JP4850070B2 - ペルチェ素子又はゼーベック素子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、各種の電気機器、燃焼装置やその関連機器類、太陽光や地熱等に由来する外部からの熱が影響する建物や物体等の全ての温度の高くなる部分や空間や領域にある熱エネルギーを直接電気エネルギーに変換する熱電変換システムないし熱電変換装置に利用されるペルチェ素子又はゼーベック素子を高機能化した素子の構造とその製造方法に関する。
自然界に存在するエネルギーの利用形態は非可逆的に進行し、最終的には熱エネルギーとなって自然界に放出される。通常は、この自然界に放出された熱エネルギーは、人類のために利用されることがなく、逆に、自然界に対して悪い影響を及ぼすことがしばしば起こりうる。このため、この熱エネルギーの排出や除去をするために、更に新たな熱機関によるエネルギーや電気エネルギーを使った強制空冷や強制冷却が行われている。
例えば、太陽光の照射や地熱等の影響する建物や物体、あるいはその周りの領域が高温になる場合、この高温部の熱エネルギーの排出や除去をするために、更に新たな熱機関によるエネルギーや電気エネルギーを使った強制空冷や強制水冷が行われており、これらの熱エネルギーの放出や除去に使われるエネルギーの増加とともに、熱エネルギーの利用効率の低下が問題になっている。
現在、これらの熱エネルギーを積極的に再利用して省エネルギー化を図るとともに、環境への負荷を低減させるための研究が開始され、その実用化に向けた開発努力が各方面で行われつつある。しかし、現実は、新たなエネルギーの投入無しで、エネルギーの最終形態であって自然界に無尽蔵に存在する熱エネルギーを積極的に再利用し、環境への悪影響を低減するには至っていない。
一方、熱エネルギーを電気エネルギーのような直接利用可能な形態に変換することは、ペルチェ効果あるいはゼーベック効果として古くから知られている物理学上の現象を使って可能である。すなわち、2種類の導体をつなげて全体を一様な温度に保ちながら電流を流すと、ジュール熱以外の放射あるいは吸収する熱が発生する。この現象は、J.C.A.Peltierが1834年に発見した現象であり、ペルチェ効果と言われる。また、2種類の導線をつなぎ、2つの接点を異なる温度T1,T2に保って、一方の導線を切断すると、その切断した端子間に起電力が発生する。この現象は1821年にJ.J.Seebeckにより発見された。この2端子間に発生する起電力を熱起電力といい、この現象は、発見者の名に因んでゼーベック効果と言われている。
このゼーベック効果を利用した熱電変換素子(ゼーベック素子)の開発は、化石燃料や原子力の代替エネルギーとして注目を集めている。ゼーベック素子による熱起電力は、2つの接点温度のほかに、2つの導線の材質にも依存しており、この熱起電力を温度変化で割った微分値をゼーベック係数と呼んでいる。熱電変換素子は、それぞれゼーベック係数が異なる2種類の導体(又は半導体)を接触させることにより構成される。そして、2種類の導体の自由電子数の差により、両導体間で電子の移動が生じるため結果的に両導体間に電位差が生じる。そこで、一方の接点に熱エネルギーを与えると、一方の接点側で自由電子の動きが活発となるが、他方の接点は熱エネルギーが与えられないため、自由電子の動きは活発にならない。この両接点間の温度の差、すなわち自由電子の活動の差が熱エネルギーから電気エネルギーへ変換となるのである。この効果を、一般的には熱電効果という。
一般的に、上述したゼーベック素子は、加熱部(高温側)と冷却部(低温側)とが一体素子となっており、また、ペルチェ効果を利用した熱電効果素子(以下、ペルチェ素子と称する)においても、その吸熱部と発熱部は一体素子となっている。すなわち、ゼーベック素子では加熱部と冷却部とが熱的に相互干渉し、ペルチェ素子では吸熱部と発熱部とが熱的に相互干渉するため、それらゼーベック効果、ペルチェ効果は時間経過と共に減衰してしまう。これを防ぐために、高温部の熱エネルギーの排出や除去のために新たな熱機関によるエネルギーや電気エネルギーを使った強制空冷や強制水冷による放熱が行われているのが現状である。
したがって、前記のようなペルチェ素子とゼーベック素子を用いて大規模なエネルギー変換設備を構築しようとした場合、その設備等の設置場所において新たな熱機関を設置するなどの物理的な制限が加わるため非現実的なものとなっていた。
本発明者(出願人)は、上述したような新たな熱機関や電気エネルギーによる強制空冷や強制水冷を必要としない熱電変換装置及びそれを利用したエネルギー変換システムを発明し、既に提案した(特許文献1を参照)。また、このような熱電変換装置に利用されるペルチェ素子又はゼーベック素子を集積回路基板上に複数個設けたペルチェ・ゼーベック素子チップとその製造方法については、特願2004−194596号(先願)として提案している。
特開2003−92433号公報 特願2004−194596号
しかし、特許文献1に記載のペルチェ・ゼーベック素子も、特許文献2で提案した集積ペルチェ・ゼーベック素子チップにおいても、これらを回路系に組み込む場合は、図44に示すような従来の形状のゼーベック素子或いはペルチェ素子を利用しなければならない。すなわち、図44に示すように、異なるゼーベック係数を有する第1の導電部材(例えば、n型半導体等)101の一端(T1:高温側)と第2の導電部材(例えば、p型半導体等)102の一端(T1:高温側)を銅等の金属からなる接合部材103でオーミックコンタクトにより接合し、第1の導電部材101の他端(T2:低温側)と第2の導電部材102の他端(T2:低温側)は、同じく銅等の金属からなる接合部材104又は105を介して不図示の他のゼーベック素子の第2又は第1の導電部材の他端(T2:低温側)に接合されている。
図44に示すような従来型のパイ型素子では、第1及び第2の導電部材101,102を構成する半導体の熱伝導率が、銅の約200分の1と比較的に大きいために、第1及び第2の導電部材の高温側の温度(T1)と低温側の温度(T2)の温度差△Tを大きくした状態で、長時間維持することは困難であった。
