JP4849725B2 - 細胞付培養基板及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞を用いた実験や細胞毒性評価などに使用される、動物細胞が付与された細胞培養基板,その製造方法及びその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、動物細胞を細胞実験に使用するには、細胞が増殖する性質を有する場合は、アンプルなどの容器中に細胞浮遊液の形で凍結保存されてされた細胞を解凍し、培養用フラスコなどにに細胞を播種し、培養し増殖させたあと、実験目的に応じた培養器の形態に最終的に細胞を播種し増殖させ細胞条件を整えた後、実験評価に用いる。
【0003】
近年になって、薬物などの毒性試験などに培養細胞が用いられるようになり、しかも一度に多くのサンプルを試験したいという要望および検出系の発達により、少量の細胞での評価が行なわれるようになってきた。その代表例としては96ウェルプレートを用いた培養細胞での評価が挙げられる。96ウェルプレートは、従来よりELISAに用いられてきた経緯から、専用の吸光度、蛍光および発光測定用のプレートリーダーが普及しており、培養細胞を用いた各種スクリーニング試験に広く使用されている。さらには同じプレートの中に384ウェルさらには1536ウェルといったプレートも出現しつつある。
【0004】
このような、プレートの多ウェル化の一方、バイオテクノロジーの分野では、DNAチップを始めとして分析評価系のチップ化が進んでおり、迅速かつコンパクト、簡便な操作へと進化している、培養細胞においても例外ではなく、細胞毒性評価方法などでは、基板上に細胞を配列させたものを用いる方法が提案され、例えば、特願平10−374170号公報に開示されている。
【0005】
チップ基板上での培養細胞の評価は、基板上に細胞をパターン状に配列したものが使用され、チップ基板上に細胞が集積され、ごく微小なパターン上に細胞を載せたものが必要になってくる。
チップ基板上への細胞のパターン化は細かい作業となり、一般の実験室において、細胞パターンをのせたチップを調製することは困難であり煩わしい作業となる。従って今後、生きた細胞をパターン形成したチップ基板のニーズが高くなる。
基板上に、組織や細胞が載ったものとしては、基板上に細胞パターンを形成した後、ホルマリンなどにより固定化されたものが市販されている。この場合、細胞はすでに死んでおり、細胞毒性のような細胞応答性についての評価は行なうことはできない。
【0006】
細胞の応答性をみるには、細胞は生きている必要があり、さらに長期保存性も加味すると、基板上に細胞が凍結保存された、いわゆる、細胞付培養基板が必要となる。
培養容器に足場依存性動物細胞が培養された形態で培養用培地と共に培養器ごと凍結保存する方法が特開平1−16581号公報に開示されている。同様に本発明者も着脱可能なシート状での細胞の凍結方法を特開平6−335385号公報に開示している。
【0007】
しかしこれらの方法を、基板上に細胞をパターン化したものに適用することは難しかった。その理由は細胞解凍時の細胞の剥離にある。上記の公開公報に開示されている凍結方法では細胞が剥離してしまい、微細な細胞のパターンを保持することは出来なかった。
以上のような理由から、足場依存性細胞が培養基板にパターンを形成して接着し凍結保存された細胞付培養基板を実現することはできなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、培養表面に動物細胞が培養面に伸展している培養された状態でチップ状の培養基板とともに凍結されていて、解凍時に細胞が剥離することなく培養形態を保っている、動物細胞が付与された細胞付培養基板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記のような従来の問題点を解決するため、培養面に接着した状態で凍結し解凍した際の細胞の培養基質表面の剥離の要因を検討した結果、細胞の凍結の際添加される凍結保護剤の存在が大きく関わっていること、さらに凍結保護剤を含有する培養液に細胞が浸漬されているときの温度が高いと細胞が培養表面から剥離することが促進されること、またさらに、凍結用培地が解凍の際に存在すると細胞の剥離が促進されること、さらに、低温下で凍結保護剤を含有する培養液中で一定時間処理したあと、培養面から凍結保護剤を含有する培養液を除去すれば、室温で放置されても、過度に長時間でなければ細胞は剥離することなく、室温での取り扱いが可能であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、
