JP2003301221A - 環状部材の熱処理方法及び熱処理装置 - Google Patents
環状部材の熱処理方法及び熱処理装置Info
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Abstract
なく低コストで焼入れを施すことができる方法を提供す
る。 【解決手段】 鋼製の環状部材1の中心穴に保持治具1
0の円柱状の凸部11bを挿通して、環状部材1の内周
面と凸部11bの外周面21との間の第一隙間C1の大
きさを、環状部材1の内径Dの0%超過且つ0.11%
以下とした。また、保持治具10が備える2つの保持面
22,23で上下から環状部材1を挟み、環状部材1と
保持面23との間の第二隙間C2の大きさを、環状部材
1の幅hの6%以下とした。そして、環状部材1を保持
治具10に装着した状態で焼入れを施した。
Description
方法及び熱処理装置に係り、特に、転がり軸受の軌道輪
等に使用される鋼製の環状部材に、変形を抑制しながら
焼入れ又は焼戻しを施す方法及び装置に関する。
気炉内で800〜850℃のオーステナイト化温度に保
持した後に、油等に浸漬して急冷することによって行わ
れていた。ところが、環状部材は剛性が不十分であるこ
とから、焼入れ時に歪が生じて真円度や平面度が低下し
やすい。
いて、オーステナイト化温度に加熱した環状部材を金型
に装着し、環状部材の内周面又は外周面を前記金型で保
持した状態で冷却することによって、焼入れ時の変形を
抑制していた。これは、焼入れの冷却時の収縮現象及び
マルテンサイト変態による膨張現象を利用したものであ
る。
は、下記のような構成のワーク支持具を用いることによ
り、ワークの歪を抑えつつ高周波焼入する方法が開示さ
れている。すなわち、このワーク支持具は、ベース部材
上に放射状に配置された径方向に移動可能な複数の可動
ヘッドと、ベース部材の中心部に設けられ可動ヘッドを
径方向外方に付勢するスプリングと、スプリングの付勢
力を可動ヘッドに伝達するスライドリング及びリンク
と、で構成されている。そして、可動ヘッドでワークの
内面を周方向複数箇所で外方へ押圧しながら高周波焼入
することにより、ワークの歪みが抑制されるようになっ
ている。
ような従来の金型を用いる方法は、比較的小さな環状部
材については適用可能であるが、例えば外径が400m
mを超えるような大型の環状部材の場合には、適用する
ことが難しかった。つまり、上記のような従来の方法に
おいては、加熱した環状部材を金型に装着する装置や、
加熱した環状部材を加熱炉から前記装置へ搬送する設備
等も巨大なものが必要となるので、その設備に莫大な費
用がかかってしまうという問題があった。
的肉厚な環状部材については適用可能であるが、例えば
肉厚比((外径−内径)/外径×100)が10%を下
回るような薄肉の環状部材の場合には、適用することが
難しかった。つまり、環状部材が薄肉で熱容量が少ない
と、加熱された環状部材を金型に搬送する間に環状部材
の温度が低下してしまい、焼入れにより十分な硬さが得
られないという問題点があった。
材については、熱処理による変形度合いの低減及び熱容
量の確保のために、研削取代を多く取り、通常の焼入れ
(前記金型を用いない焼入れ)を施した後、旋削及び研
削により成形していた。つまり、最終的な製品よりも大
きな寸法の環状部材に焼入れを施して、旋削及び研削に
より最終的な製品の寸法に加工していた。したがって、
加工コストが高いという問題点があった。
記載の方法は、軸受の軌道輪の焼入れに適用した場合に
は、該方法が真円度を良好なものとすることのみに着目
しており、反りや倒れなどの抑制に対する考慮がなされ
ていないため、結果的に真円度を良好なものとすること
は困難である。また、軌道輪と可動ヘッドとの接触部分
は、温度が十分に上昇せず硬さが不十分となってしまう