したがって、図44に示すような、従来のパイ型ゼーベック素子或いはペルチェ素子を組み込んだ場合の問題は、熱伝導による各素子の高温部側から低温部側への熱エネルギーの流れが無視できないということであった。このため、従来のパイ型ペルチェ効果で熱転送を行う場合は、せっかくペルチェ効果による発熱と吸熱作用で高温部側と低温部側の温度差を付けて、低温側の温度を、周りの温度より下げても、高温部側から低温部側への熱伝導の為に低温部側の温度が引き上げられて熱を取り込む周りの温度よりも高くなってしまい、周りから熱を取り込めなくなり、熱転送が行えなくなるという問題があった。そしてこれを防ぐために、通常は、高温部側に大きい熱容量の金属熱吸収体を取り付けるとともに、新たな電気エネルギーを使って小型電気ファンなどを設置して高温側から熱エネルギーを外部へ強制排出しなければならないという問題があった。
また、温度差を利用してゼーベック効果で熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換素子の場合は、同様にゼーベック素子の高温部側から低温部側への熱伝導によって、低温側の温度が上がってしまい、ゼーベック起電圧が下がり、熱エネルギーの電気エネルギーへの変換効率が下がるという問題があった。これを防ぐために、低温側に新たな熱機関によるエネルギーや電気エネルギーを使った強制空冷装置や強制水冷装置を取り付けて放熱しなければならないという不都合があった。
このように、従来形状のゼーベック素子あるいはペルチェ素子を組み込んだ熱電変換素子あるいは熱転送素子の場合には、熱伝導による各素子の高温部側から低温部側への熱エネルギーの流れにより、装置全体の熱エネルギーから電気エネルギーへの変換効率、すなわち、熱エネルギーの利用効率が低く抑えられ、この熱エネルギー利用効率の改善が大きな技術的課題となっていた。
発明の概要
本発明の目的は、上記課題を解決するための、新たな構造のペルチェ素子又はゼーベック素子製造方法を提供するものである。具体的には、使用する素子の第1導電部材と第2導電部材の形状そのもの(または材質)を変えて、高温側から低温側への熱エネルギーの熱伝導による移動を少なくして熱エネルギーの利用効率を上げ、かつ、素子の製造コストを下げるようにしている。
より具体的には、ペルチェ素子又はゼーベック素子の構造に関するものであり、ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する異なるゼーベック係数を有する第1導電部材と第2導電部材について、夫々の長さ方向の中間部分の熱伝導度を両端部分の熱伝導度より小さく設定したことを特徴とするものである。
また、別の観点によれば、第1導電部材と第2導電部材の長さ方向の両端部分以外の部分、すなわち第1及び第2の導電部材の中間部分の断面面積を両端部分に比べて小さくすることを特徴としている。
さらに、別の観点によれば、第1導電部材と第2導電部材の長さ方向の両端部分以外の部分、つまり第1及び第2導電部材の中間部分の材質をその両端部分の材質より熱伝導度の小さい材質とすることを特徴とするものである。
さらにまた、別の観点によれば、ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する第1導電部材と第2導電部材の長さ方向の両端部分以外の部分、つまり第1及び第2導電部材の中間部分を複数に分割して断面の形状にさらに括れを設けたことを特徴としている。
加えて、別の観点によれば、ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する異なるゼーベック係数を有する第1導電部材と第2導電部材について、夫々の長さ方向の中間部分の熱伝導度を両端部分の熱伝導度より小さく形成するペルチェ素子又はゼーベック素子の製造方法に関する発明であり、以下のステップを有することを特徴としている。すなわち、(1)前記ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記両端部分の一方の領域である第1領域を形成するための鋳型作成やフォトマスク技法を使った前処理パターン作成による第1領域パターンを形成するステップと、(2)前記ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記中間部分の領域である第2領域を形成するための鋳型作成やフォトマスク技法を使った前処理パターン作成による第2領域パターンを形成するステップと、(3)前記ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記両端部分の他方の領域である第3領域を形成するための鋳型作成やフォトマスク技法を使った前処理パターン作成による第3領域パターンを形成するステップと、(4)前記第1領域パターンと前記第2領域パターンと前記第3領域パターンとを位置合わせをするステップと、(5)前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記第1領域を形成するために、前記第1導電部材及び前記第2導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を前記第1領域パターンに詰め込むステップと、(6)前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記第2領域を形成するために前記第1導電部材及び前記第2導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を前記第2領域パターンに詰め込むステップと、(7)前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記第3領域を形成するために前記第1導電部材及び前記第2導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を前記第3領域パターンに詰め込むステップと、
(8)前記第1領域パターンと前記第2領域パターンと前記第3領域パターンに詰め込まれた前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を加熱して接合し、前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材それぞれの前記両端部分と前記中間部分を一体に形成するステップと、(9)前記第1領域パターンに埋め込まれた前記第1導電部材の一方の端部と、前記第1領域パターンに埋め込まれた前記第2導電部材の一方の端部とを導電性接合部材を介してオーミックコンタクトによって接合するステップを含むことを特徴としている。