)(1)動物細胞を培養基板上で培養し、培養基板表面に接着した細胞層を形成、(2)培養基板上の培養液の全てまたは一部の除去、(3)0〜10℃の範囲内までの冷却、(4)冷却の温度を保ったまま凍結保護剤を含有する培養液の培養基板上への分注、(5)冷却の温度を保ったまま凍結保護剤を含有する培養液を培養基板上に保持しながら放置、(6)凍結保護剤を含有する培養液の除去、(7)さらに冷却して細胞を凍結する工程から少なくとも構成されることを特徴とする細胞付培養基板の製造方法であって、培養基板がプラスチック基板であり、基板を親水化処理を施してパターンを形成した領域に細胞層が接着され、凍結保護剤がDMSO(ジメチルスルホキシド)又はその混合物であり、放置時の凍結保護剤を含有する培養液中のDMSO(ジメチルスルホキシド)の含有量が5〜15%であり、培養面における培養液の残留量が10μl/cm2以下まで培養液を除去する細胞付培養基板の製造方法、
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に用いることができる動物細胞は、上皮系や繊維芽細胞系の株化細胞および初代培養された血管内皮細胞や肝細胞、皮膚上皮細胞など、培養面に接着し伸展する細胞である。株化細胞の代表例として、HeLa、Hep G2、A-431、V79、Vero等があげられる。
【0012】
本発明の培養器に使用する培養基板の形態には特に制限はない。一般的な形態としては、顕微鏡観察などでのプレパラート作製に使用されるスライドガラスやカバーガラスに似た形態のものであるが、大きさや厚さについて過度に大きかったり小さかったりしなければ特には指定はないが、長さ1〜5cm 幅1〜5cm及び厚さ0.1〜2mm程度が最も扱い易いと思われる。また、一般に市販されている培養器は円形のものが多く円形の形状でも良い、その大きさは直径1〜5cm程度が扱い易く好ましい。
【0013】
材質としては特に制限はないが、われにくいことを考慮するとプラスチックが好ましく、顕微鏡での観察が必要な場合は透明性が必要であり、適した樹脂としてはポリスチレンなどが挙げられ、さらに蛍光観察が必要な場合は透明性があり蛍光を発しない材質であることが必要であり、そのような樹脂としてFEPなどのフッ素樹脂などが挙げられる。
【0014】
培養基板上の培養表面であるが、一般の培養器は動物細胞用に培養表面に親水化処理が施されており、親水化処理の度合いは接触角で60度程度である。本発明の細胞付培養基板についても、細胞培養領域に上記と同程度の親水化処理を施し、細胞の接着性を付与するのが好ましい。また、剥離しやすい細胞の場合は解凍後の細胞の伸展状態をより良好に保つために培養面をさらに親水化しておくのが好ましく、親水化処理の度合いは接触角で20〜40度にすると効果的である。
【0015】
株化細胞の場合は、上記のごとく特に細胞外マトリックスをコーティングする必要はないが、初代培養の血管内皮細胞等のように、細胞機能の発現に細胞外マトリックスのコーティングが必要な場合は、適宜コ−ティングを行なってもよい。
細胞のパターンを培養基板面に形成する場合は、基板上の親水化領域をパターン化すればよい。細胞によっては親水化処理を施しても基板表面に接着したパターンの境界が不鮮明になることもあるが、そのような場合は、親水化処理後に細胞のパターン領域外に非細胞接着性処理を施せば良く、その方法としては、ポリ−HEMAをコートする等が挙げられる。
【0016】