おそれがある。よって、転がり寿命に悪影響を及ぼすお
それがあるため、軸受の軌道輪のように硬さを重視する
部品に対しては、該方法は好適ではなかった。
行き渡らず、他の部分よりも冷却が遅れるおそれがあ
り、そうすると変形が大きくなってしまう。これは、軸
受鋼に特有の問題であって、すなわち、該方法は軸受の
軌道輪に対しては好適ではなかった。さらにまた、高周
波焼入れによって軸受の軌道輪に部分的に焼入れを施す
ことはあったが、ずぶ焼入れを施すことは、その困難性
から従来行われたことはなかった。
有する問題点を解決し、大径で薄肉の環状部材であって
も、十分な硬さが確保され変形が少なく低コストで焼入
れ又は焼戻しを施すことができる熱処理方法及び熱処理
装置を提供することを課題とする。
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明に係る請求項1の環状部材の熱処理方法は、鋼製の環
状部材に変形を抑制しながら焼入れ又は焼戻しを施す熱
処理方法であって、前記環状部材の中心穴に円柱状の第
一保持治具を挿通して、前記環状部材の内周面と前記第
一保持治具の外周面との間の第一隙間の大きさを、熱処
理前においては、0より大きい値で且つ前記環状部材が
収縮した際の前記第一隙間の最小部分がマイナスの値と
なるような大きさとするとともに、放射状に配置した複
数のピンの外端部で前記環状部材の内周面を押圧しなが
ら、前記環状部材の加熱及び冷却を行うことを特徴とす
る。
熱処理方法は、請求項1に記載の熱処理方法において、
熱処理前の前記第一隙間を前記環状部材の内径の0%超
過且つ0.11%以下とすることを特徴とする。さら
に、本発明に係る請求項3の環状部材の熱処理方法は、
請求項1又は請求項2に記載の熱処理方法において、前
記環状部材が転がり軸受の外輪であり、該外輪の軌道溝
を前記ピンの外端部で押圧することを特徴とする。
の熱処理方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の熱処
理方法において、相互に対向する2つの保持面を備える
第二保持治具で、径方向に垂直な方向の両側から前記環
状部材を前記両保持面の間に挟み、前記環状部材と前記
保持面との間の第二隙間の大きさを、熱処理前において
は前記環状部材の径方向に垂直な方向の幅の6%以下と
して、前記環状部材の加熱及び冷却を行うことを特徴と
する。
状部材であっても、十分な硬さが確保され変形を抑制し
ながら低コストで焼入れ又は焼戻しを施すことができ
る。前記第一隙間の大きさは、熱処理前においては前記
環状部材の内径の0%超過且つ0.11%以下とし、前
記第二隙間の大きさは、熱処理前においては前記環状部
材の径方向に垂直な方向の幅の6%以下とすることが好
ましい。前記第一隙間の大きさ及び前記第二隙間の大き
さの少なくとも一方が前記各範囲を外れると、焼入れ又
は焼戻しの際の前記環状部材の変形を十分に抑制するこ
とが困難となる場合がある。
熱処理装置は、鋼製の環状部材に変形を抑制しながら焼
入れ又は焼戻しを施す熱処理装置であって、前記環状部
材の中心穴に挿通される円柱状の第一保持治具と、放射
状に配置され、前記環状部材の内周面をその外端部で押
圧する複数のピンと、を備えるとともに、前記環状部材
の内周面と前記第一保持治具の外周面との間の第一隙間
の大きさは、熱処理前においては、0より大きい値で且
つ前記環状部材の収縮時の前記第一隙間の最小部分がマ
イナスの値となるような大きさであることを特徴とす
る。
の熱処理装置は、請求項5に記載の熱処理装置におい
て、前記環状部材が転がり軸受の外輪であり、該外輪の
軌道溝を前記ピンの外端部で押圧することを特徴とす
る。本発明の環状部材の熱処理方法及び熱処理装置にお
いては、真円度を良好なものとするため、環状部材の膨