また、別の観点によれば、ペルチェ素子又はゼーベック素子を複数個同時に製造する製造方法であって、請求項1に記載されたペルチェ素子又はゼーベック素子の製造方法において、さらに次のステップを含むことを特徴としている。すなわち、(9)前記第1領域パターンを複数個用いて、前記第1の導電部材の前記両端部分の一方の領域を複数個同時に形成するステップと、(10)前記第1領域パターンを複数個用いて、前記第2の導電部材の前記両端部分の一方の領域を複数個同時に形成するステップと、(11)前記第2領域パターンを複数個用いて、前記第1の導電部材の前記中間部分の領域を複数個同時に形成するステップと、(12)前記第2領域パターンを複数個用いて、前記第2の導電部材の前記中間部分の領域を複数個同時に形成するステップと、(13)前記第3領域パターンを複数個用いて、前記第1の導電部材の前記両端部分の他方の領域を複数個同時に形成するステップと、(14)前記第3領域パターンを複数個用いて、前記第2の導電部材の前記両端部分の他方の領域を複数個同時に形成するステップと、(15)前記第1領域パターンで形成された領域と前記第2領域パターンで構成された領域の第1導電部材及び第2導電部材同士をオーミックコンタクトによって接合するステップと、(16)前記第2領域パターンで形成された領域と前記第3領域パターンで構成された領域の第1導電部材及び第2導電部材同士をオーミックコンタクトによって接合するステップと、を含むペルチェ素子又はゼーベック素子を複数個同時に作成することを特徴とするものである。
本発明のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子の第1の実施の形態を示す模式図である。 本発明のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子の第2の実施の形態を示す模式図である。 本発明のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子の第3の実施の形態を示す模式図である。 本発明のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子に用いられる第1または第2導電部材の中間部分を構成する化合物半導体の電気抵抗率特性を示す図である。 本発明のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子に用いられる第1または第2導電部材の中間部分を構成する化合物半導体のゼーベック係数特性を示す図である。 本発明のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子に用いられる第1または第2導電部材の中間部分を構成する化合物半導体の熱伝導率特性を示す図である。 従来型と本発明実施の形態である高機能型ペルチェ効果及びゼーベック効果を実験によって確認するための実験概念図である。 図7の実験によって確認されたペルチェ効果の実験結果を示す図である。 図7の実験によって確認されたゼーベック効果の実験結果を示す図である。 従来型(くびれなし)のシミュレーションを行うための模式図である。 シミュレーションで用いた銅板の模式図である。 シミュレーションで用いた半導体の模式図である。 本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーションを行うための模式図である。 シミュレーションで用いたくびれた部分の半導体の模式図である。 従来型(くびれなし)のシミュレーションを行うために円筒型の一次元モデルに変形した模式図である。 図15の各部位の半径を説明するための概略図である。 本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーションを行うために円筒型の一次元モデルに変形した模式図である。 従来型(くびれなし)と本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 従来型(くびれなし)と本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 従来型(くびれなし)と本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 従来型(くびれなし)と本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、従来型(くびれなし)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 加熱温度を変化させたときの、本発明の一実施の形態である高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果の一つを示すグラフである。 本発明の一実施形態である高機能型(くびれあり)のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1又は第2の導電部材を製造するための鋳型(両端部分の一方)を示す側面断面図である。 本発明の一実施形態である高機能型(くびれあり)のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1又は第2の導電部材を製造するための鋳型(両端部分の一方)を示す平面図である。 本発明の一実施形態である高機能型(くびれあり)のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1又は第2の導電部材を製造するための鋳型(中央部分)を示す側面断面図である。 本発明の一実施形態である高機能型(くびれあり)のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1又は第2の導電部材を製造するための鋳型(中央部分)を示す平面図である。 本発明の一実施形態である高機能型(くびれあり)のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1又は第2の導電部材を製造するための鋳型(両端部分の他方)を示す側面断面図である。 本発明の一実施形態である高機能型(くびれあり)のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1又は第2の導電部材を製造するための鋳型(両端部分の他方)を示す平面図である。 従来のパイ型ペルチェ/ゼーベック素子を示す図である。