細胞のスポットの配列についてはランダムにではなく、評価分析の方法や目的に併せて規則をもって配置して方がよい。一般的には行方向、列方向に碁盤の目状に配列されるが、このように配列すれば、各々のスポットの位置の識別が容易となり好適である。
【0017】
本発明の細胞付培養基板の作製手順について説明する。まず目的とする培養基板を培養器中で固定する。固定の方法は種々あるが、シリコーンゴムなどを用いれば、硬化後容易に剥がすことができ、また細胞への毒性がなく好適と思われる。培養基板の固定後、滅菌処理をして細胞培養ができる状態とした後、細胞を播種し培養を行って細胞を増殖させる。
【0018】
細胞培養器の凍結の際の細胞の密度は、使用される実験の目的にもよるが、培養表面上の培養領域の約50%〜コンフルエント(個々の細胞が相互に密着し、細胞間の間隙がほぼなくなる状態)な状態が望ましい。この状態を越すと細胞は増殖性が低下することがあるため、実験の目的によって使用が制限されることにもなるので注意を要する。
【0019】
次に、凍結手順であるが、まず培養していた培養器を0〜10℃まで冷却する。この際、培養液が全て入ったまま行っても良いが 、培養液を一部除去してから冷却した方が早く冷却できる。冷却の方法は、冷蔵庫中に入れても良いし、氷上に置いても良い。次に冷却された培養器に凍結保護剤を添加した培養液を0〜10℃に冷却して加える。
最終的に、最適な凍結保護剤の濃度になるように、凍結保護剤の濃度を調節した凍結保護剤含有培養液を調製しておく。培養器の冷却温度を保つため、添加するまで冷蔵庫中等で放置する。
【0020】
細胞培養の分野では細胞凍結の際、細胞のダメージを抑える目的で凍結保護剤が添加される。凍結保護剤として種々のものが用いられているが、安価で凍結保護剤としての効果が高いのはDMSO(ジメチルスルホキシド)である。、凍結保護剤としてDMSOを主成分として加えた場合、DMSOの最終的な培地中の濃度は約5〜20%(V/V)の濃度が好ましく、さらに好ましくは8〜15%(V/V)である。細胞の種類によっては、さらに他の凍結保護剤を加える。例としてはゼラチンや多糖類等が挙げられる。
【0021】
上記のごとく低温で凍結保護剤を加えて放置することにより細胞は凍結及び解凍への耐性を獲得する。この放置において培地の温度が10℃を超えると細胞は剥離してくるが、0〜10℃を保つことにより、細胞の剥離を防止することができる。この放置時間は10分〜1時間程度が適当である。
【0022】
その後、凍結保護剤を含有した培養液を除去するが、その際は細胞内の水分は除去してはならないが、細胞が乾燥しない程度になるべく培養面の培養液は除去するのが望ましい。培養液除去後の培養面に残留している培養液の量は、培養面の単位面積あたり1〜10μl/cm2が好ましく、さらには1〜5μl/cm2の範囲がより好ましい。
【0023】
培養液の除去は、前記のように細胞を乾燥させないように行なわなければならない。培養液の除去は一般に吸引により行われるが、最終的な培養液の除去は吸引では行なわない方が望ましい。なぜなら、最後まで吸引で培養液を除去しようとした場合、かなりの吸引力で吸引することとなり、培養面の培養液は除去できるが、吸引用のノズルにより、細胞をきずつけたり又は細胞の乾燥をさせることになるからである。
【0024】
培養液の除去の手段について具体的に説明する。
まず、凍結保護剤を含有した培養器中に満たされ一定時間低温下で放置された培養器から培養液の一部を除去する。このとき培養器中に残存している培養液の量を基板上を0.5〜1mmほど覆っている程度にする。ウェル開口部に吸水性を有するシートをおき、培養器を逆さまにして、軽くタッピングしたり、振るなどによって残りの培養液を除去する。さらに培養器を逆さまにしたまま培養面を上にして、3〜10分程度放置する。
【0025】
培養液が除去された状態では、過度な長時間でなければ室温に放置しても細胞の剥離は起こらず、凍結保護剤の細胞への毒性も防止できる。したがって、多量の培養器を凍結しようとする際も、次に行なう包装作業や凍結工程へある程度の枚数をまとめて作業を移行させることが可能である。
【0026】