張・収縮に適正に追従する機構を設けてある。また、環
状部材が転がり軸受の外輪である場合には、反りを抑制
するため、外輪の軌道溝に接触するピンの外端の形状を
適正化してある。さらに、真円度を良好なものとし、且
つ倒れを抑制するため、環状部材の内周面と第一保持治
具の外周面との間の第一隙間の大きさが適正となるよう
な寸法の第一保持治具を使用している。
冷却は水系の冷却剤を使用して行い、加熱時と同じ状態
(環状部材を保持治具に装着した状態)でそのまま冷却
を行うようにすれば、熱処理装置を小型化することがで
きる。さらに、本発明の環状部材の熱処理装置は、熱処
理前に環状部材が装着されるので、加熱した環状部材を
金型に装着する装置や加熱した環状部材を加熱炉から前
記装着装置へ搬送する設備等が不要である。よって、熱
処理装置は全体的に簡易で小型である。また、加熱後直
ちに焼入れを行うため、搬送中の温度低下もなく、よっ
て、十分な硬さが確保され変形を抑制することができ
る。したがって、熱処理後の取代も少なくすることがで
きるので、研削コストを抑えることができる。
法及び熱処理装置の実施の形態を、図面を参照しながら
詳細に説明する。図1は、環状部材1を保持治具10に
装着して焼入れを施す方法を説明する断面図である。な
お、以下の説明における「上」,「下」等の方向を示す
用語は、特に断りがない限り、説明の便宜上、図1にお
けるそれぞれの方向を意味するものである。
て説明する。この環状部材1はSUJ2製であり、転が
り軸受の軌道輪(外輪)として使用されるものである。
よって、その円周方向に対して垂直な断面は略矩形をな
しており、また、その内周面には軌道溝が全周にわたっ
て連続して設けられている。そして、環状部材1の外径
は940mm、内径は920mm、幅(径方向に対して
垂直な方向の幅)は26mmである。なお、以下に環状
部材1が外輪である場合を例に焼入れ方法を説明する
が、環状部材1が内輪である場合であっても、ほぼ同様
に焼入れを行うことができる。
装着した状態で施される。この保持治具10は、略円柱
状の円柱状部材11と円板状部材12とで構成されてお
り、円柱状部材11は、大径な円柱状の基台部11a
と、該基台部11aの一端に設けられた小径な円柱状の
凸部11bと、を備えている。また、凸部11bの上下
方向ほぼ中間位置には複数の穴が環状部材1の軌道溝に
対向するように放射状に設けられていて、該穴には奥側
から順にスプリング31とピン32とが内設されてい
る。なお、径方向外方を向いたピン32の端部(以降は
外端と記す)は、環状部材1の軌道溝と接触することと
なるので、前記軌道溝を構成する曲面よりも小径の球面
とされている。ただし、環状部材1が内輪の場合は、内
輪の内周面には軌道溝はないので、前記球面の大きさは
特に限定されない。
要件たる第一保持治具と第二保持治具とに相当する。本
実施形態においては、保持治具10が第一保持治具と第
二保持治具との両方の機能を備えている(すなわち、第
一保持治具と第二保持治具とが一体とされた保持治具で
ある)が、それぞれの機能を備える2つの保持治具を用
いてもよい。また、保持治具10の材質は非磁性材料が
望ましいが、軟鋼等でも差し支えない。
状部材1の中心穴に挿通した上、円板状部材12を凸部
11bの上端に取り付ける。そうすると、環状部材1
は、凸部11bの外周面21によって径方向の動きが規
制される。また、基台部11aと凸部11bとの境界部
分に形成された端面22と、円板状部材12の下面23
と、によって環状部材1が上下から挟まれるため、上下
方向の動きが規制される。さらに、ピン32の外端の球
面が軌道面に嵌め合わされる。なお、基台部11aと凸
部11bとの境界部分に形成された端面22と円板状部
材12の下面23とが、本発明の構成要件たる保持面に
相当するので、以降は前記各面22,23を保持面と記