以下、図面にしたがって本発明のペルチェ素子又はゼーベック素子の構造とその製造方法について説明する。図1は、本発明のペルチェ素子又はゼーベック素子の構造の第1の実施形態の例を示す模式図である。
図1に示すように、所定のゼーベック係数を有する第1の導電部材(n型半導体等)10は、その両端部分n1,n3と中間部分n2から構成されている。また、第1の導電部材とは異なるゼーベック係数を有する第2の導電部材(p型半導体等)20もその両端部分p1,p3と中間部分p2から構成されている。
第1の導電部材10及び第2の導電部材20の中間部分n2及びp2は、両端部分n1,n3及びp1,p3と比べて断面積が小さく形成されており、このため材質が同じであっても、熱伝導度が両端部分と比べて小さくなっている。
そして、この第1の導電部材10の両端部分の一方n1が、接合部材30にオーミックコンタクトで接合され、第2の導電部材20の両端部分の一方p1が接合部材30にオーミックコンタクトで接合されている。この接合部材30は温度T1に熱せられて高温部を構成することになる。また、第1の導電部材10の両端部分の他方n3は、接合部材40にオーミックコンタクトで接合され、第2の導電部材20の両端部分の他方p3は接合部材50にオーミックコンタクトで接合されている。この接合部材40と接合部材50は温度T2とされて低温部を構成している。すなわち、T1>T2となっている。
上述した構造の素子において、接合部材30を高温(T1)に保ち、接合部材40と50の周囲を低温(例えば室温T2)に保つと、接合部材30と40及び50の間の温度差に比例した熱起電力が発生する。これがゼーベック効果である。ここで接合部材30と接合部材40は第1の導電部材10によって接続され、接合部材30と接合部材50は第2の導電部材20によって接続されている。このため、第1の導電部材10,第2の導電部材20において、従来例(図44参照)と同じような熱伝導度を有する部材構造(図44中では、第1の導電部材101や第2の導電部材102)を用いた場合は、高温部(例えば、図1中の接合部材30)から低温部(例えば、図1中の接合部材40,50)への熱の移動が早くなって、両者と接合部材40と50の周囲の温度は短時間で熱平衡状態となり、接合部材30と40及び50の間の温度差が非常に小さくなる為に起電力が発生しなくなってしまう。しかし、図1に示す本発明の第1の実施形態の例では、第1導電部材と第2導電部材のそれぞれの中間部分n2,p2がその両端部分n1,n3及びp1,p3の部分より断面積を小さくしているので、熱伝導度が悪くなるため、熱平衡状態でも中間部分n2,p2における温度勾配が大きく維持される。したがって、接合部材30と40及び50の間の温度差を大きく維持できてゼーベック効果が発揮され、熱エネルギーの電気エネルギーへの変換効率、すなわち熱電変換効率が向上することになる。
次に、図1に示す構造の素子において、接合部材40と50を電気的に接続して電流を流すと、その電流量に比例した発熱と吸熱が接続部材30と接続部材40,50の間で起こる。この効果をペルチェ効果といい、この効果を奏する素子がペルチェ素子である。この吸熱と発熱は電流の向きにより互いに第1導電部材10及び第2の導電部材20の反対側の面になる。つまり、ある電流の向きのとき接合部材30が発熱側であれば、電流の向きが反対になると接合部材40と50の側が発熱側となる。この状態で、吸熱側、例えば接合部材40と50側から、発熱側となる接合部材30の側に、第1の導電部材10及び第2の導電部材20を介して電子的に熱転送が起こり、接合部材30と接合部材40,50の間に温度差を与えることになる。この時、本発明の実施の形態では、第1の導電部材10及び第2の導電部材20の中間部分n2,p2の断面積を両端部分n1,n3,p1,p3の断面積よりも小さくしているので、それによって熱伝導係数が小さい為に熱量の移動が小さくなって熱側と発熱側の温度差を大きく保つ事が出来、吸熱側の周囲からより多くの熱エネルギーを吸収して発熱側への電子的な熱転送が効率よく行われる。
このように、電流が流れている間はペルチェ効果による吸熱効果と発熱効果は持続しているので、接合部材30と接合部材40,50の間の熱量の移動が遅いほど、接合部材30と接合部材40,50の間の温度差は増大する。このため、電流を流して接合部材30と接合部材40,50の間にできるだけ大きな温度差を形成させる目的で使われるペルチェ素子を、その目的に合うように機能を高くすることができるようになる。
このように、図1は、第1の導電部材10と第2の導電部材20の中間部分の断面積をその両端部分の断面積よりも小さくして熱伝導度を少なくしたものであるが、本発明の第2の実施形態として、例えば図2に示すように、第1の導電部材10及び第2の導電部材20の断面形状は同一としておき、中間部分n2,p2の材質として、両端部分n1,p1又はn3,p3よりも熱伝導度の小さい性質を有する材料、例えばアモルファスシリコンやポリシリコンなどを用いることも可能である。
また、本発明の第3の実施形態の例として、図3に示すように、第1の導電部材10と第2の導電部材20の中間部分n2及びp2をさらに分割してくびれを形成(例えば、第1の導電部材10と第2の導電部材20の中間部分に幅狭部を形成)し、つまり中間部分n2,p2自体を複数に分割して断面の小さい部分を組み込んだ形状にすることもできる。これにより、中間部分n2,p2の熱伝導率を更に小さくすることができるとともに、半導体材料を減らすこともでき、結果として高温側と低温側の温度差を更に大きくすることが容易に可能になる。
ここで、上記図1から図3に示すような本発明のペルチェ/ゼーベック素子の各実施の形態において、ペルチェ効果、又は、ゼーベック効果を高める機能を持たせるために、第1導電部材n1,n2,n3,及び、第2導電部材p1,p2,p3は夫々互いに、同じゼーベック係数でもよいが、n1,n2,n3,又はp1,p2,p3のうちの一部または全部のゼーベック係数を異ならせることもできる。