本発明者らは、凍結保護剤を含有した培養液で処理したあと培養液を除去しても、細胞内の水分が乾燥し難いことを見出し、さらに包装の形態に工夫を施すことにより、凍結保存中も細胞を乾燥させることなく、長期保存できることを見出している。
【0027】
本発明における凍結保護剤を含有した培地除去後の、耐乾燥性のメカニズムは良く判らないが、おそらく凍結保護剤は水との親和性が高くかつ蒸発し難い性質を有しており、そのために凍結保護剤が細胞中に入ることにより、細胞中から水分が蒸発し難くなっており、さらに細胞膜により細胞内の水分が蒸発し難くなっているためであると考えられる。逆に培養液が存在したほうが、培養液の水分の昇華による濃縮が起こり、長期間凍結保存した場合解凍時に培地の浸透圧が高くなり、細胞へのダメージが大きくなることも考えられる。
【0028】
包装形態も、培養液を除去した後の細胞の乾燥を防止し、細胞の凍結保存性を高める手段として重要である。包装において重要なのは、凍結から解凍までの間、培養器内を陰圧にしないことと、外部から培養面へ空気の流入させないことである。
【0029】
培養液中に細胞を浸漬させた状態での凍結保存では、培養液が蒸発しないようになるべく多くの培養液を入れ密閉系にすれば、細胞が乾燥することはなく、凍結状態で気密性を保つための工夫を施せばよかった。例えば、96ウェルプレートであれば、空気透過性がなく密着性の良いシートをウェル開口部に導入すればよかった。
しかし、本発明における包装については全く逆であり、基板が納められた培養器が気密状態に置かれると、凍結工程での温度の低下にともない培養器内の陰圧化が起こり、細胞の乾燥が起こることがわかった。
【0030】
また、一般の足場依存性動物細胞の培養に用いられる培養器類は、フラスコを除いて、蓋と容器本体の間はかなりの通気性を有しており、外へ空気の流出がし易く細胞を乾燥させる要因となる。また、外から培養面へ一気に到達する空気の流れは、培養器の温度に比較し培養器外の空気の温度が高い場合、培養面上への結露を惹起し、それにより細胞層がダメージを受けることになる。
【0031】
そこで、適度なガス透過性をもったシートを培養容器器本体と蓋の間に介在させて培養容器を覆うことにより、凍結時培養器内の陰圧化が起こらず、かつ培養器内を気流が生じることなく凍結保存時の細胞の乾燥を防ぐことができる。
【0032】
その際、適度なガス透過性を有するシートと蓋の間に発泡体のシート等のクッション材を挟むなどして、通気性のシートを培養器開口部と密着させるかあるいは、ヒートシールなどによりシールする。適度なガス透過性をもつシートとしては、ろ紙、デュポン社のタイベックの商標で広く知られており医療用具の包装や建材として用いられている高密度ポリエチレン繊維を熱と圧力によって結合したスパンボンド不繊布又は最近の野菜の保存用にポリエチレンやポリプロピレン等のシートにミクロな穴を開口させたシート等が挙げられる。耐水性やヒートシールのしやすさを考慮すると、高密度ポリエチレン繊維を熱と圧力によって結合したスパンボンド不繊布が好ましい。
【0033】
長期の凍結保存性を得るためには、さらに包装を施すと効果的である。包装の材質および形態としては、細胞の乾燥の防止の観点から、空気の透過性の低いシートからなる袋中に納めシールするのが最適である。この際、注意しなければならないのは、包装に使用する袋の容量が大きく、シールした際の包装中に空気が蓄えられていることが必要である。その理由は、袋の容量および空気量に余裕がないと、冷却した際に袋の中が陰圧となり、さらに培養器内も陰圧になって、細胞が乾燥することになるからである。
【0034】
袋の容量としては、納められる培養器の外形容量の1.5〜5倍が適当である。1.5倍の容量であれば、室温でフル容量で空気を蓄えシールし凍結した場合、−80℃においても1気圧を保持することができ、培養器内の陰圧化を防止することができる。包装作業における効率を考慮すると上記のような袋の容量が適当である。袋の容量が培養器の容量の3〜4倍の袋を用いれば、特に空気を注入することなく、培養器を中に納めて袋の端をシールすれば、室温で培養器の容量の1.5〜3倍のエアーを袋内に留めることができる。
【0035】