す。
部分は除く)と凸部11bの外周面21(円柱面)との
間の径方向隙間(第一隙間C1)は、環状部材1の内径
Dの0%超過且つ0.11%以下とされている。また、
環状部材1の上下の両平面と2つの保持面22,23と
の間の上下方向の隙間(第二隙間C2)は、環状部材1
の前記幅hの6%以下とされている。ただし、本実施形
態においては、環状部材1の上側の平面と保持面23と
の間に、第二隙間C2が形成されている。
部材1の径方向外方には、円周状に高周波インダクショ
ンヒータ(6kHz×300kW)のコイル33が配置
されていて、放射温度計により環状部材1の温度を監視
しながら、このヒータにより加熱が行われる。保持治具
10は図示しない回転テーブルに固定されていて、環状
部材1を回転させながら加熱することができる。静止し
た状態で加熱した場合は、環状部材1とコイル33との
軸心が一致していないと加熱ムラが生じて、硬さムラや
変形が生じやすくなるが、環状部材1を回転させながら
加熱するので、環状部材1とコイル33との軸心が多少
一致していなかったとしても、環状部材1を均一に加熱
することができる。
軸線と同心状となるようにセットされている。ピン32
はスプリング31により径方向外方に凸部11bの軸線
と同心状に押圧されているので、環状部材1を凸部11
bに嵌合し端面22に当接する脱着が容易であると同時
に、環状部材1の加熱による膨張及び冷却による収縮等
の際に、環状部材1とコイル33との偏心が防止され
る。
距離は、環状部材1とコイル33との間の距離よりも大
きくなるようにすることが好ましい。これは、保持治具
10とコイル33との間の距離が近すぎると、保持治具
10が加熱されて環状部材1の加熱効率が低下するから
である。次に、環状部材1に焼入れを施す手順を、図1
及び図2(焼入れの温度条件)を参照しながら説明す
る。
イト温度(900〜1100℃)に加熱する。その際に
は、設定温度に到達した時点でヒータの電源を切り、そ
の後は熱拡散によって均熱する。環状部材1の全体が均
一に加熱されたところで、環状部材1の径方向外方に水
冷ジャケット34が位置するまで、保持治具10を下方
に移動させる。そして、水冷ジャケット34から冷却水
を噴射(50〜100L/min)して環状部材1を冷
却し、焼入れを施した。
した。まず、保持治具10を上方に移動させ、再び環状
部材1の径方向外方にヒータが位置するようにした。そ
して、ヒータに通電して250〜300℃に加熱した。
その際には、設定温度に到達した時点でヒータの電源を
切り、その後は熱拡散によって均熱し徐冷(空冷)し
た。なお、焼戻しは大気炉内で行っても差し支えない。
また、その際に反りや真円度の矯正を行うことも有効で
ある。
について説明する。環状部材1は加熱によって膨張する
ので、第一隙間C1は拡大する。そして、加熱が終了し
たときには、鋼の組織はオーステナイト変態している。
冷却すると環状部材1は収縮を始めるが、Ms点以下の
温度ではマルテンサイト変態によって加熱前の寸法より
も小さくなって、環状部材1の内周面のほぼ全面におい
て保持治具10(凸部11bの外周面21)に接触し、
これとほぼ同時にマルテンサイト変態が進行し始める。
このマルテンサイト変態の進行と、環状部材1及び保持
治具10の嵌め合いとによって、環状部材1は保持治具
10の形状に沿って真円度が矯正される。
と、第二隙間C2は小さくなり円板状部材12の下面2
3に接触する。そして、環状部材1が両保持面22,2
3間に挟まれると、両保持面22,23との摩擦力によ
って環状部材1の径方向への膨張が阻害されてしまう。
膨張が阻害されないようにするためには、環状部材1が
膨張しても十分な隙間が確保されるようにする必要があ
るので、円板状部材12の下面23をテーパ面として、
第二隙間C2が径方向外方に向かって大きくなるように
