。
表2は本実験の結果を示している。表2を参照して、本発明の製造方法に係る実施例A〜Hは比較例A〜Cと比較して安全率の数値が小さくなっている。これは、比較例A〜Cの軌道盤は表層部のみが硬化されているのに対し、本発明の実施例A〜Hの軌道盤は内部まで一様に硬化されているため、軌道盤に塑性変形が生じにくく、許容静転動体荷重が上昇したためであると考えられる。
一方、比較例Dと実施例DおよびHとは同一の材料から作製されており、かつ両者とも軌道盤の内部まで硬化されている。しかし、実施例DおよびHは比較例Dと比較して、安全率の数値が小さくなっている。これは以下の理由によるものと考えられる。
実施例DおよびHは焼入れの際の加熱が誘導加熱により行われている。そのため、光輝熱処理が行われている比較例Dに比べて、Ac1点以上の温度に加熱される時間が非常に短い。その結果、実施例DおよびHにおいては旧オーステナイト結晶粒界の形成が比較例Dほど進行していない。そのため、実施例DおよびHの変形抵抗は比較例Dの変形抵抗よりも高くなり、許容静転動体荷重が向上して、安全率の数値が低くなったものと考えられる。
図30は本発明の実施例D(a)および比較例D(b)の旧オーステナイト結晶粒界の光学顕微鏡写真である。また、図31は実施例D(a)および比較例D(b)の旧オーステナイト結晶粒界の模式図である。旧オーステナイト結晶粒界の観察は以下の手順で行った。まず、軌道盤を転走面に垂直な面で切断した。次にその断面を鏡面研磨した後、研磨された面を室温で腐食液に30分間浸漬して腐食した。腐食液はピクリン酸飽和水溶液に界面活性剤を加えたもの(JIS G 0551 附属書1)を使用した。その後、断面の中央部を400倍の倍率で光学顕微鏡により観察した。
図30および図31を参照して、図30(b)の比較例Dでは明確な旧オーステナイト結晶粒界が観察されるのに対し、図30(a)の実施例Dでは結晶粒界が不明確である。これは図30(b)の比較例Dでは図31(b)に示すように結晶粒界の形成が十分進行していたため、結晶粒界が明確に観察されたものと考えられる。これに対し、図30(a)の実施例Dでは図31(a)に示すように結晶粒界の形成が十分進行していなかったため、結晶粒界が明確には観察されなかったものと考えられる。このことから、実施例Dでは結晶粒界の形成が比較例Dほど進行していないことが確認される。
さらに、比較例Dでは焼入工程として行われる光輝熱処理により粒界酸化層が形成されるのに対し、実施例Dでは焼入工程が短時間の誘導加熱であるため粒界酸化層はほとんど形成されない。そのため、実施例Dの軌道盤は比較例Dの軌道盤に比べて表層部の変形抵抗が高い。その結果、実施例Dの許容静転動体荷重は比較例Dの許容静転動体荷重よりも高くなり、安全率の数値が低くなったものと考えられる。
図32は本発明の実施例D(a)および比較例D(b)の軌道盤の表層付近の光学顕微鏡写真である。軌道盤の表層付近の観察は以下の手順で行った。まず、軌道盤を転走面に垂直な面で切断した。次にその断面を鏡面研磨した後、研磨された面を室温で3%ナイタルに浸漬して腐食した。浸漬時間は、たとえば2秒〜10秒程度であるが、鋼種により腐食されやすさが異なるため、腐食の進行状況を確認しながらそれぞれの軌道盤について適当な時間とした。その後、転走面直下の表層部を光学顕微鏡により観察した。
図32を参照して、図32(b)の比較例Dでは5μm程度の粒界酸化層が観察されるのに対し、図32(a)の実施例Dでは粒界酸化層は観察されないことが確認される。
以上より、同じ基本静定格荷重の軸受を製造した場合、設計上、本発明の製造方法で製造された軸受は、従来の製造方法で製造された軸受に比べて適用の許容範囲が大きいことが分かる。
以下、本発明の実施例3について説明する。
本発明の製造方法で作製した軌道盤を用いて作製したスラストころ軸受と、従来の一般的製造方法で作製した軌道盤を用いて作製したスラストころ軸受との寿命を比較する実験を行った。
以下、実験の手順を説明する。実施例1で作製した実施例A〜Hおよび比較例A〜Dの軌道盤を用いてスラストころ軸受を作製した。このスラストころ軸受に対し、スラスト荷重4kN、回転速度5000r/min.、潤滑油VG2の条件で寿命試験を行った。
表3は寿命試験の結果を示している。なお、試験結果は比較例Aの寿命を1とした寿命比で示している。
表3を参照して、実施例A〜Hの寿命はいずれも比較例A〜Dの2倍以上となった。これは以下の理由によるものであると考えられる。
前述のように、実施例A〜Hの軌道盤の反り・うねりは比較例A〜Dと比較して小さい。そのため、ころと軌道盤の片当たりが生じない。その結果、油膜切れや局所的な面圧上昇が起こらず、長寿命となったものと考えられる。