この袋の材質としては、水分の透過性が小さければ特に問題はなく、ポリエチレン製の袋で十分である。
さらに、外装として、ガス透過性の小さい袋、例えばアルミ箔とプラスチックシートとのラミネートシートからなる外袋中に納めることによって、液体窒素中での保存が可能となり、より長期にわたる凍結保存が可能になる。
【0036】
包装が終了したら、最後に凍結工程に移る。凍結は徐々に温度を下げて行なう必要があり、少量の凍結であればプログラムフリーザーを用いるのが良いが、現在市販されているプログラムフリーザーは高価であり、また大容量のものはなく、一度に凍結できる培養器の数にも制限があるため、販売のための生産として多量に凍結するのには適さない。徐々に温度を下げる手段として、発泡スチロール中に納めて凍結する方法も報告されているが、本発明の場合は培養液を除去しているために培養器内の温度降下がさらに早くなることもあり、一層の徐冷を行なった方が良い。包装した細胞付培養基板をさらに発泡シートなどの断熱性のある袋に納めた後、発泡スチロール製の箱中に納め、ディープフリーザー中で凍結すればよい。
【0037】
最後に本発明の細胞付培養基板の解凍方法について説明する。アンプルなどの中に細胞が凍結されている場合、37℃温水中にアンプルなどを浸漬し、速やかに解凍することが解凍時の細胞の生存率を確保するために必要とされており、確かに、細胞の解凍時間に時間を要すると、解凍時の細胞の生存率は悪くなる。この傾向は、培養面に凍結用培養液とともに足場依存性動物細胞が接着した状態で凍結されている場合はより顕著に表れる。
【0038】
この要因は、細胞の周りに大量に存在する培養液によるものであり、速やかに全体が解凍されないと、細胞内および細胞の周りは培養液が溶けるまでの間、最も不安定な状態で長時間とどまることになり、それが細胞への損傷を招くことになると思われる。
【0039】
一方、本発明の細胞付培養基板では、細胞の周りの培地が除去されているため、解凍における細胞の温度上昇が滞ることなくおこなわれ、最も不安定な温度領域を一気に通過できること、さらに細胞が扁平なことにより細胞内全体が均一に解凍されるため、室温放置でもさらに培養器の薄肉化を図らなくとも、高い細胞の生存性を保持した解凍が可能となっていると考えられる。
【0040】
むしろ、本発明では、外部から急激に加温すると、培養基板が納められている培養器内で温度上昇に不均衡を生じ、それが細胞の生存率の不均衡の原因となる。全体を均等に加温するためには、包装から取り出さず、袋中に納めたままで解凍したほうがよい。もし解凍において、フリーザーから取り出した培養器を包装材等からすぐに取り出して直接外気に触れさせると、その瞬間に培養器に霜が付着し、その霜が解けるまでの間、温度上昇が滞ることになる。また培養器全体が均一に温度上昇することを妨げるため、局所的に細胞の死滅が認められることもある。また、霜が解けることにより生ずる結露のため、菌の混入の危険性が高まるこことになる。
【0041】
本発明では、包装の際、袋内に余分な空気が保持されているため、包装が培養器の培養面に接触しない状態で、室温に放置するこおことにより、袋外面に付着した霜による温度上昇への影響もなく、培養基板全体を均一に温度上昇を図ることができる。
【0042】
培養基板が、マルチウェルプレートのような複雑な構造をしていて、ウェル内が均一に加温できない場合は、上記のように室温での解凍が必要であるが、培養基板が、シャーレのような1つの容器部よりなる容器に納められている場合は、袋ごと温水中に浸漬し加温する方法でも容器全体が均一に加温することが可能であり、解凍時の細胞生存率も高く維持することができる。
【0043】
本発明の方法では、培養器全体が培養液の分注作業を行なう作業場所での温度にほぼ等しくなるまで培養器の蓋をあけてはいけない、なぜなら、培養器、特に培養面が冷たい状態で蓋を開けると、培養器に較べ暖かい空気が、細胞と接し、細胞表面や培養面に結露を生じ、細胞にダメージを与え、最悪の場合細胞は死滅するからである。
【0044】