また、ペルチェ効果、又は、ゼーベック効果を高める機能を持たせるため、第1導電部材n1,n2,n3,及び、第2導電部材p1,p2,p3のうち、中間部分を形成するn2とp2としては、例えば図4〜図6(図4〜図6中の記号(◆),(○),(▼)は溶解材料、(◇),(●),(▽)は焼結体)に示すような物性特性を有するp型Bi0.5Sb1.5Te3の様な化合物半導体が用いられる。すなわち、図4は、温度(T)に対して電気抵抗率が増大していることを示し、図5は温度(T)の増加と共にゼーベック係数が増大することを示している。また、図6は、温度(T)の増加とともに熱伝導係数が減少していることを示している。このように、この化合物半導体の物性値は、温度の増加と共にゼーベック係数が大きくなり、かつ熱伝導係数が小さくなっている。このような特性を有する化合物半導体が更に開発されつつある。
このように、第1または第2導電部材の中間部分に、材質を変えた半導体(中間部分以外とは異なる材質の半導体)を挟み込む事により、高温側の熱が中間部を通って低温側へ伝わるとき、中間部分の材質が温度の増加と共に熱伝導率が小さくなる為、高温側の熱は中間部を通って低温側へ伝わりにくくなり、その結果として、高温側と低温側の温度差をより大きい状態に維持することができる。
次に、図7に基づいて、本発明の実施の形態のペルチェ/ゼーベック素子について実験した例について説明する。この実験例では、比較データを作成するために従来のペルチェ/ゼーベック素子を用いた実験と、本発明の一実施形態のペルチェ/ゼーベック素子を用いて実験を行っている。
図7の符号7aは、図44の従来例のペルチェ/ゼーベック素子を示したものであり、第1の導電部材101又は第2の導電部材102を銅板等の接合部材103又は104(105)と接合し、一方の接合部材103にヒートシンク106を接続している。なお、図7中の符号107は接合部材104(105)の強度を補強するための補強部材であり、銅板で構成されるものである。
また、図7の符号7bは、図1に示す本発明の一実施の形態の例として用いられるペルチェ/ゼーベック素子の例を示すものである。ペルチェ/ゼーベック素子の構成要素である第1の導電部材10又は第2の導電部材20の一端は、接合部材30を介してヒートシンク106に接合されている。なお、図7中の60も図7中の符号107と同様に、接合部材40(50)の強度を補強するための補強部材であり、銅板で構成されている。そして、図1で示したように、第1の導電部材20及び第2の導電部材30は、その中間部分n2(p2)が両端部分n1(p1)及びn3(p3)と比べて熱伝導度が低くなるような形状又は材料が用いられている。この第1の実施形態では、中間部分の断面積を両端部分の断面積を小さくすることにより、中間部分の熱伝導度を低下させるようにしている。このn型半導体であるn1,n2,n3(又はp型半導体p1,p2,p3)のゼーベック係数あるいはペルチェ係数は同じ値でもよいし、異なるゼーベック係数あるいはペルチェ係数の材料を組み合わせて適宜最適な値を設定してもよい。
図8は、図7に示す従来のペルチェ/ゼーベック素子と発明の一実施の形態で用いられる高機能ペルチェ/ゼーベック素子の両方に、電流を通電したときの温度特性をプロットしたものである。横軸は通電後の時間を示し、縦軸は接合部材の温度を示している。横軸スケールの1メモリは5分である。図8の符号8aは、従来型のペルチェ/ゼーベック素子(図7の符号7aに対応する。)において、接合部材103と104(105)の間に、例えば1アンペア(A)の電流を流したときのそれぞれの接合部材103と104(105)の温度を測定したものである。この図からわかるように、通電開始時は導電部材の両側に位置する二つの接合部材の温度は同じ値であったが、通電時間が経過するにつれて、ヒートシンク106がある側の接合部材103の温度はT1とほとんど変化していないのに対し、ヒートシンク106がない側の接合部材104(105)は次第に温度が下がり、5分後から温度上昇に転ずることが認められた。この温度降下から温度上昇への転換は、半導体101(102)中の熱伝導のよる高温側から低温側への熱エネルギーの移動により、ペルチェ効果の吸熱による温度降下が阻害された結果、起こる事を示している。
次に、本発明の実施の形態において、従来のペルチェ/ゼーベック素子と同様の実験を試みた結果を図8の符号8bに示した。この実験結果は、図7の符号7bの接合部材30と接合部材40(50)の間にほぼ1アンペア(A)の電流を流し、接合部材30と接合部材40(50)の温度を測定したものを示している。
この図8の符号8bからわかるように、ヒートシンク106に接合された接合部材30の温度は、T1でほぼ一定に推移するのに対し、ヒートシンク106を接合しない側の接合部材40(50)の温度は、時間の経過とともに急激に低下している。
図8の符号8bからわかるように、本発明の実施の形態に示す高機能ペルチェ/ゼーベック素子は、従来型のもの(図8の符号8aを参照。)と比べて、接合部材30と接合部材40(50)との温度差が時間経過とともに一層増大している。これは、本発明の実施形態に用いる高機能ペルチェ/ゼーベック素子に対して、半導体10(20)部の熱伝導度が小さくしてあるために、熱伝導度よる高温側から低温側への熱エネルギーの移動が抑えられて、低温側への熱エネルギーの供給が少なくなり、ペルチェ効果による吸熱作用によって低温側の温度がより低くなることを示している。
次に、図9に基づいて、従来のペルチェ/ゼーベック素子と本発明の実施形態で用いる高機能ペルチェ/ゼーベック素子とのゼーベック効果について検証する。図9の横軸は、2つの接合部材間の温度差であり、縦軸はゼーベック起電圧を示している。図9の(○)は本発明の実施の形態に用いられる高機能ペルチェ/ゼーベック素子の起電圧を示し、(◆)は従来のペルチェ/ゼーベック素子の発生する起電圧を示す。この図9から明らかなように、従来型も本発明の高機能素子のいずれも温度差に比例した同一直線のゼーベック起電圧を出力する事から、本発明の高機能素子でもゼーベック効果になんら影響を与えない事が分かり、同時に、半導体部の熱伝導度を小さくした本発明の高機能ペルチェ/ゼーベック素子ゼーベックの方が、高温側と低温側の温度差を大きな値まで維持できた結果、従来型よりもゼーベック起電圧出力を大きく出来た事が、本実験により確認されたことになる。