また、表1に示すように実施例A〜Hの軌道盤の反り・うねりはいずれも40μm以下であるのに対し、比較例A〜Dの軌道盤の反り・うねりはいずれも50μm以上である。すなわち、軸受の寿命は反り・うねりが40μm以下であり、また、前述のように、実施例A〜Hの許容静転動体荷重は比較例A〜Dよりも高いため、長寿命となったものと考えられる。
また、前述のように、実施例A〜Hにおいては旧オーステナイト結晶粒界の形成が比較例A〜Dほど進行していない。そのため、亀裂の発生および進展に対する抵抗が大きくなっている。その結果、ころの滑りによる表面起点の亀裂の発生および進展が抑制される。また、内部起点の亀裂についても同様に亀裂の発生および進展が抑制される。このような亀裂の発生および進展の抑制効果により、長寿命になったものと考えられる。
また、比較例A〜Dでは焼入工程として行われる浸炭処理または光輝熱処理により軌道盤の表層に粒界酸化層が形成されるのに対し、実施例A〜Hでは焼入工程が短時間の誘導加熱であるため粒界酸化層はほとんど形成されない。そのため、表面起点の亀裂の発生が抑制され、長寿命になったものと考えられる。
以上より、本発明の製造方法で作製されたスラスト軸受は従来の製造方法で作製されたスラスト軸受と比較して、長寿命であることが分かる。
以下、本発明の実施例4について説明する。
本発明の製造方法で作製した軌道盤を用いて作製したスラストころ軸受と、従来の一般的製造方法で作製した軌道盤を用いて作製したスラストころ軸受との音響特性を比較する実験を行った。
以下、実験の手順を説明する。
実施例1で作製した実施例A〜Hおよび比較例A〜Dの軌道盤を用いてスラストころ軸受を作製した。この軸受に対し、スラスト荷重100N、回転速度1800r/min.、その他の条件は日本工業規格(JIS B 1548)に従って軸受の騒音レベルを測定する試験を行った。
図33はスラストころ軸受の軌道盤の反り・うねりと音響との関係を示した図である。なお、図33の各反り・うねりの範囲における音響の値は、各10個の軸受について音響測定を行い、その平均値を示したものである。
図33を参照して、音響の値は反り・うねりの増加とともに徐々に大きくなるのではなく、40μm以下では79〜81dBA程度であるのに対し、40〜50μm付近で大きくなり、それ以上ではほぼ84dBA以上となっている。このことから、軌道盤の反り・うねりの値が40〜50μmとなる付近に臨界値が存在するものと考えられる。したがって、音響特性が重視される用途に用いられるスラストころ軸受については、反り・うねりを確実に40μm以下に抑えることが重要であることが分かる。
ここで、前述のように、本発明の製造方法によれば、熱処理終了時点で反り・うねりをこの範囲に抑えることは十分可能である。したがって、本発明の製造方法によれば、低コストで音響特性に優れたスラスト軸受を製造可能であることが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のスラスト軸受の軌道盤およびスラスト軸受の製造方法は、軌道盤を焼入硬化する焼入工程を備えたスラスト軸受の軌道盤の製造方法に特に有利に適用され得る。
実施の形態1の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 本実施の形態1の製造工程を従来の製造工程と比較して示す図である。 実施の形態2の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態3の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 本発明の製造方法により製造可能なスラスト軸受の一例を示す概略断面図である。 本発明の製造方法により製造可能なスラスト軸受の転動体周辺の構成の一例を示す概略部分断面図である。 実施の形態4の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態4の第1の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態4の第2の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態4の第3の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態5におけるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す図である。 実施の形態5の第1の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態5の第2の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態5の第3の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態5の第4の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態5の第5の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 本発明の実施の形態6の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 図17の領域XVIIIの部分を拡大して示した部分拡大図である。 