する必要がある。このテーパの角度は、理論上はtan
-1(環状部材1の幅h/(環状部材1の外径/2))以
上とする必要がある。本実施形態においては、8°とし
た。
十分な大きさの第二隙間C2が確保されるので、環状部
材1の径方向への膨張が阻害されることがない。また、
冷却により収縮する場合も、同様の理由により、環状部
材1の径方向への収縮が阻害されることがない。ただ
し、凸部11bに接触する程度まで収縮する場合には
(矯正時)、第二隙間C2は極めて小さくなっているの
で、反りは小さく抑えられ、環状部材1の幅方向の矯正
が行われる。
0に装着して焼入れを施すので、従来のように、加熱し
た環状部材を金型に装着する装置や、加熱した環状部材
を加熱炉から前記装置へ搬送する設備は不要である。し
たがって、焼入れを行う設備がそれほど巨大なものとは
ならず、簡易なものとすることができる。さらに、加熱
後は搬送することなく直ちに焼入れを行うことができる
ので、搬送による温度低下もなく焼入れにより十分な硬
さが確保され、変形を少なく抑制することができる。よ
って、焼入れ後の研削取代を少なくすることができるの
で、加工コストを低く抑えることができ、環状部材を低
コストで製造することができる。
上記のように焼入れを施して、第一隙間C1の大きさと
環状部材1の変形の抑制効果との関係を評価した。図3
のグラフは、環状部材1の内径Dに対する第一隙間C1
の大きさの比率と、焼入れ後の環状部材1の真円度と、
の相関を示すものである。このグラフの横軸は、環状部
材1の内径Dに対する第一隙間C1の大きさの比率を示
しており、常温における環状部材1の内径をD、常温に
おける保持治具10の凸部11bの外径をdとしたとき
に、(D−d)/D×100(%)で算出される値であ
る。なお、第二隙間C2の大きさは、環状部材1の幅h
の1%に統一した。
が環状部材1の内径Dの0%超過且つ0.11%以下で
あると、焼入れ後の環状部材1の真円度が優れていて、
変形の抑制効果が高いことが分かる。そして、0.07
%以下であると変形の抑制効果がより高く、0.03%
以下であると変形の抑制効果が極めて高いことが分か
る。なお、第一隙間C1を0%超過とする理由は、0%
以下であると加熱前に環状部材1に凸部11bを挿通す
ることが困難となるためである。
記のように焼入れを施して、第二隙間C2の大きさと環
状部材1の変形の抑制効果との関係を評価した。図4の
グラフは、環状部材1の幅hに対する第二隙間C2の大
きさの比率と、焼入れ後の環状部材1の反りの大きさ
と、の相関、及び環状部材1の幅hに対する第二隙間C
2の大きさの比率と平面研磨加工時間との相関を示すも
のである。図4における●印が反りの大きさのデータを
示しており、■印が平面研磨加工時間のデータを示して
いる。
幅hに対する第二隙間C2の大きさの比率を示してお
り、常温における環状部材1の幅をh、常温における保
持治具10の両保持面22,23間の距離をtとしたと
きに、(t−h)/h×100(%)で算出される値で
ある。なお、第一隙間C1の大きさは、環状部材1の内
径Dの0.1%に統一した。
の環状部材1の反りの大きさ、右側の縦軸は環状部材1
の平面研磨加工時間を示している。図4のグラフから、
第二隙間C2の大きさが環状部材1の幅hの1.2%以
下であると、焼入れ後の環状部材1の反りが小さく(す
なわち、平面度が優れている)、変形の抑制効果が高い
ことが分かる。1.2%を超えると前述の環状部材1の
幅方向の拘束力が小さくなるため、変形の抑制効果が小
さくなる。
度を高めることができるが、研磨に時間を要するので環
状部材1の生産性が低下する。そこで、図4のグラフの
平面研磨加工時間のデータ(各プロットは、反りの大き
さが0.5mmの環状部材1の平面研磨加工時間を1と
した場合の相対値で示している)を見ると、環状部材1