図10〜図14は、本発明の実施の形態における高機能ペルチェ/ゼーベック素子(第1又は第2導電部材にくびれあり)と従来型ペルチェ/ゼーベック素子(第1又は第2導電部材にくびれなし)の場合の、実際の構成例を示したものである。図10〜図12は従来型のペルチェ/ゼーベック素子、図13〜図14は本発明の実施形態に用いられる高機能ペルチェ/ゼーベック素子を接続した例である。図10〜図14の接合部材としての銅板は、縦8mm、横3.5mm、高さ1mmの直方体形状のものを用い、第1の導電部材と第2の導電部材を構成する半導体としては、縦横3mm、高さ1.5mmの直方体を3段に重ねたものを想定してシミュレーション実験を行うことを前提とした。また、図13,図14に示すように、本発明の実施の形態に用いられる高機能ペルチェ/ゼーベック素子を構成する第1及び第2の導電部材の中間部分の材料としては、縦横1.5mm、高さ1.5mmの立方体を用いることを想定して、同様なシミュレーション実験を行うことを前提とした。また、実際の回路実験を再現できるように、室温を一定の温度にし、加熱側の接合部材の銅板の設定温度を変えて、加熱側と反対の接合部材の銅板の温度は、回路内の熱伝導及び空気中(回路周囲であって室温と同じ温度の空気中)への熱伝達によって物理的に矛盾なく自動的に決まる境界条件を使って、シミュレーション実験を行うことを前提とした。なお、回路内の熱伝導による熱量の移動の速さが、該室温と同じ温度の空気中への熱伝達による熱量の移動の速さより桁違いに大きいことから、1次元の円筒モデルで実際の回路実験を再現できることを調べるための予備的なシミュレーションを繰り返し、定量的にも実際の回路実験のデータが再現できることを確認できた。
図15〜図17は、図10〜図14に示した回路の一周期分を1次元の円筒モデルで示した図であり、このモデルに基づいてシミュレーション実験を行った。
図15,図16(R;円筒モデルにした部材の半径)に示す従来のペルチェ/ゼーベック素子の円筒シミュレーションモデルでは、第1の導電部材73(n型半導体)及び第2の導電部材74(p型半導体)は、半径R3(=1.693mm)で高さ(図15〜図17中では左右方向の距離)1.5mmの円筒状部材が3段に重ねられている。第1の導電部材73は、半径R2(=1.829mm)で高さ1mmの円筒形の接合部材72Aに接合され、この接合部材72Aは半径R1(=1.056mm)で高さ2mmの円筒状部材72Bに接合され、さらに円筒形接合部材72Bは、接合部材72Cに接合されている。接合部材72Cの形状は、接合部材72Aと同じである。この接合部材72A〜72Cはシミュレーション実験において外部から強制加熱される部分である。また、第2の導電部材74は、第1の導電部材73とはゼーベック係数の異なるp型半導体で構成されるが、その形状は第1の導電部材73と同じである。
第1の導電部材73の他端は、接合部材72Aと同じ形状の接合部材76Aと接合されており、接合部材76Aは、接合部材72Bと形状の等しい接合部材76Bと接合されている。また、第2の導電部材74の他端は、接合部材72Cと形状の等しい接合部材75Aと接合され、この接合部材75Aは、同じく接合部材72Bと形状の等しい接合部材75Bと接合(接合部材76Aの場合は、同じく接合部材72Bと形状の等しい76Bと接合)されている。
一方、図17に示す本発明の実施形態における高機能ペルチェ/ゼーベック素子では、第1導電部材73と第2の導電部材74の構成が異なる以外は、図15,16の従来型ペルチェ/ゼーベック素子の形状と構成を同じにしている。すなわち、図17中の第1の導電部材73は両端の部分73a、73cと中間部分73bとから構成され、中間部分73bの半径R4(=0.85mm)は、両端部分の半径R3(=1.693mm)の略2分の1の大きさにしている。
以上説明したような構成の従来型のペルチェ/ゼーベック素子(くびれなし)と本発明の実施の形態に用いられる高機能ペルチェ/ゼーベック素子(くびれあり)を用い、室温を27℃一定の条件にして、シミュレーション実験を行った結果を図18〜図21(図18〜図21中の記号(○)はくびれなし、(◇)はくびれあり)に示す。
図18は、加熱側(図15〜図17では接合部材72A〜72C)を外部から強制加熱してから回路内の各点の温度が定常状態になる加熱後5分後において、加熱側の温度に対して反対側(図15〜図17では接合部材75A,75B,76A,76B)の温度がどのように変化するかを示したものである。加熱側の温度を、27℃を開始温度として徐々に上げていくと、定常状態になる加熱後5分後において、反対側の温度も次第に上昇していく。この図18からわかるように、従来型(くびれなし)の場合は、高機能型(くびれあり)に比べて、加熱側の温度上昇とともに反対側の温度上昇が大きくなっている。図19は定常状態になる加熱後5分後の加熱側と、反対側の温度差と、加熱側の温度との関係を示したものであるが、従来型(くびれなし)に比べて高機能型(くびれあり)の方が、両者の温度差が大きいことを示している。すなわち、高機能型(くびれあり)では、第1又は第2の導電部材を熱が伝わりにくいことにより、同じ加熱温度に対して、従来型(くびれなし)より大きな温度差を実現できることを示している。
図20は、加熱側の温度に対して、定常状態になる加熱後5分後の起電圧をプロットしたものである。この図から、例えば加熱側温度を60℃にした時に、高機能型(くびれあり)では、従来型(くびれなし)に比較して、1.6倍近い大きな起電力が得られることが分かる。図21は、加熱側と非加熱側(反対側)の温度差に対する起電圧もプロットしたものであるが、従来型(くびれなし)、高機能型(くびれあり)のいずれも同一直線上にシミュレーションデータが並んでいる。このことは温度差に対して得られる起電圧が比例していることを意味し、これによって、従来型(くびれなし)に比べて、大きな温度差を実現できる高機能型(くびれあり)の方が、高いゼーベック効果起電圧を発生できる機能を持つことを検証したことになる。
図22〜図29は、従来型(くびれなし)のペルチェ/ゼーベック素子において、加熱側の温度をパラメータとして、該加熱してからの時間経過と起電圧の関係、及び第1又は第2の導電部材の位置と温度の関係を示したものである。