実施の形態6の第1の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態6の第2の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態6の第3の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 図21の領域XXIIの部分を拡大して示した部分拡大図である。 実施の形態6の第4の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 実施の形態6の第5の変形例の製造方法に使用されるスラスト軸受の軌道盤の誘導熱処理装置を示す概略断面図である。 軌道盤における反り・うねりの測定部位を示す図である。 反り・うねりの測定により得られるプロファイルの一例を示す図である。 軌道盤の選別方法を示した概略斜視図である。 軌道盤の選別方法を示した概略斜視図である。 軌道盤の選別方法を示した概略斜視図である。 実施例D(a)および比較例D(b)の旧オーステナイト結晶粒界の光学顕微鏡写真である。 実施例D(a)および比較例D(b)の旧オーステナイト結晶粒界の模式図である。 本発明の実施例D(a)および比較例D(b)の軌道盤の表層付近の光学顕微鏡写真である。 スラストころ軸受の軌道盤の反り・うねりと音響との関係を示した図である。
符号の説明
1 誘導熱処理装置、10 誘導コイル、 10A1 第1の焼入用誘導コイル、10A2 第2の焼入用誘導コイル、10B 焼戻用誘導コイル、11 冷却水吐出口、30A 上部拘束用治具、30B 下部拘束用治具、30C 中間部拘束用治具、31 中心軸、311 中心軸膨出部、312 中心軸ねじ部、33 治具押えナット、60 スラスト軸受、61 スラスト軸受軌道盤、611 軌道盤内径フランジ、612 軌道盤内径フランジ突出部、613 軌道盤外径フランジ、614 軌道盤外径フランジ突出部、62 転動体、63 保持器、90 スリットゲージ、91 スリット、100 測定用治具。

Claims (7)

  1. 軌道盤を焼入硬化する焼入工程を備えたスラストころ軸受の軌道盤の製造方法であって、
    前記焼入工程は、
    前記軌道盤をAc1点より低い温度からAc1点以上の温度に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程によりAc1点以上の温度に加熱された前記軌道盤をM点以下の温度に冷却する冷却工程とを有し、
    前記加熱工程では前記軌道盤の転走面に前記転走面を押圧する向きの応力を、少なくとも前記軌道盤の転走部分全体に対して負荷しながらAc1点より低い温度からAc1点以上の温度まで加熱し、
    前記冷却工程では前記応力を少なくとも前記転走部分全体に対して負荷しながらAc1点以上の温度からM点以下の温度に冷却し、
    前記冷却工程によりM 点以下の温度に冷却された前記軌道盤をA c1 点以下の温度に加熱した後冷却する焼戻工程をさらに備え、
    前記焼戻工程において前記応力を少なくとも前記転走部分全体に対して負荷する、スラストころ軸受の軌道盤の製造方法。
  2. 前記焼入工程は2枚以上の前記軌道盤に対して同時に実施される、請求項1に記載のスラストころ軸受の軌道盤の製造方法。
  3. 記焼戻工程において前記応力を、2枚以上の前記軌道盤の少なくとも前記転走部分全体に対して負荷する、請求項1または2に記載のスラストころ軸受の軌道盤の製造方法。
  4. 前記焼戻工程における加熱は誘導加熱により行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスラストころ軸受の軌道盤の製造方法。
  5. 前記加熱工程における加熱は誘導加熱により行われる、請求項1〜のいずれかに記載のスラストころ軸受の軌道盤の製造方法。
  6. 前記焼入工程に先立って、鋼材を加工して前記軌道盤を形成する加工工程を備え、
    前記加工工程においては鋼板をプレス加工することにより前記軌道盤を形成する、請求項1〜のいずれかに記載のスラストころ軸受の軌道盤の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により軌道盤を製造する、スラストころ軸受の製造方法。
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