上記のように培養器中に培養液が分注できるようになるまでに必要な放置時間であるが、100mmφのシャーレ中にシリコーンゴムで固定されたスライドガラスの細胞付培養基板の場合には−80℃のディープフリーザーより取り出してから室温解凍で約20分である。この時間は実験者が、培養液の準備等を行なうのに適度な時間である。また、細胞付培養基板を袋ごと37℃の温水中に浸漬する場合の解凍時間は1分〜2分程度であり、待つのに支障のない時間である。
【0045】
【実施例】
以下実施例により本発明について、具体的に説明する。
(実施例1)
厚さ1mmのポリスチレン製の板を幅2cm、長さ3.5cmに裁断し、その上に直径1mmの穴を2mm間隔でたて5つよこ5つ合計25個の穴を設けた厚さ1mmのシリコーンゴム製のシートで覆い密着させ、シリコーンゴムで覆った面をコロナ放電処理を行なったのち、直径60mmの浮遊細胞培養用シャーレ(住友ベークライト製 品番MS−1060R)の底面に親水化処理を施していない面を未硬化の液状シリコーンゴムで固定し硬化させたのち、ガンマ線滅菌を施した。
【0046】
滅菌の後、シリコーンゴムシートの穴の部分に、1つの穴あたり20個のHeLa細胞を播種し室温で10分程放置したのち、シャーレ全体に培養液を静かに分注した、培養液の量は10ml/シャーレとした。培養液には5%の仔牛血清を含むMEM培地を用いた。炭酸ガスインキュベーター中で培養をおこない、顕微鏡観察により細胞密度がコンフルエントに達したところでポリスチレンの板および培養器ごと凍結した。
【0047】
凍結の手順は次の通り行った。ポリスチレンの板を覆っているシリコーンゴムのシートを滅菌したピンセットで除き、シャーレ培養してきた培地を5ml/シャーレを除去し、シャーレの蓋をして冷蔵庫中(4℃)で40分放置した。同時にDMSOを20%(V/V)の濃度で上記培養用の培地に添加し凍結用培養液として調製し氷冷した。この氷冷した凍結用培養液を冷蔵庫中で冷却したシャーレに5ml/シャーレを分注し、再び冷蔵庫中で15分間放置した。
【0048】
その後、シャーレ内のDMSOを含有した培養液を5ml除去し、シャーレ開口面に滅菌した吸水性のシートを固定しシャーレに蓋をし、シャーレを逆さまにした状態で10分間放置した。吸水性シートを除き、タイベックでシャーレ開口部を覆い蓋をし、蓋とシャーレ本体をセロテープで固定し、ポリエチレン製の袋(大きさ10cm×10cm)に納め、平面上で袋の端をシールした。
【0049】
ポリエチレン製の袋の上からシャーレの底面側を発泡ポリエチレン製のシートで覆い、ポリエチレン袋の余分な部分を底面側に発泡ポリエチレンシートを挟むようにして折り曲げ、アルミ箔とPETのラミネートシートよりなる外袋(大きさ13cm×13cm)に納め、シールしディープフリーザー中で1分間あたり1℃の割合で−80℃まで冷却し凍結した。−80℃で保存し下記に示す確認試験に供した。
【0050】
(実施例2)
HepG2細胞について、培養液として10%牛胎児血清を添加したダルベッコ変法MEM培地を用いた。以下実施例1と同様の条件で 細胞付培養基板を製作および保存をおこなった。
【0051】
(比較例1)
厚さ1mmのポリスチレン製の板を幅2cm、長さ3.5cmに裁断し、その上に直径1mmの穴を2mm間隔でたて5つよこ5つ合計25個の穴を設けた厚さ1mmのシリコーンゴム製のシートで覆い密着させ、シリコーンゴムで覆った面をコロナ放電処理を行なったのち、直径60mmの浮遊細胞培養用シャーレ(住友ベークライト製 品番MS−1060R)の底面に親水化処理を施していない面を未硬化の液状シリコーンゴムで固定し硬化させたのち、ガンマ線滅菌を施した。滅菌の後、シリコーンゴムシートの穴の部分に、1つの穴あたり20個のHeLa細胞を播種し室温で10分程放置したのち、シャーレ全体に培養液を静かに分注した、培養液の量は10ml/シャーレとした。
【0052】