の幅hに対する第二隙間C2の大きさの比率が大きくな
るほど反りが大きくなるため、平面度を高めるための平
面研磨加工時間を多く要することが分かる。そして、反
りの大きさが1.5mm以下であれば、平面研磨加工時
間が環状部材1の生産性を大きく低下させない範囲とな
る。
は、環状部材1の幅hに対する第二隙間C2の大きさの
比率は6%以下であることが好ましく、1.2%以下で
あることがさらに好ましい。しかし、第二隙間C2の大
きさが小さすぎると、環状部材1が保持治具10に接触
した際に保持治具10に作用する応力が大きくなって、
保持治具10の耐久性が低下するので、0.2%以上が
好ましい。
ものであって、本発明は本実施形態に限定されるもので
はない。例えば、本実施形態においては環状部材1はS
UJ2で構成されていたが、焼入れにより硬化するもの
であるならば、他の材料で構成されていても差し支えな
い。また、本実施形態においては、転がり軸受の軌道輪
として使用される環状部材を例示して焼入れ方法を説明
したが、本発明の熱処理方法はこれに限らず種々の環状
部材に適用可能であることはもちろんである。
理方法及び熱処理装置によって熱処理を行えば、大径で
薄肉の環状部材であっても焼入れ時の変形が少なく、ま
た低コストである。
態を説明する断面図である。
率と環状部材の真円度との相関を示すグラフである。
と、環状部材の反りの大きさ及び平面研磨加工時間と、
の相関を示すグラフである。
Claims (6)
- 【請求項1】 鋼製の環状部材に変形を抑制しながら焼
入れ又は焼戻しを施す熱処理方法であって、 前記環状部材の中心穴に円柱状の第一保持治具を挿通し
て、前記環状部材の内周面と前記第一保持治具の外周面
との間の第一隙間の大きさを、熱処理前においては、0
より大きい値で且つ前記環状部材が収縮した際の前記第
一隙間の最小部分がマイナスの値となるような大きさと
するとともに、 放射状に配置した複数のピンの外端部で前記環状部材の
内周面を押圧しながら、前記環状部材の加熱及び冷却を
行うことを特徴とする環状部材の熱処理方法。 - 【請求項2】 熱処理前の前記第一隙間を前記環状部材
の内径の0%超過且つ0.11%以下とすることを特徴
とする請求項1に記載の環状部材の熱処理方法。 - 【請求項3】 前記環状部材が転がり軸受の外輪であ
り、該外輪の軌道溝を前記ピンの外端部で押圧すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の環状部材の
熱処理方法。 - 【請求項4】 相互に対向する2つの保持面を備える第
二保持治具で、径方向に垂直な方向の両側から前記環状
部材を前記両保持面の間に挟み、前記環状部材と前記保
持面との間の第二隙間の大きさを、熱処理前においては
前記環状部材の径方向に垂直な方向の幅の6%以下とし
て、前記環状部材の加熱及び冷却を行うことを特徴とす
る請求項1〜3のいずれかに記載の環状部材の熱処理方
法。 - 【請求項5】 鋼製の環状部材に変形を抑制しながら焼
入れ又は焼戻しを施す熱処理装置であって、 前記環状部材の中心穴に挿通される円柱状の第一保持治
具と、放射状に配置され、前記環状部材の内周面をその
外端部で押圧する複数のピンと、を備えるとともに、 前記環状部材の内周面と前記第一保持治具の外周面との
間の第一隙間の大きさは、熱処理前においては、0より
大きい値で且つ前記環状部材の収縮時の前記第一隙間の
最小部分がマイナスの値となるような大きさであること
を特徴とする環状部材の熱処理装置。 - 【請求項6】 前記環状部材が転がり軸受の外輪であ
り、該外輪の軌道溝を前記ピンの外端部で押圧すること
を特徴とする請求項5に記載の環状部材の熱処理装置。
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