図22〜図25は、加熱後の時間に対する起電圧を、加熱温度30℃,40℃,50℃,60℃の4通りでシミュレーションした結果を示している。加熱温度が30℃,40℃,50℃,60℃で、それぞれ定常状態になる加熱後5分後の起電圧は0.2mV,0.9mV,1.6mV,2.4mVを示している。また、図26〜図29は、図15中の部材75Bの左端の位置を0mmとして部材76Bの右端を17mmとしたときの場所の温度を、加熱温度をパラメータとしてプロットしたものである。図中の点線は加熱時間5秒後の温度であり、実線は定常状態になる加熱後5分後の温度を示す。これら各図から明らかなように、加熱時間が経過すると、加熱側(図の中心付近部)と室温空気で囲まれた反対側(図の両端部)の温度差が小さくなっていることが分かる。
図30〜図37は、高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子において、加熱側の温度をパラメータとして図22〜図29と同様のシミュレーションを行ったときの、加熱してからの時間経過と起電圧の関係、及び第1又は第2の導電部材の位置と温度の関係を示したものである。
図30〜図33は、加熱後の時間に対する起電圧を、加熱温度30℃,40℃,50℃,60℃の4通りでシミュレーションした結果を示したものである。図30〜図33から分かるように、加熱温度が30℃,40℃,50℃,60℃で、それぞれ定常状態になる加熱後5分後の起電圧は0.3mV,1.5mV,2.6mV,3.8mVを示し、図22〜図25と比べると、略1.6倍に大きくなっていることが分かる。
また、図34〜図37は、図17中の部材75Bの左端の位置を0mmとして部材76Bの右端を17mmとしたときの場所の温度を、加熱温度をパラメータとしてプロットしたものである。点線は加熱時間5秒後の温度を示し、実線は定常状態になる加熱後5分後の温度を示す。これら各図から明らかなように、時間が経過すると、回路内の熱伝導により加熱部と両端部の温度の差は、小さくなるが、従来型(くびれなし)に比べると温度の差は大きい状態で定常状態になり、この大きな温度差は半導体のくびれた領域で実現されていることが分かる。
このように、図22〜図29に示す従来型(くびれなし)と図30〜図37に示す高機能型(くびれあり)のシミュレーション結果は、明らかに高機能型(くびれあり)の方が、起電圧が大きくなり、加熱開始から時間が経過し定常状態になる加熱後5分後も、加熱部分と室温空気で囲まれた反対側部との温度差が大きくなることが認められた。これは高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子の方が、従来型(くびれなし)に比べて、加熱部から室温空気で囲まれた反対側部への熱伝導度が小さくなるからである。このシミュレーション結果によって、本発明の実施の形態である高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子では、ゼーベック効果及びペルチェ効果が大きく現れることが確認された。
次に、図38〜図43に基づいて、本発明の実施の形態に用いられる高機能型(くびれあり)ペルチェ/ゼーベック素子の製造方法について説明する。図38(平面図),図39(側面図)は、図1に示す第1導電部材10又は第2導電部材20を48個同時に作成するための鋳型を示したものである。図38,図39は、第1導電部材10又は第2導電部材20を3分割した時の両端部分の一方(n1又はp1)を作成するための鋳型を示している。同様に図40(正面図),図41(側面図)は、第1導電部材10又は第2導電部材20の中間部分(n2又はp2)の鋳型、図42(正面図),図43(側面図)は、第1導電部材10又は第2導電部材20を両端部分の他方(n3又はp3)を示している。これら各図では、第1導電部材10又は第2導電部材20の断面は円筒形状にしているが、形状については円筒である必要はなく四角形であっても、他の多角形であってもよいことは言うまでもない。ここで、図40,図41に示す中間部分の断面積は、図38,図39及び図42,図43に示す両端部分の断面積よりも小さくなっていることが重要である。
図38〜図43は、本発明の第1の実施形態である、高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子の製造方法を示したものであるが、本発明の第2の実施形態では、該図38〜図43の各部分の半導体の断面積を等しくし、中間部分の材料(図40,図41に示す鋳型内の半導体材料)をアモルファスシリコン又はポリシリコン等の熱伝導度の小さい材料とすることにより、本発明の第1実施形態に示される高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子と同じゼーベック効果を奏するペルチェ/ゼーベック素子を作成することが可能である。
なお、前記の第1導電部材10又は第2導電部材20の両端部分や中間部分の各パターンは、図38〜図43に示すように所望の形状に成形された鋳型を用いる方法の他に、種々の方法を適用することができ、例えばフォトマスク技法等を適用しても良い。また、前記の各パターンには、前記のアモルファスシリコン又はポリシリコン等の熱伝導度の小さい材料の他に、ペルチェ/ゼーベック素子に用いられているものであれば種々の材料(例えば、固体,液体又は粉末体であって熱伝導度の小さい材料を挿入して、加熱や加圧等により最終的には固化した材料)を適用することができる。
以上説明したように、従来型(くびれなし)のペルチェ/ゼーベック素子では、第1導電部材又は第2導電部材を構成する半導体の熱伝導率が、銅の約200分の1と比較的大きいために、定常状態では半導体の上下の温度T1とT2の温度差△Tが小さくなってしまい、ペルチェ効果及びゼーベック効果が大きく低減するという欠陥があった。これに対して、本発明の実施の形態である高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子の構造によれば、第1又は第2導電部材の中間部分の熱伝導を小さくする形状にするか、又は熱伝導係数の小さい材質を採用しているため、従来型のペルチェ/ゼーベック素子に比べて、半導体の上下の温度T1とT2の温度差△Tを定常状態でも大きな値に維持する事が可能になり、その結果、ペルチェ効果及びゼーベック効果を本来の目的に沿って大きく発揮させることができる。