培養液には5%の仔牛血清を含むMEM培地を用いた。炭酸ガスインキュベーター中で培養をおこない、顕微鏡観察により細胞密度がコンフルエントに達したところでポリスチレンの板および培養器ごと凍結した。凍結の手順は次の通り行った。ポリスチレンの板を覆っているシリコーンゴムのシートを滅菌したピンセットで除き、シャーレ培養してきた培地をシャーレから除去し、DMSOを10%(V/V)の濃度で含有する上記培養用の培地に添加した凍結用培養液を10ml/シャーレ分注し、蓋とシャーレ本体をセロテープで固定し、ポリエチレン製の袋(大きさ10cm×10cm)に納め、平面上で袋の端をシールした。
【0053】
ポリエチレン製の袋の上からシャーレの底面側を発泡ポリエチレン製のシートで覆い、ポリエチレン袋の余分な部分を底面側に発泡ポリエチレンシートを挟むようにして折り曲げ、アルミ箔とPETのラミネートシートよりなる外袋(大きさ13cm×13cm)に納め、シールしディープフリーザー中で1分間あたり1℃の割合で−80℃まで冷却し凍結した。−80℃で保存し下記に示す確認試験に供した。
【0054】
(比較例2)
HepG2細胞について、培養液として10%牛胎児血清を添加したダルベッコ変法MEM培地を用いた。以下比較例1と同様の条件で 細胞付培養基板の製作および保存をおこなった。
【0055】
(細胞培養基板の解凍)
ポリエチレン袋ごと37℃の温水中に浸漬し解凍を行なった。実施例1および2は温水中に2分浸漬したのち2分室温に放置したのち各々の細胞の培養用培養液を5mlをシャーレに分注した。比較例1および2は温水中に5分浸漬した、シャーレ内の凍結用の培養液は完全に溶け、シャーレ全体も室温以上に加温されていることを確認し、凍結用培地をピペットにより除去し各々の細胞の培養用培養液を10mlをシャーレに分注した。
【0056】
(解凍時の細胞の剥離性の検証)
培地を分注したのち、各実施例および比較例の培養基板をシャーレごとを振とう器上にのせ、ストローク5cm、1秒あたり1回の割合で、1分間振とうしたのち、培地を除去し、メタノールで固定しクリスタルバイオレットで細胞を染色し、各細胞スポットを写真に撮ったのち、写真を画像処理に施し、各スポットにおける細胞の占める面積を割り出した。
各実施例および比較例について3枚ずつ合計75個のスポットについて観察を行い、細胞占有率の平均およびCV値を算出した。結果を表1に示す。
【0057】
(解凍後の細胞の生存性の検証)
培地分注したのち、静かに、実施例および比較例の培養基板をシャーレから外し、取り出し、トリプシン溶液を1滴基板上の細胞スポット上にたらし、上からカバーグラスを施し、37℃で3分間加温したのち、培養用基板上及びカバーグラス上の細胞をPBS(−)で洗い出し、容量1.5mlのサンプリングチューブに回収し、遠心により細胞を回収し、トリパンブルー排除法により生存細胞率を算出した。培養基板は各実施例および比較例について5枚用い
平均を算出した。結果を表2に示す。
【0058】
【表1】
Figure 0004849725
【0059】
【表2】
Figure 0004849725
【0060】
【発明の効果】
本発明の細胞付培養基板は、細胞解凍時の細胞生存率が高くさらに、培養面からの細胞の剥離がなく、細かい細胞のパターンを形成させた細胞培養基板の供給手段として有益である。

Claims (1)

  1. (1)動物細胞を培養基板上で培養し、培養基板表面に接着した細胞層を形成、(2)培養基板上の培養液の全てまたは一部の除去、(3)0〜10℃の範囲内までの冷却、(4)冷却の温度を保ったまま凍結保護剤を含有する培養液の培養基板上への分注、(5)冷却の温度を保ったまま凍結保護剤を含有する培養液を培養基板上に保持しながら放置、(6)凍結保護剤を含有する培養液の除去、(7)さらに冷却して細胞を凍結する工程から少なくとも構成されることを特徴とする細胞付培養基板の製造方法であって、培養基板がプラスチック基板であり、基板を親水化処理を施してパターンを形成した領域に細胞層が接着され、凍結保護剤がDMSO(ジメチルスルホキシド)又はその混合物であり、放置時の凍結保護剤を含有する培養液中のDMSO(ジメチルスルホキシド)の含有量が5〜15%であり、培養面における培養液の残留量が10μl/cm2以下まで培養液を除去する細胞付培養基板の製造方法。
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