したがって、本発明の実施の形態である高機能型(くびれあり)のペルチェ/ゼーベック素子の構造によれば、素子を構成する第1の導電部材及び第2の導電部材の中間部分の熱伝導率が、その両端部分の熱伝導率より小さく形成されるため、高温側から低温側への熱の伝導が悪くなり、その結果、高温側から低温側への熱エネルギーの移動が少なくなる。このため、熱エネルギーの利用効率が向上する。
また、それぞれの素子を基板上に複数個同時に作成することができるので、一個一個の素子の均一性が担保されるとともに、素子の製造コストを下げることが可能である。
以上、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明したが、本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、なお考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
本発明の集積並列ペルチェ・ゼーベック素子チップの製造方法によれば、LSI作成技術をペルチェ・ゼーベック素子集積チップの製造法に適用することにより、従来熟練技術者が製造に要した時間を大幅に短縮することができる。
また、同時に多数個の集積並列ペルチェ・ゼーベック素子チップが作成され、これを接続するための多端子コネクターも提供されるので、これらの複数の集積並列ペルチェ・ゼーベック素子チップを接続した集積ペルチェ・ゼーベックパネル又はシートを簡単な方法で作成することができ、これらの集積ペルチェ・ゼーベックパネル又はシートを組み込んだ熱エネルギー電気エネルギーの直接変換システム及び熱エネルギーの転送システムも従来に比べて極めて短時間に組み立てることが可能になる。

Claims (2)

  1. ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する異なるゼーベック係数を有する第1導電部材と第2導電部材について、夫々の長さ方向の中間部分の熱伝導度を両端部分の熱伝導度より小さく形成するペルチェ素子又はゼーベック素子の製造方法であって、
    前記ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記両端部分の一方の領域である第1領域を形成するための鋳型作成やフォトマスク技法を使った前処理パターン作成による第1領域パターンを形成するステップと、
    前記ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記中間部分の領域である第2領域を形成するための鋳型作成やフォトマスク技法を使った前処理パターン作成による第2領域パターンを形成するステップと、
    前記ペルチェ素子又はゼーベック素子を構成する前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記両端部分の他方の領域である第3領域を形成するための鋳型作成やフォトマスク技法を使った前処理パターン作成による第3領域パターンを形成するステップと、
    前記第1領域パターンと前記第2領域パターンと前記第3領域パターンとを位置合わせをするステップと、
    前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記第1領域を形成するために、前記第1導電部材及び前記第2導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を前記第1領域パターンに詰め込むステップと、
    前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記第2領域を形成するために前記第1導電部材及び前記第2導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を前記第2領域パターンに詰め込むステップと、
    前記第1導電部材及び前記第2導電部材の前記第3領域を形成するために前記第1導電部材及び前記第2導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を前記第3領域パターンに詰め込むステップと、
    前記第1領域パターンと前記第2領域パターンと前記第3領域パターンに詰め込まれた前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材の原料となる固体、液体又は粉末体を加熱して接合し、前記第1の導電部材及び前記第2の導電部材それぞれの前記両端部分と前記中間部分を一体に形成するステップと、
    前記第1領域パターンに埋め込まれた前記第1導電部材の一方の端部と、前記第1領域パターンに埋め込まれた前記第2導電部材の一方の端部とを導電性接合部材を介してオーミックコンタクトによって接合するステップと、
    を有するペルチェ素子又はゼーベック素子の製造方法。
  2. 前記第1領域パターンを複数個用いて、前記第1の導電部材の前記両端部分の一方の領域を複数個同時に形成するステップと、
    前記第1領域パターンを複数個用いて、前記第2の導電部材の前記両端部分の一方の領域を複数個同時に形成するステップと、
    前記第2領域パターンを複数個用いて、前記第1の導電部材の前記中間部分の領域を複数個同時に形成するステップと、
    前記第2領域パターンを複数個用いて、前記第2の導電部材の前記中間部分の領域を複数個同時に形成するステップと、
    前記第3領域パターンを複数個用いて、前記第1の導電部材の前記両端部分の他方の領域を複数個同時に形成するステップと、
    前記第3領域パターンを複数個用いて、前記第2の導電部材の前記両端部分の他方の領域を複数個同時に形成するステップと、
    前記第1領域パターンで形成された領域と前記第2領域パターンで構成された領域の第1導電部材及び第2導電部材同士をオーミックコンタクトによって接合するステップと、
    前記第2領域パターンで形成された領域と前記第3領域パターンで構成された領域の第1導電部材及び第2導電部材同士をオーミックコンタクトによって接合するステップと、
    を更に含み、ペルチェ素子又はゼーベック素子を複数個同時に作成することを特徴とする請求項1に記載のペルチェ素子又はゼーベック素子の製造方法。
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